説明

フレキシブルプリント配線板

【課題】補強板の取付け領域に近いところで折り曲げても、補強板の取付け領域での半田付け状態に影響を与えないようにしたフレキシブルプリント配線板を提供すること。
【解決手段】フレキシブルプリント配線板1に取り付けられている補強板2には、凸部2iが形成されていて、その先端が、長孔1iを打ち抜くときに切除されている。凸部2iの近傍位置に、孔1d(2d)を形成したランド1mが設けられていて、孔1d(2d)を貫通させた部材と半田付けされるようになっている。その半田付け後、フレキシブルプリント配線板1は、長孔1iの長さ方向の線に沿って、補強板2側に折り曲げられるが、その折り曲げの応力によって、半田付け状態に影響を受けるようなことはない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装置等に取り付けた後、取付部の近傍で折り曲げるようにしたフレキシブルプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
フレキシブルプリント配線板を、装置等に取り付け且つ装置等と電気的に接続する場合の一つに、装置等への取付面とは反対側の面上で、装置等側の接続端子に半田付けする構成が知られている。また、フレキシブルプリント配線板は、柔軟性を有していることから、装置等を機器に内蔵した状態においては、装置等への取付面から延伸している部位を折り曲げて配置することが多い。そして、そのようにした場合の一例として、カメラ用レンズ鏡胴内において、ステップモータへの取付面から、約90度折り曲げるようにしたフレキシブルプリント配線板が、下記の特許文献1に記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開2007−93907号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、周知のように、フレキシブルプリント配線板は、柔軟性を有しているため、装置等の表面に取り付ける場合、その取り扱いが非常に難しい。例えば、特許文献1に記載されているように、ステップモータ側に設けられている複数の端子ピンに、フレキシブルプリント配線板に設けられている複数の孔を嵌めてから半田付けするような場合には、フレキシブルプリント配線板の取付部がふらついてしまい、複数の孔と複数の端子ピンとを同時に嵌合させるのが非常に難しい。
【0005】
そのため、そのような場合には、装置等に対するフレキシブルプリント配線板の取付面に、所定の平面形状をした補強板を接着剤で取り付け、その取付部に若干剛性を持たせるようにすることが知られている。また、フレキシブルプリント配線板は、装置等を機器に内蔵したときには、折り曲げられることが多いが、その場合には、装置等の外側に沿うように補強板の縁の近傍で補強板側へ折り曲げることができると、機器内でのスペース効率が有利になる。
【0006】
ところが、補強板を取り付けているとはいっても、補強板自体は比較的薄いフィルムであるため、その取付け領域は剛体ではなく可撓性を有している。そのため、補強板を取り付けている領域の近傍で、フレキシブルプリント配線板を補強板側に折り曲げると、その力が補強板を取り付けている領域にまで及んでしまうので、半田付け部が折曲部に近いところにあると、半田の接合状態に大きな影響(ひびが入るなど)を与えてしまうことになる。また、設計上はそのような影響を受けにくいところに半田付け部を設けたつもりでも、補強板を接着する場合には、いわゆる貼りズレがあるため、ズレ方によっては、所定の折り曲がり形態が得られず、半田の接合状態に影響を与えてしまうことがある。
【0007】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、補強板を取り付けていて、装置等に取り付けられた後は、前記補強板の縁の近傍部で、前記補強板を取り付けていない部位を前記補強板側へ折り曲げるようにしたフレキシブルプリント配線板において、その折曲部に近い補強板取付け領域に半田付け部を設けた場合でも、折り曲げによって半田の接合状態に影響を与えないようにしたフレキシブルプリント配線板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明のフレキシブルプリント配線板は、装置等への取付面側に所定の形状をした補強板を取り付けていて該取付面の反対側の面に半田付け箇所を有しており、装置等に取り付けられた後、前記補強板の縁の近傍部で前記補強板を取り付けていない部位を前記補強板側へ折り曲げられるフレキシブルプリント配線板であって、その折曲部の一部であって前記半田付け箇所に近いところに打ち抜き孔を形成しているようにする。
【0009】
その場合、前記打ち抜き孔は、前記折曲部に沿って長く形成された長孔であることが好ましい。また、前記補強板は、前記半田付け箇所の近傍に、該補強板の縁から前記折曲部側に突き出た凸部を有していて、前記打ち抜き孔の打ち抜き時に、該凸部の一部も切断されているようにしてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、装置等への取付面側に所定の形状をした補強板を取り付けていて該取付面の反対側の面に半田付け箇所を有しており、装置等に取り付けられた後、補強板の縁の近傍部で補強板を取り付けていない部位を補強板側へ折り曲げられるようにしたフレキシブルプリント配線板において、その折曲部の一部であって半田付け箇所に近いところに打ち抜き孔を形成するようにしたので、補強板の貼りズレに関係なく、打ち抜き孔のところで所定の形態に折り曲げられ、従来のように折り曲げによる応力によって、半田の接合状態に影響を与えないという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の実施の形態を、図示した実施例によって説明する。実施例は、例えば、特開2006−58666号公報に記載されているカメラ用羽根駆動装置と類似の構成をしたカメラ用羽根駆動装置に用いるフレキシブルプリント配線板であって、図1は、補強板を取り付けているフレキシブルプリント配線板の一部(左下方部)を切除し、補強板の一部が見えるようにして示した平面図であり、図2は、そのフレキシブルプリン配線板をカメラ用羽根駆動装置に取り付けた状態を、半田付け部の半田を取り除いた状態にして示した斜視図である。
【実施例】
【0012】
図1に示されているように、本実施例のフレキシブルプリント配線板1は、円形をした八つの孔1a,1b,1c,1d,1e,1f,1g,1hと、一つの長孔1iとを有しており、長孔1iを形成しているところよりも若干左側の位置から左側の領域を、後述のカメラ用羽根駆動装置に対する取付部としており、また、右側の先端には他の電気回路に接続するための差込部1jを設けている。
【0013】
図1において、回路パターンは、細い破線で示されており、上記の八つの孔のうち、六つの孔1c,1d,1e,1f,1g,1hの周囲の領域が、半田付け用のランド1k,1m,1n,1p,1q,1rとして図1の表面側(手前側)に露出している。
【0014】
フレキシブルプリント配線板1には、上記の取付部の背面側、即ちカメラ用羽根駆動装置への取付面側に、補強板2が接着剤で取り付けられている。そして、この補強板2には、八つの孔2a,2b,2c,2d,2e,2f,2g,2hが、上記の八つの孔1a,1b,1c,1d,1e,1f,1g,1hと同じところに、それらと同時に、打ち抜き加工によって形成されている。
【0015】
更に、この補強板2には、ランド1mの近傍部に、上記の長孔1i側に突き出た凸部2iが形成されているが、その先端部は、長孔1iを打ち抜いたときに同時に切断されている。そのため、図1においては、その切断された部位の形状を、長孔1i内に二点鎖線で示してある。
【0016】
次に、図2を用いて、このように補強板2を取り付けているフレキシブルプリント配線板1の、カメラ用羽根駆動装置への取付け構成を説明する。図2においては、主にアクチュエータの構成部分しか示されていないが、このカメラ用羽根駆動装置は、上記したように、特開2006−58666号公報に記載されているカメラ用羽根駆動装置と類似の構成をしている。しかしながら、カメラ用羽根駆動装置の具体的な構成自体は、本発明とは直接関係がない。そのため、詳細な説明は省略し、地板3に対するアクチュエータ4の取付け構成と、そのアクチュエータ4に対する上記のフレキシブルプリント配線板1の取付け構成だけを説明する。
【0017】
先ず、アクチュエータ4は、周知の電流制御式のモータであって、図示していない永久磁石製の回転子は、コイル4aに対する電流の供給方向に対応する方向へ、所定の角度だけ回転し、その出力ピンによって、図示していない羽根(例えば、シャッタ羽根)を往復回転させるようになっている。そのため、このアクチュエータ4の外側には、コイル4aに対する電流供給用の二つの端子ピン4b,4cが設けられている。また、このアクチュエータ4には、回転子の回転位置を検出するフォトセンサが内蔵されており、その四つの端子ピン4d,4e,4f,4gがアクチュエータ4の外側に突き出ている。更に、このアクチュエータ4には、フレキシブルプリント配線板1を取り付けるときの二つの位置決めピン4h,4iも設けられている。
【0018】
そして、このようなアクチュエータ4は、合成樹脂製の地板3に設けられたフック部3aと、図2においては見えない部位にあるもう一つのフック部に掛け止めされ、ビス5と、見えないところにあるもう一つのビスによって、地板3に取り付けられている。
【0019】
本実施例の上記のフレキシブルプリント配線板1は、このような構成をしたカメラ用羽根駆動装置に取り付けられている。そして、その取り付けに際しては、先ず、孔1a(2a),1b(2b)を位置決めピン4h,4iに、孔1c(2c),1d(2d)を端子ピン4b,4cに、孔1e(2e)〜1h(2h)を端子ピン4d〜4gに、それぞれ嵌合させる。このとき、フレキシブルプリント配線板1の取付面には補強板2が取り付けられているので、その作業は容易である。
【0020】
その後、端子ピン4b,4cとランド1k,1mとを、端子ピン4b,4cに巻き付けてあるコイル4aの端部と共に半田付けする。更に、端子ピン4d〜4gとランド1n,1p〜1rとの間も半田付けする。図2は、このようにして半田付けした後の状態を示したものであるが、半田付けをする直前におけるアクチュエータ4とフレキシブルプリント配線板1との関係を理解し易くするために、あえて、半田を記載せずに示してある。尚、このようなアクチュエータ4に対するフレキシブルプリント配線板1の取り付けは、アクチュエータ4を地板3に取り付ける前に行うようにすると、アクチュエータユニットとしての検査を行う場合に有利である。
【0021】
このような構成のカメラ用羽根駆動装置をカメラ内に取り付ける場合、フレキシブルプリント配線板1を、図2に示したようにして、下方に、即ち補強板2側に略90度に折り曲げる(折曲部は直角ではなく弧状)ことがある。このとき、フレキシブルプリント配線板1に長孔1iが形成されていないと、所定の折り曲げ形態(所定の折り曲げ基準線での折り曲げ形態)が得られない場合がある。
【0022】
即ち、補強板2の直線状の縁が所定の折り曲げ基準線に対して所定の間隔であり且つ平行であるならば、所定の折り曲げ形態が得られる。しかし、上記の貼りズレにより、補強板2の縁が、所定の折り曲げ基準線とは平行であっても間隔が接近していたり、平行にならず斜めになって一部が接近したりしていると、所定の折り曲げ基準線の箇所で折り曲げた場合には、折り曲げによる応力によって、補強板2の取付部の一部を撓ませてしまうようになる。そのため、直ちに又はいずれそのうちにその影響が現れ、半田を損傷させることによって、端子ピン4cに巻き付けられているコイル4aの端部とランド1mとの間の電気的な接続不良を起こしてしまう。
【0023】
そこで、本実施例の場合には、半田付け箇所に近いところ、即ちランド1mに近いところであって、実際に折り曲げる場合の目標箇所に、長孔1iを形成している。このようにすると、長孔1iの長さ方向に沿った線上で折り曲がり易くなり、且つ長孔1iの長さ方向の両側の部位に比較し、長孔1iの形成箇所では、上記のような応力を殆ど生じさせず、半田付け箇所に対する影響も殆どなくなる。
【0024】
尚、本実施例では、長孔1iを形成しているが、折り曲がり易い形状であれば、例えば、正方形の孔であっても構わない。また、折曲部に近いところに半田付け箇所が複数ある場合は、このような長孔1iを、同一線上に複数形成してもよい。更に、本実施例では、長孔1iを、一つの半田付け箇所に対して形成しているが、近接している二つ以上の半田付け箇所にわたって形成するようにしても差し支えない。
【0025】
また、本実施例の場合は、長孔1iだけではなく、補強板2に凸部2iを形成している。その理由は、本実施例では、ランド1mが、余りにも補強板2の縁に接近し過ぎて設けられているからである。そのため、凸部2iを形成し且つ長孔1iの形成位置を補強板2の縁から若干遠くすることによって、上記の応力の影響を受けにくくしている。そして、このように構成した場合には、フレキシブルプリント配線板1の柔軟性の程度にもよるが、折り曲げ線は、補強板2の縁とは平行にならないことがある。そこで、図2においては、そのような平行にならない場合の例を、一点鎖線で示してある。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】フレキシブルプリント配線板の一部を切除し、補強板の一部が見えるようにして示した実施例の平面図である。
【図2】実施例のフレキシブルプリント配線板をカメラ用羽根駆動装置に取り付けた状態を、半田付け部の半田を取り除いて示した斜視図である。
【符号の説明】
【0027】
1 フレキシブルプリント配線板
1a〜1h,2a〜2h 孔
1i 長孔
1j 差込部
1k,1m,1n,1p〜1r ランド
2 補強板
2i 凸部
3 地板
3a フック部
4 アクチュエータ
4a コイル
4b〜4g 端子ピン
4h,4i 位置決めピン
5 ビス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置等への取付面側に所定の形状をした補強板を取り付けていて該取付面の反対側の面に半田付け箇所を有しており、装置等に取り付けられた後、前記補強板の縁の近傍部で前記補強板を取り付けていない部位を前記補強板側へ折り曲げられるフレキシブルプリント配線板であって、その折曲部の一部であって前記半田付け箇所に近いところに打ち抜き孔を形成していることを特徴とするフレキシブルプリント配線板。
【請求項2】
前記打ち抜き孔は、前記折曲部に沿って長く形成された長孔であることを特徴とする請求項1に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項3】
前記補強板は、前記半田付け箇所の近傍に、該補強板の縁から前記折曲部側に突き出た凸部を有していて、前記打ち抜き孔の打ち抜き時に、該凸部の一部も切断されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のフレキシブルプリント配線板。

【図1】
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【図2】
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