説明

フレキシブル配線基板およびその製造方法

【課題】配線基板に貫通孔を有さず、電気メッキ用の給電リードが小さな切断径で切断されたフレキシブル配線基板およびその製造方法を提供する。
【解決手段】絶縁基板の少なくとも一方の面に形成される配線パターンと、前記配線パターンが形成される面に、前記配線パターンと電気的に接続され形成される電気メッキ用の給電リードと、を備えるフレキシブル配線基板において、前記給電リードの前記配線パターンとの接続部分はレーザ光により切断され、切断箇所の直下に位置する前記絶縁基板には前記レーザ光により除去された有底の孔を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブル配線基板に関し、特に、電気メッキ用の給電リードを有するフレキシブル配線基板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LSIなどの半導体装置を搭載するフレキシブル配線基板においては、電子機器の小型化にともなって配線の微細化や高密度化が急速に進んでいる。また、電子機器には小型化とともに高速化が要求されるようになり、一定時間により多くの情報を伝達するため、配線基板に伝送する信号の周波数が増加する傾向にある。
【0003】
信号の周波数増加(信号の高周波数化)においては、信号を伝送する配線パターン以外に存在する余分な配線における信号の反射が問題となっている。余分な配線は、例えば、メッキ処理に際して、配線パターンに接続されて電気メッキ用の電流を外部から配線パターンに供給する電気メッキ用の給電リードなどがある。
このような余分な配線が配線パターンに接続されている場合、信号は、余分な配線に流れ、その終端で反射することにより位相がずれる。位相のずれた信号が本来の信号に干渉することにより、本来の配線経路で伝送される信号のSN比(Signal-Noise Ratio)が悪化する。すなわち、伝送における雑音量が増大し、信号量に対する雑音量の比が大きくなる。
【0004】
高周波数の信号を伝送する配線基板においては、メッキ処理方法として、電気メッキ用の給電リードを必要としない無電解メッキが考えられる。無電解メッキは、メッキ溶液中の金属イオンの還元による析出や、基材金属との置換作用による析出などの化学反応による表面メッキであるため、析出速度が非常に遅く、プロセスコストが高くなり、汎用的な配線基板に使用するには適していない。
【0005】
一方、電気メッキ用の給電リードを用いて電気メッキ処理を行った後に、給電リードを配線パターンから切断し除去する方法がある。その切断方法として、電気メッキ用の給電リードの配線パターンとの接続部分をパンチングにより打ち抜いて切断する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この給電リードをパンチングにより切断する方法によれば、無電解メッキと比較して大幅にコストを削減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−273540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述したパンチングにより打ち抜いて電気メッキ用の給電リードを切断する方法では、以下の2点が問題となる。
【0008】
第一に、パンチングによる打ち抜き径の大きさには限界があることである。一般的に、打ち抜き径は、銅、ポリイミド、ソルダーレジストなどの複合材からなるフレキシブル配線基板の場合、最小でも200μm程度と考えられており、パンチングの打ち抜き精度を考慮すると、打ち抜きエリア径は300μm径以上の大きさが必要である。ところが、この大きさの打ち抜きエリアを配線基板上に確保することは、配線の微細化のため困難となっている。すなわち、例えば、図4に示すような配線基板においては、給電リード4が配
線パターン3の端部の接続パッド13に電気的に接続されるが、配線パターン3の微細化にともない接続パッド13間の距離Dは縮小し300μmよりも小さくなる傾向にある。このため、パンチングにより打ち抜く場合、パンチング切断時の位置公差も考慮した打ち抜きエリアTは配線パターン3や接続パッド13までも含むことになる。したがって、パンチングにより打ち抜く方法では余分な配線である給電リード4のみを切断することは困難である。
【0009】
第二に、パンチングにより打ち抜く場合、給電リードの切断とともに配線基板に打ち抜き貫通孔が形成されることである。半導体装置用などの配線基板においては、ICの搭載後に樹脂などによりその搭載面を樹脂封止する。この際、その配線基板の機能部である接続パッドなどのすぐ近傍に貫通孔が存在すると、貫通孔から封止樹脂が反対面側に漏れだすため、半導体装置の樹脂封止が困難となる。
【0010】
一方、上記2点を回避するために、打ち抜き貫通孔を樹脂封止エリア外に位置させることも考えられるが、余分な配線の配線長が増大することになり、信号の反射防止の効果が得られなくなる。
【0011】
本発明は、配線基板に貫通孔を有さず、電気メッキ用の給電リードが小さな切断径で切断されたフレキシブル配線基板およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の態様は、絶縁基板の少なくとも一方の面に形成される配線パターンと、前記配線パターンが形成される面に、前記配線パターンと電気的に接続され形成される電気メッキ用の給電リードと、を備えるフレキシブル配線基板において、前記給電リードの前記配線パターンとの接続部分はレーザ光により切断され、切断箇所の直下に位置する前記絶縁基板には前記レーザ光により除去された有底の孔を有することを特徴とするフレキシブル配線基板である。
【0013】
本発明の第2の態様は、絶縁基板の少なくとも一方の面に形成される配線パターンと、前記配線パターンが形成される面に、前記配線パターンに電気的に接続され形成される電気メッキ用の給電リードと、を備えるフレキシブル配線基板において、前記給電リードの前記配線パターンとの接続部分はレーザ光により切断され、切断箇所の直下に位置する前記絶縁基板には前記レーザ光により除去された孔を有し、前記絶縁基板の他方の面側には前記孔に対応する位置にレーザ光を受け止める受けパッドを有することを特徴とするフレキシブル配線基板である。
【0014】
上記第2の態様において、前記絶縁基板の両面の金属導体層がエッチングされて配線パターンおよび前記受けパッドが形成されるとともに、前記絶縁基板の両面に形成される前記配線パターン間がブラインドビアで導通していることが好ましい。
【0015】
本発明の第3の態様は、絶縁基板の少なくとも一方の面に形成される金属導体層をエッチングして配線パターンを形成するとともに、前記配線パターンが形成される面に、前記配線パターンに電気的に接続される電気メッキ用の給電リードを形成する工程と、前記配線パターンから前記給電リードを切断する切断工程と、を含むフレキシブル配線基板の製造方法において、前記切断工程は、前記給電リードの前記配線パターンとの接続部分をレーザ光により切断するとともに、切断箇所の直下に位置する前記絶縁基板に前記レーザ光により除去された有底の孔を形成することを特徴とするフレキシブル配線基板の製造方法である。
【0016】
本発明の第4の態様は、両面に金属導体層を有する絶縁基板の少なくとも一方の面をエ
ッチングして、配線パターンを形成するとともに、前記配線パターンが形成される面に、前記配線パターンに電気的に接続される電気メッキ用の給電リードを形成する形成工程と、前記配線パターンから前記給電リードを切断する切断工程と、を含むフレキシブル配線基板の製造方法において、前記形成工程は、前記配線パターンを形成するとともに、前記絶縁基板の他方の面側の前記金属導体層をエッチングして、前記給電リードの前記配線パターンとの接続部分がレーザ光により切断される位置の直下に、レーザ光を受け止める受けパッドを形成する工程を有し、前記切断工程は、前記受けパッドに対応する位置の前記給電リードにレーザ光を照射し、レーザ光の照射により前記給電リードを切断するとともに、切断箇所の直下に位置する前記絶縁基板に前記レーザ光により除去された孔を形成することを特徴とするフレキシブル配線基板の製造方法である。
【0017】
上記第4の態様において、前記絶縁基板の両面に形成される前記金属導体層間を導通するブラインドビアを形成することが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、配線基板に貫通孔を有さず、電気メッキ用の給電リードを小さな切断径で切断されたフレキシブル配線基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】(a)は、本発明の一実施形態であるフレキシブル配線基板の切断工程前の平面図であり、(b)は、(a)の断面図であり、(c)は切断工程後の断面図である。
【図2】(a)は、本発明の他の実施形態であるフレキシブル配線基板の切断工程前の平面図であり、(b)は、(a)の断面図であり、(c)は切断工程後の断面図である。
【図3】本発明の他の実施形態である多層のフレキシブル配線基板の断面図である。
【図4】フレキシブル配線基板に対する従来のパンチング方式による給電リードの切断を説明する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1の実施形態のフレキシブル配線基板)
以下に、本発明の第1の実施形態にかかるフレキシブル配線基板として、半導体装置用のフレキシブル配線基板およびその製造方法について、図面を用いて説明する。図1(a)は、本発明の一実施形態であるフレキシブル配線基板の切断工程前の平面図であり、図1(b)は、図1(a)の断面図であり、図1(c)は切断工程後の断面図である。
【0021】
本実施形態にかかるフレキシブル配線基板は、絶縁基板2と、絶縁基板2の両面に形成される配線パターン3と、配線パターン3に接続されるメッキ用配線であってメッキ後に配線パターン3から切断された給電リード4と、給電リード4の切断箇所5の直下に位置する絶縁基板2に形成された有底の孔6と、配線パターン3を被覆保護するソルダーレジスト10と、配線パターン3の一部および接続パッド13に形成されるメッキ層11と、両面の配線パターン3を接続するメッキスルーホール14と、を備えている。
【0022】
配線パターン3は、図1(c)に示すように、絶縁基板2の両面に形成されており、その一端には外部接続用の実装端子(図示せず)を有し、他端には半導体チップ接続用の接続パッド13を有する。接続パッド13には、電気メッキによってメッキ層11が形成されている。給電リード4は、配線パターン3との接続部分が除去され、配線パターン3と電気的に切断されている。なお、絶縁基板2の両面に形成される配線パターン3はメッキスルーホール14で導通している。
【0023】
電気メッキ用の給電リード4は、電気メッキにより配線パターン3および接続パッド1
3の表面にメッキ層11を形成する際に、配線パターン3へメッキ用電流を供給するために用いられる配線である。給電リード4はメッキ層11の形成後には余分な配線となり、上述したように信号を反射して雑音量(SN比)を増加させるため、給電リード4の配線パターン3との接続部分で切断され、配線パターン3から除去されることになる。
【0024】
本実施形態においては、図1(c)に示すように、給電リード4の配線パターン3との切断箇所5の直下の絶縁基板2には、有底の孔6が形成される。有底の孔6は、レーザ光で配線パターン3から給電リード4を切断する際に形成されて、絶縁基板2を貫通せず、絶縁基板2内に留まる孔である。厚さ50μm程度の絶縁基板2の場合、レーザ光の出力調整により、レーザ光で切削除去される領域が絶縁基板2を貫通せず絶縁基板2中に留まる有底の孔6とすることができる。この孔6の形状は、レーザ光の照射方向に先細ったテーパ状の形状となっている。また、レーザ光が照射され切削される切削加工領域は、図4に示すようなパンチング方式による打ち抜き領域と比較して小さく、レーザ光による切断箇所5を十分に小さく形成できる。切断箇所5は、給電リード4と配線パターン3との電気的接続を切断できる箇所であればいずれでもよいが、余分な配線の配線長が信号の反射(SN比の増加)に影響を及ぼすことを考慮すれば、給電リード4の配線パターン3(または接続パッド13)の近傍であることが好ましい。
【0025】
このように、本実施形態にかかるフレキシブル配線基板は、給電リード4の配線パターン3との接続部分がレーザ光で切断され、切断箇所5の直下の絶縁基板2にはレーザ光で除去された有底の孔6となっている。このため、切断箇所5を配線パターン3の近傍とすることが可能となり、配線パターン3に接続されて残存する余分な配線の配線長を縮小することができる。すなわち、余分な配線における信号の反射によるSN比の増加を抑制することができる。さらに、切断箇所5を小さくできるので、高周波の信号を伝送する微細な配線パターン3を有するフレキシブル配線基板に好適である。
また、レーザ光で切断して絶縁基板2を貫通する貫通孔が形成されないため、半導体装置を実装し、樹脂封止する際の樹脂の漏れ出しを防止できるとともに、絶縁基板2の強度低下を抑制することができる。
【0026】
(第1の実施形態のフレキシブル配線基板の製造方法)
次に、上記実施形態におけるフレキシブル配線基板の製造方法について、工程順に説明する。
【0027】
フレキシブル配線基板の製造方法は、絶縁基板2の両面に金属導体層を貼り合わせる工程と、両面の金属導体層を導通する工程と、絶縁基板2の一方の金属導体層をエッチングして配線パターン3および配線パターン3に接続される給電リード4を形成する工程と、絶縁基板2の他方の金属導体層をエッチングして配線パターン3を形成する工程と、給電リード4の配線パターン3との接続部分をレーザ光で切断する工程と、を含む。
【0028】
まず、絶縁基板2を用意する。この絶縁基板2としては、例えば、ポリイミド系材料からなる基板であって、50μm程度の厚さの基板を用いることができる。この絶縁基板2の表裏両面に、金属導体層としての銅箔を貼り合せる。この貼り合わせには、接着剤を用いる方法や、絶縁基板の表面粗度を所定の値に調整した後、その表面に銅箔積層材を熱圧着する方法などが適用可能である。
【0029】
銅箔が表裏両面に貼り合わされた絶縁基板2の所望の位置に、レーザ法、パンチ法、ドリル法などにより絶縁基板2の厚さ方向に貫通するスルーホール(貫通孔)を形成する。そして、無電解銅メッキなどの公知の方法により、スルーホールの内壁面に銅メッキ処理を施し、絶縁基板2の両面の銅箔をメッキスルーホール14で導通させる。この銅メッキ処理において、絶縁基板2の両面に形成される銅箔上には、さらに銅メッキ層が形成され
、その厚さが増加する。なお、表裏両面の金属導体層(配線パターン3)の導通はメッキスルーホール14に限定されず、公知の方法により導通することができる。
【0030】
続いて、絶縁基板2に貼り合わされた銅箔の表面に配線パターン3、電気メッキ用の給電リード4、接続パッド13などの電気回路をパターニングする。また、裏面の銅箔に配線パターン3をパターニングする。そして、サブトラクティブ法により、銅箔をエッチングして、絶縁基板2の表面には配線パターン3、給電リード4が電気的に接続されるようなパターンを形成し、絶縁基板2の裏面側には表面側の配線パターン3などに接続される配線パターン3を形成する。
【0031】
続いて、上記工程で形成されたパターンのうち、接続パッド13などが外部に露出するように、絶縁基板2の両面にソルダーレジスト10を塗布する。その後、外部から給電リード4を通して、配線パターン3へメッキ用電流を供給し、接続パッド13上にメッキ層11を形成する。
【0032】
そして、図1(b)に示すように、給電リード4の配線パターン3との接続部分にレーザ光12を照射し配線パターン3から給電リード4を切断することによって、フレキシブル配線基板を得る。本実施形態においては、図1(a)に示すように、レーザ光が照射され切断される切断箇所5が、給電リード4の、接続パッド13の近傍の位置となっている。切断箇所5を上記の位置とすることにより、余分な配線となる給電リード4の配線長が増加することを抑制している。また、レーザ光で切削される領域は、絶縁基板2を貫通せず、絶縁基板2中に留まるため、切断に際して形成される孔は有底の孔6となっている。
【0033】
上述したレーザ光による切断箇所は、給電リード4の配線パターン3との接続部分であればどこでもよいが、配線パターン3に接続されて残存する給電リード4の配線長が短いほど信号の反射の影響が低減することから、配線パターン3または接続パッド13などの近傍であることが好ましい。ただし、用いるレーザ機器の位置決め精度によるが、一般的なカメラアライメント方式の場合、位置決め精度が±10μmであるため、配線パターン3または接続パッド13から少なくとも15μm離れた位置を切断箇所5とすることが好ましい。
【0034】
レーザ光の出力は、レーザ光の照射により金属導体層である銅箔などを完全に除去し、かつ絶縁基板2を厚さ方向に貫通しない範囲に調整される。すなわち、切断箇所5を完全に切断して、レーザ光で切削される領域が絶縁基板2を貫通しないように、レーザ光の出力が調整される。この調整においては、レーザ光の照射される金属導体層の種類や厚さ、絶縁基板2の種類や厚さによって切断に必要とされるエネルギー量が異なるため、レーザ光の波長、ビーム径、ショット数、1ショットにおけるエネルギー密度などの諸条件を適宜設定することが好ましい。
【0035】
照射されるレーザ光の波長は、157nm以上532nm以下の紫外光〜緑色光の領域であることが好ましい。レーザ光は、その波長が532nmよりも大きくなると金属導体層に用いられる銅箔などには吸収されず、給電リード4の切断が困難となる。一方、波長が157nmよりも小さい場合、この波長域の現存するレーザ加工機を採用することは設備的に実用性がない。
【0036】
また、照射されるレーザ光のビーム径は、1μm以上20μm以下であることが好ましい。ビーム径が1μmよりも小さい場合、切断するエリアに対して、ビーム径が小さすぎるため、切断に要する時間が増加する。一方、20μmよりも大きい場合、切断するために十分なエネルギー密度を得られなくなるためである。
【0037】
また、レーザ光のエネルギー量は、レーザ光の照射エリアの銅箔などの給電リード4を完全に除去し、かつ絶縁基板2中に留まり貫通孔を形成しない範囲に設定する。
【0038】
上述したように、本実施形態においては、余分な配線となる給電リード4を配線パターンから切断する際に、レーザ光による切削領域が絶縁基板2を貫通しない有底の孔6となるようにレーザ光を照射している。この構成によれば、レーザ光で配線パターン3から余分な配線を切断できるため、配線の微細化や切断領域の確保の可否に関わらず、SN比の増加を抑制することが可能となる。しかも、レーザ光による切削領域が有底の孔6であるため、樹脂封止に際して、塗布した樹脂が流れ出すことなく封止することが可能となる。
また、パンチング方式により給電リードを切断する場合と比較して専用の金型などを必要としないためコストを削減できるばかりか、長い処理時間を必要とする無電解メッキと比較して時間などのプロセスコストを大幅に低減することが可能となる。
さらに、従来、高温のメッキ溶液を使用する無電解メッキなどにおいては、塗布されるソルダーレジストには高い耐熱性や耐薬品性が求められ、高い架橋密度を有する高分子材料が用いられたため、フレキシブル配線基板などの薄い絶縁基板では反りなどの問題があったが、本実施形態では無電解メッキを用いていないため、ソルダーレジストの選択が制限されず、反りなどを防止することが可能となる。
【0039】
なお、上記実施形態においては、絶縁基板の両面に配線パターンを有するフレキシブル配線基板について説明したが、本発明はこれに限定されず、絶縁基板の片面に配線パターンが形成される片面フレキシブル配線基板とすることもできる。
【0040】
また、上記実施形態においては、メッキ層を形成する工程の直後に、切断工程を設けているが、切断工程はメッキ層を形成する工程以降であれば特に限定されない。また、レーザ光による切断工程後に、切断時に生じる加工残渣を除去するデスミア工程を設けてもよい。
【0041】
(第2の実施形態のフレキシブル配線基板)
本発明の第2の実施形態にかかるフレキシブル配線基板として、薄型のフレキシブル配線基板について図を用いて説明する。この第2の実施形態においては、絶縁基板の両面の配線パターンがブラインドビアで導通されていること、レーザ光を受け止める受けパッドが形成されること、が第1の実施形態と異なる点である。そのほかの構造については第1の実施形態と同様であるので、ここでは第1の実施形態と異なる点について説明する。
【0042】
本実施形態にかかるフレキシブル配線基板は、図2(c)に示すように、絶縁基板2と、絶縁基板2の両面に形成される配線パターン3と、配線パターン3から切断された電気メッキ用の給電リード4と、配線パターン3を被覆保護するソルダーレジスト10と、絶縁基板2に形成される孔6と、配線パターン3上に形成されるメッキ層11と、絶縁基板2の給電リード4の形成される面とは反対側の面に、孔6に対応する位置に形成される受けパッド7と、両面の配線パターン3を接続するブラインドビア15と、を備えている。
【0043】
孔6はレーザ光の出力を調整して、比較的に厚い絶縁基板を用いた場合には、第1の実施形態のように有底の孔とすることができるが、図2に示すような薄い絶縁基板2を用いると、出力を調整しても、形成される孔6が絶縁基板2を貫通する貫通孔となりやすい。図2(c)には、切断に際して絶縁基板2に形成される孔6が貫通孔となった場合を示している。なお、孔6が貫通していない有底の孔の場合であっても良い。
【0044】
本実施形態においては、図2(c)に示すように、絶縁基板2の給電リード4の形成される面とは反対側の、レーザ光を照射する位置に受けパッド7が形成されている。受けパッド7は、レーザ光による切削を絶縁基板2で留めることができない場合において、切削
される絶縁基板2に貫通孔が形成されることを防止するためのストッパーである。受けパッド7は、絶縁基板2が貫通した場合には、レーザ光を受け止めるとともにレーザ光により形成された貫通孔における底となる。すなわち、レーザ光の切削によって絶縁基板2に形成される孔6が貫通しているかにかかわらず、受けパッド7が孔6の底または底側に位置し、レーザ光で切削される絶縁基板2には結果的に有底の孔6が形成される。
なお、受けパッド7は、配線パターン3と同様に金属導体層から形成されるが、配線パターン3とは接続されない導体パターンである。また、受けパッド7の形状は、例えば、図2(a)に示すような角型形状とすることができる。また、受けパッド7の大きさは、レーザ光による配線基板2の切削面が厚さ方向に先細るため、レーザ光が照射される領域である切削加工径の0.9倍以上の大きさであればよい。ただし、用いるレーザ加工機の位置決め精度によるが、レーザ光を照射する箇所と受けパッド7との相対位置ずれを考慮して、受けパッド7の大きさは、レーザ光による切削加工径の外径の30μm以上の大きさであることが好ましい。
【0045】
本実施形態にかかるフレキシブル配線基板は、上述した受けパッド7を設ける構成とすることによって、絶縁基板2の厚さに関わらず、レーザ光による給電リード4の切断によって絶縁基板2に貫通孔が形成されることを防止できる。
【0046】
(第2の実施形態のフレキシブル配線基板の製造方法)
続いて、上記第2の実施形態におけるフレキシブル配線基板の製造方法を第1の実施形態と異なる点について説明する。
【0047】
まず、絶縁基板2として、例えば厚さ12.5μmのポリイミド基板を用意して、その両面に金属導体層としての銅箔を貼り合わせる。その後、絶縁基板2の所望の位置における表面側の銅箔を除去し絶縁基板2を露出させ、その露出面にレーザ光を照射して絶縁基板2に貫通孔を形成することによって、ブラインドビアホールを形成する。このブラインドビアホールは、絶縁基板2の裏面側の銅箔により塞がれている。そして、無電解銅メッキなどの公知の方法により、ブラインドビアホール内を銅メッキで充填したブラインドビア15により、両面に形成される金属導体層を導通させる。
ブラインドビア15の形成においては、銅メッキ処理が、給電リード4が形成される表面側の銅箔には行われず、ブラインドビアホールの開口面および裏面側の銅箔に行われる。このため、表面側の銅箔から形成される給電リード4における切断箇所5の厚さは変化しないのに対して、裏面側の銅箔から形成される受けパッド7の厚さは増加することになる。すなわち、ブラインドビア15を形成する際の銅メッキ処理によって、レーザ光の切断に対して除去されにくい受けパッド7を形成し、貫通孔が形成されることをさらに防止することができる。したがって、レーザ光の出力調整だけでは切断工程が困難となる薄い絶縁基板2では、両面の金属導体層をブラインドビア15で導通することが好ましい。また、受けパッド7の厚さが給電リード4の厚さの1.5倍以上となることが好ましい。この構成にすることにより絶縁基板2の厚さに関わらず、レーザ光による貫通を防止することができる。
【0048】
続いて、上記第1の実施形態と同様にして、絶縁基板2の表面側には配線パターン3、および給電リード4を形成し、裏面側には配線パターン3とともに、配線パターン3に電気的に接続されない受けパッド7を形成する。受けパッド7は、図2(b)に示すように、絶縁基板2の裏面側の、給電リード4と配線パターン3との切断箇所5の直下に位置している。
【0049】
続いて、絶縁基板2の表面側の配線パターン3の一部をソルダーレジストで被覆した後、配線パターン3および接続パッド13上にメッキ層11を形成し、給電リード4の配線パターン3との接続部分(切断箇所5)にレーザ光を照射し配線パターン3から給電リー
ド4を切断することによって、フレキシブル配線基板を得る。本実施形態においては、レーザ光で形成される孔6は、絶縁基板2を貫通しているが、受けパッド7が貫通孔の底となるため、有底の孔6となっている。
【0050】
上述したように、本実施形態においては、受けパッド7を設けることにより、絶縁基板2の厚さに関わらず、貫通孔を形成することなく、レーザ光で配線パターン3から余分な配線を切断でき、信号の反射にともなうSN比の増加を抑制することができる。しかも、レーザ光による切削領域が有底の孔6となるため、樹脂封止に際して、塗布した樹脂が流れ出すことなく封止することが可能となる。
さらに、本実施形態においては、絶縁基板2の両面の金属導体層を導通するときに、ブラインドビア15を形成し、その形成の際の銅メッキ処理により、受けパッド7の厚さを切断箇所となる給電リード4の厚さよりも大きくすることで、受けパッド7がレーザ光で貫通されることを防止することができる。
【0051】
また、上記実施形態においては、単層のフレキシブル配線基板について説明したが、本発明はこれに限定されず、多層の配線基板に適用することも可能である。例えば、図3は、絶縁基板2a、2b、2cが積層された3層からなる多層の配線基板に適用した例を示す。3層のうち最上層に位置する絶縁基板2aの表面には、配線パターン3と、配線パターン3から切断された電気メッキ用の給電リード4と、切断箇所5の直下に位置する有底の孔6と、が形成されている。また、最中層の絶縁基板2bには、有底の孔6に対応する位置に受けパッド7が形成されている。なお、各配線基板は導通ビア16により電気的に接続されている。
【実施例】
【0052】
次に、本発明について実施例を用いて具体的に説明する。
【0053】
(実施例1)
絶縁基板2としての厚さ50μmのポリイミド基板の両面に厚さ9μmの銅箔を貼り合わせる。銅箔の貼り合わされたポリイミド基板に、スルーホールを設け、スルーホールの内壁面を銅メッキ処理することによりメッキスルーホール14を形成し、表裏両面の銅箔を電気的に導通させる。この銅メッキ処理の際に、銅箔と形成される銅メッキ層との合計厚さは18μmとなる。そして、エッチングにより、表面に配線パターン3(配線幅30μm)、電気メッキ用の給電リード4(配線幅30μm)、接続パッド13としてのボールパッドなどを形成するとともに、裏面に配線パターン3および受けパッド7(60μm角)を形成する。受けパッド7は、レーザ光による切断箇所5の直下、つまりレーザ光による切削面の中心に位置するように形成されている。続いて、接続パッド13が表面に露出するように、接続パッド13以外の配線パターン3に対してソルダーレジスト10を塗布して被覆保護する。そして、給電リード4によりメッキ用電流を供給して、配線パターン3の先端に接続される接続パッド13に、下地メッキとしてのNiメッキ層(厚さ2μm)を形成する。さらに、Niメッキ層上に金メッキ層(厚さ0.5μm)を形成する。最後に、接続パッド13から35μm離れた給電リード4上に、波長355nmの紫外光を発するエキシマレーザを用い、ビーム径10μmのレーザ光により直径40μmの円形にトレパニング加工により切断する。そして、本発明の一実施形態にかかるフレキシブル配線基板を得る。
【0054】
実施例1では、給電リード4が配線パターン3から切断され、ポリイミド基板上に有底の孔6が形成されている。実施例1では、用いたポリイミド基板の厚さが大きいため、レーザ光による切断に際してもポリイミド基板が貫通することはないが、貫通したとしても受けパッド7が孔6の底となっている。このように、実施例1では、給電リード4を配線パターン3の近傍から切断することが可能となるため、残存する余分な配線によるSN比
の増加を抑制することができる。また、給電リード4を切断するためのレーザ光による切削領域が貫通孔とならないため、半導体装置を搭載して樹脂封止する妨げとなることがない。しかも、ポリイミド基板上に貫通孔がないため、ポリイミド基板の強度を過度に低減することを抑制できる。
【0055】
(実施例2)
実施例2では、厚さ12.5μmのポリイミド基板を用いて、両面の銅箔の導通にブラインドビア15とした点が実施例1と異なる以外は、実施例1と同様にフレキシブル配線基板を製造した。
【0056】
実施例2では、ブラインドビア15によりポリイミド基板の両面の配線パターン3を導通したため、導通する際の銅メッキ処理により、給電リード4の切断箇所5の銅厚を、受けパッド7の厚さよりも薄く維持している。具体的には、切断箇所5の銅箔の厚さが9μmから工程中の酸洗などによる自然減で7μmとなるのに対して、受けパッド7の厚さは銅メッキ処理による厚みの増加で18μmとなっている。すなわち、実施例2では、受けパッド7の厚さが切断される給電リード4の厚さの2倍となっているため、厚さの薄いポリイミド基板を用いても、レーザ光による切削で貫通孔を形成することなく、給電リード4を配線パターンから切断することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 フレキシブル配線基板
2(2a、2b) 絶縁基板
3 配線パターン
4 給電リード
5 切断箇所
6 孔
7 受けパッド
10 ソルダーレジスト
11 メッキ層
12 レーザ光
13 接続パッド
14 メッキスルーホール
15 ブラインドビア
16 導通ビア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板の少なくとも一方の面に形成される配線パターンと、
前記配線パターンが形成される面に、前記配線パターンと電気的に接続され形成される電気メッキ用の給電リードと、を備えるフレキシブル配線基板において、
前記給電リードの前記配線パターンとの接続部分はレーザ光により切断され、切断箇所の直下に位置する前記絶縁基板には前記レーザ光により除去された有底の孔を有することを特徴とするフレキシブル配線基板。
【請求項2】
絶縁基板の少なくとも一方の面に形成される配線パターンと、
前記配線パターンが形成される面に、前記配線パターンに電気的に接続され形成される電気メッキ用の給電リードと、を備えるフレキシブル配線基板において、
前記給電リードの前記配線パターンとの接続部分はレーザ光により切断され、切断箇所の直下に位置する前記絶縁基板には前記レーザ光により除去された孔を有し、前記絶縁基板の他方の面側には前記孔に対応する位置にレーザ光を受け止める受けパッドを有することを特徴とするフレキシブル配線基板。
【請求項3】
請求項2に記載のフレキシブル配線基板において、前記絶縁基板の両面の金属導体層がエッチングされて、配線パターンおよび前記受けパッドが形成されるとともに、前記絶縁基板の両面に形成される前記配線パターン間がブラインドビアで導通していることを特徴とするフレキシブル配線基板。
【請求項4】
絶縁基板の少なくとも一方の面に形成される金属導体層をエッチングして配線パターンを形成するとともに、前記配線パターンが形成される面に、前記配線パターンに電気的に接続される電気メッキ用の給電リードを形成する工程と、
前記配線パターンから前記給電リードを切断する切断工程と、を含むフレキシブル配線基板の製造方法において、
前記切断工程は、前記給電リードの前記配線パターンとの接続部分をレーザ光により切断するとともに、切断箇所の直下に位置する前記絶縁基板に前記レーザ光により除去された有底の孔を形成することを特徴とするフレキシブル配線基板の製造方法。
【請求項5】
両面に金属導体層を有する絶縁基板の少なくとも一方の面をエッチングして、配線パターンを形成するとともに、前記配線パターンが形成される面に、前記配線パターンに電気的に接続される電気メッキ用の給電リードを形成する形成工程と、
前記配線パターンから前記給電リードを切断する切断工程と、を含むフレキシブル配線基板の製造方法において、
前記形成工程は、前記配線パターンを形成するとともに、前記絶縁基板の他方の面側の前記金属導体層をエッチングして、前記給電リードの前記配線パターンとの接続部分がレーザ光により切断される位置の直下に、レーザ光を受け止める受けパッドを形成する工程を有し、
前記切断工程は、前記受けパッドに対応する位置の前記給電リードにレーザ光を照射し、レーザ光の照射により前記給電リードを切断するとともに、切断箇所の直下に位置する前記絶縁基板に前記レーザ光により除去された孔を形成することを特徴とするフレキシブル配線基板の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載のフレキシブル配線基板の製造方法において、前記絶縁基板の両面に形成される前記金属導体層間を導通するブラインドビアを形成することを特徴とするフレキシブル配線基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−243836(P2012−243836A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−110073(P2011−110073)
【出願日】平成23年5月17日(2011.5.17)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】