説明

フレキシブル管用継手

【課題】フレキシブル管を挿入するだけのワンタッチ操作でシール状にかつ抜止め状に接続できるうえ、フレキシブル管の変形や施工後の曲げ等に対する影響を受けにくくすると共にシール性能の向上を図れ、更に部材点数並びに組立工数の減少を図る。
【解決手段】継手本体5の受口部3にフレキシブル管2の先端部を差込むに伴い該先端部が筒状のシールゴム6の内部に挿入し管端受け部6bに当接してシールゴム6を受口部内奥方向へ押込み、この押込みに伴いシール作用部6cが第1テーパ15の窄まり側に摺接することにより縮径変形してフレキシブル管2の山部の間に入り谷部9の少なくとも斜面9aに密着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体や液体等の流体を導くためのフレキシブル管を差込むだけのワンタッチ操作でシール状に且つ抜止め状に接続できるようにした差込み式のフレキシブル管用継手に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の差込み式のフレキシブル管用継手として、例えば、図11に示すように、入口側より奥側に向かって順に大径孔31aと中径孔31bと小径孔31cとを形成した継手本体31と、継手本体31の中径孔31bに摺動自在に装着され、入口側は継手本体31の大径孔31aにまで延び、フレキシブル管32の先端部分と係合するスリーブ33と、環状に形成されて弾性的に拡縮し、自由状態においてフレキシブル管32の谷部32b外周に嵌入し、拡径してスリーブ33の入口側外面に装着した抜止め用のリングスプリング34と、継手本体31の入口側にOリング35を介して螺着され、内周面にパッキン36を装着し、内奥端の内周面を、フレキシブル管32の谷部32b外周にリングスプリング34が嵌入したときの該リングスプリング34の外径よりも小径に形成した押輪37と、を備えたものがある(特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開平6−185680号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、フレキシブル管32の山部32aでパッキン36を圧縮して流体漏れを防止している上記フレキシブル管用継手では、フレキシブル管32の凹みや偏平等の変形に対する追従性に乏しくて流体漏れを発生することがあり、またフレキシブル管32の施工後の曲げ等に対しての影響も受けやすくて流体漏れの原因になるという問題があった。また、継手本体31内にパッキン36とは別にリングスプリング34を組み込み、このリングスプリング34が縮径してフレキシブル管32の谷部32bに嵌入し、フレキシブル管32に引抜き力が加えられるとこのリングスプリング34が押輪37の内奥端に係合することでフレキシブル管32の抜止めを講じているが、リングスプリング34により部材点数並びに組立工数の増大、コストアップを招くという問題があった。
【0005】
本発明は、このような問題点を解消するためになされたものであり、その目的とするところは、フレキシブル管を差込むだけのいわゆるワンタッチ操作でシール状にかつ抜止め状に接続できるうえ、フレキシブル管の変形や施工後の曲げ等に対する影響を受けにくくすると共にシール性能の向上を図れ、しかも部材点数並びに組立工数の減少、コストの削減を図れるフレキシブル管用継手を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、請求項1に記載のように、その発明の内容を理解しやすくするために図1〜図5に付した符号を参照して説明すると、継手本体5の一端部に受口部3を設け、受口部3に、外周部に円周方向全周に延びる山部8と谷部9とが管軸方向へ交互に並設されたフレキシブル管2の先端部を差込み、受口部3の内周とフレキシブル管2の先端部付近の外周との間をシールゴム6でシールするフレキシブル管用継手において、シールゴム6が、フレキシブル管2の山部8の外径と略同一の内径を有する筒状の前側胴部6aと、この前側胴部6aの前端部に内向きに張り出した管端受け部6bと、前側胴部6aの後端部に連設されるシール作用部6cとを有する形に一体形成されており、受口部3の内周にテーパ15を窄まり状に形成し、受口部3にフレキシブル管2の先端部を差込むに伴い該先端部がシールゴム6の内部に挿入され管端受け部6bに当接してシールゴム6を受口部内奥方向へ押込み、この押込みに伴いシール作用部6cがテーパ15の窄まり側に摺接することにより縮径変形してフレキシブル管2の山部8の間に入り谷部9の少なくとも斜面9aに密着するように構成してあることに特徴を有するものである。尚、本明細書および特許請求の範囲において、「自由状態」とは、ゴムシール6が拡縮径するように変形されておらず圧縮応力又は引張応力が作用していない状態を言う。
【0007】
このような構成によれば、フレキシブル管2の先端部付近の外周面と受口部3の内周面との間のシールゴム6による密封シール状態は、シールゴム6のシール作用部6cがフレキシブル管2の谷部8の少なくとも斜面9aに密着することで得られるようにしてあるので、フレキシブル管2の受口部内に挿入される先端部や先端部付近の変形及び施工後の曲げ等に対する影響を受けにくくなり、シール性能を高めることができる。
また、フレキシブル管2を受口部3に差込むに伴いフレキシブル管2の先端部がシールゴム6の内部に挿入し管端受け部6bに当接してシールゴム6を受口部3の内奥方向へ押し込み、この押し込みに伴いシール作用部6cがテーパの窄まり側に摺接することにより内向きに縮径変形してフレキシブル管2の山部8の間に入り谷部8に密着するようにしてあるので、フレキシブル管2を差込むだけのワンタッチ操作で簡単にシール状に接続することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、フレキシブル管を差込むだけのワンタッチ操作でシール状にかつ抜け止め状に接続でき、しかもシールゴムによりフレキシブル管の谷部の少なくとも斜面をシールすることでフレキシブル管の変形や施工後の曲げ等に対する影響を受けにくく、シール性能を向上でき、また抜止め突部をシールゴムと一体化することで部材点数が少なく組み付けが容易であるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づき説明する。図1は本発明の一実施例を示すフレキシブル管用継手を、フレキシブル管差込み前の状態で示す半欠截断面図、図2はフレキシブル管差込み途中の状態で示す同フレキシブル管用継手の半欠截断面図、図3はフレキシブル管差込み途中の状態で示す同フレキシブル管用継手の半欠截断面図、図4はフレキシブル管の差込み完了後の状態で示す同フレキシブル管用継手の半欠截断面図、図5の(a)はシールゴムの半欠截断面図、(b)はシールゴムの正面図、(c)はシールゴムの背面図である。
【0010】
図1に示すように、本発明に係るフレキシブル管用継手1は、一端部に金属製のフレキシブル管2の先端部を受け入れる受口部3を形成し、他端部の外周に接続用雄ねじ4を形成した継手本体5と、この継手本体5の受口部3の内部に収容されるシールゴム6と、押輪7等を備える。
【0011】
フレキシブル管2は、図1に示すように、外周部に円周方向全周に延びる山部8と谷部9とを管軸方向へ交互に並設し、その外周を塩化ビニール等の合成樹脂層10で被覆している。
【0012】
図1に示すように、継手本体5の受口部3内には入口側から内奥側に向かって順に大径孔11、中径孔12、小径孔13を連通状に形成する。小径孔13の内奥端にはストッパー部14を径方向内方へ突設している。小径孔13と中径孔12との間には第1テーパ15を小径孔13に向かって窄まり状に形成し、中径孔12と大径孔11との間には第2テーパ16を中径孔13に向かって窄まり状に形成している。
【0013】
図5の(a)〜(c)に示すように、シールゴム6は、フレキシブル管2の山部8の外径と略同一の内径を有する筒状の前側胴部6aと、この前側胴部6aの前端部に内向きに張り出した管端受け部6bと、前側胴部6aの後端部に外向きに張り出した環状のシール作用部6cと、このシール作用部6cから後方へ連設され前側胴部6aの内径より大きい内径の後側胴部6dと、この後側胴部6dの後端部に連設され後側胴部6dの内径より小さく且つ山部7の外径より大きい内径で且つ後側胴部6dの外径より大きい外径の抜止め突部6eとを有する形に一体形成されている。
前側胴部6a、シール作用部6cおよび後側胴部6dはNBR、SBR、EPDM等からなる。管端受け部6bは、それら前側胴部6a、シール作用部6cおよび後側胴部6d等と同一材料又は異材料で形成し、異材料としては例えば熱膨張性黒鉛入りゴム等耐火パッキンなどである。管端受け部6bを熱膨張性黒鉛入りゴムにより構成すると、管端受け部6bはフレキシブル管2の先端を受ける機能以外に、火災等の発生によって継手が高温に晒された場合、黒鉛が膨張し、この膨張した黒鉛がフレキシブル管2の先端部と継手本体5の小径孔13の内面との隙間を埋めることになって、高温のシール性能が確保され、耐火性性能をも発揮する。
抜止め突部6eは、前側胴部6a、シール作用部6cおよび後側胴部6dよりも硬い金属材料または硬質樹脂等で部分円弧状に形成され、この複数個が後側胴部6dの後端部の円周方向に所定間隔置きに並べて一体成型される。抜止め突部6eの外周と後端面の交わる角部には後方窄まり状のテーパcを形成している。
【0014】
このシールゴム6は、フレキシブル管2の差込み前(初期状態)において、図1に示すように、管端受け部6bおよび前側胴部6aが小径孔13内に位置し、かつシール作用部6cが中径孔12内に位置するとともに、抜止め突部6eが大径孔11内に位置するように収容配置される。
【0015】
図1に示すように、継手本体5内のストッパー部14には先端掛止め部材17を装着している。先端掛止め部材17は、拡縮径自在なC形のリング部17aと、このリング部17aの内径部の数箇所から突設する弾性変形自在な逆止爪17bとを有する形に金属や硬質樹脂等で形成されている。そして、先端掛止め部材17は、リング部17aがストッパー部14に重合するとともにリング部17aの外径部がストッパー部14の外径側に設けた円周溝14a内に係合して、逆止爪17bが小径孔13内に向けて突出するようにストッパー部14に装着される。
【0016】
図1に示すように、押輪7は、継手本体5の大径孔11の入口側に軸方向に移動可能に挿入されフレキシブル管2が挿通可能な円筒部7aを有し、この円筒部7aの入口側後端の外周には大径孔11の孔径より大きい鍔部7bを形成し、円筒部7aの入口側後端の内周にはパッキン溝18を形成し、このパッキン溝18にEPDM等よりなる断面T形状の防水パッキン19を嵌め込んでいる。円筒部7aの先端部の外周には第2テーパ16と略同一勾配の先細状のテーパ20aを、円筒部7aの先端部の内周には先拡がり状のテーパ20bをそれぞれ形成している。
【0017】
図1に示すように、押輪7の円筒部7aの外周にはスナップリング溝21を形成する一方、継手本体5の大径孔11の内周には入口側から奥側に向かって順に選択透過部材溝22、第1スナップリング溝23、第2スナップリング溝24を形成している。第1スナップリング溝23には奥側に向かって窄まり状のテーパ25を形成している。選択透過部材溝22には選択透過部材26を嵌め込んでいる。
押輪7はこれの先端部が図1のようにフレキシブル管2の差込み前におけるシールゴム6の抜止め突部6eの後側に当接もしくは近接する初期位置に位置決め保持される第1の位置決め保持手段と、前記先端部が図4のようにフレキシブル管2の差込みに伴い小径孔13内にまで押込まれるシールゴム6の抜止め突部6eの後側に当接もしくは近接する押込み位置に位置決め保持される第2の位置決め保持手段を備えている。この構成のように押輪7はフレキシブル管2の差込み前におけるシールゴム6の抜止め突部6eの後側に当接もしくは近接する初期位置に第1の位置決め保持手段で位置決め保持しておくと、フレキシブル管2の差込み前、すなわち在庫、保管時にシールゴム6は、押輪7により押し込まれるおそれなく、自由状態でシール作用部6cが中径孔12に保持されるようにしてあるため、シール作用部6cには内部応力が発生せず、シール作用部6cはフレキシブル管2が差込まれたときにはじめて弾性的に縮径してフレキシブル管2の谷部に密着するので、適切な圧縮代が長期間にわたり維持され、所定の耐用年数を保証することができる。また、先端部がフレキシブル管2の差込みに伴い小径孔13内にまで押込まれたシールゴム6の抜止め突部6eの後側に当接もしくは近接する押込み位置に位置決め保持される第2の位置決め保持手段を備えておくと、フレキシブル管2の差込み完了後にシールゴム6が入口側方向へ移動するのを阻止することができ、シールゴム6によるシール状態および抜止め状態を確保できるとともに、フレキシブル管2の引抜き阻止力を発生させることができる。
【0018】
フレキシブル管2の差込み前では、図1のように、継手本体5の第1スナップリング溝23に拡縮径自在なスナップリング(穴用のC形止め輪)27がこの内径部を大径孔11の内周面より突出して押輪7のスナップリング溝21に係脱可能に係合するように自由状態より縮径状態に変えて嵌め込まれており、これら第1スナップリング溝23、スナップリング溝21およびスナップリング27により第1の位置決め保持手段が構成され、この位置決め保持手段により押輪7は、図1のように、フレキシブル管2の差込み前において先端部がシールゴム6の中径孔12内に位置する抜止め突部6eの後側に当接もしくは近接する初期位置に位置決め保持される。
継手本体5の入口端から露出する押輪7の円筒部7aの外周の軸方向中間部にはスペーサ溝28を設け、このスペーサ溝28にC形のスペーサ29を着脱可能に嵌め込み、この嵌め込みより押輪7が、前記した初期状態の仮止め位置より不用意に押し込まれるのを阻止し、シールゴム6が不用意に押し込まれないようにしている。
【0019】
上記第2の位置決め保持手段は、継手本体5の大径孔11の内周の第1スナップリング溝23より奥側に設けた第2スナップリング溝24と、押輪7の外周に設けたスナップリング溝21とに係脱可能に係合するスナップリング27からなる。この第2の位置決め保持手段によれば、押輪7はこれの先端部がフレキシブル管2の差込みに伴い小径孔13内にまで押込まれたシールゴム6の抜止め突部6eの後側に当接もしくは近接する初期位置に確実に位置決め保持される。
【0020】
次に、上記のフレキシブル管用継手1にフレキシブル管2を接続する要領について図2〜図4を参照にして説明する。
【0021】
先ず、図2に示すように、スペーサ29をスペーサ溝28から取外し、合成樹脂層10を剥離して山部8が6個分ほど露出したフレキシブル管2を、押輪7の入口側から継手本体5の受口部3内のシールゴム6の抜止め突部7e、後側胴部6d、シール作用部6c、および前側胴部6aの順に差込み、そのフレキシブル管2の先端部をシールゴム6の管端受け部6bに当接させる。その際(即ちフレキシブル管差込み前の段階では)、シールゴム6のシール作用部6cは外向きに張り出す形に形成しているので、フレキシブル管2の差込み時にその先端部がシール作用部6cに支えてシール作用部6cが障害になるようなことなくフレキシブル管2の先端部をシールゴム6内にスムーズに挿入でき、フレキシブル管2の差込み容易性を確保できる。また、抜止め突部6eはシールゴム6と一体に形成してあるので、それだけ部材点数並びに組立工数の減少、コストの削減を図ることができる。
【0022】
引き続いて、図3に示すように、フレキシブル管2を所定深さまで差込むと、シールゴム6がフレキシブル管2と共に受口部内奥方向へ押し込まれ、この押し込みに伴いシールゴム6のシール作用部6cが第1テーパ15の窄まり側に摺接することにより該第1テーパ15で押圧されて内向きに縮径変形し、第1テーパ面15を通過して小径孔13内に移動するや否やシール作用部6cがフレキシブル管2の山部8の間に入りシール作用部6cがフレキシブル管2の谷部9の斜面9a及び谷底部9bの双方、または少なくとも斜面9aに圧縮状に密着し、これと同時にシールゴム6の抜止め突部6eが第2テーパ16の窄まり側に摺接することにより該第2テーパ16で縮径方向に押圧されながら中径孔12に移動し該中径孔12の内周面でフレキシブル管2の前記谷部9とは別の谷部9に押し込まれて嵌入する。これによりフレキシブル管2の先端部の外周面と継手本体5の小径孔11の内周面との間がシールゴム6により確実に密封シールされ、フレキシブル管2内を流れる流体がフレキシブル管2の先端部からフレキシブル管2の先端部外周と継手本体5の小径孔11内周との間を経て漏れ出るのを防止できる状態が得られるとともに、抜止め突部6eによりフレキシブル管2の抜止め状態が得られる。なお、フレキシブル管2の先端部とシールゴム6の管端受け部6bとの間でもシール機能を期することができる。
【0023】
また、図3のようにフレキシブル管2が所定深さまで差込まれると、シールゴム6の管端受け部6bの内径部及びフレキシブル管2の先端部の内面が先端掛止め部材17の逆止爪17bと小径孔11の内周面との間を該逆止爪17bの弾性縮径変形を介して通過後に該逆止爪17bに係合する。この管端受け部6bが逆止爪17bを通過する時、施工者は手応えを感じ、フレキシブル管2が所定深さまで差込まれたことを実感できる。
また、そのようにフレキシブル管2の先端部が先端掛止め部材17の逆止爪17bに係合するとともに、抜止め突部6eが谷部9に入り込むことで、フレキシブル管2が振れるのを抑制することができる。
【0024】
フレキシブル管2の差込み完了後には、図4のように押輪7を押込み、この押込みにより押輪7の先端部がシールゴム6の抜止め突部6eの後側に近接もしくは当接することで、シールゴム6が受口部3の入口側の方向へ戻り移動するのを防止できてシールゴム6によるシール状態および抜止め状態を確保できるとともに、フレキシブル管2の引抜き阻止力を発生させることができる。なお、押輪7が完全に押し込まれたのを確認する手段としては、初期状態において、継手本体5の入口端から露出する押輪7の円筒部7aの外周に着色表示を施しておいて、その着色表示部分が差込み完了により継手本体5の大径孔11に入ってしまって見えなくなることで確認することもできる。
【0025】
また、押輪7の押込みに伴い押輪7の先端部のテーパ20bがシールゴム6の抜止め突部6eのテーパcに近接対向する。したがって、このときフレキシブル管2を引き抜く方向に外力が加わったとしても、フレキシブル管2と同行する抜止め突部6eのテーパcが押輪7のテーパ20bの窄まり側に当接することにより、抜止め突部6eが後側胴部6dの弾性を介して縮径してその抜止め突部6eの内径部がフレキシブル管2の谷部9への係合力を増すので、フレキシブル管2の抜け出しが確実に阻止される。
【0026】
上記実施例では、押輪7として、上記実施例のように継手本体5の大径孔11に対し押込む形態を採るに代えて、図示省略するが継手本体5の大径孔11の内周に雌ねじを形成する一方、押輪7の円筒部7aの外周に前記雌ねじに螺合する雄ねじを設けて、押輪7の円筒部7aを大径孔11の雌ねじにねじ込むというねじ込み形態(ナット)を採ることもできる。
【0027】
図6〜図10は他の実施例を示しており、図6はフレキシブル管用継手をフレキシブル管差込み前の状態で示す半欠截断面図、図7はフレキシブル管差込み途中の状態で示す同フレキシブル管用継手の半欠截断面図、図8はフレキシブル管差込み途中の状態で示す同フレキシブル管用継手の半欠截断面図、図9はフレキシブル管の差込み完了後の状態で示す同フレキシブル管用継手の半欠截断面図、図10は分解可能な状態の同フレキシブル管用継手の半欠截断面図である。
【0028】
この実施例のフレキシブル管用継手1は、フレキシブル管2の接続完了後に、継手本体5からの押輪7およびフレキシブル管2の抜き出しを可能にして分解・再使用を可能にした点が、上記実施例のものと異なり、それ以外の構成は上記実施例のフレキシブル管用継手と同じであるため同一部材には同一符号を付してその説明を省略する。
【0029】
この実施例のフレキシブル管用継手1では、図6に示すように、上記実施例の押込み形態の押輪7を採用するとともに、この押輪7に設けたスペーサ溝28に着脱可能に装着したスペーサ29を利用する。但し、スペーサ29は、押輪7のスペーサ溝28より後方における円筒部7aと鍔部7bの交わる入隅部に第2のスペーサ溝30を設け、前記スペーサ溝28から第2のスペーサ溝30に移し替え可能にしている。そして、図9に示すように、フレキシブル管2の接続完了後においてもスペーサ29を第2のスペーサ溝30に移し変えて押輪7の押込み代を確保する。図6に示すように、継手本体5の大径孔11の内周面の第2スナップリング溝24内の奥側には該第2スナップリング溝24よりも深い第3スナップリング溝41を並べて連続状に形成し、図10に示すようにスペーサ29を第2のスペーサ溝30から取外してから押輪7を押込むとスナップリング27が第3スナップリング溝41に落ち込むことにより押輪7のスナップリング溝21との係合状態を解除して押輪7を抜き出すことができるようにしてある。
【0030】
すなわち、この実施例のフレキシブル管用継手1では、前述したように、上記実施例の押込み形態の押輪7を採用し、この押輪7は継手本体5の大径孔11内の入口側に軸方向に移動可能に挿入される。そして、押輪7はこれの先端部が図6のようにフレキシブル管2の差込み前におけるシールゴム6の抜止め突部6eの後側に当接もしくは近接する初期位置に位置決め保持される第1の位置決め保持手段と、先端部が図9のようにフレキシブル管2の差込みに伴い押込まれるシールゴム6の抜止め突部6eの後側に近接する押込み位置に位置決め保持される第2の位置決め保持手段を備えることは上記実施例の場合と同様であるが、この実施例では、更に、押輪7は図9に示す押込み位置より更に図10のように奥側に押込み可能にし、この押込みにより第2の位置決め保持手段による位置決め保持状態を解除し得る解除手段を備える。このような構成によると、フレキシブル管2の接続完了後にも、継手本体5からの押輪7およびフレキシブル管2の抜き出しを可能にして分解・再使用を可能にする。また、押輪7はフレキシブル管2の差込み前におけるシールゴム6の抜止め突部6eの後側に当接もしくは近接する初期位置に第1の位置決め保持手段で位置決め保持しておくと、フレキシブル管2の差込み前、すなわち在庫、保管時にシールゴム6は、押輪7により押し込まれるおそれなく、自由状態でシール作用部6cが中径孔12に保持されるようにしてあるため、シール作用部6cには内部応力が発生せず、シール作用部6cはフレキシブル管2が差込まれたときにはじめて弾性的に縮径してフレキシブル管2の谷部に密着するので、適切な圧縮代が長期間にわたり維持され、所定の耐用年数を保証することができる。押輪7が第2の位置決め保持手段を備えておくと、フレキシブル管2の差込み完了後にシールゴム6が入口側方向へ移動するのを阻止することができ、シールゴム6によるシール状態および抜止め状態を確保できるとともに、フレキシブル管2の引抜き阻止力を発生させることができる。
【0031】
第1の位置決め保持手段は、上記実施例の場合と同様に、図6に示すように第1スナップリング溝23、スナップリング溝21およびスナップリング27により構成される。第2の位置決め保持手段は、上記実施例の第2の位置決め保持手段とは若干異なり、継手本体5の大径孔11の内周の第1スナップリング溝23より奥側に設けた第2スナップリング溝24と、押輪7の外周に設けたスナップリング溝21とに係脱可能に係合するスナップリング27と、押輪7のスペーサ溝28より後側、即ち円筒部7aと鍔部7bの交わる入隅部に設けた第2のスペーサ溝30、および前記スペーサ溝28から取外して第2のスペーサ溝30に移し替え可能なスペーサ29からなる。この第2の位置決め保持手段によれば、押輪7はこれの先端部がフレキシブル管2の差込みに伴い小径孔13内にまで押込まれたシールゴム6の抜止め突部6eの後側に近接する初期位置に確実に位置決め保持される。
上記解除手段は、継手本体5の大径孔11の内周面の第2スナップリング溝24の奥側には該第2スナップリング溝24よりも深い第3スナップリング溝41を並べて連続状に形成し、図10のようにスペーサ29を第2のスペーサ溝30から取外して押輪7を押込むとスナップリング27が押輪7のスナップリング溝21に係合したまま押輪7と同行移動して第3スナップリング溝41内に拡径復元作用により落ち込むことにより第2の位置決め保持手段による位置決め保持状態を解除し得るようにしてある。
【0032】
しかるときは、先ず、図6のようにフレキシブル管2の先端部の合成樹脂層10を剥離して山部8が6個分ほど露出し、次いで、このフレキシブル管2を、図7に示すように、押輪7の入口側から継手本体5の受口部3内のシールゴム6の抜止め突部7e、後側胴部6d、シール作用部6c、および前側胴部6aの順に差込み、そのフレキシブル管2の先端部をシールゴム6の管端受け部6bに当接させる。
【0033】
引き続いて、図8に示すように、スペーサ29をスペーサ溝28から取外して第2のスペーサ溝30に移し替え、フレキシブル管2を所定深さまで差込むと、シールゴム6がフレキシブル管2と共に受口部内奥方向へ押し込まれ、この押し込みに伴いシールゴム6のシール作用部6cが第1テーパ15の窄まり側に摺接することにより該第1テーパ15で押圧されて内向きに縮径変形し、第1テーパ面15を通過して小径孔13内に移動するや否やフレキシブル管2の谷部9の斜面9a及び谷底部9bの双方、または少なくとも斜面9aに圧縮状に密着し、これと同時にシールゴム6の抜止め突部6eが第2テーパ16の窄まり側に摺接することにより該第2テーパ16で縮径方向に押圧されながら中径孔12に移動し該中径孔12の内周面でフレキシブル管2の前記谷部9とは別の谷部9に押し込まれて嵌入する。これにより、上記実施例の場合と同様に、フレキシブル管2の先端部の外周面と継手本体5の小径孔11の内周面との間がシールゴム6により確実に密封シールされ、フレキシブル管2内を流れる流体がフレキシブル管2の先端部からフレキシブル管2の先端部外周と継手本体5の小径孔11内周との間を経て漏れ出るのを防止できる状態が得られるとともに、抜止め突部6eによりフレキシブル管2の抜止め状態が得られる。
【0034】
また、上記実施例の場合と同様に、フレキシブル管2が所定深さまで差込まれると、シールゴム6の管端受け部6bの内径部及びフレキシブル管2の先端部の内面が先端掛止め部材17の逆止爪17bと小径孔11の内周面との間を該逆止爪17bの弾性縮径変形を介して通過後に該逆止爪17bに係合する。この管端受け部6bが逆止爪17bを通過する時、施工者は手応えを感じ、フレキシブル管2が所定深さまで差込まれたことを実感できる。また、そのようにフレキシブル管2の先端部が先端掛止め部材17の逆止爪17bに係合すとともに、抜止め突部6eが谷部9に入り込むことで、フレキシブル管2が振れるのを抑制することができる。
【0035】
フレキシブル管2の差込み完了後には、図9のように押輪7を押込み、この押込みにより押輪7の先端部がシールゴム6の抜止め突部6eの後側に近接することで、シールゴム6が受口部3の入口側の方向へ戻り移動するのを防止できてシールゴム6によるシール状態および抜止め状態を確保できるとともに、フレキシブル管2の引抜き阻止力を発生させることができる。また、押輪7の押込みに伴い押輪7の先端部のテーパ20bがシールゴム6の抜止め突部6eのテーパcに近接対向する。したがって、このときフレキシブル管2を引き抜く方向に外力が加わったとしても、フレキシブル管2と同行する抜止め突部6eのテーパcが押輪7のテーパ20bの窄まり側に当接することにより、抜止め突部6eが後側胴部6dの弾性を介して縮径してその抜止め突部6eの内径部がフレキシブル管2の谷部9への係合力を増すので、フレキシブル管2の抜け出しが確実に阻止される。
【0036】
フレキシブル管2の接続完了後は、図10のように、スペーサ29を第2のスペーサ溝30から取外して押輪7を押込むと、この押輪7の押込むに伴いスナップリング27がスナップリング溝21に係合したまま同行移動して第3スナップリング溝41内に拡径復元作用により落ち込み、これにより第2の位置決め保持手段による位置決め保持状態が解除されるため、押輪7を抜出すことができ、またフレキシブル管2を抜出すことができて分解・再使用を可能にする。
【0037】
上記の各実施例では、継手本体5の一端に受口部3を、他端の外周に接続用雄ねじ4を形成した雄ねじフレキシブル管用継手について記述したが、本発明はこれに限られず、他の構造、例えば、両端に受口部を有する左右対称のソケット形のフレキシブル管用継手や、エルボ型のフレキシブル管用継手等にも適用できることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施例を示すフレキシブル管用継手を、フレキシブル管差込み前の状態で示す半欠截断面図である。
【図2】フレキシブル管差込み途中の状態で示す同フレキシブル管用継手の半欠截断面図である。
【図3】フレキシブル管差込み途中の状態で示す同フレキシブル管用継手の半欠截断面図である。
【図4】フレキシブル管の差込み完了後の状態で示す同フレキシブル管用継手の半欠截断面図である。
【図5】(a)はシールゴムの半欠截断面図、(b)はシールゴムの正面図、(c)はシールゴムの背面図である。
【図6】他の実施例を示すフレキシブル管用継手をフレキシブル管差込み前の状態で示す半欠截断面図である。
【図7】同フレキシブル管用継手をフレキシブル管差込み途中の状態で示す半欠截断面図である。
【図8】同フレキシブル管用継手をフレキシブル管差込み途中の状態で示す半欠截断面図である。
【図9】同フレキシブル管用継手をフレキシブル管の差込み完了後の状態で示す半欠截断面図である。
【図10】同フレキシブル管用継手を分解可能な状態で示す半欠截断面図である。
【図11】従来例のフレキシブル管用継手の半欠截断面図である。
【符号の説明】
【0039】
1 フレキシブル管用継手
2 フレキシブル管
3 受口部
5 継手本体
6 シールゴム
6a 前側胴部
6b 管端受け部
6c シール作用部
6d 後側胴部
6e 抜止め突部
7 押輪
8 山部
9 谷部
9a 斜面
11 大径孔
12 中径孔
13 小径孔
14 ストッパー部
15 第1テーパ
16 第2テーパ
17 先端掛止め部材
17b 逆止爪
21 押輪のスナップリング溝
23 第1スナップリング溝
24 第2スナップリング溝
27 スナップリング
28 スペーサ溝
29 スペーサ
30 第2のスペーサ溝
41 第3スナップリング溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
継手本体の一端部に受口部を設け、前記受口部に、外周部に円周方向全周に延びる山部と谷部とが管軸方向へ交互に並設されたフレキシブル管の先端部を差込み、前記受口部の内周と前記フレキシブル管の先端部付近の外周との間をシールゴムでシールするフレキシブル管用継手において、
前記シールゴムが、前記フレキシブル管の山部外径と略同一の内径を有する筒状の前側胴部と、この前側胴部の前端部に内向きに張り出した管端受け部と、前記前側胴部の後端部に連設されるシール作用部とを有する形に一体形成されており、
前記受口部の内周にテーパを窄まり状に形成し、
前記受口部に前記フレキシブル管の先端部を差込むに伴い該先端部が前記シールゴムの内部に挿入され前記管端受け部に当接して前記シールゴムを受口部内奥方向へ押込み、この押込みに伴い前記シール作用部が前記テーパの窄まり側に摺接することにより縮径変形して前記フレキシブル管の山部の間に入り前記谷部の少なくとも斜面に密着するように構成してあることを特徴とするフレキシブル管用継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−100904(P2013−100904A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−3195(P2013−3195)
【出願日】平成25年1月11日(2013.1.11)
【分割の表示】特願2008−2845(P2008−2845)の分割
【原出願日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【出願人】(000231121)JFE継手株式会社 (140)
【Fターム(参考)】