説明

フレッシュコンクリートの単位水量測定方法並びにその装置

【課題】 モルタル成分のみを分離する必要がなく、フレッシュコンクリート自体を被測定物とし、測定に要する時間が短く、更に高精度での測定を容易に行うことのできる、新規なフレッシュコンクリートの単位水量測定方法並びにその装置の開発を技術課題とした。
【解決手段】 送信アンテナ4と受信アンテナ5とを試料を挟んで対向して配し、送信アンテナ4からマイクロ波を放射するとともに、試料を通過したマイクロ波を受信アンテナ5によって受信して測定される試料によるマイクロ波の減衰量をもとに、試料に含まれる水分量を算出する方法において、試料はフレッシュコンクリートFであり、このフレッシュコンクリートF中の空気量、骨材の吸水率及び塩化物の濃度並びにフレッシュコンクリートFの温度のいずれか一つまたは複数を考慮して、単位水量を算出することを特徴として成るものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフレッシュコンクリートの単位水量を測定する手法に関するものであって、特に高精度の測定を容易に且つ短時間で行うことのできるフレッシュコンクリートの単位水量測定方法並びにその装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
数年前に起こった新幹線トンネル内のコンクリート崩落事故をきっかけに、近時、コンクリート構造物の耐久性や品質確保が社会的に問われるようになった。このコンクリート構造物の品質を決定する要因の大きな部分は当然ながらフレッシュコンクリートの状態であり、その品質を確保するための指標の一つに水セメント比が挙げられている。このため現在、耐久性の要求性能に対応した水セメント比の制限値が明示されるとともに、一定規模の工事に対して施工段階での水分量確認が行われている。
このための水セメント比あるいは単位水量(フレッシュコンクリート単位体積当たりの水分量)の測定手法には種々の方式が採られており、過日、国土交通省のモデル工事で採用された手法は加熱乾燥法、空気量試験法、減圧乾燥法及び静電容量法である。
【0003】
まず前記加熱乾燥法は、電熱器等を用いて試料(フレッシュコンクリート)を加熱乾燥させ、乾燥による試料の重量減少分を水分量(%)として算出するものであり、単位水量(kg/m3 )に換算するために、加熱乾燥後の試料中の粗骨材を取り出して表乾質量を測定し、水分の補正を行うものである。
【0004】
また前記空気量試験法は、エアメータを用いて試料(フレッシュコンクリート)の単位容積質量から単位水量を推定するものである。
【0005】
また前記減圧乾燥法は、W/Cミータを用いて試料(ウエットスクリーニングモルタル)を大気圧以下に減圧し、水の沸点が下がるのを利用して水分を蒸発させ、乾燥による試料の重量減少分を水分量(%)として算出するものである。
【0006】
また前記静電容量法は、ウエットスクリーニングモルタル中の水の誘電比率が80に対して、セメントや骨材の誘電比率が2〜3であることから、この差を用いて間接的に水量を測定するものであり、静電容量型水分計が用いられる。
【0007】
上述した方法の他にもフレッシュコンクリートの単位水量測定方法には種々のものがあるが、それぞれ一長一短であり、測定精度、測定時間、更に操作性・簡便性、全てに優れた測定方法の確立が望まれている。
特に測定精度に関しては、測定装置メーカーのカタログデータでは良好な数値が示されているものの、現実には現場の測定で±5kg/m3 以下を保証するものはなく、実際、国土交通省においても±15kg/m3 を管理値としている。
【0008】
ところでフレッシュコンクリートの単位水量測定法の一つに、マイクロ波を利用し、送信アンテナと受信アンテナとの間に被測定物を位置させ、被測定物によるマイクロ波の吸収量を計測することにより単位水量を算出するといったマイクロ波透過方式の測定方法も案出されている(特許文献1参照)。
しかしながら粗骨材の混入による測定精度の低下を防ぐために、フレッシュコンクリート自体ではなくそのモルタル成分が測定対象とされているため、モルタル成分の分離構造あるいは分離作業が必須のものとなっており、装置の複雑化や操作性・簡便性の低下を招いてしまっている。
【特許文献1】特開2000−304708公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はこのような背景を認識してなされたものであって、特にモルタル成分のみを分離する必要がなく、フレッシュコンクリート自体を被測定物とし、測定に要する時間が短く、更に高精度での測定を容易に行うことのできる、新規なフレッシュコンクリートの単位水量測定方法並びにその装置の開発を技術課題としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち請求項1記載のフレッシュコンクリートの単位水量測定方法は、送信アンテナと受信アンテナとを試料を挟んで対向して配し、前記送信アンテナからマイクロ波を放射するとともに、試料を通過したマイクロ波を受信アンテナによって受信して測定される試料によるマイクロ波の減衰量をもとに、試料に含まれる水分量を算出する方法において、前記試料はフレッシュコンクリートであり、このフレッシュコンクリート中の空気量、骨材の吸水率及び塩化物の濃度並びにフレッシュコンクリートの温度のいずれか一つまたは複数を考慮して、単位水量を算出することを特徴として成るものである。
この発明によれば、フレッシュコンクリートからモルタル成分のみを分離することなく、フレッシュコンクリート自体を試料とするため、単位水量の測定を簡便、迅速且つ正確に行うことができる。
【0011】
また請求項2記載のフレッシュコンクリートの単位水量測定方法は、前記要件に加え、前記試料をサンプル容器に収容した状態で送信アンテナと受信アンテナとの間に配するものであり、これら送信アンテナ及び受信アンテナを、前記サンプル容器に沿って移動させることにより、マイクロ波の減衰量を複数個所において測定することを特徴として成るものである。
この発明によれば、マイクロ波の減衰量を迅速に複数個所で測定し、その平均値から単位水量を算出することにより、より正確な測定結果を得ることができる。
【0012】
更にまた請求項3記載のフレッシュコンクリートの単位水量測定方法は、前記要件に加え、前記送信アンテナと受信アンテナとの間に位置するフレッシュコンクリートの厚さを、粗骨材最大寸法の二倍以上とすることを特徴として成るものである。
この発明によれば、粗骨材による測定値の変動を低減して、より正確な測定結果を得ることができる。また粗骨材のブリッジ(粗骨材が厚さ方向に噛み合わさり動かなくなってしまった状態)を回避し、試料の充填作業や排出作業を迅速且つ円滑に行うことができる。
【0013】
更にまた請求項4記載のフレッシュコンクリートの単位水量測定方法は、前記要件に加え、前記マイクロ波の周波数は、2〜6GHzであることを特徴として成るものである。
この発明によれば、水分に対する吸収量と水分量との相関関係が良好な周波数帯を使用するため、より正確な測定結果を得ることができる。
【0014】
また請求項5記載のフレッシュコンクリートの単位水量測定装置は、筐体に対して、マイクロ波の送信機及び受信機と、送信アンテナ及び受信アンテナと、被測定物たるフレッシュコンクリートのサンプル容器と、制御部とを具えて成り、前記サンプル容器に収容されたフレッシュコンクリートに対し、送信アンテナからマイクロ波を照射して、フレッシュコンクリートを通過した後のマイクロ波を受信アンテナで受信し、フレッシュコンクリートによるマイクロ波の減衰量をもとにフレッシュコンクリート中の水分量を測定する装置において、前記送信アンテナ及び受信アンテナは、サンプル容器を挟んで対向した位置に臨むように具えられたことを特徴として成るものである。
この発明によれば、サンプル容器に収容されたフレッシュコンクリートによるマイクロ波の減衰量を正確に計測することができる。
【0015】
更にまた請求項6記載のフレッシュコンクリートの単位水量測定装置は、前記請求項5記載の要件に加え、前記送信アンテナ及び受信アンテナは、前記サンプル容器に沿って移動可能に構成されていることを特徴として成るものである。
この発明によれば、マイクロ波の減衰量を迅速に複数個所で測定し、その平均値から単位水量を算出することにより、より正確な測定結果を得ることができる。
【0016】
更にまた請求項7記載のフレッシュコンクリートの単位水量測定装置は、前記請求項5または6記載の要件に加え、前記サンプル容器は、筐体に対して着脱可能な構成であることを特徴として成るものである。
この発明によれば、サンプル容器へのフレッシュコンクリートの投入及び排出を、筐体から取り出した状態で行うことができるため、測定を簡便に行うことができる。
【0017】
更にまた請求項8記載のフレッシュコンクリートの単位水量測定装置は、前記請求項5、6または7記載の要件に加え、前記サンプル容器は、その容量が3.5〜8リットルであり、且つその厚さがフレッシュコンクリートに混入される粗骨材最大寸法の二倍以上であることを特徴として成るものである。
この発明によれば、粗骨材による測定値の変動を低減して、より正確な測定結果を得ることができる。またサンプル容器内での粗骨材のブリッジ(粗骨材が厚さ方向に噛み合わさり動かなくなってしまった状態)を回避し、試料の充填作業や排出作業を迅速且つ円滑に行うことができる。
【0018】
更にまた請求項9記載のフレッシュコンクリートの単位水量測定装置は、前記請求項5、6、7または8記載の要件に加え、前記マイクロ波の周波数は、2〜6GHzであることを特徴として成るものである。
この発明によれば、水分に対する吸収量と水分量との相関関係が良好な周波数帯を使用するため、より正確な測定結果を得ることができる。
【0019】
更にまた請求項10記載のフレッシュコンクリートの単位水量測定装置は、前記請求項5、6、7、8または9記載の要件に加え、前記筐体の内壁面には、電波吸収体が貼設されていることを特徴として成るものである。
この発明によれば、マイクロ波の散乱による測定精度の低下を回避することができる。
【0020】
更にまた請求項11記載のフレッシュコンクリートの単位水量測定装置は、前記請求項5、6、7、8、9または10記載の要件に加え、前記制御部は、フレッシュコンクリート中の空気量、骨材の吸水率及び塩化物の濃度並びにフレッシュコンクリートの温度のいずれか一つまたは複数を考慮して、単位水量を算出するものであることを特徴として成るものである。
この発明によれば、フレッシュコンクリートからモルタル成分のみを分離することなく、フレッシュコンクリート自体を試料とするため、単位水量の測定を簡便、迅速且つ正確に行うことができる。
そしてこれら各請求項記載の発明の構成を手段として前記課題の解決が図られる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、特にモルタル成分のみを分離する必要がなく、フレッシュコンクリート自体を被測定物とし、測定を短時間で行うことができ、更に高精度での測定を容易に行うことができ、フレッシュコンクリートの単位水量を正確に算出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明のフレッシュコンクリートの単位水量測定方法並びにその装置の最良の形態の一つは以下の実施例に説明するとおりであって、図示の実施例に基づいて説明するものであるが、この実施例に対して本発明の技術的思想の範囲内において適宜変更を加えることも可能である。
【実施例】
【0023】
以下本発明について、まずはじめに「フレッシュコンクリートの単位水量測定装置」(以下、単位水量測定装置と称する)について図示の実施例に基づいて説明した後、続いてこの装置を用いた「フレッシュコンクリートの単位水量測定方法」について説明を行う。
図中符号Dで示すものが本発明の単位水量測定装置であり、このものは筐体1内に、マイクロ波送信機2と、マイクロ波受信機3と、送信アンテナ4と、受信アンテナ5と、制御部6と、アンテナ走査機構7とを具え、更に筐体1の前面にディスプレイ8とプリンタ9とを具えて成るものである。
また単位水量測定装置Dは、粗骨材m、粗骨材n及び細骨材sを含むフレッシュコンクリートFをそのまま試料とするものであり、フレッシュコンクリートFを収容するためのサンプル容器10が、前記筐体1に対して着脱可能に装備される。
以下前記単位水量測定装置Dの構成要素について詳しく説明する。
【0024】
まず前記筐体1は適宜金属板等を加工する等して形成された箱体であり、この実施例では一例として幅730mm、高さ353mm、奥行き535mmと、いわゆる営業用の小型自動車の荷台に載せることができる程度の寸法に形成される。
なお筐体1の内壁面には、発泡性の樹脂に黒鉛を混入するなどして形成された電波吸収体Aが貼設される。また単位水量測定装置Dは施工現場に持ち込まれて使用されるため、筐体1に対してキャスター1Aやグリップ1Cを取り付けて可搬性を高めるようにする。
そして筐体1の天板部には、前記サンプル容器10を受け入れるための容器受入口1Sが形成される。
【0025】
次に前記マイクロ波送信機2及びマイクロ波受信機3について説明すると、これらは一例として周波数2〜6GHzのマイクロ波を送受信できるものとする。
なお、使用するマイクロ波の周波数は、前記2〜6GHz帯のマイクロ波に限定されるものではなく、要は水分に対する吸収量と水分量との相関が見られる周波数帯であれば、各種条件に応じて適宜の高周波を選択することができる。
【0026】
次に前記送信アンテナ4及び受信アンテナ5について説明すると、これらは後述するアンテナ走査機構7におけるアンテナベース74に対して取り付けられるものであり、それぞれ前記マイクロ波送信機2の出力端子及びマイクロ波受信機3の入力端子に同軸ケーブル等で接続される。
【0027】
次に前記制御部6について説明すると、このものは適宜のマイクロプロセッサを具えて成り、マイクロ波送信機2、マイクロ波受信機3、アンテナ走査機構7、ディスプレイ8及びプリンタ9の制御を行うとともに、測定結果の演算処理を行うための装置である。そして図示は省略するが、適宜外部のパソコン等とデータのやりとりを行うためのインターフェースが具えられる。
【0028】
次に前記アンテナ走査機構7について説明すると、この機構は図3に示すように、筐体1の底板1B上にレール71が敷設され、このレール71に摺嵌するスライダ72がスライドプレート73の底面に固定されており、このスライドプレート73上に立ち上げるように設けられたアンテナベース74に前記送信アンテナ4及び受信アンテナ5が固定されて成るものである。そして前記スライドプレート73上には、軸受75に軸支されたボールネジ76と螺合するナット77が固定されるものであり、前記ボールネジ76の一端に具えられた従動プーリ78と、モータMの出力軸に具えられた駆動プーリ79とにベルトBが巻回されることにより、モータMによってスライドプレート73をレール71に沿って移動させるものである。
また前記アンテナベース74はL字形の台座が対向して一対具えられて成るものであり、ここに取り付けられる送信アンテナ4及び受信アンテナ5は、相互に後述するサンプル容器10の厚さよりも離れて、それぞれの送受信面を対向させて位置することとなる。
なおアンテナ走査機構7の構成としては、前記アンテナベース74を上下方向に移動可能な構成を採ることも可能である。
【0029】
次に前記ディスプレイ8について説明すると、このものは各種文字情報の表示を行うとともに、情報の入力機能を具えて成るものであり、一例としてタッチパネル式の入力インターフェースを具えた液晶ディスプレイが採用される。
また前記プリンタ9は、一例としてサーマルプリンタが適用されるものであり、このものは感熱紙に印字するものであるため、コンパクトに構成されるものである。
【0030】
次に前記サンプル容器10について説明すると、このものはフレーム10Aを偏平の角枠状に組むとともに、各面に対して板材を貼った箱型容器であり、上面を開口して成るものである。なお側板10Bについては、マイクロ波の透過性が高い素材、例えば塩化ビニル、アクリル、ポリカーボネート等を素材として成るものである。
また前記サンプル容器10は、その容量が3.5〜8リットルとされるものであり、且つその厚さが粗骨材最大寸法(JIS A 5308(レディーミクストコンクリート)では40、25、20、15mmの四種類が規定されている)の二倍以上となるようにする。このためサンプル容器10内での粗骨材m、粗骨材nのブリッジ(粗骨材が厚さ方向に噛み合わさり動かなくなってしまった状態)を回避し、試料たるフレッシュコンクリートFの充填作業や排出作業を迅速且つ円滑に行うことができる。因みにこの実施例ではサンプル容器10の内径を、一例として幅540mm、高さ205mm、厚さ82mmとしてその一部をフレッシュコンクリートFの収容領域とした。
更に前記サンプル容器10に対しては、適宜取手10Cが取り付けられる。
【0031】
本発明の単位水量測定装置Dは、一例として上述したように構成されるものであり、以下図5に示すフローチャートに従って単位水量測定装置Dの作動態様と併せて本発明の測定方法について説明する。なおこの実施例におけるフレッシュコンクリートFは、示方配合(所要の品質を得るために決定した配合)に従って、所定量のセメント、粗骨材m、粗骨材n及び細骨材s並びに単位水量の水を練り混ぜて成るものである。更にフレッシュコンクリートFには、所要の物性を得るために適宜混和剤(AE減水剤等)や混和材(石灰石粉末、フライアッシュ等)が加えられるものであるが、単位水量測定への影響が少ないため、この実施例では詳細な説明は省略する。
なお、粗骨材m、粗骨材n及び細骨材sを総称するときには単に骨材と呼称するものである。
【0032】
[各種データ・補正置の入力]
操作者は、まずディスプレイ8のタッチパネルを操作して「1.材料データ」、「2.コンクリート配合」、「3.検量線定数」等の入力を行う(ステップS1)。
前記「1.材料データ」としては、粗骨材m、粗骨材n及び細骨材sの大きさ、種類を入力するものであり、この実施例ではそれぞれあらかじめ設定されたものの中から選択して入力するか、あるいは数字入力するようにした。
なお粗骨材m、粗骨材n及び細骨材sは、それぞれの性状に応じて吸水率(Wgm、Wgn、Ws[%]が設定されており、これら吸水率Wgm、Wgn、Wsは、後述する骨材吸水率補正量Wa[kg/m3 ]の算出に供される。
このように吸水率が考慮される理由は、フレッシュコンクリートFの配合設計では、示方書に示された示方配合に従うものであり、この中で骨材は表面乾燥飽水状態(骨材表面は乾燥しているが内部間隙に吸水されている状態)で扱われているからである。
すなわち実際には骨材を絶乾状態(絶対乾燥状態)で配合設計することはなく、本発明の「フレッシュコンクリートの単位水量測定方法並びにその装置」では、配合時の練り混ぜ水である単位水量と、骨材中の水との双方にマイクロ波が吸収されることとなるため、骨材の吸水率を考慮することが重要となるものである。
なお実際の配合では、表面乾燥飽水状態からのずれ(湿潤または乾燥)があるため、骨材表面の付着水分量を測定したうえで配合水量を補正計算し、実配合が決定されている。
【0033】
また前記「2.コンクリート配合」としては粗骨材m、粗骨材n、細骨材s、セメント及び水の単位量(Gm、Gn、S0 、C0 、W0 [kg/m3 ])を入力するものであり、この実施例ではそれぞれあらかじめ設定されたものの中から選択して入力するか、あるいは数字入力するようにした。なおこれらのGm、Gn及びS0 は、後述する骨材吸水率補正量Wa[kg/m3 ]の算出に供され、C0 及びW0 は水セメント比[%]の算出に供される。
【0034】
更にまた前記「3.検量線定数」は、検量線傾きa[kg/m3 /V]、検量線切片b[kg/m3 ]を入力するものであり、この実施例ではそれぞれあらかじめ設定されたものの中から選択して入力するか、あるいは数字入力するようにした。
なおこれらa、bの値は、後述する検量線算出単位水量[kg/m3 ]の算出に供される。
【0035】
続いてステップS2においてフレッシュコンクリートF中の空気量Air[%]の入力を行うものであり、実測値あるいは標準値(一例として4.5%)を入力する。
なおこの空気量Airの値は、後述する単位水量W[kg/m3 ]の算出に供される。
このように空気量が考慮される理由は、フレッシュコンクリートFに空気が混入すると、事実上、試料の体積が変化してマイクロ波の減衰量に影響を及ぼしてしまうからである。
なおフレッシュコンクリートF中の空気量と、後述する出力電圧Vsとの間には、リニアな相関関係があることが確認されている。
【0036】
続いてステップS3において塩化物濃度[%]の入力を行うものであり、実測値または標準値を入力する。
なおこの塩化物濃度は、後述する塩化物補正量Wcl[kg/m3 ]の算出に供される。
このように塩化物濃度が考慮される理由は、マイクロ波の減衰量は水分中の塩化物量に比例するからである。ここでフレッシュコンクリートF単位体積当たりの塩化物量ではなく、水分中の塩化物量を扱うのは、フレッシュコンクリートF単位体積当たりの塩化物量が同じであっても、単位水量が150kgの場合と170kgの場合とでは、水分中の塩化物量が異なるものであり、逆にフレッシュコンクリートF単位体積当たりの塩化物量が異なっても、水分中の塩化物濃度が同じであれば、水分測定への影響度は同じになるからである。
因みにJIS A 5308(レディーミクストコンクリート)では、フレッシュコンクリートF単位体積当たりの塩化物量は0.3kg以下(特別な場合0.6kg以下)と規定されている。
【0037】
[空容器での測定]
次いでステップS4において初期値測定実施の要・不要を確認し、要の場合にはステップS5に進み、空のサンプル容器10を容器受入口1Sにセットし、サンプル容器10のみによるマイクロ波の減衰量を測定し、この値を初期電圧Vi[V]とする。なおこのときの単位水量測定装置Dの動きは、以下に示す「試料の測定」のものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
一方、不要の場合、すなわち初期値として前回計測データを用いる場合(前回計測時からの時間経過が短かく、初期値変動がない場合。通常30分以内。)にはステップS6に進む。
【0038】
[試料の測定]
次いでステップS6において、所定量のフレッシュコンクリートF(3.5〜8リットル)をサンプル容器10に投入し、サンプル容器10の側面を殴打してフレッシュコンクリートFを材料分離を引き起こさないようにして内部空間に均等に行き渡らせ、その後、容器受入口1Sにサンプル容器10をセットする。
次いで操作者が計測ボタンを押すとアンテナ走査機構7が起動し、モータMが正方向に回転して送信アンテナ4及び受信アンテナ5が行き方向(図4中の左方向)に移動する。同時にマイクロ波送信機2から送信アンテナ4にマイクロ波を送り、ここから放射して水分測定を開始する(ステップS7)。
するとマイクロ波はサンプル容器10及びこの中のフレッシュコンクリートFを通過する際に、フレッシュコンクリートF中の水分によって吸収され、減衰した状態で受信アンテナ5に到達し、ここからマイクロ波受信機3に至ってそのレベルが出力電圧Vs[V]として計測されることとなる。
この際、筐体1の内壁面には、電波吸収体Aが貼設されているため、マイクロ波の散乱による測定精度の低下を回避することができる。
【0039】
そしてこのように送信アンテナ4及び受信アンテナ5を図4(a)に示す状態から行き方向に移動させながら計測が行われるものであり、所定時間毎あるいは測定ポイント毎の測定データが順次制御部6内のメモリに蓄積される。
やがて図4(b)に示す状態を経由して、図4(c)に示すように送信アンテナ4及び受信アンテナ5の進行端がサンプル容器10の終端に到達した時点でモータMを逆方向に回転させ、送信アンテナ4及び受信アンテナ5を帰り方向(図4中の右方向)に移動させながら、計測を行う。
そして図4(d)に示すように送信アンテナ4及び受信アンテナ5の進行端がサンプル容器10の終端に到達した時点で計測を停止し、測定作業が終了する。
なお測定時間の短縮を図る場合には、図4(a)に示す状態から図4(c)に示す状態までの片道区間のみ測定を行うようにしてもよい。
【0040】
またステップS8においてフレッシュコンクリートFの温度を、適宜の温度センサによって計測する。なおこの試料温度は、後述する温度補正量Wt[kg/m3 ]の算出に供される。
このように試料温度が考慮される理由は、マイクロ波の減衰量は試料温度に大きく影響されるからである。
【0041】
[演算及び表示・プリント]
そして制御部6は、フレッシュコンクリートF中の空気量、骨材の吸水率及び塩化物の濃度並びにフレッシュコンクリートFの温度のいずれか一つまたは複数を考慮して単位水量を算出するものであり(ステップS9)、一例として下式1、2に従い、算出結果をディスプレイ8に表示するとともに、プリンタ9によってペーパー出力する(ステップS10)。
なおこの算出の際には、前記出力電圧Vsは平均値が採用される。
【0042】
【数1】

【0043】
【数2】

【0044】
なおこのようにして算出されたフレッシュコンクリートFの単位水量Wは、この実施例で行った実験では、図6に示すように相関係数R2 =0.9759と高い値を示しており、本発明の「フレッシュコンクリートの単位水量測定方法並びにその装置」による測定精度は±4.3[kg/m3 ]となることが確認された。
以上述べたように本発明によると、所定の体積のフレッシュコンクリートF中に存在する水分量を計測することができ、単位水量を正確に算出することができる。
また前記ステップS7以降は1〜2分程度しか要さないため、既存の装置と比べて極めて短時間でフレッシュコンクリートFの単位水量測定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明のフレッシュコンクリートの単位水量測定装置を示す斜視図である。
【図2】同上正面図及び側面図である。
【図3】アンテナ走査機構を示す斜視図である。
【図4】測定時におけるサンプル容器と送信アンテナ及び受信アンテナとの位置関係を示す骨格図である。
【図5】本発明のフレッシュコンクリートの単位水量測定方法の流れを示すフローチャートである。
【図6】測定データを示すグラフである。
【符号の説明】
【0046】
D 単位水量測定装置
1 筐体
1A キャスター
1B 底板
1C グリップ
1S 容器受入口
2 マイクロ波送信機
3 マイクロ波受信機
4 送信アンテナ
5 受信アンテナ
6 制御部
7 アンテナ走査機構
71 レール
72 スライダ
73 スライドプレート
74 アンテナベース
75 軸受
76 ボールネジ
77 ナット
78 従動プーリ
79 駆動プーリ
8 ディスプレイ
9 プリンタ
10 サンプル容器
10A フレーム
10B 側板
10C 取手
A 電波吸収体
B ベルト
F フレッシュコンクリート
M モータ
m 粗骨材
n 粗骨材
s 細骨材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信アンテナと受信アンテナとを試料を挟んで対向して配し、前記送信アンテナからマイクロ波を放射するとともに、試料を通過したマイクロ波を受信アンテナによって受信して測定される試料によるマイクロ波の減衰量をもとに、試料に含まれる水分量を算出する方法において、前記試料はフレッシュコンクリートであり、このフレッシュコンクリート中の空気量、骨材の吸水率及び塩化物の濃度並びにフレッシュコンクリートの温度のいずれか一つまたは複数を考慮して、単位水量を算出することを特徴とするフレッシュコンクリートの単位水量測定方法。
【請求項2】
前記試料をサンプル容器に収容した状態で送信アンテナと受信アンテナとの間に配するものであり、これら送信アンテナ及び受信アンテナを、前記サンプル容器に沿って移動させることにより、マイクロ波の減衰量を複数個所において測定することを特徴とする請求項1記載のフレッシュコンクリートの単位水量測定方法。
【請求項3】
前記送信アンテナと受信アンテナとの間に位置するフレッシュコンクリートの厚さを、粗骨材最大寸法の二倍以上とすることを特徴とする請求項1または2記載のフレッシュコンクリートの単位水量測定方法。
【請求項4】
前記マイクロ波の周波数は、2〜6GHzであることを特徴とする請求項1、2または3記載のフレッシュコンクリートの単位水量測定方法。
【請求項5】
筐体に対して、マイクロ波の送信機及び受信機と、送信アンテナ及び受信アンテナと、被測定物たるフレッシュコンクリートのサンプル容器と、制御部とを具えて成り、前記サンプル容器に収容されたフレッシュコンクリートに対し、送信アンテナからマイクロ波を照射して、フレッシュコンクリートを通過した後のマイクロ波を受信アンテナで受信し、フレッシュコンクリートによるマイクロ波の減衰量をもとにフレッシュコンクリート中の水分量を測定する装置において、前記送信アンテナ及び受信アンテナは、サンプル容器を挟んで対向した位置に臨むように具えられたことを特徴とするフレッシュコンクリートの単位水量測定装置。
【請求項6】
前記送信アンテナ及び受信アンテナは、前記サンプル容器に沿って移動可能に構成されていることを特徴とする請求項5記載のフレッシュコンクリートの単位水量測定装置。
【請求項7】
前記サンプル容器は、筐体に対して着脱可能な構成であることを特徴とする請求項5または6記載のフレッシュコンクリートの単位水量測定装置。
【請求項8】
前記サンプル容器は、その容量が3.5〜8リットルであり、且つその厚さがフレッシュコンクリートに混入される粗骨材最大寸法の二倍以上であることを特徴とする請求項5、6または7記載のフレッシュコンクリートの単位水量測定装置。
【請求項9】
前記マイクロ波の周波数は、2〜6GHzであることを特徴とする請求項5、6、7または8記載のフレッシュコンクリートの単位水量測定装置。
【請求項10】
前記筐体の内壁面には、電波吸収体が貼設されていることを特徴とする請求項5、6、7、8または9記載のフレッシュコンクリートの単位水量測定装置。
【請求項11】
前記制御部は、フレッシュコンクリート中の空気量、骨材の吸水率及び塩化物の濃度並びにフレッシュコンクリートの温度のいずれか一つまたは複数を考慮して、単位水量を算出するものであることを特徴とする請求項5、6、7、8、9または10記載のフレッシュコンクリートの単位水量測定装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2006−10369(P2006−10369A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−184570(P2004−184570)
【出願日】平成16年6月23日(2004.6.23)
【出願人】(301010607)国土交通省近畿地方整備局長 (7)
【出願人】(594018267)株式会社中研コンサルタント (10)
【出願人】(000104375)カワサキ機工株式会社 (30)