説明

フレキシブルプリント基板及びその製造方法

【課題】高周波特性に優れ絶縁信頼性を高くする。
【解決手段】フレキシブルプリント基板100は、ベース基材10、配線11及びカバーレイ12を備える。カバーレイ12のベース基材10への熱圧着時に、カバーレイ12の融点温度よりも低い融点の副資材15をカバーレイ12上に載置し、副資材15の融点からカバーレイ12の融点に向けて温度上昇させながら熱圧着を施す。これにより、配線11が存在する領域のベース基材10の表面からカバーレイ12の表面までの厚さt1+d1が、配線11が存在しない領域である凹部13のベース基材10の表面からカバーレイ12の表面までの厚さt2よりも厚くなるように形成される。従って、配線11のエッジ部がカバーレイ12から露出することがなく、高周波特性に優れつつ絶縁信頼性を高くすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、高周波特性に優れたフレキシブルプリント基板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パソコンや携帯端末機において、高速信号をフレキシブルプリント基板で伝送する必要性が生じている。このようなフレキシブルプリント基板においては、ポリイミド樹脂よりも誘電率及び誘電正接が低い液晶ポリマーをベース基材やカバーレイに用いることで、接着剤を用いることなくカバーレイを軟化させてベース基材と熱圧着により接着している。これにより、高周波における伝送損失を低減することが試みられている(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−103269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示された基板では、カバーレイが軟化して配線上から配線間のスペースに流れ込みながら熱圧着される。このため、結果的に配線上のカバーレイが薄くなってしまい、配線のエッジ部が露出するなどの不具合が生じて基板の絶縁信頼性が低下するという問題がある。
【0005】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消し、高周波特性に優れ絶縁信頼性が高いフレキシブルプリント基板及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るフレキシブルプリント基板は、ベース基材と、前記ベース基材上に形成された配線と、これらの上に形成された液晶ポリマーからなるカバーレイとを備えたフレキシブルプリント基板であって、前記ベース基材の融点は、前記カバーレイの融点よりも高く、前記配線が存在する領域の前記ベース基材の表面から前記カバーレイの表面までの厚さが、前記配線が存在しない領域の前記ベース基材の表面から前記カバーレイの表面までの厚さよりも厚いことを特徴とする。
【0007】
本発明に係るフレキシブルプリント基板によれば、ベース基材の融点が液晶ポリマーからなるカバーレイの融点よりも高く、配線が存在する領域のベース基材の表面からカバーレイの表面までの厚さが、配線が存在しない領域のベース基材の表面からカバーレイの表面までの厚さよりも厚くなるように形成されている。このため、配線のエッジ部がカバーレイから露出することがない。従って、高周波特性に優れつつ絶縁信頼性を高くすることができる。
【0008】
本発明の一つの実施形態においては、前記配線が存在する領域の前記カバーレイの厚さが、前記配線が存在しない領域の前記カバーレイの厚さと実質的に同一である。
【0009】
本発明の他の実施形態においては、前記ベース基材が、液晶ポリマーからなる。
【0010】
また、本発明に係るフレキシブルプリント基板は、配線が形成されたベース基材上に液晶ポリマーからなるカバーレイフィルムと、前記カバーレイフィルムよりも融点の低い材料からなる副資材フィルムを載せて、前記副資材フィルムの融点から前記カバーレイフィルムの融点に向けて温度上昇させながら熱圧着を施すことにより得られたことを特徴とする。
【0011】
本発明に係るフレキシブルプリント基板の製造方法は、ベース基材上に配線を形成する工程と、前記配線が形成された前記ベース基材上に、液晶ポリマーからなるカバーレイフィルムと前記カバーレイフィルムよりも融点の低い材料からなる副資材フィルムを載せて熱圧着する工程と、前記副資材フィルムを前記カバーレイフィルムから剥離する工程とを備えたことを特徴とする。
【0012】
本発明に係るプリント基板の製造方法によれば、ベース基材上に、液晶ポリマーからなるカバーレイフィルムとカバーレイフィルムよりも融点の低い材料からなる副資材フィルムを載せて熱圧着する。このため、熱圧着時にカバーレイフィルムよりも先に副資材フィルムが溶けて配線間のスペースに流れ込み、次いでカバーレイフィルムが軟化して接着される。このため、配線が存在する領域のベース基材の表面からカバーレイの表面までの厚さが、配線が存在しない領域のベース基材の表面からカバーレイの表面までの厚さよりも厚くなり、上述のように配線のエッジ部がカバーレイから露出することがなく、高周波特性に優れつつ絶縁信頼性が高いフレキシブルプリント基板を製造することができる。
【0013】
本発明の一つの実施形態においては、前記熱圧着する工程では、前記副資材フィルムの融点から前記カバーレイフィルムの融点に向けて温度上昇させながら熱圧着を施す。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、高周波特性に優れ絶縁信頼性を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るフレキシブルプリント基板の構造を示す断面図である。
【図2】同フレキシブルプリント基板の製造工程を示すフローチャートである。
【図3】同フレキシブルプリント基板を製造工程順に示す断面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係るフレキシブルプリント基板の構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付の図面を参照して、この発明の実施の形態に係るフレキシブルプリント基板及びその製造方法を詳細に説明する。
【0017】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係るフレキシブルプリント基板の構造を示す断面図である。第1の実施形態に係るプリント基板100は、ベース基材10及びベース基材10上に形成された配線11を備えている。また、ベース基材10の配線11が形成された面側には、カバーレイ12が形成されている。
【0018】
ベース基材10は、例えばポリイミド樹脂などから構成されてもよいが、ここでは熱可塑性の液晶ポリマー(LCP)からなる。カバーレイ12は、同様に熱可塑性の液晶ポリマーからなる。液晶ポリマーとしては、主に、(1)芳香族又は脂肪族ジヒドロキシ化合物、(2)芳香族又は脂肪族ジカルボン酸、(3)芳香族ヒドロキシカルボン酸、(4)芳香族ジアミン、芳香族ヒドロキシアミン又は芳香族アミノカルボン酸、の4つに分類される。
【0019】
そして、これらの化合物及びその誘導体から合成される公知のサーモトロピック液晶ポリエステルや、ポリエステルアミドなどを用いることができる。なお、高分子液晶を形成するためには、各々の原料化合物の組み合わせには公知の適切な範囲が適用される。これらベース基材10及びカバーレイ12は、後述するように融点が異なる液晶ポリマーで形成されていることが望ましい。
【0020】
一方、配線11は、金、銀、銅、ニッケル、アルミニウム又はこれらの合金などの導電材料が好適であるが、ここでは銅箔等の導電材料をパターン形成してなり、厚さd1が8μm〜25μmの範囲となるように、ベース基材10上に形成されている。銅箔としては、圧延法や電気分解法などによって製造されたものを用いることができる。配線11の表面には、プラズマによる粗面化処理などの物理的表面処理、或いは酸洗浄による粗面化処理などの化学的表面処理が施され、カバーレイ12との接着力の向上が図られている。
【0021】
ベース基材10は、例えば厚さDが25μm〜100μmの範囲で形成され、カバーレイ12は、例えば厚さt1(及びt2)が25μm〜50μmの範囲で形成されている。すなわち、カバーレイ12は、配線11が存在する領域の厚さt1が、配線11が存在しない領域(凹部13)における厚さt2と実質的に同一となるように形成されている。
【0022】
従って、ベース基材10の表面上の配線11と配線11上のカバーレイ12の厚さは、凹部13におけるベース基材10の表面上のカバーレイ12の厚さとの関係で、t1+d1>t2となる。また、凹部13におけるカバーレイ12の表面から配線11上のカバーレイ12と同一の高さまでの距離d2は、t1+d1とt2との差となる。なお、配線11のエッジ上のカバーレイ12の厚さxも、後述する副資材によって熱圧着時に形成された凹部13があることで十分な厚さをもって形成される。
【0023】
ベース基材10とカバーレイ12の液晶ポリマーは、ベース基材10の融点の方が高く、その融点の差が15℃以上となるように構成されている。この融点の差が15℃未満であると、ベース基材10上にカバーレイ12を熱圧着する際に、ベース基材10も軟化してしまうので配線11が動き易くなり、位置決め制御が困難となるおそれがあるからである。
【0024】
ベース基材10の融点温度は、例えば310℃〜335℃程度に設定され、カバーレイ12の融点温度は、例えば280℃〜295℃程度に設定される。そして、これらを熱圧着する際に用いられる副資材15(図3(e)参照)は、カバーレイ12の融点温度よりも低い融点の超高分子量ポリエチレンイノベートフィルムからなり、カバーレイ12との易離型性を備えている。
【0025】
第1の実施形態に係るフレキシブルプリント基板100は、配線11が存在する領域のベース基材10の表面からカバーレイ12の表面までの厚さt1+d1が、配線11が存在しない領域である凹部13のベース基材10の表面からカバーレイ12の表面までの厚さt2よりも厚くなるように形成されているので、配線11のエッジ部がカバーレイ12から露出することがなく、高周波特性に優れつつ絶縁信頼性を高くすることができる。
【0026】
このように構成されたフレキシブルプリント基板100は、例えば次のように製造される。図2は、フレキシブルプリント基板の製造工程を示すフローチャートである。図3は、フレキシブルプリント基板を製造工程順に示す断面図である。まず、図3(a)に示すように、導体層19が形成されたベース基材10を準備する(ステップS100)。
【0027】
次に、図3(b)に示すように、導体層19上にドライフィルムレジストを貼り付けて露光・現像を行い、所定のマスクパターン18を配線形成箇所に形成する。そして、図3(c)に示すように、エッチングなどを施して、配線11をベース基材10上に形成し(ステップS102)、マスクパターン18を除去する。
【0028】
その後、図3(d)に示すように、配線11が形成されたベース基材10上に、カバーレイ12及び副資材15のフィルムを載置し(ステップS104)、副資材15の融点からカバーレイ12の融点に向けて温度上昇させながら熱圧着を施す(ステップS106)。
【0029】
すると、図3(e)に示すように、配線11間のスペースに最初に溶融した副資材15が流れ込むので、後から溶融するカバーレイ12は、図中矢印と×印で示すように、このスペースに流れ込めない状態で配線11及びベース基材10に熱圧着される。こうして熱圧着が施されたフレキシブルプリント基板を冷却・キュアし(ステップS108)、副資材15をカバーレイ12から剥離して(ステップS110)、図1に示すような凹部13が形成されたフレキシブルプリント基板100を製造する。
【0030】
[第2の実施形態]
図4は、本発明の第2の実施形態に係るフレキシブルプリント基板の構造を示す断面図である。第2の実施形態に係るプリント基板100Aは、ベース基材10、配線11及びカバーレイ12が複数積層された多層構造である点が、第1の実施形態に係るフレキシブルプリント基板100と相違している。
【0031】
このような多層構造の場合、最表層のカバーレイ12以外は、配線11が存在する領域の厚さが、配線11が存在しない領域の厚さよりも薄くなるが、層間内での状態であるので問題とはならず、上述したように高周波特性に優れつつ絶縁信頼性を高くすることができるという作用効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0032】
10 ベース基材
11 配線
12 カバーレイ
13 凹部
15 副資材
100 フレキシブルプリント基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース基材と、前記ベース基材上に形成された配線と、これらの上に形成された液晶ポリマーからなるカバーレイとを備えたフレキシブルプリント基板であって、
前記ベース基材の融点は、前記カバーレイの融点よりも高く、
前記配線が存在する領域の前記ベース基材の表面から前記カバーレイの表面までの厚さが、前記配線が存在しない領域の前記ベース基材の表面から前記カバーレイの表面までの厚さよりも厚い
ことを特徴とするフレキシブルプリント基板。
【請求項2】
前記配線が存在する領域の前記カバーレイの厚さが、前記配線が存在しない領域の前記カバーレイの厚さと実質的に同一であることを特徴とする請求項1記載のフレキシブルプリント基板。
【請求項3】
前記ベース基材は、液晶ポリマーからなることを特徴とする請求項1又は2記載のフレキシブルプリント基板。
【請求項4】
配線が形成されたベース基材上に液晶ポリマーからなるカバーレイフィルムと、前記カバーレイフィルムよりも融点の低い材料からなる副資材フィルムを載せて、
前記副資材フィルムの融点から前記カバーレイフィルムの融点に向けて温度上昇させながら熱圧着を施すことにより得られたことを特徴とするフレキシブルプリント基板。
【請求項5】
ベース基材上に配線を形成する工程と、
前記配線が形成された前記ベース基材上に、液晶ポリマーからなるカバーレイフィルムと前記カバーレイフィルムよりも融点の低い材料からなる副資材フィルムを載せて熱圧着する工程と、
前記副資材フィルムを前記カバーレイフィルムから剥離する工程とを備えた
ことを特徴とするフレキシブルプリント基板の製造方法。
【請求項6】
前記熱圧着する工程では、前記副資材フィルムの融点から前記カバーレイフィルムの融点に向けて温度上昇させながら熱圧着を施すことを特徴とする請求項5記載のフレキシブルプリント基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−89710(P2013−89710A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227640(P2011−227640)
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】