説明

フレキシブルバッグ

【課題】フレキシブルバッグが損傷する可能性を低減する。
【解決手段】積荷収納部11が、前方端部がほぼ最大周囲長となるように開放された袋状に構成される。接続部12が、積荷収納部11の開放端部と接合され、曳船20と接続するための曳航索30と接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルバッグに関し、特に曳船によって曳航されるフレキシブルバッグに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から貨物として運賃負担力の低い水を、コストが高い船舶に代わり、製造コストが低く低強度の膜製のフレキシブルバッグと、運行コストの低い小型の曳船を使用して経済的に輸送している(たとえば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開昭53−142788号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、フレキシブルバッグによる水輸送を効率化・低価格化するために、フレキシブルバッグを大型化したいという要請がある。
図5は、大型化したフレキシブルバッグを示す上方斜視図である。
図5に示すように、フレキシブルバッグ310は、積荷を収納するための積荷収納部311と、曳航索と接続するための接続部312を備えている。
【0004】
積荷収納部311は、製造コストが低く低強度の、たとえばポリエステルの布に塩化ビニルもしくはポリウレタンで樹脂加工を施した膜材で、袋状に構成されている。そして、その袋状に構成された積荷収納部311に積荷を収納する。
接続部312は、たとえばアルミニウムもしくは鋼材などの高強度な硬質素材であって、積荷収納部311の先端に接合されている。曳航時には、曳航索を接続部312に接続してフレキシブルバッグ310を曳航する。
【0005】
図6は、大型化したフレキシブルバッグを示す側方断面図である。
図6に示すように、フレキシブルバッグ310の積荷収納部311は、内部空間313を構成する。そして、フレキシブルバッグ310が、内部空間313にたとえば水を入れて曳航される。
【0006】
この、フレキシブルバッグ310を曳航するときにフレキシブルバッグ310には曳航力・波浪外力・潮流力といった外力が作用し、フレキシブルバッグ310を大型化することに伴い、そのフレキシブルバッグ310に対する抵抗が大きくなる。
【0007】
この大きくなった抵抗に応じて曳航力も増大し、積荷収納部311の、特に接続部312との接合部分近傍にかかる応力が増大する。このとき、接続部312に作用する応力が増大するが、接続部312は、高強度の素材であるため損傷の危険は無い。一方、積荷収納部311は、経済性を実現するために強度の限られた安価な繊維性の膜材で出来ているため、応力が増大したときに積荷収納部311の接続部312との接合部分近傍の単位周囲長あたりにかかる応力が増大することによって損傷する可能性が大きくなるという問題がある。
【0008】
一方で、曳船で曳航中にフレキシブルバッグが振れ回ると、曳船とフレキシブルバッグを接続する曳航索とフレキシブルバッグが角度をなすことがある。
【0009】
図7は、曳船で曳航中にフレキシブルバッグが振れ回っているときの上面構成図である。
図7に示すように、曳船20は、フレキシブルバッグ310の接続部312と曳航索30によって接続され、図7における上方向にフレキシブルバッグ310を曳航している様子を示している。また、曳船20によって曳航されるフレキシブルバッグ310が曳航方向に対して右側に振れ回っている。
【0010】
このように、フレキシブルバッグ310が右側に振れ回ると、積荷収納部311の前方右側の、特に接続部312との接合部分近傍に対して偏荷重が作用し、その部分が損傷する可能性が大きくなるという問題がある。
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、損傷する可能性を低減することができるフレキシブルバッグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明では上記問題を解決するために、曳船によって曳航されるフレキシブルバッグにおいて、軟質素材であり、前方端部がほぼ最大周囲長となるように開放された袋状に構成されており、その内部に積荷を収納するための積荷収納部と、硬質素材であり、前記積荷収納部の開放端部と接合され、前記曳船と接続するための曳航索と接続される接続部とを備えることを特徴とするフレキシブルバッグが提供される。
【0012】
これにより、積荷収納部が、前方端部がほぼ最大周囲長となるように開放された袋状に構成される。接続部が、積荷収納部の開放端部と接合され、曳船と接続するための曳航索と接続される。
【発明の効果】
【0013】
本発明のフレキシブルバッグによれば、前方端部がほぼ最大周囲長となるように開放されており、その積荷収納部の開放端部と、硬質素材の接続部が接合されることにより、積荷収納部と接続部との接合長が長くなり、特に接続部との接合部分近傍の積荷収納部にかかる単位周囲長あたりの応力が低減されるので、積荷収納部の接続部との接合部分近傍が損傷する可能性を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
〔第1の実施の形態〕
図1は、本実施の形態に係るフレキシブルバッグを示す上方斜視図である。
図1に示すように、フレキシブルバッグ10は、積荷を収納するための積荷収納部11と、曳航索と接続するための接続部12を備えている。
【0015】
積荷収納部11は、製造コストが低く低強度の、たとえばポリエステルの布に塩化ビニルもしくはポリウレタンで樹脂加工を施した膜材で、袋状に構成されている。そして、その袋状に構成された積荷収納部11に水などの積荷を収納する。
接続部12は、たとえばアルミニウムもしくは鋼材などの高強度な硬質素材であって、積荷収納部11の前方端部に接合されている。曳航時には、曳航索を接続部12に接続してフレキシブルバッグ10を曳航する。
【0016】
図2は、本実施の形態に係るフレキシブルバッグを示す側方断面図である。
図2に示すように、フレキシブルバッグ10の積荷収納部11は、前方端部が最大周囲長となるように開放された袋状に構成されている。そして、積荷収納部11の開放端部が、接続部12の後方端部と接合されており、内部空間13を構成する。
【0017】
つまり、積荷収納部11の開放端部は、最長の周囲長で接続部12と接合されることになるので、積荷収納部11の接続部12との接合部分の単位周囲長あたりにかかる応力が最小となる。
【0018】
したがって、積荷収納部11の接続部12との接合部分近傍が損傷する可能性を低減することができる。
また、曳船で曳航中にフレキシブルバッグが振れ回ると、曳船とフレキシブルバッグを接続する曳航索とフレキシブルバッグが角度をなすことがある。
【0019】
図3は、本実施の形態に係るフレキシブルバッグが曳船で曳航中に振れ回っているときの上面構成図である。
図3に示すように、曳船20は、フレキシブルバッグ10の接続部12と曳航索30によって接続され、図3における上方向にフレキシブルバッグ10を曳航している様子を示している。また、曳船20によって曳航されるフレキシブルバッグ10が曳航方向に対して右側に振れ回っている。
【0020】
このように、フレキシブルバッグ10が右側に振れ回ると、積荷収納部11の前方右側の、特に接続部12との接合部分近傍に対して偏荷重が作用する。しかし、積荷収納部11の開放端部は、最長の周囲長で接続部12と接合されているので、積荷収納部11の接続部12との接合部分の単位周囲長あたりにかかる応力が最小となり、その部分が損傷することを防ぐことが可能となる。
【0021】
なお、接合部と積荷収納部の接合長を長くすれば、接合形態はどのようなものであっても軟質素材で構成された積荷収納部が損傷する可能性を低減することが可能である。
【0022】
なお、上記実施の形態として、積荷収納部の最大周囲長部分で接続部と接合する旨の説明をしたが、フレキシブルバッグの大きさや形状、運ぶ積み荷の総重量などからフレキシブルバッグにかかる応力を勘案し、積荷収納部への応力が低いと判断できるものにあっては、積荷収納部の最大周囲長部分で接続部と接合することなく、より前方の断面積が小さい部分で接続部と接合してもよい。
このようなフレキシブルバッグによると、積荷収納部が構成する内部空間が大きくなることにより、1回の曳航によってより多くの積荷を運ぶことが可能となる。
【0023】
〔第2の実施の形態〕
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。本実施の形態のフレキシブルバッグは、フレキシブルバッグの接続部が水圧差発生部材としても機能することが異なる以外は、第1の実施の形態で示した構成と同様である。このため、上記第1の実施の形態とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付すなどして適宜その説明を省略する。
【0024】
図4は、本実施の形態におけるフレキシブルバッグを曳船で曳航中に振れ回っているときの上面構成図である。
図4に示すように、曳船20は、フレキシブルバッグ210の接続部212と曳航索30によって接続され、図4における上方向にフレキシブルバッグ210を曳航している様子を示している。
【0025】
接続部212は、積荷収納部11と接合される接合部212a、左右両側面に水圧受容面が形成された水圧差発生部材212b、および接合部212aと水圧差発生部材212bを回動可能に接続するヒンジ部212cを備えている。曳航索30は、水圧差発生部材212bの前方先端に接続されている。
【0026】
水圧差発生部材212bは、たとえば板状であり、水圧差発生部材212bが側面からの水流によってなびかないように、ヒンジ部212cを介して、たとえば鉛直方向に2カ所で接合部212aに支持されている。このとき、2カ所のヒンジ部212cのうち下部に設けられたものは、水面より下で水圧差発生部材212bと接合部212aを接続しており、水圧差発生部材212bの一部が水面下にある。また、ヒンジ部212cは、水圧差発生部材212bの後方に一定の離間部を設けるように、水圧差発生部材212bと接合部212aを接続している。
【0027】
ここでフレキシブルバッグ210が何等かの外力によって図4中右側に振れ始めると、曳航索30に曳航方向に対する振れ角が生じ、水圧差発生部材212bの両側の水圧受容面間に水流の速度差による水圧差が生じ、水圧差発生部材40に右回りの回動作用力が発生し(揚力)、これがヒンジ部212cを介してフレキシブルバッグ210の前端に対してこれを左回りに回動させるモーメントとして直接伝達され、フレキシブルバッグ210を本来の曳航進路方向に引戻す。またフレキシブルバッグ210が左方向に振れはじめたときには水圧差発生部材212bの同様な作用によってフレキシブルバッグ210が本来の曳航方向に引戻される。
【0028】
このように、フレキシブルバッグ210の振れ回りが解消すると、積荷収納部11の振れ回った側前方であって、接合部212aとの接合部分近傍には振れ回りに伴う応力がかからなくなるのでフレキシブルバッグ210に作用する曳航力が減少し、またその偏荷重も解消されることから、その部分が損傷することを防ぐことが可能となる。
【0029】
なお、上記実施の形態として、水圧差発生部材が板状である旨の説明をしたが、板状に限らず、硬質の枠体と、枠内に膜材を張ることにより左右の両水域を隔離するように構成してもよい。このとき、膜材によって左右の両水域を隔離するように構成できれば、枠内に膜材を張る方法の他に、膜材を中心と反対に張力をかけて隔離してももちろんよい。
このような水圧差発生部材によると、フレキシブルバッグの振れ回りを防止できるとともに、より安価な膜材を用いることによってフレキシブルバッグを安価に製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本実施の形態に係るフレキシブルバッグを示す上方斜視図である。
【図2】本実施の形態に係るフレキシブルバッグを示す側方断面図である。
【図3】本実施の形態に係るフレキシブルバッグが曳船で曳航中に振れ回っているときの上面構成図である。
【図4】本実施の形態におけるフレキシブルバッグを曳船で曳航中に振れ回っているときの上面構成図である。
【図5】大型化したフレキシブルバッグを示す上方斜視図である。
【図6】大型化したフレキシブルバッグを示す側方断面図である。
【図7】曳船で曳航中にフレキシブルバッグが振れ回っているときの上面構成図である。
【符号の説明】
【0031】
10 フレキシブルバッグ
11 積荷収納部
12 接続部
13 内部空間
20 曳船
30 曳航索

【特許請求の範囲】
【請求項1】
曳船によって曳航されるフレキシブルバッグにおいて、
低強度であり、前方端部がほぼ最大周囲長となるように開放された袋状に構成されており、その内部に積荷を収納するための積荷収納部と、
硬質素材であり、前記積荷収納部の開放端部と接合され、前記曳船と接続するための曳航索と接続される接続部と、
を備えることを特徴とするフレキシブルバッグ。
【請求項2】
さらに、前方部に、前記曳航索に沿って垂直方向に取付けられ、左右両側面に水圧受容面が形成された水圧差発生部材を備えることを特徴とする請求項1記載のフレキシブルバッグ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−149870(P2008−149870A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−339401(P2006−339401)
【出願日】平成18年12月18日(2006.12.18)
【出願人】(000232818)日本郵船株式会社 (61)
【出願人】(304035975)株式会社MTI (46)