説明

フレキシブルプリント配線板、その製造方法、および電子機器

【課題】 ビアホールを設ける部分の配線幅を小さくせざるを得ないときに生じる、導通不良などの問題を、既存の設備を用いて、比較的簡単な構造を採用することで克服できるフレキシブルプリント配線板等を提供する。
【解決手段】 導体層1と、該導体層の上に位置する絶縁層2と、該絶縁層の上にアディティブ法で形成された配線回路の層3とを備え、配線回路3および絶縁層2を貫通し、導体層に達するビアホールHがあり、ビアホールの上端の直径dが導体層に達した下端の直径dよりも大きいことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルプリント配線板、その製造方法、および電子機器に関するものであり、不良発生率を抑制することができる、フレキシブルプリント配線板、その製造方法、およびこれを用いた電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属箔などの導体層の上に、絶縁層を介在させて形成された配線パターン層、すなわち導体層/絶縁層/配線パターン層という構造は、フレキシブルプリント配線板において汎用的に形成される。上記の積層体において、導体層をグランド部として、配線回路の特定部分をグランド部に導電させる、すなわちアースをとる構造が用いられる場合がある。このグランド部にアースをとる部分では、配線回路と絶縁層とに孔(ビアホール)をあけ(導体層には孔をあけず)、配線回路のビアホール壁面と導体層とが導通するように、導電性ペースト等をビアホールに充填する(特許文献1)。たとえば、ハードディスク装置の磁気ヘッドを支持する支持体(金属箔)と、信号伝達のための配線とが一体化された、磁気ヘッドサスペンションの配線板(以下、「磁気ヘッド配線板」と記す)等においては、上記と同様の構造により支持体にアースをとる。この磁気ヘッド配線板は、垂直磁気記録方式などの情報密度の増大に対応して、配線を高密度化させるために、旧来のサブトラクティブ法からアディティブ法により配線パターンを形成している。旧来のサブトラクティブ法では、絶縁層上全体に配線薄膜を形成し、そのあとエッチングにより配線パターンを形成する。一方、アディティブ法では、レジストパターンを用いて、金属めっき等により貫通孔があけられた所定の線幅の配線パターンを当初から絶縁層上に形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−198964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のサブトラクティブ法であけられるビアホールは、配線回路をエッチングして形成するため上面で孔径が大きく、底部では縮小する上広の孔になる。これに対して、アディティブ法で配線パターンを形成すると、ビアホールは、底部を画する導体層に対して垂直に立つ壁面を持つ。すなわちアディティブ法では、ビアホールの上端から下端まで設計したとおりの径となり、上端の径は、サブトラクティブ法のものと比べると、実際の製造では小さくなる。また配線幅が狭くなることは、当然、ビアホール直径の上限に対する制約を厳しくする。ビアホール直径が小さくなると、つぎの問題が生じる。
(K1)ビアホールをあけるために絶縁層をエッチングするとき(配線パターンにはアディティブ法により既に垂直壁の孔(以後の説明で、「第1貫通孔」と記す場合がある)が形成されている)、エッチング液が配線回路の第1貫通孔に十分回り込まないためにエッチング不十分になり、導電性ペーストを充填しても底部の導体層との導通がとれない。
(K2)垂直壁のビアホールの上端の直径は小さいため、ビアホールの容積が小さくなり、充填する導電性ペーストの量の調節を非常に精妙に行う必要がある。量が多いとビアホールからあふれ出して、周囲の配線と短絡するおそれがあり、量が少ないと導電が不完全になる。
(K3)導電性ペーストをスクリーン印刷するとき、程度の大小はあるが印刷のずれは不可避であり、垂直壁のビアホールの上端の直径が小さいと、ビアホールへの完全一致から外れやすく、外れた導電性ペーストによる短絡のおそれを生じる。
なお、サブトラクティブ法であけたビアホールがすべて上広の孔となるわけではなく、アディティブ法によるビアホールと同様の形状の孔となる場合がある。このため、ビアホール直径が小さくなった場合に生じる上記問題は、サブトラクティブ法によるビアホールにも生じることがある。
本発明は、磁気ヘッド配線板を含むフレキシブルプリント配線板一般に適用されるものであり、ビアホールを設ける部分の配線幅を小さくせざるを得ないときに生じる上記の問題(K1)〜(K3)を抑制することができる、フレキシブルプリント配線板、その製造方法、およびこれを用いた電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のフレキシブルプリント配線板は、導体層と、該導体層の上に位置する絶縁層と、該絶縁層の上に形成された配線回路とを備える。このフレキシブルプリント配線板は、配線回路および絶縁層を貫通し、導体層に達するビアホールがあり、ビアホールの上端の直径が導体層に達した下端の直径よりも5μm以上大きいことを特徴とする。
【0006】
上記の構成によって、(E1)絶縁層をエッチングしてビアホールを完成するためのエッチング液が、当該ビアホールの孔に十分行き渡るように供給されやすくなる。これによって、導体層と、アディティブ法またはサブトラクティブ法で形成された配線回路とが導通不良になる事態を防止することができる。(E2)ビアホールの容積が増えて、充填する導電性ペーストのベース量も増える。このため、導電性ペースト量の調節の程度を緩和することができる。この結果、周囲の配線との短絡を抑制し、また導体層と配線回路との導通不完全を回避することができる。(E3)スクリーン印刷による導電性ペーストの印刷のずれ許容範囲を大きくすることができる。この結果、導電性ペーストの位置ずれ供給による短絡等を抑制することができる。上記の(E1)〜(E3)は、それぞれ問題(K1)〜(K3)を克服する作用である。さらに、(E4)ビアホール上端の直径が、下端の直径より大きいので、ビアホール内壁面の面積が増大する。この結果、導電性ペーストの接触面積が増大して接触抵抗を減らすことができる。なお、上記のビアホールには、導電性ペーストが充填され、配線回路と導体層との導通をとることを前提とする。
【0007】
配線回路の層内のビアホールの部分において、上端の直径を配線回路底部の直径よりも大きくすることができる。これによって、配線幅の狭小化を実現しながら、上記(E1)〜(E4)の作用を得ることができる。この結果、配線回路の小型化、ひいてはフレキシブルプリント配線板、もしくは電子機器全体の小型化に資することができる。
【0008】
導体層をステンレススティール箔として、ハードディスク装置の磁気ヘッドサスペンション用とすることができる。ハードディスク装置の磁気ヘッドサスペンション用には、比較的腰の強い弾性が必要であり、このためステンレススティール箔を好適に用いることができる。ステンレススティール箔は導電性も高く、アースをとることができる。
【0009】
本発明のフレキシブルプリント配線板の製造方法は、導体層と、該導体層の上に位置する絶縁層と、該絶縁層の上に配線回路とを備えるフレキシブルプリント配線板を製造する。この製造方法は、絶縁層上に、第1貫通孔が設けられた配線回路を、アディティブ法で形成する工程と、第1貫通孔に合う開口部を持つレジストパターンを配線回路上に形成する工程と、レジストパターンを用いて、配線回路層の第1貫通孔を、第1エッチングにより広げて配線貫通孔とする工程と、そのレジストパターンを用いて、第2エッチングにより、配線貫通孔を延ばして絶縁層貫通孔をあけて、導体層に達するビアホールを形成する工程とを備えることを特徴とする。
【0010】
上記の製造方法によれば、第1エッチングでは、配線回路の材料をエッチングして絶縁層をエッチングしない第1エッチャントを用いることを前提とする。このため、配線回路の第1貫通孔を意図したように適切な広さおよび形状に精度よく広げて、配線貫通孔とすることができる。第2エッチングでは、配線回路および導体層をエッチングせず絶縁層(樹脂)をエッチングする第2エッチャントを用いることを前提とする。このため、配線貫通孔を下方に延ばして絶縁層貫通孔を精度よく形成することができる。これによって、上記(E1)〜(E4)の作用を奏するフレキシブルプリント配線板を簡単な製造方法の変更によって得ることができる。
【0011】
レジストパターンの開口部の直径を、第1貫通孔の直径よりも、10μm〜50μm大きくするのがよい。レジストパターンを、その開口部を第1貫通孔に合わせて形成するとき、開口部は第1貫通孔の軸線に対して±15μm程度ずれる。上記のようにレジストパターンの開口部の直径を大きくすることで、所定範囲のずれを許容することができ、また、ビアホール上端の直径を大きくすることを容易にできる。
【0012】
本発明のフレキシブルプリント配線板の別の製造方法は、導体層と、該導体層の上に位置する絶縁層と、該絶縁層の上に配線回路とを備えるフレキシブルプリント配線板を製造する。この製造方法は、絶縁層上に、第1貫通孔が設けられた配線回路層を、アディティブ法で形成する工程と、レーザービームを照射して第1貫通孔を広げて配線貫通孔を形成しながら、絶縁層に絶縁層貫通孔をあけて、導体層に達するビアホールを形成する工程とを備えることを特徴とする。
【0013】
上記の製造方法によれば、レーザーを用いて上端直径が大きいビアホールを導体層に至るように設けて、上記(E1)〜(E4)の作用を備えるフレキシブルプリント配線板を得ることができる。このため、エッチングの適用が好ましくない場合に、上端の直径が下端の直径より大きいビアホールを得るために有効な方法となる。上記のレーザービームの直径は、第1貫通孔の直径よりも大きめにすることがよく、またそのレーザーパワーは、樹脂層は貫通するが、導体層を貫通しない範囲のものとする。また、レーザービームの、配線に照射される部分はビーム中心ではなく、中心から外れた部分でエネルギ密度は中心より低いが、配線を貫通しない程度のエネルギを投入するのがよい。
【0014】
本発明の電子機器は、上記のいずれかのフレキシブルプリント配線板、またはいずれかの製造方法で製造されたフレキシブルプリント配線板が用いられたことを特徴とする。これによって、小型化して信頼性の高いフレキシブルプリント配線板を用いて、高信頼性の小型化した電子機器を得ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のフレキシブルプリント配線板シート等によって、ビアホールを設ける部分の配線幅を小さくせざるを得ないときに生じる問題(K1)〜(K3)を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態1におけるFPCのグランド部の断面図である。
【図2】図1のFPCを製造する方法を示すフローチャートである。
【図3】(a)は、図1のFPCの製造において、ステンレス箔上にポリイミド層の基部絶縁層を形成した状態、(b)は配線回路を形成するためのレジストパターンを形成した状態、(c)はアディティブ法によりレジストパターン開口部に、第1貫通孔内蔵の配線を形成した状態、(d)はレジストパターンを除去した状態、を示す断面図である。
【図4】(e)は第1エッチング(ソフトエッチング)のためにレジストパターンを形成した状態、(f)は第1エッチングを行って第1貫通孔を広げた状態、(g)は、第2エッチング(樹脂エッチング)によって絶縁層をエッチングして導体層に達するビアホールを形成した状態、を示す断面図である。
【図5】本発明の実施の形態2におけるFPCのグランド部の断面図である。
【図6】図5のFPCを製造する方法を示すフローチャートである。
【図7】レーザービームを照射して第1貫通孔を広げて配線貫通孔を形成しながら、絶縁層貫通孔を形成した状態を示す図である。
【図8】レーザービーム断面におけるエネルギ密度の条件を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1におけるフレキシブルプリント配線板(以下、フレキシブルプリント配線板をFPCと記す)10の部分を示す断面図である。導体層1の上には絶縁層2を介在させて、配線回路3が形成されている。配線回路3はアースするための部分であり、導電性ペースト5により、グランド部となる導体層1に導通されている。導電性ペースト5が充填される孔はビアホールHであり、導体層1に達している。ビアホールHは、配線回路3を通る部分は配線貫通孔3hにより、また絶縁層2を通る部分は絶縁層貫通孔2hにより、構成される。ビアホールHは、上端の直径dが下端の直径dよりも5μm以上大きいことが特徴である。図1の場合、ビアホールHの配線回路の部分3hにおいて、直径に上広のテーパが付いている。ビアホールHに充填される導電性ペースト5は、配線回路3の層の上端まで充填する必要はなく、導体層1と配線3との導通を確実にとることができれば、図1に示すように、途中までであってもよい。
【0018】
アディティブ法で配線3を形成するとき、レジストパターンを設けて、そのレジストパターンの開口部に配線を成膜する。レジストパターンの形成には寸法の誤差があり、配線幅を狭くして小型化をはかるときに、アースをとる部分の配線の貫通孔(第1貫通孔3pと呼ぶ。図3(d)参照)を、配線幅の所定比率以上、大きくすることはできない。上述のように高密度配線にともなう配線幅の狭小化につれ第1貫通孔3pの直径も小さくされる。この縮小化された第1貫通孔3pに起因して、上述の問題(K1)〜(K3)を生じる。このあと詳しく説明するように、ビアホールHの中の配線貫通孔3hの下端(配線下面)の直径は、アディティブ法で形成直後の第1貫通孔3pの直径より大きくされるのが原則であるが、高密度配線を余儀なくされて、配線幅が非常に狭い場合には、少しだけ大きいか、またはほとんど同じでもよい。
【0019】
導体層1としては、ステンレススティール、アルミニウム、鉄、銅、ニッケル、チタン、モリブデン、クロム、亜鉛等からなる箔を用いることができる。これらの金属を2種以上用いて多層の導体層とすることもできる。厚みは0.1μm〜100μmとするのがよい。FPC10が、ハードディスク装置の磁気ヘッドサスペンション用FPCの場合には、導体層1としては、磁気ヘッドを支持するために、所定以上の弾性係数を有する(腰の強い)ステンレススティール箔で形成するのがよい。
絶縁層2は、柔軟性、耐熱性等に優れた、ポリイミド、ポリイミドアミドなどのポリイミド系の樹脂や、ポリアミド系の樹脂を用いるのがよい。厚みは、5μm〜200μmとするのがよい。
また、配線回路3には、銅、アルミニウム、ニッケル、金、銀、はんだ、またはこれらの合金等が好適に用いられる。特に銅めっきによって形成するのがよい。銅めっきをする場合、絶縁層2の上に、下地として導電性薄膜を形成して、その上に当該銅めっき層を形成するのがよい。下地層も含めて、配線回路の層の厚みは、2μm〜50μmとするのがよい。配線回路3は、通常、レジストパターンの開口部に金属めっき法等で形成されるが、下地に導電性をもたせるために、スパッタリングや無電解めっきによって、導電性薄膜が形成される。ニッケル、クロム、銅などの薄膜、またはこれら合金の薄膜を設けるのがよい。
導電性ペースト5には、バインダー樹脂中に金属粒子等を分散させたものを用いるのがよい。金属粒子としては、銀、白金、金、銅、ニッケル、パラジウム等を用いるのがよい。とくに銀粉末や銀コート銅粉末は導電性を高めるので好ましい。バインダー樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等を使用するのがよい。とくに、これらのうち、耐熱性向上のために、熱硬化性樹脂を用いるのが好ましい。エポキシ樹脂を用いる場合には、たとえばビスフェノールA型、F型、S型、AD型、またはビスフェノールA型とビスフェノールF型との共重合型のエポキシ樹脂や、ナフタレン型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、高分子エポキシ樹脂のフェノキシ樹脂等を用いるのがよい。
上記のバインダー樹脂は、スクリーン印刷など行う場合、溶剤に溶解して使用することができる。
導電性ペースト5および配線回路3を被覆するために、絶縁性のカバー絶縁層7が形成される。カバー絶縁層7は、ポリイミド等、絶縁層2と同様の材料を用いて形成するのがよい。
【0020】
以下に、製造方法について説明しながら、図1に示すビアホールHが、これらの問題を克服することができることを紹介する。
図2は、本発明の実施の形態1のFPCの製造方法を説明するフローチャートである。また、図3および図4は、製造手順に従った、FPCのグランド部における積層構造を示す断面図である。FPCは、数十個が一枚のシートに形成されるが、シート内の各FPCは同じなので、各FPCは区別しない。フローチャートと、具体的なFPCの部分の構造とを、並行して説明してゆく。まず、磁気ヘッドサスペンション用のステンレススティール箔の導体層1の上に、ポリイミドの絶縁層2を形成する。図3(a)は、ステンレススティール箔1上にポリイミド層2を形成した状態を示す断面図である。次いで、アディティブ法で、第1貫通孔を内蔵する配線3を形成する。このとき、ポリイミド層2の上に、上述の導電性薄膜の下地を形成しておく(図3に図示せず)。図3(b)は、アディティブ法で配線を形成するために、ポリイミド層2上の下地(図示せず)の上にレジストパターン43を形成した状態を示す断面図である。レジストパターン43の開口部43hに、めっき法によって配線3が形成される。この場合、配線3の側壁は絶縁層2に対して直角に立つようになる。これに対して、従来のサブトラクティブ法では、絶縁層の全体に配線薄膜を形成したあと、配線薄膜をエッチングしながら貫通孔を含む配線回路を形成する。この場合、配線の側壁は山腹のようになだらかに絶縁層へと連続するので、配線幅は広くならざるを得ない。図3(c)は、レジストパターン43の開口部43hを充填するように、配線回路3を形成した状態を示す。次いで、図3(d)に示すように、レジストパターン43を除去すると、第1貫通孔3pを含む配線3が形成される。そして、図示はしていないが、上に配線が形成されていない下地部分をエッチングで除去しておく。図3(c)、(d)から明らかなように、第1貫通孔3pの内壁は絶縁層3に垂直に立つ。第1貫通孔3pの直径Pは、FPC10が用いられる装置によって大きく異なるが、狭小な配線3が用いられる場合、20μm〜200μm程度とするのがよい。この直径は、当然、配線3の全幅よりは所定のマージンとって小さくする。
【0021】
次いで、図2に示す第1エッチングによって第1貫通孔3pを拡大して、配線貫通孔3hを形成する。図4(e)は、配線貫通孔3hを形成するために、配線回路3および絶縁層2の上にレジストパターン45を設けた状態を示す図である。レジストパターン45の開口部45hは、多少の位置ずれが生じても第1貫通孔3pを外さないように、第1貫通孔3pの直径よりも10μm〜50μm大きくするのがよい。レジストパターンを、その開口部を第1貫通孔に合わせて形成するとき、開口部は第1貫通孔の軸線に対して±15μm程度ずれることが多く、レジストパターンの開口部の直径を大きくすることで、所定範囲のずれを許容することができ、また、貫通孔の上端の直径を大きくすることを容易にできる。
図4(f)は、第1エッチングによって配線3をエッチングして、配線貫通孔3hを形成した状態を示す断面図である。第1エッチングは、ソフトエッチングとも呼ばれ、絶縁層2をエッチングせずに、配線層3のみをエッチングするエッチャントを用いる。ソフトエッチングのエッチャントには、塩化第二鉄系エッチング液、塩化第二銅系エッチング液、水酸化アンモニウム液など、周知のエッチング液を用いることができる。図4(f)に示すように、このソフトエッチングにより、上広の形状の配線貫通孔3hが形成される。
【0022】
次に図2に示すように、第2エッチング(樹脂エッチング)により絶縁層2に絶縁層貫通孔2hをあけて、ステンレススティール箔1に達するビアホールHを形成する。図4(g)は、絶縁層貫通孔2hをあけた状態を示す断面図である。ビアホールHは、配線貫通孔3hと絶縁層貫通孔2hとが連続して形成される。上述のように配線貫通孔3hの下端の直径は、通常、第1貫通孔の直径Pより大きいが、少しだけ大きいか、またはほとんど同じでもよい。また、ビアホールHの下端、すなわち絶縁層貫通孔2hの下端の直径dと、第1貫通孔3pの直径Pとは、製造上の条件等が関係して大小関係を論ずることは簡単にはできないが、アースの導通を確実にとるためには、ほとんど同じか、ビアホールHの下端の直径dを第1貫通孔の直径Pより大きめにするのがよい。
第2エッチングでは、ポリイミド2をエッチングしてステンレススティール箔1や銅配線2をエッチングしないエッチング液を用いるのがよい。この第2エッチングのエッチング液には、オキシアルキルアミン及びアルカリ金属化合物を含む系、エタノールアミン−水酸化カリウム系などの周知のエッチング液を用いることができる。
上記の第1エッチングおよび第2エッチングともに、被エッチング体をエッチング液に浸漬するディッピング法、または所定の圧力にてエッチング液をシャワーのように被エッチング体に吹き付けるシャワー法など周知の方法を用いることができる。とくにシャワー法は、第2エッチングにおいて、絶縁層2のエッチング不足を解消するためには有効である。
【0023】
次いで、図2に示す導電性ペーストのビアホールへの充填を行う。図4(h)は、スクリーン印刷によって、ビアホールHに導電性ペーストを充填した状態を示す断面図である。スクリーン印刷によりビアホールHに導電性ペーストを充填する場合、上述のバインダー樹脂は溶剤に溶解して用いるのがよい。溶剤としては、エステル系、エーテル系、ケトン系、エーテルエステル系、アルコール系、炭化水素系、アミン系等の有機溶剤を用いるのがよい。とくに印刷性に優れた高沸点溶剤である、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート等が好ましい。これらの溶剤を数種類組み合わせて使用してもよい。上記の溶剤にバインダー樹脂、金属粒子を合わせて、三本ロール、回転撹拌脱泡機等により混練、分散を行い、均一な状態にして、導電性ペーストを作製するのがよい。
このあと、周知の方法により、カバー絶縁層(カバーレイ)7を形成する。
【0024】
上記のFPC10のグランド部では、ビアホールHは、上端の直径dは、下端の直径dより大きい。このため、次の作用を奏することができる。
(E1)絶縁層をエッチングしてビアホールを完成するためのエッチング液が、当該ビアホールの孔に十分行き渡るように供給されやすくなる。これによって、導体層と、アディティブ法で形成された配線回路とが導通不良になる事態を防止することができる。
(E2)ビアホールの容積が増えて、充填する導電性ペーストのベース量も増える。このため、導電性ペースト量の調節の程度を緩和することができる。この結果、周囲の配線との短絡を抑制し、また導体層と配線回路との導通不完全を回避することができる。
(E3)スクリーン印刷による導電性ペーストの印刷のずれ許容範囲を大きくすることができる。この結果、導電性ペーストの位置ずれ供給による短絡等を抑制することができる。
上記の(E1)〜(E3)によって、配線の狭小化およびグランド部のビアホール直径の縮小に起因する問題(K1)〜(K3)を緩和ないし克服することができる。さらに、次の作用を得ることができる。
(E4)ビアホール上端の直径が、下端の直径より大きいので、ビアホール内壁面の面積が増大する。この結果、導電性ペーストの接触面積が増大して接触抵抗を減らすことができる。
【0025】
(実施の形態2)
図5は、本発明の実施の形態2におけるFPC10の部分を示す断面図である。本実施の形態のFPC10のグランド部のビアホールHの形状は、実施の形態と同じように、上端の直径dが下端の直径dよりも大きいという点で共通する。また、導体層1/絶縁層2/配線回路3/カバー絶縁層7の積層構造、および導体層1と配線回路3とを導通させるためのビアホールH、そのビアホールHに充填される導電性ペースト5について、実施の形態1と共通する。
実施の形態1との相違点は、ビアホールHの形状であり、それはビアホールHの形成方法の相違による。本実施の形態におけるFPC10のグランド部のビアホールHは、レーザービーム照射によってあけられる。このため、ビアホールHの側面を画する、またはビアホールHに面する配線3の部分は、熱衝撃を受けて消散または蒸発した表面状態を呈する。図5では、レーザービームが照射された配線3の部分が消散したため、円環状に段差が付いた形状を示す。しかし、レーザービームの断面内のエネルギ密度分布、によっては段差が付かず、図1のビアホールHと同様にテーパが付くこともある。重要なことは、ビアホールHに面する配線回路3の部分の表面が熱衝撃によって消散または蒸発した表面性状を示すことである。レーザービームの熱衝撃によって形成された金属表面は、エッチングによって形成された金属表面とは、容易に区別できる。また、レーザービームによる熱衝撃の痕跡、ある場合には消散の結果の凹状部、が、ビアホールHの下端の導体層1に形成される。
【0026】
図6は、本実施の形態におけるFPC10の製造方法を示すフローチャートである。導体層1/絶縁層2を形成したあと、アディティブ法で、第1貫通孔3pを内蔵する配線回路3を形成する段階までは、実施の形態1と同じである。すなわち、本実施の形態において、図3(d)の状態までは、実施の形態1と同じである。図3(d)に示す状態の配線3にねらいをつけて、図7に示すように、レーザービーム31を照射する。レーザービーム31のビーム直径Lは第1貫通孔3pの直径Pより大きくするのがよい。このため、配線回路3の第1貫通孔3pに面する部分の上端付近は、熱衝撃によって消散する。そして、配線回路3に当たらないレーザービーム31の中心部は、直接、絶縁層2に照射して、絶縁層2に孔をあけ絶縁層貫通孔2hを形成する。熱衝撃による消散は、樹脂のほうが金属よりも低いエネルギ密度で生じる。レーザービーム断面におけるエネルギ密度は、絶縁層2に、直接、当たる中心部で高い。このため、配線3の上端部分をある程度、消散させながら、絶縁層2を完全に消散させて導体層1に大きく食い込んで消散させないためには、レーザービーム断面のエネルギ密度に条件を設けることが望ましい。図8は、レーザービーム31のエネルギ密度分布が軸対称であるとしたときの、直径方向のエネルギ密度を示す図である。中心位置のエネルギ密度εを100として規格化してある。このとき、中心からL/2(直径L)の位置のエネルギ密度εは、75以上、または、ε≧0.75εを満たすことが望ましい。このような条件を満たすように、光学系の配置を設定するのがよい。レーザービームの直径Lは、配線3を消散させて表面を下方に後退させる(凹部形成)上限と定義することができ、レーザービーム直径LはビアホールHの上端直径dと言い換えてもよい。これによって、上広の形状を持ち、導体層1を突き抜ける可能性を無くして、導体層1へある程度食い込んだビアホールHを形成することが容易になる。
次いで、図6に示す導電性ペーストをビアホールH内に充填する。この工程は、実施の形態1と同じように、スクリーン印刷によって行う。次いで、カバー絶縁層7を被覆する。
【0027】
図7に示すビアホールHは、上端の直径dは下端の直径dより大きく、上広の貫通孔となっている。したがって、導電性ペーストの充填に際して、上述の問題(K1)〜(K3)を克服して、(E1)〜(E3)の作用を奏することができる。さらに作用(E4)を得ることができるという点でも、実施の形態1における効果を得ることができる。
【実施例】
【0028】
次に、実施例により、本発明の作用を検証した結果について説明する。ハードディスクの磁気ヘッドサスペンション用FPCの製造において、FPCを40個含むシートを用い、グランド部の正常、異常を全数について検査した。
本発明例については、実施の形態1に説明した製造方法を用いた。グランド部は、ステンレススティール箔1(厚み20μm)/ポリイミド層2(厚み10μm)/銅めっき配線3(厚み15μm)の積層構造である。配線幅は120μmとして、第1貫通孔3pの直径Pは60μmとした。ビアホールHは、ソフトエッチング(第1エッチング)では塩化第二鉄水溶液を用い、また第2エッチングでは、モノエタノールアミン液を用いた。いずれもディッピング法によってエッチングした。導電性ペースト5には、市販のAgペーストを用い、スクリーン印刷により、ビアホールHにAgペーストを充填した。シートは120枚について、グランド部の正常、異常を検査した。シート内のFPC1つにでも異常があれば、そのシートは異常と判定した。代表的なサンプル5体についてビアホールの上端および下端の直径の平均値を測定した。
比較例については、本発明例と同じ寸法、材料によるグランド部を形成した。ただし、第1エッチング(ソフトエッチング)を省略して、配線回路3を形成後に、直ちに、第2エッチング(エッチング液:モノエタノールアミン)を行ったあと、スクリーン印刷により市販のAgペーストをその貫通孔(ビアホール)に充填する処理を行った。比較例は、本発明を実施する前の製造実績をもとにした。
結果を表1に示す。
【0029】
【表1】

【0030】
表1によれば、比較例において、配線幅およびビアホールの狭小化に起因してグランド部の異常は、異常率14%と、高い値であり、歩留まりが低く、製造原価を押し上げていた。異常の大部分は、上記の問題(K1)〜(K3)のうちの、(K1)に起因するものであった。これに対して、本発明例では、上広のビアホールが形成されており、グランド部の異常率は1%未満と大きな改善が認められた。
【0031】
上記において、本発明の実施の形態および実施例について説明を行ったが、上記に開示された本発明の実施の形態および実施例は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれら発明の実施の形態に限定されない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明のフレキシブルプリント配線板等により、ビアホールを設ける部分の配線幅を小さくせざるを得ないときに生じる、導通不良などの問題を、既存の設備を用いて、比較的簡単な構造を採用することで克服することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 導体層(ステンレス箔)、1c
レーザービーム照射凹部、2 絶縁層(ポリイミド層)、2h 絶縁層貫通孔、3 配線回路、3h 配線貫通孔、3p 第1貫通孔、5 導電性ペースト、7 カバー絶縁層、10 フレキシブルプリント配線板(FPC)、d ビアホール下端直径、d ビアホール上端直径、H ビアホール、L レーザービーム直径、P 第1貫通孔の直径、31 レーザービーム、43,45 レジストパターン、43h、45h レジストパターンの開口部、H ビアホール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体層と、該導体層の上に位置する絶縁層と、該絶縁層の上に形成された配線回路とを備えるフレキシブルプリント配線板であって、
前記配線回路および絶縁層を貫通し、前記導体層に達するビアホールがあり、
前記ビアホールの上端の直径が前記導体層に達した下端の直径よりも5μm以上大きいことを特徴とする、フレキシブルプリント配線板。
【請求項2】
前記配線回路の層内のビアホールの部分において、前記上端の直径が配線回路底部の直径よりも大きいことを特徴とする、請求項1に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項3】
前記導体層がステンレススティール箔であり、ハードディスク装置の磁気ヘッドサスペンション用であることを特徴とする、請求項1または2に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項4】
導体層と、該導体層の上に位置する絶縁層と、該絶縁層の上に配線回路とを備えるフレキシブルプリント配線板の製造方法であって、
前記絶縁層上に、第1貫通孔が設けられた前記配線回路を、アディティブ法で形成する工程と、
前記第1貫通孔に合う開口部を持つレジストパターンを前記配線回路の上に形成する工程と、
前記レジストパターンを用いて、前記配線回路の前記第1貫通孔を、第1エッチングにより広げて配線貫通孔とする工程と、
前記レジストパターンを用いて、第2エッチングにより、前記配線貫通孔を延ばして絶縁層貫通孔をあけて、前記導体層に達するビアホールを形成する工程とを備えることを特徴とする、フレキシブルプリント配線板の製造方法。
【請求項5】
前記レジストパターンの開口部の直径は、前記第1貫通孔の直径よりも、10μm〜50μm大きいことを特徴とする、請求項4に記載のフレキシブルプリント配線板の製造方法。
【請求項6】
導体層と、該導体層の上に位置する絶縁層と、該絶縁層の上に配線回路とを備えるフレキシブルプリント配線板の製造方法であって、
前記絶縁層上に、第1貫通孔が設けられた前記配線回路を、アディティブ法で形成する工程と、
レーザービームを照射して前記第1貫通孔を広げて配線貫通孔を形成しながら、前記絶縁層に絶縁層貫通孔をあけて、前記導体層に達するビアホールを形成する工程とを備えることを特徴とする、フレキシブルプリント配線板の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のフレキシブルプリント配線板、または請求項4〜6のいずれか1項に記載の製造方法で製造されたフレキシブルプリント配線板が用いられたことを特徴とする、電子機器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−177471(P2010−177471A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−18776(P2009−18776)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(500400216)住友電工プリントサーキット株式会社 (197)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】