説明

フレーク状銀粉及びその製造方法

【課題】フレーク状銀粉を配合した樹脂硬化型の導電性ペーストを用いて回路(配線)を形成した場合、良好な配線のライン直線性(ラインのエッジの凹凸の程度)が得られる特性を併せ持つフレーク状銀粉及びその製造方法を提供する。
【解決手段】フレーク状銀粉を配合した樹脂硬化型の導電性ペーストを用いて回路(配線)を形成した場合の配線のライン直線性を、配合するフレーク状銀粉の粒度分布を調整することにより向上させる。前記ライン直線性は、配合するフレーク状銀粉の(D90−D10)/D50の値が1.5を超えることにより、良好なライン直線性が得られる。また、ナトリウム含有量が低くかつ、粒度分布の広い銀粉を湿式反応により生成し、フレーク化処理することにより、ナトリウム含有量が低く、かつ、(D90−D10)/D50の値が1.5を超える特性を併せ持つフレーク状銀粉を得る製法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は導電性ペーストの配合物などに用いられるフレーク状銀粉及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子部品などの電極や回路を形成するために、銀粉を有機成分(樹脂)中に分散させた導電性ペーストが使用されている。導電性ペーストには、樹脂硬化型ペーストと焼成型ペーストがある。樹脂硬化型の導電性ペースト(例えば、特許文献1参照)においては、樹脂の体積収縮により銀粉同士が接触して電気的な導通が取られる。よって、樹脂硬化型の導電性ペーストに配合される銀粉としては、接触面積が大きいフレーク状銀粉が使用されている(例えば、特許文献2参照)。焼成型ペーストは、銀粉、エチルセルロールやアクリル樹脂を有機溶剤に溶解したビヒクル、ガラスフリット、無機酸化物、有機溶剤、分散剤などを含み、ディッピング、印刷などにより所定パターンに形成された後、高温(例えば600℃)に加熱し、焼成されて導体を形成する。焼成型ペーストの場合でも、得られる導体の導電性を向上させる等の目的で、導電性ペーストに配合される銀粉として、フレーク状銀粉が使用されることがある。
【0003】
このようなフレーク状銀粉は、一般に、球状又は不定形状の銀粉をフレーク化することにより得ることができる。球状又は不定形状の銀粉をフレーク化する手法としては、例えば、ビーズミルを用いた湿式粉砕法や、ボールミル(例えば、特許文献3参照)、振動ミル等を用いた乾式粉砕法など、様々な方法が報告されている。また、前記球状又は不定形状の銀粉の製造方法としても、湿式還元法(例えば、特許文献4参照)や、アトマイズ法による製造方法など、様々な方法が報告されている。
【0004】
【特許文献1】特開2002−150837号公報
【特許文献2】特許第3874634号公報
【特許文献3】特開2003−55701号公報
【特許文献4】特開平07−76710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
樹脂硬化型の導電性ペーストを用いて回路を形成して電子部品等を製造した場合、回路の導電性低下等により、電子部品の信頼性が損なわれる等の不具合が発生することがあった。また、焼成型の導電性ペーストを用いて、導電膜を形成した場合、導電膜と基板との接着強度(密着性)が低下する不具合が発生することがあった。これらの不具合の原因について検討した結果、フレーク銀粉に含まれるナトリウム含有量が多いと、導電性ペーストの樹脂中にナトリウムが拡散することにより、樹脂の加水分解が促進され、この導電性ペーストを用いて回路を形成して電子部品等を製造した場合、樹脂の加水分解に起因する回路の導電性低下等により、電子部品の信頼性が損なわれる等の不具合が発生することがあることがわかった(特に半導体用途)。また、焼成型ペーストに使用するフレーク状銀粉に含まれるナトリウム含有量が多いと、同様に、樹脂の加水分解が促進される結果、焼成後に得られる導電膜と基板との接着強度(密着性)が低下することがあることがわかった。
【0006】
フレーク状銀粉を配合した樹脂硬化型の導電性ペーストを用いて回路(配線)を形成する場合、配線のライン直線性が良好でない(配線の両側に生じる凹凸が大きくなる)ことがあった。ライン直線性(ラインのエッジの凹凸の程度)が良好でない場合、配線の線幅や間隔を狭くした際に、断線や短絡の原因となるため好ましくない。
【0007】
しかしながら、従来の製造方法では、前記の不具合の全てを同時に抑制することが可能となる、ナトリウム含有量が低く、かつ、フレーク状銀粉を配合した樹脂硬化型の導電性ペーストを用いて回路(配線)を形成した場合、良好な配線のライン直線性が得られる特性を併せ持つフレーク状銀粉は、得られていない。このため、フレーク状銀粉を導電性ペースト用配合物に用いた場合、前述のような不具合のいずれかが発生することがあり、前述の不具合の発生を同時に抑制できるフレーク銀粉が求められていた。
【0008】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、ナトリウム含有量が低く、かつ、フレーク状銀粉を配合した樹脂硬化型の導電性ペーストを用いて回路(配線)を形成した場合、良好な配線のライン直線性(ラインのエッジの凹凸の程度)が得られる特性を併せ持つフレーク状銀粉及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、フレーク状銀粉を配合した樹脂硬化型の導電性ペーストを用いて回路(配線)を形成した場合の配線のライン直線性は、配合するフレーク状銀粉の粒度分布を調整することにより向上することができることを見出した。前記ライン直線性は、配合するフレーク状銀粉の(D90−D10)/D50の値が1.5を超えることにより、良好なライン直線性が得られることを見出した。
ナトリウム含有量が低くかつ、粒度分布の広い銀粉を湿式反応により生成し、フレーク化処理することにより、ナトリウム含有量が低く、かつ、(D90−D10)/D50の値が1.5を超える特性を併せ持つフレーク状銀粉を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、上記課題を解決するため、ナトリウム含有量が0.0015質量%以下であり、(D90−D10)/D50の値が1.5を超えることを特徴とするフレーク状銀粉が提供される。ここで、前記ナトリウム含有量を0.001質量%以下とすることができ、0.0005質量%以下とすることができる。
【0011】
また、前記(D90−D10)/D50の値を2.0以上とすることができる。
【0012】
ナトリウム含有量が0.0015質量%以下であり、(D90−D10)/D50の値が1.5を超えるフレーク状銀粉の製造方法であって、ナトリウム含有量が0.0015質量%以下であり、(D90−D10)/D50の値が1.5以上である銀粉をフレーク化処理することを特徴とする、フレーク状銀粉の製造方法が提供される。ここで、銀粉のナトリウム含有量を0.0005質量%以下とすることができ、銀粉の(D90−D10)/D50の値を1.7以上とすることができる。ナトリウム含有量が0.0015質量%以下の銀粉の製造方法は、硝酸銀水溶液を用いた湿式還元法による銀粉の製造方法において、還元剤やアルカリ溶液にナトリウム化合物含まない非ナトリウム化合物のみを添加する方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、従来の製造方法により製造されたフレーク状銀粉よりも、フレーク状銀粉を配合した樹脂硬化型の導電性ペーストを用いて形成した導電膜(回路)の導電性を低下させることなく、形成した回路(配線)について、良好なライン直線性が得られるフレーク状銀粉及びその製造方法を提供することが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(フレーク状銀粉の製造方法)
本発明のフレーク状銀粉は、下記(1)または(2)に記載の製造方法により製造することができる。(1)ナトリウム含有量が低くかつ、粒度分布の広い銀粉を湿式反応により生成し、フレーク化処理する工程を少なくとも含み、更に必要に応じて、適宜その他の工程を含む製造方法。(2)ナトリウム含有量が低い銀粉を湿式反応により生成し、フレーク化処理する工程を少なくとも含み、前記フレーク化処理の時間等の条件を調整し、更に必要に応じて、適宜その他の工程を含む製造方法。
【0015】
<<フレーク化処理に供する銀粉>>
フレーク化処理に供する銀粉のナトリウム含有量は、0.0015質量%以下であることが好ましく、0.001質量%以下であることが更に好ましく、0.0005質量%以下であることが一層好ましい。フレーク化処理に供する銀粉のナトリウム含有量が、0.0015質量%超の場合には、フレーク化処理後に得られるフレーク状銀粉のナトリウム含有量が十分低減できない。
フレーク化処理に供する銀粉に粒度分布の広い銀粉を用いることにより、(D90−D10)/D50が1.5超であるフレーク状銀粉を得ようとする場合、前記銀粉は、粒度分布の広さを示す指標である(D90−D10)/D50が、1.5以上であることが好ましく、1.7以上が更に好ましい。(D90−D10)/D50が、1.5未満である場合には、フレーク状銀粉の(D90−D10)/D50が、1.5以下となることがある。フレーク化処理に供する銀粉の形状は、球状、不定形のいずれでもよい。ここで、球状とは、SEMで銀粉を観察した場合、粒子形状が球形または略球形であり、粒子100個の球状度(球状度:SEM写真で粒子を観察した時の、(最も長径部の径)/(最も短径部の径))が1.5以下であることをいう。また、本明細書中で、フレーク状とは、アスペクト比が3以上であることをいう。ここで、前記アスペクト比は、(平均長径L/平均厚みT)により求めることができる。「平均長径L」と「平均厚みT」は、走査型電子顕微鏡で測定した粒子100個の平均長径と平均厚みを示す。不定形とは、前記球状およびフレーク状のいずれにも属さない形状を指す。
【0016】
<<ナトリウム含有量が低いフレーク化処理に供する銀粉の製造方法>>
ナトリウム含有量が低い銀粉は、例えば、硝酸銀水溶液に還元剤を添加した後に、アルカリ溶液を添加して銀粉を製造させる方法において、還元剤やアルカリ溶液にナトリウム化合物を添加していないものを用いることが好ましい。なお、硝酸銀溶液、還元剤、アルカリ溶液以外に添加剤を加えることも可能である。
【0017】
<<ナトリウム含有量が低く、粒度分布の広いフレーク化処理に供する銀粉の製造方法>>
ナトリウム含有量が低く、粒度分布の広い銀粉は、例えば、硝酸銀水溶液に還元剤を添加した後に、アルカリ溶液を添加して銀粉を製造させる方法において、還元剤やアルカリ溶液にナトリウム化合物を添加していないものを用いることが好ましい。粒度分布の広い銀粉を得る方法として、下記(1)、(2)の方法を用いることができる。(1)例えば、硝酸銀溶液に還元剤としてホルムアルデヒド水溶液(ホルマリン)を加え、前記水溶液にアンモニア水溶液を加え、銀粉を得るという方法である。(2)平均粒径の異なる銀粉を混合して粒度分布の広い銀粉を得る。
【0018】
<<フレーク化処理方法>>
前記の工程で得られたナトリウムの含有量が低い銀粉を、以下の条件でフレーク化処理をおこなうことにより、本発明のフレーク状銀粉を得ることができる。
【0019】
<フレーク化処理設備>
フレーク化処理に用いるフレーク化処理設備としては、転動ミル、遊星ミル、塔式ミル、媒体撹拌ミル、振動ミル等の粉砕メディアとしてボールを用いた粉砕機を使用することができる。
【0020】
<溶媒>
前記フレーク化処理をおこなう際、銀粉とともに溶媒を加えて処理をおこなうことができる。前記溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、水、有機溶媒、などが好ましい。前記有機溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、平均分子量200以下のものが好ましく、分子量200以下のアルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、それらの混合物)がより好ましい。前記フレーク化処理時に溶媒を添加する場合、前記溶媒の添加量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、フレーク化処理する銀粉に対し、質量で0.1倍〜5倍が好ましい。前記添加量が0.1倍未満であると、溶媒添加の効果が不十分であることがあり、5倍を超えると、十分なアスペクト比が得られないことがある。前記溶媒は、添加せずに処理することも可能である。
【0021】
<ボール(メディア)>
また、前記ボール(メディア)としては、直径0.1mm〜10mmで形状が球状のボール(メディア)である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記ボール(メディア)の直径が0.1mm未満であると、フレーク化処理後のフレーク状銀粉とボール(メディア)を分離する際、ボール(メディア)の目詰まりなどにより、分離の効率が低下し、10mmを超えると、得られるフレーク状銀粉の粒径が過大になる。前記ボール(メディア)の材質としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、金属、アルミナ、ジルコニアなどのセラミック、などを挙げることができる。前記ボール(メディア)のフレーク化処理時における添加量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、フレーク化処理する銀粉に対し、質量で1倍〜50倍が好ましい。添加量が1倍未満であると、十分なアスペクト比が得られないことがあり、添加量が50倍を超えると、1回にフレーク化処理できる銀粉の量が少なくなり、処理コストが高くなることがある。
【0022】
<フレーク化処理の処理時間>
前記フレーク化処理の処理時間は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1時間〜100時間が好ましい。前記処理時間が0.1時間未満であると、十分なフレーク化処理がなされず、フレーク状銀粉が得られないことがある。100時間を超えても特に品質上の効果は無く、不経済となる。フレーク化に供する銀粉の粒度分布が広くない場合には、フレーク化処理時間を短時間とすることにより、(D90−D10)/D50が1.5超であるフレーク状銀粉を得ることができ、この場合には、処理時間を0.1時間〜60時間とすることが好ましい。
【0023】
<分散剤>
得られるフレーク状銀粉の分散性を向上、また粗大化を防止する目的で、分散剤をフレーク化処理する銀粉に対して、0.05質量%〜5質量%添加することができる。添加する分散剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、脂肪酸、脂肪酸塩、界面活性剤、有機金属、キレート形成剤、保護コロイド、などが挙げられ、これらの中でも、脂肪酸が好ましい。前記脂肪酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、プロピオン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、アクリル酸、オレイン酸、リノール酸、アラキドン酸など又はそれらの混合物が挙げられる。中でも接着強度向上のためにはパルミチン酸やパルミチン酸の異性体を主成分とする脂肪酸を使用することが好ましい。フレーク化工程前の銀粉に分散剤を添加する替わりに、溶媒とともに前記分散剤を添加することもできる。前記分散剤をフレーク化工程前の銀粉に添加し、かつ、前記分散剤をフレーク化工程で溶媒とともに添加してもよい。
【0024】
<洗浄・乾燥処理>
フレーク化処理を行う際に、銀粉とともに溶媒を加えて処理する場合には、前記のようにして得られたフレーク化処理後の銀粉を固液分離し、必要に応じて、洗浄を行い、乾燥することにより、本願のフレーク状銀粉が得られる。洗浄及び乾燥については、銀粉に対する公知の方法を適宜使用することができる。
【0025】
本発明のフレーク状銀粉は、粒度分布の広さを示す指標である(D90−D10)/D50が、1.5超であることが好ましく、2.0以上が更に好ましい。前記銀粉のナトリウム含有量は0.0015質量%以下であることが好ましく、0.001質量%以下であることが更に好ましく、0.0005質量%以下であることが一層好ましい。(D90−D10)/D50が、1.5以下である場合には、フレーク状銀粉を配合した樹脂硬化型導電性ペーストを用いて形成した導電膜のライン直線性が悪くなる不具合が発生することがある。ナトリウム含有量が、0.0015質量%超の場合には、フレーク状銀粉を配合した導電性ペーストを用いて形成した導電膜の接着強度が低下し、導電性が低下することがある。
【0026】
本発明のフレーク状銀粉は、ナトリウム含有量が低く、かつ、粒度分布が広い特性を併せ持つことにより、従来の製造方法により製造されたフレーク状銀粉よりも、フレーク銀粉を配合した樹脂硬化型導電性ペーストを用いて形成した導電膜の導電性を低下させることなく、導電膜のライン直線性を良好にすることが出来る。
【実施例】
【0027】
以下、本発明について説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0028】
(実施例1)
以下のようにして、銀粉を湿式反応により作成し、生成した銀粉に対し、フレーク化処理をおこなうことにより、本発明のフレーク状銀粉を製造した。また、得られたフレーク状銀粉について、各特性を以下のようにして確認した。
【0029】
銀濃度が7.7質量%の硝酸銀溶液3650gに還元剤として37%のホルムアルデヒド水溶液(ホルマリン)166gを加えた。前記水溶液を撹拌しながら、25%アンモニア水溶液710gを加え、銀粉を含むスラリーを生成した。得られたスラリーを濾過、水洗した後、75℃で乾燥した。
上記により得られた銀粉を電動コーヒーミル(メリタジャパン株式会社製、セレクトグラインドMJ−518)に入れ、処理時間40秒間の条件にて解砕を行い、銀粉を得た。
【0030】
<フレーク化処理>
得られた銀粉の107gに分散剤としての脂肪酸(ステアリン酸)を銀粉に対して0.4%となる量を加えてよく混ぜ、SUSボール1107g(直径1.6mm)とともに転動ボールミルに入れて、回転数116rpm、処理時間15時間の条件でフレーク化処理を実施し、フレーク状銀粉を得た。得られたフレーク状銀粉のD10、平均粒径D50、D90、フレーク銀粉の比表面積、及びナトリウム含有量を表1に示す。なお、D10、平均粒径D50、D90、比表面積、ナトリウム含有量の各測定方法は以下に示す通りである。
【0031】
【表1】

【0032】
−D10、平均粒径D50、D90の測定方法−
10、平均粒径D50、D90はレーザー回折散乱式粒度分布測定装置(日機装(株)製、MICROTRAC HRA)を用いて、銀粉0.3gをイソプロパノール30mLに加え、超音波分散処理を5分間行って試料を準備し、全反射モードで測定を行った。
なお、D10とあるのは、測定で得られた累積分布曲線(質量)において、その累積値が10%における粒径(μm)である。他、D50、D90も同様である。
【0033】
−比表面積の測定方法−
比表面積は、MONOSORB装置(ユアサアイオニクス(株)製)で、He70%、N 30%のキャリアガスを用い、銀粉3gをセルに入れて脱気を60℃で10分間行った後、BET1点法により測定を行った。
【0034】
−ナトリウム含有量の分析方法−
ナトリウム含有量は、日立製作所製 原子吸光光度計 Z−8100を使用し、フレーク状銀粉1.0gを硝酸溶解した溶解液を測定して、ナトリウム含有量を求めた。
【0035】
−導電性ペースト作成−
得られたフレーク銀粉を用いて、導電性ペーストを以下の方法により作成した。下記の導電性ペーストの原料を下記の質量比で秤量し、混合分散することにより、導電性ペーストを得た。
・フレーク銀粉
81.8質量部
・エポキシ樹脂(EP−4901E)アデカ社製 7.6質量部
・硬化剤(アミキュアMY−24)味の素社製
1.5質量部
・溶剤(エチルカルビトールアセテート)
9.1質量部
混合分散は、プロペラレス自公転式撹拌脱泡装置で、60秒処理することにより、おこなった。
【0036】
−導電膜作成−
96%アルミナ基板上に、前記で得られた導電性ペーストを用い、幅500μm、長さ37500μmの導電性ペーストの膜をスクリーン印刷機(マイクロ・テック社製、MT−320T)を用いて形成した。得られた膜を熱風乾燥機を用い、200℃、40分間の条件で加熱処理し、導電膜を形成した。得られた導電膜を顕微鏡を用いて、ライン直線性を観察した。観察結果を表1に示す。ライン直線性は、形成した導電膜の長さ方向の辺の中央部10mmについて、辺の凹凸大きさが10μm以下の場合、「○」と判定し、10μm超の場合、「×」と判定した。
【0037】
−接着強度の測定−
前記導電性ペーストを、96%アルミナ基板上に、2mm×2mm(2mm□)のパットになる様に印刷した。印刷後パットにアルミリベットを乗せ、熱風乾燥機を用い、200℃、40分間の条件で加熱処理した。加熱処理後に引張り圧縮試験機(今田製作所製 SV 51−0−50M)にて10mm/minの速度で引張り強度(単位:N)を測定した。
【0038】
結果、得られたフレーク状銀粉においては、D10が1.4μm、平均粒径D50が3.8μm、D90が11.8μm(D90−D10)/D50の値が2.74であり、比表面積が0.91m/g、ナトリウム含有量が<0.0001質量%であった。得られたフレーク状銀粉を用いて前記の通り導電性ペースト及び導電膜を作製した。ライン直線性・接着強度の測定した結果、ライン直線性は「○」、接着強度は17.1N/2mm□であった。結果を表1に示す。得られたフレーク状銀粉は、ナトリウム含有量が低く、また、得られたフレーク状銀粉を用いた導電膜のライン直線性が良好であり、接着強度が高く、良好であった。
【0039】
(実施例2)
フレーク化処理時の分散剤としてパルミチン酸を用いる以外は実施例1を繰り返した。得られたフレーク銀粉について、実施例1と同様に評価を行った。
【0040】
結果、得られたフレーク状銀粉においては、D10が1.3μm、平均粒径D50が3.7μm、D90が11.5μm(D90−D10)/D50の値が2.73であり、比表面積が0.92m/g、ナトリウム含有量が<0.0001質量%であった。得られたフレーク状銀粉を用いて前記の通り導電性ペースト及び導電膜を作製した。ライン直線性・接着強度の測定した結果、ライン直線性は「○」、接着強度は25.0N/2mm□であった。結果を表1に示す。得られたフレーク状銀粉は、ナトリウム含有量が低く、また、得られたフレーク状銀粉を用いた導電膜のライン直線性が良好であり、接着強度が高く、良好であった。

【0041】
(比較例1)
銀濃度5.7質量%の硝酸銀水溶液3600gに30質量%の水酸化ナトリウム水溶液545gを加えて、その後に還元剤として37%ホルマリン水溶液134gを加えた。また、還元剤を加えた直後に分散剤としてオレイン酸0.2gを加え、銀粉を含むスラリーを生成した。得られたスラリーを濾過、水洗した後、75℃で乾燥して、銀粉を得た。上記により得られた銀粉を実施例1と同様の条件で解砕を実施した。
得られた銀粉に対して、処理時間を30時間で行う以外は実施例1と同様にフレーク化処理を行った。得られたフレーク状銀粉について、実施例1と同様にして評価をおこなった。
【0042】
結果、得られたフレーク状銀粉においては、D10が1.0μm、平均粒径D50が3.0μm、D90が8.9μm(D90−D10)/D50の値が2.63であり、比表面積が1.2m/g、ナトリウム含有量が0.0146質量%であった。得られたフレーク状銀粉を用いて前記の通り導電性ペースト及び導電膜を作製した。ライン直線性・接着強度の測定した結果、ライン直線性は「○」、接着強度は16.9N/2mm□であった。結果を表1に示す。得られたフレーク状銀粉は、ナトリウム含有量が高く、ナトリウム含有量の低いフレーク状銀粉は得られなかった。また、得られたフレーク状銀粉を用いた導電膜のライン直線性が良好であったが、接着強度が低くかった。


【0043】
(比較例2)
銀濃度2.7質量%の硝酸銀水溶液4130gに25%アンモニア水溶液210gを加えて、銀アンミン錯体水溶液を生成した。生成した銀アンミン錯体水溶液に還元剤として37%ホルマリン水溶液275gを加えた。また、還元剤を加えた直後に、分散剤としてステアリン酸0.11gを加え、銀粉を含むスラリーを生成した。得られたスラリーを濾過、水洗した後、75℃で乾燥して、銀粉を得た。上記により得られた銀粉を実施例1と同様の条件で解砕を実施した。
得られた銀粉に対して、処理時間を60時間で行う以外は実施例1と同様にフレーク化処理を行った。得られたフレーク状銀粉について、実施例1と同様にして評価をおこなった。
【0044】
結果、得られたフレーク状銀粉においては、D10が1.4μm、平均粒径D50が2.7μm、D90が4.3μm(D90−D10)/D50の値が1.07であり、比表面積が1.4m/g、ナトリウム含有量が0.0001質量%であった。得られたフレーク状銀粉を用いて前記の通り導電性ペースト及び導電膜を作製した。ライン直線性・接着強度の測定した結果、ライン直線性は「×」、接着強度は10.1N/2mm□であった。結果を表1に示す。得られたフレーク状銀粉は、ナトリウム含有量は低いが、導電膜のライン直線性が不良であり、接着強度も実施例1、2および比較例1より低かった。

【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明のフレーク状銀粉は、従来の製法により製造されたフレーク状銀粉と比較して、ナトリウム含有量が低く、かつ、粒度分布が広い特性を併せ持つ。これにより、従来の製造方法により製造されたフレーク状銀粉よりも、フレーク状銀粉を配合した導電性ペーストを用いて形成した導電膜の導電性や基板との接着強度を低下させることなく、導電膜の品質、すなわち、ラインのエッジの凹凸を抑制することができるフレーク状銀粉及びその製造方法を提供することができる。














































【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナトリウム含有量が0.0015質量%以下であり、(D90−D10)/D50の値が1.5を超えることを特徴とするフレーク状銀粉。
【請求項2】
ナトリウム含有量が0.001質量%以下である請求項1に記載のフレーク状銀粉。
【請求項3】
ナトリウム含有量が0.0005質量%以下である請求項2に記載のフレーク状銀粉。
【請求項4】
(D90−D10)/D50の値が2.0以上である請求項1〜3のいずれかに記載のフレーク状銀粉。
【請求項5】
請求項1〜4いずれかに記載のフレーク状銀粉の製造方法であって、ナトリウム含有量が0.0015質量%以下であり、(D90−D10)/D50の値が1.5以上である銀粉をフレーク化処理することを特徴とする、フレーク状銀粉の製造方法。
【請求項6】
前記ナトリウム含有量が0.0005質量%以下である請求項5に記載のフレーク状銀粉の製造方法。
【請求項7】
前記(D90−D10)/D50の値が1.7以上である請求項5または6に記載のフレーク状銀粉の製造方法。


























【公開番号】特開2011−208278(P2011−208278A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−46102(P2011−46102)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(000224798)DOWAホールディングス株式会社 (550)
【Fターム(参考)】