説明

フレキシブルプリント回路基板用ポリアミドフィルム

本発明は、少なくとも270℃の融解温度(Tm)を有する半結晶性半芳香族ポリアミドを少なくとも80重量%(wt.%)含むポリアミド組成物から作られるポリマーフィルム(ただし、wt.%はポリマー組成物の総重量を基準とする)に関し、このポリマーフィルムは、ASTM D969−08に準拠した方法により面内で測定される20℃〜Tgの温度範囲内で最大40ppm/Kの面内平均熱膨張係数を有する。上記フィルムは、上記ポリアミドを含むポリアミド成形用組成物からフィルム注型成形、続いて二軸延伸によって作ることができる。このフィルムは、フレキシブルプリント回路基板におけるキャリアフィルムに適した特性を有する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、電気的用途に使用されるポリマーフィルム、具体的にはフレキシブルプリント回路基板においてキャリアとして使用することができる高耐熱性ポリマーフィルムに関する。
【0002】
プリント回路基板すなわちPCBは、電子部品を機械的に支持するために、またそれらを非導電性基板またはキャリア上に積層される導電性金属層からエッチングされた導電性の経路、軌道、または掃引線を用いて電気的に接続するために使用される。PCBはまた、プリント配線板(PWB)または食刻配線板とも呼ばれる。電子部品を装着したPCBはプリント回路組立品(PCA)として表示され、それはプリント回路基板組立品(PCBA)としても知られる。
【0003】
PCBは、ワイヤラップ回路または空中配線回路(point−to−point constructed circuit)のいずれよりも大量生産に適し、かつ安価である。最近ではPCBの使用は、消費者製品におけるE&E用途の数の増加と、より小型の電子回路パッケージングおよびよりすぐれた機能性に対する要求の持続との結果として非常に増大している。
【0004】
PCBにおける導電層は、一般に薄い銅箔または銅クラッディングで作られる。キャリアには、しばしば絶縁層または誘電体、例えばポリテトラフルオロエチレン(Teflon)が、繊維補強エポキシ樹脂プリプレグなどの樹脂プリプレグと共に貼り合わせられる。熱膨張は重要な考慮事項であり、ガラス繊維補強が最も良い寸法安定性を与える。
【0005】
導電層を得るには様々な方法が用いられる。大部分のプリント回路基板は、基板全体を覆って、時には両面に銅の層を接着させ、次いで一次的なマスクを(例えばエッチングにより)塗布した後に所望の銅の掃引線のみを残して不要な銅を除去することによって製造される。時にはPCBは、裸の基板(またはきわめて薄い銅の層を有する基板)に、一般に多段電気めっきのステップの複雑な工程により掃引線を加えることによって製造される。
【0006】
プリント回路基板(PCB)の完成後、機能しうる「プリント回路基板組立品(PCBA)」を形成するには電子部品を取り付けなければならない。スルーホール構造では、部品リード線が孔に挿入される。表面実装構造では、構成部品はPCBの外面のパッドまたはランド上に配置される。これら両方の種類の構造では部品リード線は、融解金属はんだにより基板に電気的かつ機械的に固定される。別法ではフリップチップ部品が利用され、これもまた高熱加工を必要とする可能性がある。最近ではボードラミネーションおよびエッチングの技術の開発に伴い、表面実装のコンセプトが標準的なプリント回路基板製造方法に発展してきた。
【0007】
構成部品をPCBに取り付けるために使用される様々なはんだ付技術が存在する。一般に大量生産は、機械の配置、およびバルク波はんだ付またはリフローオーブンにより行われる。表面実装は、高度な自動化と、人件費の削減と、生産速度および良品率の顕著な向上に非常に役立つ。
【0008】
自動化およびPCBの小型化をさらに高度化することを含めた複数の理由により、剛性キャリアではないフレキシブルフィルムが使用される。このようなポリマーフィルムはまた、キャリアテープとも呼ばれる。その対応するフレキシブルプリント回路基板もまたフレキシブルプリント回路基板と表示され、PCBではなくFCBの名称を有する。
【0009】
使用されるはんだ付工程は高温、例えば250℃か、またはさらに高い温度で行われる傾向があり、それは耐高温性と、良好な寸法安定性と、良好な誘電特性とを有する材料を必要とする。さらにそのような材料は良好な耐湿性を有しなければならない。というのはそれが、その他の点ではんだ付工程を、かつ/またはそのように生産されるPCAの長寿命を確実なものにできるからである。
【0010】
FCB用キャリアテープに最も広く使用されている材料は、商用名Kaptonで一般に知られているポリイミド(PI)である。KaptonはDuPontによって開発されたポリイミドフィルムであり、−273から+400℃(0〜673K)の広範囲の温度において安定な状態のままであることができる。Kaptonは、熱性微小流星物質防御ガーメントや宇宙服の外層などの、とりわけフレキシブルプリント基板(フレキシブルエレクトロニクス)に使用される。Kaptonの欠点は、それらのフィルムが高価なモノマーから生産され、かつ溶液注型成形法を必要とするので非常に高価であることである。FCBにおいてキャリアテープ用に考えられる他の材料は、例えばポリエーテルエーテルケトン(PEEK)および液晶ポリマー(LCP)(これらもまたどちらかと言えば高価である)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリエチレンナフタナート(polyethylenenaphthanate)(PEN)、および商用名Ultemで一般に知られているポリエーテルイミド(PEI)である。これらのうち後半のものは、それらすべての材料が一般にPIおよびPEEKよりも高価でないが、温度使用範囲がより限定されている。Ultemは、もとはGeneral Electricによって製造されたPEI製品の系列である。その固有の高絶縁耐力、自然耐燃性、およびきわめて低い発煙性は、それをE&E用途に非常に適したものにした。しかしながらPEIは、ガラス転移温度が約216℃の非晶質熱可塑性樹脂であり、その結果、現在ではPEIは耐高温性がより劣り、それがPEIをキャリアテープに使用するのにあまり適さないものにする。PENおよびPETはきわめて良好な寸法特性(特に湿潤条件下における)および誘電特性を有する。PENおよびPETは、幾つかのはんだ付法にとってはまだ危険な約240〜260℃の融解温度を有する半結晶性ポリエステルである。
【0011】
したがって、良好な寸法安定性、耐高温性、および良好な誘電特性を有する経済的に有利なポリマーフィルムの必要性が存在する。
【0012】
本発明の目的は、PIおよびPEEKよりも安価な材料から製造することができ、PEIよりもすぐれた耐高温性を有し、かつ良好な寸法安定性および良好な誘電特性を有する、FCBにおいてキャリアテープとして使用されるポリマーフィルムを提供することである。もちろんこれらフィルムは、均一でかつ欠陥がないという点から見ても良好な品質を有さなければならない。さらなる目的は、そのようなポリマーフィルムを経済的なやり方および/または環境により優しいやり方で生産するための方法を提供することである。
【0013】
この目的は、本発明によるポリマーフィルムおよび方法により達成された。
【0014】
本発明は、少なくとも270℃の融解温度(Tm)を有する半結晶性半芳香族ポリアミドを少なくとも80重量%(wt.%)含むポリアミド組成物から作られる二軸延伸ポリマーフィルムに存する(ただし、このwt.%はポリマー組成物の総重量を基準とする)。
【0015】
上記ポリアミド組成物から作られ、必要とされる特性を有するポリマーフィルムは、まずポリマー組成物を溶融加工するステップ、その溶融液を注型成形してフィルムにするステップ、そのフィルムを二軸延伸するステップ、およびその二軸延伸したフィルムを高温でヒートセットするステップを含む厳密なプロセスウィンドウを適用する方法により得ることができる。
【0016】
上記ポリマー組成物から作られ、上記方法によって得られるポリマーフィルムは、広い温度範囲にわたって低い熱膨張係数を有する。さらに上記ポリマーフィルムは、PEIよりもすぐれた耐高温性を有し、またより安価な材料から作ることができ、かつPIフィルムよりも環境に優しい方法によって生産される。
【0017】
したがって本発明はまた、低い熱膨張係数を有するポリアミドフィルムに存する。適切には本発明によるポリマーフィルムは、最大40.10−6/Kの、また別の方法で表せば最大40ppm/Kの、面内で測定される熱膨張係数(TEC)を有する。上記面内熱膨張係数は、本明細書中ではTECipとしてもまた表示されることになる。TECipは、10〜30ppm/Kの範囲が好都合であり、好ましくは25ppm/Kよりも低い。面内熱膨張係数TECipとは、本明細書中では20℃〜Tgの温度範囲にわたって面内で測定されるASTM D969−08に準拠した方法で測定された平均熱膨張係数と解釈される。Tgとは、本明細書中ではポリアミドフィルムのガラス転移温度と解釈される。Tgを超えると5〜20ppm/Kの範囲にある、さらにずっと低いTECが観察された。
【0018】
良好な品質を有し、かつそのような良好な熱的性質を有するポリマーフィルムは、半結晶性脂肪族ポリアミドからは得ることができず、また適切な条件下で加工されない場合は半結晶性半芳香族ポリアミドからも得ることができないが、一方、完全芳香族ポリアミドは全く溶融加工することができないことが分かる。通常の未延伸ポリアミドフィルムの場合、Tg未満では約80ppm/KのTEC値が観察され、一方、Tg超での対応する測定値については120〜200ppm/Kもの高い値が観察された。
【0019】
ポリアミドは、水分の影響をきわめて受けやすく、湿潤条件下で比較的大きな寸法変化を示し、それがポリアミドを多くの電気かつ/または電子用途にあまり適さないものにすることが一般に知られている。これが、フィルムとその上に搭載される構成部品との間の張力を引き起こす恐れがある。湿潤条件にさらされた場合、本発明によるポリマーフィルムは、面方向の著しく低い膨張を示す。
【0020】
適切には本発明によるポリマーフィルムは、最大140.10−6/%RH(140ppm/%RHとしても表される)の、面内で測定される吸湿膨張係数(CHE)を有する。上記面内吸湿膨張係数は、本明細書中ではCHEipとしてもまた表示されることになる。CHEipは、好都合には40〜120ppm/Kの範囲内であり、好ましくは100ppm/Kよりも低い。
【0021】
面内熱膨張係数CHEipとは、下記にさらに述べる方法により本明細書中では50%相対湿度(RH)でコンディショニングしたフィルムについて25℃未満で測定し、対応する乾燥フィルムの測定値と比較した吸湿膨張係数と解釈される。
【0022】
このような低い熱膨張係数および低い吸湿膨張係数を有するポリマーは、高い固有結晶化度を有する半結晶性半芳香族ポリマーを使用することにより、かつ/または高い二軸延伸度および/または高温範囲で長時間のヒートセットを生産工程に適用することによって得ることができる。
【0023】
本発明によるポリマーフィルムにおけるポリマー組成物は、半結晶性半芳香族ポリアミドを含む。半結晶性ポリマーとは、本明細書中では部分的に結晶性かつ部分的に非晶質であるポリマーと解釈される。換言すれば上記ポリアミドは、非晶質相の隣に結晶相を含む。結晶相の存在は、吸熱融解ピークを示す標準的な方法、例えばDSC測定により明らかにすることができる。非晶質相の存在もまた、発熱転移を示す標準的な方法、例えばDSC測定により明らかにすることができる。
【0024】
半結晶性ポリマーの結晶化度は、その半結晶性ポリマーの温度プロフィールおよび加工履歴によって決まる。固有結晶化度という用語は、半結晶性ポリマーに関して最適加工条件下で得ることができる最大結晶化度を意味する。最も実際的な状況では加工後の半結晶性ポリマーは結晶相を有しない、すなわちその結晶相を完全に発達させる必要がない。したがって本質的に半結晶性ポリマーは結晶相を全く有しないか、または少量の結晶相のみを有する。様々な半結晶性ポリマーの固有結晶化度を迅速にスクリーニングするには、それらのポリマーを同一の準最適(sub−optimal)条件下で加工し、結晶相の量に関係する尺度としての融解エンタルピーを比較することによって結晶化度を比較する。迅速なスクリーニングの実行しうる手法は、ポリマーフィルムに関して下記で述べるように、DSCによって第一加熱ランでではなく第二加熱ランでポリマーの融解エンタルピーを測定することによるものである。
【0025】
ポリマーフィルムに関して測定される融解エンタルピーという用語は、本明細書中ではASTM D3418−03に準拠した方法でDSCにより第一加熱ランにおいて加熱速度10℃/分で測定される吸熱エネルギーと解釈される。
【0026】
上記によればフィルム調製用に使用されるポリマー組成物、すなわちポリマー成形用組成物に関して測定される固有融解エンタルピーは、本明細書中ではASTM D3418−03に準拠した方法でDSCにより第二加熱ランにおいて加熱速度10℃/分で測定される吸熱エネルギーと解釈される。
【0027】
ポリマーフィルムに関して測定される融解温度という用語は、本明細書中ではASTM D3418−03に準拠した方法でDSCにより第一加熱ランにおいて加熱速度10℃/分で測定される融解温度と解釈される。本明細書中では融解吸熱の最大ピークを融解温度とみなす。
【0028】
ポリマー成形用組成物に関して測定される融解温度という用語に関しては、本明細書中ではASTM D3418−03に準拠した方法でDSCにより第二加熱ランにおいて加熱速度10℃/分で測定される融解温度と解釈される。本明細書中では融解吸熱の最大ピークを融解温度とみなす。
【0029】
本明細書中で使用される高分子フィルムに関して測定されるガラス転移温度(Tg)という用語は、ASTM E1356−91に準拠した方法でDSCにより第一加熱ランにおいて加熱速度10℃/分で測定され、ガラス転移域内にあり、かつ最高ガラス転移速度を示す温度と解釈される。その最高ガラス転移速度を示す温度は、親熱曲線の変曲点に対応する親熱曲線の一次導関数(時間に関する)のピークにおける温度として求められる。
【0030】
ポリマーフィルム中のポリマー組成物に含まれる半結晶性半芳香族ポリアミドの融解温度は少なくとも270℃であり、広範囲にわたって変えることができる。融解温度は350℃と同じか、またはそれ以上であるのが適切であり、好ましくは280〜345℃の範囲内、より好ましくは290〜340℃の範囲内にある。融解温度は、例えば300℃、310℃、320℃、または330℃であることができる。ポリマーフィルムは、最低融解温度が高いほどすぐれた熱的および寸法的性質を有する。ポリマー組成物は、最高融解温度が低いほどキャストフィルムに加工しやすい。
【0031】
本発明によりポリマーフィルムに使用されるポリマー組成物における半結晶性半芳香族ポリアミドは、適切には、または本質的に、少なくとも25J/gの融解エンタルピーを有する。好ましくはポリマーフィルムの融解エンタルピーは、少なくとも25J/g、より好ましくは少なくとも35J/g、さらに一層好ましくは少なくとも40J/g、さらに一層好ましくは少なくとも50J/gである。本発明によれば、融解エンタルピーは、その半結晶性半芳香族ポリアミドの主として融点に関係があるものとし、したがって270〜350℃の温度範囲内にあるか、またはそれに近いものとする。好ましくは測定される融解エンタルピーの少なくとも50%、より好ましくは少なくとも75%が270〜350℃の温度範囲内にあるものとする。
【0032】
ポリマーフィルムの融解エンタルピーが高いほど、高温における耐熱性および寸法安定性がすぐれており、また機械的性質もより良好であり、熱膨張もより小さい。特にフィルムの延伸およびヒートセットの後、溶融(melt)エンタルピーは増大し、70J/gを軽く超え、90J/g以上の値さえも達成することができ、90J/gより大きい値を達成する可能性もある。これらフィルムは120J/g以上もの高い溶融エンタルピーを有することができるが、融解エンタルピーが25〜100J/gの範囲内にあれば、すでにきわめて良好な特性が得られている。
【0033】
ポリマーフィルムに使用される半結晶性半芳香族ポリアミドは、ジカルボン酸およびジアミンから誘導される反復単位を有するポリアミドであることができ、ここで、そのジカルボン酸またはジアミンのどちらか一方、または両方が芳香族成分を含み、一方、その残りは脂肪族ジカルボン酸および/またはジアミンを含み、それらは直鎖状、分枝状、または環状、および/またはアリール脂肪族ジカルボン酸およびジアミンであることができる。
【0034】
好適な芳香族ジカルボン酸の例は、テレフタル酸およびイソフタル酸である。好ましくは半結晶性半芳香族ポリアミドは、ジカルボン酸としてテレフタル酸から誘導される反復単位を含む。好適な芳香族ジアミンの例は、メタ−キシレンジアミンおよびパラ−キシレンジアミンである。
【0035】
好適な半結晶性半芳香族ポリアミドの例には、270〜350℃の範囲の融解温度を有するPA7T、PA9T、PA10T、およびPA12Tなどのホモポリアミド、ならびに例えばPA7T、PA9T、PA10T、PA11T、PA12T、PA6、PA66、および/またはPMXD6と、PA4T、PA5T、PA6T、および/またはPA8Tとのコポリアミドが挙げられる。ホモポリマーPA4T、PA5T、PA6T、およびPA8Tは、340℃を超える融解温度を有するが、それらコポリマーを340℃より低い融解温度を有するように配合することができる。好適なコポリアミドには、PA10T/6T、PA9T/M8T(ただし、M8=2−メチルオクタメチレンジアミン)、PA6T/5T、PA6T/M5T(ただし、M5=2−メチルペンタメチレンジアミン)、およびPA6T/10Tが挙げられる。これらポリアミドは、上記コポリアミドで述べた反復単位に隣接して他のジアミンおよびジカルボン酸の他の反復単位を含むことができ、こうしてより複雑なコポリアミドを形成する。好適な半結晶性半芳香族コポリアミドの更なる例については、Kunststoff Handbuch(Carl Hanser Verlag 1998)Band 3/4 Polyamide chapter 6を参照されたい。
【0036】
より高い融解温度は、例えばより多量のテレフタル酸、および/または脂環式もしくは芳香族ジアミン、あるいは短鎖の直鎖状脂肪族ジアミンを用いて達成することができる。熟練者は、普通の一般的知識および定型的実験を用いて融点を合わせることができる。
【0037】
本発明の一つの特定の実施形態では、二軸延伸ポリマーフィルム中の半結晶性半芳香族コポリアミドは、ジカルボン酸およびジアミンから誘導される反復単位、アミノカルボン酸および/または環状ラクタムから誘導される反復単位、および場合により他の単位からなり、
(a)ジカルボン酸が、
− 70〜100モル%のテレフタル酸、および
− 0〜30モル%のテレフタル酸とは異なる芳香族ジカルボン酸および/または脂肪族ジカルボン酸
からなり、
(b)ジアミンが、
− エチレンジアミン、1,3−プロピレントリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、および2−メチル−ペンタメチレンジアミンからなる群から選択される0〜60モル%のジアミン、および
− 40〜100モル%の少なくとも6個のC原子を含むジアミン
からなり、
(c)アミノカルボン酸および/または環状ラクタムから誘導される単位が、ジカルボン酸、ジアミン、アミノカルボン酸および/または環状ラクタムから誘導される反複単位の総モル量を基準にして5〜30モル%の範囲の総量で存在する。
(d)その他の単位は、
− アミノ基および/またはカルボン酸基が単官能性または三官能性である化合物から誘導され、かつ
− ジカルボン酸、ジアミン、アミノカルボン酸および/または環状ラクタムから誘導される反複単位の総モル量を基準にして0〜5モル%の範囲の総量で存在する。
【0038】
また、きわめて良好な結果は、総計で単位cおよびdの総量を限定する一方で、テレフタル酸単位のモル量の範囲を広げた場合に得られる。したがって本発明の別の特定の実施形態では二軸延伸ポリマーフィルム中の半結晶性半芳香族コポリアミドは、ジカルボン酸およびジアミンから誘導される反復単位と、場合により他の単位とからなり、
(a)ジカルボン酸が、
− 50〜100モル%のテレフタル酸と、
− 0〜50モル%のテレフタル酸とは異なる芳香族ジカルボン酸および/または脂肪族ジカルボン酸と
からなり、
(b)ジアミンが、
− エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、およびペンタメチレンジアミンからなる群から選択される0〜60モル%のジアミンと、
− 40〜100モル%の少なくとも6個のC原子を含むジアミンと
からなり、また
(c)その他の単位が、
− アミノカルボン酸、および/または環状ラクタムから、かつ/またはアミノ基および/またはカルボン酸基が単官能性または三官能性である化合物から誘導され、
− ジカルボン酸およびジアミンから誘導される反複単位の総モル量を基準にして0〜5モル%の範囲の総量で存在する。
【0039】
この特定の実施形態の利点は、銅層でめっきした後の二軸延伸ポリマーフィルムの通常の使用条件下での銅移行がきわめて低いことである。
【0040】
本意図による方法で使用され、本発明によるフィルム中に存在するポリマー組成物は、別のポリマーおよび/または1種類もしくは複数種類の添加剤を含むことができる限定された量の他の成分を、半結晶性半芳香族ポリアミドに隣接して含むことができる。
【0041】
これらの他の成分は、一般には最高20wt.%の量で、また好ましくは0〜10wt.%の範囲の量で存在する(ただしこのwt.%は組成物の総重量を基準にする)。その量は、上記特性を有するフィルムの生産を可能にするように限定されなければならない。
【0042】
存在することができる他のポリマーは、その半結晶性半芳香族ポリアミドと混和性または相溶性であり、かつ半結晶性半芳香族ポリアミドにとって必要な加工条件下で溶融加工することができる任意のポリマーであることができる。好ましくはこの他のポリマーは、非晶質半芳香族ポリアミドまたは半結晶性脂肪族ポリアミドである。好ましくは、非晶質半芳香族ポリアミドは、少なくとも220℃、より好ましくは少なくとも250℃の高いガラス転移温度(Tg)を有する。また好ましくは、半結晶性脂肪族ポリアミドは、少なくとも250℃、より好ましくは少なくとも280℃の融解温度(Tm)を有する。
【0043】
添加剤または添加剤類は、その個々の量および組合せが溶融加工および二軸延伸を危険にさらさず、少なくとも深刻な程度でないように選択されるという条件で、ポリアミドフィルムに使用される任意の補助添加剤であることができる。これらの添加剤は、可塑剤、安定剤、染料、蛍光増白剤、着色剤、滑沢剤、ナノスケール充填剤、および補強材料からなる群から選択してもよく、好ましくは熱安定剤および/またはナノスケール充填剤を含む。添加剤の種類および量は、普通の一般的知識および定型的測定により熟練者が選択することができる。適切には添加剤または添加剤類は、0.01〜10wt.%、好ましくは0.1〜5wt.%、0.25〜2.5wt.%の範囲の量で存在する。本明細書中ではwt.%は、ポリマー組成物の総重量を基準とする。
【0044】
本発明はまた、PCBにおいてキャリアとして使用されるポリマーフィルムの製造方法に関する。本発明による方法は、
1)融解温度Tm、ガラス転移温度Tg、および少なくとも15J/gの固有融解エンタルピーを有する半結晶性半芳香族ポリアミドを含むポリマー組成物を、この融解温度を超える温度で溶融加工し、それによってポリマー溶融液を形成するステップ、
2)ステップ1で得られたポリマー溶融液を押出成形してフィルムにし、そのフィルムを注型成形し、直ちにガラス転移温度未満の温度まで冷却するステップ、
3)ステップ2で得られたキャストフィルムをガラス転移温度に近い温度で二軸延伸するステップ、および
4)ステップ3で得られた二軸延伸フィルムを、ガラス転移温度と融解温度の間の温度でヒートセットするステップ
を含む。
【0045】
注型成形のステップの間にガラス転移温度より低い温度まで即時冷却することを可能にするには、フィルムを、温度すなわち表面温度がガラス転移温度より低い表面へ注型成形してもよい。
【0046】
この方法は、
1)溶融加工時に、ポリマー組成物を、最長1分間の滞留時間の間、半結晶性半芳香族ポリアミドの融解温度を超える温度に保ち、
2)押出成形の後に続く注型成形時に、フィルムを100℃未満、好ましくは50℃未満の表面温度を有する表面で注型成形し、
3)二軸延伸時に、キャストフィルムを少なくとも2×2倍に二軸延伸し、かつ/またはキャストフィルムをTgマイナス5℃以上、Tgプラス20℃以下の範囲、好ましくはTg以上、Tgプラス10℃以下の範囲の温度で二軸延伸し、
4)ヒートセット時に、二軸延伸したフィルムをTmマイナス80℃以上、Tmマイナス10℃以下の範囲、好ましくはTmマイナス60℃以上、Tmマイナス25℃以下の範囲の温度に保つ
という条件を適用して行われる。
【0047】
ヒートセットについては、Tgに近い温度での短時間、例えば数分から数時間が、それ以上の温度でのより長時間、例えば6時間、または12時間、またはさらに長い時間よりも効果的である。
【0048】
上記方法は、最終的には2つのブロック、すなわち最初の2つのステップ1)および2)を含む第一ブロックと、最後の2つのステップ3)および4)を含む第二ブロックに分割することができる。
【0049】
第一ブロックと第二ブロックの間でフィルムを、例えば室温まで冷却することも、かつ/または湿潤条件下でコンディショニングすることもできる。そのようなコンディショニングがキャストポリマーフィルムのTgに影響を与える可能性があることに留意されたい。ステップ3)の間に加えられる温度は、二軸延伸のステップにかけられるポリマーフィルムのTgに関連して、したがってこのようなコンディショニング後のポリマーフィルムについて測定されるTgに関連して決定される。
【0050】
好ましくは二軸延伸は、押出成形および注型成形後に得られるフィルムに施される。
【0051】
本発明による方法は、ステップ1)においてフィルムを筒状シートの形に押出成形し、ステップ2)において注型成形の代わりに吹込成形を適用するように修正することができる。次いでステップ2)は、ステップ1)で得られたポリマー溶融液を押出成形してフィルムにし、そのフィルムを吹込成形する。吹込成形時にフィルムは、直ちにガラス転移温度より低い温度まで冷却される。次のステップでこのフィルムを、例えば米国特許第6479562B2号明細書に記載されているような、所謂ダブルバブル法によって二軸延伸することができる。
【0052】
本発明はまた、本発明による二軸延伸ポリマーフィルムの,FCBの生産におけるキャリアテープとしての使用、およびPCBにおけるフレキシブルキャリアとしての使用に関する。本発明による二軸延伸ポリマーフィルムに、標準的な方法を用いて導電層、あるいは導電性の経路、軌道、または掃引線を施すことができる。エッチング工程を利用する方法の場合、熟練者は、それらポリアミドに最も適したエッチング液を選択するために標準的な定型試験を行うことができるはずである。
【0053】
本発明はまた、本発明による二軸延伸ポリマーフィルム上に支持された導電性金属層を含むフレキシブルプリント回路基板に関する。上記プリント回路基板は、プリント回路基板組立品の製造に使用することができる。本発明によるプリント回路基板上に構成部品を搭載するには、種々様々なはんだ付技術を伴う従来の表面実装方法を使用することができる。本発明による二軸延伸ポリマーフィルムの良好な寸法安定性および耐高温性によりバルク波はんだ付およびリフローはんだ付を利用することができる。
【0054】
本発明はさらに、本発明による二軸延伸ポリマーフィルムまたはその一片であるキャリアと、電気配線がそのキャリア上に搭載されるか、またはその内部に組み込まれた電子部品と、キャリアによって支持され、かつ電子部品と一体化された導電経路とを含む電子装置またはプリント回路組立品(PCA)に関する。
【0055】
プリント回路基板(PCB)の完成後、機能しうる「プリント回路基板組立品」(PCBA)を形成するためには電子部品(例えばチップ)を取り付けなければならない。スルーホール構造では、部品リード線が孔に挿入される。表面実装構造では、構成部品はPCBの外面のパッドまたはランド上に配置される。これら両方の種類の構造では部品リード線は、融解金属のはんだで基板に電気的かつ機械的に固定される。最近ではボードラミネーションおよびエッチング技術の開発に伴い、表面実装のコンセプトが進化して標準的なプリント回路基板製造方法になっている。
【0056】
構成部品をPCBに取り付けるために使用される様々なはんだ付技術が存在する。一般に大量生産は、機械の配置と、バルク波はんだ付またはリフローオーブンとを用いて行われる。表面実装は、高度な自動化、人件費の低減、および生産速度と良品率の顕著な向上に非常に役立つ。
【0057】
本発明を下記の実施例および比較実験により例示する。
【0058】
[材料]
PA−1:ポリアミド46、脂肪族ポリアミド、Tm 295℃、Tg 80℃、VN=230ml/g
PA−2:ポリアミド6T/4T/66、半芳香族コポリアミド、Tm 325℃、Tg 125℃、RV 1.9
【0059】
ポリアミドのそれぞれは、加工助剤および熱安定剤を含む標準添加剤パッケージを約0.5〜1.0wt.%含む。本明細書中で述べる融解温度(Tm)、ガラス転移温度(Tg)、および相対粘度(RV)を下記の方法により測定した。
【0060】
[方法]
[粘度:相対粘度(RV)]
相対粘度(RV)の測定は、ISO 307(第4版)に準拠して行った。測定については予備乾燥ポリマー試料を使用し、その乾燥は高真空下(すなわち50ミリバール未満)において80℃で24時間行った。相対湿度の測定は、溶媒100ml中ポリマー1gの濃度で25.00±0.05℃において行った。
【0061】
[DSC測定:Tg、Tm、および融解エンタルピー]
ポリマー成形用組成物の融解温度(Tm)は、ASTM D3418−03に準拠して、DSCにより第二加熱ランにおいて加熱速度10℃/分で測定した。
【0062】
ポリマー成形用組成物の融解エンタルピーは、ASTM D3418−03に準拠して、DSCにより第二加熱ランにおいて加熱速度10℃/分で測定した。
【0063】
ポリマー成形用組成物のガラス転移温度(Tg)は、ASTM E1356−91に準拠して、DSCにより第二加熱ランにおいて加熱速度10℃/分で測定した。それはガラス転移域内にあり、最高ガラス転移速度を示す。
【0064】
ポリマーフィルムの融解温度(Tm)は、ASTM D3418−03に準拠して、DSCにより第一加熱ランにおいて加熱速度10℃/分で測定した。
【0065】
ポリマーフィルムの融解エンタルピーは、ASTM D3418−03に準拠して、DSCにより第一加熱ランにおいて加熱速度10℃/分で測定した。
【0066】
ポリマーフィルムのガラス転移温度(Tg)は、ASTM E1356−91に準拠して、DSCにより第一加熱ランにおいて加熱速度10℃/分で測定した。それはガラス転移域内にあり、最高ガラス転移速度を示す。
【0067】
[面内吸湿膨張係数(CHEip)]
CHEipは、次のように求められた。10%RH、25℃で24時間コンディショニングした予備乾燥フィルムから5×5cmのフィルム試料を切り取った。試料を、それらがコンディショニングキャビネット中に平滑に締着され、自由に吊り下がるように置き、50%RH、25℃で24時間コンディショニングした。こうしてコンディショニングされた試料の寸法を測定した。この試料を同じやり方で再度コンディショニングキャビネット中に置き、80%RH、25℃でさらに24時間コンディショニングした。こうしてコンディショニングされた試料の寸法を測定した。長さと幅の両方向で試料の寸法を測定した。個々の試料の湿度依存性膨張係数が、測定された寸法から式
CHEindividual sample,%RH={(L−L)/L}/(R−R
に従って計算される。式中、Rは、Rでのコンディショニング手順に先立って寸法Lが測定されたRHであり、またRは、その試料がコンディショニングされ、そのコンディショニング後、寸法Lが測定されたRHであり、LはRでのコンディショニングに先立って測定された寸法であり、またLはRでのコンディショニング後に測定された寸法である。
【0068】
フィルムのCHEipは、個々の試料の2方向のCHE値を平均することにより計算された。
【0069】
[面内熱膨張係数(TECip)]
面内熱膨張係数TECipは、面内で20℃〜Tgの温度範囲にわたって測定するASTM D969−08に準拠した方法で測定された。Tgとは本明細書中ではポリアミドフィルムのガラス転移温度と解釈される。Tgを超えると、5〜20ppm/Kの範囲にある、さらにずっと低いTECが観察された。
【0070】
[加工]
加工に先立って配合用材料を乾燥した。生成したすべてのフィルム材料を、水分との接触を防ぐために生成直後にアルミナバッグに詰めた。ポリアミドフィルムはフィルムキャスト押出成形法により調製した。脱気口を備えた一軸スクリュー押出機および二軸スクリュー押出機(スクリュー径30mm、L/D=30)をそれぞれ、調整可能なダイリップ付きスロットダイを有するフィードブロックに連結した。スロットダイの長さは300mmであり、ダイ幅は0.8mmである。押出機にポリアミド材料を供給した。フィルムを冷却ロールで巻き取り、その上で冷却した。さらにエアナイフを使用した。ダイと、フィルムが冷却ロールに触れる位置との間の距離は、約1〜1.5cmであった。フィルムの厚さは送り量と冷却ロール巻取速度によって調節され、それによって冷却ロール巻取速度と押出速度の間のドローダウン比に影響を与えた。
【0071】
[比較実験A]
PA−1を、押出ゾーン、フィードブロック、およびダイを300℃に温度設定した一軸スクリュー押出機中でフィルム加工した。冷却ロールの温度は3℃であった。この温度クエンチは、冷却ロールを氷水で冷却することにより達成した。PA−1の送り量および溶融液の形成は、溶融液押出ゾーン、フィードブロック、およびダイ中でのポリマー溶融液の滞留時間が約3分になるようにした。冷却ロール巻取速度をドローダウン比が約10になるように調整し、それによってフィルム厚約80μmを得た。肉眼で判断されるフィルムの品質および光透過性は、全般的には良好だが、わずかにかすみがかかっていると判断された。
【0072】
[比較実験B]
比較実験Bは、一軸スクリュー押出機の代わりに二軸スクリュー押出機を使用したことを除いて、比較実験Aと同一であった。これは、溶融液押出ゾーン、フィードブロック、およびダイ中でのポリマー溶融液の滞留時間を約40秒に低下させることを可能にした。フィルム厚は約80μmであった。肉眼で判断されるフィルムの光学的品質は、前の実施例と比べてわずかにすぐれていた。
【0073】
[比較実験C]
比較実験Cは、PA−1の代わりにポリマー組成物PA−2を使用したことを除いて、比較実験Aと同一であった。押出機の温度設定を押出ゾーンについては340℃、またフィードブロックおよびダイについては350℃に調整した。冷却ロールの温度は17℃であった。フィルム厚は約80μmであった。得られたフィルムは透明であるが、わずかに変色し、また数個の気泡およびミクロ細孔を示した。
【0074】
[実施例1]
実施例1ではPA−2材料を、比較実験Cの場合と同様に340℃の押出ゾーン、また350℃のフィードブロックおよびダイの温度設定による比較実験に準じて二軸スクリュー押出機中でフィルム加工した。冷却ロールの温度は17℃であった。得られたフィルムは高度に透明であり、変色およびミクロ細孔をほとんど示さず、厚さは約80μmであった。
【0075】
[実施例2]
実施例2は、厚さ約150μmを有する、より厚いフィルムが得られるように冷却ロール巻取速度を調整したことを除いて、実施例1と同一であった。得られたフィルムは透明であり、変色をほとんど示さず、ごく少数のミクロ細孔を示した。
【0076】
[延伸実験]
比較実験A〜Cならびに実施例1および2で得られたフィルムに関して二軸フィルム延伸実験を行った。これらの実験は、オーブン中に位置決めしたテントラフレーム(tentraframe)装置で行った。面積寸法10cm×10cmのフィルム試料をこの装置の両側に締着した。アルミナバッグから取り出しタフィルムを、締着し、その結果としてホットエアにより延伸温度まで加熱して延伸を行った。様々な延伸温度を適用し、破断が起こるまでの様々な最大延伸速度を求めた。様々な実験に対する最大延伸比を表1に示す。
【0077】
【表1】



【0078】
[アニーリング、熱膨張、および吸湿膨張]
実施例1で得られた延伸フィルムを、窒素流下で200℃で1時間ヒートセットした。こうして得られたフィルムを熱膨張および吸湿膨張の測定に使用し、その結果を実施例1で得られた延伸およびヒートセット前のフィルムのものと比較した。これらの結果を表2にまとめた。
【0079】
【表2】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも270℃の融解温度(Tm)を有する半結晶性半芳香族ポリアミドを少なくとも80重量%(wt.%)含むポリアミド組成物から作られる二軸延伸ポリマーフィルム(ただし、前記wt.%はポリマー組成物の総重量を基準とする)。
【請求項2】
少なくとも270℃の融解温度(Tm)を有する半結晶性半芳香族ポリアミドを少なくとも80重量%(wt.%)含むポリアミド組成物から作られるポリマーフィルム(ただし、前記wt.%はポリマー組成物の総重量を基準とする)であって、前記ポリマーフィルムが、ASTM D969−08に準拠した方法により面内で測定される20〜Tgの温度範囲で最大40ppm/Kの平均係数(TEC)を有する、ポリマーフィルム。
【請求項3】
前記ポリマーフィルムが、相対湿度50%において面内で測定される最大140ppm/%RHの吸湿膨張係数(CHE)を有する、請求項1または2に記載のポリマーフィルム。
【請求項4】
前記ポリマーフィルムが、270〜350℃の温度範囲内で、またはその近くで少なくとも15J/gの融解エンタルピーを有する、請求項1〜3のいずれかに記載のポリマーフィルム。
【請求項5】
前記二軸延伸ポリマーフィルム中の前記半結晶性半芳香族コポリアミドが、ジカルボン酸およびジアミンから誘導される反復単位、アミノカルボン酸および/または環状ラクタムから誘導される反復単位、および場合により他の単位からなり、
(a)前記ジカルボン酸が、
− 70〜100モル%のテレフタル酸、および
− 0〜30モル%のテレフタル酸とは異なる芳香族ジカルボン酸および/または脂肪族ジカルボン酸
からなり、
(b)アミノカルボン酸および/または環状ラクタムから誘導される前記単位が、ジカルボン酸と、ジアミンと、アミノカルボン酸および/または環状ラクタムとから誘導される反複単位の総モル量を基準にして5〜30モル%の範囲の総量で存在する。
(c)前記他の単位が、
− アミノ基および/またはカルボン酸基が単官能性または三官能性である化合物から誘導され、かつ
− ジカルボン酸と、ジアミンと、アミノカルボン酸および/または環状ラクタムとから誘導される反複単位の総モル量を基準にして0〜5モル%の範囲の総量で存在する、請求項1〜4のいずれかに記載のポリマーフィルム。
【請求項6】
前記二軸延伸ポリマーフィルム中の前記半結晶性半芳香族コポリアミドが、ジカルボン酸およびジアミンから誘導される反復単位と、場合により他の単位とからなり、
(a)前記ジカルボン酸が、
− 40〜100モル%のテレフタル酸、および
− 0〜60モル%のテレフタル酸とは異なる芳香族ジカルボン酸および/または脂肪族ジカルボン酸
からなり、
(b)前記ジアミンが、
− エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、およびペンタメチレンジアミンからなる群から選択される0〜70モル%のジアミン、および
− 30〜100モル%の少なくとも6個のC原子を含むジアミン
からなり、また
(c)前記他の単位が、
− アミノカルボン酸および/または環状ラクタムから、かつ/またはアミノ基および/またはカルボン酸基が単官能性または三官能性である化合物から誘導され、
− ジカルボン酸およびジアミンから誘導される反複単位の総モル量を基準にして0〜5モル%の範囲の総量で存在する、
請求項1〜4のいずれかに記載のポリマーフィルム。
【請求項7】
寸法安定性ポリマーフィルムの生産方法であって、
i.少なくとも270℃の融解温度(Tm)と、ガラス転移温度(Tg)とを有する半結晶性半芳香族ポリアミドを前記ポリマー組成物の総重量を基準にして少なくとも80wt.%含むポリマー成形用組成物を、Tmを超える温度で溶融加工し、それによってポリマー溶融液を形成するステップ、
ii.ステップ1で得られた前記ポリマー溶融液をフィルムに押出成形し、前記フィルムを注型成形し、直ちにガラス転移温度未満の温度まで冷却するステップ、
iii.ステップ2で得られた前記キャストフィルムを、前記ガラス転移温度に近い温度で二軸延伸するステップ、および
iv.ステップ3で得られた前記二軸延伸フィルムを、前記ガラス転移温度と前記融解温度の間の温度でヒートセットするステップ
を含む、方法。
【請求項8】
前記ポリマー成形用組成物中の前記半結晶性半芳香族ポリアミドが、少なくとも25J/gの固有融解エンタルピーを有する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記方法が、
i.前記溶融加工時に、前記ポリマー組成物を、最長1分間の滞留時間の間、前記半結晶性半芳香族ポリアミドの前記融解温度を超える温度に保ち、
ii.前記注型成形時に、前記フィルムを、Tgより少なくとも25℃下の温度、好ましくはTgより少なくとも50℃下の温度を有する表面で注型成形し、
iii.前記二軸延伸時に、前記キャストフィルムを少なくとも2×2倍に二軸延伸し、かつ/または前記キャストフィルムをTgマイナス5℃以上、Tgプラス20℃以下の範囲、好ましくはTg以上、Tgプラス10℃以下の範囲の温度で二軸延伸し、また
iv.前記ヒートセット時に、前記二軸延伸フィルムをTmマイナス80℃以上、Tmマイナス10℃以下の範囲、好ましくはTmマイナス60℃以上、Tmマイナス25℃以下の範囲の温度に保つ
という条件を適用して行われる、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
請求項1〜6のいずれか一項に記載されている、または請求項7〜9のいずれか一項に記載の方法によって得られる二軸延伸ポリマーフィルムの、PCBの生産におけるキャリアテープとしての使用。
【請求項11】
請求項1〜6のいずれか一項に記載されている、または請求項7〜9のいずれか一項に記載の方法によって得られる二軸延伸ポリマーフィルムの、PCBにおけるフレキシブルキャリアとしての使用。
【請求項12】
請求項1〜6のいずれか一項に記載されている、または請求項7〜9のいずれか一項に記載の方法によって得られる前記二軸延伸ポリマーフィルム上に支持された導電性金属層を含むフレキシブルプリント回路基板。
【請求項13】
キャリアと、電気配線が前記キャリア上に搭載されるか、またはその内部に組み込まれた電子部品と、前記キャリアによって支持され、かつ前記電子部品と一体化された導電経路とを含み、前記キャリアが、請求項1〜6のいずれか一項に記載されている、または請求項7〜9のいずれか一項に記載の方法によって得られる前記二軸延伸ポリマーフィルムまたはその一片である、電子装置またはプリント回路組立品(PCA)。

【公表番号】特表2012−515244(P2012−515244A)
【公表日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−545742(P2011−545742)
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【国際出願番号】PCT/EP2010/050451
【国際公開番号】WO2010/081873
【国際公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】