説明

フレーバー及びフレグランス組成物

【課題】 従来技術の難点を解消し、多様化する賦香製品の要望を満足し得る、嗜好性が高く優れたフレーバー及びフレグランス組成物を提供する。
【解決手段】 本発明のフレーバー及びフレグランス組成物は、(R)−2−メチルブタンチオ酸S−アルキルを有効成分として含有することを特徴とし、強く新鮮なパッションフルーツを想起させる香味及び香気を有するものであり、従って、飲食品や香粧品の他、食品材料、食品添加物、保険衛生材料等の広い範囲に用いることができるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(R)−2−メチルブタンチオ酸S−アルキルを有効成分として含有することを特徴とするフレーバー及びフレグランス組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、飲食品類や香粧品類等にフレーバー成分及びフレグランス成分として使用させている化合物の多くはラセミ体であり、例えば2−メチルブタンチオ酸S−アルキルは、天然物中、特に果実やビール中にラセミ体として存在することが知られている(非特許文献1〜13)。そして、これらラセミ体の2−メチルブタンチオ酸S−アルキルのうち、特に2−メチルブタンチオ酸S−メチルが、食品の発酵臭や果実の完熟感を与える等の目的で、従来より用いられている。
【0003】
しかし、これらラセミ体の2−メチルブタンチオ酸S−アルキルは、優れた発酵臭や果実の完熟感を与えるという点では一応満足されるが、未だ十分であるとはいえない。
【0004】
一方、チーズの香気成分の分析に関連して、(S)−2−メチルブタンチオ酸S−メチル及びラセミ体の2−メチルブタンチオ酸S−メチルをガスクロマトグラフィーによって分析すると共に、それらの香気について報告がなされている(非特許文献14)。又、ホップの香気成分の分析では、ラセミ体の2−メチルブタンチオ酸S−メチルの香気について報告がなされている(非特許文献8)。
【0005】
これらの文献によると、ラセミ体の2−メチルブタンチオ酸S−メチルの香気は、wild strawberry(非特許文献14)、或いは、Cooked vegetable, Sulphury, Soapy/fatty(非特許文献8)であり、(S)−2−メチルブタンチオ酸S−メチルの香気は、rubbery(非特許文献14)であると記載されている。
【0006】
しかしながら、これらの報告のいずれにも、例えば(R)−2−メチルブタンチオ酸S−メチルのような(R)−2−メチルブタンチオ酸S−アルキルの香気については、言及するところがない。
【0007】
【非特許文献1】Food Chemistry (2000), 69(3), 319-330
【非特許文献2】Journal of the Institute of Brewing (1983), 89(2), 87-91
【非特許文献3】Proceedings of the Congress-European Brewery Convention (1981), 18th, 161-8
【非特許文献4】Proceedings of the Congress-European Brewery Convention (1979), 17th, 79-89
【非特許文献5】Proceedings of the Congress-European Brewery Convention (1981), 17th, 91-104
【非特許文献6】Technical Quarterly - Master Brewers Association of the Americas (1981), 18(1), 26-30
【非特許文献7】Organic Magnetic Resonance (1979), 12(10), 557-60
【非特許文献8】Proceedings of the Analytical Division of the Chemical Society (1976), 13(7), 215-17
【非特許文献9】Journal of Organic Chemistry (1973), 38(24), 4239-43
【非特許文献10】Flavour and Fragrance Journal (1996), 11(5), 295-303
【非特許文献11】Tetrahedron Letters (1971), (30), 2837-8
【非特許文献12】Development in Food Science (1988), 18(Flavors Fragrances), 573-85
【非特許文献13】第32回香料・テルペン及び精油化学に関する討論会要旨集、31〜33頁、(昭和63年10月24日)
【非特許文献14】Lebensmittel-Wissenschaft und - Technologie (1979), 12(5), 258-61
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述した従来技術を背景としてなされたもので、多様化する賦香製品の要望を満足し得る、嗜好性が高い優れたフレーバー及びフレグランス組成物を提供することを目的としてなされた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の(1)乃至(13)により上記課題を解決しようとするものである。
【0010】
(1)(R)−2−メチルブタンチオ酸S−アルキルを有効成分として含有することを特徴とするフレーバー及びフレグランス組成物。
【0011】
(2)(R)−2−メチルブタンチオ酸S−アルキルの光学純度が50%e.e.以上である(1)に記載のフレーバー及びフレグランス組成物。
【0012】
(3)フレーバー組成物である(1)又は(2)に記載のフレーバー及びフレグランス組成物。
【0013】
(4)(R)−2−メチルブタンチオ酸S−アルキルを、10−6〜10ppbの濃度で含有することを特徴とするフレーバー組成物。
【0014】
(5)(4)に記載のフレーバー組成物によってフレーバー付けされた製品。
【0015】
(6)フレーバー付けされた製品が、飲食品類、口腔用組成物及び医薬品類から選ばれる1種である(5)に記載のフレーバー付けされた製品。
【0016】
(7)(R)−2−メチルブタンチオ酸S−アルキルを、10−9〜10ppbの濃度で添加してなること特徴とするフレーバー付けされた製品。
【0017】
(8)フレグランス組成物である(1)又は(2)に記載のフレーバー及びフレグランス組成物。
【0018】
(9)(R)−2−メチルブタンチオ酸S−アルキルを、10−6〜10ppbの濃度で含有することを特徴とするフレグランス組成物。
【0019】
(10)(9)に記載のフレグランス組成物によってフレグランス付けされた製品。
【0020】
(11)フレグランス付けされた製品が、フレグランス製品、基礎化粧品、仕上げ化粧品、頭髪化粧品、日焼け化粧品、薬用化粧品、ヘアケア製品、石鹸、身体洗浄剤、浴用剤、洗剤、柔軟仕上げ剤、洗浄剤、台所用洗剤、漂白剤、エアゾール剤、消臭・芳香剤、忌避剤及び雑貨から選ばれる1種である(10)に記載のフレグランス付けされた製品。
【0021】
(12)(R)−2−メチルブタンチオ酸S−アルキルを、10−9〜10ppbの濃度で添加してなること特徴とするフレグランス付けされた製品。
【0022】
(13)(R)−2−メチルブタンチオ酸S−アルキルを添加することを特徴とする香味及び香気を増強、改善又は変調する方法。
【0023】
即ち、上記のような実情において、本発明の発明者らが鋭意研究を行った結果、市場で汎用されているラセミ体の2−メチルブタンチオ酸S−アルキルではなく、(R)−2−メチルブタンチオ酸S−アルキルを有効成分として含有することを特徴とするフレーバー及びフレグランス組成物が、強く新鮮なパッションフルーツを想起させる香味及び香気を有し、他に使用するフレーバー及びフレグランス成分との調和性に優れていること、及び、これまで知られている天然或いは加工飲食品由来の類似化合物では不充分であった、きれいでみずみずしい嗜好性の高い香味及び香気を付与することを見出し、更に研究を続行して本発明を完成させたのである。
【発明の効果】
【0024】
(R)−2−メチルブタンチオ酸S−アルキルを有効成分として含有する本発明のフレーバー及びフレグランス組成物は、強く新鮮なパッションフルーツを想起させる香味及び香気を有すると共に、他に使用するフレーバー及びフレグランス成分との調和性に優れ、これまで知られている天然或いは加工飲食品由来の類似化合物では不充分であった、きれいでみずみずしい嗜好性の高い香味及び香気を付与するものであり、従って、本発明のフレーバー及びフレグランス組成物は、上記本発明のフレーバー付けされた製品及びフレグランス付けされた製品の他、食品材料、食品添加物、保険衛生材料等の広い範囲に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に本発明について詳細に説明する。
【0026】
本発明のフレーバー及びフレグランス組成物では、(R)−2−メチルブタンチオ酸S−アルキルが必須成分として用いられる。この(R)−2−メチルブタンチオ酸S−アルキルとしては、具体的には例えば、(R)−2−メチルブタンチオ酸のS−メチルエステル、S−エチルエステル、S−n−プロピルエステル、S−イソプロピルエステル、S−ブチルエステル、S−2−メチルプロピルエステル、S−ペンチルエステル、S−2−メチルブチルエステル、S−3−メチルブチルエステル、S−ヘキシルエステル、S−cis−3−ヘキセニルエステル、S−ヘプチルエステル、S−オクチルエステル等を挙げることができる。
【0027】
上記(R)−2−メチルブタンチオ酸S−アルキルは、その1種類を必須成分として用いても、2種類以上を用いてもよく、これらの化合物の中で、本発明のフレーバー及びフレグランス組成物の必須成分として好ましい化合物は、(R)−2−メチルブタンチオ酸S−メチルである。
【0028】
本発明で用いられる(R)−2−メチルブタンチオ酸S−アルキルは、天然物から抽出して得たものを利用することもできるし、又、ラセミ体を光学分割して得たものを利用することもできるし、更に、化学的合成方法により得たものを利用することもできるが、(R)−2−メチルブタンチオ酸S−アルキルを多量に用いる場合は、化学的合成方法により得たものを選択することが好ましい。
【0029】
(R)−2−メチルブタンチオ酸S−アルキルの化学的合成方法としては、原料である(R)−2−メチルブタン酸を酸ハライドとした後、アルキルチオールと反応させる方法を例示することができる。
【0030】
又、(R)−2−メチルブタン酸の化学的合成法としては、特開昭63−239245号公報に記載の方法、即ち、市販品を容易に入手することができるチグリン酸((E)−2−メチル−2−ブテン酸)を原料とし、これを特定の絶対配置を有するルテニウム−光学活性ホスフィン錯体を触媒として不斉水素化する方法を例示することができる。
【0031】
(R)−2−メチルブタン酸の上記化学的合成法を更に詳しく説明すると、チグリン酸をメタノール、エタノールのような溶媒に溶解し、不活性ガスで置換したオートクレーブに仕込み、これにルテニウム−光学活性ホスフィン錯体を、チグリン酸に対して1/100〜1/1000倍モル加えて、水素圧4〜125kg/cm、反応温度5〜50℃で、1〜100時間攪拌して水素化を行うのである。
【0032】
又、水素源として、水素ガスを用いない特開平3−157346号公報記載の方法を用いることもできるが、この方法によれば、水素供与体として第一級又は第二級アルコールを大過剰に用いることになる。反応後、溶媒を留去して残留物を減圧下で蒸留すれば、目的とする(R)−2−メチルブタン酸を得ることができる。
【0033】
尚、用いることができるルテニウム−光学活性ホスフィン錯体としては、例えば次のものが挙げられる。
Rux y Clz 〔(+)−(R−BINAP)〕2 (S)p (1)
{式中、(+)−(R−BINAP)は、(−)−2,2′−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1′−ビナフチル又は(+)−2,2′−ビス(ジ−p−メチルフェニルホスフィノ)−1,1′−ビナフチル等を示し、Sは第三級アミンを示す。yは0又は1を示し、yが0のときxは2、Zは4、pは1を示し、yが1のときxは1、Zは1、pは0を示す。}
【0034】
{Ru〔(+)−(X−BINAP)〕q }(OCOR1 )(OCOR2 ) (2)
{式中、(+)−(X−BINAP)は、二つのナフチル基の5位及び5′位にアミノ基、アセチルアミノ基又はスルホン基が置換してもよく、又、四つのフェニル基のp位に低級アルキル基が置換してもよい(+)−2,2′−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1′−ビナフチルを示す。R1 及びR2 は、低級アルキル基、ハロゲノ低級アルキル基、低級アルキル基が置換してもよいフェニル基、α−アミノアルキル基又はα−アミノフェニルアルキル基を示すか、或いは、R1 とR2 が一緒になってアルキレン基を形成してもよい。qは1又は2を示す。}
【0035】
{RuHl 〔(+)−(R−BINAP)〕v }Yw (3)
{式中、(+)−(R−BINAP)は前記と同じ内容を示す。YはClO4 、BF4 又はPF6 を示す。lは0又は1を示し、lが0のときvは1、wは2を示し、lが1のときvは2、wは1を示す。}
【0036】
{Ru〔(+)−(BIPHEMP)〕}Y2 (4)
{式中、(+)−(BIPHEMP)は、(−)−2,2′−ジメチル−6,6′−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1′−ビフェニル、(−)−2,2′−ジメチル−6,6′−ビス(ジ−p−メチルフェニルホスフィノ)−1,1′−ビフェニル、又は、(−)−2,2′−ジメチル−6,6′−ビス(ジ−p−メトキシフェニルホスフィノ)−1,1′−ビフェニル等を示す。Yは前記と同じ内容を示す。)
【0037】
上述した(1)〜(3)のルテニウム−光学活性ホスフィン錯体は、いずれも特開昭63−239245号公報に記載の方法で得ることができる。又、(4)のルテニウム−光学活性ホスフィン錯体は、特開昭63−145292号公報に記載の錯体である。
【0038】
本発明のフレーバー及びフレグランス組成物では、上記のようにして得られる(R)−2−メチルブタンチオ酸S−アルキルは、その光学純度が50%e.e.以上であることが好ましい。
【0039】
前記特開昭63−239245号公報に記載の方法に準じて合成された(R)−2−メチルブタンチオ酸S−メチルは、光学純度88%e.e.程度の高い純度で得られたが、(R)体の効果が、どの程度の光学純度のもので顕れるかを試験したところ、本発明においては、ほぼ50%e.e.程度の光学純度で(R)体の効果が顕れはじめることが判った。そして、上記の結果に基づいて、その他のチオエステル類についても、光学純度50%e.e.以上のものであれば本発明の効果が確実に期待できることが予想されるに至った。従って、これらの光学純度以上のものであれば、精製することなくそのまま本発明のフレーバー及びフレグランス組成物の必須成分として用いることにより、各種香粧品類や飲食物類の香気及び香味の効果を確実に期待できることが判った。
【0040】
以下の実施例に示すように、例えば(R)−2−メチルブタンチオ酸S−アルキルを有効成分として含有する本発明のフレーバー及びフレグランス組成物は、強く新鮮なパッションフルーツを想起させる香味及び香気を示すものであり、有効成分である(R)−2−メチルブタンチオ酸S−アルキルは、少量においても効果を発揮するため、フレーバー及びフレグランス組成物のフレーバー付け及びフレグランス付けを必要とする各種香粧品類や飲食品類の基材に対してフレーバー付け及びフレグランス付けをすることができるが、ラセミの2−メチルブタンチオ酸S−メチルは、自然な香りではあるが、強さに欠け、他所の雑感を有しているものであり、効果が充分とは言えない。
【0041】
更に、例えば(R)−2−メチルブタンチオ酸S−アルキルを有効成分として含有する本発明のフレーバー及びフレグランス組成物は、上記の通り嗜好性の高く優れた、強く新鮮なパッションフルーツを想起させる香味及び香気特性を有するばかりか、顕著な香味・香気持続特性及び安定性を有し,これを配合することにより、嗜好性の高いフレーバー及びフレグランス組成物を提供することができる。
【0042】
本発明のフレーバー及びフレグランス組成物では、例えば(R)−2−メチルブタンチオ酸S−アルキル等の有効成分に加え、通常使用されているフレーバー成分及びフレグランス成分を更に添加することもできる。添加使用することができる他のフレーバー成分及びフレグランス成分としては、各種の合成香料、天然精油、合成精油、柑橘油、動物性香料などが挙げられ、特にフローラル系及びフルーツ系のフレーバー成分及びフレグランス成分が好ましいが、例えば、Arctander S.,“Perfume andFlavor Chemicals”,published by the author,Montclair,N.J.(U.S.A.)1969年に記載されているような、広い範囲のフレーバー成分及びフレグランス成分を使用することができる。代表的なものとしては、α−ピネン、リモネン、cis−3−ヘキセノール、フェニルエチルアルコール、スチラリルアセテート、オイゲノール、ローズオキサイド、リナロール、ベンズアルデヒド、ムスコン、テサロン(高砂香料工業株式会社)、酪酸エチル、2−メチルブタン酸などを挙げることができる。
【0043】
具体的には、上記(R)−2−メチルブタンチオ酸S−アルキルを例えば、ベルガモット油、ガルバナム油、レモン油、ゼラニウム油、ラベンダー油、マンダリン油等の天然精油中に添加すると、天然精油が本来有する香味・香気に、マイルドでこくがあり、新鮮な、嗜好性の高い、且つ、拡散性、保留性を高め持続的性のある新規なフレーバー及びフレグランス組成物を調製することができる。
【0044】
更に、例えば各種合成香料、天然香料、天然精油、柑橘油、茶エキス、動物性香料等から調製される例えば、ストロベリー、レモン、オレンジ、グレープフルーツ、アップル、パイナップル、バナナ、メロン、緑茶、ウーロン茶、紅茶等のようなフレーバー及びフレグランス組成物に添加すると、マイルドでこくのある天然らしさがあるフルーティ様、トロピカル様香気を付与し、更に、新鮮な、嗜好性の高い香気を付与し、且つ、拡散性、保留性を高め持続性の強調されたフレーバー及びフレグランス組成物を調製することができる。
【0045】
本発明のフレーバー及びフレグランス組成物に対する、例えば(R)−2−メチルブタンチオ酸S−アルキル等の有効成分の配合量は、そのフレーバー及びフレグランス組成物の種類や目的により異なるが、一般的には、フレーバー組成物においては、例えば、組成物中において10−8〜10ppb、特に10−7〜10ppb、更に好ましくは10−6〜10ppbとなる配合量が、又、フレグランス組成物においては、例えば、組成物中において10−7〜10ppb、特に10−8〜10ppb、更に好ましくは10−5〜10ppbとなる配合量が好ましい。
【0046】
又、本発明のフレーバー及びフレグランス組成物には、通常使用される保留剤の1種又は2種以上を配合しても良く、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ヘキシレングリコール、ベンジルベンゾエート、トリエチルシトレート、ジエチルフタレート、ハーコリン、中鎖脂肪酸トリグリセライド、中鎖脂肪酸ジグリセライド等と併用することも可能である。
【0047】
上記(R)−2−メチルブタンチオ酸S−アルキルを単独で或いは該化合物と上記他の成分とを含むフレーバー及びフレグランス組成物を、例えば、飲食品類、口腔用組成物、医薬品類;フレグランス製品、基礎化粧品、仕上げ化粧品、頭髪化粧品、日焼け化粧品、薬用化粧品、ヘアケア製品、石鹸、身体洗浄剤、浴用剤、洗剤、柔軟仕上げ剤、洗浄剤、台所用洗剤、漂白剤、エアゾール剤、消臭・芳香剤、雑貨に、そのユニークな香味・香気を付与できる適当量を配合すれば、フレーバー付けされた製品及びフレグランス付けされた製品を提供することができる。
【0048】
フレーバー付けされた製品としては、例えば、果汁飲料類、果実酒類、乳飲料類、炭酸飲料、清涼飲料、ドリンク剤類の如き飲料類;アイスクリーム類、シャーベット類、アイスキャンディー類の如き冷菓;和・洋菓子類、ジャム類、キャンディー類、ゼリー類、ガム類、パン類、コーヒー類、ココア類、紅茶類、ウーロン茶類、緑茶類の如き嗜好飲料類;和風スープ、洋風スープ、中華スープの如きスープ類、風味調味料、各種インスタント飲料乃至食品類、各種スナック食品類など;口腔用組成物としては、例えば、歯磨き、口腔洗浄料、マウスウオッシュ、トローチ、チューインガム類など;医薬品類としては、ハップ剤、軟膏剤の如き皮膚外用剤、内服剤などの種々の形態を挙げることができる。
【0049】
又、フレグランス付けされた製品としては、次のものを例示することができる
【0050】
フレグランス製品としては、例えば、香水、オードパルファム、オードトワレ、オーデコロン等;基礎化粧品としては、洗顔クリーム、バニシングクリーム、クレンジングクリーム、コールドクリーム、マッサージクリーム、乳液、化粧水、美容液、パック、メイク落とし等;仕上げ化粧品としては、ファンデーション、粉おしろい、固形おしろい、タルカムパウダー、口紅、リップクリーム、頬紅、アイライナー、マスカラ、アイシャドウ、眉墨、アイパック、ネイルエナメル、エナメルリムバー等;頭髪化粧品としては、ポマード、ブリランチン、セットローション、ヘアーステック、ヘアーソリッド、ヘアーオイル、ヘアートリートメント、ヘアークリーム、ヘアートニック、ヘアーリキッド、ヘアースプレー、バンドリン、養毛剤、染毛剤等を挙げることができる。
【0051】
日焼け化粧品としては、例えば、サンタン製品、サンスクリーン製品等;薬用化粧品としては、制汗剤、アフターシェービングローション及びジェル、パーマメントウェーブ剤、薬用石鹸、薬用シャンプー、薬用皮膚化粧料等;ヘアケア製品としては、シャンプー、リンス、リンスインシャンプー、コンディショナー、トリートメント、ヘアパック等;石鹸としては、化粧石鹸、浴用石鹸、香水石鹸、透明石鹸、合成石鹸等;身体洗浄剤としては、ボディソープ、ボディシャンプー、ハンドソープ等;浴用剤としては、入浴剤(バスソルト、バスタブレット、バスリキッド等)、フォームバス(バブルバス等)、バスオイル(バスパフューム、バスカプセル等)、ミルクバス、バスジェリー、バスキューブ等を挙げることができる。
【0052】
洗剤としては、例えば、衣料用重質洗剤、衣料用軽質洗剤、液体洗剤、洗濯石鹸、コンパクト洗剤、粉石鹸等;柔軟仕上げ剤としては、ソフナー、ファーニチアケアー等;洗浄剤としては、クレンザー、ハウスクリーナー、トイレ洗浄剤、浴室用洗浄剤、ガラスクリーナー、カビ取り剤、排水管用洗浄剤等;台所用洗剤としては、台所用石鹸、台所用合成石鹸、食器用洗剤等;漂白剤としては、酸化型漂白剤(塩素系漂白剤、酸素系漂白剤等)、還元型漂白剤(硫黄系漂白剤等)、光学的漂白剤等;エアゾール剤としては、スプレータイプ、パウダースプレー等;消臭・芳香剤としては、固形状タイプ、ゲル状タイプ、リキッドタイプ等;雑貨としては、ティッシュペーパー、トイレットペーパー等の種々の形態を挙げることができる。
【0053】
(R)−2−メチルブタンチオ酸S−アルキルを有効成分として含有する本発明のフレーバー及びフレグランス組成物を、飲食品類、口腔用組成物、医薬品類など;又は、フレグランス製品、基礎化粧品、仕上げ化粧品、頭髪化粧品、日焼け化粧品、薬用化粧品、ヘアケア製品、石鹸、身体洗浄剤、浴用剤、洗剤、柔軟仕上げ剤、洗浄剤、台所用洗剤、漂白剤、エアゾール剤、消臭・芳香剤、雑貨等に使用する場合、このままの状態、或いは、これらを例えば、アルコール類、プロピレングリコール、グリセリンなどの多価アルコール類に溶解した液体状;アラビアガム、トラガントガムなどの天然ガム質類;グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、加工デンブンなどの乳化剤で乳化した乳化状;アラビアガム等の天然ガム質類、ゼラチン、デキストリンなどの賦形剤を用いて被膜させた粉末状;界面活性剤、例えば非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤などを用いて可溶化或いは分散化した可溶化状或いは分散化状;又はカプセル化剤で処理して得られるマイクロカプセルなど、その目的に応じて任意の形状を選択して用いることができる。
【0054】
更に、サイクロデキストリンなどの包接剤に包接して、上記フレーバー及びフレグランス組成物を安定化且つ徐放性にして用いることもでき、これらは、最終製品の形態、例えば液体状、固体状、粉末状、ゲル状、ミスト状、エアゾール状などに適したもので適宜に選択して用いられる。
【0055】
尚、フレーバー付けされた製品である飲食品類、口腔用組成物、医薬品類等への(R)−2−メチルブタンチオ酸S−メチルの添加量は、それぞれ場合によって期待される効果・作用に応じて任意に加減されるが、一般的には約10−9〜10ppb程度である。
【0056】
又、フレグランス付けされた製品であるフレグランス製品、基礎化粧品、仕上げ化粧品、頭髪化粧品、日焼け化粧品、薬用化粧品、ヘアケア製品、石鹸、身体洗浄剤、浴用剤、洗剤、柔軟仕上げ剤、洗浄剤、台所用洗剤、漂白剤、エアゾール剤、消臭・芳香剤、雑貨、等への(R)−2−メチルブタンチオ酸S−アルキルの添加量は、それぞれ場合によって期待される効果・作用に応じて任意に加減されるが、一般的には約10−9〜10ppb程度である。
【実施例】
【0057】
以下、本発明を実施例及び比較例を用いて具体的に説明するが、本発明は、これらにより何ら限定されるものではなく、又、本発明の範囲を逸脱しない範囲で変更してもよい。
【0058】
尚、実施例及び比較例中の匂いの表現は、印藤元一著、「香料の実際知識」(昭和50年3月25日)東洋経済新報社、3頁に記載されている表現を参考にした。
【0059】
本実施例中の分析には、次の分析機器を用いて行った。
旋光度;
機器:DIP−370(日本分光工業株式会社製)
プロトン核磁気共鳴スペクトル(H−NMR);
機器:AM−400型(400MHz)(ブルッカー社製)
内部標準物質:テトラメチルシラン
赤外吸収スペクトル(IR);
機器:Nicolet Avatar360 FT−IR(ニコレジャパン株式会社製)
質量スペクトル(MS);
機器:M−80B質量分析計(イオン化電圧:20eV)(株式会社日立製作所製)
ガスクロマトグラフ
機器:HP−5890(ヒューレットパッカード社製)
カラム:PEG BC−WAX(0.25mm×50m)(ジーエルサイエンス株式会社製)
【0060】
合成例1
(R)−2−メチルブタン酸の製造
あらかじめ窒素置換した100ml容量のステンレス製オートクレーブに、チグリン酸0.2g(2mmol)とメタノール20mlを入れ、続いてRu〔(+)−BINAP〕(BF4 2 ((+)−BINAPは、(+)−2,2′−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1′−ビナフチルを示す。)6.0mg(0.007mmol)を入れ、水素圧4kg/cm2 、反応温度20℃で、12時間攪拌して水素化を行い、溶媒を留去して目的とする(R)−2−メチルブタン酸0.2g(収率100%)を得た。旋光度は、[α]D 25=−16.7°(neat)であり、又、ガスクロマトグラフィーによる純度は100%であった。これを、(S)−1−フェニルエチルアミンと反応させ、アミドを合成し、ガスクロマトグラフィーで分析した結果、(R)−2−メチル酪酸の光学純度は、88%e.e.であった。
【0061】
合成例2
(R)−2−メチルブタン酸クロライドの製造
合成例1で得た(R)−2−メチルブタン酸{[α]D 25=−16.7°(neat)のもの} 35.8g(350ミリモル)に塩化チオニル50.0g(420ミリモル)を、50℃で3時間かけ滴下した後、80℃で1時間反応させた。過剰の塩化チオニルを減圧下に留去させ、残留物を減圧蒸留し、(R)−2−メチルブタン酸クロライド40.4g(収率96%)を得た。
沸点:35℃/0.1torr
H−NMR(CDCl):0.98(t,J=7.5Hz,3H),1.29(d,J=6.9Hz,3H),1.58〜1.66(m,1H),1.79〜1.87(m,1H),2.78〜2.85(m,1H)
13C−NMR:11.46(CH),16.88(CH),26.91(CH),53.29(CH),178.05(CO)
【0062】
合成例3
(R)−2−メチルブタンチオ酸S−メチルの製造
0℃に冷却した15%メチルメルカプタン水溶液75g及びジエチルエーテル100mLの混液に、攪拌下、合成例2で得た(R)−2−メチルブタン酸クロライド16.1g(120ミリモル)を1時間かけ、滴下した。有機層を分液し、食塩水にて洗浄後、ジエチルエーテルを留去し、残留物を減圧濃縮して、(R)−2−メチルブタンチオ酸S−メチル15.1g(収率86%)を得た。これをガスクロマトグラフィーで分析した結果、化学純度は100%であり、光学純度は88%e.e.であった。
沸点32℃/5torr.
[α]20=−36.7°(neat)
H−NMR(CDCl):0.92(t,J=7.5Hz,3H),1.29(d,J=6.9Hz,3H),1.43〜1.52(m,1H),1.70〜1.78(m,1H),2.28(s,3H),2.54〜2.60(m,1H)
13C−NMR:11.29(CH),11.58(CH),17.21(CH),27.17(CH),50.04(CH),204.22(CO)
【0063】
実施例1 香味・香気質の評価
合成例で得た(R)−2−メチルブタンチオ酸S−メチルに関して、瓶口及び濾紙につけたものを使用して、経験5年以上を有する調香師5名により官能評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0064】
【表1】

【0065】
以上の様に、本発明のフレーバー及びフレグランス組成物で使用する(R)−2−メチルブタンチオ酸S−メチルは、強く新鮮なパッションフルーツを想起させ、きれいで瑞々しい嗜好性の高い特有な強い香味・香気を有していた、一方、ラセミ体の−2−メチルブタンチオ酸S−メチルは、自然な香りではあるが、強さに欠け、多少の雑感を有していたとパネラー全員が指摘した。尚、パネラーとしては、20代から30代の専門のフレバリスト(Flavorist、食品香料を創る者)を、男性8名、女性2名の合計10名を選定した。以下の実施例3と比較例1との比較その他における「パネラー」は同意である。
【0066】
実施例2
特開昭63−239245号公報に記載の方法に準じて合成された(R)−2−メチルブタンチオ酸S−メチルは、光学純度88%e.e.程度の高い純度で得られたが、(R)体の効果が、どの程度の光学純度のもので確実に顕れるかを試験した。ラセミ体を任意の割合で混合することによって、任意の光学純度の(R)−2−メチルブタンチオ酸S−メチルを調製し、(R)体の効果がはっきりと確実に識別できる光学純度を、2:2点識別法(A及びBの2種の試料を識別するのに、最初に試料A及びBを明試料としてパネラーに提示して、その特徴を記憶させたのち、AとBを盲試料として提示し、Aとは異なる方の試料を指摘させ、数回の繰り返しで得られた正解数から2種の試料間に差があるかどうか判定する方法;佐藤信「官能検査入門」54頁(1978年10月16日、株式会社日科技連出版社発行))を応用して測定した。
【0067】
その結果、(R)−2−メチルブタンチオ酸S−メチルを用いる場合は、光学純度50%e.e.以上のものであれば、精製することなくそのまま用いて、フレーバー及びフレグランス組成物の香気及び香味の改善効果を確実に期待できることが判った。
【0068】
実施例3、比較例1
下記の表2に示すグレープフルーツフレーバー組成物に、合成例で得られた(R)−2−メチルブタンチオ酸S−メチルを加えて、当該有効成分を0.01ppbの濃度で含有する実施例3のフレーバー組成物を調整した。又、ラセミ体の2−メチルブタンチオ酸S−メチルを加えたものを比較例1とした。各フレーバー組成物について経験5年以上を有するフレーバリスト5名により官能評価を行った。
【0069】
【表2】

【0070】
その結果、添加した実施例3には、比較例1には無いナチュラルな深みのあるみずみずしさが付与されていたとパネラー全員が指摘した。
【0071】
実施例4 シャンプー用フレグランス組成物の製造
処方例1
成分
サリチル酸ベンジル 55
L−シトロネロール 10
アセト酢酸エチル 5
ガラクソリド 50BB(IFF社製) 390
ゲラニオール 10
ヘディオン(フルメニッヒ社製) 120
ヘリオブーケ(高砂香料工業株式会社製) 8
シス−3−ヘキセン−1−オール 10%DPG**溶液 10
酢酸 シス−3−ヘキセニル 10%DPG溶液 5
ヘキシルシンナミックアルデヒド 50
β―ヨノン 17
コバノール(高砂香料工業株式会社製) 40
レモンオイル 40
リナロール 45
酢酸リナリル 45
ネロリドール 55
フェニルエチルアルコール 30
ケイ皮酸フェニルエチル 5
サンタレックスT(高砂香料工業株式会社製) 35
トリプラール 10%DPG溶液(IFF社製) 5
マルトール 1%DPG溶液 15
(R)−2−メチルブタンチオ酸S−メチル10ppmDPG溶液 5
計 1000
* 安息酸ベンジル
** ジプロピレングリコール
【0072】
比較例2
実施例4での処方において、(R)−2−メチルブタンチオ酸S−メチル10ppmDPG溶液の代わりに、ラセミ体の(R)−2−メチルブタンチオ酸S−メチルを用いた以外は、実施例4と同じ処方によりシャンプー用フレグランス組成物を調製した。
【0073】
[応用例1]シャンプーの製造
実施例4及び比較例2で調製したシャンプー用フレグランス組成物を用い、下記成分を80℃にて均一になるまで加熱撹拌し、その後35℃まで冷却しシャンプーを調製した。
各シャンプーの香気について経験5年以上を有するパフューマー5名により官能評価を行った。
【0074】
[シャンプー組成物](質量%)
ラウリル硫酸ナトリウム 40.00
N−ヤシ油脂肪酸アシル−N−
カルボキシメトキシエチル−
N−カルボキシメチル
エチレンジアミン二ナトリウム 10.00
ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド(2) 2.00
ブチレングリコール 2.00
クエン酸 0.35
塩化ナトリウム 0.10
メチルパラベン 0.20
プロピルパラベン 0.10
エデト酸四ナトリウム 0.10
実施例4又は比較例2のフレグランス組成物 0.50
精製水 バランス
計 100.00
【0075】
[実施例4と比較例2との評価結果]
実施例4と比較例2とのシャンプーの香気を評価した結果、(R)−2−メチルブタンチオ酸S−メチルを含む実施例4の処方に基づくシャンプーの香気は、拡散性に優れ、フレッシュでナチュラル感を付与されていたとパネラー全員が指摘した。
【0076】
実施例5 ボディ−シャンプー用フレグランス組成物の製造
処方例2
成分
レモンオイル 100
ライムオイル 180
ゲラニルニトリル 10
アルデヒドC−8 10%DPG溶液 25
アルデヒドC−10 10%DPG溶液 35
デカン酸エチル 12
トリプラール(IFF社製) 3
イソシクロシトラール 10%DPG溶液(IFF社) 25
酢酸スチラリル 20
α―ターピネオール 30
リナロール 70
酢酸リナリル 50
ゲラニオール 60
酢酸ゲラニル 5
リリアール(ジボダン社製) 80
ヘキシルシンナミックアルデヒド 120
マイラックアルデヒド(IFF社製) 15
サリチル酸 シス−3−ヘキセニル 15
β―ヨノン 25
ヘリオトロピン 5
トナリッド(PFW社製) 30
ジプロピレングリコール バランス
(R)−2−メチルブタンチオ酸S−メチル10ppmDPG溶液 5
計 1000
【0077】
比較例3
実施例5での処方において、(R)−2−メチルブタンチオ酸S−メチル 10ppmDPG溶液の代わりに、ラセミ体の−2−メチルブタンチオ酸S−メチルを用いた以外は、実施例5と同じ処方によりボディーシャンプー用フレグランス組成物を調製した。
【0078】
[応用例2]ボディシャンンプーの製造
実施例5及び比較例3で調製したボディシャンプー用フレグランス組成物を用い、ボディシャンプーを調製した。
各ボディシャンプーの香気について経験5年以上を有するパフューマー5名により官能評価を行った。
【0079】
[ボディシャンプー組成物](質量%)
ジブチルヒドロキシトルエン 0.05
メチルパラベン 0.10
プロピルパラベン 0.10
エデト酸四ナトリウム 0.10
塩化カリウム 0.20
グリセリン 5.00
ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド(2) 3.00
ポリオキシエチレンラウリル
エーテル酢酸ナトリウム(3E.O.)(30%) 10.00
ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン液(34%) 25.00
ミリスチン酸カリウム(40%) 25.00
実施例4及び比較例3のフレグランス組成物 0.50
精製水 バランス
計 100.00
【0080】
[実施例5と比較例3との評価結果]
実施例5と比較例3とのボディシャンプーの香気を評価した結果、(R)−2−メチルブタンチオ酸S−メチルを含む実施例5の処方に基づくボディシャンプーの香気は、爽やかさがアップしたシトラス感を付与されていたとパネラー全員が指摘した。
【0081】
実施例6 ローズ様フレグランス組成物の製造
処方例3
成分
α―ピネン 8
アルデヒドC−16 1
グリコール酸アリルアミル 1
アンブレットリド(IFF社製) 8
ベルガモット 15
カルビトール 100
カルダモンオイル 3
L−シトロネロール 30
β−ダマスコン 2
ジメチルオクタノール 10%DPG溶液 4
ジプロピレングリコール 29
ダイナスコン 10%DPG溶液 5
酢酸エチル 10%DPG溶液 4
アセト酢酸エチル 15
ガルバナムオイル 10%DPG溶液 10
ヘディオン(フィルメニッヒ社製) 195
ヘリオブーケ(高砂香料工業株式会社製) 10
シス−3−ヘキセン−1−オール 2
シス−3−ヘキセン−1−オール 10%DPG溶液 3
β―ヨノン 10
ジャスミンアブソリュート 3
ライムオイル 10%DPG溶液 5
酢酸リナリル 40
8−メルカプトメントン 10%DPG溶液 8
ムスクT(高砂香料工業株式会社製) 200
ネロリドール 46
フェニルエチルアルコール 17
β―ピネン 117
ルボフィックス(フィルメニッヒ社製) 12
ローズアブソリュート 3
ローズオイル 10%DPG溶液 5
L−ローズオキサイド 10%DPG溶液 15
サンタレックスT(高砂香料工業株式会社製) 40
トリプラール(IFF社製) 14
ベルートン(フィルメニッヒ社製) 12
マルトール 5
(R)−2−メチルブタンチオ酸S−メチル10ppmDPG溶液 5
計 1000
【0082】
比較例4
実施例6での処方において、(R)−2−メチルブタンチオ酸S−メチル10ppmDPG溶液の代わりに、ラセミ体の2−メチルブタンチオ酸S−メチルを用いた以外は、実施例6と同じ処方によりローズ様フレグランス組成物を調製した。
【0083】
[応用例3]化粧クリームの製造
実施例6及び比較例4で調製したローズ様フレグランス組成物を用い、化粧クリームを調製した。
[化粧クリーム](質量%)
ステアリルアルコール 6.0
ステアリン酸 2.0
水添ラノリン 4.0
スクワラン 9.0
オクチルデカノール 10.0
グリセリン 6.0
ポリエチレングリコール 1500 4.0
ポリオキシエチレン(25)セチルエーテル 3.0
モノステアリン酸グルセリン 2.0
メチルパラベン 適量
エチルパラベン 適量
実施例6又は比較例4のフレグランス組成物 0.1
精製水 バランス
計 100.0
【0084】
[実施例6と比較例4との評価結果]
実施例6と比較例4との化粧クリームの香気を評価した結果、(R)−2−メチルブタンチオ酸S−メチルを含む実施例6の処方に基づく化粧クリームの香気は、非常に拡散性のあるナチュラル感を付与されていたとパネラー全員が指摘した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(R)−2−メチルブタンチオ酸S−アルキルを有効成分として含有することを特徴とするフレーバー及びフレグランス組成物。
【請求項2】
(R)−2−メチルブタンチオ酸S−アルキルの光学純度が50%e.e.以上である請求項1に記載のフレーバー及びフレグランス組成物。
【請求項3】
フレーバー組成物である請求項1又は2に記載のフレーバー及びフレグランス組成物。
【請求項4】
(R)−2−メチルブタンチオ酸S−アルキルを、10−6〜10ppbの濃度で含有することを特徴とするフレーバー組成物。
【請求項5】
請求項4に記載のフレーバー組成物によってフレーバー付けされた製品。
【請求項6】
フレーバー付けされた製品が、飲食品類、口腔用組成物及び医薬品類から選ばれる1種である請求項5に記載のフレーバー付けされた製品。
【請求項7】
(R)−2−メチルブタンチオ酸S−アルキルを、10−9〜10ppbの濃度で添加してなること特徴とするフレーバー付けされた製品。
【請求項8】
フレグランス組成物である請求項1又は2に記載のフレーバー及びフレグランス組成物。
【請求項9】
(R)−2−メチルブタンチオ酸S−アルキルを、10−6〜10ppbの濃度で含有することを特徴とするフレグランス組成物。
【請求項10】
請求項9に記載のフレグランス組成物によってフレグランス付けされた製品。
【請求項11】
フレグランス付けされた製品が、フレグランス製品、基礎化粧品、仕上げ化粧品、頭髪化粧品、日焼け化粧品、薬用化粧品、ヘアケア製品、石鹸、身体洗浄剤、浴用剤、洗剤、柔軟仕上げ剤、洗浄剤、台所用洗剤、漂白剤、エアゾール剤、消臭・芳香剤、忌避剤及び雑貨から選ばれる1種である請求項10に記載のフレグランス付けされた製品。
【請求項12】
(R)−2−メチルブタンチオ酸S−アルキルを、10−9〜10ppbの濃度で添加してなること特徴とするフレグランス付けされた製品。
【請求項13】
(R)−2−メチルブタンチオ酸S−アルキルを添加することを特徴とする香味及び香気を増強、改善又は変調する方法。

【公開番号】特開2007−77196(P2007−77196A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−263950(P2005−263950)
【出願日】平成17年9月12日(2005.9.12)
【出願人】(000169466)高砂香料工業株式会社 (194)
【Fターム(参考)】