説明

フレキシブルフラットケーブル、フレキシブルプリント基板、フレキシブルフラットケーブルの製造方法、及びフレキシブルプリント基板の製造方法

【課題】ウィスカの発生を抑制できるフレキシブルフラットケーブル、フレキシブルプリント基板、フレキシブルフラットケーブルの製造方法、及びフレキシブルプリント基板の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係るフレキシブルフラットケーブル1は、銅又は銅合金からなる導電性基材100と、導電性基材100の表面に設けられる導電層102とを有する導体10と、導体10の上方に設けられる第1絶縁層20と、導体10の下方に設けられる第2絶縁層22とを備え、導電層102は、導電性基材100上に形成された銅−スズ金属間化合物層61と、この銅−スズ金属間化合物層61上に形成され、スズとビスマスとからなるスズ−ビスマス固溶体と、スズと、不可避的不純物とを少なくとも含む残存スズ層62とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルフラットケーブル、フレキシブルプリント基板、フレキシブルフラットケーブルの製造方法、及びフレキシブルプリント基板の製造方法に関する。特に、本発明は、スズ合金を含む導電層を有するフレキシブルフラットケーブル、フレキシブルプリント基板、フレキシブルフラットケーブルの製造方法、及びフレキシブルプリント基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電気機器には多数の信号線が用いられている。そして、電気機器中の動きのある部品に信号を送信する場合には、当該部品と当該部品に信号を送信する部品とを、可撓性を有するフレキシブルフラットケーブル(FFC)又はフレキシブルプリント基板(FPC)により接続している。そして、FFC及びFPCの配線材の表面には、配線材の酸化、腐食等を防止すべく、スズ、銀、金、ニッケル等のめっき層が設けられている。ここで、スズは柔らかいことから、圧力を加えると容易に変形する。したがって、雄雌端子の配線層にスズめっきを施した場合、雄端子と雌端子との嵌合によりスズめっきが変形して雄端子と雌端子との接触面積が増加する。これにより接触抵抗を低減できることから、配線材の表面にスズめっきを施すことが広く実施されている。ここで、スズを含むめっき層を配線の表面に設けた場合、当該めっき層からウィスカと称される針状の結晶が析出して、当該めっき層を有する配線と他の配線とを短絡させる場合がある。
【0003】
そこで従来、電気導体部品の電気接続部分に厚さ0.2μm〜1.0μm未満のスズめっきを施した後、熱処理によりスズめっきのスズと電気導体との合金層の比率を50%以上にする電気導体部品の製造方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に記載の電気導体部品の製造方法は、スズの融点以上の温度で熱処理を実施してスズの合金層を形成するので、ウィスカの発生源になるスズ層の量を少なくすることができ、鉛フリーでウィスカの発生を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−127939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の電気導体部品の製造方法は、スズの融点以上の温度で熱処理を実施するので、スズの再結晶化により結晶粒の大きなスズが発生することがあり、この場合、電気導体内部に発生する応力を十分に緩和することができず、ウィスカの発生を抑制することが困難な場合がある。
【0007】
したがって、本発明の目的は、ウィスカの発生を抑制できるフレキシブルフラットケーブル、フレキシブルプリント基板、フレキシブルフラットケーブルの製造方法、及びフレキシブルプリント基板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するため、銅又は銅合金からなる導電性基材と、前記導電性基材の表面に設けられる導電層とを有する導体と、前記導体の上方に設けられる第1絶縁層と、前記導体の下方に設けられる第2絶縁層とを備え、前記導電層は、前記導電性基材上に形成された銅−スズ金属間化合物層と、該銅−スズ金属間化合物層上に形成され、スズとビスマスとからなるスズ−ビスマス固溶体と、スズと、不可避的不純物とを少なくとも含む残存スズ層とからなるフレキシブルフラットケーブルが提供される。
【0009】
また、上記フレキシブルフラットケーブルは、スズ−ビスマス固溶体は、3質量%以下のビスマスを含有することが好ましい。
【0010】
また、上記フレキシブルフラットケーブルは、残存スズ層は、固溶しきれずに析出したビスマス結晶をさらに含むことが好ましい。
【0011】
また、上記フレキシブルフラットケーブルは、導電層に含まれるスズ−ビスマス固溶体は、X線回折装置を用いて測定される当該スズ−ビスマス固溶体の格子定数が、a軸において0.584nm以上0.585nm以下であり、c軸において0.3185nm以上0.32nm以下の範囲内であることが好ましい。
【0012】
また、上記フレキシブルフラットケーブルは、導電層に含まれるスズ−ビスマス固溶体は、X線回折装置を用いて測定される当該スズ−ビスマス固溶体の格子体積が、0.1085nm3以上0.109nm3以下の範囲内であることが好ましい。
【0013】
また、本発明は、上記目的を達成するため、第1の絶縁フィルム及び第2の絶縁フィルムと、前記第1の絶縁フィルムと前記第2の絶縁フィルムとの間に設けられ、銅又は銅合金からなる導電性基材と、前記導電性基材の表面に設けられる導電層とを有する配線回路とを備え、前記導電層は、前記導電性基材上に形成された銅−スズ金属間化合物層と、該銅−スズ金属間化合物層上に形成されたスズとビスマスとからなるスズ−ビスマス固溶体と、スズと不可避的不純物とを少なくとも含む残存スズ層とからなるフレキシブルプリント基板が提供される。
【0014】
また、上記フレキシブルプリント基板は、スズ−ビスマス固溶体は、3質量%以下のビスマスを含有することが好ましい。
【0015】
また、上記フレキシブルプリント基板は、残存スズ層は、固溶しきれずに析出したビスマス結晶をさらに含むことが好ましい。
【0016】
また、上記フレキシブルプリント基板は、導電層に含まれるスズ−ビスマス固溶体は、X線回折装置を用いて測定される当該スズ−ビスマス固溶体の格子定数が、a軸において0.584nm以上0.585nm以下であり、c軸において0.3185nm以上0.32nm以下の範囲内であることが好ましい。
【0017】
また、上記フレキシブルプリント基板は、導電層に含まれるスズ−ビスマス固溶体は、X線回折装置を用いて測定される当該スズ−ビスマス固溶体の格子体積が、0.1085nm3以上0.109nm3以下の範囲内であることが好ましい。
【0018】
また、本発明は、上記目的を達成するため、銅又は銅合金からなる導電性基材を準備する基材準備工程と、前記導電性基材の表面にスズ−ビスマス合金めっきを施してスズ−ビスマス合金めっき層付き基材を形成するめっき工程と、前記スズ−ビスマス合金めっき層の融点以上の温度の熱処理を前記スズ−ビスマス合金めっき層付き基材に施す熱処理工程と、前記熱処理工程後、200℃/sec以上の冷却速度で前記スズ−ビスマス合金めっき層付き基材を冷却して導電層付き基材を形成する冷却工程と、前記冷却工程を経た前記導電層付き付き基材の上方に第1絶縁層を、下方に第2絶縁層を設ける絶縁層形成工程とを備え、前記導電層は、前記導電性基材上に形成された銅−スズ金属間化合物層と、該銅−スズ金属間化合物層上に形成されたスズとビスマスとからなるスズ−ビスマス固溶体と、スズと、不可避的不純物とを少なくとも含む残存スズ層とからなるフレキシブルフラットケーブルの製造方法が提供される。
【0019】
また、上記フレキシブルフラットケーブルの製造方法は、スズ−ビスマス合金めっきは、純スズ中に3質量%以上10質量%以下のビスマスを含有することが好ましい。
【0020】
また、上記フレキシブルフラットケーブルの製造方法は、導電層は、3質量%以下のビスマスを含有する前記スズ−ビスマス固溶体を含むことが好ましい。
【0021】
また、本発明は、上記目的を達成するため、第1の絶縁フィルム上に銅又は銅合金からなる導電性基材を形成する基材形成工程と、前記導電性基材の表面にスズ−ビスマス合金めっきを施すめっき工程と、前記スズ−ビスマス合金めっきの融点以上の温度の熱処理を施す熱処理工程と、前記熱処理工程後、200℃/sec以上の冷却速度で前記スズ−ビスマス合金めっきを冷却して導電層を形成する冷却工程と、前記冷却工程後、前記導電層を第2の絶縁フィルムで被覆する被覆工程とを備え、前記導電層は、前記導電性基材上に形成された銅−スズ金属間化合物層と、該銅−スズ金属間化合物層上に形成されたスズとビスマスとからなるスズ−ビスマス固溶体と、スズと、不可避的不純物とを少なくとも含む残存スズ層とからなるフレキシブルプリント基板の製造方法が提供される。
【0022】
また、上記フレキシブルプリント基板の製造方法は、スズ−ビスマス合金めっきは、純スズ中に3質量%以上10質量%以下のビスマスを含有することが好ましい。
【0023】
また、上記フレキシブルプリント基板の製造方法は、導電層は、3質量%以下のビスマスを含有する前記スズ−ビスマス固溶体を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係るフレキシブルフラットケーブル、フレキシブルプリント基板、フレキシブルフラットケーブルの製造方法、及びフレキシブルプリント基板の製造方法によれば、ウィスカの発生を抑制できるフレキシブルフラットケーブル、フレキシブルプリント基板、フレキシブルフラットケーブルの製造方法、及びフレキシブルプリント基板の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】(a)は、本発明の第1の実施の形態に係るフレキシブルフラットケーブルの端部の上面図であり、(b)は(a)のA−A線における断面図である。
【図2】純スズ金属の結晶格子の模式図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係るフレキシブルフラットケーブルをコネクタに挿入した状態の概要図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係るフレキシブルフラットケーブルの導体の表面にコネクタのコネクタピンが接触している状態の概要図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係るフレキシブルプリント基板の部分断面の概要図である。
【図6】導電性基材上にめっきを施した後の断面図であり、このめっき層付き導電性基材に熱処理・急冷処理を施した後の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[第1の実施の形態]
図1(a)は、本発明の第1の実施の形態に係るフレキシブルフラットケーブルの端部の上面からの概要を示し、(b)は、図1(a)のA−A線におけるフレキシブルフラットケーブルの断面の概要を示す。また、図2は、純スズ金属の結晶格子の模式図を示す。
【0027】
(フレキシブルフラットケーブル1の構造の概要)
第1の実施の形態に係るフレキシブルフラットケーブル(FFC)1は、表面に導電層102が設けられており、長方形状又は楕円状の断面を有する平角導体である複数の導電性基材100を、絶縁性フィルムである第1絶縁層20と第2絶縁層22との間に所定の間隔をおいて配置して挟み込んだ構造を有する。具体的に、フレキシブルフラットケーブル1は、図1(a)及び(b)に示すように、銅又は銅合金等からなる導電性基材100と導電性基材100の表面を覆って設けられる導電層102とを有する導体10と、導体10の上方に設けられる第1絶縁層20と、導体10の下方に設けられる第2絶縁層22とを備える。そして、フレキシブルフラットケーブル1の端部においては、導体10の導電層102の表面の一部が外部に露出するように、第1絶縁層20の一部がフレキシブルフラットケーブル1の端部から所定の距離だけ除去されている。
【0028】
(導体10)
導体10は、銅又は銅合金等の金属材料からなる導電性基材100と、導電性基材100の表面に接触して設けられる導電層102とを有して構成される。そして、複数の導体10が、第1絶縁層20と第2絶縁層22との間に、例えば、平行に配列されている。導電性基材100の寸法は、フレキシブルフラットケーブル1の用途によって決まるフレキシブルフラットケーブル1の寸法に応じて決定される。一例として、複数の導体10が0.5mm間隔で第1絶縁層20と第2絶縁層22との間に設けられる場合、導電性基材100の寸法は、幅が0.3mm、厚さが35μm程度である。この場合、この導電性基材100の表面に、導電性基材100の厚さの30分の1程度の厚さ(すなわち、1μm程度の厚さ)の導電層102が設けられる。
【0029】
ここで、導電層102について、図6を用いて詳しく説明する。図6(a)は、導電性基材100の表面に接触するように純スズに所定量のビスマスが添加された鉛フリーのスズ−ビスマス合金めっき層60を形成したものの断面構造であり、(b)は、このスズ−ビスマス合金めっき層60を更に熱処理・冷却処理(スズ合金めっき層の融点以上の温度で加熱して一旦溶融させてから冷却・固化させる処理方法)をすることによって、導電性基材100側に形成されたスズと銅とからなる銅−スズ金属間化合物層61と、この層の上に形成されたビスマスが含まれる残存スズ層62とからなる導電層102が形成されたものの断面構造である。
【0030】
不可避的不純物が含まれる純スズ中にビスマスを添加してなるスズ−ビスマス合金めっき層60に熱処理を施すと、残存スズ層62中にスズとビスマスとからなるスズ−ビスマス固溶体が形成される。このスズ−ビスマス固溶体中に含まれるビスマス濃度は最大約3質量%である。
【0031】
更に、スズ−ビスマス合金めっき層60中へのビスマス添加量を増やして熱処理を施すと、残存スズ層62中には、スズとビスマスとからなるスズ−ビスマス固溶体が形成されると共に、ビスマス結晶としても析出する。具体的に、導電層102中の残存スズ層62は、スズとビスマスとからなるスズ−ビスマス固溶体を含み、残部がスズと不可避的不純物と固溶しきれずに析出したビスマス結晶とからなる。
【0032】
ここで、スズ−ビスマス合金めっき層60中に添加したビスマス原子の量は、残存スズ層62に形成されたスズ−ビスマス固溶体中のビスマス原子の量と、固溶しきれずに析出したビスマス結晶の原子の量との和に略等しい。
【0033】
なお、この固溶しきれずにビスマス結晶として析出するかどうかは、スズ−ビスマス合金めっき層60中に添加された初期のビスマス濃度や、熱処理時間(例えば、熱処理時間が長くなるほど残存スズ層62の膜厚が小さくなり、この残存スズ層62中のビスマス濃度が高くなって析出し易くなる。)に依存しており、条件によっては析出しないこともあり得る。
【0034】
そして、スズ−ビスマス合金めっき層60は、導電性基材100の表面に、残存スズ層62中に含まれるスズ原子の量を減少させると共に、熱処理が施された場合に残存スズ層62が導電性基材100から消失しない(銅−スズ金属間化合物層61のみとならない)ようにすることを目的として、2μm以下の厚さ、好ましくは0.3μm以上1.5μm以下の厚さ、より好ましくは0.5μm以上1.5μm以下の厚さを有して形成される。
【0035】
また、残存スズ層62に含まれるスズ−ビスマス固溶体は、X線回折装置を用いて測定される当該スズ−ビスマス固溶体の格子定数が、a軸において0.584nm以上0.585nm以下であり、c軸において0.3185nm以上0.32nm以下の範囲内に規定される。また、残存スズ層62に含まれるスズ−ビスマス固溶体は、X線回折装置を用いて測定される当該スズ−ビスマス固溶体の格子体積が、0.1085nm3以上0.109nm3以下の範囲内に規定される。上記の通り、スズに固溶できるビスマス濃度は約3質量%までであり、この濃度範囲内においてスズ−ビスマス固溶体の格子定数は変化する(ビスマス濃度が増えるほど、格子定数は大きくなる)が、さらにビスマス添加量を増やしてビスマス結晶を析出させたとしてもスズ−ビスマス固溶体の格子定数は変化しない。
【0036】
なお、スズ−ビスマス固溶体の格子定数は、めっき層である導電層102にX線を照射したときに測定されるX線回折パターンを用いて計算により算出できる。また、純スズ金属の結晶格子の形状は直方体であり、図2に示すようにスズ原子3が配列している。そして、結晶格子の長辺がa軸30であり、短辺がc軸32である。純スズ金属においてa軸30は0.5831nmであり、c軸32は、0.3182nmである。これらの値から結晶格子の体積を算出することができ、純スズ金属においては0.10819nm3である。同様にして、スズ−ビスマス固溶体の格子体積も、X線回折装置により測定、算出される格子定数から算出できる。
【0037】
(第1絶縁層20及び第2絶縁層22)
第1絶縁層20及び第2絶縁層22はそれぞれ、絶縁性を有する高分子材料、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)から形成される。そして、第1絶縁層20及び第2絶縁層22にはそれぞれ、一方の表面に難燃性の接着剤層が設けられており、当該接着剤層を介して導体10の表面に貼り付けられる。接着剤層は、例えば、難燃性ポリエステルを主成分として形成される。
【0038】
(フレキシブルフラットケーブル1のコネクタ5への嵌合)
図3は、本発明の第1の実施の形態に係るフレキシブルフラットケーブルをコネクタに挿入した状態の概要を示し、図4は、本発明の第1の実施の形態に係るフレキシブルフラットケーブルの導体の表面にコネクタのコネクタピンが接触している状態の概要を示す。
【0039】
図3に示すように、フレキシブルフラットケーブル1が挿入されるコネクタ5は、フレキシブルフラットケーブル1が備える複数の導体10それぞれに電気的に接続する複数のコネクタピン50を備える。なお、コネクタピン50は、銅等の金属材料から形成される金属端子である。そして、フレキシブルフラットケーブル1をコネクタ5に挿入すると、複数の導体10の表面のそれぞれに、複数のコネクタピン50のそれぞれが接触すると共に、フレキシブルフラットケーブル1がコネクタ5に嵌合する。
【0040】
この嵌合により、図4に示すように導体10の表面にコネクタピン50の先端50aが接触すると共に、先端50aが導体10に圧力を加える。これにより、スズを含む導電層102を表面に有する導体10にコネクタピン50からの圧力が加わり、導体10中に応力が発生する。ここで、導電層102中に本実施の形態に係るスズ−ビスマス固溶体が含まれていない場合、この応力により、スズ原子が導電層102の内部を移動して、再結晶、若しくは拡散現象が生じることがある。この場合、スズ原子の再結晶、若しくは拡散現象により、ウィスカが導体10の表面から外部に突き抜けるように発生、成長すると考えられる。あるいは、導電性基材100に含まれる銅が導電層102中に拡散して銅とスズとの金属間化合物を生成することで、導電層102内に応力が発生して、この応力によりスズが導体10の外部に押し出されることによりウィスカが発生、成長すると考えられる。
【0041】
しかしながら、本実施の形態に係るフレキシブルフラットケーブル1が備える導体10は、少なくともスズ−ビスマス固溶体と、残部がスズと不可避的不純物とを含む残存スズ層62を表面に有するので、導電層102内においてスズ原子が移動すること、若しくは銅が導電層102中に拡散することが抑制される。したがって、スズのウィスカが導体10の表面に発生、成長することが抑制される。
【0042】
(フレキシブルフラットケーブル1の製造方法)
フレキシブルフラットケーブル1は、以下の各工程を経て製造される。まず、銅又は銅合金からなる導電性基材100を準備する(基材準備工程)。導電性基材100の寸法、熱伝導率等の熱的特性、電気伝導率等の電気的特性、引張強度等の機械的特性の諸特性は、製造すべきフレキシブルフラットケーブル1に要求される特性に応じて決定される。次に、導電性基材100の表面にめっき層としてのスズ−ビスマス合金めっき層60をめっき法により形成して、スズ−ビスマス合金めっき層付き基材を形成する(めっき工程)。めっき層としての導電層102は、上記図1において説明した材料と同様の材料から形成される。
【0043】
続いて、スズ−ビスマス合金めっき層60の融点以上の温度の熱処理をスズ−ビスマス合金めっき層付き基材に施す(熱処理工程)。熱処理工程においては、めっき層としてのスズ−ビスマス合金めっき層60の融解が確認できる熱処理を実施する。そして、熱処理工程を経た直後に、若しくは熱処理工程に連続して200℃/sec以上の冷却速度でスズ−ビスマス合金めっき層付き基材を冷却する(冷却工程)。これにより、導電性基材100側に形成されるスズと銅とからなる銅−スズ金属間化合物層61と、この層の上に、スズに添加したビスマスが、スズの結晶格子の形状を保ちつつスズ中に溶け込んだスズ−ビスマス固溶体と、残部がスズと不可避的不純物とを必ず含み、条件によっては固溶しきれずに析出したビスマス結晶も含み得る残存スズ層62とからなる導電層が導電性基材100上に形成される。更に、冷却工程を経た導電層付き基材の上方に第1絶縁層20を設けると共に、下方に第2絶縁層22を設ける(絶縁層形成工程)。これにより、図1に示したような本実施の形態に係るフレキシブルフラットケーブル1が得られる。
【0044】
(第1の実施の形態の効果)
本実施の形態に係るフレキシブルフラットケーブル1は、スズ−ビスマス固溶体を含んでいる残存スズ層62によって導電性基材100の最表面が被覆されているので、鉛を導電層102に添加することなくスズのウィスカの発生、成長を抑制でき、仮にウィスカが発生したとしても実質的に障害(すなわち、一の導体10と他の導体10とが短絡するような障害)が発生しない程度のウィスカの長さに抑制できる。これにより、RoHS指令、REACH規制に対応したフレキシブルフラットケーブル1を提供することができる。例えば、フレキシブルフラットケーブル1をコネクタ5に嵌合した場合に圧力が加わる部分にスズ−ビスマス固溶体を含むスズ合金からなる導電層102が少なくとも形成されているので、圧力が導体10に加わって導体10内に応力が発生した場合であっても、スズウィスカの発生、成長を抑制することができる。
【0045】
また、本実施の形態に係るフレキシブルフラットケーブル1は、導電性基材100の表面にビスマスを含んだスズ合金をメッキした後に熱処理、及び急冷処理を施すことにより導電層102を形成するので、フラッシュめっき、下地めっき等の手法を採用する場合に比べて製造工程の増加によるコストの増加を抑制できる。
【0046】
また、本実施の形態に係るフレキシブルフラットケーブル1は、導電性基材100の表面に、製造工程における熱処理によってめっき層、すなわち導電層102が流れて消失することを考慮した厚さのスズ−ビスマス合金めっき層60を設けたので、導体10の表面に導電性基材100が露出する現象(例えば、導電性基材100が銅又は銅合金からなる場合、「赤肌」と呼ばれる現象)を抑制できる。
【0047】
[第2の実施の形態]
図5は、本発明の第2の実施の形態に係るフレキシブルプリント基板の部分断面の概要を示す。
【0048】
第2の実施の形態に係るフレキシブルプリント基板7において、第1の実施の形態に係るフレキシブルフラットケーブル1を構成する部材と同一の符号が付されている部材は、第1の実施の形態に係る部材と略同一の構成・機能を有するので、相違点を除き詳細な説明は省略する。
【0049】
第2の実施の形態に係るフレキシブルプリント基板7は、配線回路12と、配線回路12の一方の面に貼り付けられる第1の絶縁フィルム24と、配線回路12の他方の面に貼り付けられる第2の絶縁フィルム26とを備える。すなわち、配線回路12は、第1の絶縁フィルム24と第2の絶縁フィルム26との間に設けられる。また、配線回路12は、第1の実施の形態の導体10と同様に、導電性基材100と、導電性基材の表面を覆う導電層102とを有する。
【0050】
また、フレキシブルプリント基板7は、例えば以下のようにして製造される。まず、第1の絶縁フィルム24上に銅又は銅合金からなる導電性基材100を貼り付ける(基材形成工程)。なお、第1の絶縁フィルム24上に導電性材料を堆積させて導電性基材100を形成することもできる。
【0051】
次に、第1の絶縁フィルム24上に設けた導電性基材100上に、所望の回路パターン用のマスクパターンを形成する(マスク工程)。そして、形成したマスクパターンをマスクとして導電性基材100にエッチング処理を実施することにより、所望の形状の回路パターンの下地を形成する(エッチング工程)。そして、当該下地上にめっき法を用いてスズ−ビスマス合金めっき層60を形成する(めっき工程)。
【0052】
続いて、めっきの融点以上の温度の熱処理を第1の実施の形態と同様に施す(熱処理工程)。熱処理工程後、第1の実施の形態と同様に200℃/sec以上の冷却速度でめっきを冷却する(冷却工程)。これにより、導電性基材100上に、スズと銅とからなる銅−スズ金属間化合物層61と、この層の上に、スズに添加したビスマスが、スズの結晶格子の形状を保ちつつスズ中に溶け込んだスズ−ビスマス固溶体と、固溶しきれずに析出したビスマスとを含む残存スズ層62とからなる導電層102が形成されてなる配線回路12が形成される。更に、配線回路12を第2の絶縁フィルム26で被覆することにより、第2の実施の形態に係るフレキシブルプリント基板7が製造される。
なお、固溶しきれずにビスマス結晶として析出するかどうかは、前述のフレキシブルフラットケーブルと同様にスズ−ビスマス合金めっき層60の初期ビスマス添加量や熱処理等の条件に依存する。
【0053】
(発明者が得た知見)
なお、第1の実施の形態に係るフレキシブルフラットケーブル1、及び第2の実施の形態に係るフレキシブルプリント基板7はそれぞれ、本発明者が得た以下の知見に基づいていることを補足として説明する。
【0054】
すなわち、導電層102を構成する材料にビスマスを添加することにより、スズのウィスカの発生を抑制することができるという知見を本発明者は得た。導電層102を構成する材料にビスマスを添加することによりスズのウィスカの発生を抑制できる理由は、スズの結晶格子を保ちつつビスマスが当該結晶格子の内部に溶け込んだ状態であるスズとビスマスとの固溶体が導電層102中に形成されることに起因して、導電層102中におけるスズの拡散が抑制されるためであると考えられる。
【0055】
また、導電層102を形成する工程、すなわち、熱処理工程後の冷却工程において、200℃/sec以上の冷却速度でスズ−ビスマス合金めっき層付き基材を冷却することにより、導電性基材100の銅がスズ−ビスマス合金めっき層60中に拡散してCu6Sn5等の金属間化合物が形成されることが抑制される(冷却工程中に銅−スズ金属間化合物層61の形成が進むことを抑制できる)と考えられる。更に、この冷却工程により、導電層102中においてスズ等の粒子の粗大化が抑制されるので、めっき層である導電層102において応力の発生が緩和されると考えられる。
【0056】
本発明者はこれらの知見から、上述したように、第1及び第2の実施の形態に係る導電層102においてウィスカの発生、成長を抑制することができる知見を得たものである。
【実施例1】
【0057】
フレキシブルフラットケーブル用のスズ−ビスマス合金めっき付きの導体を実施例1に係る導体として作製した。具体的には、まず、スズ−ビスマス合金の電解めっき液(スズへのビスマスの添加濃度が3質量%になるめっき液)を作製した。次に、電気めっきにより導電性基材100の表面にビスマスの添加濃度が3質量%であるスズ−ビスマス合金めっき層60を形成した。スズ−ビスマス合金めっき層60の厚さが1μmになるように当該電解めっき液の温度を40℃に維持すると共に、電流密度を100mA/cm2に設定して所定の時間、めっき処理を実施した。導電性基材100の表面にスズ−ビスマス合金めっき層60を形成した後、温度を280℃にしたプレート上にスズ−ビスマス合金めっき層が形成された導電性基材100を載置して、10秒間加熱した。そして、スズ−ビスマス合金めっき層60の表面が融解したことを確認した後、25℃の水中にスズ−ビスマス合金めっき層60が形成された導電性基材100を投入して、5秒後に水中から取り出した。これにより、導電性基材100の表面にスズと銅とからなる銅−スズ金属間化合物層61と、この層の上に形成されたスズ−ビスマス固溶体とが含まれる残存スズ層62とからなる導電層102が形成された実施例1に係る導体を得た。
【実施例2】
【0058】
フレキシブルフラットケーブル用のスズ−ビスマス合金めっき付きの導体を実施例2に係る導体として作製した。具体的には、まず、スズ−ビスマス合金のめっき液(スズへのビスマスの添加濃度が3質量%になるめっき液)を250℃に保った溶融金属めっき槽を準備した。次に、予め表面を清浄にした銅からなる導電性基材100を溶融金属めっき槽に投入して、溶融めっきを実施した。導電性基材100の溶融金属めっき槽への浸漬時間を調整することにより、導電性基材100の表面に形成されるめっき層の厚さが1μmになるように調整した。溶融めっき後、ビスマスの添加濃度が3質量%であるスズ−ビスマス合金めっき層60が形成された導電性基材100を、温度を280℃にしたプレート上に載置して、10秒間加熱した。そして、めっき層の表面が融解したことを確認した後、25℃の水中にめっき層が形成された導電性基材100を投入して、5秒後に水中から取り出した。これにより、導電性基材100の表面にスズと銅とからなる銅−スズ金属間化合物層61と、この層の上に形成されたスズ−ビスマス固溶体と、スズと、不可避的不純物とが含まれる残存スズ層62とからなる導電層102が形成された実施例2に係る導体を得た。
【実施例3】
【0059】
(熱処理温度について)
熱処理工程の温度として、スズ−ビスマス固溶体の融点以上の温度が適していることを以下のようにして確認した。
【0060】
まず、銅製の試験片の表面に3質量%のビスマスが添加されたスズ−ビスマス合金めっき層60を施した試料を準備した。次に、実施例1及び実施例2において説明した条件と同様にして、スズ−ビスマス固溶体の融点以上の温度である280℃に加熱したプレート上に当該試料を載置して10秒間加熱した。そして、めっき層の表面が融解したことを確認した後、25℃の水中に当該試料を投入して、5秒後に当該試料を水中から取り出した。これにより、実施例3に係る試料を得た。
【0061】
一方、比較例として、銅製の試験片の表面に3質量%のビスマスが添加されたスズ−ビスマス合金めっき層60を施した比較例に係る試料を準備した。そして、比較例に係る試料について、スズ−ビスマス固溶体の融点未満の温度である150℃、180℃、210℃の各温度で5分間の熱処理を施した。そして、熱処理後、25℃の水中に投入して冷却することにより、比較例に係る試料をそれぞれ作成した。150℃に加熱した試料を比較例1に係る試料、180℃に加熱した試料を比較例2に係る試料、そして、210℃に加熱した試料を比較例3に係る試料とする。
【0062】
実施例3に係る試料、及び比較例1〜3に係る試料のそれぞれについて、フレキシブルフラットケーブルに用いられる100ピンのコネクタに勘合させ、室温で2週間放置した。その後、コネクタから各試料を取り外して、嵌合痕の周辺に発生したウィスカの数と最長長さとを電子顕微鏡により測定した。その結果を表1に示す。なお、ウィスカの発生率は、(ウィスカが発生したピン数)/(ピンの総数)の計算式から求めたものである。
【0063】
【表1】

【0064】
表1を参照すると、実施例3において採用したスズ−ビスマス合金めっき層の融点以上の温度での熱処理によりウィスカの発生率を25%未満にすることができ、最長ウィスカ長さを11μmにすることができることが示された。一方、比較例1〜3の結果を参照すると、スズ−ビスマス合金めっき層の融点未満の温度での熱処理では、実施例3と比べて長時間の加熱を実施してもウィスカの発生率は30%以上であり、最長ウィスカ長さも12μm以上であった。したがって、熱処理温度は、スズ−ビスマス合金めっき層の融点以上の温度が好ましいことが示された。
【実施例4】
【0065】
(ビスマスの添加濃度、スズ−ビスマスの格子定数、及び格子体積について)
ビスマスの添加濃度、スズ−ビスマスの格子定数、及び格子体積の最適条件を以下のようにして確認した。
【0066】
まず、銅製の試験片の表面に純スズ中に3質量%のビスマスが添加されたスズ−ビスマス合金めっき層60を施した試料を準備した。そして、当該試料に熱処理及び冷却処理を実施例1〜3と同様に施して、実施例4に係る試料を得た。一方、比較例に係る試料として、ビスマスの添加濃度が1質量%、5質量%、10質量%であるスズ−ビスマス合金めっき層60を施した試料をそれぞれ準備した。そして、これらの試料に熱処理及び冷却処理を実施例1〜3と同様に施して、比較例4〜6に係る試料を得た。比較例4に係る試料のビスマスの添加濃度が1質量%であり、比較例5に係る試料のビスマスの添加濃度が5質量%であり、比較例6に係る試料のビスマスの添加濃度が10質量%である。
【0067】
実施例4に係る試料、及び比較例4〜6に係る試料のそれぞれについて、フレキシブルフラットケーブルに用いられる100ピンのコネクタに嵌合させ、室温で2週間放置した。その後、コネクタから各試料を取り外して、嵌合痕の周辺に発生したウィスカの数と最長長さとを電子顕微鏡により測定した。また、X線回折装置を用いて実施例4、及び比較例4〜6に係る試料を測定して、回折パターンから格子定数と格子体積とを算出した。その結果を表2に示す。
【0068】
【表2】

【0069】
表2を参照すると、スズ−ビスマス合金めっき層60へのビスマスの添加濃度の変化に応じて、残存スズ層62の格子定数の値、格子体積の値が変化して、添加濃度が5質量%以上では略一定の値になった。また、ウィスカの発生数、及び最長ウィスカ長さは添加濃度の増大に伴い減少した。ビスマスの添加濃度が5質量%以上の場合、残存スズ層62のX線回折パターンの解析からビスマスの結晶が析出していることが確認された。ビスマスの結晶が析出すると、ウィスカの発生を抑制することができるものの、めっき層が硬く脆くなる傾向がある。ビスマス結晶を含む導電層を備えるフレキシブルフラットケーブル、フレキシブルプリント基板においては、めっき層が硬く脆くなり過ぎると、取り扱いが容易ではなくなる。したがって、純スズ中のビスマスの添加濃度は、3質量%以上10質量%以下が好ましいことが示された。
【実施例5】
【0070】
(冷却速度について)
冷却工程の冷却速度の最適条件を以下のようにした確認した。
【0071】
まず、銅製の試験片の表面にビスマスの添加濃度が3質量%であるスズ−ビスマス合金めっき層60を施した試料を準備した。そして、当該試料に280℃10秒の熱処理を施して、200℃/sec以上の冷却速度で冷却することにより、実施例5に係る試料を得た。一方、比較例に係る試料として、冷却速度を50℃/sec、2℃/secに調整して冷却することにより比較例7(冷却速度:50℃/sec)及び比較例8(冷却速度:2℃/sec)に係る試料を得た。
【0072】
実施例5に係る試料、及び比較例7〜8に係る試料のそれぞれについて、フレキシブルフラットケーブルに用いられる100ピンのコネクタに嵌合させ、室温で2週間放置した。その後、コネクタから各試料を取り外して、嵌合痕の周辺に発生したウィスカの数と最長長さとを電子顕微鏡により測定した。その結果を表3に示す。
【0073】
【表3】

【0074】
表3を参照すると、実施例5の冷却速度よりも遅い冷却速度で冷却した比較例7〜8に係る試料においては、最長ウィスカ長さは13μm以上であった。また、ウィスカの発生率は実施例5においては20%以下であったものの、比較例7〜8では25%以上であった。したがって、冷却工程における冷却速度は、200℃/sec以上が好ましいことが示された。
【0075】
以上、本発明の実施の形態及び実施例を説明したが、上記に記載した実施の形態及び実施例は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態及び実施例の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【符号の説明】
【0076】
1 フレキシブルフラットケーブル
3 スズ原子
5 コネクタ
7 フレキシブルプリント基板
10 導体
12 配線回路
20 第1絶縁層
22 第2絶縁層
24 第1の絶縁フィルム
26 第2の絶縁フィルム
30 a軸
32 c軸
50 コネクタピン
50a 先端
60 スズ−ビスマス合金めっき層
61 銅−スズ金属間化合物層
62 残存スズ層
100 導電性基材
102 導電層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅又は銅合金からなる導電性基材と、前記導電性基材の表面に設けられる導電層とを有する導体と、
前記導体の上方に設けられる第1絶縁層と、
前記導体の下方に設けられる第2絶縁層と
を備え、
前記導電層は、前記導電性基材上に形成された銅−スズ金属間化合物層と、該銅−スズ金属間化合物層上に形成され、スズとビスマスとからなるスズ−ビスマス固溶体と、スズと、不可避的不純物とを少なくとも含む残存スズ層とからなるフレキシブルフラットケーブル。
【請求項2】
前記スズ−ビスマス固溶体は、3質量%以下のビスマスを含有する請求項1に記載のフレキシブルフラットケーブル。
【請求項3】
前記残存スズ層は、固溶しきれずに析出したビスマス結晶をさらに含むことを特徴とする請求項1または2に記載のフレキシブルフラットケーブル。
【請求項4】
前記導電層に含まれる前記スズ−ビスマス固溶体は、X線回折装置を用いて測定される当該スズ−ビスマス固溶体の格子定数が、a軸において0.584nm以上0.585nm以下であり、c軸において0.3185nm以上0.32nm以下の範囲内である請求項1〜3いずれかに記載のフレキシブルフラットケーブル。
【請求項5】
前記導電層に含まれる前記スズ−ビスマス固溶体は、X線回折装置を用いて測定される当該スズ−ビスマス固溶体の格子体積が、0.1085nm3以上0.109nm3以下の範囲内である請求項1〜4いずれかに記載のフレキシブルフラットケーブル。
【請求項6】
第1の絶縁フィルム及び第2の絶縁フィルムと、
前記第1の絶縁フィルムと前記第2の絶縁フィルムとの間に設けられ、銅又は銅合金からなる導電性基材と、前記導電性基材の表面に設けられる導電層とを有する配線回路とを備え、
前記導電層は、前記導電性基材上に形成された銅−スズ金属間化合物層と、該銅−スズ金属間化合物層上に形成されたスズとビスマスとからなるスズ−ビスマス固溶体と、スズと不可避的不純物とを少なくとも含む残存スズ層とからなるフレキシブルプリント基板。
【請求項7】
前記スズ−ビスマス固溶体は、3質量%以下のビスマスを含有する請求項6に記載のフレキシブルプリント基板。
【請求項8】
前記残存スズ層は、固溶しきれずに析出したビスマス結晶をさらに含むことを特徴とする請求項6または7に記載のフレキシブルプリント基板。
【請求項9】
前記導電層に含まれる前記スズ−ビスマス固溶体は、X線回折装置を用いて測定される当該スズ−ビスマス固溶体の格子定数が、a軸において0.584nm以上0.585nm以下であり、c軸において0.3185nm以上0.32nm以下の範囲内である請求項8に記載のフレキシブルプリント基板。
【請求項10】
前記導電層に含まれる前記スズ−ビスマス固溶体は、X線回折装置を用いて測定される当該スズ−ビスマス固溶体の格子体積が、0.1085nm3以上0.109nm3以下の範囲内である請求項8または9に記載のフレキシブルプリント基板。
【請求項11】
銅又は銅合金からなる導電性基材を準備する基材準備工程と、
前記導電性基材の表面にスズ−ビスマス合金めっきを施してスズ−ビスマス合金めっき層付き基材を形成するめっき工程と、
前記スズ−ビスマス合金めっき層の融点以上の温度の熱処理を前記スズ−ビスマス合金めっき層付き基材に施す熱処理工程と、
前記熱処理工程後、200℃/sec以上の冷却速度で前記スズ−ビスマス合金めっき層付き基材を冷却して導電層付き基材を形成する冷却工程と、
前記冷却工程を経た前記導電層付き付き基材の上方に第1絶縁層を、下方に第2絶縁層を設ける絶縁層形成工程と
を備え、
前記導電層は、前記導電性基材上に形成された銅−スズ金属間化合物層と、該銅−スズ金属間化合物層上に形成されたスズとビスマスとからなるスズ−ビスマス固溶体と、スズと、不可避的不純物とを少なくとも含む残存スズ層とからなるフレキシブルフラットケーブルの製造方法。
【請求項12】
前記スズ−ビスマス合金めっきは、純スズ中に3質量%以上10質量%以下のビスマスを含有する請求項11に記載のフレキシブルフラットケーブルの製造方法。
【請求項13】
前記導電層は、3質量%以下のビスマスを含有する前記スズ−ビスマス固溶体を含む請求項11または12に記載のフレキシブルフラットケーブルの製造方法。
【請求項14】
第1の絶縁フィルム上に銅又は銅合金からなる導電性基材を形成する基材形成工程と、
前記導電性基材の表面にスズ−ビスマス合金めっきを施すめっき工程と、
前記スズ−ビスマス合金めっきの融点以上の温度の熱処理を施す熱処理工程と、
前記熱処理工程後、200℃/sec以上の冷却速度で前記スズ−ビスマス合金めっきを冷却して導電層を形成する冷却工程と、
前記冷却工程後、前記導電層を第2の絶縁フィルムで被覆する被覆工程と
を備え、
前記導電層は、前記導電性基材上に形成された銅−スズ金属間化合物層と、該銅−スズ金属間化合物層上に形成されたスズとビスマスとからなるスズ−ビスマス固溶体と、スズと、不可避的不純物とを少なくとも含む残存スズ層とからなるフレキシブルプリント基板の製造方法。
【請求項15】
前記スズ−ビスマス合金めっきは、純スズ中に3質量%以上10質量%以下のビスマスを含有する請求項14に記載のフレキシブルプリント基板の製造方法。
【請求項16】
前記導電層は、3質量%以下のビスマスを含有する前記スズ−ビスマス固溶体を含む請求項14または15に記載のフレキシブルプリント基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−38710(P2012−38710A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−131166(P2011−131166)
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】