説明

フレキシブル配線板の実装方法及びポリイミドシロキサン樹脂組成物

【課題】 本発明は、保護膜を形成した後で金メッキ処理を行なうフレキシブル配線板の実装方法において、耐金メッキ性が改良されたポリイミドシロキサン樹脂組成物を好適に用いた実装方法を提案することである。
【解決手段】 保護膜で覆われず露出している配線パターンを金メッキ処理する工程を含むフレキシブル配線板の実装方法において、ポリイミドシロキサン樹脂組成物が、少なくとも、置換基(カルボキシル基及び/または水酸基)を有するポリイミドシロキサン樹脂(A)とエポキシ樹脂を必須成分とする硬化剤(B)とを含んで構成され、ポリイミドシロキサン樹脂(A)の置換基に対する硬化剤(B)のエポキシ基の割合([エポキシ基の数量]/[置換基の数量])が1.5以下であることを特徴とするフレキシブル配線板の実装方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブル配線板の実装方法、及びその実装方法で好適に用いられるポリイミドシロキサン樹脂組成物に関する。特に本発明は、金メッキ処理する工程を含んで実装されるフレキシブル配線板の実装方法、及びその実装方法で好適に用いられる耐金メッキ性が改良されたポリイミドシロキサン樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子などの電子部品を実装したフレキシブル配線板は、種々の実装方法によって製造されているが、例えば次の実装方法によって好適に製造される。すなわち、絶縁フィルム表面に導電性金属の配線パタ−ンが形成された基板を準備する工程、前記基板の少なくとも接続端子部を除く配線パターンが形成された領域の配線パターン面に硬化性樹脂組成物を塗布し、次いで加熱処理して硬化した保護膜(絶縁保護膜)を形成する工程、保護膜で覆われず露出している接続端子部を含む配線パターンを金メッキ処理する工程、配線パターンの接続端子部分に金バンプなどを用いて半導体素子などの電子部品を実装する工程、次いで電子部品を例えばアンダーフィル材を用いて保護固定化する工程を含む実装方法によって好適に製造されている。
【0003】
ところで、この方法では、金メッキ処理の際に、金メッキ処理液が保護膜と導電性金属との間隙に浸透して、変色や剥がれや腐食を生じることがあり、フレキシブル配線板の信頼性が低下しかねないという問題があった。この為、この方法に用いる硬化性樹脂組成物には、耐金メッキ性の改良が求められてきた。
【0004】
一方、フレキシブル配線板の保護膜用に、置換基としてカルボキシル基及び/または水酸基を有するポリイミドシロキサン樹脂とエポキシ樹脂及び/または多価イソシアネート化合物とを含んで構成されたポリイミドシロキサン樹脂組成物を用いることは、既に公知である。そして、特許文献1には、スズメッキ浴に浸漬しても保護膜側の銅箔の変色が抑制できるポリイミドシロキサン樹脂組成物が開示されている。また、特許文献2には、スズメッキの際の保護膜と銅箔との隙間へのスズの侵入(スズ潜り)を回避するために、先にスズメッキ処理を行なった後で保護膜を形成する実装方法が採用されることが説明され、そのような実装方法で好適に用いることができるポリイミドシロキサン樹脂組成物が開示されている。
しかしながら、保護膜を形成した後で金メッキ処理を行なう実装方法で好適に用いることができるポリイミドシロキサン溶液組成物については記載がなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−304950号公報
【特許文献2】特開2004−211064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、保護膜を形成した後で金メッキ処理を行なうフレキシブル配線板の実装方法において、耐金メッキ性が改良されたポリイミドシロキサン樹脂組成物を好適に用いた実装方法を提案することである。また、保護膜を形成した後で金メッキ処理を行なうフレキシブル配線板の実装方法において好適に用いることができる耐金メッキ性が改良されたポリイミドシロキサン樹脂組成物を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の各項に関する。
1. フィルム表面に導電性金属の配線パタ−ンが形成された基板を準備する工程、少なくとも接続端子部を除く配線パタ−ンが形成された領域にポリイミドシロキサン樹脂組成物を塗布し次いで加熱処理して保護膜を形成する工程、保護膜で覆われず露出している配線パターンを金メッキ処理する工程、及び必要に応じて接続端子部分に電子部品を実装する工程を含むフレキシブル配線板の実装方法であって、
ポリイミドシロキサン樹脂組成物が、少なくとも、置換基(カルボキシル基及び/または水酸基)を有するポリイミドシロキサン樹脂(A)とエポキシ樹脂を必須成分とする硬化剤(B)とを含んで構成され、ポリイミドシロキサン樹脂(A)の置換基に対する硬化剤(B)のエポキシ基の割合([エポキシ基の数量]/[置換基の数量])が1.5以下であることを特徴とするフレキシブル配線板の実装方法。
【0008】
2. 硬化剤(B)が、エポキシ樹脂を含むことを特徴とする前記項1に記載のフレキシブル配線板の実装方法。
【0009】
3. ポリイミドシロキサン樹脂(A)の置換基当量が、2000〜5000であることを特徴とする前記項1または2に記載のフレキシブル配線板の実装方法。
【0010】
4. 少なくとも、置換基(カルボキシル基及び/または水酸基)を有するポリイミドシロキサン樹脂(A)とエポキシ樹脂を必須成分とする硬化剤(B)とを含んで構成され、ポリイミドシロキサン樹脂(A)の置換基に対する硬化剤(B)のエポキシ基の割合([エポキシ基の数量]/[置換基の数量])が1.5以下である、配線パターンを金メッキ処理する工程を含んで実装されるフレキシブル配線板の保護膜に用いられることを特徴とするポリイミドシロキサン樹脂組成物。
【0011】
5. 硬化剤(B)が、エポキシ樹脂と多価イソシアネート化合物とを含むことを特徴とする前記項4に記載のポリイミドシロキサン樹脂組成物。
【0012】
6. ポリイミドシロキサン樹脂(A)の置換基当量が、2000〜5000であることを特徴とする前記項4または5に記載のポリイミドシロキサン樹脂組成物。
【発明の効果】
【0013】
本発明によって、保護膜を形成した後で金メッキ処理を行なうフレキシブル配線板の実装方法において、耐金メッキ性が改良されたポリイミドシロキサン樹脂組成物を好適に用いた実装方法を提案することができる。また、保護膜を形成した後で金メッキ処理を行なうフレキシブル配線板の実装方法において好適に用いることができる耐金メッキ性が改良されたポリイミドシロキサン樹脂組成物を提案することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、フィルム表面に導電性金属の配線パタ−ンが形成された基板を準備する工程、少なくとも接続端子部を除く配線パタ−ンが形成された領域にポリイミドシロキサン樹脂組成物を塗布し次いで加熱処理して保護膜を形成する工程、保護膜で覆われず露出している配線パターンを金メッキ処理する工程、及び必要に応じて接続端子部分に電子部品を実装する工程を含むフレキシブル配線板の実装方法であって、ポリイミドシロキサン樹脂組成物が、少なくとも、置換基(カルボキシル基及び/または水酸基)を有するポリイミドシロキサン樹脂(A)とエポキシ樹脂を必須成分とする硬化剤(B)とを含んで構成され、ポリイミドシロキサン樹脂(A)の置換基に対する硬化剤(B)のエポキシ基の割合([エポキシ基の数量]/[置換基の数量])が1.5以下であることを特徴とするフレキシブル配線板の実装方法に関する。
【0015】
本発明において、フィルムは、柔軟性を持った電気絶縁性の耐熱性フィルムが好適であり、通常は5〜80μm厚のポリイミドフィルムが好適に用いられる。配線パターンの形成は、フィルム表面に接着剤を介して或いは接着剤なしに銅箔やアルミ箔のような導電性金属箔を積層した積層体を用い、その導電性金属箔を感光性樹脂を用いエッチング法によって回路を形成する方法や、フィルム表面に導電性金属ペーストをスクリーン印刷して回路を形成する方法などの従来公知の方法によって好適に行なうことができる。銅箔は圧延銅箔でも電解銅箔でも構わない。配線パターンの厚みは2〜80μm程度、また配線パターンの線幅は5〜500μm程度のものが好適に用いられる。
【0016】
フィルム表面に導電性金属の配線パタ−ンが形成された基板は、少なくとも接続端子部を除く配線パタ−ンが形成された領域に、本発明の特徴であるポリイミドシロキサン樹脂組成物を塗布し次いで加熱処理して保護膜が形成される。なお、配線パターンの接続端子部は、半導体素子などの電子部品を接続するインナーリードや、基板を装置の他のユニットと接続するアウターリードなどのことであり、少なくとも接続端子部に保護膜は形成されない。
【0017】
保護膜が形成された後で、保護膜で覆われず露出している配線パターンは金メッキ処理が行なわれる。金メッキ処理は、従来公知の方法を好適に採用でき、電解金メッキでもよく、また無電解金メッキでも構わない。また金メッキ処理の前にニッケルメッキ処理などの他のメッキ処理が行なわれても構わない。
【0018】
本発明のフレキシブル配線板の実装方法では、金メッキ処理が行なわれた後で、必ずしも必須ではないが、必要に応じて配線パターンの接続端子部分に金バンプなどを用いて半導体素子などの電子部品が実装され、次いで電子部品は例えばエポキシ樹脂系のアンダーフィル材や封止材によって保護固定化される。エポキシ樹脂系のアンダーフィル材や封止材は、通常60〜200℃程度の温度で加熱処理して硬化される。
【0019】
本発明の特徴であるポリイミドシロキサン樹脂組成物は、少なくとも、置換基(カルボキシル基及び/または水酸基)を有するポリイミドシロキサン樹脂(A)とエポキシ樹脂を必須成分とする硬化剤(B)とを含んで構成され、ポリイミドシロキサン樹脂(A)の置換基に対する硬化剤(B)のエポキシ基の割合([エポキシ基の数量]/[置換基の数量])が1.5以下であることを特徴とする。
【0020】
置換基(カルボキシル基及び/または水酸基)を有するポリイミドシロキサン樹脂(A)は、分子中に置換基のカルボキシル基及び/または水酸基を有するポリイミドシロキサン樹脂であり、分子中に置換基のカルボキシル基及び/または水酸基を有するユニットを導入することによって好適に得ることができる。限定するものではないが、例えば、溶媒中、テトラカルボン酸成分と、(a)ジアミノポリシロキサン、(b)置換基としてカルボキシル基及び/または水酸基を有するジアミン、及び必要に応じて(c)前記以外の他のジアミンからなるジアミン成分とを重合・イミド化することによって容易に得ることができる。
【0021】
この反応に用いる溶媒は、テトラカルボン酸成分とジアミン成分とを好適に重合・イミド化してポリイミドシロキサンを得るための溶媒環境を与えるものであれば限定されないが、溶解性が優れる有機極性溶媒が好ましい。有機極性溶媒としては、含窒素系溶媒、例えばN,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチルカプロラクタムなど、硫黄原子を含有する溶媒、例えばジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ヘキサメチルスルホルアミドなど、フェノール系溶媒、例えばクレゾール、フェノール、キシレノールなど、ジグライム系溶媒、例えばジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグライム)、テトラグライムなど、酸素原子を分子内に有する溶媒、例えばアセトン、メタノール、エタノール、エチレングリコール、ジオキサン、イソホロン、テトラヒドロフランなど、ラクトン系溶媒、例えばγ−ブチルラクトン、γ−バレロラクトンなど、その他ピリジン、テトラメチル尿素などを挙げることができる。また必要に応じてベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒やソルベントナフサ、ベンゾニトリルなど他の有機溶媒を併用してもよい。
【0022】
テトラカルボン酸成分としては、例えば2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ジフェニルエ−テルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,2−ビス(3,4−ベンゼンジカルボン酸)ヘキサフルオロプロパン、ピロメリット酸、1,4−ビス(3,4−ベンゼンジカルボン酸)ベンゼン、2,2−ビス〔4−(3,4−フェノキシジカルボン酸)フェニル〕プロパン、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,4,5−ナフタレンテトラカルボン酸、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタンなどの芳香族テトラカルボン酸、又は、それらの酸二無水物や低級アルコ−ルのエステル化物、および、シクロペンタンテトラカルボン酸、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸、3−メチル−4−シクロヘキセン−1,2,4,5−テトラカルボン酸などの脂環族系テトラカルボン酸、又は、それらの酸二無水物や低級アルコ−ルのエステル化物を好適に挙げることができる。テトラカルボン酸成分は、ジアミンと反応させることが容易なテトラカルボン酸二無水物を用いることが好ましい。
【0023】
ジアミン成分は、(a)ジアミノポリシロキサン、(b)置換基としてカルボキシル基及び/または水酸基を有するジアミン、及び必要に応じて(c)前記以外の他のジアミンによって構成される。
【0024】
(a)ジアミノポリシロキサンとしては、分子内にシリレン骨格を有するジアミン化合物であれば特に限定されないが、好ましくは下記化学式(1)で表されるジアミン化合物である。
【0025】
【化1】

化学式(1)において、Rは2価の脂肪族又は芳香族炭化水素基を示し、Rは独立に1価の脂肪族又は芳香族炭素水素基を示し、n1は2〜50の整数を示す。但し、化学式(1)中、Rは炭素数1〜6のアルキレン基又はフェニレン基、特にプロピレン基が好ましく、Rは独立に炭素数1〜5のアルキル基又はフェニル基が好ましく、n1は3〜50、特に3〜20が好ましい。ジアミノシロキサンのアミノ基は保護基で保護されていてもよい。尚、ジアミノポリシロキサンが2種以上の混合物からなる場合は、n1はアミノ当量から計算される。
【0026】
(a)ジアミノポリシロキサンの例としては、α,ω−ビス(2−アミノエチル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(4−アミノフェニル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(4−アミノ−3−メチルフェニル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジフェニルシロキサン、α,ω−ビス(4−アミノブチル)ポリジメチルシロキサンなどが挙げられる。
【0027】
(b)置換基としてカルボキシル基及び/または水酸基を有するジアミンとは、分子中にカルボキシル基及び/または水酸基を有するジアミンであればよい。このようなジアミンをポリイミドシロキサンに導入する目的は、エポキシ基やイソシアネート基との反応による硬化反応を行わせるためである。
限定するものではないが、分子中にカルボキシル基及び/または水酸基を有する芳香族ジアミンが好適であり、好ましくは下記化学式(2)で表される芳香族ジアミンである。
【0028】
【化2】

化学式(2)において、X及びYは、それぞれ独立に、直接結合、CH、C(CH、C(CF、O、ベンゼン環、SOを示し、r1はCOOH又はOHを示し、n2は1又は2であり、n3、n4はそれぞれ独立に0、1又は2、好ましくは0又は1であり、n3及びn4の少なくとも一方は1又は2である。
【0029】
化学式(2)で示されるジアミンの例としては、2,4−ジアミノフェノ−ルなどのジアミノフェノ−ル化合物類、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジハイドロキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジハイドロキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジハイドロキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラハイドロキシビフェニルなどのヒドロキシビフェニル化合物類、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジハイドロキシジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジハイドロキシジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジハイドロキシジフェニルメタン、2,2−ビス〔3−アミノ−4−ハイドロキシフェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−アミノ−3−ハイドロキシフェニル〕プロパン、2,2−ビス〔3−アミノ−4−ハイドロキシフェニル〕ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラハイドロキシジフェニルメタンなどのヒドロキシジフェニルアルカン化合物類、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジハイドロキシジフェニルエ−テル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジハイドロキシジフェニルエ−テル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジハイドロキシジフェニルエ−テル、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラハイドロキシジフェニルエ−テルなどのヒドロキシジフェニルエ−テル化合物類、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジハイドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジハイドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジハイドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラハイドロキシジフェニルスルホンなどのヒドロキシジフェニルスルホン化合物類、2,2−ビス〔4−(4−アミノ−3−ハイドロキシフェノキシ)フェニル〕プロパンなどのビス(ハイドロキシフェノキシフェニル)アルカン化合物類、4,4’−ビス(4−アミノ−3−ハイドロキシフェノキシ)ビフェニルなどのビス(ハイドロキシフェノキシ)ビフェニル化合物類、2,2−ビス〔4−(4−アミノ−3−ハイドロキシフェノキシ)フェニル〕スルホンなどのビス(ハイドロキシフェノキシフェニル)スルホン化合物類などのOH基を有するジアミン化合物を挙げることができる。
【0030】
さらに、化学式(2)で示されるジアミンの例としては、3,5−ジアミノ安息香酸、2,4−ジアミノ安息香酸などのベンゼンカルボン酸類、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジカルボキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジカルボキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジカルボキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラカルボキシビフェニルなどのカルボキシビフェニル化合物類、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジカルボキシジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジカルボキシジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジカルボキシジフェニルメタン、2,2−ビス〔3−アミノ−4−カルボキシフェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−アミノ−3−カルボキシフェニル〕プロパン、2,2−ビス〔3−アミノ−4−カルボキシフェニル〕ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラカルボキシビフェニルなどのカルボキシジフェニルアルカン化合物類、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジカルボキシジフェニルエ−テル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジカルボキシジフェニルエ−テル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジカルボキシジフェニルエ−テル、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラカルボキシジフェニルエ−テルなどのカルボキシジフェニルエ−テル化合物類、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジカルボキシジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジカルボキシジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラカルボキシジフェニルスルホンなどのカルボキシジフェニルスルホン化合物類、2,2−ビス〔4−(4−アミノ−3−カルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパンなどのビス(カルボキシフェノキシフェニル)アルカン化合物類、4,4’−ビス(4−アミノ−3−カルボキシフェノキシ)ビフェニルなどのビス(カルボキシフェノキシ)ビフェニル化合物類、2,2−ビス〔4−(4−アミノ−3−カルボキシフェノキシ)フェニル〕スルホンなどのビス(カルボキシフェノキシフェニル)スルホン化合物類などのCOOH基を有するジアミン化合物を挙げることができる。
【0031】
(c)他のジアミンは必要に応じて用いられる。(c)他のジアミンは、前記(a)ジアミノポリシロキサン及び(b)置換基としてカルボキシル基及び/または水酸基を有するジアミン以外のジアミンであれば特に限定されるものではないが、下記化学式(3)で示される複数のベンゼン環からなる芳香族ジアミンが好適である。
【0032】
【化3】

化学式(3)において、X及びYは、それぞれ独立に、直接結合、CH、C(CH、C(CF、O、ベンゼン環、SOを示し、n5は1又は2である。
【0033】
化学式(3)で示される芳香族ジアミンの例としては、1,4−ジアミノベンゼン、1,3−ジアミノベンゼン、2,4−ジアミノトルエン、1,4−ジアミノ−2,5−ジハロゲノベンゼンなどのベンゼン1個を含むジアミン類、ビス(4−アミノフェニル)エ−テル、ビス(3−アミノフェニル)エ−テル、ビス(4−アミノフェニル)スルホン、ビス(3−アミノフェニル)スルホン、ビス(4−アミノフェニル)メタン、ビス(3−アミノフェニル)メタン、ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、ビス(3−アミノフェニル)スルフィド、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、o−ジアニシジン、o−トリジン、トリジンスルホン酸類などのベンゼン2個を含むジアミン類、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェニル)ベンゼン、α,α’−ビス(4−アミノフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−アミノフェニル)−1,3−ジイソプロピルベンゼンなどのベンゼン3個を含むジアミン類、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、4,4’−(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、5,10−ビス(4−アミノフェニル)アントラセンなどのベンゼン4個以上を含むジアミン類などのジアミン化合物が挙げられる。
また、ヘキサメチレンジアミン、ジアミノドデカンなど脂肪族ジアミン化合物を上記ジアミンと共に使用することができる。
【0034】
使用するテトラカルボン酸成分とジアミン成分との割合は、略等モル、好ましくはジアミン成分1モルに対してテトラカルボン酸成分が0.95〜1.2、より好ましくは1.0〜1.1モル程度の割合である。
【0035】
また、ジアミン成分は、特に限定されないが、ジアミン成分100モル%中、好ましくは20〜95モル%、より好ましくは40〜90モル%の(a)ジアミノポリシロキサン、好ましくは5〜80モル%、より好ましくは10〜60モル%の(b)置換基としてカルボキシル基及び/または水酸基を有するジアミンを使用することができる。また必要に応じて、好ましくは0〜75モル%、より好ましくは0〜40モル%の(c)前記以外の他のジアミンを使用することができる。
【0036】
テトラカルボン酸成分とジアミン成分との「重合・イミド化」反応は、テトラカルボン酸成分とジアミン成分とが反応してイミド環を形成しながらポリイミド骨格を形成することを意味している。したがって、従来知られている重合・イミド化する方法を好適に用いることができる。例えば、溶媒中でテトラカルボン酸成分とジアミン成分とを100〜250℃程度の温度で加熱して一段で重合・イミド化することもできる。また、溶媒中でテトラカルボン酸成分とジアミン成分とを100℃以下程度の温度で反応させてポリイミド前駆体(ポリアミック酸)とし、次いで100〜250℃程度に加熱してイミド化させるか、または脱水環化試薬である無水酢酸/ピリジン系やジシクロへキシルカルボジイミド等の化学イミド化剤によってイミド化させることもできる。イミド化反応では、トルエンやキシレンなどの共沸剤を添加して反応し生成水を系外に除いても構わない。
【0037】
ポリイミドシロキサン樹脂は、有機溶媒に少なくとも3重量%以上、好ましくは5〜60重量%程度の高濃度で溶解させることができるもので、25℃の溶液粘度(E型回転粘度計)が1〜10000ポイズ、特に1〜100ポイズであることが好ましい。また、ポリイミドシロキサン樹脂はイミド化率が高いものが好ましい。分子量の目安としての対数粘度(測定濃度:0.5g/100ミリリットル、溶媒:N−メチル−2−ピロリドン、測定温度:30℃)は、0.15以上、特に0.16〜2のものが硬化物の強度、伸度などの機械的物性の点から好ましい。また、赤外吸収スペクトルから求められるイミド化率は、90%以上特に95%以上更に実質的に100%のものが好ましい。
【0038】
本発明のポリイミドシロキサン樹脂組成物の硬化剤(B)は、エポキシ樹脂を必須成分として含むものである。したがって、硬化剤(B)はエポキシ樹脂だけでも良いが、エポキシ樹脂と多価イソシアネート化合物とを含むものを好適に用いることができる。

【0039】
エポキシ樹脂としては、エポキシ基を有する化合物であれば特に限定はないが、エポキシ当量が100〜4000程度であって、分子量が300〜10000程度である液状又は固体状のものが好ましい。例えば、ビスフェノールA型やビスフェノールF型のエポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製:エピコート806、エピコート825、エピコート828、エピコート1001、エピコート1002、エピコート1003、エピコート1004、エピコート1055、エピコート1004AF,エピコート1007、エピコート1009、エピコート1010など)、3官能以上のエポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製:エピコート152、エピコート154、エピコート180シリ−ズ、エピコート157シリ−ズ、エピコート1032シリ−ズ、チバガイギ−製:MT0163など)、宇部興産株式会社製のハイカーETBN1300×40、ナガセケムテックス株式会社製のデナレックスR−45EPT、2官能のビフェニル型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製:YX4000シリーズ)、エポキシ変性ポリシロキサン(信越化学工業社製:KF105など)などを挙げることができる。
【0040】
エポキシ樹脂とともに配合される多価イソシアネートとしては、1分子中にイソシアネ−ト基を2個以上有するものであればよい。このような多価イソシアネ−ト化合物としては、脂肪族、脂環族または芳香族のジイソシアネ−ト等があり、例えば1,4−テトラメチレンジイソシアネ−ト、1,5−ペンタメチレンジイソシアネ−ト、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネ−ト、2,2,4−トリメチル−1,6−へキサメチレンジイソシアネ−ト、リジンジイソシアネ−ト、3−イソシアネ−トメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネ−ト(イソホロンジイソシアネ−ト)、1,3−ビス(イソシアネ−トメチル)−シクロヘキサン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネ−ト、トリレンジイソシアネ−ト、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネ−ト、1,5−ナフタレンジイソシアネ−ト、トリジンジイソシアネ−ト、キシリレンジイソシアネ−ト等を挙げることができる。
更に、多価イソシアネ−ト化合物として、脂肪族、脂環族または芳香族の多価イソシアネ−トから誘導されるもの、例えばイソシアヌレ−ト変性多価イソシアネ−ト、ビュレット変性多価イソシアネ−ト、ウレタン変性多価イソシアネ−ト等であってもよい。
また、前記多価イソシアネ−ト化合物は、多価イソシアネ−トのイソシアネ−ト基をブロック化剤でブロックしたブロック多価イソシアネ−トが好適に使用される。
ブロック多価イソシアネ−トとしては、大日本インキ化学工業株式会社製のバーノックD−500(トリレンジイソシアネ−トブロック化体)、D−550(1,6−ヘキサメチレンジイソシアネ−トブロック化体)、三井武田ケミカル株式会社製のタケネートタケネートB−830(トリレンジイソシアネ−トブロック化体)、B−815N(4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)ブロック化体)、B−842N(1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンブロック化体)、B−846N(1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンブロック化体)、B−874N(イソホロンンジイソシアネ−トブロック化体)、第一工業製薬社製のエラストロンBN−P17(4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネ−ト ブッロク化体)、エラストロンBN−04、エラストロンBN−08、エラストロンBN−44、エラストロンBN−45(以上、ウレタン変性多価イソシアネートブッロク化体1分子当たり3〜5官能、いずれも水エマルジョン品で乾燥単離後使用可能)などを好適に挙げることができる。
【0041】
本発明のポリイミドシロキサン樹脂組成物において、ポリイミドシロキサン樹脂(A)の置換基(カルボキシル基及び/または水酸基)は架橋基としての役割を有している。そして、本発明においては、ポリイミドシロキサン樹脂(A)の置換基(カルボキシル基及び/または水酸基)と硬化剤(B)のエポキシ基の割合([エポキシ基の数量]/[置換基の数量])は、1.5以下、好ましくは1.3以下、より好ましくは1.2以下である。また、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.3以上である。
この割合([エポキシ基の数量]/[置換基の数量])が、1.5を越えると耐金メッキ性が低下することがあるので好ましくなく、一方0.2未満では耐溶剤性などの特性が低下するので好ましくない。
【0042】
特に限定するものではないが、エポキシ樹脂の使用量は、通常、ポリイミドシロキサン樹脂100質量部に対して0.1〜30質量部程度である。また、多価イソシアネ−ト化合物の使用量は、通常、ポリイミドシロキサン樹脂100質量部に対して0〜40質量部程度である。
【0043】
本発明のポリイミドシロキサン樹脂組成物において、置換基(カルボキシル基及び/または水酸基)を有するポリイミドシロキサン樹脂(A)は、置換基当量が2000〜5000、特に3000〜4000であることが好ましい。置換基当量は、置換基(カルボキシル基及び/または水酸基)一個当りのポリイミドシロキサンの質量である。
置換基当量が2000未満では、得られる硬化物の架橋密度が高くなって柔軟性が少なくなることがあり、5000を超えると、ポリイミドシロキサン樹脂(A)の置換基(カルボキシル基及び/または水酸基)と硬化剤(B)のエポキシ基の割合([エポキシ基の数量]/[置換基の数量])が1.5以下の範囲では、特に得られる硬化物の架橋密度が低くり、耐溶剤性などの特性が低下し易くなる。
【0044】
本発明のポリイミドシロキサン樹脂組成物は、置換基(カルボキシル基及び/または水酸基)を有するポリイミドシロキサン樹脂(A)、及びエポキシ樹脂を必須成分とする硬化剤(B)と共に、溶媒を必須成分とした溶液組成物として好適に用いられる。溶媒は、ポリイミドシロキサン樹脂を製造する際に用いることができる溶媒を好適に用いることができる。
【0045】
本発明のポリイミドシロキサン樹脂組成物は、固形分濃度として溶媒中に少なくとも3質量%、好ましくは5〜60質量%、より好ましくは20〜60質量%、更に好ましくは30〜60質量%溶解されていることが好適である。より高濃度の溶液組成物になるほど粘度安定性の問題が生じ易くなる。このため、60質量%を越えると粘度が高くなり通常は取り扱いが難しく作業性が悪い。ポリイミドシロキサン樹脂組成物の粘度は、25℃における溶液粘度(E型回転粘度)が、好ましくは0.1〜1000Pa・s、より好ましくは0.1〜100Pa・sである。
【0046】
本発明のポリイミドシロキサン樹脂組成物は、さらに用途に応じて、フェノール樹脂などの樹脂、有機または無機フィラー、着色顔料、例えばイミダゾール類や3級アミン類などの硬化触媒、例えばポリシロキサン系、フッ素変性ポリシロキサン系、ポリアクリル系、ポリビニル系などの消泡剤、例えばヒンダードフェノール系化合物、リン系化合物、ヒンダードアミン系化合物などの難燃化剤や酸化防止剤などの保護膜用の樹脂組成物に用いられる従来公知の成分を好適に用いることができる。
なお、フェノール樹脂は、本発明において保護膜を形成する際には、ポリイミドシロキサン樹脂(A)のカルボキシル基及び/または水酸基との反応性が低いために、硬化反応に実質的な関与はないと考えられる。
【0047】
有機または無機フィラーとしては、公知のものを好適に使用できる。例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、硫酸バリウム、タルク、炭酸カルシウム、ガラス粉、石英粉などの無機の微粒子、エポキシ樹脂粉末、メラミン樹脂粉末、尿素樹脂粉末、グアナミン樹脂粉末、ポリエステル樹脂粉末、ポリアミド樹脂粉末、ポリイミド樹脂粉末、ゴム粒子、シリコーンパウダー等の有機の微粒子を好適に用いることができる。その粒子径(平均粒径)は、0.001〜2μmが好適である。スクリーン印刷によりパターン形成する場合には、滲み出しを抑制するためシリカなどのフィラーを加えてチキソ性を付与することが好ましい。有機または無機フィラーの配合量は、概ねポリイミドシロキサン樹脂(A)100質量部に対して、1〜200質量部、好ましくは5〜100質量部である。
【0048】
着色顔料としては、青色顔料、緑色顔料、黄色顔料などの公知の顔料を単独な乃至複数種を混合して好適に用いることができる。その中でも、分子構造に塩素原子及び臭素原子を含まない顔料を、単独な乃至複数種用いて、青色や緑色を呈するように着色することが好ましい。分子構造に塩素原子及び臭素原子を含む化合物を組成物中に含む場合、これを用いた製品が焼却される際、有害物質が発生する可能性がある。
着色顔料の配合量は、目的の色に着色できれ限定はないが、通常ポリイミドシロキサン樹脂100質量部に対し、0.01〜5質量部程度が好ましく、0.05〜1質量部がより好ましい。
【0049】
本発明のポリイミドシロキサン樹脂組成物は、フレキシブル配線板の少なくとも接続端子部を除いた配線パターンの表面に、例えばスクリーン印刷などによって、保護膜の厚さが3〜60μm程度となるように、塗布されて塗膜を形成し、低温で溶媒を除去し、次いで加熱処理によって、ポリイミドシロキサン樹脂(A)と硬化剤(B)とが硬化反応を行うように、例えば60〜200℃、好ましくは80〜150℃、より好ましくは100〜130℃で、5分〜5時間、好ましくは10分〜3時間、より好ましくは15分〜2時間、熱風や赤外線や遠赤外線によって加熱処理することによって、保護膜を好適に得ることができる。
【0050】
本発明のポリイミドシロキサン樹脂組成物の硬化反応では、比較的高分子量のポリイミドシロキサン樹脂の架橋基(カルボキシル基及び/または水酸基)と、エポキシ樹脂や多価イソシアネート化合物の反応基とが反応する。このために、反応場に架橋基と反応基が均一に分散していないので、理論的な量論反応は行われないと考えられる。したがって、本発明において加熱処理して得られる保護膜では、ある程度の架橋構造が形成されると共に、ポリイミドシロキサン樹脂(A)の架橋基や硬化剤(B)の反応基の相当量は、未反応の状態で残存していると思われる。
本発明の特徴は、ポリイミドシロキサン樹脂組成物の前記のような特殊な反応の結果として得られる保護膜の耐金メッキ性が、硬化剤(B)としてエポキシ樹脂と多価イソシアネート化合物とを併用している場合でも、ポリイミドシロキサン樹脂(A)の置換基(カルボキシル基及び/または水酸基)に対する硬化剤(B)のエポキシ基の割合([エポキシ基の数量]/[置換基の数量])を制御することによって達成したところにある。保護膜の耐金メッキ性には、硬化剤(B)が多価イソシアネート化合物を含有している場合であっても、その使用量による直接的な関係は見られない。
【0051】
本発明のフレキシブル配線板の実装方法では、この様な保護膜を形成する工程の後で、保護膜で覆われず露出している配線パターンを金メッキ処理する際、金メッキ処理液が保護膜と導電性金属との間隙に浸透して、変色や剥がれや腐食を生じるという問題の発生が抑制されて、より信頼性が高いフレキシブル配線板を製造することができる。
【0052】
本発明のフレキシブル配線板の実装方法では、保護膜で覆われず露出している配線パターンを金メッキ処理する工程の後で、必ずしも必須ではないが、必要に応じて配線パターンの接続端子部分に金バンプなどを用いて半導体素子などの電子部品を実装し、さらに電子部品を例えばアンダーフィル材や封止材を用いて保護固定化することによって、フレキシブル配線板を好適に製造することができる。
本発明のフレキシブル配線板の実装方法は、いわゆるCOF方式、或いはFPC方式の実装において特に好適に採用することができる。
【実施例】
【0053】
以下、本発明を実施例によって更に詳しく説明する。なお、本発明は以下の例に限定されるものではない。
【0054】
以下の例で用いた評価方法は以下のとおりである。
[固形分濃度の測定方法]
試料の溶液組成物について、120℃で10分間、次いで250℃で60分間の順に昇温しながら加熱処理した。加熱処理前の試料重量(w1)と加熱処理後の重量(w2)から、次式により固形分濃度を算出した。
固形分濃度(%)=[w2/w1]×100
【0055】
[溶液粘度の測定方法]
E型回転粘度計を用いて、25℃における10rpmでの溶液粘度を測定した。
【0056】
[耐金メッキ性の評価方法]
フレキシブル配線板(銅張積層板として、宇部興産社製 ユピセルN Cu箔厚/PIフィルム厚=9μm/25μmを用いたもの)上へ実施例のように配合したポリイミドシロキサン組成物を、乾燥・硬化後の膜厚が15〜20μmになるようにスクリーン印刷で塗布した。その膜を80℃×30分で乾燥後、150℃×60分で硬化させ保護膜を作成した。次いで、保護膜で覆われず露出している配線パターンを電解金/ニッケルメッキ(Au層厚/Ni層厚=0.3μm/0.5μm)し、得られたフレキシブル配線板の保護膜の端部における金メッキの潜り込み量(端部からの距離)を観察し耐金メッキ性を評価した。
潜り込み量が50μm未満を○、以上を×とした。
【0057】
[置換基当量の測定方法]
試料を梨型三つ口フラスコに精秤し、THF40mLを用いて完全に溶解させた。フラスコ内を窒素ガスで置換し、フェノールフタレイン溶液を適量加入した。次に、ミクロビューレット(KOH)をセットして攪拌下で滴定量(t1)を求めた。また、空試験の滴定量(t2)を同様に測定した。COOH基当量は以下の計算式で算出した。
置換基当量(g/eq)=
1/[{(t1−t2)×0.01×F/(S×固形分濃度)}/1000]
t1:試料溶液の0.01mol/L KOH−エタノール溶液滴定量(mL)
t2:空試料の0.01mol/L KOH−エタノール溶液滴定量(mL)
F:0.01mol/L KOH−エタノール溶液のFactor
S:試料(g)
【0058】
以下の例で用いた原材料は以下のとおりである。
硬化剤
(エポキシ樹脂)
エピコート157S70:三菱化学社製 エポキシ当量200
YX4000HK:三菱化学社製 エポキシ当量190
(イソシアネート)
バーノックD−550:DIC社製(1,6−ヘキサメチレンジイソシアネ−トブロック化体:NCO濃度6.9%)
硬化促進剤
JEFFCAT DMDEE: ハンツマン社製 (ビス[(2−モルホリノ)エチル]エーテル)
2E4MZ: 四国化成工業社製(2−エチル−4メチルイミダゾール)
フィラー
SG−95:日本タルク社製 平均粒径2.5μm
アエロジル#50:日本アエロジル社製 平均粒径30nm
【0059】
〔参考例1〕
ポリイミドシロキサン樹脂の製造
容量500mlのガラス製フラスコに、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物61.79g(0.21モル)、溶媒のトリグライム100gを仕込み、窒素雰囲気下、80℃で加熱撹拌した。α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン(アミン当量422)122.24g(0.145モル)、トリグライム40gを加え、175℃で60分加熱撹拌した。さらにこの反応溶液に、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン13.59g(0.033モル)とビス(3−カルボキシ−4−アミノフェニル)メタン8.29g(0.029モル)及びトリグライム50gを加え、175℃で20時間加熱撹拌した後、濾過を行った。得られたポリイミドシロキサン反応溶液は、ポリマ−固形分濃度52重量%、ηinh0.20の溶液であった。イミド化率は実質的に100%であった。
【0060】
〔参考例2〕
容量500mlのガラス製フラスコに、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物60.02g(0.21モル)、溶媒のトリグライム100gを仕込み、窒素雰囲気下、80℃で加熱撹拌した。α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン(アミン当量422)118.16g(0.14モル)、トリグライム40gを加え、175℃で60分加熱撹拌した。さらにこの反応溶液に、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン12.32g(0.03モル)と3,5−ジアミノ安息香酸4.56g(0.03モル)及びトリグライム50gを加え、175℃で20時間加熱撹拌した後、濾過を行った。得られたポリイミドシロキサン反応溶液は、ポリマ−固形分濃度52重量%、ηinh0.20の溶液であった。イミド化率は実質的に100%であった。
【0061】
〔実施例1〕
参考例1のポリイミドシロキサン樹脂溶液に、ポリイミドシロキサン樹脂100質量部に対してエポキシ樹脂のエピコート157S70を1.2質量部、エポキシ樹脂のYX4000HKを1.2質量部、微粉状シリカのアエロジル50を10.0質量部、タルクのSG−95を80.0質量部、さらに、シランカップリング剤のKBE-402を1.68重量部加えて攪拌し、均一に混合したポリイミドシロキサン樹脂組成物を得た。
前記ポリイミドシロキサン樹脂組成物に、ポリイミドシロキサン樹脂及びエポキシ樹脂の合計量100質量部に対して、さらに硬化促進剤としてビス[(2−モルホリノ)エチル]エーテル0.8質量部と、2E4MZ0.2質量部とを、シクロヘキサノンおよびジグライム混合溶媒(シクロヘキサノン:ジグライム=1:6)27gに溶解させて加えてポリイミドシロキサン樹脂組成物を得た。
この樹脂組成物をフレキシブル配線板の銅配線パターン面上にスクリーン印刷し、80℃30分および150℃60分で加熱処理して保護膜を形成した。次いで、保護膜で覆われず露出している配線パターンを金メッキ処理し、得られたフレキシブル配線板の保護膜の端部における耐金メッキ性を観察した。表1に、ポリイミドシロキサン樹脂組成物と耐金メッキ性の評価結果を示す。
【0062】
〔実施例2〜4〕
硬化剤(B)の種類と添加量とを表1に示すように変更した以外は実施例1と同様に行って、ポリイミドシロキサン樹脂組成物を得た。
この樹脂組成物を用いて実施例1と同様にして、保護膜の端部における耐金メッキ性を観察した。表1に、ポリイミドシロキサン樹脂組成物と耐金メッキ性の評価結果を示す。
【0063】
〔比較例1〜2 〕
ポリイミドシロキサン樹脂(A)と硬化剤(B)の種類と添加量とを表1に示すように変更した以外は実施例1と同様に行って、ポリイミドシロキサン樹脂組成物を得た。
この樹脂組成物を用いて実施例1と同様にして、保護膜の端部における耐金メッキ性を観察した。表1に、ポリイミドシロキサン樹脂組成物と耐金メッキ性の評価結果を示す。
【0064】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明によって、保護膜を形成した後で金メッキ処理を行なうフレキシブル配線板の実装方法において、耐金メッキ性が改良されたポリイミドシロキサン樹脂組成物を好適に用いた実装方法を提案することができる。また、保護膜を形成した後で金メッキ処理を行なうフレキシブル配線板の実装方法において好適に用いることができる耐金メッキ性が改良されたポリイミドシロキサン樹脂組成物を提案することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム表面に導電性金属の配線パタ−ンが形成された基板を準備する工程、少なくとも接続端子部を除く配線パタ−ンが形成された領域にポリイミドシロキサン樹脂組成物を塗布し次いで加熱処理して保護膜を形成する工程、保護膜で覆われず露出している配線パターンを金メッキ処理する工程、及び必要に応じて接続端子部分に電子部品を実装する工程を含むフレキシブル配線板の実装方法であって、
ポリイミドシロキサン樹脂組成物が、少なくとも、置換基(カルボキシル基及び/または水酸基)を有するポリイミドシロキサン樹脂(A)とエポキシ樹脂を必須成分とする硬化剤(B)とを含んで構成され、ポリイミドシロキサン樹脂(A)の置換基に対する硬化剤(B)のエポキシ基の割合([エポキシ基の数量]/[置換基の数量])が1.5以下であることを特徴とするフレキシブル配線板の実装方法。
【請求項2】
硬化剤(B)が、エポキシ樹脂と多価イソシアネート化合物とを含むことを特徴とする請求項1に記載のフレキシブル配線板の実装方法。
【請求項3】
ポリイミドシロキサン樹脂(A)の置換基当量が、2000〜5000であることを特徴とする請求項1または2に記載のフレキシブル配線板の実装方法。
【請求項4】
少なくとも、置換基(カルボキシル基及び/または水酸基)を有するポリイミドシロキサン樹脂(A)とエポキシ樹脂を必須成分とする硬化剤(B)とを含んで構成され、ポリイミドシロキサン樹脂(A)の置換基に対する硬化剤(B)のエポキシ基の割合([エポキシ基の数量]/[置換基の数量])が1.5以下である、配線パターンを金メッキ処理する工程を含んで実装されるフレキシブル配線板の保護膜に用いられることを特徴とするポリイミドシロキサン樹脂組成物。
【請求項5】
硬化剤(B)が、エポキシ樹脂と多価イソシアネート化合物とを含むことを特徴とする請求項4に記載のポリイミドシロキサン樹脂組成物。
【請求項6】
ポリイミドシロキサン樹脂(A)の置換基当量が、2000〜5000であることを特徴とする請求項4または5に記載のポリイミドシロキサン樹脂組成物。

【公開番号】特開2012−138455(P2012−138455A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−289402(P2010−289402)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】