説明

フレーバーマイクロカプセルまたは香料マイクロカプセルを製造するための方法

本発明は、コアセルベーションによってマイクロカプセルを製造するための方法に関し、この場合、この方法は、タンパク質の架橋を、置換または非置換のフェノール化合物中でリッチな植物抽出物によっておこなうことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、香料およびフレーバー工業に関する。特に、疎水性のフレーバーまたは香料成分または組成物をカプセル封入する、マイクロカプセルを製造するためのコアセルベーション方法に関し、この場合、この方法は、フェノール化合物中に植物抽出物を多量に(Rich)含有する新規かつ有利な硬化剤を使用することを特徴とする。
背景技術
カプセル封入とは、食品、フレーバーおよび香料工業においてよく使用される用語である。カプセル封入のために使用される方法は、脱水技術、たとえばスプレー乾燥またはドラム乾燥、スプレー冷却、押出、機械的被覆またはコアセベーションを含んでいてもよい。
【0002】
コアセルベーションは、また水相分離とも呼称され、疎水性の液体をカプセル封入するためのよく知られた技術である。コアセルベーション技術は、油を含有する微視的なマイクロカプセルを提供することを可能にし、その際、カプセル封入材料は、油に対して不浸透性のゲル化された親水コロイドであり、かつ芯物質としての油に均一かつ密に付着する。カプセル封入されたコロイド材料は、逆の電荷を有する他のコロイドと一緒に錯化されていてもよいタンパク質である。
【0003】
本質的にコアセルベーション方法は、物理化学的環境を変化させることによって(希釈および/またはpH調整によって)、操作されたタンパク質水溶液を含むものであり、結果として、溶液からのタンパク質の相分離を生じ、この場合、その程度は、タンパク質の分子量、その等電点および溶剤との相溶性によって可変である。
【0004】
コアセルベーション方法は、「単純コアセルベーション」または「複合コアセルベーション」であってもよい。単純コアセルベーションは、単一のタンパク質を使用して、相分離を生じさせるようなカプセル壁を形成する場合に用いられる。複合コアセルベーションは、第2の反対の電荷を有する非タンパク質ポリマーを用いて相分離を生じさせる場合に設定される。複合コアセルベーション法は、商業的な方法で広範囲に実施され、かつ文献において十分に記載されている。特に、US2800457およびUS2800458には、極めて詳細な方法での複合コアセベーションが開示されている。
【0005】
一般にコアセルベーション方法は、それぞれ乳化、コアセルベーション、壁膜形成および壁膜硬化から成る、4個の基本的工程を含む。したがって、少なくとも一種のコロイド材料の溶液中での油滴の分散液について、希釈またはpH調整をおこない、油滴を含有するカプセルを形成する(コアセルベーション)。さらにコロイドはゲル化され(壁膜形成)、かつ最終的に硬化され、かつ水不溶化することで、カプセルが高く熱および湿分に対して耐性であるようにする。特に、硬化工程は、乳化された油滴上に存在するコロイド状皮膜を架橋することから成る。その水溶性を変化させるために実施される、タンパク質の架橋は、タンパク質を使用するカプセル封入中においては重要であり、かつ、通常はアルデヒド、たとえばホルムアルデヒドまたはグルタルアルデヒドを用いて実施される。しかしながら、これらの化合物は毒性であるといった欠点を有し、かつこれらは、食品において混合させるべきマイクロカプセルの製造において使用することはできない。特にコアセベーション方法のほとんどにおいて使用されているグルタルアルデヒドは、有害物質として扱われ、米国以外ではその適用が認められていないためである。
【0006】
二者択一的にアルデヒドの使用が、従来技術において示唆されている。たとえば、CA1322133では、irroid化合物を使用してのゼラチンの架橋が記載されている。他方では、J.Soperら、US6325951およびUS6039901では、タンパク質−カプセル封入オイル粒子の、複合コアセルベーションによる酵素的架橋が示唆されている。特にこれらの特許においては、オイル粒子の複合コアセルベーションの製造方法が開示されており、この場合、それぞれ、タンパク質皮膜中でカプセル封入されているものであって、これは、タンパク質皮膜のゲル化および引き続いてのトランスグルタミネートでの酵素的架橋によって安定化され、熱安定性のマイクロカプセルを提供する。しかしながら、この酵素的アプローチは高価であり、その工程により制御するこが困難であり、かつばらつきのない結果を得るために、極めて制御された条件が必要とされる。
【0007】
したがって、公知の硬化剤に対して二者択一的なものを見出すことは、特に食品およびフレーバー工業における実際のニーズに寄与するものである。
【0008】
本発明は、単純または複合的な型であってもよいコアセルベーション方法を提供することによって、前記問題の新規解決に寄与するものであって、かつ硬化剤として、たとえばタンパク質壁を不溶化可能な薬剤、特にフェノール化合物中で多量に含有される植物抽出物を使用する。この新規架橋剤は、予期しないものであったが、極めて効果的に、かつ容易に取り扱い可能であることが証明された。
【0009】
さらに、法律の点から制限される任意の種類に対しては、有利には使用しない。
【0010】
フェノール化合物は、US3965033およびUS3803045において記載されており、この場合、これらはコアセルベーション工程において有用である。しかしながら、これらの文献において開示された方法において、このような化合物は、硬化工程前の工程で添加され、かつ架橋は通常の硬化剤、たとえばホルムアルデヒド、アセトアルデヒドまたはグルタルアルデヒドを用いて実施される。
【0011】
したがって従来技術の文献では、今日までフェノール化合物を含有する植物抽出物が、タンパク質壁膜を硬化させるために使用するコアセルベーション方法は記載されていない。したがって、本発明の方法は、コアセルベーション方法の架橋工程を改善させる課題に対しての新規かつ効果的な解決手段を提供するものであり、かつ、特に食品およびフレーバー工業において有利に使用されてもよい、マイクロカプセルの製造方法を提供する。
発明の開示
本発明は、コアセルベーションカプセル封入方法に関し、この場合、この方法は、タンパク質溶液中での、疎水性芯物質の乳化または分散、コアセルベーション、コアセルベートの冷却による壁膜形成、硬化および最終的な撹拌の基本的な工程を包含する。これらの方法は、硬化工程をフェノール化合物中にリッチな植物抽出物を用いて実施される。
【0012】
さらに本発明は、この方法によって製造されたマイクロカプセルに関する。これらのマイクロカプセルは、疎水性材料の芯を少なくとも部分的に包囲する、高分子タンパク質のゲル化された壁膜を有し、その際、ゲル化された壁膜は、置換または非置換のフェノール化合物を含有する少なくとも1種の植物抽出物を含有する硬化剤を用いて架橋される。
【0013】
さらに本発明は、少なくとも1種の植物抽出物を含有する置換または非置換のフェノール化合物を、タンパク質ベースのコアセルベートに添加することによって、水中でタンパク質を不溶化する方法に関し、その際、抽出物は、コアセルベートのタンパク質の少なくとも一部分を硬化させるのに十分な量で含まれ、不溶化させる。
【0014】
したがって本発明は、疎水性芯物質を含有するマイクロカプセルを製造するための方法によって提供され、この場合、この方法は、工程:a)疎水性の液体、疎水性の液体中で懸濁された固体、または固体を、少なくとも1種の高分子タンパク質の溶液に乳化させるか、あるいは分散させ;b)工程a)で得られたエマルションまたは分散液を、水で希釈するか、および/またはpH調整し、コアセルベーションを達成し;c)工程b)で形成されたコアセルベーションを冷却し、マイクロカプセルの壁膜形成を提供し;d)15〜30℃の温度で硬化剤をコアセルベートに添加することで、形成された壁膜を架橋し;かつ、e)少なくとも48時間に亘って混合物を撹拌し、架橋反応を終了させる。これらの方法は、工程d)で使用される硬化剤が、置換または非置換のフェノール化合物を含む少なくとも1個の植物抽出物を含有することを特徴とする。
【0015】
「高分子タンパク質」とは、典型的に40000〜100000の分子量を有するタンパク質を意味する。
【0016】
「芯物質」とは、疎水性液体材料を含み、この場合、これらは通常は、コアセルベーションによってカプセル封入されるものであり、同様に、固体または疎水性液体中に懸濁された固体であってもよい。
【0017】
本発明による方法において使用された植物抽出物は、カプセル封入された疎水性芯物質のタンパク質壁膜を不溶化するための新規薬剤を構成するものであって、この場合、これらはコアセベーションによって製造される。タンパク質の架橋は、タンパク質によってカプセル封入された芯の作用に関しては、特にその熱安定性のために重要である。タンパク質壁膜が架橋されていない場合には、運搬系は、好ましいようには実施されない。したがって本発明によって使用された、少なくとも1個の植物抽出物からなる新規硬化剤は、それが非置換または置換のフェノール化合物を含むものであって、予期しえず、ゲル化の後に形成されるタンパク質壁膜の効果的な架橋を達成した。本発明によって提供される運搬系は、グルタルアルデヒドで架橋される従来の系と比較して、それにカプセル封入された芯物質の極めて興味深い遅延した放出を示すことが見出された。さらに、マイクロカプセルの架橋壁膜は良好な熱安定性を示す。他方で、本発明によって提供される新規の硬化剤は、危険なく取り扱うことが可能であり、低コストであるといった利点を有し、かつこれは、方法において厳格に制御された条件を必要とはしない。本発明の他の利点は、さらに詳細な説明および実施例において示されている。
【0018】
「植物抽出物」とは、本明細書中においてボタニカルエキストラクト、ハーバルエキストラクトまたはさらにウッドエキストラクトを意味する。ボタニカルエキストラクトの制限のない例は、たとえばオーク樹皮エキストラクト、オリーブ水またはカシューナッツ殻液を含む。ティーエキストラクトは、本発明の目的に適した植物抽出物のもう一つの例である。これらエキストラクトのすべては、置換または非置換のフェノール化合物、たとえばフェノールおよびその類似体または置換フェノール、たとえばバニリン、キノンまたはポリフェノールを一定量含有する。
【0019】
本発明の特別な実施態様において、壁膜タンパク質の架橋に適した植物抽出物として、木酢液とも呼称される液くんを使用する。これは従来、木材、好ましくはカバノキから抽出されるものである。S.Arctander in Flavor and Fragrance Chemicals,Montclair、NewJersey,1969,ref.No2780によれば、フレーバー成分として、肉、魚および他の食材において使用され、かつより少ない度合いではあるが、キャラメル、バタースコッチ、ラム、バニラ等のイミテーションのためのフレーバー組成物中で、タバコのフレーバリングにおいて使用される。さらに木酢液エキストラクトは、たとえば肉および魚の製品において、スモーク用フレーバーとして使用されていることが挙げられる。この抽出物は、特に、たとえばグアイアコール、4−メチルグアイアコール、4−エチルグアイアコール、4−プロピルグアイアコール、バニリン、4−(2−プロピオ)バニロン、4−(1−プロピオ)バニロン、アセトバニロン、オイゲノール、E−イソオイゲノール、Z−イソオイゲノール、シリンゴル、4−メチルシリンゴル、4−エチルシリンゴル、4−プロピルシリンゴル、シリングアルデヒド、4−(2−プロピオ)−シリンゴン、4−(1−プロピオ)−シリンゴン、4−(2−プロペニル)シリンゴル、E−4(1−プロペニル)シリンゴル、Z−4(1−プロペニル)シリンゴルおよびアセトシリンゴルである。
【0020】
本発明による特別な実施態様において、特に、「スモーク」フレーバーは、コアセルベーション方法における硬化剤として使用され、疎水性のカプセル封入された芯、特にフレーバーオイルの場合のそのフレーバーの官能的性質を有利には変更するものではない。いいかえれば、木酢液それ自体が、前記文献、たとえば、S.Arctanderにおいて挙げられているようなフレーバー特性を有するといった事実にもかかわらず、スモークフレーバーは、成分と架橋した最終的な運搬系中ではみられないことが明らかになった。この利点は、液くんが、極めて強くかつ遮蔽困難であるとして開示されていることからは、予測されないものであった。
【0021】
本発明の他の実施態様において、タンパク質の架橋のために使用される植物抽出物は、タンニン酸と組み合わせて使用されてもよい。
【0022】
本発明による方法において、硬化剤は、使用されるタンパク質の質量に対して0.5〜2.8質量%の量で可変であってもよく、この場合、これは、乾燥質量に基づくものである。
【0023】
本発明の方法は、疎水性の液体、疎水性の液体中に懸濁された固体、または固体のタンパク質溶液中への乳化または分散により開始される。
【0024】
前記に示したように、単純コアセルベーションまたは複合コアセルベーションの双方は、本発明の範囲内で実施することができる。前記方法は、非溶剤であるか、あるいは溶解性に関してタンパク質と競合する他の薬剤の添加を含み、これによってタンパク質を多量の含むコアセルベート相が得られる。他方では、複合コアセルベーション工程は、逆の電荷を有する第2ポリマー溶液を、タンパク質分子の電荷を中性化するために添加することを含み、これによって、中性のポリマー−ポリマー複合体を有するコアセルベートが得られる。混合物は、タンパク質の水性溶液を形成し、その中で芯物質を乳化し、かつエマルションとアニオンポリマー水溶液とを混合することによって製造されるか、あるいは2個の溶液を製造し、混合し、かつ芯物質をその中で乳化する。タンパク質と反応する任意のアニオンポリマーは、複合コアセルベートを形成するために使用される。特に、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、アガー、カラゲナン、カルボキシメチルセルロース、ナトリウムポリアクリレートまたはポリ燐酸は、本発明の目的のためのアニオンポリマーとして適している。双方の技術はよく知られており、主に、たとえば、John C.Soper in “Ultilization of Coacervated Flavors”, Proceedings of Flavor Symposium; American Society,Chap.10,1995に記載されている。
【0025】
タンパク質は、本発明による方法の本質的な要素であり、ゲル化の際には、硬化前に、油滴の周囲に壁膜を形成させるために使用される。カプセル封入のためのタンパク質の使用は制限されるが、しかしながら主に、ゲル化および溶解特性によって可変である。これらの特性は温度、pHの変更、第2ポリ電解溶液、第2溶剤さらには電離塩溶液の添加によって操作される。
【0026】
タンパク質の分子量は、典型的には40000〜100000の大きさである。本発明の特定の実施態様において、方法で使用されるタンパク質は、ゼラチンおよびアルブミンから成る群から選択される。
【0027】
好ましくは、ゼラチンを使用する。使用することができるゼラチンについては特に制限はないが、しかしながら、良好な物理化学的および化学的特性を有するゼラチンを使用することは、良好な膜形成能力、両性電解質の性質、pHによる電荷の質の制御能力および臨界温度で溶液からゲルに変化が生じるといった点で好ましい。特に適しているのは、マイクロカプセルを製造するのに使用される記載を満たす任意のゼラチンを使用することである。より好ましくは、3.5〜10の等電点および225〜325のブルーム強度を有するゼラチンが使用される。
【0028】
本発明の一つの実施態様において、カプセル化すべき芯物質は、香料またはフレーバー成分であるか、あるいは香料またはフレーバー組成物である。本明細書中において使用される用語「香料およびフレーバー成分、あるいは香料またはフレーバー組成物」は、天然および合成由来双方の種々のフレーバーおよび香料材料を定義するものとみなされる。これらは、単一の化合物または混合物を含む。本発明による方法は、特に液体の形での疎水性の揮発成分または不安定成分のための運搬系を提供することができる。このような成分の特定の例は、最近の文献中で、たとえばFenaroli’s Handbook of Flavor Ingredients,1975,CRC Press;Synthetic Food Adjuncts、1974 by M.B.Jacobs,編者 Van Nostrand;またはPerfume and Flavor Chemicals by S.Arctander 1969,Montclair,N.J.(USA)で見出すことができる。これらの物質は、香料、フレーバーおよび/またはスプレー製品において、特に、香気および/またはフレーバーを付与するものであるか、あるいは伝統的に香気かまたはフレーバーを有する製品の味付けのために、あるいは製品の香りおよび/または味を改善するものであることは当業者に公知である。
【0029】
天然の抽出物は、さらに本発明の系中にカプセル化されてもよく;これらはたとえばシトラス抽出物、たとえばレモン、オレンジ、ライム、グレープフルーツまたはマンダリンオイル、あるいはコーヒー、紅茶、ミント、ココア、バニラまたはハーブ等のエッセンシャルオルを含む。
【0030】
疎水化成分または組成物の割合は、使用されるタンパク質の質量に対して35〜90質量%である。
【0031】
さらに本発明による方法は、香料成分またはフレーバー成分よりも他の芯物質のカプセル化のために適している。たとえば、製薬学的または化粧品成分のための運搬系の製造に適している。
【0032】
本発明の第2の工程において、工程a)で得られたエマルションまたは分散液は、水で希釈するか、および/またはpH調整することによって、コアセルベーションを達成する。最初の2個の工程は、使用されたコロイド材料のゲル化点を上廻る温度で実施すべきである。
【0033】
さらに形成されたコアセルベートは、タンパク質のゲル化点かまたはそれを下廻る温度に冷却され、マイクロカプセルの壁膜形成に導く。典型的に温度は、ゼラチンの起源に依存して5〜15℃である。冷却速度は通常は0.25゜/分〜1゜/分との間である。その後に、硬化剤を構成する植物抽出物を15〜30℃の温度で添加し、かつpHを好ましくは3.5〜7の範囲にし、最終的に穏やかな撹拌を少なくとも48時間に亘って提供する。このような植物抽出成分は、タンパク質の壁と反応して水中で不溶にさせる。
【0034】
他の方法の特徴を以下の実施例に示す。前記に示したコアセルベーションの変法は、本発明の範囲内で検討されてもよい。したがって、本発明の方法の基本的工程に関する記載は、本発明を制限するものとして解釈されることはなく、前記の硬化剤を使用するかぎりにおいて、本発明の特徴を変更することない、方法を実施するための二者択一的または特定の方法は、当業者には十分に認識可能である。たとえば、コアセルベートの噴霧乾燥の場合による工程は、乾燥および易流動性粉末を得るために使用することができる。
【0035】
前記方法によって得ることが可能な運搬系は、さらに本発明の特徴である。水溶性を変更するためのタンパク質の架橋は、カプセル化において使用されるタンパク質中で重要である。本発明によって得られる生成物は、新規の架橋剤に依存して、以下に比較例として示したように、グルタルアルデヒドで架橋した古典的なコアセルベートと比較した場合の、有利な放出特性を示す。
【0036】
本発明による方法によって製造されたマイクロカプセルは、多くの種の適用において、フレーバーおよびフレグランスの分野で使用することができる。特に、これらは、ベーキング適用、タバコ、フライングおよびカニング(熱処理)のフレーバリングのために使用されることができる。他方では、香料分野において、これらは、種々の商品の付香において、これらは、種々の消費製品、たとえば家庭用洗剤、ウエットタオルおよびパーソナルケア製品の付香のために使用することができる。したがって、本発明によるマイクロカプセルと一緒に他のパヒューミングまたはフレーバリング助成分を含有する香料組成物またはフレーバー組成物は、さらに本発明の実施態様である。
【0037】
最終的に、本発明のもう一つの実施態様は、置換または非置換のフェノール化合物を含有する植物抽出物を、タンパク質ベースのコアセルベートに添加することによって、水中でタンパク質を不溶化させるための方法に関する。
【0038】
図の簡単な説明
図1は、カプセル化されていないオレンジオイルと、0.14%グルタルデヒド水溶液(50%濃度)と架橋されたオレンジオイルコアセルベートとの蒸気蒸留速度を示す。
【0039】
図2は、0.28%液くん(Charsol (R) Supreme; 出所 Red Arrow company LLC, Wisconsin, USA)と架橋されたコアセルベートの蒸気蒸留速度を示す。
【0040】
本発明を実施するための方法
本発明は、以下の実施例においてより詳細に例証され、その際、温度は摂氏℃であり、かつ略記は技術分野における通常の意味を有する。
【0041】
実施例
例1
オレンジピールオイル運搬系の製造
コールドプレスされたオレンジピールオイルを、以下の処方の本発明によるコアセルベーションによってカプセル装入した:
成分 乾燥%
275BloomTypeAゼラチン(8.25%溶液) 109 20.70
アラビアゴム(3.85%溶液) 156 29.63
オレンジピールオイル 60 11.40
脱イオン化水 200 37.99
液くん1) 1.47 0.28
合計 100.00
1)2種の試料を使用した:a)Charsol(R)Supreme(水ベース、15〜23mg/ml スモーク成分);b)Charoil(R)Hickory(大豆ベース、7.3〜8.1mg/ml スモーク化合物);出所:Red Arrow Company LLC、Wisconsin,米国
製造方法:
一方でゼラチン溶液および他方でアラビアゴムを、それぞれ水浴60℃中で加熱した。完全に溶解した時点で、溶液を50℃に冷却し、かつ磁気式撹拌機を用いて撹拌しながら一緒に混合した。オレンジピールオイルを添加し、かつ撹拌を約1分に亘って続けた。水で希釈したもの(45℃)を添加し、かつ撹拌を続けた。ビーカーの内容物を15℃に冷却し、かつ撹拌を続けた。冷却時間を通して、コアセルベーションの過程および粒子の被覆は顕微鏡により監視された。最終的に、遊離コアセルベーションタンパク質が観察されなくなった場合には、液くんを添加し、かつ混合物を48時間(最小限)に亘って撹拌しながら保持した。
【0042】
試料を40℃で24時間に亘って貯蔵し、その後に顕微鏡下で試験した。これらの試料を、90℃で15分に亘って加熱することによって壁付着性についての試験をおこない、かつ顕微鏡下で観察した。
【0043】
付加的な試料を、Charsol(R)Supreme(水ベース)によって、0.7%および0.14%のレベルで配合物中で製造した。これらの試料は同様に試験した。
【0044】
試験結果は第1表に示す。
【0045】
【表1】

【0046】
例2
実施例1によって製造された運搬系の蒸気蒸留−液くんとグルタルアルデヒドとの比較
蒸気蒸留を、0.28% Charsol(R)Supremeを含有する、実施例1にしたがって製造した試料上でおこない、その際、架橋速度および放出速度を試験した。同様の試験を、0.14%の水性グルタルデヒドで架橋されたコアセルベートを用いておこなった(50%濃度溶液)。
【0047】
それぞれの試料の蒸気蒸留速度を図1および図2で示した。0.28%水性液くん(Charcol(R)Supreme)で架橋されたコアセルベートからの放出速度は、有利には、0.14%水性グルタルデヒドで架橋された試料の三分の一にすぎず、この場合、これらは回帰曲線のそれぞれのスロープによって証明された。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】カプセル化されていないオレンジオイルと、0.14%グルタルデヒド水溶液(50%濃度)と架橋されたオレンジオイルコアセルベートとの蒸気蒸留速度を示す図。
【図2】0.28%液くんと架橋されたコアセルベートの蒸気蒸留速度を示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)疎水性の液体、疎水性の液体中に懸濁された固体、または固体を、少なくとも1個の高分子タンパク質の溶液中で乳化するか、あるいは分散させ;
b)工程a)で得られたエマルションまたは分散液を水で希釈するか、および/またはpHを調整することでコアセルベーションを達成し、
c)工程b)から形成されたコアセルベートを冷却して、マイクロカプセルの壁膜形成を誘導し;
d)15〜30℃の温度で、硬化剤をコアセルベートに添加することによって、形成された壁膜を架橋させ;かつ
e)少なくとも48時間に亘って混合物を撹拌することにより、架橋反応を停止させる、
ことを含む、疎水性芯物質を含有するマイクロカプセルの製造方法において、工程d)で使用される硬化剤が、置換または非置換のフェノール化合物を含有する少なくとも1種の植物抽出物を含有することを特徴とする、疎水性芯物質を含有するマイクロカプセルの製造方法。
【請求項2】
硬化剤が、タンパク質の乾燥質量に対して0.5〜2.5質量%を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
硬化剤が、ボタニカルエキストラクト、ハーバルエキストラクトおよびウッドエキストラクトから成る群から選択された、少なくとも1種の植物抽出物を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
硬化剤が、濃縮されたティーエキストラクトを含有する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
硬化剤が、木酢液を含有する、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
疎水性芯物質が、香料成分またはフレーバー成分、あるいは香料組成物またはフレーバー組成物である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
タンパク質がさらにアニオンポリマーを含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
アニオンポリマーが、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、アガー、カラゲナン、カルボキシメチルセルロース、ナトリウムポリアクリレートまたはポリ燐酸から成る群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
タンパク質がゼラチンから成る、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法によって得ることが可能なマイクロカプセル。
【請求項11】
疎水性材料の芯を少なくとも部分的に包囲する、高分子タンパク質のゲル化された壁を含むマイクロカプセルにおいて、ゲル化された壁が、置換または非置換のフェノール化合物を含有する少なくとも1種の植物抽出物を含有する硬化剤によって架橋されている、マイクロカプセル。
【請求項12】
タンパク質がゼラチンまたはアルブミンであり、かつ植物抽出物がボタニカルエキストラクト、ハーバルエキストラクトおよびウッドエキストラクトから成る群から選択される、請求項11に記載のマイクロカプセル。
【請求項13】
置換または非置換のフェノール化合物を含有する少なくとも1種の植物抽出物を、タンパク質ベースのコアセルベートに添加することで混合物を形成し、その際、抽出物は、コアセルベートのタンパク質の少なくとも一部分を硬化させ、それを不溶化させるのに十分な量で存在する、水中でタンパク質を不溶化するための方法。
【請求項14】
請求項10に記載のマイクロカプセルを組成物に添加することを含む、香料またはフレーバリング組成物の官能的性質を付与、改善または変更するための方法。
【請求項15】
請求項10に記載のマイクロカプセルと一緒に、香料において常用の香料補助成分、溶剤またはアジュバントを一緒に含有する、香料組成物または香料付与製品。
【請求項16】
家庭用洗剤、ウエットタオルまたはパーソナルケア製品の形での、請求項15に記載の香料付与製品。
【請求項17】
請求項10に記載のマイクロカプセルと一緒に、フレーバー工業において常用のフレーバー補助成分またはアジュバントを含有する、フレーバー組成物またはフレーバー製品。
【請求項18】
ベイクド製品、タバコ、フライングまたは缶詰の形での、請求項17に記載のフレーバー製品。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−511322(P2006−511322A)
【公表日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−528763(P2004−528763)
【出願日】平成15年8月12日(2003.8.12)
【国際出願番号】PCT/IB2003/003612
【国際公開番号】WO2004/016345
【国際公開日】平成16年2月26日(2004.2.26)
【出願人】(390009287)フイルメニツヒ ソシエテ アノニム (146)
【氏名又は名称原語表記】FIRMENICH SA
【Fターム(参考)】