説明

フレキシブルプリント基板の製造方法

【課題】ウェットライン法を用いることなく、フレキシブル基板を製造する方法を提供する。
【解決手段】樹脂シート3上にパターンが開口されたマスキングテープ2を貼り付ける工程と、マスキングテープ2が貼り付けられた樹脂シート3上に、紫外線硬化型塗料を塗付して、密着層5を形成する工程と、密着層5上に金属導電膜を蒸着させて金属導電層8を形成する工程とを含むフレキシブル基板の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフレキシブルプリント基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フレキシブルプリント基板(FPC(Flexible printed circuits)、以下「FPC」ともいう)の製造においては、エッチングやメッキを駆使したウェットライン法を用いるのが一般的である。
【0003】
しかし、回路材料となる銅等の金属を薬液により融解させる工程が多く、薬品による事故や公害を防ぐため、廃液のpH調整や薬液処理を行う必要がある。そのため、薬液処理等の作業が品雑になるという問題があった。
【0004】
上述の課題を解決する手段としていくつかの技術が提案されている(例えば、特許文献1、2参照。)。例えば特許文献1には、ポリエチレンテレフタレート(PET)上に金属膜を蒸着させる方法が示唆されてはいるが、具体的な方法が開示されていなかった。また特許文献2にもPET上に金属膜を蒸着させる旨が示唆されてはいるが、基材と蒸着膜の密着性については特に触れられていなかった。そのため、ウェットライン法を用いることなく、フレキシブル基板を製造する方法が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-208501号公報
【特許文献2】特開2007-177322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ウェットライン法を用いることなく、フレキシブル基板を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、樹脂シート上にパターンが開口されたマスキングテープを貼り付ける工程と、マスキングテープが貼り付けられた樹脂シート上に、紫外線硬化型塗料を塗付して、密着層を形成する工程と、密着層上に金属導電膜を蒸着させて金属導電層を形成する工程とを含むフレキシブル基板の製造方法を要旨とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ウェットライン法を用いることなく、フレキシブル基板を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】(a)は本発明の実施形態に係るフレキシブル基板の正面図を示し、(b)は本発明の実施形態に係るフレキシブル基板の断面図を示す。
【図2】(a)、(b)は本発明の実施形態に係るフレキシブル基板の製造工程図(その1)を示す。
【図3】(a)、(b)は、本発明の実施形態に係るフレキシブル基板の製造工程図(その2)を示す。
【図4】本発明の実施形態に係るフレキシブル基板の製造工程図(その3)を示す。
【図5】本発明の実施形態に係るフレキシブル基板の製造工程図(その4)を示す。
【図6】本発明の実施形態に係るフレキシブル基板の製造工程図(その5)を示す。
【図7】本発明の実施形態に係るフレキシブル基板の製造工程図(その6)を示す。
【図8】本発明の実施形態に係るフレキシブル基板の製造工程図(その7)を示す。
【図9】本発明の実施形態に係るフレキシブル基板の製造工程図(その8)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、実施形態を挙げて本発明の説明を行うが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。尚、図中同一の機能又は類似の機能を有するものについては、同一又は類似の符号を付して説明を省略する。
【0011】
[フレキシブル基板]
本発明の実施形態に係るフレキシブル基板1は、図1(a)の正面図に示すように、樹脂シート3上に金属導電層8からなる所望のパターンが形成されている。フレキシブル基板1は、図1(a)の点線で定義される領域の図1(b)の断面図に示すように、樹脂シート3と、樹脂シート3上に離間して設けられた紫外線硬化型塗料からなる密着層5a、5aと、密着層5a、5a上に設けられた金属導電層8a、8aとを備える。樹脂シート3上に密着層5a、5aを介して金属導電層8a、8aを設けたことより、樹脂シート3に対する金属導電層8a、8aの密着性が高い。
【0012】
紫外線硬化型塗料としては、樹脂シート3に対する金属導電層8a、8aの密着性が向上するものであれば特に制限されないが、熱硬化型塗料を用いることもできる。樹脂シート3としては、フレキシブル基板に要求される柔軟性を有するものであれば特に制限されないが、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド、ポリアミド、ポリカーボネートまたはアクリルなどから選択される樹脂を用いることができる。金属導電層8a、8aとしては、スズ、アルミニウムもしくはインジウムなどの金属で形成されることが好ましい。
【0013】
[フレキシブル基板の製造方法]
(イ)まず図2に示すような板状のマスキングテープ2を用意する。そして、図3に示すようにマスキングテープ2に所望のパターンをドリル等の加工機を用いて開口する。例えばエンドミル加工機によれば、メンブレン回路などにおいて最小ピッチとされている0.2mmより細い開口が可能である。図4において図3の点線で示す領域の拡大断面図を示すように、マスキングテープ2に開口部2a,2aを離間して形成する。
【0014】
(ロ)図5に示すように、樹脂シート3上に、所望のパターンが開口されたマスキングテープ2を貼り付ける。そして、図6に示すような樹脂シート3上に、マスキングテープ2が配置された樹脂シート3を得る。
【0015】
(ハ)図7に示すように、マスキングテープ2が貼り付けられた樹脂シート3上に、紫外線硬化型塗料を塗付する。そして、紫外線を照射して紫外線硬化型塗料を硬化して開口部2a,2aの底部に密着層5a、5aを形成する。
【0016】
(ニ)図8に示すように、密着層5a、5a上に金属導電膜を蒸着させて金属導電層8a、8aを形成する。
【0017】
(ホ)マスキングテープ2を樹脂シート3から剥がすことで、図9に示すようなフレキシブル基板1を得る。
【0018】
本発明の実施形態に係るフレキシブル基板1の製造方法によれば、ウェットライン法を用いることなく、フレキシブル基板1を製造することができる。そのため、レジストの除去等にかかっていた作業工程を簡略化できる。また廃液処理量の大幅軽減を通じて環境負荷軽減を図ることができる。さらに、樹脂シート3と金属導電層8との密着性を向上させることができる。
【0019】
(その他の実施形態)
上記のように、本発明は実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【実施例】
【0020】
(実施例)
上述の実施形態に係るフレキシブル基板の製造方法に準じて、樹脂シート3としてPETフィルム(帝人製「デュポンフィルムHSL」)100μm、マスキングテープ2としてイサワ社製ポリエステルフィルムテープ、紫外線硬化型塗料として藤倉化成製「UV硬化ベースコート」、蒸着金属として、A1(アルミニウム)を用いてフレキシブル基板を作製した。
【0021】
(比較例)
従来工法を用いて、銅張積層板(CCL)上に、銅箔をエッチングすることにより、フレキシブル基板を作製した。
実施例及び比較例に係るフレキシブル基板の製造にかかった各工程における加工時間をまとめて表1に示す。
【0022】
【表1】

【0023】
以上より、実施例は比較例に比べて短時間で製作可能であることが分かった。さらに、基材であるPETはCCLと比べて大幅に安価であるため、製造コストも下げられることが期待できる。
【符号の説明】
【0024】
1…フレキシブル基板
3…樹脂シート
8…金属導電層
5、5a、5b…密着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂シート上にパターンが開口されたマスキングテープを貼り付ける工程と、
前記マスキングテープが貼り付けられた前記樹脂シート上に、紫外線硬化型塗料を塗付して、密着層を形成する工程と、
密着層上に金属導電膜を蒸着させて金属導電層を形成する工程
とを含むことを特徴とするフレキシブル基板の製造方法。
【請求項2】
前記紫外線硬化型塗料が、熱硬化型塗料であることを特徴とする請求項1記載のフレキシブル基板の製造方法。
【請求項3】
前記樹脂シートが、ポリエチレンテレフクレート、ポリイミド、ポリアミド、ポリカーボネートまたはアクリルからなる群から選択される樹脂で形成されたものであることを特徴とする請求項1記載のフレキシブル基板の製造方法。
【請求項4】
前記金属導電層が、スズ、アルミニウムもしくはインジウムからなる群から選択される金属で形成されたものであることを特徴とする請求項1記載のフレキシブル基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−205836(P2010−205836A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−48174(P2009−48174)
【出願日】平成21年3月2日(2009.3.2)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】