説明

フレキソ印刷版の製造方法

【課題】環境負荷が少なく製版時間が短縮された、フレキソ印刷版の製造方法の提供。
【解決手段】感光性樹脂層(A)、該層(A)に隣接する接着力調整層(B)及び該層(B)に隣接する隣接層(C)を含む感光性樹脂構成体を露光し、層(A)の一部を硬化する工程(工程(i))、又は感光性樹脂層(A)を露光し、層(A)の一部を硬化した後、接着力調整層(B)及び該層(B)に隣接する隣接層(C)を、該層(B)が層(A)に接するように積層し感光性樹脂構成体とした後、該感光性樹脂構成体を露光する工程(工程(ii))と、工程(i)又は(ii)の後、層(C)及び層(B)の未露光部を剥離することにより、層(A)の未硬化部分の少なくとも一部を除去する工程(工程(iii))とを含むフレキソ印刷版の製造方法及びそれから得られる印刷版。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキソ印刷版の製造方法及びそれによって得られる印刷版に関する。
【背景技術】
【0002】
フレキソ印刷版用の構成体は、ポリエステルフィルムなどを支持体とし、その上に感光性樹脂組成物、さらに、必要に応じて感光性樹脂組成物の上にネガフィルムとの接触をなめらかにする等の目的で、保護層、もしくは赤外レーザーで切除可能な赤外線感受性物質を含む紫外線遮蔽層などが設けられる。
このようなフレキソ印刷版用感光性樹脂構成体からフレキソ印刷版を製版する一般的な方法は、まず支持体を通して構成体全面に紫外線露光を施し(バック露光)、樹脂組成物を光重合させて薄い均一な硬化層とする工程、次いで、ネガフィルムを介して、もしくは紫外線遮蔽層の上から直接、感光性樹脂層に画像露光(レリーフ露光)する工程、未露光部分(未硬化部分)を除去して凹凸を付与する工程、必要に応じて凹凸の形成された樹脂構成体表面に後処理露光する工程などを経て製造される。
【0003】
未露光部分を除去する方法として、現像液で洗い流す方法や、特許文献1に記載されているように40℃〜200℃に加熱された未露光部分を不織布などの吸収可能な吸収層に接触させ、吸収層を除去することで未露光部分を取り除く方法が知られている。一方、平版用として、特許文献2には、感光性層に用いられるバインダーとしてスチレン/無水マレイン酸コポリマーなどが挙げられた、ピールアパート法により現像された感光性印刷版が提示されている。さらに、特許文献3には、塩素化天然ゴムなどのバインダーを用いた光重合性層が露光により親水性層やカバーフィルムとの接着性が変化する材料が提示されている。
【特許文献1】特開平5−19469号公報
【特許文献2】特開平7−175207号公報
【特許文献3】特開平7−325394号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、フレキソ印刷版用感光性樹脂構成体において、環境負荷が十分に抑えられたものや、現像液を用いない剥離現像において、接着調整力が十分に達成されたものは未だ知られていないのが実情である。
現像液を用いる方法や特許文献1に記載の方法では、吸収層を用いることで廃棄物や汚染廃水副生成物が発生するため環境負荷の観点から好ましくない。また、未露光部分の感光性樹脂を含む現像液や吸収層を大量に処分する場合、そのコストは高価であり、さらに現像液での処理の場合、長時間の乾燥を必要とするため製版時間がかかるという観点からも好ましくない。特許文献2に開示された技術は平版に関するものであり、感光性層の弾性が低くフレキソ印刷用材料として適しておらず、また開示された接着性層とフレキソ印刷用材料として適した感光性層との接着力が低く、感光性層の未硬化部分を除去することが困難であるため、好ましくない。さらにコーティング重量が小さいため、フレキソ印刷版とした場合、印刷画像部以外の部分まで印刷されてしまうため適当ではなく、たとえコーティング重量を大きくしたとしても剥離現像時の剥離力が多大となるため好ましくない。特許文献3に開示された技術では、接着性増加処理のための被覆層と感光性材料との接着力が低く、感光性層の未硬化部分を除去することが困難であるため、好ましくない。さらにコーティング重量が小さいため、フレキソ印刷版とした場合、印刷画像部以外の部分まで印刷されてしまうため適当ではなく、たとえコーティング重量を大きくしたとしても剥離現像時の剥離力が多大となるため好ましくない。
本発明は、廃棄物や汚染廃水副生成物の発生量が少ないため環境負荷の観点から好ましく、低コストかつ製版時間が短縮された、フレキソ印刷版としての適性に優れたフレキソ印刷版の製造方法および剥離現像用フレキソ印刷版感光性樹脂構成体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、接着力調整層を含む該感光性樹脂構成体を用いた製造方法により、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は下記の通りである。
1.感光性樹脂層(A)、該層(A)に隣接する接着力調整層(B)及び該層(B)に隣接する隣接層(C)を含む感光性樹脂構成体を露光し、層(A)の一部を硬化する工程(工程(i))、又は感光性樹脂層(A)を露光し、層(A)の一部を硬化した後、接着力調整層(B)及び該層(B)に隣接する隣接層(C)を、該層(B)が層(A)に接するように積層し感光性樹脂構成体とした後、該感光性樹脂構成体を露光する工程(工程(ii))と、
工程(i)又は(ii)の後、該層(C)及び層(B)の未露光部を剥離することにより、層(A)の未硬化部分の少なくとも一部を除去する工程(工程(iii))
とを含むフレキソ印刷版の製造方法。
2.感光性樹脂層(A)が熱可塑性エラストマー(a)、光重合性モノマー(b)および光重合開始剤(c)を含有する上記1.の製造方法。
3.熱可塑性エラストマー(a)が、共役ジエンを主体とする重合体ブロックおよびビニル芳香族炭化水素を主体とする重合体ブロックを含むブロック共重合体を含有する上記2.の製造方法。
4.接着力調整層(B)が、エラストマー系接着剤(B1)を含有する上記1.〜3.いずれかの製造方法。
5.接着力調整層(B)が、エラストマー系接着剤(B1)、光重合性モノマーおよび光重合開始剤を含有する上記1.〜3.いずれかの製造方法。
6.エラストマー系接着剤(B1)が、共役ジエンを主体とする重合体ブロックおよびビニル芳香族炭化水素を主体とする重合体ブロックを含むブロック共重合体を含有する上記4.又は5.の製造方法。
7.工程(iii)において層(C)を剥離する際の、感光性樹脂構成体の露光部の剥離力が6N/cm以下である上記1.〜6.のいずれかの製造方法。
8.工程(iii)において層(C)を剥離する際の、感光性樹脂構成体の露光部の剥離力が3N/cm以下である上記1.〜6.のいずれか一項に記載の製造方法。
9.工程(iii)の際、感光性樹脂構成体を50℃以上180℃以下に熱する上記1.〜8.のいずれかの製造方法。
10.層(A)の厚みが0.5mm以上10mm以下である上記1.〜9.のいずれかの製造方法。
11.上記1.〜10.のいずれかの製造方法によって製造されたフレキソ印刷版。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、廃棄物や汚染廃水副生成物の発生量が少ないため環境負荷の観点から好ましく、低コストかつ製版時間が短縮された、フレキソ印刷版としての適性に優れたフレキソ印刷版の製造方法および剥離現像用フレキソ印刷版感光性樹脂構成体が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を実施する為の最良の形態(以下、本実施の形態)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することが出来る。
本発明の製造方法は、感光性樹脂層(A)、該層(A)に隣接する接着力調整層(B)及び該層(B)に隣接する隣接層(C)を含む感光性樹脂構成体を露光し、層(A)の一部を硬化する工程(工程(i))、又は感光性樹脂層(A)を露光し、層(A)の一部を硬化した後、接着力調整層(B)及び該層(B)に隣接する隣接層(C)を、該層(B)が層(A)に接するように積層し感光性樹脂構成体とした後、該感光性樹脂構成体を露光する工程(工程(ii))と、工程(i)又は(ii)の後、該層(C)及び層(B)の未露光部を剥離することにより、層(A)の未硬化部分の少なくとも一部を除去する工程(工程(iii))とを含む。
本発明の製造方法では、感光性樹脂層(A)又はこれを露光した層、接着力調整層(B)、隣接層(C)をこの順序で積層した感光性樹脂構成体を露光することにより、感光性樹脂層(A)と接着力調整層(B)との接着力(層(A)と層(B)の剥離力)が上昇するか大きく低下せず、あるいは接着力調整層(B)と隣接層(C)との接着力(層(B)と層(C)の剥離力)が低下するか大きく上昇しないため、該層(C)及び層(C)の未露光部を剥離することにより、層(A)の未硬化部分の少なくとも一部を除去することが可能となる。このため環境負荷が少なく、低コスト、製版時間も短縮できる。
【0008】
[感光性樹脂構成体]
本発明の製造方法に適用できる感光性樹脂構成体は、感光性樹脂(A)、該層(A)に隣接する接着力調整層(B)及び該層(B)に隣接する隣接層(C)を含む。
[感光性樹脂層(A)]
感光性樹脂層(A)は感光性樹脂組成物又は感光性樹脂組成物を一部硬化させた組成物を含む。感光性樹脂層(A)としてはバインダー樹脂、光重合性モノマー及び光重合開始剤を含む樹脂組成物等、公知のものを使用することが可能であり、好ましくは熱可塑性エラストマー(a)、光重合性モノマー(b)および光重合開始剤(c)を含有する感光性樹脂組成物を使用することが好ましい。
熱可塑性エラストマー(a)の材料は多岐にわたる。ここで、「熱可塑性エラストマー」とは、常温付近でゴム弾性を示し、塑性変形し難く、押出機等で組成物を混合するときに熱で可塑化するエラストマーを意味する。
【0009】
熱可塑性エラストマ−(a)の具体例としては例えば、スチレン・ブタジエンブロックコポリマー、スチレン・イソプレンブロックコポリマー、スチレン・エチレン/ブチレンブロックコポリマー、スチレン・ブタジエンゴムなど、すなわち少なくとも1つの共役ジエンユニットもしくは共役ジエンユニット水素添加物を主体とする第1の重合体ブロックと、少なくとも1つのビニル芳香族炭化水素ユニットを主体とする第2の重合体ブロックを含む熱可塑性エラストマーブロック共重合体、EPDM、プロピレン・エチレン/プロピレンブロックコポリマーなどのオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、フッ素系熱可塑性エラストマー、シリコーン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。これらの熱可塑性エラストマーは1種を単独で、又は2種以上を併用することができる。
【0010】
押出機等での成形加工性の観点から、熱可塑性エラストマ−(a)、少なくとも1つの共役ジエンユニットもしくは共役ジエンユニット水素添加物を主体とする第1の重合体ブロックと、少なくとも1つのビニル芳香族炭化水素ユニットを主体とする第2の重合体ブロックを含む熱可塑性エラストマーブロック共重合体を含有することが好ましい。なお、上記の「主体とする」とは、重合体ブロック中に50wt%以上含まれていることを意味する。中でも、80wt%以上が好ましく、90wt%以上がさらに好ましい。前記熱可塑性エラストマーブロック共重合体は、必要に応じて、第3成分のブロックを含有していても構わない。
【0011】
共役ジエンユニットは、例えば1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、4,5−ジエチル−1,3−オクタジエン、3―ブチル−1,3−オクタジエン、クロロプレンの単量体が挙げられ、中でも1,3−ブタジエンが耐磨耗性の点から好ましい。これらの共役ジエンユニットは1種を単独で、又は2種以上を併用することができる。共役ジエンを主体とする重合体ブロックのブタジエン総量中のビニル含有量、たとえば1、2−ブタジエンや3、4−イソプレンの含有量は、特に限定されない。ビニル芳香族炭化水素ユニットは、例えばスチレン、t−ブチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルスチレン、N,N−ジメチル−p−アミノエチルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン、ビニルピリジン、p−メチルスチレン、第三級ブチルスチレン、α−メチルスチレン、1,1−ジフェニルエチレンなどの単量体が挙げられ、中でも感光性樹脂構成体を比較的低温で平滑に成型できる点からスチレンが好ましい。これらのビニル芳香族炭化水素ユニットは1種を単独で、又は2種以上を併用することができる。
【0012】
ブロック共重合体中のビニル芳香族炭化水素ユニットの含有量は、感光性樹脂組成物の高成型性の点から、25wt%以下にすることが好ましい。一方、感光性樹脂構成体の耐コールドフロー性が高い点で、13wt%以上が好ましい。15wt%から24wt%の範囲がより好ましく、16wt%から23wt%の範囲がさらに好ましい。
熱可塑性エラストマーの数平均分子量(Mn)は、感光性樹脂構成体の耐コールドフロー性の点から、2万〜25万が好ましい。3万〜20万がより好ましく、4万〜15万がさらに好ましい。ここで数平均分子量(Mn)は、全てゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算分子量である。
【0013】
熱可塑性エラストマー(a)の感光性樹脂組成物中の含有量は、感光性樹脂構成体の耐コールドフロー性が高い点で、感光性樹脂組成物中の(a)、(b)、(c)の成分の和を100wt%としたとき、69wt%以上が好ましく、感光性樹脂組成物の成型がしやすいことから、95wt%以下が好ましい。75wt%から90wt%の範囲がさらに好ましく、80wt%から90wt%の範囲がさらに好ましい。
光重合性モノマー(b)としては、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸などのエステル類、アクリルアミドやメタクリルアミドの誘導体、アリルエステル、スチレン及びその誘導体、N置換マレイミド化合物などがあげられる。
【0014】
具体的な例としては、ヘキサンジオール、ノナンジオールなどのアルカンジオールのジアクリレート及びジメタクリレート、あるいはエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ブチレングリコールのジアクリレート及びジメタクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ペンタエリトリットテトラ(メタ)アクリレート、N,N’−ヘキサメチレンビスアクリルアミド及びメタクリルアミド、スチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、ジアクリルフタレート、トリアリルシアヌレート、フマル酸ジエチルエステル、フマル酸ジブチルエステル、フマル酸ジオクチルエステル、フマル酸ジステアリルエステル、フマル酸ブチルオクチルエステル、フマル酸ジフェニルエステル、フマル酸ジベンジルエステル、マレイン酸ジブチルエステル、マレイン酸ジオクチルエステル、フマル酸ビス(3−フェニルプロピル)エステル、フマル酸ジラウリルエステル、フマル酸ジベヘニルエステル、N−ラウリルマレイミド等を挙げることができる。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
光重合性モノマー(b)の感光性樹脂組成物中の含有量は、感光性樹脂組成物中の(a)、(b)、(c)の成分の和を100wt%としたとき、印刷版の凸部の高い耐カケ性の点で、1wt%以上、感光性樹脂構成体の高い耐コールドフロー性や印刷版の高い柔軟性の点で、20wt%以下が好ましい。2wt%から15wt%の範囲がより好ましく、4wt%から12wt%の範囲がより好ましい。
光重合開始剤(c)とは、光のエネルギーを吸収し、ラジカルを発生する化合物であり、公知の各種のものを用いることが出来、各種の有機カルボニル化合物や、特に芳香族カルボニル化合物が好適である。
【0016】
具体例としては、ベンゾフェノン;4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン;t−ブチルアントラキノン;2−エチルアントラキノン;2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン等のチオキサントン類;ジエトキシアセトフェノン、2,2−メトキシ−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン等のアセトフェノン類;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル類;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド類;メチルベンゾイルホルメート;1,7−ビスアクリジニルヘプタン;9−フェニルアクリジン;等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
光重合開始剤(c)の含有量は、細かい点や文字の再現性が高いこと、紫外線等の活性光の透過率を好ましい範囲に保つことができる点から、感光性樹脂組成物中の(a)、(b)、(c)の成分の和を100wt%としたとき、0.1wt%〜10wt%の範囲であることが好ましい。0.5wt%〜5wt%の範囲がより好ましい。
光重合開始剤(c)として、崩壊型光重合開始剤および水素引抜き型光重合開始剤を併用しても構わない。印刷版の画像再現性や耐磨耗性が高いことから、感光性樹脂組成物中の水素引抜き型光重合開始剤の量は、(a)、(b)、(c)の成分の和を100wt%としたとき、1wt%以下が好ましい。0.5wt%以下がより好ましい。
【0018】
感光性樹脂組成物には前記(a)、(b)、(c)の他に、種々の補助添加成分、例えば可塑剤、極性基含有ポリマー、熱重合防止剤、紫外線吸収剤、ハレーション防止剤、光安定剤、シリコンオイルなどの表面処理剤、光ルミネセンスタグ(外部エネルギー源によって励起され、得られたエネルギーを光および/または放射線の形で放出する物質)などを添加することができる。補助添加成分の添加量は合計で感光性樹脂組成物100質量部に対して10質量部〜50質量部であることが好ましく、20質量部〜40質量部であることがより好ましい。
可塑剤としては、ナフテン油、パラフィン油等の炭化水素油;液状アクリルニトリル−ブタジエン共重合体、液状スチレン−ブタジエン共重合体など液状のジエンを主体とする共役ジエンゴム;数平均分子量2,000以下のポリスチレン、セバチン酸エステル、フタル酸エステルなどが挙げられる。これらには光重合性の反応基が付与されていても構わない。これらの可塑剤は単独でも良いし、2つ以上を併用しても良い。
【0019】
極性基含有ポリマーとしては、カルボキシル基、アミノ基、水酸基、燐酸基、スルフォン酸基等の親水性基、もしくはそれらの塩などの極性基を有する水溶性、又は水分散性共重合体が挙げられる。さらに具体的にはカルボキシル基含有NBR、カルボキシル基含有SBR、カルボキシル基を含有した脂肪族共役ジエンの重合体、燐酸基、又はカルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物の乳化重合体、スルフォン酸基含有ポリウレタン、カルボキシル基含有ブタジエンラテックスなどが例として挙げられる。得られる印刷版の解像度の点から、カルボキシル基含有ブタジエンラテックスが好ましい。これらの極性基含有ポリマーは単独でも良いし、2つ以上を併用しても良い。
感光性樹脂層(A)の厚みは特に制限はないが、印刷非画像部の印刷回避の点から0.5mm以上が好ましく、印刷版解像度の点から10mm以下が好ましく、1mm以上8mm以下であることがより好ましい。
【0020】
[接着力調整層(B)]
接着力調整層(B)とは、感光性樹脂構成体の露光により、接着力調整層(B)に接する層、すなわち感光性樹脂層(A)や隣接層(C)との剥離力が変化する層を意味する。本発明の製法では、感光性樹脂構成体の未露光部(未硬化部)では、接着力調整層(B)と隣接層(C)との接着力、および接着力調整層(B)と感光性樹脂層(A)との接着力双方は、感光性樹脂層未露光部内部の破断力もしくは感光性樹脂層と支持体の剥離力に比べて高く、感光性樹脂構成体の露光部(硬化部)では、接着力調整層(B)と感光性樹脂(A)との接着力(層(B)と層(A)の剥離力)が上昇するか大きく低下せず、感光性樹脂層露光部内部及び層(B)の露光部内部の破断力が大きく上昇し、場合によっては接着力調整層(B)と隣接層(C)との接着力(層(B)と層(C)の剥離力)が低下するか大きく上昇しないため、該層(B)の未露光部及び層(C)を剥離することにより、層(A)の未硬化部分の少なくとも一部を除去することが可能となる。なお、剥離の際、層(B)の未露光部は層(C)と共に剥離されるが、層(B)の露光部は層(A)と共に印刷版として残る。感光性樹脂構成体の露光部において層(C)を剥離する際の剥離強度は剥離現像の容易性の点から、23℃において1cm幅辺り6N以下になるものが好ましく、3N以下になるものがより好ましい。
接着力調整層(B)の材料は、特に限定されないが、エラストマー系接着剤を有することが好ましい。
【0021】
エラストマー系接着剤は、一般にゴム状弾性物を主成分にする接着剤の総称であり、接着剤の形態では、溶剤型、エマルジョン・ラテックス型、フィルム型およびブロック型が挙げられるが、本実施の形態はこれらの形態に限定されるものではない。エラストマー系接着剤の例としては、天然ゴム系接着剤、加硫ゴムを解重合させた再生ゴム系接着剤、クロロプレン系ゴム接着剤、ニトリルゴム系接着剤、スチレン・ブタジエンゴム系接着剤、熱可塑性エラストマー系接着剤、ブチルゴム系接着剤が挙げられる。中でも熱可塑性エラストマー系接着剤が好ましく、その中でも、少なくとも1つの共役ジエンユニットもしくは共役ジエンユニット水素添加物を主体とする第1の重合体ブロックと、少なくとも1つのビニル芳香族炭化水素ユニットを主体とする第2の重合体ブロックを含む熱可塑性エラストマーブロック共重合体を含むことが好ましい。更に、共役ジエンユニット水素添加物を主体とする第1の重合体ブロックと、少なくとも1つのビニル芳香族炭化水素ユニットを主体とする第2の重合体ブロックを含む熱可塑性エラストマーブロック共重合体を含むことがより好ましく、少なくとも1つのマレイン変性された共役ジエンユニットを主体とする第1の重合体ブロックと、少なくとも1つのビニル芳香族炭化水素ユニットを主体とする第2の重合体ブロックを含む熱可塑性エラストマーブロック共重合体を含むことが最も好ましい。これらは1種を単独で、又は2種以上を併用することができる。
【0022】
エラストマー系接着剤は、接着力調整層(B)の未露光部と感光性樹脂層(A)の未露光部との接着性を向上する点から、接着力調整層(B)中の、30wt%〜95wt%の範囲であることが好ましい。50wt%〜85wt%の範囲がより好ましい。
さらに接着力調整層(B)中に種々の補助添加成分、例えば光重合性モノマー、光重合開始剤、可塑剤、熱重合防止剤、紫外線吸収剤、ハレーション防止剤、光安定剤、シリコンオイル、ウレタン系接着剤などの表面処理剤などを添加することができる。特に剥離現像時の接着力調整の観点から、光重合性モノマー、光重合開始剤を含むものが好ましい。
光重合性モノマー、光重合開始剤としては、感光性樹脂層と同様のものを使用することができる。
【0023】
可塑剤としては、ナフテン油、パラフィン油等の炭化水素油;液状アクリルニトリル−ブタジエン共重合体、液状スチレン−ブタジエン共重合体など液状のジエンを主体とする共役ジエンゴム;数平均分子量2,000以下のポリスチレン、セバチン酸エステル、フタル酸エステルなどが挙げられ、末端にヒドロキシル基やカルボキシル基を有していても構わない。
接着力調整層(B)中には、ウレタン系接着剤を含むことも可能である。
ウレタン系接着剤は、一般にイソシアネート基を有する化合物と活性水素を有する化合物との反応物が挙げられる。特に多官能イソシアネート化合物と末端にヒドロキシル基を有するポリオール化合物との反応物が好ましい。ポリオール化合物中にポリエステル構造、ポリウレタン構造やポリブタジエン構造、またはそれらの組合せ構造を有していても構わない。中でもポリブタジエン構造を有するポリオールが好ましい。
【0024】
イソシアネート基を有する化合物と活性水素を有する化合物との反応を行う際、「イソシアネート基を有する化合物の1分子当たりのイソシアネート官能基数×イソシアネート基を有する化合物モル数」/「活性水素を有する化合物の1分子当たりの活性水素官能基数×活性水素を有する化合物モル数」が0.5〜5の範囲であることが好ましい。0.7〜3の範囲であることがより好ましい。
多官能イソシアネートの例としてはトリレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、およびこれら多官能イソシアネートが官能基当量的に過剰な条件で、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパンなどの多官能アルコールと付加反応させてできた化合物などがある。これらは1種を単独で、又は2種以上を併用することができる。
【0025】
ポリエステル構造をもつポリオールはジオール成分過剰の下でのジカルボン酸成分との重縮合反応で得られる。ここでジオール成分としては、直鎖及び分岐の肪族飽和炭化水素を骨格とするジオールや、ビスフェノールA及びビスフェノールAにエチレンオキサイドが付加した構造のジオール、ポリオキシアルキレングリコール類、およびこれらのジオール成分の混合物を用いることができる。一方ジカルボン酸成分としては、直鎖及び分岐の脂肪族飽和炭化水素を骨格とするジカルボン酸やテレフタル酸、イソフタル酸、及びこれらのジカルボン酸成分の混合物を用いることができる。
また、ポリウレタン構造をもつポリオールは、やはり上述のようなジオ−ル成分過剰の下でジイソシアネート化合物との重付加反応で得られる。ジイソシアネート化合物としてはトリレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、及びこれらジイソシアネート化合物の混合物などが例として挙げられる。
【0026】
ポリエステルとポリウレタンの両方の構造をもつポリオールは、予め合成したポリエステル構造をもつポリオールを、ジイソシアネート化合物に対して過剰量仕込んで反応させて得ることができる。
ここでポリオールの分子量が低い場合は、多官能イソシアネートとの反応物の粘着性が大となり、支持体に塗布した後の取り扱い性に支障が生じる。一方、多官能イソシアネートとの反応性の観点からは、分子量が大きくなり過ぎるとウレタン化反応が遅くなるという不具合が生じる。このことからポリオールの数平均分子量は、1万〜10万であることが好ましい。
これらのポリオール化合物は1種を単独で、又は2種以上を併用することができる。
ウレタン系接着剤は、剥離現像容易性の点から接着力調整層(B)中の、0.1wt%〜20wt%の範囲であることが好ましい。0.1wt%〜5wt%の範囲がより好ましい。
【0027】
[隣接層(C)]
本発明の製法では、接着力調整層(B)に隣接する隣接層(C)を含む感光性樹脂構成体を用いる。隣接層としては、カバーフィルム(C1)、カバーフィルムの下引層(C2)などが挙げられ、感光性樹脂構成体の接着力調整層(B)と隣接層(C)との接着性の向上の点から、カバーフィルムの下引層(C2)であることが好ましい。
カバーフィルム(C1)としては、例えばポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレートなどのポリエステルフィルム、ポリアミドフィルムが挙げられる。厚みが15〜100μmの範囲を持つ寸法安定なポリエステルフィルムが好ましい。またカバーフィルムには接着力調整のため、表面処理されていても構わない。具体的にはフィルムの表面に対してコロナ処理や火炎処理、アルカリなどによる化学的処理や少なくとも1層以上の下引き層を設けることなどが挙げられる。
【0028】
下引き層(C2)を構成する主成分としては(メタ)アクリレートの重合物であることが好ましい。例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートなどの重合物やその共重合物が用いられる。また、必要に応じて、これらの(共)重合物は、(メタ)アクリル酸やスチレン、アクリロニトリル、塩化ビニルなどと共重合させて使用することもできる。その他の下引き層の成分は、ウレタン結合を有することが好ましく、1つ以上の芳香環を有するイソシアネート化合物から得られるウレタン結合を有することが更に好ましい。このような化合物としては、例えば、以下の活性水素を有する化合物とイソシアネート基を有する化合物との反応物を挙げることができる。活性水素を有する成分としては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、又はそれらのポリエーテルからなるポリエーテルジオールなどのジオール類などがある。更にはポリエステル化合物も活性水素を有することができるため、ウレタン結合を生成することができる。例えば、ポリエステル化合物の、ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸など、アルコール成分としてはエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、それらのポリエーテルポリオール化合物などを挙げることができる。これらのジカルボン酸成分とアルコール成分(ジオール、ポリオール)の縮合物を使用することができる。ポリイソシアネートとしてはトルエンジイソシアネートや4,4−ジフェニレンメタンジイソシアネートなどの芳香族イソシアネートを挙げることができる。
感光性樹脂構成体は、更に感光性樹脂層(A)を支持する支持体や接着剤層等を有することも可能である。
【0029】
[支持体、接着剤層]
支持体としては、例えばポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレートなどのポリエステルフィルム、ポリアミドフィルムが挙げられる。厚みが75〜300μmの範囲を持つ寸法安定なポリエステルフィルムが好ましい。
支持体と感光性樹脂層との間には接着剤層を設けることが好ましい。接着剤層としては、例えばポリウレタンやポリアミド、熱可塑性エラストマーなどのバインダーポリマーと、イソシアネート化合物やエチレン性不飽和化合物などの接着有効成分を有する組成が挙げられる。さらに接着剤層には、種々の補助添加成分、例えば可塑剤、熱重合防止剤、紫外線吸収剤、ハレーション防止剤、光安定剤、光重合開始剤、光重合性モノマー、染料などを添加することが出来る。
【0030】
接着剤層と支持体であるポリエステルフィルムとの間に更に高い接着力を得るために、フィルムの表面に対してコロナ処理や火炎処理、アルカリなどによる化学的処理や少なくとも1層以上の下引き層を設けることがさらに好ましい。
下引き層を構成する主成分としては(メタ)アクリレートの重合物であることが好ましい。例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートなどの重合物やその共重合物が用いられる。また、必要に応じて、これらの(共)重合物は、(メタ)アクリル酸やスチレン、アクリロニトリル、塩化ビニルなどと共重合させて使用することもできる。その他の下引き層の成分は、ウレタン結合を有することが好ましく、1つ以上の芳香環を有するイソシアネート化合物から得られるウレタン結合を有することが更に好ましい。このような化合物としては、例えば、以下の活性水素を有する化合物とイソシアネート基を有する化合物との反応物を挙げることができる。活性水素を有する成分としては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、又はそれらのポリエーテルからなるポリエーテルジオールなどのジオール類などがある。更にはポリエステル化合物も活性水素を有することができるため、ウレタン結合を生成することができる。例えば、ポリエステル化合物の、ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸など、アルコール成分としてはエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、それらのポリエーテルポリオール化合物などを挙げることができる。これらのジカルボン酸成分とアルコール成分(ジオール、ポリオール)の縮合物を使用することができる。ポリイソシアネートとしてはトルエンジイソシアネートや4,4−ジフェニレンメタンジイソシアネートなどの芳香族イソシアネートを挙げることができる。
本実施の形態に用いる支持体と感光性樹脂層との間に介在する接着剤層は、例えば上記のポリオールと多官能イソシアネートの反応物を適当な溶剤に溶かして、支持体上で塗布、乾燥することで得ることができる。
【0031】
[製造方法]
本発明の製造方法は、感光性樹脂層(A)、該層(A)に隣接する接着力調整層(B)及び該層(B)に隣接する隣接層(C)を含む感光性樹脂構成体を露光し、層(A)の一部を硬化する工程(工程(i))、又は感光性樹脂層(A)を露光し、層(A)の一部を硬化した後、接着力調整層(B)及び該層(B)に隣接する隣接層(C)を、該層(B)が層(A)に接するように積層し感光性樹脂構成体とした後、該感光性樹脂構成体を露光する工程(工程(ii))と、工程(i)又は(ii)の後、該層(C)及び層(B)の未露光部を剥離することにより、層(A)の未硬化部分の少なくとも一部を除去する工程(工程(iii))とを含む。
【0032】
[工程(i)]
感光性樹脂層(A)の製造方法は特に制限はないが、例えば、感光性樹脂組成物の原料を適当な溶媒、例えばクロロホルム、テトラクロルエチレン、メチルエチルケトン、トルエン等の溶剤に溶解させて混合し、型枠の中に流延して溶剤を蒸発させることにより板状にする方法や、溶剤を用いず、ニーダー、ロールミルあるいはスクリュウ押出機で混練後、カレンダーロールやプレスなどにより支持体上で所望の厚さに成型する方法が挙げられる。
感光性樹脂層(A)、接着力調整層(B)、隣接層(C)を積層する方法も特に制限はないが、接着力調整層(B)の原料を、適当な溶剤に溶かして、感光性樹脂層(A)上に塗布、乾燥し、下引き層(C2)を有するカバーフィルム(C1)或いは下引き層(C2)を有さないカバーフィルム(C1)をラミネートまたはプレス圧着してもよいし、カバーフィルム(C1)上で接着力調整層(B)溶液を塗布、乾燥したものを接着力調整層(B)が感光性樹脂層(A)に接するようラミネートまたはプレス圧着しても良い。
接着力調整層(B)やカバーフィルム(C1)を、シート成形した感光性樹脂層(A)に、ロールラミネートにより密着させた後、支持体上で加熱プレスすると一層厚み精度の良い感光性樹脂構成体を得ることができる。
感光性樹脂層(A)の厚みは特に制限はないが、印刷非画像部の印刷回避の点から0.5mm以上が好ましく、印刷版解像度の点から10mm以下が好ましく、1mm以上8mm以下であることがより好ましい。
【0033】
上記のようにして得られた感光性樹脂構成体は露光され、感光性樹脂層(A)の一部が硬化される。露光方法は特に制限はない。フレキソ印刷版用感光性樹脂構成体からフレキソ印刷版を製版するには、例えば次のような方法をとることが可能である。まず必要に応じて構成体の支持体を通して全面に紫外線露光を施し(バック露光)、感光性樹脂組成物を硬化させて薄い均一な硬化層とする。バック露光は必須ではないが、フレキソ印刷版の画像再現性の点から、バック露光を行うことが好ましい。次いで、カバーフィルム(C1)上にネガフィルムを乗せ、ネガフィルム側から感光性樹脂構成体への露光(レリーフ露光)を行う。レリーフ露光とバック露光を併用する場合、どちらを先におこなってもよいし、また両方を同時におこなってもよい。露光光源としては、高圧水銀灯、紫外線蛍光灯、メタルハライドランプ、カーボンアーク灯、キセノンランプ、太陽光等があげられる。
【0034】
[工程(ii)]
本発明の製造方法は、上記工程(i)に代えて、感光性樹脂層(A)を露光し、層(A)の一部を硬化した後、接着力調整層(B)及び該層(B)に隣接する隣接層(C)を、該層(B)が層(A)に接するように積層し感光性樹脂構成体とした後、該感光性樹脂構成体を露光する工程(工程(ii))を採用することも可能である。
例えば、感光性樹脂層(A)上にネガフィルムを乗せレリーフ露光を行った後、感光性樹脂層(A)に接するように接着力調整層(B)を積層し、さらに接着力調整層に接するようにカバーフィルム(C1)等の隣接層(C)を積層し、感光性樹脂構成体を露光することが可能である。
感光性樹脂層(A)の製造方法や、露光後の感光性樹脂層(A)上に、接着力調整層(B)や隣接層(C)を積層する方法としては、例えば上記工程(i)で記載した方法と同様の方法が採用できる。
【0035】
[工程(iii)]
本発明の製造方法は、工程(i)又は(ii)の後、接着力調整層(B)及び隣接層(C)を剥離することにより、感光性樹脂層(A)の未硬化部分の少なくとも一部を除去する工程(工程(iii)、以下「剥離現像工程」と記すことがある)を含む。すなわち、接着力調整層(B)の未露光部および隣接層(C)を剥離することで同時に未露光の感光性樹脂が剥離される。剥離の際、層(B)の露光部は層(A)と共に残り、印刷版を構成する。
剥離する方法は特に限定されないが、例えば支持体/カバーフィルムをテープなどで固定しておいて、感光性樹脂構成体端部からカバーフィルム/支持体を剥離する方法、支持体・カバーフィルムを双方固定しておいて、引張器具などで引っ張り合い剥離させる方法などが挙げられる。製造されたフレキソ印刷版を傷つけないために、支持体側を固定して、カバーフィルム(C1)等の隣接層(C)と接着力調整層(B)の未露光部を剥離する方法が好ましい。
感光性樹脂層の未露光部内部の破断力を低下させるために、露光された感光性樹脂構成体を加温してから剥離することが好ましい。
【0036】
加温する方法は、感光性樹脂構成体をヒーター上に載せる、赤外線ヒーターで加熱する、加熱オーブン中に入れるなど特に限定されない。加温温度は50〜180℃が好ましく、70〜180℃がより好ましく、80〜160℃が更に好ましい。加温する場合には支持体側・カバーフィルム側どちらからでも構わないが、カバーフィルム側からの方が好ましい。
感光性樹脂構成体の未露光部の剥離力、すなわち感光性樹脂層未露光部内部の破断力もしくは感光性樹脂層と支持体の剥離力、は剥離温度において1cm幅辺り15N以下になるものが好ましく、10N以下になるものがより好ましく、6N以下になるものが更に好ましい。
【0037】
また、感光性樹脂構成体露光部の剥離力、すなわち接着力調整層(B)と隣接層(C)との接着力(層(B)と隣接層(C)の剥離力)は23℃において1cm幅辺り6N以下になるものが好ましく、3N以下になるものがより好ましく、2N以下になるものが更に好ましい。
必要に応じて剥離現像後、残った未露光部分を他の公知の現像方法で現像しても構わない。例えば、現像液で洗い流すか、あるいは40℃〜200℃に加熱された未露光部分を吸収可能な吸収層に接触させ、吸収層を除去することで未露光部分を取り除くなどの方法が挙げられる。
【0038】
未露光部を溶剤現像するのに用いられる有機溶剤としては、ヘプチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等のエステル類;石油留分、トルエン、デカリン等の炭化水素類;やテトラクロルエチレン等の塩素系有機溶剤にプロパノール、ブタノール、ペンタノール等のアルコール類を混合したもの;をあげることができる。
また未露光部を現像するのに用いられる水系現像液は、ノニオン系、アニオン系、カチオン系あるいは両性の界面活性剤を一種又は二種類以上含有する。アニオン系界面活性剤の具体的な例としては、平均炭素数8〜16のアルキルを有する直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、平均炭素数10〜20のα−オレフィンスルホン酸塩、アルキル基又はアルケニル基の炭素数が4〜10のジアルキルスルホコハク酸塩、脂肪酸低級アルキルエステルのスルホン酸塩、平均炭素数10〜20のアルキル硫酸塩、平均炭素数10〜20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を有し、平均0.5〜8モルのエチレンオキサイドを附加したアルキルエーテル硫酸塩、および平均炭素数10〜22の飽和または不飽和脂肪酸塩等が挙げられる。
【0039】
カチオン系界面活性剤の具体例としては、アルキルアミン塩、アルキルアミンエチレンオキシド付加物、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、サパミン型第4級アンモニウム塩、あるいはピリジウム塩等があげられる。
ノニオン系界面活性剤の具体的な例としては、ポリエチレングリコール型の高級アルコールアルキレンオキシド付加物、アルキルフェノールアルキレンオキシド付加物、脂肪酸アルキレンオキシド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルアルキレンオキシド付加物、高級アルキルアミンアルキレンオキシド付加物、脂肪酸アミドアルキレンオキシド付加物、油脂のアルキレンオキシド付加物、およびポリプロピレングリコールアルキレンオキシド付加物、多価アルコール型のグリセロールの脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステル、ソルビトールとソルビタンの脂肪酸エステル、ショ糖の脂肪酸エステル、多価アルコールのアルキルエーテルおよびアルカノールアミン類の脂肪酸アミド等が挙げられる。
【0040】
両性界面活性剤の具体的な例としては、ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウムやラウリルジメチルベタイン等があげられる。
界面活性剤の濃度に特に制限はないが、通常現像液全量に対して0.5〜10wt%の範囲で使用される。
水性現像液には、必要に応じて、上記の界面活性剤以外に、洗浄促進剤やPH調整剤などの現像助剤を配合することができる。洗浄促進剤としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミン類、グリコールエーテル類、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド等のアンモニウム塩類、あるいはパラフィン系炭化水素等が挙げられる。PH調整剤としては、ホウ酸ソーダ、炭酸ソーダ、ケイ酸ソーダ、メタケイ酸ソーダ、コハク酸ソーダ、酢酸ソーダ等が挙げられる。現像助剤は、単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。現像助剤の沸点は、常圧で130℃以上であることが好ましい。沸点が130℃未満の場合、現像液から水を蒸発させて凝縮液として回収する際に現像助剤の相当量が水と一緒に蒸発除去される傾向がある。あるいは現像助剤を現像液の濃度調整の目的で利用する際に、現像液の性能を安定にするために同伴された溶剤の量を測定して調整しなければならないなどの手間がかかる。
【0041】
現像液には、必要に応じて、消泡剤、分散剤、腐食抑制剤、腐敗防止剤を添加してもよい。
未露光部の洗い出しは、ノズルからの噴射によって、またはブラシによるブラッシングでおこなわれる。
加熱された未露光部を吸収させる吸収層としては、不織布材料、紙素材、繊維織物、連続気泡発泡体、および多孔質材料が挙げられる。好ましい吸収層としては、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレンからなる不織布材料、およびこれらの不織布材料の組合わせである。特に好ましい吸収層としては、ナイロンまたはポリエステルの不織布連続ウェブである。
上記剥離現像により、製版時間短縮の点から、層(A)の未硬化部分の60%以上を除去した後、他の方法により現像することが好ましく、80%以上を除去した後、他の方法により現像することがより好ましく、90%以上を除去した後、他の方法により現像することが更に好ましい。
現像後に、硬化された感光性樹脂を後処理露光しても良い。後処理露光として、表面に波長300nm以下の光を照射する方法が一般的である。必要に応じて、300nmよりも大きい光も併用しても構わない。
【実施例】
【0042】
以下、実施例、及び比較例により本実施の形態についてより具体的に説明するが、本実施の形態はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例及び比較例中の物性は以下の方法により測定した。
1.数平均分子量(Mn)
数平均分子量(Mn)は、全てゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算分子量である。測定装置に、LC−10(島津製作所製、商品名)、カラムに、TSKgelGMHXL(4.6mmID×30cm)2本を使用し、オーブン温度40℃、溶媒にはテトラヒドロフラン(1.0ml/min)で測定を行った。
2.感光性樹脂構成体の露光部の剥離力
接着力調整層の接着力測定用サンプルは、露光された感光性樹脂構成体を1cm幅×10cm長の短冊状に切断したサンプルからカバーフィルムを一部剥がすことで作成した。切断したサンプルを温度23℃、相対湿度50%の恒温恒湿室内に一日放置した後、引っ張り試験機を用いて180゜の角度で、50mm/分の速度で支持体及び感光性樹脂層と一部剥離したカバーフィルムを剥離させることで測定を行った。引っ張り試験機はAUTOGRAPH AGS−100G(株式会社島津製作所製、商品名)を使用した。
【0043】
[参考例1]カバーフィルム、下引き層(隣接層)及び接着力調整層を有する構成体の作製
下引き層を有するカバーフィルム上に接着力調整層をコーティングすることでカバーフィルム、下引き層(隣接層)及び接着力調整層を有する構成体を作製した。
エチレングリコール93g、ネオペンチルグリコール374g、及びフタル酸382gを空気雰囲気中、反応温度180℃、1.33×10Paの減圧下で6時間縮合反応させた後、4,4−ジフェニレンジイソシアネート125gを加え、更に80℃で5時間反応させた。得られた樹脂を10%水溶液とし、溶融押し出ししたポリエチレンエレフタレートフィルム上に塗布し、塗布後、2軸延伸することで下引き層を有するカバーフィルムを作製した。得られた下引き層(隣接層)を有するカバーフィルムは厚み50μmであり、下引き層はウレタン有する化合物を含む。下引き層(隣接層)にコートする接着力調整層用の溶液として、エラストマー系接着剤であるタフプレン912(旭化成ケミカルズ株式会社製、商品名、スチレンと1,3−ブタジエンのブロック共重合体)19質量部、エラストマー系接着剤であるD1112CP(クレイトンポリマージャパン株式会社製、商品名、スチレンとイソプレンのブロック共重合体)19質量部、パラフィンオイル(平均炭素数33、平均分子量470)12質量部、液状ポリブタジエンNISSO−B2000(日本曹達株式会社、商品名)24質量部、光重合性モノマーである1,9−ノナンジオールジアクリレート2.5部、光重合性モノマーである1、6−ヘキサンジオールジメタクリレート3部、エポキシ化合物光重合性モノマーであるエポキシエステル3000M(共栄社化学株式会社、商品名)8質量部、光重合開始剤である2,2−ジメトキシ−フェニルアセトフェノン8.5部を、トルエン/MEK=35/65の質量比で調整した混合溶媒で溶解し、固形分25重量%の均一な溶液を調整した。
【0044】
その後、得られた溶液を、ナイフコーターを用いて下引き層(隣接層)上に厚さ10μmとなるよう塗布し、80℃で2分間乾燥し、厚み25μmのシリコーン処理されたポリエステルフィルムを貼りあわせた。その後「AFP−1500」露光機(旭化成ケミカルズ株式会社製、商品名)のガラス板上に、カバーフィルム側から、370nmに中心波長を有する紫外線蛍光灯を用いて、200mJ/cmの全面露光を行い、厚み25μmのシリコーン処理されたポリエステルフィルムを剥がすことで、カバーフィルム、下引き層(隣接層)及び接着力調整層を有する構成体を得た。なお、このときの露光強度はオーク製作所製のUV照度計MO−2型機でUV−35フィルターを用いて測定した。
接着力調整層中のエラストマー系接着剤(スチレンと1,3−ブタジエンのブロック共重合体)は39.6wt%であった。
【0045】
[参考例2]極性基含有ポリマーの合成
攪拌装置と温度調整用ジャケットを取り付けた耐圧反応容器に水125質量部、及び乳化剤(α−スルフォ(1−(ノニルフェノキシ)メチル−2−(2−プロペニルオキシ)エトキシ−ポリ(オキシ−1,2−エタンジイル)のアンモニウム塩(商品名アデカリアソープ 旭電化工業製)3質量部を初期仕込みした。内温を重合温度80℃まで昇温後、アクリル酸2質量部、メタクリル酸5質量部、ブタジエン60質量部、スチレン10質量部、ブチルアクリレート23質量部、t−ドデシルメルカプタンの油性混合液と、水28質量部、ペルオキソ二硫酸ナトリウム1.2質量部、乳化剤(商品名アデカリアソープ 旭電化工業製)1質量部からなる水溶液をそれぞれ一定流速で5時間、及び6時間かけて添加した。その後1時間保って重合を完了した後冷却した。生成したラテックスを水酸化ナトリウムでpH7に調整した後、スチームストリッピングで未反応物を除去し最終的に固形分濃度40%の極性基含有ポリマー水溶液を得た。これを60℃で乾燥し極性基含有ポリマーを得た。
【0046】
[実施例1]
スチレンと1,3−ブタジエンのブロック共重合体である熱可塑性エラストマー「KX405」(クレイトンポリマージャパン株式会社製、商品名、Mn10万)70質量部、液状ポリブタジエン「LIR305」(株式会社クラレ製、商品名)20質量部、光重合性モノマーであるヘキサメチレンジメタクリレート9質量部、光重合開始剤である2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン2質量部、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール1質量部を130℃に熱したニーダーを用いて均一に混練して感光性樹脂組成物を得た。
得られた感光性樹脂組成物の熱可塑性エラストマー、光重合性モノマーおよび光重合開始剤の和を100wt%としたとき、熱可塑性エラストマー成分は86.4wt%であり、光重合性モノマー成分は11.1wt%であり、光重合開始剤成分は2.5wt%であった。
この感光性樹脂組成物を120℃の熱プレス機を使用し、ウレタン系の接着剤層を有する厚み188μmポリエチレンテレフタレートフィルム支持体と、感光性樹脂組成物と接着力調整層が接するよう参考例1で得られたカバーフィルム、下引き層(隣接層)及び接着力調整層を有する構成体の間に挟み1.14mmの厚みに成形し、25cm長×25cm幅×約1mm厚の感光性樹脂構成体を得た。
【0047】
カバーフィルムの上にネガフィルムを密着させ、「AFP−1500」露光機(旭化成ケミカルズ株式会社製、商品名)のガラス板上にネガフィルムが上向きになるように置き、370nmに中心波長を有する紫外線蛍光灯を用いて、まず支持体側から、50mJ/cmの全面露光(バック露光)をおこなった後、引き続きネガフィルムを通して6000mJ/cmのレリーフ露光をおこなった。ネガフィルムの画像は、ベタ部と幅500μmの凹線・凸線を含むものを使用した。
このときの露光強度をオーク製作所製のUV照度計MO−2型機でUV−35フィルターを用いて、バック露光を行なう側である下側ランプからの紫外線をガラス板上で測定した強度は10.3mW/cm、レリーフ露光側である上側ランプからの紫外線を測定した強度は12.5mW/cmであった。
露光終了後、ネガフィルムを除去し、カバーフィルム側から150℃に熱した厚み5mmの鉄板を接することで4分間加熱した。その後、カバーフィルムを除去することでフレキソ印刷版を作成した。カバーフィルムと未露光部の接着力調整層を剥離することにより感光性樹脂層の未硬化部分が除去され、露光部分の接着力調整層はフレキソ印刷版側に残った。
なお、上記2の評価方法で測定された露光された感光性樹脂構成体の露光部の剥離力は、1.9N/cmであった。
【0048】
[実施例2]
参考例2に示した極性基含有ポリマー30質量部、スチレンと1,3−ブタジエンのブロック共重合体である熱可塑性エラストマー「KX405」(クレイトンポリマージャパン株式会社製、商品名、Mn10万)30質量部、液状ポリブタジエン「LIR305」(株式会社クラレ製、商品名)30質量部、光重合性モノマーであるヘキサメチレンジメタクリレート2.5質量部、光重合性モノマーである2−ブチル、2−エチルプロパンジオールジアクリレート8質量部、光重合開始剤である2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン2質量部、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.3質量部を130℃のニーダーを用いて均一に混練して感光性樹脂組成物を得た。
得られた感光性樹脂組成物の熱可塑性エラストマー、光重合性モノマーおよび光重合開始剤の和を100wt%としたとき、熱可塑性エラストマー成分は70.6wt%であり、光重合性モノマー成分は18.8wt%であり、光重合開始剤成分は4.7wt%であった。
この組成物を120℃の熱プレス機を使用し、ウレタン系の接着剤層を有する厚み188μmポリエチレンテレフタレートフィルム支持体と、組成物と接着力調整層が接するよう参考例1で得られたカバーフィルム、下引き層(隣接層)及び接着力調整層を有する構成体の間に挟み1.14mmの厚みに成形し、25cm長×25cm幅×約1mm厚の感光性樹脂構成体を得た。
【0049】
カバーフィルムの上にネガフィルムを密着させ、「AFP−1500」露光機(旭化成ケミカルズ株式会社製、商品名)のガラス板上にネガフィルムが上向きになるように置き、370nmに中心波長を有する紫外線蛍光灯を用いて、まず支持体側から、100mJ/cmの全面露光(バック露光)をおこなった後、引き続きネガフィルムを通して6000mJ/cmのレリーフ露光をおこなった。ネガフィルムの画像は、実施例1と同じものを使用した。
このときの露光強度をオーク製作所製のUV照度計MO−2型機でUV−35フィルターを用いて、バック露光を行なう側である下側ランプからの紫外線をガラス板上で測定した強度は10.3mW/cm、レリーフ露光側である上側ランプからの紫外線を測定した強度は12.5mW/cmであった。
露光終了後、ネガフィルムを除去し、温度23℃の室内でカバーフィルムを除去することでフレキソ印刷版を作成した。カバーフィルムと未露光部の接着力調整層を剥離することにより感光性樹脂層の未硬化部分が除去され、露光部分の接着力調整層はフレキソ印刷版側に残った。
なお、上記2.の評価方法で測定された露光された感光性樹脂構成体の接着力は、1.9N/cmであった。
【0050】
[比較例1]
感光性樹脂組成物として「AFP−SH」(旭化成ケミカルズ株式会社製、商品名)厚さ1.14mmのフレキソ印刷用感光性樹脂版を用いた。SHに予め備わっているカバーフィルムを剥ぎ取り、露出した保護膜上にネガフィルムを密着させ、「AFP−1500」露光機(旭化成ケミカルズ株式会社製、商品名)のガラス版上にネガフィルムが上向きになるように置き、370nmに中心波長を有する紫外線蛍光灯を用いて、まず支持体側から、600mJ/cmの全面露光(バック露光)をおこなった後、引き続きネガフィルムを通して6000mJ/cmのレリーフ露光をおこなった。実施例1と同じものを使用した。
露光終了後、ネガフィルムを除去し、テトラクロロエチレン/n−ブタノール=3/1(容積比)を現像液として「「AFP−1500」現像機(旭化成ケミカルズ株式会社製、商品名)にて現像し、現像溶剤で膨潤した厚みを元の厚みに回復させるため、60℃2時間乾燥後、後処理露光を行ってフレキソ印刷版を作成した。
実施例1および2に記載のフレキソ印刷版製造方法を用いることにより、廃棄物が非常に少なく、汚染廃水副生成物が全く発生せずに得ることが可能であった。比較例1で得られたフレキソ印刷版の製造方法では、現像溶剤が必要であり環境に負荷がかかり、また製版時間も長くなった。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明によれば、廃棄物や汚染廃水副生成物の発生量が少ないため環境負荷の観点から好ましく、低コストかつ製版時間が短縮された、フレキソ印刷版としての適性に優れたフレキソ印刷版を提供できる。そのため、本発明はフィルム、ラベル、カートン等の一般フレキソ印刷分野において有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光性樹脂層(A)、該層(A)に隣接する接着力調整層(B)及び該層(B)に隣接する隣接層(C)を含む感光性樹脂構成体を露光し、層(A)の一部を硬化する工程(工程(i))、又は感光性樹脂層(A)を露光し、層(A)の一部を硬化した後、接着力調整層(B)及び該層(B)に隣接する隣接層(C)を、該層(B)が層(A)に接するように積層し感光性樹脂構成体とした後、該感光性樹脂構成体を露光する工程(工程(ii))と、
工程(i)又は(ii)の後、該層(C)及び層(B)の未露光部を剥離することにより、層(A)の未硬化部分の少なくとも一部を除去する工程(工程(iii))
とを含むフレキソ印刷版の製造方法。
【請求項2】
感光性樹脂層(A)が熱可塑性エラストマー(a)、光重合性モノマー(b)および光重合開始剤(c)を含有する請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
熱可塑性エラストマー(a)が、共役ジエンを主体とする重合体ブロックおよびビニル芳香族炭化水素を主体とする重合体ブロックを含むブロック共重合体を含有する請求項2記載の製造方法。
【請求項4】
接着力調整層(B)が、エラストマー系接着剤(B1)を含有する請求項1〜3いずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
接着力調整層(B)が、エラストマー系接着剤(B1)、光重合性モノマーおよび光重合開始剤を含有する請求項1〜3いずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
エラストマー系接着剤(B1)が、共役ジエンを主体とする重合体ブロックおよびビニル芳香族炭化水素を主体とする重合体ブロックを含むブロック共重合体を含有する請求項4又は5に記載の製造方法。
【請求項7】
工程(iii)において層(C)を剥離する際の、感光性樹脂構成体の露光部の剥離力が6N/cm以下である請求項1〜6のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
工程(iii)において層(C)を剥離する際の、感光性樹脂構成体の露光部の剥離力が3N/cm以下である請求項1〜6のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項9】
工程(iii)の際、感光性樹脂構成体を50℃以上180℃以下に熱する請求項1〜8のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項10】
層(A)の厚みが0.5mm以上10mm以下である請求項1〜9のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の製造方法によって製造されたフレキソ印刷版。

【公開番号】特開2009−204856(P2009−204856A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−46676(P2008−46676)
【出願日】平成20年2月27日(2008.2.27)
【出願人】(309002329)旭化成イーマテリアルズ株式会社 (771)
【Fターム(参考)】