説明

フレッシュコンクリートの水分採取装置

【課題】構造が簡単であって操作が容易であり、フレッシュコンクリートの水分を効果的に採取することができる水分簡易採取装置を提供する。
【手段】筒状の濾過アダプターと吸引ポンプとを有し、上記濾過アダプター内部の吸引室底部は多孔質板によって通液自在に形成されており、該多孔質底部には濾紙が封着されており、また上記吸引室の上部には吸引口が設けられており、該吸引ポンプの先端を該吸引口に挿入することによって該吸引ポンプが濾過アダプターに対して着脱自在に装着され、該濾過アダプター底部をフレッシュコンクリートに密着させて濾紙を通じて該コンクリートの水分を吸引することを特徴とし、好ましくは、濾紙が交換可能に装着されている水分採取装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフレッシュコンクリートの塩素濃度を測定するための水分採取装置に関する。より詳しくは、構造が簡単であって操作が容易であり、フレッシュコンクリートの水分を効果的に採取することができる水分簡易採取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートに含まれる塩素濃度が高いとコンクリート内部の鉄筋の腐食が進むので、コンクリート中の塩素濃度は出来るだけ低いことが求められる。このため、施工時にコンクリートの塩素濃度を測定する必要がある。一方、コンクリート中の塩素濃度が高くなる原因の一つとして、コンクリート用骨材として従来から使用されてきた川砂が不足し、その代用として海砂の使用量が増加したことが挙げられている。このような、骨材に起因するものを含めてコンクリート中の塩素濃度を正確に測定するには、セメント中の化学的な塩素含有量を把握するだけでは不十分であり、骨材を配合したフレッシュコンクリートの状態で塩素濃度を測定する必要がある。
【0003】
従来、フレッシュコンクリートの塩素濃度測定装置の一例として、筒状容器の上部と下部に比較電極と塩素イオン電極を有し、フレッシュコンクリートの濾液をこの筒状容器の内部に封入して塩素イオン濃度を測定する装置が知られている(特許文献1)。しかし、この装置はフレッシュコンクリートについて、採取した水分を用いるものであり、水分の採取が難しいフレッシュコンクリートには適用できない欠点がある。
【0004】
また、フレッシュコンクリートを入れる容器、容器上部の開口に密嵌される圧入体とを有する塩素濃度測定装置が知られている(特許文献2)。この装置は圧入体に容器内部に通じる貫通孔が設けられており、また該貫通孔の下部に濾過体が装着されており、濾過体を容器内部のフレッシュコンクリートに押圧し、濾過体を通じて濾液を貫通孔に浸み出させると共に、貫通孔に電極を差し込み、浸出させた濾液に電極を挿入して塩素濃度を測定する装置である。しかし、このような加圧濾過方法は、コンクリートに含まれる骨材が加圧抵抗になるため十分な濾液を得ることができず、スクリーニングしたモルタルを必要とするなどの問題がある。
【特許文献1】実開昭58−12857号公報
【特許文献2】実開昭62−65556号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような従来の塩素濃度測定装置の問題を解決したものであり、吸引濾過によってフレッシュコンクリートの水分を採取する装置であって、構造が簡単であって操作が容易な水分簡易採取装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)筒状の濾過アダプターと吸引ポンプとを有し、上記濾過アダプター内部は吸引室を形成しており、該吸引室の底部は多孔質板によって通液自在に形成されており、該多孔質底部には濾紙が封着されており、一方、上記吸引室の上部には吸引口が設けられており、該吸引ポンプの先端を該吸引口に挿入することによって該吸引ポンプが濾過アダプターに対して着脱自在に装着され、該濾過アダプター底部をフレッシュコンクリートに密着させて濾紙を通じて該コンクリートの水分を吸引することを特徴とする水分採取装置。
(2)濾過アダプターの底部に、リング状の押さえ部材が着脱自在に螺合されており、濾過アダプターの底部と該押さえ部材との間に濾紙を挟み込んでネジ止めすることによって、濾紙が交換可能に装着されている上記(1)の水分採取装置。
(3)吸引ポンプが注射器型のポンプであり、濾過アダプターの吸引室上部の吸引口が管状に形成されており、該管状吸引口に注射器型ポンプの先端を挿入して着脱自在に装着させる上記(1)または(2)の水分採取装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明の水分採取装置は、フレッシュコンクリートの水分を吸引濾過して採取するので、粗骨材を含むコンクリートでも水分を採取することができる。また、構造が簡単で操作が容易であるので、携帯性に優れ、施工現場での使用性が良く、かつ濾紙の交換が容易であるので、コンクリートの性状に適った濾紙をその都度選定して使用し易く、従って高い採取精度を維持することができる。また、使用後は簡単に分解することができメンテナンスが容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の水分採取装置の構成例を図1および図2に示す。図示するように、本発明の水分採取装置は、筒状の濾過アダプター10と吸引ポンプ20とを有する。上記濾過アダプター10の内部には吸引室11が形成されており、該吸引室11の底部は多孔質板12によって通液自在に形成されており、該多孔質底部に濾紙13が封着されている。一方、上記吸引室11の上部には吸引ポンプ20の先端が挿入される吸引口14が設けられており、該吸引ポンプ20が濾過アダプター10に対して着脱自在に装着されている。
【0009】
図示するように、例えば、上記吸引ポンプ20は注射器型のポンプであり、これに対応して吸引室上部の上記吸引口14が管状に形成されており、該管状吸引口14に注射器型吸引ポンプ20の先端21を挿入することによって、吸引ポンプ20が濾過アダプター10に対して着脱自在に装着されている。なお、吸引ポンプ20は注射器型のものに限らず、ポンプ本体と吸引ホースを有するものなどでも良く、吸引ホース先端を管状の吸引口14に挿入して接続すれば良い。
【0010】
また、好ましくは、図2に示すように、濾過アダプター10の底部にリング状の押さえ部材15が着脱自在に螺合されており、濾過アダプター10の底部と該押さえ部材15との間に濾紙13を挟み込んでネジ止めすることによって、濾紙13が交換可能に装着されている。なお、押さえ部材15の内側にリング16を設け、濾紙13の周縁を該リングに挟み込んでネジ止めすると良い。
【0011】
図3に示すように、濾過アダプター10をフレッシュコンクリート30の表面に密着させて、注射器型の吸引ポンプ20によってフレッシュコンクリート30の水分を濾紙を通じて吸引する。吸引された水分(濾液)は吸引ポンプ20の筒内に溜まるので、この濾液に含まれる塩素濃度を測定する。濾液の塩素濃度測定にはカンタブ(太平洋マテリアル社商品名)などの簡易測定体を用いることができる。上記カンタブは紙片状の試験体であり、採取した濾液に浸し、変色位置の目盛りによって塩素濃度を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の水分採取装置の分解外観図
【図2】濾過アダプターの概略断面図
【図3】本発明の水分採取装置の使用態様を示す図
【符号の説明】
【0013】
10−濾過アダプター、11−吸引室、12−多孔質板、13−濾紙、14−吸引口、15−リング状の押さえ部材、16−リング、20−吸引ポンプ、21−先端、30−フレッシュコンクリート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の濾過アダプターと吸引ポンプとを有し、上記濾過アダプター内部は吸引室を形成しており、該吸引室の底部は多孔質板によって通液自在に形成されており、該多孔質底部には濾紙が封着されており、一方、上記吸引室の上部には吸引口が設けられており、該吸引ポンプの先端を該吸引口に挿入することによって該吸引ポンプが濾過アダプターに対して着脱自在に装着され、該濾過アダプター底部をフレッシュコンクリートに密着させて濾紙を通じて該コンクリートの水分を吸引することを特徴とする水分採取装置。
【請求項2】
濾過アダプターの底部に、リング状の押さえ部材が着脱自在に螺合されており、濾過アダプターの底部と該押さえ部材との間に濾紙を挟み込んでネジ止めすることによって、濾紙が交換可能に装着されている請求項1の水分採取装置。
【請求項3】
吸引ポンプが注射器型のポンプであり、濾過アダプターの吸引室上部の吸引口が管状に形成されており、該管状吸引口に注射器型ポンプの先端を挿入して着脱自在に装着させる請求項1または2の水分採取装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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