説明

フレキシブルプリント配線板、トランス、トランスの製造方法

【課題】製造効率の向上とコスト削減を図ることができると共に、トランス等のコイルを備える機器の薄型化、小型化を図ることができるフレキシブルプリント配線板、該フレキシブルプリント配線板を用いたトランス及び該トランスの製造方法の提供を課題とする。
【解決手段】基板10の表裏両面に複数のコイルパターン20を形成してなるフレキシブルプリント配線板1であって、前記コイルパターン20を構成するコイル線は、線厚Pと線幅Qとの比が、少なくとも0.5〜1.5である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルプリント配線板、該フレキシブルプリント配線板を用いたトランス及び該トランスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
MOSFET等のスイッチング素子をゲートドライブする絶縁回路として、従来より、パルストランスが用いられている。
パルストランス等のトランスは、EE型コアやEI型コアに絶縁物を介してコイルを巻回した構造のものが一般的である。
近年、電子機器の小型化に対する要求に伴い、トランスにも小型化が要求されている。
しかしながら、既述したEE型コアやEI型コアに絶縁物を介してコイルを巻回した構造のトランスでは、小型化に限界があり、また製造工程が複雑であることから、小型化を可能とするトランスの開発が課題となっている。
コアにコイルを巻回した構造を備えるトランスに関する従来技術として、例えば下記特許文献1がある。
またEE型コアにコイルを巻回した構造を備えるトランスとして、特願2009−213552号がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−344868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1は、リアクトル及びトランスに関する発明で、ギャップに起因する諸問題を解消又は軽減する技術が開示されている。
また上記特願2009−213552号は、トランス、スイッチング装置、コンバータに関する発明で、コンバータの大型化を防止することができると共に、部品点数を増加させることがなく、スイッチング損失を低減できるトランス、該トランスと接続してなるスイッチング装置、及び該スイッチング装置を用いたコンバータに関する技術が開示されている。
しかしながら、上記特許文献1及び特願2009−213552号に示すトランスは、何れもコアにコイルを巻回した構造のトランスで、トランスの小型化を前提としていなかった。
【0005】
そこで本発明は上記従来における問題点を解決し、製造効率の向上とコスト削減を図ることができると共に、トランス等のコイルを備える機器の薄型化、小型化を図ることができるフレキシブルプリント配線板、該フレキシブルプリント配線板を用いたトランス及び該トランスの製造方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のフレキシブルプリント配線板は、基板上にコイルパターンを形成してなることを第1の特徴としている。
【0007】
上記本発明の第1の特徴によれば、フレキシブルプリント配線板は、基板上にコイルパターンを形成してなることから、巻線を巻きつけてコイル化するプロセスを省略し、容易にコイルパターンを形成することができると共に、フレキシブルプリント配線板をコイルとして用いることができる。よってトランス等のコイルを備える機器の製造効率の向上とコスト削減を図ることができると共に、薄型化、小型化を図ることができる。
【0008】
また本発明のフレキシブルプリント配線板は、上記本発明の第1の特徴に加えて、前記コイルパターンを構成するコイル線は、線厚と線幅との比が、少なくとも0.5〜1.5であることを第2の特徴としている。
【0009】
上記本発明の第2の特徴によれば、上記本発明の第1の特徴による作用効果に加えて、前記コイルパターンを構成するコイル線は、線厚と線幅との比が、少なくとも0.5〜1.5であることから、コイル線の表皮効果(特に高周波数における)を小さくすることができる。よってフレキシブルプリント配線板の漏れ磁束を効果的に防止することができるコイルとして用いることができる。
【0010】
また本発明のフレキシブルプリント配線板は、上記本発明の第1又は第2の特徴に加えて、前記コイルパターンは、前記基板の表裏両面に形成されていることを第3の特徴としている。
【0011】
上記本発明の第3の特徴によれば、上記本発明の第1又は第2の特徴による作用効果に加えて、前記コイルパターンは、前記基板の表裏両面に形成されていることから、1枚の基板で複数層のコイルを形成することができる。よってフレキシブルプリント配線板を製造効率の良いコイルとして用いることができる。
【0012】
また本発明のフレキシブルプリント配線板は、上記本発明の第3の特徴に加えて、前記コイルパターンは、スルーホールを介して直列状態に形成されていることを第4の特徴としている。
【0013】
上記本発明の第4の特徴によれば、上記本発明の第3の特徴による作用効果に加えて、前記コイルパターンは、スルーホールを介して直列状態に形成されていることから、1枚のフレキシブルプリント配線板で、ターン数の多いコイルを形成することができる。またコイルの端末部分を外周側に配置させることができ、ハンダ等の端末処理を容易にすることができる。
【0014】
また本発明のフレキシブルプリント配線板は、上記本発明の第1〜第4の何れか1つの特徴に記載のコイルパターンを、複数備えることを第5の特徴としている。
【0015】
上記本発明の第5の特徴によれば、フレキシブルプリント配線板は、上記本発明の第1〜第4の何れか1つの特徴に記載のコイルパターンを、複数備えることから、1枚の基板で、ターン数、電圧比の異なる複数のコイルを容易に形成することができる。よってフレキシブルプリント配線板を製造効率の良いコイルとして用いることができる。
【0016】
また本発明のフレキシブルプリント配線板は、上記本発明の第1〜第5の何れか1つの特徴に加えて、トランス用のコイルとして用いられることを第6の特徴としている。
【0017】
上記本発明の第6の特徴によれば、上記本発明の第1〜第5の何れか1つの特徴による作用効果に加えて、フレキシブルプリント配線板は、トランス用のコイルとして用いられることから、トランスの製造効率の向上とコスト削減を図ることができると共に、薄型化、小型化を図ることができるトランス用コイルとしてフレキシブルプリント配線板を用いることができる。
【0018】
また本発明のトランスは、フレキシブルプリント配線板上に、パターンとして形成されたコイルパターンを用いて、1次コイルと2次コイルとしてあることを第7の特徴としている。
【0019】
上記本発明の第7の特徴によれば、トランスは、フレキシブルプリント配線板上に、パターンとして形成されたコイルパターンを用いて、1次コイルと2次コイルとしてあることから、製造容易な1次コイルと2次コイルとすることができる。また製造効率の向上とコスト削減を図ることができると共に、薄型化、小型化を図ることができるトランスの1次コイル、2次コイルとすることができる。
【0020】
また本発明のトランスは、上記本発明の第7の特徴に加えて、前記1次コイルと前記2次コイルとを構成するコイルパターンは、同一のフレキシブルプリント配線板上に形成されていると共に、該フレキシブルプリント配線板を折り曲げた状態で同軸状に配置されていることを第8の特徴としている。
【0021】
上記本発明の第8の特徴によれば、上記本発明の第7の特徴による作用効果に加えて、前記1次コイルと前記2次コイルとを構成するコイルパターンは、同一のフレキシブルプリント配線板上に形成されていると共に、該フレキシブルプリント配線板を折り曲げた状態で同軸状に配置されていることから、トランスの薄型化、小型化を実現することができる。また屈曲性を備える同一のフレキシブルプリント配線板上に1次コイルと2次コイルとを構成するコイルパターンを形成することで、折り曲げ作業を容易に行うことができ、製造効率の良いトランスとすることができる。
【0022】
また本発明のトランスの製造方法は、同一のフレキシブルプリント配線板上に、複数のコイルパターンを形成するコイルパターン形成工程と、該コイルパターン形成工程により形成されたコイルパターンが、1次コイルと2次コイルとして、同軸状に配置されるように、前記フレキシブルプリント配線板を折り曲げてケース内に取り付けるフレキシブルプリント配線板取り付け工程とを少なくとも備えることを第9の特徴としている。
【0023】
上記本発明の第9の特徴によれば、トランスの製造方法は、同一のフレキシブルプリント配線板上に、複数のコイルパターンを形成するコイルパターン形成工程と、該コイルパターン形成工程により形成されたコイルパターンが、1次コイルと2次コイルとして、同軸状に配置されるように、前記フレキシブルプリント配線板を折り曲げてケース内に取り付けるフレキシブルプリント配線板取り付け工程とを少なくとも備えることから、コイルパターン形成工程により、同一のフレキシブルプリント配線板上に、ターン数、電圧比の異なる複数のコイルパターンを容易に形成することができる。またフレキシブルプリント配線板取り付け工程により、フレキシブルプリント配線板をケース内に折り曲げて取り付けるだけで、コイルパターンを、1次コイルと2次コイルとして、同軸状に配置することができる。よって1次コイル、2次コイルを巻回する工程を設ける必要がない。また屈曲性を備えるフレキシブルプリント配線板上にコイルパターンを形成することで、折り曲げ作業を容易に行うことができる。
よってトランスの製造工程を単純化でき、製造効率の向上とコスト削減を図ることができるトランスとすることができると共に、トランスの薄型化、小型化を図ることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明のフレキシブルプリント配線板、該フレキシブルプリント配線板を用いたトランス及び該トランスの製造方法によれば、製造効率の向上とコスト削減を図ることができると共に、トランス等のコイルを備える機器の薄型化、小型化を図ることができるフレキシブルプリント配線板、該フレキシブルプリント配線板を用いたトランス及び該トランスの製造方法とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板を示す図で、(a)はフレキシブルプリント配線板の平面図、(b)はフレキシブルプリント配線板の底面図、(c)はコイルパターンを形成するコイル線の正面図である。
【図2】本発明の実施形態に係るトランスの要部の断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板の変形例を示す図で、(a)はフレキシブルプリント配線板の要部の平面図、(b)はコイルパターンを形成するコイル線の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図1、図2を参照して、本発明に係るフレキシブルプリント配線板、該フレキシブルプリント配線板を用いたトランス及び該トランスの製造方法を説明し、本発明の理解に供する。しかし、以下の説明は本発明の特許請求の範囲に記載の発明を限定するものではない。
【0027】
まず図1、図2を参照して、本発明に係るフレキシブルプリント配線板1を説明する。
本発明に係るフレキシブルプリント配線板1は、基板上にコイルパターンを形成してなるフレキシブルプリント配線板である。
【0028】
このフレキシブルプリント配線板1は、図1(a)に示すように、基板10と、コイルパターン20とから構成される。
【0029】
前記基板10は、フレキシブルプリント配線板の基板となる絶縁基板である。
なお絶縁基板としては、ポリイミドを用いることができる。勿論、ポリイミドに限るものではなく、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等、フレキシブルプリント配線板を形成する絶縁基板として通常用いられるものであれば如何なるものであってもよい。
【0030】
前記コイルパターン20は、フレキシブルプリント配線板1における配線回路を形成するものである。
【0031】
このコイルパターン20は、図1(a)に示すように、導電体たるコイル線20aがコイル状に形成されたものであり、第1コイルパターン21と、第2コイルパターン22と、第3コイルパターン23とから構成される。
なお図1(a)に示すように、第2コイルパターン22と、第3コイルパターン23とは、同一形状(同一ターン数、同一線厚、同一線幅)のコイルパターンで構成されている。
このようにフレキシブルプリント配線板1上にコイルパターン20を形成する構成とすることで、コイルパターン20を容易且つ効率的に形成することができると共に、フレキシブルプリント配線板1をコイルとして用いることができる。よってトランス等のコイルを備える機器の製造効率の向上とコスト削減を図ることができると共に、薄型化、小型化を図ることができる。
【0032】
また図1(a)、図1(b)に示すように、第1コイルパターン21と、第2コイルパターン22と、第3コイルパターン23とは、同一の基板10において、それぞれが、表側面10aと裏側面10bとで同一形状、同一ターン数のコイルパターンを、図示しないスルーホールを介して直列状態に形成する構成とされている。
このような構成とすることで、1枚のフレキシブルプリント配線板で、ターン数、電圧比の異なる複数のコイルを同時に形成することができると共に、ターン数の多いコイルを容易且つ効率的に形成することができる。よってフレキシブルプリント配線板1を製造効率の良いコイルとして用いることができる。
つまり1枚のフレキシブルプリント配線板上に形成する複数のコイルパターンの、ターン数、線厚P、線幅Qに変化をもたせるだけで、ターン数、電圧比の異なるコイルを容易に形成することができる。
【0033】
なお、図1(c)に示すコイル線20aの線厚Pと線幅Qとの比は、少なくとも0.5〜1.5程度とすることが望ましい。より好適には0.9〜1.1程度とすることが望ましい。このような構成とすることで、コイル線20aの表皮効果(特に高周波数における)を小さくすることができる。よってフレキシブルプリント配線板1を、漏れ磁束を効果的に防止することができるコイルとして用いることができる。
【0034】
また図1(a)、図1(b)に示すように、基板10には、貫通孔11を形成してある。
このような構成とすることで、フレキシブルプリント配線板1を、コイルを備える機器、例えばコア(磁心)を備えるトランス用のコイルとして用いることができる。
つまりフレキシブルプリント配線板1を、図1(a)、図1(b)に示す破線位置で折り返すだけで、図2に示すように、第1コイルパターン21、第2コイルパターン22、第3コイルパターン23を容易に同軸状に配置させ、図示しないトランスのケース内に取り付けることができると共に、第1コイルパターン21をトランスの1次コイルとし、第2コイルパターン22、第3コイルパターン23をトランスの2次コイルとすることができる。
よってトランスの製造効率の向上とコスト削減を図ることができると共に、薄型化、小型化を図ることができるトランス用コイルとしてフレキシブルプリント配線板1を用いることができる。
【0035】
また図1(a)、図1(b)に示すように、第1コイルパターン21と、第2コイルパターン22と、第3コイルパターン23とは、それぞれ表側面10a及び裏側面10bとに、外部配線との接続部となる端子部21a、端子部22a、端子部23aを備えている。
よって図1(a)、図1(b)を参照して、第1コイルパターン21における電流の流れを説明すると、表側面10aに備える端子部21aを入力側とした場合、図示しない外部配線から表側面10aの端子部21aに達した電流は、内巻きにコイル線20aを伝わり、最内部で図示しないスルーホールを介して、裏側面10bに形成されるコイル線20aの最内部に達する。そこから図1(b)に示すように、外巻きにコイル線20aを伝わり、裏側面10bの端子部21aから出力される。勿論、裏側面10bに備える端子部21aを入力側とした場合は、逆の流れとなる。
【0036】
なおコイル線20aを形成する導電体としては、銅を用いることができる。
またコイル線20aの線厚Pは、0.2mm〜0.4mm程度とすることが望ましく、線幅Qは、0.2mm〜0.4mm程度とすることが望ましい。
なお本実施形態においては、1枚のフレキシブルプリント配線板1に3つのコイルパターン20を形成する構成としたが、必ずしもこのような構成に限るものではなく、1枚のフレキシブルプリント配線板に形成するコイルパターン20の数は、1以上であれば適宜変更可能である。
またコイルパターン20のターン数、基板10上における配置位置等も本実施形態のものに限るものではなく、適宜変更可能である。
また本実施形態においては、表側面10a、裏側面10bに形成するコイルパターン20を、スルーホールを介して直列状態に形成する構成としたが、必ずしもこのような構成に限るものではなく、表側面10a、裏側面10bとで独立したコイルパターン20とする構成であってもよい。このような構成とすることで、1枚のフレキシブルプリント配線板1で複数層のコイルを容易に形成することができる。よってフレキシブルプリント配線板1を製造効率の良いコイルとして用いることができる。
【0037】
次に図1、図2を参照して、本発明に係るフレキシブルプリント配線板1を用いたトランス100及び該トランス100の製造方法を説明する。
【0038】
まず本発明に係るフレキシブルプリント配線板1を用いたトランス100を説明する。
前記トランス100は、コア(磁心)を備えたパルストランスであり、図1、図2に示すように、フレキシブルプリント配線板1にパターンとして形成されたコイルパターンを、コア110に1次コイルと2次コイルとして配設することで形成されている。
【0039】
より具体的には、図2に示すように、1枚のフレキシブルプリント配線板1上に形成される第1コイルパターン21を1次コイルとし、第1コイルパターン21とはターン数、線幅Qの異なる第2コイルパターン22、第3コイルパターン23を2次コイルとして用いてある。
このような構成とすることで、ターン数、電圧比の異なる1次コイル、2次コイルを容易に形成することができ、製造効率の向上とコスト削減を図ることができるトランス100とすることができる。
【0040】
また第1コイルパターン21、第2コイルパターン22、第3コイルパターン23は、既述したように、それぞれがフレキシブルプリント配線板1の表裏両面に、図示しないスルーホールを介して直列状態に形成されていることから、1枚のフレキシブルプリント配線板1で、ターン数の多い1次コイル及び2次コイルとすることができる。よってターン数の多いコイルを容易に形成することができると共に、トランス100の性能を向上させることができる。
【0041】
また図2に示すように、1次コイルを構成する第1コイルパターン21と、2次コイル構成する第2コイルパターン22、第3コイルパターン23とは、同一のフレキシブルプリント配線板1上に形成されていると共に、フレキシブルプリント配線板1を折り曲げた状態で同軸状に配置されていることから、トランス100の薄型化、小型化を図ることができる。また屈曲性を備える同一のフレキシブルプリント配線板1上に1次コイルと2次コイルとを構成するコイルパターンを形成することで、折り曲げ作業を容易に行うことができ、製造効率の良いトランス100とすることができる。
【0042】
なお前記コア110は、フェライト等の高透磁率磁性体からなる、いわゆるE型コアを、1対相互に嵌め合わせることで形成されている。このように高透磁率磁性体でコア110を形成することで、低損失なトランス100とすることができる。
【0043】
なおトランス100に流す電流値としては、1A程度とすることが望ましい。
また本実施形態においては、トランス100の1次コイルを1つ、2次コイルを2つとする構成としたが、必ずしもこのような構成に限るものではなく、1次コイル及び2次コイルの数、ターン数等は、適宜変更可能である。
【0044】
次に本発明に係るフレキシブルプリント配線板1を用いたトランス100の製造方法(組立方法)を説明する。
【0045】
まず図示しないコイルパターン形成工程により、同一のフレキシブルプリント配線板1上に、コイルパターン20を形成する。この工程は、通常のフレキシブルプリント配板を製造する工程における、配線回路を形成する工程と同様の工程である。
より具体的には、例えば1枚の絶縁基板からなる基板10の表裏両面に、銅からなるコイル線20aをスクリーン印刷等でパターン印刷することで、コイルパターン20を形成することができる。勿論、レジストを用い、電気銅めっきでコイルパターン20を形成する構成としてもよい。
そして第1コイルパターン21、第2コイルパターン22、第3コイルパターン23のそれぞれの内側に、打ち抜き加工を用いて、貫通孔11を形成する。これによりコイルパターン20を形成してなるフレキシブルプリント配線板1が形成される。
なおコイルパターン形成工程により、1枚のフレキシブルプリント配線板上に形成されるコイルパターンの数、ターン数、線厚P、線幅Qはトランス100を形成する1次コイル、2次コイルの構成により、適宜変更可能である。
【0046】
次に図示しないフレキシブルプリント配線板取り付け工程により、コイルパターンを形成してなるフレキシブルプリント配線板1をトランス100のケース内に取り付ける。
より具体的には、コイルパターン形成工程により形成された第1コイルパターン21が1次コイルとして、第2コイルパターン22、第3コイルパターン23が2次コイルとして、同軸状に配置されるように、フレキシブルプリント配線板1を折り曲げた状態で、トランス100のケース内に取り付ける。
【0047】
更に具体的には、図2を参照して、第1コイルパターン21、第2コイルパターン22、第3コイルパターン23にそれぞれ形成した貫通孔11が同軸上になるようにフレキシブルプリント配線板1を折り曲げる。その状態で貫通孔11に1対のE型コアの中脚112を通し、1対のE型コアを嵌め合わす。そして焼成した後、図示しないケース内に配置する。
その後、第1コイルパターン21、第2コイルパターン22、第3コイルパターン23にそれぞれ設けられる端子部に、電極をはんだ付け等で取り付ける。
以上の工程を経ることで、図2に示す、トランス100が形成される。
【0048】
なおフレキシブルプリント配線板取り付け工程は、本実施形態のものに限るものではなく、コイルパターン形成工程により形成された第1コイルパターン21を1次コイルとし、第2コイルパターン22、第3コイルパターン23を2次コイルとして、同軸状に配置されるように、フレキシブルプリント配線板1を折り曲げてトランス100のケース内に取り付けることができるものであれば如何なるものであってもよい。
【0049】
次に図3を参照して、本発明の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板1の変形例を説明する。
本変形例は、フレキシブルプリント配線板1に形成するコイルパターンの構成を変化させたものである。その他の構成については、既述した本発明の実施形態と同一である。同一部材、同一機能を果たすものには、同一番号を付し、以下の説明を省略する。
なお第2コイルパターン22、第3コイルパターン23も第1コイルパターン21と同様な構成であることから、図3(a)においては、第1コイルパターン21のみを示すものとする。
【0050】
図3(a)、図3(b)に示すように、第1コイルパターン21を構成するコイル線20aには、スリット20bを形成してある。
このような構成とすることで、コイル線20aの線幅Qを幅広な構成とした場合でも、コイル線20aの線厚Pと線幅Q(スリット20bの幅を除いた、Q+Q)との比を1.0程度に近づけることができる。よってコイル線20aの表皮効果(特に高周波数における)を小さくすることができ、フレキシブルプリント配線板1を、漏れ磁束を効果的に防止することができるコイルとして用いることができる。
またスリット20bを形成することで、1つのコイルパターンで、2本のコイル線20aを形成することができる。よって一段と製造効率の良いコイルとしてフレキシブルプリント配線板1を用いることができる。
なおコイル線20aに形成するスリットの数、形状等は、本実施形態のものに限る必要はなく、適宜変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明はトランス等のコイルを備える機器用のフレキシブルプリント配線板、該フレキシブルプリント配線板を備えるトランス、該トランスの製造方法として利用することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 フレキシブルプリント配線板
10 基板
10a 表側面
10b 裏側面
11 貫通孔
20 コイルパターン
20a コイル線
20b スリット
21 第1コイルパターン
21a 端子部
22 第2コイルパターン
22a 端子部
23 第3コイルパターン
23a 端子部
100 トランス
110 コア
112 中脚
200 コイルパターン形成工程
300 フレキシブルプリント配線板取り付け工程
P 線厚
Q 線幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上にコイルパターンを形成してなるフレキシブルプリント配線板。
【請求項2】
前記コイルパターンを構成するコイル線は、線厚と線幅との比が、少なくとも0.5〜1.5であることを特徴とする請求項1に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項3】
前記コイルパターンは、前記基板の表裏両面に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項4】
前記コイルパターンは、スルーホールを介して直列状態に形成されていることを特徴とする請求項3に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載のコイルパターンを、複数備えることを特徴とするフレキシブルプリント配線板。
【請求項6】
トランス用のコイルとして用いられることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項7】
フレキシブルプリント配線板上に、パターンとして形成されたコイルパターンを用いて、1次コイルと2次コイルとしてあることを特徴とするトランス。
【請求項8】
前記1次コイルと前記2次コイルとを構成するコイルパターンは、同一のフレキシブルプリント配線板上に形成されていると共に、該フレキシブルプリント配線板を折り曲げた状態で同軸状に配置されていることを特徴とする請求項7に記載のトランス。
【請求項9】
同一のフレキシブルプリント配線板上に、複数のコイルパターンを形成するコイルパターン形成工程と、該コイルパターン形成工程により形成されたコイルパターンが、1次コイルと2次コイルとして、同軸状に配置されるように、前記フレキシブルプリント配線板を折り曲げてケース内に取り付けるフレキシブルプリント配線板取り付け工程とを少なくとも備えることを特徴とするトランスの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−192710(P2011−192710A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−55690(P2010−55690)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】