フレネル光学素子及びそれを用いた光学系
【課題】高精細な観察像を観察することが可能な焦点距離の長い高精度のフレネル光学素子及びそれを用いた光学系を提供する。
【解決手段】フレネル光学素子は光を透過屈折又は反射させる複数の斜面を有し、隣接する前記斜面のスロープ角の変化量が一定であることを特徴とする。複数の斜面は以下の式で与えられる回転対称非球面を近似して形成される。Z=(Y2/R)/[1+{1−(1+k)Y2/R2}1/2]+aY4+bY6+cY8+dY10+・・・−1<k<0ただし、3軸右手直交座標系のZ軸を中心軸としたY−Z平面において、Rは近軸曲率半径、kは円錐定数(コーニック定数)、a、b、c、d、…はそれぞれ4次、6次、8次、10次の非球面係数、である。フレネルピッチを変化させることにより、スロープ角の変化量を一定にし、像の不連続性を低減することが可能となる。
【解決手段】フレネル光学素子は光を透過屈折又は反射させる複数の斜面を有し、隣接する前記斜面のスロープ角の変化量が一定であることを特徴とする。複数の斜面は以下の式で与えられる回転対称非球面を近似して形成される。Z=(Y2/R)/[1+{1−(1+k)Y2/R2}1/2]+aY4+bY6+cY8+dY10+・・・−1<k<0ただし、3軸右手直交座標系のZ軸を中心軸としたY−Z平面において、Rは近軸曲率半径、kは円錐定数(コーニック定数)、a、b、c、d、…はそれぞれ4次、6次、8次、10次の非球面係数、である。フレネルピッチを変化させることにより、スロープ角の変化量を一定にし、像の不連続性を低減することが可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレネルレンズやフレネルミラー等のフレネル光学素子及びそれを用いた光学系に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プロジェクタから光線を照射して実像をフレネル面近傍に投影し、この光線を観察者方向に効率良く反射するスクリーンとしてのフレネル光学素子が特許文献1、2に開示されている。また、反射面にパワーがなく、平面鏡を傾けた状態とほぼ等価な投影像を反射させるリニアフレネルミラーが特許文献3に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4128599号公報
【特許文献2】特許第4149493号公報
【特許文献3】特開平3−209403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、焦点距離が長く且つ結像作用を有するように配置されて使用される高精度のフレネルミラーは従来存在していなかった。
【0005】
本発明は従来技術のこのような状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、高精細な観察像を観察することが可能な焦点距離の長い高精度のフレネル光学素子及びそれを用いた光学系を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
フレネル光学素子は、光を透過屈折又は反射させる複数の斜面を有し、隣接する前記斜面のスロープ角の変化量が一定であることを特徴とする。
【0007】
また、前記複数の斜面は以下の定義式(a)で与えられる回転対称非球面を近似して形成され、以下の条件式(1)を満足することを特徴とする。
Z=(Y2 /R)/[1+{1−(1+k)Y2 /R2 }1 /2]
+aY4 +bY6 +cY8 +dY10+・・・
・・・(a)
−1<k<0 ・・・(1)
ただし、3軸右手直交座標系のZ軸を中心軸としたY−Z平面において、
Rは近軸曲率半径、
kは円錐定数(コーニック定数)、
a、b、c、d、…はそれぞれ4次、6次、8次、10次の非球面係数、
である。
【0008】
また、前記複数の斜面は以下の定義式(a)で与えられる回転対称非球面を近似して形成され、以下の条件式(2)を満足することを特徴とする。
Z=(Y2 /R)/[1+{1−(1+k)Y2 /R2 }1 /2]
+aY4 +bY6 +cY8 +dY10+・・・
・・・(a)
−0.5<k<−0.2 ・・・(2)
ただし、3軸右手直交座標系のZ軸を中心軸としたY−Z平面において、
Rは近軸曲率半径、
kは円錐定数(コーニック定数)、
a、b、c、d、…はそれぞれ4次、6次、8次、10次の非球面係数、
である。
【0009】
また、前記複数の斜面は以下の定義式(a)で与えられる回転対称非球面を近似して形成され、以下の条件式(3)を満足することを特徴とする。
Z=(Y2 /R)/[1+{1−(1+k)Y2 /R2 }1 /2]
+aY4 +bY6 +cY8 +dY10+・・・
・・・(a)
−0.4<k<−0.3 ・・・(3)
ただし、3軸右手直交座標系のZ軸を中心軸としたY−Z平面において、
Rは近軸曲率半径、
kは円錐定数(コーニック定数)、
a、b、c、d、…はそれぞれ4次、6次、8次、10次の非球面係数、
である。
【0010】
また、前記複数の斜面を所定のゾーン毎に区画し、前記ゾーン内のスロープ角が一定になるようにピッチを変化させることを特徴とする。
【0011】
また、以下の条件式(4)を満足することを特徴とする。
A>B ・・・(4)
ただし、Aは隣接する斜面のスロープ角の変化量、
Bは斜面を形成する機械におけるスロープ角の分解能
である。
【0012】
また、以下の条件式(5)又は条件式(6)を満足することを特徴とする。
0.6<A/(n×B) ・・・(5)
又は
A/(n×B)<0.4 ・・・(6)
ただし、Aは隣接する斜面のスロープ角の変化量、
Bは斜面を形成する機械におけるスロープ角の分解能、
nは整数
である。
【0013】
また、以下の条件式(7)又は条件式(8)を満足することを特徴とする。
0.8<A/(n×B) ・・・(7)
又は
A/(n×B)<0.2 ・・・(8)
ただし、Aは隣接する斜面のスロープ角の変化量、
Bは斜面を形成する機械におけるスロープ角の分解能、
nは整数
である。
【0014】
さらに、光学系は、前記フレネル光学素子を用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
以上の本発明にかかる光学系においては、高精細な観察像を観察することが可能な焦点距離の長い高精度のフレネル光学素子及びそれを用いた光学系を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明にかかるフレネル光学素子を説明するための図である。
【図2】本発明にかかる光学系の座標系を説明するための図である。
【図3】実施例1の光学系の中心軸に沿ってとった断面図である。
【図4】実施例1の光学系の平面図である。
【図5】実施例1の横収差図を示す図である。
【図6】実施例1の横収差図を示す図である。
【図7】実施例2の光学系の中心軸に沿ってとった断面図である。
【図8】実施例2の光学系の平面図である。
【図9】実施例2の横収差図を示す図である。
【図10】実施例2の横収差図を示す図である。
【図11】フレネル光学素子の他の実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実施例に基づいて本発明にかかる光学系について説明する。
【0018】
図1は、本実施形態のフレネル光学素子である。
【0019】
本実施形態のフレネル光学素子4は、光を透過屈折又は反射させる複数の斜面41を有し、隣接する斜面41のスロープ角の変化量Aが一定であることが好ましい。
【0020】
フレネル光学素子4は、球面や非球面の面の傾きを直線で近似した光学素子である。したがって、光学素子を薄く作成することが可能なため、照明や集光光学系に使用される。
【0021】
しかしながら、曲率が緩く焦点距離が長い光学素子として使用する場合には、隣接するピッチの変化量が小さくなる。そして、加工機の加工精度が足りない場合には、不連続なスロープ角となり、スロープ角が不連続な箇所において像の連続性が失われる可能性があった。
【0022】
そこで、本実施形態のフレネル光学素子4は、隣接する斜面41のスロープ角の変化量Aを一定とすることにより、像の不連続性を回避するものである。
【0023】
好ましくは、40万画素以上の高繊細画像を遠方の虚像として拡大表示する反射接眼光学系として用いるとよい。
【0024】
また、以下の条件式を満足することが好ましい。
0.5<|d/f|
ただし、fは焦点距離、dは外径である。
【0025】
この条件式は、大きな反射面で虚像を形成させる場合に、フレネル面積が大きいと、不連続部分が多くなり好ましくないことを示している。
【0026】
なお、光学系の瞳径が大きくても光束径は人間の瞳径で決まってしまうので、最大φ4mm、明るい映像で約φ2mmとなるため、スロープ角の変化量が不連続である場合に、像の連続性が失われて、不連続な観察像として観察される不具合がある。
【0027】
また、以下の条件式を満足することが好ましい。
0.5<|f/Ep|<1.5
ただし、fは焦点距離、Epは観察者の瞳と反射鏡の距離である。
【0028】
この条件式は、反射鏡と観察者の瞳との距離を確保しつつ映像の表示面から垂直に射出する光束を効率良く観察者瞳に導くための条件である。下限を下回ると、表示面から射出する光束が斜めに射出する光束となってしまい、観察像が暗くなってしまうと同時に、同じ観察画角を確保するためには大きな鏡が必要になる。また、上限を上回ると、鏡と観察者瞳位置が近くなりすぎ、観察者に圧迫感を与えてしまう。
【0029】
また、複数の斜面41は後述する定義式(a)で与えられる回転対称非球面を近似して形成され、以下の条件式(1)を満足することが好ましい。
−1<k<0 ・・・(1)
ただし、kは円錐定数(コーニック定数)である。
【0030】
円錐定数が−1から0の間の長軸が光軸にある楕円面であることが重要であり、この場合に有限の範囲においてスロープ角が一定のフレネル面に近似することが可能となる。
【0031】
また、複数の斜面41は後述する定義式(a)で与えられる回転対称非球面を近似して形成され、以下の条件式(2)を満足することが好ましい。
−0.5<k<−0.2 ・・・(2)
ただし、kは反射面の円錐定数(コーニック定数)である。
【0032】
この条件式(2)を満足することにより、さらに広い範囲においてスロープ角が一定のフレネル面に近似することが可能となる。
【0033】
また、複数の斜面41は後述する定義式(a)で与えられる回転対称非球面を近似して形成され、以下の条件式(3)を満足することが好ましい。
−0.4<k<−0.3 ・・・(3)
ただし、kは反射面の円錐定数(コーニック定数)である。
【0034】
この条件式(3)を満足することにより、さらに広い範囲においてスロープ角が一定のフレネル面に近似することが可能となる。
【0035】
また、複数の斜面41を所定のゾーン43毎に区画し、ゾーン43内のスロープ角が一定になるようにフレネルピッチ42を変化させることが好ましい。
【0036】
フレネルピッチ42を変化させることにより、スロープ角の変化量を一定にし、像の不連続性を低減することが可能となる。
【0037】
また、以下の条件式(4)を満足することが好ましい。
A>B ・・・(4)
ただし、Aは隣接する斜面のスロープ角の変化量、
Bは斜面を形成する機械におけるスロープ角の分解能
である。
【0038】
条件式(4)を満足しないと、スロープ角の変化が丸め誤差により離散的になり、観察する映像の滑らかさが損なわれる場合がある。
【0039】
また、以下の条件式(5)又は条件式(6)を満足することが好ましい。
0.6<A/(n×B) ・・・(5)
又は
A/(n×B)<0.4 ・・・(6)
ただし、Aは隣接する斜面のスロープ角の変化量、
Bは斜面を形成する機械におけるスロープ角の分解能、
nは整数
である。
【0040】
条件式(5)又は条件式(6)は、スロープ角の変化量を規定するものであり、角度変化をスロープ角の分解能の整数倍に近づけて、丸め誤差を少なくするための条件式である。条件式(5)又は条件式(6)を満足しないと、0.5に近い丸め誤差が残ってしまい、観察する映像の滑らかさが損なわれる場合がある。
【0041】
さらに、以下の条件式(7)又は条件式(8)を満足することが好ましい。
0.8<A/(n×B) ・・・(7)
又は
A/(n×B)<0.2 ・・・(8)
ただし、Aは隣接する斜面のスロープ角の変化量、
Bは斜面を形成する機械におけるスロープ角の分解能、
nは整数
である。
【0042】
以下に、本発明にかかるフレネル光学素子を用いた光学系の実施例を説明する。これら光学系の構成パラメータは後記する。
【0043】
座標系は、図2に示すように、図示しない投影光学系の中心軸と物体面3から絞りSに入射する中心主光線が通る光学系1の中心軸2との交点に光学系1の原点Oを設置し、原点Oから物体面3の方向へ向かう中心軸2上をZ軸正方向とし、図2の紙面内をY−Z平面とする。そして、図2の原点Oから像面5の方向をY軸正方向とし、Y軸、Z軸と右手直交座標系を構成する軸をX軸正方向とする。
【0044】
偏心面については、その面が定義される座標系の上記光学系1の原点Oからの偏心量(X軸方向、Y軸方向、Z軸方向をそれぞれX,Y,Z)と、光学系1の原点Oに定義される座標系のX軸、Y軸、Z軸それぞれを中心とする各面を定義する座標系の傾き角(それぞれα,β,γ(°))とが与えられている。その場合、αとβの正はそれぞれの軸の正方向に対して反時計回りを、γの正はZ軸の正方向に対して時計回りを意味する。なお、面の中心軸のα,β,γの回転のさせ方は、各面を定義する座標系を光学系の原点に定義される座標系のまずX軸の回りで反時計回りにα回転させ、次に、その回転した新たな座標系のY軸の回りで反時計回りにβ回転させ、次いで、その回転した別の新たな座標系のZ軸の回りで時計回りにγ回転させるものである。
【0045】
観察者両眼の眼幅が絞りSのX偏心で示されている。水平断面での光路図では、幅60mmで示されている。
【0046】
また、各実施例の光学系を構成する光学作用面の中、特定の面とそれに続く面が共軸光学系を構成する場合には面間隔が与えられており、その他、面の曲率半径、媒質の屈折率、アッベ数が慣用法に従って与えられている。
【0047】
また、後記の構成パラメータ中にデータの記載されていない非球面に関する項は0である。屈折率、アッベ数については、d線(波長587.56nm)に対するものを表記してある。長さの単位はmmである。各面の偏心は、上記のように、基準面からの偏心量で表わす。
【0048】
なお、非球面は、以下の定義式で与えられる回転対称非球面である。
Z=(Y2 /R)/[1+{1−(1+k)Y2 /R2 }1 /2]
+aY4 +bY6 +cY8 +dY10+・・・
・・・(a)
ただし、Zを軸とし、Yを軸と垂直な方向にとる。ここで、Rは近軸曲率半径、kは円錐定数、a、b、c、d、…はそれぞれ4次、6次、8次、10次の非球面係数である。この定義式のZ軸が回転対称非球面の軸となる。
【0049】
実施例1の光学系1の中心軸2に沿ってとった断面図を図3、光学系1の平面図を図4に示す。ただし、図4の平面図の光路は、一方の入射瞳に対応するもののみを示している。また、この実施例の光学系全体の横収差図を図5及び図6に示す。この横収差図において、中央に示された角度は、(水平方向画角、垂直方向の画角)を示し、その画角におけるY方向(メリジオナル方向)とX方向(サジタル方向)の横収差を示す。
【0050】
光学系1は、図示しない物体面と、フレネル光学素子4と、像面5とからなる。
【0051】
フレネル光学素子4は、フレネル反射鏡からなり、隣接する斜面のスロープ角の変化量は、フレネルピッチが0.2mmの場合に0.017°である。
【0052】
光学系1において、物体面から入射する光束は、逆光線追跡で、入射瞳としての観察者眼球Eからフレネル光学素子4に入射し、フレネル反射面4aで反射し、フレネル光学素子4から出射し、像面5に入射する。
【0053】
この実施例1の仕様は、
画角(収差表示) 35°上下20°
入射瞳径(逆追跡) 15.00mm
である。
【0054】
実施例2の光学系1の中心軸2に沿ってとった断面図を図7、光学系1の平面図を図8に示す。また、この実施例の光学系全体の横収差図を図9及び図10に示す。ただし、図8の平面図の光路は、一方の入射瞳に対応するもののみを示している。この横収差図において、中央に示された角度は、(水平方向画角、垂直方向の画角)を示し、その画角におけるY方向(メリジオナル方向)とX方向(サジタル方向)の横収差を示す。
【0055】
光学系1は、図示しない物体面と、フレネル光学素子4と、像面5とからなる。
【0056】
フレネル光学素子4は、フレネル反射鏡からなり、隣接する斜面のスロープ角の変化量は、フレネルピッチが0.2mmの場合に0.02769°である。
【0057】
光学系1において、物体面から入射する光束は、逆光線追跡で、入射瞳としての観察者眼球Eからフレネル光学素子4で反射し、像面5に入射する。
【0058】
この実施例2の仕様は、
画角(収差表示) 35°上下20°
入射瞳径(逆追跡) 15.00mm
である。
【0059】
以下に、上記実施例1及び実施例2の構成パラメータを示す。なお、以下の表中の “RE”は反射面を示す。
【0060】
実施例1
面番号 曲率半径 面間隔 偏心 屈折率 アッベ数
物体面 ∞ -2000.00
1 ∞(絞り) 0.00 偏心(1)
4 ∞ 0.00 偏心(2) 1.4918 57.4
5 フレネル[1](RE) 0.00 偏心(3) 1.4918 57.4
6 ∞ 0.00 偏心(2)
像面 ∞ 偏心(4)
フレネル[1]
R -674.00
k -0.338
偏心[1]
X 30.00 Y 0.00 Z 40.00
α 0.00 β 0.00 γ 0.00
偏心[2]
X 0.00 Y 0.00 Z 295.00
α -18.02 β 0.00 γ 0.00
偏心[3]
X 0.00 Y 0.00 Z 300
α -18.02 β 0.00 γ 0.00
偏心[4]
X 0.00 Y 114.28 Z 142.92
α 0.00 β 0.00 γ 0.00
【0061】
実施例2
面番号 曲率半径 面間隔 偏心 屈折率 アッベ数
物体面 ∞ -2000.00
1 ∞(絞り) 0.00 偏心(1)
2 フレネル[1] 反射面 0.00 偏心(2)
像面 ∞ 偏心(3)
フレネル[1]
R -413.84
k -0.345
偏心[1]
X 30.00 Y 0.00 Z 40.00
α 0.00 β 0.00 γ 0.00
偏心[2]
X 0.00 Y 0.00 Z 300.00
α 0.00 β 0.00 γ 0.00
偏心[3]
X 0.00 Y 108.45 Z 151.92
α 0.00 β 0.00 γ 0.00
【0062】
次に、上記各実施例における各種データの値を示す。
【0063】
各種データ 実施例1 実施例2
k -0.3380 -0.3450
f -225.9 -206.9
d 262.4 264.4
Ep 260.0 260.0
d/f -1.161 1.277
f/Ep -0.9842 -0.7958
【0064】
次に、フレネル光学素子の他の実施例について説明する。
【0065】
他の実施例のフレネル光学素子4を用いた光学系1の中心軸2に沿ってとった断面図を図11に示す。
【0066】
光学系1は、図示しない物体面と、フレネル光学素子4と、像面5とからなる。
【0067】
光学系1において、物体面から入射する光束は、逆光線追跡で、入射瞳としての観察者眼球Eからフレネルレンズ6を透過し、フレネル光学素子4で反射し、像面5に入射する。
【0068】
このフレネル光学素子は上下非対称であり、フレネルの原点は光軸から+47.41mm離れた位置に配置する。
【0069】
フレネル光学素子の仕様
ピッチ 0.05 mm
R -294.607 mm
K 0.680
a(3rd) -5.83170E-07
b(4th) 1.40590E-08
【0070】
また、使用範囲+16.1〜−116.0mmの場合、図1に示すようなフレネル光学素子4を、以下の様にゾーン43化して斜面41の変化量を決め、ピッチ42を変化させることにより、有効径が広く曲率半径の小さいフレネルに適応できる。
【0071】
マイナス側
ゾーン ピッチ 変化量
1. 0 〜 -3.8[mm] 0.02°
2. -3.8〜 -7.4[mm] 0.04°
3. -7.4〜 -14.3[mm] 0.06°
4. -14.3〜 -24.5[mm] 0.08°
5. -24.5〜 -38.4[mm] 0.10°
6. -38.4〜 -55.7[mm] 0.12°
7. -55.7〜 -76.1[mm] 0.14°
8. -76.1〜-100.3[mm] 0.16°
9. -100.3〜-116.0[mm] 0.18°
プラス側
ゾーン ピッチ 変化量
1. 0 〜 4.2[mm] -0.02°
2. 4.2〜 9.4[mm] -0.04°
3. 9.4〜 16.1[mm] -0.06°
【0072】
なお、本実施形態の像面位置には、図示しない投影光学系に代えて、映像表示素子を配置することも可能である。また、投影光学系により投影した映像をフレネル光学素子で拡大表示することも可能である。
【0073】
さらに、投影光学系により投影した投影像(本実施形態の像面)の近傍に拡散性のある拡散面を配置することにより、投影光学系の光束径を細くし、投影光学系の負担を軽減することが可能となる。また、観察者が多少移動しても観察映像を観察することができる広い観察領域を確保することが可能となる。
【0074】
さらに、左右の眼球に対応した2つの投影光学系を配置し、2つの投影光学系の投影像を拡散面に投影すると同時に、2つの映像のクロストークが起きないように拡散面の拡散角をコントロールして立体像を観察することも可能である。
【0075】
また、偏光板と偏光眼鏡を使ったり、液晶シャッター眼鏡を用いた時分割表示でも両眼立体視が効能となる。
【0076】
さらに、フレネル反射面を半透過面にすることにより、外界の映像と電子像を重層表示する所謂コンバイナーとして構成することも可能である。
【0077】
なお、観察される虚像面(追跡上は物体面)は2m先を想定しているが、これは任意に設定してもよい。
【符号の説明】
【0078】
1…光学系
2…中心軸
3…物体面
4…フレネル光学素子
5…像面
S…絞り(入射瞳)
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレネルレンズやフレネルミラー等のフレネル光学素子及びそれを用いた光学系に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プロジェクタから光線を照射して実像をフレネル面近傍に投影し、この光線を観察者方向に効率良く反射するスクリーンとしてのフレネル光学素子が特許文献1、2に開示されている。また、反射面にパワーがなく、平面鏡を傾けた状態とほぼ等価な投影像を反射させるリニアフレネルミラーが特許文献3に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4128599号公報
【特許文献2】特許第4149493号公報
【特許文献3】特開平3−209403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、焦点距離が長く且つ結像作用を有するように配置されて使用される高精度のフレネルミラーは従来存在していなかった。
【0005】
本発明は従来技術のこのような状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、高精細な観察像を観察することが可能な焦点距離の長い高精度のフレネル光学素子及びそれを用いた光学系を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
フレネル光学素子は、光を透過屈折又は反射させる複数の斜面を有し、隣接する前記斜面のスロープ角の変化量が一定であることを特徴とする。
【0007】
また、前記複数の斜面は以下の定義式(a)で与えられる回転対称非球面を近似して形成され、以下の条件式(1)を満足することを特徴とする。
Z=(Y2 /R)/[1+{1−(1+k)Y2 /R2 }1 /2]
+aY4 +bY6 +cY8 +dY10+・・・
・・・(a)
−1<k<0 ・・・(1)
ただし、3軸右手直交座標系のZ軸を中心軸としたY−Z平面において、
Rは近軸曲率半径、
kは円錐定数(コーニック定数)、
a、b、c、d、…はそれぞれ4次、6次、8次、10次の非球面係数、
である。
【0008】
また、前記複数の斜面は以下の定義式(a)で与えられる回転対称非球面を近似して形成され、以下の条件式(2)を満足することを特徴とする。
Z=(Y2 /R)/[1+{1−(1+k)Y2 /R2 }1 /2]
+aY4 +bY6 +cY8 +dY10+・・・
・・・(a)
−0.5<k<−0.2 ・・・(2)
ただし、3軸右手直交座標系のZ軸を中心軸としたY−Z平面において、
Rは近軸曲率半径、
kは円錐定数(コーニック定数)、
a、b、c、d、…はそれぞれ4次、6次、8次、10次の非球面係数、
である。
【0009】
また、前記複数の斜面は以下の定義式(a)で与えられる回転対称非球面を近似して形成され、以下の条件式(3)を満足することを特徴とする。
Z=(Y2 /R)/[1+{1−(1+k)Y2 /R2 }1 /2]
+aY4 +bY6 +cY8 +dY10+・・・
・・・(a)
−0.4<k<−0.3 ・・・(3)
ただし、3軸右手直交座標系のZ軸を中心軸としたY−Z平面において、
Rは近軸曲率半径、
kは円錐定数(コーニック定数)、
a、b、c、d、…はそれぞれ4次、6次、8次、10次の非球面係数、
である。
【0010】
また、前記複数の斜面を所定のゾーン毎に区画し、前記ゾーン内のスロープ角が一定になるようにピッチを変化させることを特徴とする。
【0011】
また、以下の条件式(4)を満足することを特徴とする。
A>B ・・・(4)
ただし、Aは隣接する斜面のスロープ角の変化量、
Bは斜面を形成する機械におけるスロープ角の分解能
である。
【0012】
また、以下の条件式(5)又は条件式(6)を満足することを特徴とする。
0.6<A/(n×B) ・・・(5)
又は
A/(n×B)<0.4 ・・・(6)
ただし、Aは隣接する斜面のスロープ角の変化量、
Bは斜面を形成する機械におけるスロープ角の分解能、
nは整数
である。
【0013】
また、以下の条件式(7)又は条件式(8)を満足することを特徴とする。
0.8<A/(n×B) ・・・(7)
又は
A/(n×B)<0.2 ・・・(8)
ただし、Aは隣接する斜面のスロープ角の変化量、
Bは斜面を形成する機械におけるスロープ角の分解能、
nは整数
である。
【0014】
さらに、光学系は、前記フレネル光学素子を用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
以上の本発明にかかる光学系においては、高精細な観察像を観察することが可能な焦点距離の長い高精度のフレネル光学素子及びそれを用いた光学系を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明にかかるフレネル光学素子を説明するための図である。
【図2】本発明にかかる光学系の座標系を説明するための図である。
【図3】実施例1の光学系の中心軸に沿ってとった断面図である。
【図4】実施例1の光学系の平面図である。
【図5】実施例1の横収差図を示す図である。
【図6】実施例1の横収差図を示す図である。
【図7】実施例2の光学系の中心軸に沿ってとった断面図である。
【図8】実施例2の光学系の平面図である。
【図9】実施例2の横収差図を示す図である。
【図10】実施例2の横収差図を示す図である。
【図11】フレネル光学素子の他の実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実施例に基づいて本発明にかかる光学系について説明する。
【0018】
図1は、本実施形態のフレネル光学素子である。
【0019】
本実施形態のフレネル光学素子4は、光を透過屈折又は反射させる複数の斜面41を有し、隣接する斜面41のスロープ角の変化量Aが一定であることが好ましい。
【0020】
フレネル光学素子4は、球面や非球面の面の傾きを直線で近似した光学素子である。したがって、光学素子を薄く作成することが可能なため、照明や集光光学系に使用される。
【0021】
しかしながら、曲率が緩く焦点距離が長い光学素子として使用する場合には、隣接するピッチの変化量が小さくなる。そして、加工機の加工精度が足りない場合には、不連続なスロープ角となり、スロープ角が不連続な箇所において像の連続性が失われる可能性があった。
【0022】
そこで、本実施形態のフレネル光学素子4は、隣接する斜面41のスロープ角の変化量Aを一定とすることにより、像の不連続性を回避するものである。
【0023】
好ましくは、40万画素以上の高繊細画像を遠方の虚像として拡大表示する反射接眼光学系として用いるとよい。
【0024】
また、以下の条件式を満足することが好ましい。
0.5<|d/f|
ただし、fは焦点距離、dは外径である。
【0025】
この条件式は、大きな反射面で虚像を形成させる場合に、フレネル面積が大きいと、不連続部分が多くなり好ましくないことを示している。
【0026】
なお、光学系の瞳径が大きくても光束径は人間の瞳径で決まってしまうので、最大φ4mm、明るい映像で約φ2mmとなるため、スロープ角の変化量が不連続である場合に、像の連続性が失われて、不連続な観察像として観察される不具合がある。
【0027】
また、以下の条件式を満足することが好ましい。
0.5<|f/Ep|<1.5
ただし、fは焦点距離、Epは観察者の瞳と反射鏡の距離である。
【0028】
この条件式は、反射鏡と観察者の瞳との距離を確保しつつ映像の表示面から垂直に射出する光束を効率良く観察者瞳に導くための条件である。下限を下回ると、表示面から射出する光束が斜めに射出する光束となってしまい、観察像が暗くなってしまうと同時に、同じ観察画角を確保するためには大きな鏡が必要になる。また、上限を上回ると、鏡と観察者瞳位置が近くなりすぎ、観察者に圧迫感を与えてしまう。
【0029】
また、複数の斜面41は後述する定義式(a)で与えられる回転対称非球面を近似して形成され、以下の条件式(1)を満足することが好ましい。
−1<k<0 ・・・(1)
ただし、kは円錐定数(コーニック定数)である。
【0030】
円錐定数が−1から0の間の長軸が光軸にある楕円面であることが重要であり、この場合に有限の範囲においてスロープ角が一定のフレネル面に近似することが可能となる。
【0031】
また、複数の斜面41は後述する定義式(a)で与えられる回転対称非球面を近似して形成され、以下の条件式(2)を満足することが好ましい。
−0.5<k<−0.2 ・・・(2)
ただし、kは反射面の円錐定数(コーニック定数)である。
【0032】
この条件式(2)を満足することにより、さらに広い範囲においてスロープ角が一定のフレネル面に近似することが可能となる。
【0033】
また、複数の斜面41は後述する定義式(a)で与えられる回転対称非球面を近似して形成され、以下の条件式(3)を満足することが好ましい。
−0.4<k<−0.3 ・・・(3)
ただし、kは反射面の円錐定数(コーニック定数)である。
【0034】
この条件式(3)を満足することにより、さらに広い範囲においてスロープ角が一定のフレネル面に近似することが可能となる。
【0035】
また、複数の斜面41を所定のゾーン43毎に区画し、ゾーン43内のスロープ角が一定になるようにフレネルピッチ42を変化させることが好ましい。
【0036】
フレネルピッチ42を変化させることにより、スロープ角の変化量を一定にし、像の不連続性を低減することが可能となる。
【0037】
また、以下の条件式(4)を満足することが好ましい。
A>B ・・・(4)
ただし、Aは隣接する斜面のスロープ角の変化量、
Bは斜面を形成する機械におけるスロープ角の分解能
である。
【0038】
条件式(4)を満足しないと、スロープ角の変化が丸め誤差により離散的になり、観察する映像の滑らかさが損なわれる場合がある。
【0039】
また、以下の条件式(5)又は条件式(6)を満足することが好ましい。
0.6<A/(n×B) ・・・(5)
又は
A/(n×B)<0.4 ・・・(6)
ただし、Aは隣接する斜面のスロープ角の変化量、
Bは斜面を形成する機械におけるスロープ角の分解能、
nは整数
である。
【0040】
条件式(5)又は条件式(6)は、スロープ角の変化量を規定するものであり、角度変化をスロープ角の分解能の整数倍に近づけて、丸め誤差を少なくするための条件式である。条件式(5)又は条件式(6)を満足しないと、0.5に近い丸め誤差が残ってしまい、観察する映像の滑らかさが損なわれる場合がある。
【0041】
さらに、以下の条件式(7)又は条件式(8)を満足することが好ましい。
0.8<A/(n×B) ・・・(7)
又は
A/(n×B)<0.2 ・・・(8)
ただし、Aは隣接する斜面のスロープ角の変化量、
Bは斜面を形成する機械におけるスロープ角の分解能、
nは整数
である。
【0042】
以下に、本発明にかかるフレネル光学素子を用いた光学系の実施例を説明する。これら光学系の構成パラメータは後記する。
【0043】
座標系は、図2に示すように、図示しない投影光学系の中心軸と物体面3から絞りSに入射する中心主光線が通る光学系1の中心軸2との交点に光学系1の原点Oを設置し、原点Oから物体面3の方向へ向かう中心軸2上をZ軸正方向とし、図2の紙面内をY−Z平面とする。そして、図2の原点Oから像面5の方向をY軸正方向とし、Y軸、Z軸と右手直交座標系を構成する軸をX軸正方向とする。
【0044】
偏心面については、その面が定義される座標系の上記光学系1の原点Oからの偏心量(X軸方向、Y軸方向、Z軸方向をそれぞれX,Y,Z)と、光学系1の原点Oに定義される座標系のX軸、Y軸、Z軸それぞれを中心とする各面を定義する座標系の傾き角(それぞれα,β,γ(°))とが与えられている。その場合、αとβの正はそれぞれの軸の正方向に対して反時計回りを、γの正はZ軸の正方向に対して時計回りを意味する。なお、面の中心軸のα,β,γの回転のさせ方は、各面を定義する座標系を光学系の原点に定義される座標系のまずX軸の回りで反時計回りにα回転させ、次に、その回転した新たな座標系のY軸の回りで反時計回りにβ回転させ、次いで、その回転した別の新たな座標系のZ軸の回りで時計回りにγ回転させるものである。
【0045】
観察者両眼の眼幅が絞りSのX偏心で示されている。水平断面での光路図では、幅60mmで示されている。
【0046】
また、各実施例の光学系を構成する光学作用面の中、特定の面とそれに続く面が共軸光学系を構成する場合には面間隔が与えられており、その他、面の曲率半径、媒質の屈折率、アッベ数が慣用法に従って与えられている。
【0047】
また、後記の構成パラメータ中にデータの記載されていない非球面に関する項は0である。屈折率、アッベ数については、d線(波長587.56nm)に対するものを表記してある。長さの単位はmmである。各面の偏心は、上記のように、基準面からの偏心量で表わす。
【0048】
なお、非球面は、以下の定義式で与えられる回転対称非球面である。
Z=(Y2 /R)/[1+{1−(1+k)Y2 /R2 }1 /2]
+aY4 +bY6 +cY8 +dY10+・・・
・・・(a)
ただし、Zを軸とし、Yを軸と垂直な方向にとる。ここで、Rは近軸曲率半径、kは円錐定数、a、b、c、d、…はそれぞれ4次、6次、8次、10次の非球面係数である。この定義式のZ軸が回転対称非球面の軸となる。
【0049】
実施例1の光学系1の中心軸2に沿ってとった断面図を図3、光学系1の平面図を図4に示す。ただし、図4の平面図の光路は、一方の入射瞳に対応するもののみを示している。また、この実施例の光学系全体の横収差図を図5及び図6に示す。この横収差図において、中央に示された角度は、(水平方向画角、垂直方向の画角)を示し、その画角におけるY方向(メリジオナル方向)とX方向(サジタル方向)の横収差を示す。
【0050】
光学系1は、図示しない物体面と、フレネル光学素子4と、像面5とからなる。
【0051】
フレネル光学素子4は、フレネル反射鏡からなり、隣接する斜面のスロープ角の変化量は、フレネルピッチが0.2mmの場合に0.017°である。
【0052】
光学系1において、物体面から入射する光束は、逆光線追跡で、入射瞳としての観察者眼球Eからフレネル光学素子4に入射し、フレネル反射面4aで反射し、フレネル光学素子4から出射し、像面5に入射する。
【0053】
この実施例1の仕様は、
画角(収差表示) 35°上下20°
入射瞳径(逆追跡) 15.00mm
である。
【0054】
実施例2の光学系1の中心軸2に沿ってとった断面図を図7、光学系1の平面図を図8に示す。また、この実施例の光学系全体の横収差図を図9及び図10に示す。ただし、図8の平面図の光路は、一方の入射瞳に対応するもののみを示している。この横収差図において、中央に示された角度は、(水平方向画角、垂直方向の画角)を示し、その画角におけるY方向(メリジオナル方向)とX方向(サジタル方向)の横収差を示す。
【0055】
光学系1は、図示しない物体面と、フレネル光学素子4と、像面5とからなる。
【0056】
フレネル光学素子4は、フレネル反射鏡からなり、隣接する斜面のスロープ角の変化量は、フレネルピッチが0.2mmの場合に0.02769°である。
【0057】
光学系1において、物体面から入射する光束は、逆光線追跡で、入射瞳としての観察者眼球Eからフレネル光学素子4で反射し、像面5に入射する。
【0058】
この実施例2の仕様は、
画角(収差表示) 35°上下20°
入射瞳径(逆追跡) 15.00mm
である。
【0059】
以下に、上記実施例1及び実施例2の構成パラメータを示す。なお、以下の表中の “RE”は反射面を示す。
【0060】
実施例1
面番号 曲率半径 面間隔 偏心 屈折率 アッベ数
物体面 ∞ -2000.00
1 ∞(絞り) 0.00 偏心(1)
4 ∞ 0.00 偏心(2) 1.4918 57.4
5 フレネル[1](RE) 0.00 偏心(3) 1.4918 57.4
6 ∞ 0.00 偏心(2)
像面 ∞ 偏心(4)
フレネル[1]
R -674.00
k -0.338
偏心[1]
X 30.00 Y 0.00 Z 40.00
α 0.00 β 0.00 γ 0.00
偏心[2]
X 0.00 Y 0.00 Z 295.00
α -18.02 β 0.00 γ 0.00
偏心[3]
X 0.00 Y 0.00 Z 300
α -18.02 β 0.00 γ 0.00
偏心[4]
X 0.00 Y 114.28 Z 142.92
α 0.00 β 0.00 γ 0.00
【0061】
実施例2
面番号 曲率半径 面間隔 偏心 屈折率 アッベ数
物体面 ∞ -2000.00
1 ∞(絞り) 0.00 偏心(1)
2 フレネル[1] 反射面 0.00 偏心(2)
像面 ∞ 偏心(3)
フレネル[1]
R -413.84
k -0.345
偏心[1]
X 30.00 Y 0.00 Z 40.00
α 0.00 β 0.00 γ 0.00
偏心[2]
X 0.00 Y 0.00 Z 300.00
α 0.00 β 0.00 γ 0.00
偏心[3]
X 0.00 Y 108.45 Z 151.92
α 0.00 β 0.00 γ 0.00
【0062】
次に、上記各実施例における各種データの値を示す。
【0063】
各種データ 実施例1 実施例2
k -0.3380 -0.3450
f -225.9 -206.9
d 262.4 264.4
Ep 260.0 260.0
d/f -1.161 1.277
f/Ep -0.9842 -0.7958
【0064】
次に、フレネル光学素子の他の実施例について説明する。
【0065】
他の実施例のフレネル光学素子4を用いた光学系1の中心軸2に沿ってとった断面図を図11に示す。
【0066】
光学系1は、図示しない物体面と、フレネル光学素子4と、像面5とからなる。
【0067】
光学系1において、物体面から入射する光束は、逆光線追跡で、入射瞳としての観察者眼球Eからフレネルレンズ6を透過し、フレネル光学素子4で反射し、像面5に入射する。
【0068】
このフレネル光学素子は上下非対称であり、フレネルの原点は光軸から+47.41mm離れた位置に配置する。
【0069】
フレネル光学素子の仕様
ピッチ 0.05 mm
R -294.607 mm
K 0.680
a(3rd) -5.83170E-07
b(4th) 1.40590E-08
【0070】
また、使用範囲+16.1〜−116.0mmの場合、図1に示すようなフレネル光学素子4を、以下の様にゾーン43化して斜面41の変化量を決め、ピッチ42を変化させることにより、有効径が広く曲率半径の小さいフレネルに適応できる。
【0071】
マイナス側
ゾーン ピッチ 変化量
1. 0 〜 -3.8[mm] 0.02°
2. -3.8〜 -7.4[mm] 0.04°
3. -7.4〜 -14.3[mm] 0.06°
4. -14.3〜 -24.5[mm] 0.08°
5. -24.5〜 -38.4[mm] 0.10°
6. -38.4〜 -55.7[mm] 0.12°
7. -55.7〜 -76.1[mm] 0.14°
8. -76.1〜-100.3[mm] 0.16°
9. -100.3〜-116.0[mm] 0.18°
プラス側
ゾーン ピッチ 変化量
1. 0 〜 4.2[mm] -0.02°
2. 4.2〜 9.4[mm] -0.04°
3. 9.4〜 16.1[mm] -0.06°
【0072】
なお、本実施形態の像面位置には、図示しない投影光学系に代えて、映像表示素子を配置することも可能である。また、投影光学系により投影した映像をフレネル光学素子で拡大表示することも可能である。
【0073】
さらに、投影光学系により投影した投影像(本実施形態の像面)の近傍に拡散性のある拡散面を配置することにより、投影光学系の光束径を細くし、投影光学系の負担を軽減することが可能となる。また、観察者が多少移動しても観察映像を観察することができる広い観察領域を確保することが可能となる。
【0074】
さらに、左右の眼球に対応した2つの投影光学系を配置し、2つの投影光学系の投影像を拡散面に投影すると同時に、2つの映像のクロストークが起きないように拡散面の拡散角をコントロールして立体像を観察することも可能である。
【0075】
また、偏光板と偏光眼鏡を使ったり、液晶シャッター眼鏡を用いた時分割表示でも両眼立体視が効能となる。
【0076】
さらに、フレネル反射面を半透過面にすることにより、外界の映像と電子像を重層表示する所謂コンバイナーとして構成することも可能である。
【0077】
なお、観察される虚像面(追跡上は物体面)は2m先を想定しているが、これは任意に設定してもよい。
【符号の説明】
【0078】
1…光学系
2…中心軸
3…物体面
4…フレネル光学素子
5…像面
S…絞り(入射瞳)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を透過屈折又は反射させる複数の斜面を有し、隣接する前記斜面のスロープ角の変化量が一定であることを特徴とするフレネル光学素子。
【請求項2】
前記複数の斜面は以下の定義式(a)で与えられる回転対称非球面を近似して形成され、以下の条件式(1)を満足することを特徴とする請求項1に記載のフレネル光学素子。
Z=(Y2 /R)/[1+{1−(1+k)Y2 /R2 }1 /2]
+aY4 +bY6 +cY8 +dY10+・・・
・・・(a)
−1<k<0 ・・・(1)
ただし、3軸右手直交座標系のZ軸を中心軸としたY−Z平面において、
Rは近軸曲率半径、
kは円錐定数(コーニック定数)、
a、b、c、d、…はそれぞれ4次、6次、8次、10次の非球面係数、
である。
【請求項3】
前記複数の斜面は以下の定義式(a)で与えられる回転対称非球面を近似して形成され、以下の条件式(2)を満足することを特徴とする請求項1に記載のフレネル光学素子。
Z=(Y2 /R)/[1+{1−(1+k)Y2 /R2 }1 /2]
+aY4 +bY6 +cY8 +dY10+・・・
・・・(a)
−0.5<k<−0.2 ・・・(2)
ただし、3軸右手直交座標系のZ軸を中心軸としたY−Z平面において、
Rは近軸曲率半径、
kは円錐定数(コーニック定数)、
a、b、c、d、…はそれぞれ4次、6次、8次、10次の非球面係数、
である。
【請求項4】
前記複数の斜面は以下の定義式(a)で与えられる回転対称非球面を近似して形成され、以下の条件式(3)を満足することを特徴とする請求項1に記載のフレネル光学素子。
Z=(Y2 /R)/[1+{1−(1+k)Y2 /R2 }1 /2]
+aY4 +bY6 +cY8 +dY10+・・・
・・・(a)
−0.4<k<−0.3 ・・・(3)
ただし、3軸右手直交座標系のZ軸を中心軸としたY−Z平面において、
Rは近軸曲率半径、
kは円錐定数(コーニック定数)、
a、b、c、d、…はそれぞれ4次、6次、8次、10次の非球面係数、
である。
【請求項5】
前記複数の斜面を所定のゾーン毎に区画し、前記ゾーン内のスロープ角が一定になるようにピッチを変化させることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載のフレネル光学素子。
【請求項6】
以下の条件式(4)を満足することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1つに記載のフレネル光学素子。
A>B ・・・(4)
ただし、Aは隣接する斜面のスロープ角の変化量、
Bは斜面を形成する機械におけるスロープ角の分解能
である。
【請求項7】
以下の条件式(5)又は条件式(6)を満足することを特徴とする請求項6に記載のフレネル光学素子。
0.6<A/(n×B) ・・・(5)
又は
A/(n×B)<0.4 ・・・(6)
ただし、Aは隣接する斜面のスロープ角の変化量、
Bは斜面を形成する機械におけるスロープ角の分解能、
nは整数
である。
【請求項8】
以下の条件式(7)又は条件式(8)を満足することを特徴とする請求項6に記載のフレネル光学素子。
0.8<A/(n×B) ・・・(7)
又は
A/(n×B)<0.2 ・・・(8)
ただし、Aは隣接する斜面のスロープ角の変化量、
Bは斜面を形成する機械におけるスロープ角の分解能、
nは整数
である。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか1つに記載のフレネル光学素子を用いたことを特徴とする光学系。
【請求項1】
光を透過屈折又は反射させる複数の斜面を有し、隣接する前記斜面のスロープ角の変化量が一定であることを特徴とするフレネル光学素子。
【請求項2】
前記複数の斜面は以下の定義式(a)で与えられる回転対称非球面を近似して形成され、以下の条件式(1)を満足することを特徴とする請求項1に記載のフレネル光学素子。
Z=(Y2 /R)/[1+{1−(1+k)Y2 /R2 }1 /2]
+aY4 +bY6 +cY8 +dY10+・・・
・・・(a)
−1<k<0 ・・・(1)
ただし、3軸右手直交座標系のZ軸を中心軸としたY−Z平面において、
Rは近軸曲率半径、
kは円錐定数(コーニック定数)、
a、b、c、d、…はそれぞれ4次、6次、8次、10次の非球面係数、
である。
【請求項3】
前記複数の斜面は以下の定義式(a)で与えられる回転対称非球面を近似して形成され、以下の条件式(2)を満足することを特徴とする請求項1に記載のフレネル光学素子。
Z=(Y2 /R)/[1+{1−(1+k)Y2 /R2 }1 /2]
+aY4 +bY6 +cY8 +dY10+・・・
・・・(a)
−0.5<k<−0.2 ・・・(2)
ただし、3軸右手直交座標系のZ軸を中心軸としたY−Z平面において、
Rは近軸曲率半径、
kは円錐定数(コーニック定数)、
a、b、c、d、…はそれぞれ4次、6次、8次、10次の非球面係数、
である。
【請求項4】
前記複数の斜面は以下の定義式(a)で与えられる回転対称非球面を近似して形成され、以下の条件式(3)を満足することを特徴とする請求項1に記載のフレネル光学素子。
Z=(Y2 /R)/[1+{1−(1+k)Y2 /R2 }1 /2]
+aY4 +bY6 +cY8 +dY10+・・・
・・・(a)
−0.4<k<−0.3 ・・・(3)
ただし、3軸右手直交座標系のZ軸を中心軸としたY−Z平面において、
Rは近軸曲率半径、
kは円錐定数(コーニック定数)、
a、b、c、d、…はそれぞれ4次、6次、8次、10次の非球面係数、
である。
【請求項5】
前記複数の斜面を所定のゾーン毎に区画し、前記ゾーン内のスロープ角が一定になるようにピッチを変化させることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載のフレネル光学素子。
【請求項6】
以下の条件式(4)を満足することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1つに記載のフレネル光学素子。
A>B ・・・(4)
ただし、Aは隣接する斜面のスロープ角の変化量、
Bは斜面を形成する機械におけるスロープ角の分解能
である。
【請求項7】
以下の条件式(5)又は条件式(6)を満足することを特徴とする請求項6に記載のフレネル光学素子。
0.6<A/(n×B) ・・・(5)
又は
A/(n×B)<0.4 ・・・(6)
ただし、Aは隣接する斜面のスロープ角の変化量、
Bは斜面を形成する機械におけるスロープ角の分解能、
nは整数
である。
【請求項8】
以下の条件式(7)又は条件式(8)を満足することを特徴とする請求項6に記載のフレネル光学素子。
0.8<A/(n×B) ・・・(7)
又は
A/(n×B)<0.2 ・・・(8)
ただし、Aは隣接する斜面のスロープ角の変化量、
Bは斜面を形成する機械におけるスロープ角の分解能、
nは整数
である。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか1つに記載のフレネル光学素子を用いたことを特徴とする光学系。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−128327(P2011−128327A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−285932(P2009−285932)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
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