説明

フレキシブルフラットケーブル

【課題】誘電率が小さく且つ脆性破壊しにくいフレキシブルフラットケーブルを提供する。
【解決手段】発泡ポリエステル系樹脂絶縁層(1a,1b)と、発泡ポリエステル系樹脂絶縁層(1a,1b)の間に積層されたポリオレフィン系接着剤層(2)と、ポリオレフィン系接着剤層(2)に埋設された複数の導体線(3a〜3d)とを具備し、ポリオレフィン系接着剤層(2)の誘電率を発泡ポリエステル系樹脂絶縁層(1a,1b)の誘電率よりも小さくする。
【効果】誘電率を小さくするため、主としてポリオレフィン系接着剤層(2)の誘電率を小さくし、発泡ポリエステル系樹脂絶縁層(1a,1b)の誘電率はそれよりも大きくする。ケーブルとしての誘電率を小さく出来ると共に、発泡率を高くして発泡ポリエステル系樹脂絶縁層の誘電率を小さくする必要がないため、フレキシブルフラットケーブルが脆性破壊しやすくなることを回避できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルフラットケーブルに関し、さらに詳しくは、誘電率が小さく且つ脆性破壊しにくいフレキシブルフラットケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発泡ポリエステル系樹脂絶縁層とポリオレフィン系接着剤層とを一体化したフレキシブルフラットケーブル用絶縁テープが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−251261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のフレキシブルフラットケーブル用絶縁テープでは、誘電率を小さくするため、主として発泡ポリエステル系樹脂絶縁層の誘電率を小さくしており、ポリオレフィン系接着剤層の誘電率はそれよりも大きくなっている。例えば発泡ポリエステル系樹脂絶縁層の誘電率を2.5または2.2と小さくし、ポリオレフィン系接着剤層の誘電率は2.77としている。
しかし、発泡ポリエステル系樹脂絶縁層の誘電率を小さくするためには、発泡率を高くしなければならず、フレキシブルフラットケーブルが脆性破壊しやすくなる問題点がある。
そこで、本発明の目的は、誘電率が小さく且つ脆性破壊しにくいフレキシブルフラットケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の観点では、本発明は、発泡ポリエステル系樹脂絶縁層(1a,1b,1)と、前記発泡ポリエステル系樹脂絶縁層(1a,1b,1)に積層されたポリオレフィン系接着剤層(2)と、前記ポリオレフィン系接着剤層(2)に埋設された複数の導体線(3a〜3d)とを具備し、前記ポリオレフィン系接着剤層(2)の誘電率を前記発泡ポリエステル系樹脂絶縁層(1a,1b,1)の誘電率よりも小さくしたことを特徴とするフレキシブルフラットケーブル(101,102)を提供する。
上記第1の観点によるフレキシブルフラットケーブル(101,102)では、誘電率を小さくするため、主としてポリオレフィン系接着剤層(2)の誘電率を小さくし、発泡ポリエステル系樹脂絶縁層(1a,1b,1)の誘電率はそれよりも大きくしている。例えばポリオレフィン系接着剤層(2)の誘電率を2.4と小さくし、発泡ポリエステル系樹脂絶縁層の誘電率は2.8とする。これにより、フレキシブルフラットケーブルとしての誘電率を小さく出来ると共に、発泡率を高くして発泡ポリエステル系樹脂絶縁層の誘電率を小さくする必要がないため、フレキシブルフラットケーブルが脆性破壊しやすくなることを回避できる。
【0006】
第2の観点では、本発明は、前記第1の観点によるフレキシブルフラットケーブル(101,102)において、前記発泡ポリエステル系樹脂絶縁層(1a,1b,1)の誘電率を2.4〜3.0とし、前記ポリオレフィン系接着剤層(2)の誘電率を2.1〜2.7とすることを特徴とするフレキシブルフラットケーブル(101,102)を提供する。
上記第2の観点によるフレキシブルフラットケーブル(101,102)において、発泡ポリエステル系樹脂絶縁層(1a,1b,1)の誘電率を2.4より小さくすることは脆性破壊の観点から好ましくなく、3.0よりも上げると所望のインピーダンスを得にくくなる。脆性破壊とインピーダンスのバランスを考慮すると、より好ましい範囲は2.6〜2.8である。発泡ポリエステル系樹脂絶縁層(1a,1b,1)の発泡率は、10〜50%とする。10%より低くすると、誘電率が3.0よりも大きくなってしまう。また、50%よりも高くすると、フィルムとしての剛性が劣り、使用できなくなる。
また、ポリオレフィン系接着層(2)の誘電率を2.1よりも下げることは難燃性の観点から好ましくなく、2.7よりも上げると所望のインピーダンスを得にくくなる。難燃性とインピーダンスのバランスを考慮すると、より好ましい範囲は2.5〜2.6である。
【発明の効果】
【0007】
本発明のフレキシブルフラットケーブル(101,102)によれば、誘電率を小さく出来ると共に、脆性破壊しにくくすることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例1に係る両面シールド・フレキシブルフラットケーブルを示す断面図である。
【図2】実施例1に係る両面シールド・フレキシブルフラットケーブルの各種数値例を示す図表である。
【図3】実施例1に係る両面シールド・フレキシブルフラットケーブルおよび比較例のクロストーク特性を示すグラフである。
【図4】実施例1に係る両面シールド・フレキシブルフラットケーブルおよび比較例の減衰特性を示すグラフである。
【図5】実施例1に係る両面シールド・フレキシブルフラットケーブルおよび比較例のアイパターンおよびジッタ特性を示すグラフである。
【図6】フレキシブルフラットケーブルの回復性試験方法を示す説明図である。
【図7】実施例1に係る両面シールド・フレキシブルフラットケーブルの回復性試験結果を示す図表である。
【図8】実施例2に係る片面シールド・フレキシブルフラットケーブルを示す断面図である。
【図9】実施例2に係る片面シールド・フレキシブルフラットケーブルの各種数値例を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図に示す実施の形態により本発明をさらに詳細に説明する。なお、これにより本発明が限定されるものではない。
【実施例】
【0010】
−実施例1−
図1は、実施例1に係る両面シールド・フレキシブルフラットケーブル101を示す断面図である。
この両面シールド・フレキシブルフラットケーブル101は、第1の発泡PET絶縁層1aと、第1のPET絶縁層1aの上面に積層されたポリオレフィン系接着剤層2と、ポリオレフィン系接着剤層2に埋設された複数の導体線3a〜3dと、第1の発泡PET絶縁層1aの下面に積層された第1の接着剤層5aと、第1の接着剤層5aの下面に積層されたアルミ・シールド層7aおよびPET絶縁層6aからなる第1の積層テープと、ポリオレフィン系接着剤層2の上面に積層された第2の発泡PET絶縁層1bと、第2の発泡PET絶縁層1bの上面に積層された第2の接着剤層5bと、第2の接着剤層5bの上面に積層されたアルミ・シールド層7bおよびPET絶縁層6bからなる第2の積層テープとを具備してなる。
【0011】
ポリオレフィン系接着剤層2の誘電率は例えば2.4である。ポリオレフィン系接着剤層2は、ポリオレフィン100重量部に臭素系難燃剤30重量部とアンチモン系難燃剤10重量部とその他添加剤2重量部を入れている。
無機フィラーの添加を行わないことで、ポリオレフィン系接着剤層2の誘電率が大きくなるのを回避することが出来る。
【0012】
第1の発泡PET絶縁層1aおよび第2の発泡PET絶縁層1bの誘電率は例えば2.8である。発泡PET絶縁層1a,1bは、ポリエステル80重量部とポリオレフィン系樹脂10重量部に二酸化チタン10重量部と芳香族系樹脂その他添加剤6重量部を入れている。発泡率は20%位に制御している。
発泡PET絶縁層1a,1bの誘電率を小さくする必要がないため、発泡率を下げることができ、脆性破壊しやすくなることを回避できる。
【0013】
図2は、両面シールド・フレキシブルフラットケーブル101の各種数値例を示す図表である。
【0014】
図3のaは、両面シールド・フレキシブルフラットケーブル101のクロストーク特性を示すグラフである。
図3のbは、ポリオレフィン系接着剤層2の代わりに誘電率が3.6のポリエステル系接着剤層を用いた以外は両面シールド・フレキシブルフラットケーブル101と同構造の比較例のクロストーク特性を示すグラフである。
図3のaは、bよりもクロストークが約10[dB]低減している。
【0015】
図4のaは、両面シールド・フレキシブルフラットケーブル101の減衰特性を示すグラフである。
図4のbは、ポリオレフィン系接着剤層2の代わりに誘電率が3.6のポリエステル系接着剤層を用いた以外は両面シールド・フレキシブルフラットケーブル101と同構造の比較例の減衰特性を示すグラフである。
図4のaは、bよりも減衰特性が向上している。
【0016】
図5の(a)は、両面シールド・フレキシブルフラットケーブル101のアイパターンおよびジッタ特性を示すグラフである。
図5の(b)は、ポリオレフィン系接着剤層2の代わりに誘電率が3.6のポリエステル系接着剤層を用いた以外は両面シールド・フレキシブルフラットケーブル101と同構造の比較例のアイパターンおよびジッタ特性を示すグラフである。
クロストークが約10[dB]改善していることと減衰特性の改善も有り、図5の(a)は、(b)に較べ、振幅も大きく、開口率も大きくなっている。また、ジッタ特性を340psから200psに改善することが出来た。
【0017】
図6は、回復性試験方法を示す説明図である。
(1)両面シールド・フレキシブルフラットケーブル101で周長600mmのループLを作る。
(2)ループLを支持棒Sにぶら下げてクランプCで押さえる。
(3)ループLの下端を負荷荷重gで引き下げる。
(4)ループLの横幅W(g)を測定する。
(5)負荷荷重gを除去して、3分後のループLの横幅W(0)を測定する。
【0018】
図7は、測定結果を示す図表である。
負荷荷重g=4[N]を掛けても脆性破壊しないことが判った。また、負荷荷重g=8[N]を掛けても脆性破壊しなかった。
【0019】
実施例1の両面シールド・フレキシブルフラットケーブル101によれば、誘電率を小さくするため、主としてポリオレフィン系接着剤層2の誘電率を小さくし、発泡PET絶縁層1a,1bの誘電率はそれよりも大きくしている。これにより、フレキシブルフラットケーブルとしての誘電率を小さく出来ると共に、脆性破壊しやすくなることを回避できる。
【0020】
−変形例1−
ポリオレフィン系接着層2の誘電率を2.1にすると共に発泡PET絶縁層1a,1bの誘電率を2.4〜3.0の間で変えたが、特性に問題はなかった。
【0021】
−変形例2−
発泡PET絶縁層1a,1bの誘電率を2.8にすると共にポリオレフィン系接着層2の誘電率を2.1〜2.7の間で変えたが、特性に問題はなかった。
【0022】
−実施例2−
図8は、実施例2に係る片面シールド・フレキシブルフラットケーブル102を示す断面図である。
この片面シールド・フレキシブルフラットケーブル102は、発泡PET(ポリエチレンテレフタレート)絶縁層1と、発泡PET絶縁層1の上面に積層されたポリオレフィン系接着剤層2と、ポリオレフィン系接着剤層2に埋設された複数の導体線3a〜3dと、ポリオレフィン系接着剤層2の上面に積層された難燃PET被覆層4と、発泡PET絶縁層1の下面に積層された接着剤層5と、接着剤層5の下面に積層されたPET絶縁層6およびアルミ・シールド層7からなる積層テープと、アルミ・シールド層7の下面に積層された接着剤層8と、接着剤層8の下面に積層されたPET絶縁層9とを具備してなる。
【0023】
ポリオレフィン系接着剤層2の誘電率は例えば2.4である。ポリオレフィン系接着剤層2は、ポリオレフィン100重量部に臭素系難燃剤30重量部とアンチモン系難燃剤10重量部とその他添加剤2重量部を入れている。
有機フィラーの添加を行わないことで、ポリオレフィン系接着剤層2の誘電率が大きくなるのを回避することが出来る。
【0024】
発泡PET絶縁層1の誘電率は例えば2.8である。発泡PET絶縁層1は、ポリエステル80重量部とポリオレフィン系樹脂10重量部に二酸化チタン10重量部と芳香族系樹脂その他添加剤6重量部を入れている。発泡率は20%位に制御している。
発泡PET絶縁層1の誘電率を小さくする必要がないため、発泡率を下げることができ、脆性破壊しやすくなることを回避できる。
【0025】
図9は、片面シールド・フレキシブルフラットケーブル102の各種数値例を示す図表である。
【0026】
実施例2の片面シールド・フレキシブルフラットケーブル102によれば、誘電率を小さくするため、主としてポリオレフィン系接着剤層2の誘電率を小さくし、発泡PET絶縁層1の誘電率はそれよりも大きくしている。これにより、フレキシブルフラットケーブルとしての誘電率を小さく出来ると共に、脆性破壊しやすくなることを回避できる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明のフレキシブルフラットケーブルは、例えば500MHzの高速伝送ケーブルとして利用することが出来る。
【符号の説明】
【0028】
1,1a,1b 発泡PET絶縁層
2 ポリオレフィン系接着剤層
3a〜3b 導体線
4 難燃PET被覆層
5,5a,5b 接着剤層
6,6a,6b PET絶縁層
7,7a,7b アルミ・シールド層
8 接着剤層
9 難燃PET被覆層
101 片面シールド・フレキシブルフラットケーブル
102 両面シールド・フレキシブルフラットケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡ポリエステル系樹脂絶縁層(1a,1b,1)と、前記発泡ポリエステル系樹脂絶縁層(1a,1b,1)に積層されたポリオレフィン系接着剤層(2)と、前記ポリオレフィン系接着剤層(2)に埋設された複数の導体線(3a〜3d)とを具備し、前記ポリオレフィン系接着剤層(2)の誘電率を前記発泡ポリエステル系樹脂絶縁層(1a,1b,1)の誘電率よりも小さくしたことを特徴とするフレキシブルフラットケーブル(101,102)。
【請求項2】
請求項1に記載のフレキシブルフラットケーブル(101,102)において、前記発泡ポリエステル系樹脂絶縁層(1a,1b,1)の誘電率を2.4〜3.0とし、前記ポリオレフィン系接着剤層(2)の誘電率を2.1〜2.7とすることを特徴とするフレキシブルフラットケーブル(101,102)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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