説明

フレーバー及びフレグランス組成物

【課題】 従来技術の難点を解消し、従来にないナチュラル感が付与された新規なフレーバー及びフレグランス組成物及び改善された香気及び香味を有する製品を提供する。
【解決手段】本発明のフレーバー及びフレグランス組成物は、(R)−4−(2,6,6−トリメチル−2−シクロヘキセン−1−イル)−3−ブテン−2−オン及び(S)−4−(2,6,6−トリメチル−2−シクロヘキセン−1−イル)−3−ブテン−2−オンから選ばれる成分を有効成分として含有されていることを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学活性な4−(2,6,6−トリメチル−2−シクロヘキセン−1−イル)−3−ブテン−2−オンを有効成分として含有することを特徴とするフレーバー及びフレグランス組成物、及び上記の光学活性体を有効成分として含有する製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、香粧品類及び飲食品類等のフレーバー成分及びフレグランス成分として使用されている化合物の多くはラセミ体であり、例えば4−(2,6,6−トリメチル−2−シクロヘキセン−1−イル)−3−ブテン−2−オン(以下、「α−ヨノン」と記載する場合もある)のラセミ体は、スミレ様の香気を有し、フレーバー成分及びフレグランス成分として古くから使用されている。一方、光学活性である(R)−α−ヨノン及び(S)−α−ヨノンは、例えば、Black tea (Solvent extract)、Boronia megastigma Nees (absolute)、Raspberry fruit juice concentrate、Tobacco extractなどから見出され、(R)−α−ヨノンはスミレ様、果物様、ラズベリー様、花様の強い香気及び香味を有し、また、(S)−α−ヨノンは、木様、シダーウッド様、ラズベリー様、β−ヨノン様の香気及び香味を有していることが知られている(非特許文献1)。
【0003】
しかし、これらの報告はいずれも、化合物単体の香気及び香味を評価したにすぎないものとなっている。光学活性なα−ヨノンを香粧品類に実際に用いて香気を評価したものはこれまで一切報告された例がなく、更に光学活性なα−ヨノンを飲食品に実際に用いて香味及び匂い立ちを評価したものもこれまで一切報告された例がない。
【0004】
【非特許文献1】Lebensmittel-Untersuchung und-Forshung, (1991), 192:111〜115
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、多様化する香粧品類及び飲食品類の要望を満足し得る嗜好性が高い優れたフレーバー及びフレグランス組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような実情において、本発明者らは鋭意研究を行った結果、市場で汎用されているラセミ体の4−(2,6,6−トリメチル−2−シクロヘキセン−1−イル)−3−ブテン−2−オン(以下、「α−ヨノン」と記載する場合もある)とは異なり、天然由来からは多量にとることが極めて困難であった光学活性なα−ヨノンを有効成分として含有するフレーバー及びフレグランス組成物が、嗜好性の高い優れた香気及び香味を有し、ラセミ体では不充分であったナチュラル感を付与することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明は次の通りである。
【0008】
(1)(R)−4−(2,6,6−トリメチル−2−シクロヘキセン−1−イル)−3−ブテン−2−オン及び(S)−4−(2,6,6−トリメチル−2−シクロヘキセン−1−イル)−3−ブテン−2−オンから選ばれる1種以上の化合物を有効成分として含有することを特徴とするフレーバー及びフレグランス組成物。
【0009】
(2)フレグランス組成物であることを特徴とする第1項記載のフレーバー及びフレグランス組成物。
【0010】
(3)第1項で定義した化合物の含有量が20ppm〜20質量%である第2項記載のフレグランス組成物。
【0011】
(4)第1項で定義した化合物の光学純度が10%e.e.以上であることを特徴とする第2項または第3項記載のフレグランス組成物。
【0012】
(5)(R)−4−(2,6,6−トリメチル−2−シクロヘキセン−1−イル)−3−ブテン−2−オン及び(S)−4−(2,6,6−トリメチル−2−シクロヘキセン−1−イル)−3−ブテン−2−オンから選ばれる1種以上の化合物を有効成分として含有することを特徴とするフレグランス付けされた製品。
【0013】
(6)(R)−4−(2,6,6−トリメチル−2−シクロヘキセン−1−イル)−3−ブテン−2−オン及び(S)−4−(2,6,6−トリメチル−2−シクロヘキセン−1−イル)−3−ブテン−2−オンから選ばれる成分を有効成分として、フレグランス付けされた製品1質量部に対し、2ppb〜20質量%で含有することを特徴とする第5項記載のフレグランス付けされた製品。
【0014】
(7)第5項で定義した化合物の光学純度が10%e.e.以上であることを特徴とする第5項または第6項記載のフレグランス付けさせた製品。
【0015】
(8)フレーバー組成物であることを特徴とする第1項記載のフレーバー及びフレグランス組成物。
【0016】
(9)第1項で定義した化合物の含有量が0.2ppm〜20質量%である請求項8記載のフレーバー組成物。
【0017】
(10)第1項で定義した化合物の光学純度が10%e.e.以上であることを特徴とする第8項または第9項記載のフレーバー組成物。
【0018】
(11)(R)−4−(2,6,6−トリメチル−2−シクロヘキセン−1−イル)−3−ブテン−2−オン及び(S)−4−(2,6,6−トリメチル−2−シクロヘキセン−1−イル)−3−ブテン−2−オンから選ばれる1種以上の化合物を有効成分として含有することを特徴とするフレーバー付けされた製品。
【0019】
(12)(R)−4−(2,6,6−トリメチル−2−シクロヘキセン−1−イル)−3−ブテン−2−オン及び(S)−4−(2,6,6−トリメチル−2−シクロヘキセン−1−イル)−3−ブテン−2−オンから選ばれる1種以上の化合物を有効成分として、フレーバー付けされた製品1質量部に対し、0.02ppb〜0.2質量で含有することを特徴とする第11項記載のフレーバー付けされた飲食物。
【0020】
(13)第11項で定義した化合物の光学純度が10%e.e.以上であることを特徴とする第11項または第12項記載のフレーバー付けされた製品。
【0021】
(14)(R)−4−(2,6,6−トリメチル−2−シクロヘキセン−1−イル)−3−ブテン−2−オン及び(S)−4−(2,6,6−トリメチル−2−シクロヘキセン−1−イル)−3−ブテン−2−オンから選ばれる1種以上の化合物を添加することを特徴とする香気及び香味を増強・改善又は変調する方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明により、天然由来からは多量にとることが極めて困難であった(R)−4−(2,6,6−トリメチル−2−シクロヘキセン−1−イル)−3−ブテン−2−オン及び(S)−4−(2,6,6−トリメチル−2−シクロヘキセン−1−イル)−3−ブテン−2−オンから選ばれた少なくとも1種以上の化合物を望み通りの光学純度及び配合比率で添加することにより、嗜好性の高いナチュラル感を有するフレーバー及びフレグランス組成物が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に本発明について詳細に説明する。
【0024】
本発明は、(R)−4−(2,6,6−トリメチル−2−シクロヘキセン−1−イル)−3−ブテン−2−オン(以下「(R)−α−ヨノン」と記載する場合もある)及び(S)−4−(2,6,6−トリメチル−2−シクロヘキセン−1−イル)−3−ブテン−2−オン(以下「(S)−α−ヨノン」と記載する場合もある)から選ばれた少なくとも1種以上の化合物が必須成分として用いられる。
【0025】
本発明に用いられる(R)−α−ヨノン及び(S)−α−ヨノンは、天然物から単離・精製して得たものを利用することもできるし、またラセミ体のα−ヨノンを光学分割して得たものを利用することもできるし、さらに化学的合成方法により得たものを利用することもできる。
【0026】
本発明の(R)−α−ヨノン及び(S)−α−ヨノンを多量に取得するためには化学的合成方法を用いて得たものを利用することが好ましい。
【0027】
その合成方法については、例えば、(1)α−シクロゲラン酸を光学分割して(R)−α−シクロゲラン酸及び(S)−α−シクロゲラン酸を得(非特許文献2)、これを原料として(R)−α−ヨノン及び(S)−α−ヨノンを合成する方法(非特許文献3)、(2)光学活性2,4,4−トリメチル−2−シクロヘキセン−1−オールを原料として、4工程で光学活性α−ヨノンを合成する方法(特許文献1)、等がある。
【0028】
【特許文献1】特開平10−84989号公報
【非特許文献2】Agric. Biol. Chem., 1987, 51, p1271-75
【非特許文献3】Helv. Chem. Acta., 1969, 52, p1729-31
【0029】
本発明は、このようにして得られた(R)−α−ヨノン及び(S)−α−ヨノンから選ばれる化合物を、フレーバー及びフレグランス組成物に有効成分として含有させることにより、単品そのもの香気及び香味からは想起されなかった従来にないナチュラル感が付与された香気およぶ香味が増強・改善されたフレーバー及びフレグランス組成物を得られることが明らかになった。
【0030】
すなわち、(R)−α−ヨノン及び(S)−α−ヨノンから選ばれる化合物をフレグランス組成物に配合することにより、該フレグランス組成物にナチュラル感のある新鮮で華やかなフローラル感、みずみずしいグリーン感を付与することができ、またフレーバー組成物においては、ストロベリー、ピーチ、ラズベリー、ブルーバリー等のフルーツ系フレーバー組成物やグリーンティー等の茶系フレーバー組成物にナチュラル感のある新鮮な熟成感を付与し、果汁感(フルーティー感)を増強・改善することができる。
本発明で使用される(R)−α−ヨノン及び(S)−α−ヨノンからなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物は、その光学純度が10%e.e.以上の化合物から使用することができる。好ましくは、30%〜95%e.e.の範囲であり、より好ましくは50%〜80%e.e.の範囲である。
【0031】
前記の方法に準じて合成された(R)−α−ヨノン及び(S)−α−ヨノンは、光学純度99%e.e.以上の高い純度で得られたが、光学活性体の効果が、どの程度の光学純度のもので顕れるかを試験したところ、本発明においては、ほぼ10%e.e.程度であれば光学純度の効果が顕れはじめることがわかった。また、ほぼ30%〜95%e.e.程度の範囲であれば光学純度の効果が顕著になり、さらに、ほぼ50%〜80%e.e.程度の範囲になると光学純度の効果がより顕著になることがわかった。
したがって、これら光学純度の範囲のものであれば、精製することなくそのまま用いて、香粧品類や飲食物類の香気及び香味並びに匂い立ちの効果を確実に期待できることが判った。
【0032】
本発明は、(R)−α−ヨノン及び(S)−α−ヨノンから選ばれる1種以上の化合物を通常使用されているフレーバー及びフレグランス組成物に配合することにより嗜好性の高いナチュラル感が増強・改善された香気及び香味を有するフレーバー及びフレグランス組成物を提供するものである。
本発明は、(R)−α−ヨノン及び(S)−α−ヨノンから選ばれる1種以上の化合物を、通常使用されているフレーバー成分及びフレグランス成分にさらに添加したフレーバー成分及びフレグランス成分も使用できる。添加使用することができる他のフレーバー成分及びフレグランス成分としては、各種の合成香料、天然精油、合成精油、柑橘油、動物性香料などが挙げられ、特にフローラル系、グリーン系、フルーツ系のフレーバー成分及びフレグランス成分が好ましいが、例えば、非特許文献4に記載されているような広い範囲のフレーバー成分及びフレグランス成分を使用することができる。代表的なものとしては、α−ピネン、リモネン、cis−3−ヘキセノール、フェニルエチルアルコール、スチラリルアセテート、オイゲノール、ローズオキサイド、リナロール、ベンズアルデヒド、γ−ウンデカラクトン、酪酸エチルなどがある。
【0033】
【非特許文献4】Arctander S.,“Perfume andFlavor Chemicals”,published by the author,Montclair,N.J.(U.S.A.)1969年
【0034】
具体的には、本発明では(R)−α−ヨノン及び(S)−α−ヨノンから選ばれる1種以上の化合物を、例えば、ベルガモット油、ガルバナム油、レモン油、ゼラニウム油、ラベンダー油、マンダリン油等の天然精油中に添加すると、天然精油が本来有する香気及び香味にマイルドでこくがあり、新鮮な、嗜好性の高い、且つ拡散性、保留性を高め持続的性のある新規なフレーバー・フレグランス組成物を調製することができる。
更に、例えば各種合成香料、天然香料、天然精油、柑橘油、茶エキス、動物性香料等から調製される、例えば、ストロベリー、レモン、オレンジ、グレープフルーツ、アップル、パイナップル、バナナ、メロン、緑茶、ウーロン茶、紅茶等の如きフレーバー及びフレグランス組成物に添加するとマイルドでこくがあり天然らしさのあるフルーティ様、グリーン様、トロピカル様な香気及び香味を付与し、更に、新鮮な、嗜好性の高い香気及び香味を付与し、且つ拡散性、保留性を高め持続性の強調されたフレーバー及びフレグランス組成物が調製できる。
【0035】
本発明では(R)−α−ヨノン及び(S)−α−ヨノンから選ばれる1種以上の化合物のフレーバー及びフレグランス組成物への配合量は、そのフレーバー及びフレグランス組成物の種類や目的により異なるが、一般的には、フレグランス組成物においては、例えば、組成物中において2ppm〜20質量%、特に20ppm〜20質量%となる配合量が好ましく、また、フレーバー組成物においては、例えば、組成物中において0.02ppm〜2質量%、特に0.02ppm〜20質量%、更に好ましくは0.2ppm〜20質量%となる配合量が適当である。
また、フレーバー及びフレグランス組成物に通常使用される保留剤の1種又は2種以上を配合しても良く、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ヘキシルグリコール、ベンジルベンゾエート、トリエチルシトレート、ジエチルフタレート、ハーコリン、中鎖脂肪酸トリグリセライド、中鎖脂肪酸ジグリセライド等と併用することも可能である。
【0036】
本発明では(R)−α−ヨノン及び(S)−α−ヨノンから選ばれる化合物を単独で、或いは該化合物を含むフレーバー及びフレグランス組成物を、例えば、フレグランス製品、基礎化粧品、仕上げ化粧品、頭髪化粧品、日焼け化粧品、薬用化粧品、ヘアケア製品、石鹸、身体洗浄剤、浴用剤、洗剤、柔軟仕上げ剤、洗浄剤、台所用洗剤、漂白剤、エアゾール剤、消臭・芳香剤、雑貨;又は、飲食品類、口腔用組成物、医薬品類に、そのユニークな香気及び香味を付与できる適当量を配合した、フレグランス付けされた製品及びフレーバー付けされた製品を提供できる。
【0037】
フレグランス付けさせた製品としては、次のものを例示することができる。
フレグランス製品としては、香水、オードパルファム、オードトワレ、オーデコロン、など;基礎化粧品としては、洗顔クリーム、バニシングクリーム、クレンジングクリーム、コールドクリーム、マッサージクリーム、乳液、化粧水、美容液、パック、メイク落とし、など;仕上げ化粧品としては、ファンデーション、粉おしろい、固形おしろい、タルカムパウダー、口紅、リップクリーム、頬紅、アイライナー、マスカラ、アイシャドウ、眉墨、アイパック、ネイルエナメル、エナメルリムバー、など;頭髪化粧品としては、ポマード、ブリランチン、セットローション、ヘアーステック、ヘアーソリッド、ヘアーオイル、ヘアートリートメント、ヘアークリーム、ヘアートニック、ヘアーリキッド、ヘアースプレー、バンドリン、養毛剤、染毛剤、など;
【0038】
日焼け化粧品としては、サンタン製品、サンスクリーン製品、など;薬用化粧品としては、制汗剤、アフターシェービングローション及びジェル、パーマメントウェーブ剤、薬用石鹸、薬用シャンプー、薬用皮膚化粧料、など;ヘアケア製品としては、シャンプー、リンス、リンスインシャンプー、コンディショナー、トリートメント、ヘアパック、など;石鹸としては、化粧石鹸、浴用石鹸、香水石鹸、透明石鹸、合成石鹸、など;身体洗浄剤としては、ボディソープ、ボディシャンプー、ハンドソープ、など;浴用剤としては、入浴剤(バスソルト、バスタブレット、バスリキッド、等)、フォームバス(バブルバス、等)、バスオイル(バスパフューム、バスカプセル、等)、ミルクバス、バスジェリー、バスキューブ、など;
洗剤としては、衣料用重質洗剤、衣料用軽質洗剤、液体洗剤、洗濯石鹸、コンパクト洗剤、粉石鹸、など;柔軟仕上げ剤としては、ソフナー、ファーニチアケアー、など;洗浄剤としては、クレンザー、ハウスクリーナー、トイレ洗浄剤、浴室用洗浄剤、ガラスクリーナー、カビ取り剤、排水管用洗浄剤、など;台所用洗剤としては、台所用石鹸、台所用合成石鹸、食器用洗剤、など;漂白剤としては、酸化型漂白剤(塩素系漂白剤、酸素系漂白剤、等)、還元型漂白剤(硫黄系漂白剤、等)、光学的漂白剤、など;エアゾール剤としては、スプレータイプ、パウダースプレー、など;消臭・芳香剤としては、固形状タイプ、ゲル状タイプ、リキッドタイプ、など;雑貨としては、ティッシュペーパー、トイレットペーパー、などの種々の形態を挙げることができる。
【0039】
また、フレーバー付けさせた製品としては、次のものを例示することができる。
飲食品類としては、果汁飲料類、果実酒類、乳飲料類、炭酸飲料、清涼飲料、ドリンク剤類の如き飲料類;アイスクリーム類、シャーベット類、アイスキャンディー類の如き冷菓;和・洋菓子類、ジャム類、キャンディー類、ゼリー類、ガム類、パン類、コーヒー類、ココア類、紅茶類、ウーロン茶類、緑茶類の如き嗜好飲料類;和風スープ、洋風スープ、中華スープの如きスープ類、風味調味料、各種インスタント飲料乃至食品類、各種スナック食品類など;口腔用組成物としては、例えば、歯磨き、口腔洗浄料、マウスウオッシュ、トローチ、チューインガム類など;医薬品類としては、ハップ剤、軟膏剤の如き皮膚外用剤、内服剤、などの種々の形態を挙げることができる。
【0040】
本発明では、フレグランス製品、基礎化粧品、仕上げ化粧品、頭髪化粧品、日焼け化粧品、薬用化粧品、ヘアケア製品、石鹸、身体洗浄剤、浴用剤、洗剤、柔軟仕上げ剤、洗浄剤、台所用洗剤、漂白剤、エアゾール剤、消臭・芳香剤、雑貨;又は、飲食品類、口腔用組成物、医薬品類などに、(R)−α−ヨノン及び(S)−α−ヨノンから選ばれる化合物を単独或いは該化合物を含むフレーバー及びフレグランス組成物を使用する場合、このままの状態、或いはこれらを例えば、アルコール類、プロピレングリコール、グリセリンなどの多価アルコール類に溶解した液体状;アラビアガム、トラガントガムなどの天然ガム質類;グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルなどの乳化剤で乳化した乳化状;アラビアガム等の天然ガム質類、ゼラチン、デキストリンなどの賦形剤を用いて被膜させた粉末状;界面活性剤、例えば非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤などを用いて可溶化或いは分散化した可溶化状或いは分散化状;又はカプセル化剤で処理して得られるマイクロカプセルなど;その目的に応じて任意の形状を選択して用いられている。
さらに、サイクロデキストリンなどの包接剤に包接して、上記香気及び香味組成物・フレーバー組成物を安定化且つ徐放性にして用いることもある。これらは、最終製品の形態、例えば液体状、固体状、粉末状、ゲル状、ミスト状、エアゾール状などに適したもので適宜に選択して用いられる。
【0041】
なお、フレグランス付けされた製品であるフレグランス製品、基礎化粧品、仕上げ化粧品、頭髪化粧品、日焼け化粧品、薬用化粧品、ヘアケア製品、石鹸、身体洗浄剤、浴用剤、洗剤、柔軟仕上げ剤、洗浄剤、台所用洗剤、漂白剤、エアゾール剤、消臭・芳香剤、雑貨、等への(R)−α−ヨノン及び(S)−α−ヨノンから選ばれる化合物の添加量は、それぞれ場合によって期待される効果・作用に応じて任意に加減されるが、一般的には約2ppb〜20質量%程度である。
また、フレーバー付けされた製品である飲食品類、口腔用組成物、医薬品類、等への(R)−α−ヨノン及び(S)−α−ヨノンから選ばれる化合物の添加量は、それぞれ場合によって期待される効果・作用に応じて任意に加減されるが、一般的には約0.02ppb〜0.2質量%程度である。
【実施例】
【0042】
以下、本発明を実施例を用いて具体的に説明するが、本発明は、これらにより限定されるものでなく、また、本発明の範囲を逸脱しない範囲で変化させてもよい。なお、実施例および比較例中、表に示す処方の単位は質量部で表わした。
【0043】
[合成例]非特許文献2及び3に記載の合成法に従って(R)−α−ヨノン及び(S)−α−ヨノンを調製した。
得られた(R)−α−ヨノンをガスクロマトグラフィーで分析した結果、化学純度は100%であり、光学純度は99.9%e.e.以上であった。また、(S)−α−ヨノンのをガスクロマトグラフィーで分析した結果、化学純度は100%であり、光学純度は99.9%e.e.以上であった。
また、上記得られた光学活性99.9%e.e.以上の(R)−α−ヨノン及び(S)−α−ヨノンに、ラセミ体のα−ヨノン(SIGMA−ALDRICH社製)を任意の割合で混合することによって、任意の光学純度の(R)−α−ヨノン及び(S)−α−ヨノンを調製した。
【0044】
[実施例1〜2、比較例1] ローズ様フレグランス組成物
下記の表1に示すローズ様フレグランス組成物において光学活性70%e.e.の(R)−α−ヨノン(実施例1)及び(S)−α−ヨノン(実施例2)を加えて、α−ヨノンを4質量%の濃度で含有する実施例1及び2のフレグランス組成物を調製した。また、ラセミ体のα−ヨノン(SIGMA−ALDRICH社製)を加えたものを比較例1とした。各フレグランス組成物について、経験5年以上を有する調香師5名により官能評価を行った。
【0045】
【表1】

【0046】
その結果、(R)−α−ヨノンを添加した実施例1では新鮮な華やかなフローラル感が強調された香りを有していたこと、また(S)−α−ヨノンを添加した実施例2では新鮮なみずみずしいグリーン感が強調された香りを有していたこと、一方、ラセミ体を添加した比較例1は、自然な香りではあるが、強さに欠け、多少の雑感を有していたとパネラー全員が指摘した。
【0047】
[試験例1]合成例の方法で合成された(R)−α−ヨノン及び(S)−α−ヨノンは光学純度99.9%e.e.以上であったが、(R)−α−ヨノン及び(S)−α−ヨノンの効果が、どの程度の光学純度のもので確実に顕れるかを試験した。ラセミ体のα−ヨノン(SIGMA−ALDRICH社製)を任意の割合で混合することによって、任意の光学純度の(R)−α−ヨノン及び(S)−α−ヨノンを調製した。得られた任意の光学純度の(R)−α−ヨノン及び(S)−α−ヨノンを用いて、上記表1に示すローズ様フレグランス組成物を調製した。
光学活性体の効果がはっきりと確実に識別できる光学純度を、2:2点識別法(AおよびBの2種の試料を識別するのに、最初に試料AおよびBを明試料としてパネラーに提示して、その特徴を記憶させたのち、AとBを盲試料として提示し、Aとは異なる方の試料を指摘させ、数回の繰り返しで得られた正解数から2種の試料間に差があるかどうか判定する方法;佐藤信「官能検査入門」54頁(1978年10月16日、株式会社日科技連出版社発行))を応用して測定した。
その結果、(R)−α−ヨノン及び(S)−α−ヨノンのいずれを用いても光学純度10%e.e.以上のものであれば、光学純度の効果が顕れはじめることがわかった。また、光学純度30%〜95%e.e.程度の範囲であれば光学純度の効果が顕著になり、さらに、ほぼ光学純度50%〜80%e.e.程度の範囲になると光学純度の効果がより顕著になることがわかった。
【0048】
[試験例2]実施例1〜2では4質量%で(R)−α−ヨノン及び(S)−α−ヨノンの配合であったが、(R)−α−ヨノン及び(S)−α−ヨノンの効果が、どの程度の配合量で確実に顕れるかを試験した。上記表1に示すにおいて任意の割合で光学純度70%e.e.の(R)−α−ヨノン及び(S)−α−ヨノンを配合したローズ様フレグランス組成物を調製した。
その結果、(R)−α−ヨノン及び(S)−α−ヨノンのいずれを用いても20ppm〜20質量%の範囲で使用するとよく、配合量が20ppm未満の少ない量では、配合した効果がはっきり顕れず、また20質量%を超える量では、フレグランス組成物そのものの香気のバランスがくずれてしまうことがわかった。
【0049】
[実施例3〜4、比較例2] ガーデニア様フレグランス組成物
下記の表2に示すガーデニア様フレグランス組成物において光学純度70%e.e.の(R)−α−ヨノン(実施例3)及び(S)−α−ヨノン(実施例4)を加えて、α−ヨノンを10質量%の濃度で含有する実施例3及び4のフレグランス組成物を調製した。また、ラセミ体のα−ヨノン(SIGMA−ALDRICH社製)を加えたものを比較例2とした。各フレグランス組成物について、経験5年以上を有する調香師5名により官能評価を行った。
【0050】
【表2】

【0051】
その結果、(R)−α−ヨノンを添加した実施例3では新鮮な華やかなフローラル感が強調された香りを有していたこと、また(S)−α−ヨノンを添加した実施例4では新鮮なみずみずしいグリーン感が強調された香りを有していたこと、一方、ラセミ体を添加した比較例2は、自然な香りではあるが、強さに欠け、多少の雑感を有していたとパネラー全員が指摘した。
【0052】
[実施例5〜6、比較例3] カーネーション様フレグランス組成物
下記の表3に示すカーネーション様フレグランス組成物において光学純度60%e.e.の(R)−α−ヨノン(実施例5)及び(S)−α−ヨノン(実施例6)を加えて、α−ヨノンを2質量%の濃度で含有する実施例5及び6のフレグランス組成物を調製した。また、ラセミ体のα−ヨノン(SIGMA−ALDRICH社製)を加えたものを比較例3とした。各フレグランス組成物について、経験5年以上を有する調香師5名により官能評価を行った。
【0053】
【表3】

【0054】
その結果、(R)−α−ヨノンを添加した実施例5では新鮮な華やかなフローラル感が強調された香りを有していたこと、また(S)−α−ヨノンを添加した実施例6では新鮮なみずみずしいグリーン感が強調された香りを有していたこと、一方、ラセミ体を添加した比較例2は、自然な香りではあるが、強さに欠け、多少の雑感を有していたとパネラー全員が指摘した。
【0055】
[実施例7〜8、比較例4] オスマンサス様フレグランス組成物
下記の表4に示すオスマンサス様フレグランス組成物において光学純度80%e.e.の(R)−α−ヨノン(実施例7)及び(S)−α−ヨノン(実施例8)を加えて、α−ヨノンを5質量%の濃度で含有する実施例7及び8のフレグランス組成物を調製した。また、ラセミ体のα−ヨノン(SIGMA−ALDRICH社製)を加えたものを比較例4とした。各フレグランス組成物について、経験5年以上を有する調香師5名により官能評価を行った。
【0056】
【表4】

【0057】
その結果、(R)−α−ヨノンを添加した実施例7では新鮮な華やかなフローラル感が強調された香りを有していたこと、また(S)−α−ヨノンを添加した実施例8では新鮮なみずみずしいグリーン感が強調された香りを有していたこと、一方、ラセミ体を添加した比較例4は、自然な香りではあるが、強さに欠け、多少の雑感を有していたとパネラー全員が指摘した。
【0058】
[実施例9〜10、比較例5] バイオレット様フレグランス組成物
下記の表5に示すバイオレット様フレグランス組成物において光学純度50%e.e.の(R)−α−ヨノン(実施例9)及び(S)−α−ヨノン(実施例10)を加えて、α−ヨノンを15質量%の濃度で含有する実施例9及び10のフレグランス組成物を調製した。また、ラセミ体のα−ヨノン(SIGMA−ALDRICH社製)を加えたものを比較例5とした。各フレグランス組成物について、経験5年以上を有する調香師5名により官能評価を行った。
【0059】
【表5】

【0060】
その結果、(R)−α−ヨノンを添加した実施例9では新鮮な華やかなフローラル感が強調された香りを有していたこと、また(S)−α−ヨノンを添加した実施例10では新鮮なみずみずしいグリーン感が強調された香りを有していたこと、一方、ラセミ体を添加した比較例5は、自然な香りではあるが、強さに欠け、多少の雑感を有していたとパネラー全員が指摘した。
【0061】
[実施例11〜12、比較例6] ヘリオトロープ様フレグランス組成物
下記の表6に示すヘリオトロープ様フレグランス組成物において光学純度65%e.e.の(R)−α−ヨノン(実施例11)及び(S)−α−ヨノン(実施例12)を加えて、α−ヨノンを8質量%の濃度で含有する実施例11及び12のフレグランス組成物を調製した。また、ラセミ体のα−ヨノン(SIGMA−ALDRICH社製)を加えたものを比較例6とした。各フレグランス組成物について、経験5年以上を有する調香師5名により官能評価を行った。
【0062】
【表6】

【0063】
その結果、(R)−α−ヨノンを添加した実施例11では新鮮な華やかなフローラル感が強調された香りを有していたこと、また(S)−α−ヨノンを添加した実施例12では新鮮なみずみずしいグリーン感が強調された香りを有していたこと、一方、ラセミ体を添加した比較例6は、自然な香りではあるが、強さに欠け、多少の雑感を有していたとパネラー全員が指摘した。
【0064】
[実施例13〜14、比較例7] ライラック様フレグランス組成物
下記の表7に示すライラック様フレグランス組成物において光学純度60%e.e.の(R)−α−ヨノン(実施例13)及び(S)−α−ヨノン(実施例14)を加えて、α−ヨノンを2質量%の濃度で含有する実施例13及び14のフレグランス組成物を調製した。また、ラセミ体のα−ヨノン(SIGMA−ALDRICH社製)を加えたものを比較例7とした。各フレグランス組成物について、経験5年以上を有する調香師5名により官能評価を行った。
【0065】
【表7】

【0066】
その結果、(R)−α−ヨノンを添加した実施例13では新鮮な華やかなフローラル感が強調された香りを有していたこと、また(S)−α−ヨノンを添加した実施例14では新鮮なみずみずしいグリーン感が強調された香りを有していたこと、一方、ラセミ体を添加した比較例7は、自然な香りではあるが、強さに欠け、多少の雑感を有していたとパネラー全員が指摘した。
【0067】
[実施例15〜16、比較例8] ライラック様フレグランス組成物
下記の表8に示すライラック様フレグランス組成物において光学純度70%e.e.の(R)−α−ヨノン(実施例15)及び(S)−α−ヨノン(実施例16)を加えて、α−ヨノンを7.5質量%の濃度で含有する実施例15及び16のフレグランス組成物を調製した。また、ラセミ体のα−ヨノン(SIGMA−ALDRICH社製)を加えたものを比較例8とした。各フレグランス組成物について、経験5年以上を有する調香師5名により官能評価を行った。
【0068】
【表8】

【0069】
その結果、(R)−α−ヨノンを添加した実施例15では新鮮な華やかなフローラル感が強調された香りを有していたこと、また(S)−α−ヨノンを添加した実施例16では新鮮なみずみずしいグリーン感が強調された香りを有していたこと、一方、ラセミ体を添加した比較例8は、自然な香りではあるが、強さに欠け、多少の雑感を有していたとパネラー全員が指摘した。
【0070】
[実施例17〜18、比較例9]シャンプーの製造
実施例1〜2及び比較例1で調製したローズ様フレグランス組成物を用い、下記成分を80℃にて均一になるまで加熱撹拌し、その後35℃まで冷却しシャンプーを調製した。各シャンプー組成物について、経験5年以上を有する調香師5名により官能評価を行った。
【0071】
[シャンプー組成物] (質量%)
ラウリル硫酸ナトリウム 40.00
N−ヤシ油脂肪酸アシル−N−
カルボキシメトキシエチル−
N−カルボキシメチル
エチレンジアミン二ナトリウム 10.00
ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド(2) 2.00
ブチレングリコール 2.00
クエン酸 0.35
塩化ナトリウム 0.10
メチルパラベン 0.20
プロピルパラベン 0.10
エデト酸四ナトリウム 0.10
ローズ様フレグランス組成物 0.50
精製水 バランス
計 100.00
【0072】
[実施例17〜18と比較例9との評価結果]
実施例17〜18と比較例9のシャンプーの香気を評価した結果、(R)−α−ヨノンを含むフレグランス組成物を添加した実施例17では新鮮な華やかなフローラル感が強調された香りを有していたこと、また(S)−α−ヨノンを含むフレグランス組成物を添加した実施例18では新鮮なみずみずしいグリーン感が強調された香りを有していたこと、一方、ラセミ体のα−ヨノンを含むフレグランス組成物を添加した比較例9は、自然な香りではあるが、強さに欠け、多少の雑感を有していたとパネラー全員が指摘した。
また、光学活性なα−ヨノンに基づくシャンプーには、拡散性に優れ、フレッシュでナチュラル感を有していたとパネラー全員が指摘した。
【0073】
[実施例19〜20、比較例10]ボディシャンプーの製造
実施例3〜4及び比較例2で調製したガーデニア様フレグランス組成物を用い、ボディシャンプーを調製した。各ボディシャンプー組成物について、経験5年以上を有する調香師5名により官能評価を行った。
【0074】
[ボディシャンプー組成物] (質量%)
ジブチルヒドロキシトルエン 0.05
メチルパラベン 0.10
プロピルパラベン 0.10
エデト酸四ナトリウム 0.10
塩化カリウム 0.20
グリセリン 5.00
ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド(2) 3.00
ポリオキシエチレンラウリル
エーテル酢酸ナトリウム(3E.O.)(30%) 10.00
ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン液(34%) 25.00
ミリスチン酸カリウム(40%) 25.00
ガーデニア様フレグランス組成物 0.50
精製水 バランス
計 100.00
【0075】
[実施例19〜20と比較例10との評価結果]
実施例19〜20と比較例10のボディシャンプーの香気を評価した結果、(R)−α−ヨノンを含むフレグランス組成物を添加した実施例19では新鮮な華やかなフローラル感が強調された香りを有していたこと、また(S)−α−ヨノンを含むフレグランス組成物を添加した実施例20では新鮮なみずみずしいグリーン感が強調された香りを有していたこと、一方、ラセミ体のα−ヨノンを含むフレグランス組成物を添加した比較例10は、自然な香りではあるが、強さに欠け、多少の雑感を有していたとパネラー全員が指摘した。
また、光学活性なα−ヨノンに基づくボディシャンプーには、拡散性に優れ、フレッシュでナチュラル感を有していたとパネラー全員が指摘した。
【0076】
[実施例21〜22、比較例11]化粧クリームの製造
実施例13〜14及び比較例7で調製したライラック様フレグランス組成物を用い、化粧クリームを調製した。各化粧クリーム組成物について、経験5年以上を有する調香師5名により官能評価を行った。
【0077】
[化粧クリーム] (質量%)
ステアリルアルコール 6.0
ステアリン酸 2.0
水添ラノリン 4.0
スクワラン 9.0
オクチルデカノール 10.0
グリセリン 6.0
ポリエチレングリコール 1500 4.0
ポリオキシエチレン(25)セチルエーテル 3.0
モノステアリン酸グルセリン 2.0
メチルパラベン 適量
エチルパラベン 適量
ライラック様フレグランス組成物 0.1
精製水 バランス
計 100.0
【0078】
[実施例21〜22と比較例11との評価結果]
実施例21〜22と比較例11の化粧クリームの香気を評価した結果、(R)−α−ヨノンを含むフレグランス組成物を添加した実施例21では新鮮な華やかなフローラル感が強調された香りを有していたこと、また(S)−α−ヨノンを含むフレグランス組成物を添加した実施例22では新鮮なみずみずしいグリーン感が強調された香りを有していたこと、一方、ラセミ体のα−ヨノンを含むフレグランス組成物を添加した比較例11は、自然な香りではあるが、強さに欠け、多少の雑感を有していたとパネラー全員が指摘した。
また、光学活性なα−ヨノンに基づく化粧クリームには、拡散性及びパウダリー感に優れ、フレッシュな高級感を有していたとパネラー全員が指摘した。
【0079】
[実施例23〜24、比較例12]粉末洗剤の製造
実施例15〜16及び比較例8で調製したライラック様フレグランス組成物を用い、粉末洗剤を調製した。各粉末洗剤組成物について、経験5年以上を有する調香師5名により官能評価を行った。
【0080】
[粉末洗剤] (質量%)
C14〜15アルキルエトキシスルホン酸 5.5
C12〜13直鎖アルキルスルホン酸 12.7
C12〜13アルキルエトキシレート 0.5
アルミノシリケート(76%) 25.4
石けん 3.0
ゼオライト 23.0
ケイ酸ナトリウム 1.0
炭酸ナトリウム バランス
硫酸ナトリウム 4.0
亜硫酸ナトリウム 1.0
酵素 1.0
アクリル酸マレイン酸コポリマー 2.5
蛍光染料 0.3
シリコーン 0.3
ライラック様フレグランス組成物 0.3
精製水 3.0
計 100.0
【0081】
[実施例23〜24と比較例12との評価結果]
実施例23〜24と比較例12の粉末洗剤の香気を評価した結果、(R)−α−ヨノンを含むフレグランス組成物を添加した実施例23では新鮮な華やかなフローラル感が強調された香りを有していたこと、また(S)−α−ヨノンを含むフレグランス組成物を添加した実施例24では新鮮なみずみずしいグリーン感が強調された香りを有していたこと、一方、ラセミ体のα−ヨノンを含むフレグランス組成物を添加した比較例12は、自然な香りではあるが、強さに欠け、多少の雑感を有していたとパネラー全員が指摘した。
また、光学活性なα−ヨノンに基づく粉末洗剤には、拡散性に優れ、フレッシュでナチュラル感を有していたとパネラー全員が指摘した。
【0082】
[実施例25〜26、比較例13]衣料用柔軟剤の製造
実施例11〜12及び比較例6で調製したヘリオトロープ様フレグランス組成物を用い、衣料用柔軟剤を調製した。各衣料用柔軟剤組成物について、経験5年以上を有する調香師5名により官能評価を行った。
【0083】
[衣料用柔軟剤] (質量%)
塩化ジアルキルジメチルアンモニウム 15.0
POE(30)ラウリルエーテル 3.0
脂肪酸 1.0
ジメチルポリシロキサン 0.5
エチレングリコール 5.0
防腐剤 適量
金属イオン封鎖剤 適量
ヘリオトロープ様フレグランス組成物 0.3
精製水 バランス
計 100.0
【0084】
[実施例25〜26と比較例13との評価結果]
実施例25〜26と比較例13の衣料用柔軟剤の香気を評価した結果、(R)−α−ヨノンを含むフレグランス組成物を添加した実施例25では新鮮な華やかなフローラル感が強調された香りを有していたこと、また(S)−α−ヨノンを含むフレグランス組成物を添加した実施例26では新鮮なみずみずしいグリーン感が強調された香りを有していたこと、一方、ラセミ体のα−ヨノンを含むフレグランス組成物を添加した比較例13は、自然な香りではあるが、強さに欠け、多少の雑感を有していたとパネラー全員が指摘した。
また、光学活性なα−ヨノンに基づく柔軟材には、拡散性に優れ、フレッシュな清涼感を有していたとパネラー全員が指摘した。
【0085】
[実施例27〜28、比較例14] ピーチフレーバー組成物
下記の表9に示すピーチフレーバー組成物において光学純度70%e.e.の(R)−α−ヨノン(実施例27)及び(S)−α−ヨノン(実施例28)を加えて、α−ヨノンを0.05質量%の濃度で含有する実施例27及び28のフレーバー組成物を調製した。また、ラセミ体のα−ヨノン(SIGMA−ALDRICH社製)を加えたものを比較例14とした。各フレーバー組成物について、経験5年以上を有するフレーバリスト5名により官能評価を行った。
【0086】
【表9】

【0087】
その結果、(R)−α−ヨノンを添加した実施例27では新鮮な熟成感が強調された馥郁とした香味を有していたこと、また(S)−α−ヨノンを添加した実施例28では新鮮なみずみずしいグリーン感が付与され果汁感が強調された香味を有していたこと、一方、ラセミ体を添加した比較例14は、自然な香味ではあるが、強さに欠け、多少の雑感を有していたとパネラー全員が指摘した。
【0088】
[試験例3]合成例の方法で合成された(R)−α−ヨノン及び(S)−α−ヨノンは光学純度99.9%e.e.以上であったが、(R)−α−ヨノン及び(S)−α−ヨノンの効果が、どの程度の光学純度のもので確実に顕れるかを試験した。ラセミ体のα−ヨノン(SIGMA−ALDRICH社製)を任意の割合で混合することによって、任意の光学純度の(R)−α−ヨノン及び(S)−α−ヨノンを調製した。得られた任意の光学純度の(R)−α−ヨノン及び(S)−α−ヨノンを用いて、上記表9に示すピーチフレーバー組成物を調製した。
光学活性体の効果がはっきりと確実に識別できる光学純度を、2:2点識別法(AおよびBの2種の試料を識別するのに、最初に試料AおよびBを明試料としてパネラーに提示して、その特徴を記憶させたのち、AとBを盲試料として提示し、Aとは異なる方の試料を指摘させ、数回の繰り返しで得られた正解数から2種の試料間に差があるかどうか判定する方法;佐藤信「官能検査入門」54頁(1978年10月16日、株式会社日科技連出版社発行))を応用して測定した。
その結果、(R)−α−ヨノン及び(S)−α−ヨノンのいずれを用いても光学純度10%e.e.以上のものであれば、光学純度の効果が顕れはじめることがわかった。また、光学純度30%〜95%e.e.程度の範囲であれば光学純度の効果が顕著になり、さらに、ほぼ光学純度50%〜85%e.e.程度の範囲になると光学純度の効果がより顕著になることがわかった。
【0089】
[試験例4]実施例27〜28では0.05質量%で(R)−α−ヨノン及び(S)−α−ヨノンの配合であったが、(R)−α−ヨノン及び(S)−α−ヨノンの効果が、どの程度の配合量で確実に顕れるかを試験した。上記表9に示すにおいて任意の割合で光学純度70%e.e.の(R)−α−ヨノン及び(S)−α−ヨノンを配合したピーチフレーバー組成物を調製した。
その結果、(R)−α−ヨノン及び(S)−α−ヨノンのいずれを用いても0.2ppm〜20質量%の範囲で使用するとよく、配合量が0.2ppm未満の少ない量では、配合した効果がはっきり顕れず、また20質量%を超える量では、フレーバー組成物そのものの香味のバランス及び風味が損なうことがわかった。
【0090】
[実施例29〜30、比較例15] ストロベリーフレーバー組成物
下記の表10に示すストロベリーフレーバー組成物において光学純度75%e.e.の(R)−α−ヨノン(実施例29)及び(S)−α−ヨノン(実施例30)を加えて、α−ヨノンを0.01質量%の濃度で含有する実施例29及び30のフレーバー組成物を調製した。また、ラセミ体のα−ヨノン(SIGMA−ALDRICH社製)を加えたものを比較例15とした。各フレーバー組成物について、経験5年以上を有するフレーバリスト5名により官能評価を行った。
【0091】
【表10】

【0092】
その結果、(R)−α−ヨノンを添加した実施例29では新鮮な熟成感が強調された馥郁とした香味を有していたこと、また(S)−α−ヨノンを添加した実施例30では新鮮なみずみずしいグリーン感が付与され果汁感が強調された香味を有していたこと、一方、ラセミ体を添加した比較例15は、自然な香味ではあるが、強さに欠け、多少の雑感を有していたとパネラー全員が指摘した。
【0093】
[実施例31〜32、比較例16] ラズベリーフレーバー組成物
下記の表11に示すラズベリーフレーバー組成物において光学活性55%e.e.の(R)−α−ヨノン(実施例31)及び(S)−α−ヨノン(実施例32)を加えて、α−ヨノンを1.5質量%の濃度で含有する実施例31及び32のフレーバー組成物を調製した。また、ラセミ体のα−ヨノン(SIGMA−ALDRICH社製)を加えたものを比較例16とした。各フレーバー組成物について、経験5年以上を有するフレーバリスト5名により官能評価を行った。
【0094】
【表11】

【0095】
その結果、(R)−α−ヨノンを添加した実施例31では新鮮な熟成感が強調された馥郁とした香味を有していたこと、また(S)−α−ヨノンを添加した実施例32では新鮮なみずみずしいグリーン感が付与され果汁感が強調された香味を有していたこと、一方、ラセミ体を添加した比較例16は、自然な香味ではあるが、強さに欠け、多少の雑感を有していたとパネラー全員が指摘した。
【0096】
[実施例33〜34、比較例17] ブルーベリーフレーバー組成物
下記の表12に示すブルーベリーフレーバー組成物において光学活性75%e.e.eの(R)−α−ヨノン(実施例33)及び(S)−α−ヨノン(実施例34)を加えて、α−ヨノンを0.2質量%の濃度で含有する実施例33及び34のフレーバー組成物を調製した。また、ラセミ体のα−ヨノン(SIGMA−ALDRICH社製)を加えたものを比較例17とした。各フレーバー組成物について、経験5年以上を有するフレーバリスト5名により官能評価を行った。
【0097】
【表12】

【0098】
その結果、(R)−α−ヨノンを添加した実施例33では新鮮な熟成感が強調された馥郁とした香味を有していたこと、また(S)−α−ヨノンを添加した実施例34では新鮮なみずみずしいグリーン感が付与され果汁感が強調された香味を有していたこと、一方、ラセミ体を添加した比較例17は、自然な香味ではあるが、強さに欠け、多少の雑感を有していたとパネラー全員が指摘した。
【0099】
[実施例35〜36、比較例18] グリーンティーフレーバー組成物
下記の表13に示すグリーンティーフレーバー組成物において合成例で得られた(R)−α−ヨノン(実施例35)及び(S)−α−ヨノン(実施例36)を加えて、α−ヨノンを0.01質量%の濃度で含有する実施例35及び36のフレーバー組成物を調製した。また、ラセミ体のα−ヨノン(SIGMA−ALDRICH社製)を加えたものを比較例18とした。各フレーバー組成物について、経験5年以上を有するフレーバリスト5名により官能評価を行った。
【0100】
【表13】

【0101】
その結果、添加した実施例35及び36は比較例18には無いナチュラルな深みのあるみずみずしさが付与されていたとパネラー全員が指摘した
その結果、(R)−α−ヨノンを添加した実施例35では新鮮な熟成感が強調された馥郁とした香味を有していたこと、また(S)−α−ヨノンを添加した実施例30では新鮮なみずみずしいグリーン感が付与され高級感を伴う香味を有していたこと、一方、ラセミ体を添加した比較例18は、自然な香味ではあるが、強さに欠け、多少の雑感を有していたとパネラー全員が指摘した。
【0102】
[実施例37〜38、比較例19]ピーチ様炭酸飲料の製造
実施例27〜28及び比較例14で調製したピーチフレーバー組成物を用い、下記の処方成分に精製水60質量部を加えて混合溶解させ、ピーチ果汁シロップを調製したこのシロップ6質量部に対し炭酸水4部を加えて炭酸飲料を調製した。各炭酸飲料組成物について、経験5年以上を有するフレーバリスト5名により官能評価を行った。
【0103】
[処方] (質量%)
マルチトールシロップ 8.0
アスパルテーム 0.01
ポリデキストリースシロップ 6.3
ピーチ5倍濃縮果汁 0.7
クエン酸(結晶) 0.1
ピーチ様香料 0.2
メントール 0.0002
メントキシプロパンジオール 0.00002
【0104】
[実施例37〜38と比較例19との評価結果]
実施例37〜38と比較例19の炭酸飲料の香味を評価した結果、(R)−α−ヨノンを含むフレーバー組成物を添加した実施例37では新鮮でさわやかさが強調された香味を有していたこと、また(S)−α−ヨノンを含むフレーバー組成物を添加した実施例38では新鮮で果汁感が強調された香味を有していたこと、一方、ラセミ体のα−ヨノンを含むフレーバー組成物を添加した比較例19は、自然な風味ではあるが、強さに欠け、多少の雑感を有していたとパネラー全員が指摘した。
また、光学活性なα−ヨノンに基づく炭酸飲料には、拡散性に優れ、フレッシュな匂い立ちを有していたとパネラー全員が指摘した。
【0105】
[実施例39〜40、比較例20]ラズベリージャムの製造
実施例39〜40及び比較例20で調製したラズベリーフレーバー組成物を用い、下記の処方に従いラズベリーを弱火にて加熱し、沸騰してきたら、グラニュー糖・レモン果汁・ブランディを加え、中火でアクを取り除きながら焦がさないように10分程度煮詰める。室温まで冷却した後、ラズベリーフレーバーを加えてラズベリージャムを調製した。各ジャム組成物について、経験5年以上を有するフレーバリスト5名により官能評価を行った。
【0106】
[処方] (質量%)
ラズベリー 250g
グラニュー糖 175g
レモン果汁 1/4個分
ブランディ 5g
ラズベリーフレーバー 0.1g
【0107】
[実施例39〜40と比較例20との評価結果]
実施例39〜40と比較例20のジャムの香味を評価した結果、(R)−α−ヨノンを含むフレーバー組成物を添加した実施例39では新鮮でさわやかさが強調された香味を有していたこと、また(S)−α−ヨノンを含むフレーバー組成物を添加した実施例40では新鮮で果汁感が強調された香味を有していたこと、一方、ラセミ体のα−ヨノンを含むフレーバー組成物を添加した比較例20は、自然な風味ではあるが、強さに欠け、多少の雑感を有していたとパネラー全員が指摘した。
また、光学活性なα−ヨノンに基づくジャムには、拡散性に優れ、フレッシュな匂い立ちを有していたとパネラー全員が指摘した。
【0108】
[実施例41〜42、比較例21]ストロベリーソースの製造
実施例29〜30及び比較例15で調製したストロベリーフレーバー組成物を用い、下記の処方に従いイチゴとグラニュー糖を中火でアクを取り除きながら加熱し、沸騰してきたら、レモン果汁を加え混ぜて室温まで冷却した後、ストロベリーフレーバーを加えてストロベリーソースを調製した。各ソース組成物について、経験5年以上を有するフレーバリスト5名により官能評価を行った。
【0109】
[処方] (質量%)
イチゴ 250g
グラニュー糖 175g
レモン果汁 1/4個分
ストロベリーフレーバー 0.1g
【0110】
[実施例41〜42と比較例21との評価結果]
実施例41〜42と比較例21のストロベリーソースの香味を評価した結果、(R)−α−ヨノンを含むフレーバー組成物を添加した実施例41では新鮮でさわやかさが強調された香味を有していたこと、また(S)−α−ヨノンを含むフレーバー組成物を添加した実施例42では新鮮で果汁感が強調された香味を有していたこと、一方、ラセミ体のα−ヨノンを含むフレーバー組成物を添加した比較例21は、自然な風味ではあるが、強さに欠け、多少の雑感を有していたとパネラー全員が指摘した。
また、光学活性なα−ヨノンに基づくストロベリーソースには、拡散性に優れ、フレッシュな匂い立ちを有していたとパネラー全員が指摘した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(R)−4−(2,6,6−トリメチル−2−シクロヘキセン−1−イル)−3−ブテン−2−オン及び(S)−4−(2,6,6−トリメチル−2−シクロヘキセン−1−イル)−3−ブテン−2−オンから選ばれる1種以上の化合物を有効成分として含有することを特徴とするフレーバー及びフレグランス組成物。
【請求項2】
フレグランス組成物であることを特徴とする請求項1記載のフレーバー及びフレグランス組成物。
【請求項3】
(R)−4−(2,6,6−トリメチル−2−シクロヘキセン−1−イル)−3−ブテン−2−オン及び(S)−4−(2,6,6−トリメチル−2−シクロヘキセン−1−イル)−3−ブテン−2−オンから選ばれる1種以上の化合物を有効成分として含有することを特徴とするフレグランス付けされた製品。
【請求項4】
フレーバー組成物であることを特徴とする請求項1記載のフレーバー及びフレグランス組成物。
【請求項5】
(R)−4−(2,6,6−トリメチル−2−シクロヘキセン−1−イル)−3−ブテン−2−オン及び(S)−4−(2,6,6−トリメチル−2−シクロヘキセン−1−イル)−3−ブテン−2−オンから選ばれる1種以上の化合物を有効成分として含有することを特徴とするフレーバー付けされた製品。
【請求項6】
(R)−4−(2,6,6−トリメチル−2−シクロヘキセン−1−イル)−3−ブテン−2−オン及び(S)−4−(2,6,6−トリメチル−2−シクロヘキセン−1−イル)−3−ブテン−2−オンから選ばれる1種以上の化合物を添加することを特徴とする香気及び香味を増強・改善又は変調する方法。

【公開番号】特開2007−77226(P2007−77226A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−264880(P2005−264880)
【出願日】平成17年9月13日(2005.9.13)
【出願人】(000169466)高砂香料工業株式会社 (194)
【Fターム(参考)】