説明

フレキシブルフラットケーブルの接続構造及び接続方法

【課題】モールド部形成用金型が不要になり、コネクタ構造を複雑にせず、ピッチ変換してコネクタ接続できるフレキシブルフラットケーブルの接続構造及び接続方法を提供する。
【解決手段】複数本の平角導体11を並設したフレキシブルフラットケーブル13と平角導体11と異なる配列ピッチに配置される複数本のコネクタ端子とを接続するフレキシブルフラットケーブルの接続構造であって、一端にコネクタ端子を連設するとともに、配列ピッチに応じて互いに異なる長さ寸法に設定した複数本の分岐導体19を並設する中間配索部材17を具備する。中間配索部材17をフレキシブルフラットケーブル13に対し同一平面上で傾けた状態に重ね合わせる。中間配索部材17の各分岐導体19の他端21を平角導体11のそれぞれに接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルフラットケーブルをコネクタ等の各種電子機器に接続するフレキシブルフラットケーブルの接続構造及び接続方法に関し、特に、フレキシブルフラットケーブルの導体ピッチを広げることなくコネクタ接続を可能とする改良技術に関する。
【背景技術】
【0002】
図12に示すようにFFC(Flexible Flat Cable)501は可撓性を有する帯状の薄い導体(平角導体)503を整列させてシート状の絶縁被覆505で一体成形したものであり、コネクタ507等の各種電子機器はもとより自動車の制御系等に多用されている。一般に、FFC501の平角導体503のピッチP1と、コネクタ507のコネクタ端子509のピッチP2とは一致しないことが多い。図例のように例えばFFC501のピッチP1(1.50mm)よりコネクタ端子509のピッチP2(3.00mm)が大きい場合(P1<P2)などでは、コネクタ端子ピッチP2に、平角導体ピッチP1を合わせたFFC501でなければ接続が困難となった。
【0003】
そこで、このような不具合を解消するものとして例えば特許文献1には、図13に示すFFCであるケーブル511の端から露出させた各電線513,515を不図示のコネクタ端子のピッチで整列させ、この整列した各電線513,515を絶縁性材料(例えば熱可塑性ポリアミドである)で一体成形することによりモールド部517を形成し、さらにコネクタのシール部519を上記絶縁性材料と一体に構成することで、加工性、シール性を良好としたケーブルのコネクタ接続構造が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、図14に示すFFC521の平角導体523をスリツトを有する方向転換チップ525に挿通し、第1のハウジング527と第2のハウジング529の間に収容されるラック531をスライドすることで、方向転換チップ525を回動させて水平方向aの平角導体523を捩じるようにして垂直方向bに方向転換し、方向転換した平角導体523のピッチをピッチ変換ピース533により縮小した状態で導体支持部535に挿通させ、且つ導体支持部535に設けた開口部に露呈させて相手方コネクタに接続するFFCコネクタ537が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−25651号公報
【特許文献2】特開平8−162228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されるコネクタ接続構造は、ピッチの変更毎に、それぞれの異なるモールド部形成用金型が必要となり、各接続機器の端子間のピッチに合わせたコネクタ端子をすべて製造するには、膨大な数の金型が必要となり、生産性が低下する。また、特許文献2に開示されるFFCコネクタ537は、ピッチ変換を可変にできるが、第1のハウジング527と第2のハウジング529の間にラック531と方向転換チップ525を収容し、さらに、方向転換した平角導体523のピッチを変換するピッチ変換ピース533を備えなければならないため、コネクタ構造が複雑となり、生産性が低下する。
【0007】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、モールド部形成用金型が不要になり、コネクタ構造を複雑にせず、ピッチ変換してコネクタ接続できるフレキシブルフラットケーブルの接続構造及び接続方法を提供し、もって、生産性の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る上記目的は、下記構成により達成される。
(1) 複数本の平角導体を並設したフレキシブルフラットケーブルと前記平角導体と異なる配列ピッチに配置される複数本のコネクタ端子とを接続するフレキシブルフラットケーブルの接続構造であって、
一端に前記コネクタ端子を連設するとともに、前記配列ピッチに応じて互いに異なる長さ寸法に設定した複数本の分岐導体を並設する中間配索部材を具備し、
前記中間配索部材を前記フレキシブルフラットケーブルに対し同一平面上で傾けた状態に重ね合わせて該中間配索部材の各分岐導体の他端を前記平角導体のそれぞれに接続したことを特徴とするフレキシブルフラットケーブルの接続構造。
【0009】
このフレキシブルフラットケーブルの接続構造によれば、任意のピッチで並設された複数の平角導体を有するフレキシブルフラットケーブルに対し、中間配索部材が同一平面上で傾いて重ねられ、それぞれの分岐導体が平角導体の長手方向に沿う所望位置で平角導体に接続されることで、平角導体のピッチが、傾いて(直交して)接続されるそれぞれの分岐導体の離間距離となって変換される。
【0010】
(2) (1)のフレキシブルフラットケーブルの接続構造であって、
前記コネクタ端子が前記分岐導体に一体形成されていることを特徴とするフレキシブルフラットケーブルの接続構造。
【0011】
このフレキシブルフラットケーブルの接続構造によれば、分岐導体の一端がコネクタ端子となり、分岐導体がコネクタに直接接続可能となる。これにより、コネクタに予め分岐導体を接続した中間配索部材を、フレキシブルフラットケーブルに一括接続したり、或いはフレキシブルフラットケーブルに予め分岐導体を接続した中間配索部材のコネクタ端子に、コネクタを装着したりする等、組み付けの自由度が高まる。
【0012】
(3) (1)又は(2)のフレキシブルフラットケーブルの接続構造であって、
前記分岐導体の外被が樹脂被覆により形成されていることを特徴とするフレキシブルフラットケーブルの接続構造。
【0013】
このフレキシブルフラットケーブルの接続構造によれば、所定ピッチで並設された複数の分岐導体が、樹脂被覆による外被によって離間された状態に一体形成され、中間配索部材が、絶縁性、可撓性を有するフレキシブルフラットケーブルとなる。
【0014】
(4) (3)のフレキシブルフラットケーブルの接続構造であって、
前記樹脂被覆がシリコンであることを特徴とするフレキシブルフラットケーブルの接続構造。
【0015】
このフレキシブルフラットケーブルの接続構造によれば、複数の分岐導体を一体に離間形成する外被が、シリコンからなることで、中間配索部材が良好な屈曲性を有することとなり、フレキシブルフラットケーブルとコネクタとの接続が容易となる。
【0016】
(5) (3)又は(4)のフレキシブルフラットケーブルの接続構造であって、
コネクタハウジングに嵌入するパッキンが前記外被と一体成形されていることを特徴とするフレキシブルフラットケーブルの接続構造。
【0017】
このフレキシブルフラットケーブルの接続構造によれば、中間配索部材とコネクタとを接続するとき、コネクタハウジングから導出される中間配索部材と、ケーブル導出開口との間隙が、外被に一体成形されたパッキンによってシールされる。つまり、別体のパッキンを組み付ける必要がなく、中間配索部材の嵌入と同時に止水構造の形成が完了する。
【0018】
(6) (3)又は(4)のフレキシブルフラットケーブルの接続構造であって、
前記中間配索部材のコネクタ端子寄り位置の外被にパッキンを位置決めするパッキン設置部が形成されていることを特徴とするフレキシブルフラットケーブルの接続構造。
【0019】
このフレキシブルフラットケーブルの接続構造によれば、中間配索部材の外被にパッキン設置部が形成され、別体のパッキンが外被に取り付け可能となる。これにより、パッキンの材質選定の自由度が高まるとともに、劣化したパッキンの交換も可能となる。
【0020】
(7) (1)〜(6)のいずれか1つのフレキシブルフラットケーブルの接続構造であって、
前記フレキシブルフラットケーブルと前記中間配索部材とが略直角に配置されていることを特徴とするフレキシブルフラットケーブルの接続構造。
【0021】
このフレキシブルフラットケーブルの接続構造によれば、任意な傾斜角度で重ねられる中間配索部材が、特にフレキシブルフラットケーブルに直交して重ねられることで、フレキシブルフラットケーブルの平角導体のピッチを、斜めに重ねた場合に比べ小さなピッチ変換範囲(中間配索部材の幅のみの範囲)で変換できる。つまり、省スペースでのピッチ変換が可能となる。
【0022】
(8) (1)〜(7)のいずれか1つのフレキシブルフラットケーブルの接続構造であって、
前記中間配索部材が複数設けられそれぞれの中間配索部材毎に前記コネクタ端子がコネクタハウジングの異なる配置領域に挿入し係止されることを特徴とするフレキシブルフラットケーブルの接続構造。
【0023】
このフレキシブルフラットケーブルの接続構造によれば、一枚の平面状フレキシブルフラットケーブルに対し、複数の中間配索部材が接続され、それぞれの中間配索部材が異なる平面に配線されることで、コネクタハウジング後端に多段状に形成された異なる段のケーブル導出開口へ接続が可能となる。つまり、ピッチ変換(列変換)だけでなく、ケーブル導出開口の段変換(行変換)も可能となる。
【0024】
(9) 複数本の平角導体を並設したフレキシブルフラットケーブルと前記平角導体と異なる配列ピッチに配置される複数本のコネクタ端子とを接続するフレキシブルフラットケーブルの接続方法であって、
一端に前記コネクタ端子を連設するとともに、前記配列ピッチに応じて互いに異なる長さ寸法に設定した複数本の分岐導体を並設する中間配索部材を、前記フレキシブルフラットケーブルに対し同一平面上で傾けた状態に重ね合わせる工程と、
該中間配索部材の各分岐導体の他端を、前記平角導体のそれぞれに接続する工程と、
を実施することを特徴とするフレキシブルフラットケーブルの接続方法。
【0025】
このフレキシブルフラットケーブルの接続方法によれば、任意のピッチで並設された複数の平角導体を有するフレキシブルフラットケーブルに対し、中間配索部材が同一平面上で傾いて重ねられ、それぞれの分岐導体が平角導体の長手方向に沿う所望位置で平角導体に接続されることで、平角導体のピッチが、傾いて(直交して)接続されるそれぞれの分岐導体の離間距離となって変換される。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係るフレキシブルフラットケーブルの接続構造によれば、一端にコネクタ端子を連設するとともに、配列ピッチに応じて互いに異なる長さ寸法に設定した複数本の分岐導体を並設する中間配索部材を、フレキシブルフラットケーブルに対し同一平面上で傾けた状態に重ね合わせ、各分岐導体の他端をフレキシブルフラットケーブルの平角導体のそれぞれに接続したので、平角導体のピッチが、この平角導体に傾いて(直交して)接続されるそれぞれの分岐導体の離間距離により任意に変換され、モールド部形成用金型が不要になるとともに、コネクタ構造を複雑にせず、フレキシブルフラットケーブルをピッチ変換してコネクタ接続できる。この結果、生産性を向上させることができる。
【0027】
本発明に係るフレキシブルフラットケーブルの接続方法によれば、一端にコネクタ端子を連設するとともに、配列ピッチに応じて互いに異なる長さ寸法に設定した複数本の分岐導体を並設する中間配索部材を、フレキシブルフラットケーブルに対し同一平面上で傾けた状態に重ね合わせる工程と、中間配索部材の各分岐導体の他端を、平角導体のそれぞれに接続する工程と、を実施するので、平角導体のピッチが、この平角導体に傾いて(直交して)接続されるそれぞれの分岐導体の離間距離により任意に変換され、モールド部形成用金型を不要にし、コネクタ構造を複雑にせず、任意のピッチの平角導体を有するフレキシブルフラットケーブルを、ピッチ変換してコネクタ接続できる。この結果、生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施の形態に係る接続構造で接続されたコネクタとフレキシブルフラットケーブルの斜視図である。
【図2】図1に示したコネクタの後部を見た斜視図である。
【図3】図1に示した中間配索部材の斜視図である。
【図4】図1に示したフレキシブルフラットケーブルの斜視図である。
【図5】図3に示したコネクタ端子を備えた分岐導体の斜視図である。
【図6】別体のコネクタ端子を接合した変形例に係る中間配索部材の斜視図である。
【図7】外被と一体成形されたパッキンを有する中間配索部材の斜視図である。
【図8】外被一体のパッキンを用いた中間配索部材とコネクタとの間の止水構造を表す断面図である。
【図9】(a)はパッキン設置部の形成された中間配索部材の側面図、(b)はパッキン設置部にパッキンを装着した中間配索部材の側面図である。
【図10】は別体のパッキンを用いた中間配索部材とコネクタとの間の止水構造を表す断面図である。
【図11】(a)はフレキシブルフラットケーブルの上面に接続された異なる中間配索部材がケーブル導出開口の異なる配置領域に挿入されたコネクタの斜視図、(b)はフレキシブルフラットケーブルの上下面に接続された異なる中間配索部材がケーブル導出開口の異なる配置領域に挿入されたコネクタの斜視図である。
【図12】(a)はフレキシブルフラットケーブルの斜視図、(b)はコネクタの斜視図、(c)はコネクタの端子中心軸と直交する方向の断面図である。
【図13】モールド部にてピッチの変更を行う従来のコネクタ接続構造の断面図である。
【図14】方向転換チップを用いてピッチ変換を可変とした従来のFFCコネクタの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明の実施の形態に係る接続構造で接続されたコネクタとフレキシブルフラットケーブルの斜視図である。
本実施の形態に係るフレキシブルフラットケーブルの接続構造は、複数本の導体である帯状に形成された平角導体11を並設したフレキシブルフラットケーブル(以下、FFCとも称す。)13と、平角導体11と異なる配列ピッチに配置される複数本のコネクタ端子(後述する)を備えるコネクタ15との接続に好適に用いることができる。この他、本発明に係る接続構造は、コネクタ以外の各種電子機器、或いはフレキシブルフラットケーブル同士との接続に用いても好適なものである。
【0030】
本実施の形態に係る接続構造は、FFC13とコネクタ15との間に中間配索部材17を用いる。中間配索部材17は、コネクタ端子の配列ピッチに応じて整列した複数本の分岐導体19を有する。分岐導体19は、平角導体11と同様に同一平面上で帯状に形成され、例えば銅又は銅合金からなる。分岐導体19は、コネクタ端子の配列ピッチに応じて互いに異なる長さ寸法に設定され並設される。このため、分岐導体19の他端21は、図例のような例えば階段状となる。
【0031】
中間配索部材17は、FFC13に対し、同一平面上で傾けた状態に重ね合わせられる。重ね合わせた各分岐導体19は、他端21を平角導体11のそれぞれに接合部23で接続する。分岐導体19と平角導体11の接続は、FFC13の絶縁被覆25を皮むきして接続する。
【0032】
FFC13と中間配索部材17は、傾斜角度θが略直角(90度)となるように配置されている。任意な傾斜角度θで重ねることのできる中間配索部材17は、特にFFC13に直交して重ねられることで、FFC13の平角導体11のピッチを、斜めに重ねた場合(例えばθ>90度)に比べ、小さなピッチ変換範囲(すなわち、中間配索部材17の幅Wの範囲)で変換できる。つまり、省スペースでのピッチ変換が可能となる。
【0033】
図2は図1に示したコネクタの後部を見た斜視図である。
コネクタ15は、ハウジング29の後部にケーブル導出開口31が形成される。図例では2段のケーブル導出開口31が形成されるが、ケーブル導出開口31は1段であっても、2段以上の複数段であってもよい。コネクタ端子をコネクタ15の内部で接続した中間配索部材17は、ケーブル導出開口31からハウジング29の外部へ導出される。中間配索部材17が導出されたケーブル導出開口31には後処理にて、不図示の止水材が注入充填される。止水材は、ケーブル導出開口31と中間配索部材17の間隙を防水シールする。
【0034】
図3は図1に示した中間配索部材の斜視図である。
ケーブル導出開口31から導出される中間配索部材17は、外被33がポリプロピレン(PP)やポリブチレンテレフタレート(PBT)の樹脂被覆等により形成される。すなわち、コネクタ端子39の配列ピッチに合わせた所定ピッチで並設された複数の分岐導体19が、樹脂被覆による外被33によって離間された状態に一体形成され、絶縁性、可撓性を有するフレキシブルフラットケーブルとなる。本実施の形態では、樹脂被覆としてシリコンが用いられている。中間配索部材17は、樹脂被覆がシリコンとなることで、良好な屈曲性を有することとなり、フレキシブルフラットケーブルとコネクタとの接続が容易となる。さらに、屈曲性良好であることにより一括でコネクタ15への挿入が容易に可能となる。
【0035】
図4は図1に示したフレキシブルフラットケーブルの斜視図である。
中間配索部材17の分岐導体19と、FFC13の平角導体11との接続は、FFC13の絶縁被覆25を皮むきして形成した開口部35に平角導体11を表出させ、表出した導体露出部27に分岐導体19を超音波溶接や抵抗溶接、圧着、さらに半田付けや加締め等の方法で接続する。
【0036】
なお、FFC13と中間配索部材17の接続は、平角導体11又は分岐導体19の何れかを露出させた状態において、接続対象の接続部を加熱しつつ絶縁被覆25又は外被33に押圧することにより、絶縁被覆25又は外被33を溶融させて接続対象を接触させた後、溶接電流又は超音波振動を与えて溶接することによってなされてもよい。
【0037】
図5は図3に示したコネクタ端子を備えた分岐導体の斜視図である。
中間配索部材17は、それぞれの分岐導体19の一端37にコネクタ端子39を一体形成している。一体形成は、例えば分岐導体19を素板から切り取り加工する際にコネクタ端子39を同時に切り取ることにより行うことができる。また、コネクタ端子39は、コネクタ15に装着可能となる例えば凹部41等の係止手段を備えることができる。したがって、分岐導体19は、このコネクタ端子39を装着することでコネクタ15に直接接続されることとなる。
【0038】
この中間配索部材17によれば、分岐導体19の一端37がコネクタ端子39となり、分岐導体19がコネクタ15に直接接続可能となる。これにより、コネクタ15に予め分岐導体19を接続した中間配索部材17を、FFC13に一括接続したり、或いはFFC13に予め分岐導体19を介して接続した中間配索部材17のコネクタ端子39に、コネクタ15を装着したりする等、組み付けの自由度が高まる。
【0039】
図6は別体のコネクタ端子を接合した変形例に係る中間配索部材の斜視図である。
本実施の形態では、中間配索部材17において、コネクタ端子39が分岐導体19に一体形成されるが、コネクタ端子39Aは別体のものを分岐導体19の一端37に、接合部43にて接合するものであってもよい。これにより、複雑な形状のコネクタ端子39Aや希望板厚のコネクタ端子39Aの形成が容易となる。この接合部43におけるコネクタ端子39Aと分岐導体19との接合は、上記同様に、超音波溶接や抵抗溶接、圧着、さらに半田付けや加締め等の方法で行うことができる。
【0040】
図7は外被と一体成形されたパッキンを有する中間配索部材の斜視図、図8は外被一体のパッキンを用いた中間配索部材とコネクタとの間の止水構造を表す断面図である。
中間配索部材17とケーブル導出開口31の間隙は、上述のように後処理により充填された止水材により防水シールされるが、この他、中間配索部材17とケーブル導出開口31の間隙は、パッキンにより防水シールされてもよい。この場合、中間配索部材17にはハウジング29のケーブル導出開口31に嵌入するパッキン45を形成することができる。
【0041】
パッキン45は、外被33と一体成形する。分岐導体19を被覆加工する際、シリコン等により同時に成形できる。パッキン45を外被33に一体形成した中間配索部材17では、図8に示すように、中間配索部材17とコネクタ15とを接続するとき、ハウジング29から導出される中間配索部材17と、ケーブル導出開口31との間隙が、外被33に一体成形されたパッキン45によってシールされる。つまり、止水材を注入したり、別体のパッキンを組み付けたりする必要がなく、中間配索部材17の嵌入と同時に止水構造の形成が完了する。
【0042】
図9(a)はパッキン設置部の形成された中間配索部材の側面図、(b)はパッキン設置部にパッキンを装着した中間配索部材の側面図、図10は別体のパッキンを用いた中間配索部材とコネクタとの間の止水構造を表す断面図である。
また、中間配索部材17は、コネクタ端子寄り位置の外被33に別体のパッキン45Aを位置決めするパッキン設置部47が形成されてもよい。パッキン設置部47は、外被33の外周を削った周溝として形成することができる。図9中、49は、パッキン設置部47の両端側に外被33を膨出させて形成したパッキン45Aの位置ずれ防止部を示す。
【0043】
パッキン設置部47を形成し、このパッキン設置部47に別体のパッキン45Aを装着した中間配索部材17においても、図10に示すように、中間配索部材17とコネクタ15とを接続するとき、ハウジング29から導出される中間配索部材17と、ケーブル導出開口31との間隙が、パッキン設置部47に装着されたパッキン45Aによってシールされる。このように、パッキン設置部47を形成した中間配索部材17によれば、別体のパッキン45Aが外被33に取り付け可能となることにより、パッキン45Aの材質選定の自由度が高まるとともに、劣化したパッキン45Aの交換も可能となる。
【0044】
次に、フレキシブルフラットケーブルの接続方法の手順について説明する。
任意ピッチの平角導体11を有するFFC13と、異なる配列ピッチのコネクタ端子39を有するコネクタ15とを接続するには、先ず、コネクタ端子39の配列ピッチに一致させた分岐導体19を有する中間配索部材17を用意する。中間配索部材17は、上記したように各分岐導体19の一端37にコネクタ端子39を連設したものとすることができる。また、中間配索部材17は、コネクタ端子39を除く部分が外被33によって覆われている。さらに、中間配索部材17は、平角導体11の配列ピッチに応じて分岐導体19が互いに異なる長さ寸法に形成されている。
【0045】
この中間配索部材17を、FFC13に対し同一平面上で傾けた状態に重ね合わせる。次いで、中間配索部材17の各分岐導体19の他端21を、平角導体11のそれぞれに接続する。接続に当たり、予め中間配索部材17の他端21の外被33を除去し、分岐導体19を露出させておく。また、FFC13の絶縁被覆25を上記のように皮むきしておく。この状態で、コネクタ端子39の配列ピッチに合せた分岐導体19をFFC13の平角導体11に重ね合わせる。次いで、超音波溶接や抵抗溶接等により、平角導体11と分岐導体19とを接合する。
【0046】
中間配索部材17の他端21とFFC13とを接続した後、中間配索部材17の一端37に設けられたコネクタ端子39をコネクタ15に挿入する。中間配索部材17の一端37にパッキン45を一体形成した構成では、中間配索部材17の一端37がコネクタハウジング29のケーブル導出開口31に挿入されると、中間配索部材17とケーブル導出開口31の間隙がパッキン45によって止水されることとなる。これにより、FFC13とコネクタ15の接続が完了する。
【0047】
なお、上記接続方法の手順では、中間配索部材17をFFC13に接続した後、中間配索部材17にコネクタ15を接続することとしたが、これとは逆に、予め中間配索部材17のコネクタ端子39をコネクタ15に装着しておき、コネクタ15の接続された中間配索部材17をFFC13に接続してもよい。
【0048】
このように、上記したフレキシブルフラットケーブルの接続構造及び接続方法では、任意のピッチで並設された複数の平角導体11を有するFFC13に対し、中間配索部材17が同一平面上で傾いて重ねられ、それぞれの分岐導体19が平角導体11の長手方向に沿う所望位置で平角導体11に接続されることで、平角導体11のピッチが、傾いて(直交して)接続されるそれぞれの分岐導体19の離間距離となって変換される。これにより、一般的に狭ピッチのFFC13に合せてコネクタ15を接続しても、コネクタピッチと合わない場合であっても、中間配索部材17を使いFFC13に対してコネクタ15を接続することで、シンプルに通電構成を成立させることが可能となる。
【0049】
次に、本発明に係る他の実施の形態を説明する。
図11(a)はフレキシブルフラットケーブルの上面に接続された異なる中間配索部材がケーブル導出開口の異なる配置領域に挿入されたコネクタの斜視図、(b)はフレキシブルフラットケーブルの上下面に接続された異なる中間配索部材がケーブル導出開口の異なる配置領域に挿入されたコネクタの斜視図である。なお、図1〜図10に示した部材と同一の部材には同一の符号を付し重複する説明は省略するものとする。
この実施の形態による接続構造では、複数の中間配索部材17A,17Bがケーブル長手方向に異なった位置でFFC13に設けられ、それぞれの中間配索部材17A,17Bに設けられたコネクタ端子39(図5参照)がコネクタハウジング29Aの異なる配置領域であるケーブル導出開口31A,31Bに挿入される。
【0050】
コネクタ15Aは、ハウジング29Aの後部に、複数のケーブル導出開口31A,31Bを開口させている。各ケーブル導出開口31A,31Bは、ハウジング29A内に設けられた不図示の端子収容室に通じる。他の構成は上記実施の形態と同様である。
【0051】
この実施の形態では、図11(a)に示すように、1枚のFFC13の一方の面(上面)には、中間配索部材17Aと中間配索部材17Bが接続され、中間配索部材17Aは上段のケーブル導出開口31Aに挿入され、他の中間配索部材17Bは下段のケーブル導出開口31Bに挿入される。これにより、平角導体11のピッチが、それぞれの中間配索部材17A,17Bの分岐導体19の離間距離となって列変換されるとともに、異なる段のケーブル導出開口31A,31Bに行変換される。この例では、中間配索部材17A,17Bを2種類に分けて、1枚のFFC13から2つの違う行のケーブル導出開口31A,31Bに挿入したが、2つ以上の中間配索部材17を2つ以上のケーブル導出開口31に挿入してもよい。
【0052】
また、中間配索部材17A,17Bは、図11(b)に示すように、一方の中間配索部材17AをFFC13の上面で接続し、他方の中間配索部材17BをFFC13の他方の面(下面)で接続してもよい。このようにFFC13の両面を使用して接続を行えば、接続部の密集度を低くし、接続を容易にできる。
【0053】
このように、他の実施の形態に係る接続構造では、一枚のFFC13に対し、複数の中間配索部材17A,17Bが接続され、それぞれの中間配索部材17A,17Bが異なる平面に配線されることで、コネクタハウジング後端に多段状に形成された異なる段のケーブル導出開口31A,31Bへ接続が可能となる。つまり、ピッチ変換(列変換)だけでなく、ケーブル導出開口31A,31Bの段変換(行変換)も可能となる。
【0054】
したがって、上述した実施の形態によるフレキシブルフラットケーブルの接続構造によれば、一端37にコネクタ端子39を連設するとともに、配列ピッチに応じて互いに異なる長さ寸法に設定した複数本の分岐導体19を並設する中間配索部材17を、FFC13に対し同一平面上で傾けた状態に重ね合わせ、各分岐導体19の他端21をFFC13の平角導体11のそれぞれに接続したので、平角導体11のピッチが、この平角導体11に傾いて(直交して)接続されるそれぞれの分岐導体19の離間距離により任意に変換される。これにより、モールド部形成用金型が不要になるとともに、コネクタ構造を複雑にせず、しかも、簡易な止水構造で、FFC13をピッチ変換してコネクタ接続できる。この結果、生産性を向上させることができる。
【0055】
また、上述した実施の形態によるフレキシブルフラットケーブルの接続方法によれば、一端37にコネクタ端子39を連設するとともに、配列ピッチに応じて互いに異なる長さ寸法に設定した複数本の分岐導体19を並設する中間配索部材17を、FFC13に対し同一平面上で傾けた状態に重ね合わせる工程と、中間配索部材17の各分岐導体19の他端21を、平角導体11のそれぞれに接続する工程と、を実施するので、平角導体11のピッチが、この平角導体11に傾いて(直交して)接続されるそれぞれの分岐導体19の離間距離により任意に変換される。これにより、モールド部形成用金型を不要にし、コネクタ構造を複雑にせず、任意のピッチの平角導体11を有するFFC13を、ピッチ変換してコネクタ接続できる。この結果、生産性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0056】
11 平角導体
13 FFC(フレキシブルフラットケーブル)
17 中間配索部材
19 分岐導体
21 他端
29 コネクタハウジング
39 コネクタ端子
31A,31B ケーブル導出開口(コネクタハウジングの異なる配置領域)
33 分岐導体の外被
37 一端
45 パッキン
47 パッキン設置部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の平角導体を並設したフレキシブルフラットケーブルと前記平角導体と異なる配列ピッチに配置される複数本のコネクタ端子とを接続するフレキシブルフラットケーブルの接続構造であって、
一端に前記コネクタ端子を連設するとともに、前記配列ピッチに応じて互いに異なる長さ寸法に設定した複数本の分岐導体を並設する中間配索部材を具備し、
前記中間配索部材を前記フレキシブルフラットケーブルに対し同一平面上で傾けた状態に重ね合わせて該中間配索部材の各分岐導体の他端を前記平角導体のそれぞれに接続したことを特徴とするフレキシブルフラットケーブルの接続構造。
【請求項2】
請求項1記載のフレキシブルフラットケーブルの接続構造であって、
前記コネクタ端子が前記分岐導体に一体形成されていることを特徴とするフレキシブルフラットケーブルの接続構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のフレキシブルフラットケーブルの接続構造であって、
前記分岐導体の外被が樹脂被覆により形成されていることを特徴とするフレキシブルフラットケーブルの接続構造。
【請求項4】
請求項3記載のフレキシブルフラットケーブルの接続構造であって、
前記樹脂被覆がシリコンであることを特徴とするフレキシブルフラットケーブルの接続構造。
【請求項5】
請求項3又は請求項4記載のフレキシブルフラットケーブルの接続構造であって、
コネクタハウジングに嵌入するパッキンが前記外被と一体成形されていることを特徴とするフレキシブルフラットケーブルの接続構造。
【請求項6】
請求項3又は請求項4記載のフレキシブルフラットケーブルの接続構造であって、
前記中間配索部材のコネクタ端子寄り位置の外被にパッキンを位置決めするパッキン設置部が形成されていることを特徴とするフレキシブルフラットケーブルの接続構造。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載のフレキシブルフラットケーブルの接続構造であって、
前記フレキシブルフラットケーブルと前記中間配索部材とが略直角に配置されていることを特徴とするフレキシブルフラットケーブルの接続構造。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載のフレキシブルフラットケーブルの接続構造であって、
前記中間配索部材が複数設けられそれぞれの中間配索部材毎に前記コネクタ端子がコネクタハウジングの異なる配置領域に挿入し係止されることを特徴とするフレキシブルフラットケーブルの接続構造。
【請求項9】
複数本の平角導体を並設したフレキシブルフラットケーブルと前記平角導体と異なる配列ピッチに配置される複数本のコネクタ端子とを接続するフレキシブルフラットケーブルの接続方法であって、
一端に前記コネクタ端子を連設するとともに、前記配列ピッチに応じて互いに異なる長さ寸法に設定した複数本の分岐導体を並設する中間配索部材を、前記フレキシブルフラットケーブルに対し同一平面上で傾けた状態に重ね合わせる工程と、
該中間配索部材の各分岐導体の他端を、前記平角導体のそれぞれに接続する工程と、
を実施することを特徴とするフレキシブルフラットケーブルの接続方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−14392(P2011−14392A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−157870(P2009−157870)
【出願日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】