説明

フレーク状銀粉及びその製造方法、並びに導電性ペースト

【課題】従来の製造方法により製造されたフレーク状銀粉よりも、フレーク状銀粉を配合した導電性ペーストの粘度を低下されることができ、且つ、フレーク状銀粉を配合した導電性ペーストを用いて形成した導電膜の抵抗を低下させることができるフレーク状銀粉及びその製造方法、並びに導電性ペーストの提供。
【解決手段】フレーク化処理後の銀粉に対して、前記銀粉の粒子同士を回転可能な羽根を有する高速攪拌機を用いて機械的に衝突させる表面平滑化処理を施す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性ペーストの配合物等に用いられるフレーク状銀粉及びその製造方法、並びに導電性ペーストに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子部品などの電極や回路を形成するために、銀粉を有機成分中に分散させた導電性ペーストが使用されている。導電性ペーストの中でも、樹脂硬化型の導電性ペースト(例えば、特許文献1参照)においては、樹脂の体積収縮により銀粉同士が接触して導通が取られる。よって、樹脂硬化型の導電性ペーストに配合される銀粉としては、接触面積が大きいフレーク状銀粉が使用されている(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
このようなフレーク状銀粉は、一般に、球状又は不定形状の銀粉をフレーク化することにより得ることができる。球状又は不定形状の銀粉をフレーク化する方法としては、例えば、アトライタを用いた湿式粉砕法や、ボールミル(例えば、特許文献3参照)、振動ミル等を用いた乾式粉砕法など、様々な方法が報告されている。また、前記球状又は不定形状の銀粉の製造方法としても、湿式還元法(例えば、特許文献4参照)や、アトマイズ法による製造方法など、様々な方法が報告されている。
【0004】
しかしながら、このような従来の製造方法により製造されたフレーク状銀粉を導電性ペースト用配合物に用いると、得られるペーストの粘度が高くなる場合があり、ペーストの混練性が低下し、ペースト中に銀粉が十分に分散できないという問題があった。ペーストの粘度が高くなると、ペーストの印刷性が悪くなり、ペーストを塗布した際に、塗布面に凹凸やかすれが発生し易くなる。また、ペーストの粘度が高くなると、ペーストの混練に時間がかかり、ペースト製造工程の生産性が悪化し、製造コストが増加するという問題もある。
また、従来の製造方法により製造されたフレーク状銀粉は、導電性ペーストにして、導電膜を形成した場合、導電膜の抵抗は、球状等の形状を持つ銀粉を使用した場合より低くなるものの、その効果は、十分とはいえず、導電膜の抵抗を更に低減することが求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−150837号公報
【特許文献2】特許第3874634号公報
【特許文献3】特開2003−55701号公報
【特許文献4】特開平07−76710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、従来の製造方法により製造されたフレーク状銀粉よりも、フレーク状銀粉を配合した導電性ペーストの粘度を低下されることができ、且つ、フレーク状銀粉を配合した導電性ペーストを用いて形成した導電膜の抵抗を低下させることができるフレーク状銀粉及びその製造方法、並びに導電性ペーストを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、銀粉をフレーク化処理した後に、フレーク化処理後の銀粉に対し、前記銀粉の粒子同士を機械的に衝突させる表面平滑化処理を施すことにより、得られるフレーク状銀粉が、従来の製法により得られたフレーク状銀粉よりも、フレーク状銀粉を配合した導電性ペーストの粘度を低下させることができ、且つ、フレーク状銀粉を配合した導電性ペーストを用いて形成した導電膜の抵抗を低下させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> フレーク化処理後の銀粉に対して、前記銀粉の粒子同士を機械的に衝突させる表面平滑化処理を施すことを特徴とするフレーク状銀粉の製造方法である。
<2> 表面平滑化処理が、フレーク状銀粉を収納可能な容器と、前記容器中に設置され、周速15m/s以上で回転可能な羽根とを有する高速攪拌機を用いて施される前記<1>に記載のフレーク状銀粉の製造方法である。
<3> 高速攪拌機の羽根の周速が30m/s〜70m/sである前記<2>に記載のフレーク状銀粉の製造方法である。
<4> 表面平滑化処理の処理時間が、1分間〜60分間である前記<1>から<3>のいずれかに記載のフレーク状銀粉の製造方法である。
<5> 前記<1>から<4>のいずれかに記載のフレーク状銀粉の製造方法によって製造されたことを特徴とするフレーク状銀粉である。
<6> 前記<5>に記載のフレーク状銀粉を用いて作製されたことを特徴とする導電性ペーストである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、従来の製造方法により製造されたフレーク状銀粉よりも、フレーク状銀粉を配合した導電性ペーストの粘度を低下されることができ、且つ、フレーク状銀粉を配合した導電性ペーストを用いて形成した導電膜の抵抗を低下させることができるフレーク状銀粉及びその製造方法、並びに導電性ペーストを提供することができる。
本発明のフレーク状銀粉をペーストに配合することにより、従来よりもペーストの粘度を低下させることができ、ペーストの印刷性や混練性を向上させることが可能である。また、本発明のフレーク状銀粉をペーストに配合することにより、そのペーストを用いて形成した導電膜の抵抗を、従来の製造方法により製造されたフレーク状銀粉を配合したペーストと比較して低下させることができる点でも、有利である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、実施例1で作製されたフレーク状銀粉の写真である。
【図2】図2は、実施例2で作製されたフレーク状銀粉の写真である。
【図3】図3は、比較例1で作製されたフレーク状銀粉の写真である。
【図4】図4は、比較例2で作製されたフレーク状銀粉の写真である。
【図5】図5は、比較例3で作製された球状銀粉の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(フレーク状銀粉の製造方法)
本発明のフレーク状銀粉の製造方法は、フレーク化処理後の銀粉に対して、前記銀粉の粒子同士を機械的に衝突させる表面平滑化処理を施す工程を少なくとも含み、更に必要に応じて、適宜その他の工程を含む。
【0012】
<フレーク化処理後の銀粉>
前記フレーク化処理後の銀粉とは、銀粉にフレーク化処理を施すことにより得られるフレーク状銀粉である。
前記フレーク化処理を施す対象となる銀粉としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、中でも、球状又は不定形状の銀粉が好ましい。ここで、球状とは、SEMで銀粉を観察した場合、粒子形状が球形または略球形であり、粒子100個の球状度(球状度:SEM写真で粒子を観察した時の、(最も長径部の径)/(最も短径部の径))が1.5以下である銀粉をいい、また、不定形状とは、SEMで観察した場合、粒子形状が、前記球状以外であり、円柱状、角柱状等の特定の粒子形状の特徴を有しない銀粉のことをいう。前記球状又は不定形状銀粉としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、湿式還元法(例えば、特開平07−76710号公報参照)や、アトマイズ法など、公知の手法で得られた球状又は不定形状銀粉を、適宜利用することができる。
また、前記銀粉にフレーク化処理を施す方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アトライタを用いた湿式粉砕法や、ボールミル(例えば、特開2003−55701号公報参照)、振動ミル等を用いた乾式粉砕法など、公知の手法を適宜利用することができる。
【0013】
また、前記銀粉に、分散剤を混合した上で、前記フレーク化処理を施すことにより、得られるフレーク化処理後の銀粉の分散性を向上させることも可能である。
前記分散剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、脂肪酸、脂肪酸塩、界面活性剤、有機金属、キレート形成剤、保護コロイド等が挙げられ、これらの中でも、脂肪酸が好ましい。前記脂肪酸としては、例えば、プロピオン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、アクリル酸、オレイン酸、リノール酸、アラキドン酸など又はそれらの混合物が挙げられる。
【0014】
<表面平滑化処理>
本発明のフレーク状銀粉の製造方法では、前記のようにして得られたフレーク化処理後の銀粉に対して、前記銀粉の粒子同士を機械的に衝突させる表面平滑化処理を施すことを特徴とする。前記表面平滑化処理は、フレーク化処理後の銀粉を高速(流動型)攪拌機に入れて高速攪拌機内に設置された羽根(ブレード)を高速で回転させることにより行うことができ、銀粉をフレーク化処理した後に、フレーク化処理後の銀粉に対し、前記銀粉の粒子同士を機械的に衝突させる表面平滑化処理を施すことにより、得られるフレーク状銀粉が、従来の製法により得られたフレーク状銀粉よりも、フレーク状銀粉を配合した導電性ペーストの粘度を低下させることができ、且つ、フレーク状銀粉を配合した導電性ペーストを用いて形成した導電膜の抵抗を低下させることができる。
【0015】
前記表面平滑化処理に用いる高速攪拌機としては、フレーク状銀粉を収納可能な容器と、前記容器中に設置され、羽根回転数(rpm)×羽根径(m)×π÷60で求められる周速(m/s)が15m/s以上で回転可能な羽根(ブレード)とを有する装置である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヘンシェルミキサー等の筒型高速攪拌機、マイクロスピードミキサ、ハイスピードミキサ、などが挙げられる。フレーク状銀粉は、前記高速攪拌機の羽根が高速回転することにより、前記高速攪拌機内で、流動化され、銀粉の粒子同士が高頻度で機械的に強く衝突して、表面が平滑化される。
【0016】
前記表面平滑化処理を行う際の、高速攪拌機の羽根の周速としては、15m/s〜90m/sが好ましく、30m/s〜70m/sがより好ましい。前記回転数が、15m/s未満であると、表面平滑化の効果が十分得られないことがあり、90m/sを超えると、通常の装置では実現が難しいことがある。また、前記回転数は、必要な処理時間を短縮するためには、30m/s以上がより好ましく、装置のコスト等を考慮すると、70m/s以下がより好ましい。
【0017】
前記表面平滑化処理を行う際の、表面平滑化処理時間としては、1分間〜60分間が好ましく、5分間〜60分間がより好ましい。前記表面平滑化処理時間が、1分間未満であると、表面平滑化の効果が得られないことがあり、60分間超えて処理しても効果に差はなく、生産性の観点から60分間以下が好ましい。前記表面平滑化処理時間が5分間以上であると、表面平滑化の効果をより安定して得られるので、より好ましい。
【0018】
以上のような表面平滑化処理を経て得られたフレーク状銀粉は、表面平滑化処理を経ずに得られるフレーク状銀粉よりも、フレーク状銀粉を配合した導電性ペーストの粘度を低くすることができ、フレーク状銀粉を配合した導電性ペーストを用いて形成した導電膜の抵抗を低くすることができるという特性を有する。得られたフレーク状銀粉の詳細は、後述する本発明のフレーク状銀粉の項目に記載する通りであるが、このフレーク状銀粉は、例えば、導電性ペースト用の配合物等に、好適に利用可能である。
【0019】
(フレーク状銀粉)
本発明のフレーク状銀粉は、本発明のフレーク状銀粉の製造方法により製造されるフレーク状銀粉である。
なお、本明細書中で、「フレーク状銀粉」とは、アスペクト比が3以上である銀粉をいう。ここで、前記アスペクト比は、(平均長径L/平均厚さT)により求めることができる。「平均長径L」と「平均厚さT」は、走査型電子顕微鏡で測定した粒子100個の平均長径と平均厚さを示す。
前記フレーク状銀粉のアスペクト比としては、3以上である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5〜10が好ましい。
【0020】
前記フレーク状銀粉は、表面平滑化処理を行わないフレーク状銀粉と比較して、フレーク状銀粉を配合した導電性ペーストの5rpmにおける粘度が、15%以上小さいことが好ましく、フレーク状銀粉を配合した導電性ペーストを塗布及び加熱することにより形成した塗膜の比抵抗は25%以上低いことが好ましい。
前記フレーク状銀粉の粒径(D50)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1μm〜10μmが好ましい。
前記フレーク状銀粉の比表面積としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.2m/g〜2.0m/gが好ましい。
前記フレーク状銀粉のタップ密度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3g/cm〜6g/cmが好ましい。
【0021】
(導電性ペースト)
本発明の導電性ペースト(本明細書中、単に「ペースト」と称する場合がある)は、本発明のフレーク状銀粉を用いて作製される導電性ペーストであり、例えば、樹脂硬化型ペースト、などが挙げられる。
【0022】
前記導電性ペーストの作製方法としては、特に制限はなく、従来公知の手法の中から、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記フレーク状銀粉を、任意の樹脂と混合することにより作製することができる。
前記樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノキシ樹脂、シリコーン樹脂など又はそれらの混合物が挙げられる。
前記導電性ペーストにおける、前記フレーク状銀粉の含有量としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0023】
本発明の導電性ペーストは、高速攪拌機を用いた表面平滑化処理を経て製造された本発明のフレーク状銀粉を含有してなることから、従来のフレーク状銀粉を含有する導電性ペーストに比較して、粘度が低く、また、フレーク状銀粉を配合した導電性ペーストを用いて形成した導電膜の抵抗が低い。そのため、本発明の導電性ペーストは、混練性、印刷性、導電性等に優れるものであり、種々の電子部品の電極や回路を形成するための導電性ペーストの配合物に、好適に利用可能である。
【実施例】
【0024】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0025】
(実施例1)
以下のようにして、フレーク化処理後の銀粉に、高速攪拌機を用いた表面平滑化処理を施すことにより、本発明のフレーク状銀粉を製造した。また、得られたフレーク状銀粉を用い、本発明のペーストを作製した。また、前記ペーストを塗布及び加熱処理することにより導電膜を形成した。得られたフレーク状銀粉、ペースト、及び導電膜のそれぞれにつき、各特性を以下のようにして確認した。
【0026】
<フレーク状銀粉の製造>
銀イオン水溶液としての2.7%の硝酸銀水溶液375kgに、25%アンモニア水溶液19kgを加えて、銀アンミン錯体水溶液を生成した。生成した銀アンミン錯体水溶液に還元剤として37%ホルマリン水溶液25kgを加えた。また、還元剤を加えた直後に、分散剤としてステアリン酸10gを加え、銀粉を含むスラリーを生成した。得られたスラリーをろ過、水洗した後、乾燥熱処理して、銀粉を10kg得た。
上記により得た銀粉を三井鉱山(株)製のヘンシェルミキサーFM75型(羽根:Ao型(一般タイプ))を用いて、羽根回転数1,000rpm、処理時間10分間の条件にて解砕を行い、BET1点法により測定した比表面積は0.17m/g、レーザー回折式粒度分布測定法により測定したD50は7.2μmであった。また、前記銀粉の形状を走査型電子顕微鏡で確認したところ不定形状の銀粉であることが確認された。
得られた銀粉に、分散剤としての脂肪酸(パルミチン酸)を0.15質量%加えてよく混ぜ、SUSボール(直径1.6mm)とともに振動ボールミルに入れて、振動数1,200vpm、振幅6mm、処理時間6時間の条件でフレーク化処理を実施した。
【0027】
<フレーク状銀粉の表面平滑化処理>
得られたフレーク化処理後のフレーク状銀粉8kgに対して、三井鉱山(株)製のヘンシェルミキサーFM20型(羽根:So型(強攪拌タイプ))を用いて、羽根径0.29m、羽根回転数2,300rpm、周速35m/s、処理時間20分間の条件にて、表面平滑化処理を行った。
表面平滑化処理条件、表面平滑化処理後のフレーク状銀粉の平均粒径D50、表面平滑化処理後のフレーク状銀粉のアスペクト比、表面平滑化処理後のフレーク状銀粉の比表面積、及び表面平滑化処理後のフレーク状銀粉のタップ密度を表1に示す。なお、平均粒径D50、比表面積、タップ密度の各測定方法は以下に示す通りである。
【0028】
−平均粒径D50の測定方法−
平均粒径D50は、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置(日機装(株)製、MICROTORAC HRA)を用いて、銀粉0.3gをイソプロパノール30mLに加え、超音波分散処理を5分間行って試料を準備し、全反射モードで測定を行った。
【0029】
−比表面積の測定方法−
比表面積は、MONOSORB装置(湯浅アイオニクス(株)製)で、He70%、N30%のキャリアガスを用い、銀粉3gをセルに入れて脱気を60℃で10分間行った後、BET1点法により測定を行った。
【0030】
−タップ密度の測定方法−
タップ密度は、タップ密度測定装置(柴山化学機器製作所製、カサ比重測定装置SS−DA−2)を使用し、銀粉試料30gを計量して、容器(20mL試験管)に入れ、落差20mmで1,000回タッピングした後、容器の目盛から銀粉の体積を読み取り、タップ密度=試料重量(30g)/タッピング後の試料体積、から算出した。
【0031】
<ペーストの作製>
また、(1)表面平滑化処理後のフレーク状銀粉、(2)エポキシ樹脂、(3)希釈剤及び(4)硬化剤を含む組成物を下記組成比で混練することによりペーストを作製した。
(1)表面平滑化処理後のフレーク状銀粉 88質量部
(2)エポキシ樹脂(旭電化工業(株)製、EP−4901E) 8.1質量部(3)希釈剤(ジャパンエポキシレジン株式会社製、カージェラE) 3.5質量部(4)硬化剤(三フッ化ホウ素モノエチルアミン) 0.4質量部
前記組成物を混合し、3本ロール(オットハーマン社製、EXAKT80S)を用いて、ロールギャップを100μmから20μmまで通過させて混練処理を行うことによりペーストを得た。得られたペーストは完全に混練されていた。
得られたペーストの粘度を、E型粘度計(BROOKFIELD社製、DV−III+)を用い、コーンスピンドルCP−52、ペースト温度25℃、回転数5rpmの条件で測定した。結果を表1に示す。実施例1のペーストは、表面平滑化処理を行わずに得られたフレーク状銀粉を用いて作製された後述する比較例1のペーストに比べ、低い粘度を示した。
【0032】
<導電膜の形成>
スライドガラス上にメンディングテープを幅10mm間隔で貼り、そこに得られたペーストをガラス棒で摺切り印刷した後、メンディングテープを剥がすことにより、膜厚0.05mm、幅10mmのペーストの膜を形成した。得られた膜を大気循環式乾燥機を用い、200℃、30分間の条件で加熱処理し、導電膜を形成した。
得られた導電膜は表面粗さ計(株式会社小坂研究所製、SE−30D)を用いて、スライドガラス上で膜を印刷していない部分と導電膜の部分の段差を測定することにより導電膜の膜厚を測定した。導電膜の抵抗は、デジタルマルチメーター(ADVANTEST製、R6551)を用いて、導電膜の長さ(間隔)が60mmの位置の抵抗値を測定した。導電膜のサイズ(膜厚、幅、長さ)より、導電膜の体積を求め、この体積と測定した抵抗値から、比抵抗(体積抵抗率)を求めた。膜厚及び比抵抗の結果を表1に示す。実施例1の導電膜は、表面平滑化処理を行わずに得られたフレーク状銀粉を用いて作製された後述する比較例1の導電膜に比べ、低い比抵抗を示した。
【0033】
(実施例2)
<フレーク状銀粉の製造>
銀イオン水溶液としての5.8%の硝酸銀水溶液176kgに、30%苛性ソーダ水溶液25kgを加えて、その後に還元剤として37%ホルマリン水溶液7kgを加えた。また、還元剤を加えた直後に、分散剤としてオレイン酸10gを加え、銀粉を含むスラリーを生成した。得られたスラリーをろ過、水洗した後、乾燥熱処理して、銀粉を10kg得た。
上記により得た銀粉は、実施例1と同様の条件で解砕を行い、BET1点法により測定した比表面積は1.1m/g、レーザー回折式粒度分布測定法により測定したD50は、6.0μmであった。また、前記銀粉の形状を走査型電子顕微鏡で確認したところ不定形状の銀粉であることが確認された。
得られた銀粉に、分散剤としての脂肪酸(オレイン酸)を0.40質量%加えてよく混ぜ、SUSボール(直径1.6mm)とともに振動ボールミルに入れて、振動数1,450vpm、振幅8mm、処理時間3時間の条件でフレーク化処理を実施した。
【0034】
<フレーク状銀粉の表面平滑化処理>
得られたフレーク化処理後のフレーク状銀粉19kgに対して、三井鉱山(株)製のヘンシェルミキサーFM75型(羽根:So型(強攪拌タイプ))を用いて、羽根径0.44m、羽根回転数2,200rpm、周速51m/s、処理時間8分間の条件にて、表面平滑化処理を行った。得られた結果を表1に示す。得られたフレーク状銀粉を用いて実施例1と同様に作製した実施例2のペーストは、表面平滑化処理を行わずに得られたフレーク状銀粉を用いて作製された後述する比較例2のペーストに比べ、低い粘度を示した。また、得られたペーストを用いて実施例1と同様に作製した実施例2の導電膜は、表面平滑化処理を行わずに得られたフレーク状銀粉を用いて作製された後述する比較例2の導電膜に比べ、低い比抵抗を示した。
【0035】
(比較例1)
フレーク化処理後のフレーク状銀粉に対して、表面平滑化処理を行わなかったこと以外は、実施例1と同様の条件で試験を行った。得られた結果を表1に示す。比較例1のペーストは、表面平滑化処理を行って得られたフレーク状銀粉を用いて作製された実施例1のペーストに比べ、高い粘度を示した。また、比較例1の導電膜は、表面平滑化処理を行って得られたフレーク状銀粉を用いて作製された実施例1の導電膜に比べ、高い比抵抗を示した。
【0036】
(比較例2)
フレーク化処理後のフレーク状銀粉に対して、表面平滑化処理を行わなかったこと以外は、実施例2と同様の条件で試験を行った。得られた結果を表1に示す。比較例2のペーストは、表面平滑化処理を行って得られたフレーク状銀粉を用いて作製された実施例2のペーストに比べ、高い粘度を示した。また、比較例2の導電膜は、表面平滑化処理を行って得られたフレーク状銀粉を用いて作製された実施例2の導電膜に比べ、高い比抵抗を示した。
【0037】
(比較例3)
銀イオン水溶液としての1.3%の硝酸銀水溶液813kgに、25%アンモニア水溶液38kgを加えて、銀アンミン錯体水溶液を生成した。生成した銀アンミン錯体水溶液に還元剤としてホルマリン37%水溶液44kgを加えた。また、還元剤を加えた直後に、分散剤としてステアリン酸13gを加え、銀粉を含むスラリーを生成した。得られたスラリーをろ過、水洗した後、乾燥熱処理して、銀粉を10kg得た。また、走査型電子顕微鏡で形状を確認したところ球状の銀粉であることが確認された。
上記により得た銀粉は、フレーク化処理及び表面平滑化処理を行わなかったこと以外は、実施例1と同様の条件で試験を行った(ペースト材料に用いる銀粉はフレーク状銀粉でなく、球状銀粉である)。得られた結果を表1に示す。得られた球状銀粉を用いて実施例1と同様に作製された比較例3のペーストは、表面平滑化処理を行って得られたフレーク状銀粉を用いて作製された実施例1及び2のペーストに比べ、やや低い粘度を示したが、得られたペーストを用いて実施例1と同様に作製された比較例3の導電膜は、表面平滑化処理を行って得られたフレーク状銀粉を用いて作製された実施例1及び2の導電膜に比べ、比抵抗は約1.5倍以上の値となり、導電性の点で大きく劣っていた。
【0038】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明のフレーク状銀粉は、従来の製法により製造されたフレーク状銀粉と比較して、フレーク状銀粉を配合したペーストの粘度を低下することができ、また、本発明のフレーク状銀粉を用いて形成した導電膜の導電性を大幅に向上することができる。そのため、本発明のフレーク状銀粉を用いて作製される導電性ペーストは、混練性、印刷性、導電性等に優れるものであり、種々の電子部品の電極や回路を形成するための導電性ペーストの配合物に、好適に利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレーク化処理後の銀粉に対して、前記銀粉の粒子同士を機械的に衝突させる表面平滑化処理を施すことを特徴とするフレーク状銀粉の製造方法。
【請求項2】
表面平滑化処理が、フレーク状銀粉を収納可能な容器と、前記容器中に設置され、周速15m/s以上で回転可能な羽根とを有する高速攪拌機を用いて施される請求項1に記載のフレーク状銀粉の製造方法。
【請求項3】
高速攪拌機の羽根の周速が30m/s〜70m/sである請求項2に記載のフレーク状銀粉の製造方法。
【請求項4】
表面平滑化処理の処理時間が、1分間〜60分間である請求項1から3のいずれかに記載のフレーク状銀粉の製造方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載のフレーク状銀粉の製造方法によって製造されたことを特徴とするフレーク状銀粉。
【請求項6】
請求項5に記載のフレーク状銀粉を用いて作製されたことを特徴とする導電性ペースト。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−180471(P2010−180471A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−27612(P2009−27612)
【出願日】平成21年2月9日(2009.2.9)
【出願人】(506334182)DOWAエレクトロニクス株式会社 (336)
【Fターム(参考)】