説明

フロアマット及びその製造方法

【課題】踵の踏力によるズレを確実に防止することができるフロアマット及びその製造方法を提供する。
【解決手段】繊維基材12裏面に樹脂バッキング16を形成したフロアマットであって、前記樹脂バッキング16の裏側の中央部分とブレーキペダル近傍部分とに床面Fに係止するフック部19を有する面ファスナーシート18が取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車や列車、航空機などの乗り物の床面、或いは建物の室内や廊下の床面に敷設されるフロアマット及びその製造方法に関する。詳細には踵の踏力によるズレを確実に防止することができるフロアマット及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両床面や建物床面上にはパイルカーペットやカットパイルカーペットが敷設されていた。このため、パイルカーペットやカットパイルカーペットの上に置かれるフロアマットは滑り易く、そのズレを防止するための対策がなされていた。特に車両床面に置かれるフロアマットの場合、そのズレは交通事故にも繋がる可能性があるため、該フロアマットのズレ防止は極めて重要な要求性能とされていた。
【0003】
図4に示すフロアマット1の場合、マット裏面に多数のズレ防止用突起2が設けられていて、この突起2が床面上に敷設されたファーストカーペットのタフトされたカット形態のパイル間に入り込み、これにより、当該フロアマットのズレ防止がなされるようになっていた(特許文献1の図3参照)。
【0004】
また、図5に示すフロアマット5の場合、マット5縁部に貫通孔6が設けられていて、この貫通孔6に床面に突設されたフック7を引っかけることで、当該マット5のズレ防止性を高めていた(例えば特許文献2の図3参照)。
【先行技術文献】
【0005】
【特許文献1】 特開2002−238730号公報
【特許文献2】 実開平5−469145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが近年、車両床面に敷設されるカーペットには、それまでのパイルカーペットからフェルトが使用されるようになり、フロアカーペットはより一層ズレ易くなっている。このため、フロアマット裏面のズレ防止用の突起では、踵の踏力による十分なズレ防止機能が発揮されず、仮に図5に示すフックを引っかけるズレ防止対策と併用したとしても、該マットの前方へのズレは防止できても、フックを中心とする左右へのズレまでは抑えることができなかった。特に緊急時には運転者は予想外に大きな踵の踏力でブレーキペダルやフロアマットを踏み付けるため、このような場合でも、踵の踏力に十分に対抗できて、確実に該フロアマットのズレを防止することができるフロアマットが望まれていた。
【0007】
本発明者は、このような事情に鑑み、緊急時に予想外に大きな踵の踏力で踏み付けられても、確実にズレを防止することができるフロアマットについて鋭意検討の結果、本発明を完成させるに至ったのである。
【0008】
すなわち本発明は、踵の踏力によるズレを確実に防止することができるフロアマット及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、繊維基材裏面に樹脂バッキングを形成したフロアマットであって、
前記樹脂バッキングの裏側の一部又は全面に床面に係止するフック部を有する面ファスナーシートを取り付けたことを特徴とするフロアマットをその要旨とした。
【0010】
請求項2記載の発明は、フロアマットが車両用マットであり、樹脂バッキングの少なくとも中央部分に面ファスナーシートが取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載のフロアマットをその要旨とした。
【0011】
請求項3記載の発明は、フロアマットが車両の運転席用マットであり、樹脂バッキングの少なくともブレーキペダル近傍に置かれる部分に面ファスナーシートが取り付けられていることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載のフロアマットをその要旨とした。
【0012】
請求項4記載の発明は、面ファスナーシートが、表面と裏面とを有する縦編み横糸挿入編物の前記表面と裏面とを接続するループ状縦糸をカットした編物からなり、前記縦糸のカット端がフック部として突出していることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のフロアマットをその要旨とした。
【0013】
請求項5記載の発明は、面ファスナーシートが、二重織物を表織物と裏織物とに分離した織物の表織物又は裏織物からなり、前記表織物又は裏織物を構成する糸のカット端がフック部として突出していることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のフロアマットをその要旨とした。
【0014】
請求項6記載の発明は、面ファスナーシートが、パイル織物のループ(よこ糸)をカットした織物からなり、前記ループ(よこ糸)のカット端がフック部として突出していることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のフロアマット
【0015】
請求項7記載の発明は、樹脂バッキングが多数のズレ止め用突起を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のフロアマットをその要旨とした。
【0016】
請求項8記載の発明は、繊維基材裏面に多数のズレ止め用突起を有する樹脂バッキングを形成したフロアマットの製造方法であって、
前記繊維基材裏面に樹脂バッキングを配置すると共に、該樹脂バッキングの裏側の一部又は全面に床面に係止するフック部を有する面ファスナーシートを前記フック部が裏側となるように配置し、さらに前記面ファスナーシートのフック部を保護する保護シートを配置し、次いで、これらの積層物を熱プレスすることで、前記樹脂バッキングを溶融させて前記繊維基材及び樹脂バッキング、並びに樹脂バッキング及び面ファスナーシートを一体化することを特徴とするフロアマットの製造方法をその要旨とした。
【発明の効果】
【0017】
本発明のフロアマットは、樹脂バッキングの裏側の一部又は全面に床面に係止するフック面を有する面ファスナーシートを取り付けたので、床面上にパイルカーペットやカットパイルカーペットが敷設されていても、さらにはパイルカーペットやカットパイルカーペットに代えてフェルトが敷設されていても、樹脂バッキングの裏側の一部又は全面に取り付けた面ファスナーシートのフック部がパイルカーペット、カットパイルカーペット、或いはフェルトの内部に入り込み、これを捉えて捕捉するので、例えば緊急時に予想外に大きな踵の踏力で踏み付けられたとしても、踵の踏力によるズレを確実に防止することができる。
【0018】
本発明のフロアマットの製造方法にあっては、繊維基材裏面に樹脂バッキングを配置すると共に、該樹脂バッキングの裏側の一部又は全面に床面に係止するフック部を有する面ファスナーシートを前記フック部が裏側となるように配置し、さらに前記面ファスナーシートのフック部を保護する保護シートを配置し、次いで、これらの積層物を熱プレスすることで、前記樹脂バッキングを溶融させて前記繊維基材及び樹脂バッキング、並びに樹脂バッキング及び面ファスナーシートを一体化することから、面ファスナーシートのフック部の構造が熱プレスによって破壊されることがなく、踵の踏力によるズレを確実に防止することができるフロアマットを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のフロアマットを自動車床面のフェルト上に敷設した状態を示す平面図。
【図2】図1の要部拡大断面図。
【図3】図1に示すフロアマットの製造過程を示す要部拡大断面図。
【図4】従来のフロアマットを示す要部拡大断面図。
【図5】従来のフロアマットのズレ防止例を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を図面に示した実施の形態に従って説明する。本発明のフロアマット11は、繊維基材12と樹脂バッキング16とを有している。
【0021】
図1及び図2に示すように、繊維基材12は、不織布、紙、布、フェルトあるいはこれらの複合物からなる繊維シート13にパイル糸14を所定のボリュームで略U字状となるように打ち込み、ループ状部分をカットし、その後、抜け止めのためのプレコート15を施したものである。尚、本発明における繊維基材12は、パイル糸14を打ち込まない繊維シート13のみからなる形態を採ることもできる。また、繊維シート13に打ち込んだパイル糸14をカットしない形態も採ることもできる。
【0022】
樹脂バッキング16は、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの樹脂を発泡成形してなる発泡シートからなる。該バッキング16には、制振性及び遮音性を付与する目的でマイカフレーク、炭酸カルシウムなどの無機充填剤を充填することもできる。図示の例では、SBSにマイカフレーク及び炭酸カルシウムを充填し、発泡剤によって独立気泡型に発泡成形してなる発泡シートを樹脂バッキング16として用いた。この樹脂バッキング16には、多数の係止突起17が設けられている。
【0023】
この樹脂バッキング16の裏側に面ファスナーシート18が取り付けられているのである。面ファスナーシート18は、図1及び図2に示すように床面F上に敷設されるパイルカーペットやカットパイルカーペット、或いはフェルトの内部に入り込み、これを捉えて捕捉する機能を持つものである。つまり、本発明にフロアマット11における面ファスナーシート18はフック部19を有しており、該フロアマット11を床面F上に置いたとき、パイルカーペットやカットパイルカーペット、或いはフェルトの表面構造がループ部として機能し、両者の接合一体化が実現されるようになっているのである。
【0024】
面ファスナーシート18としては、その構造、素材などは限定されず、市販の面ファスナーの他、例えば表面と裏面とを有する縦編み横糸挿入編物の前記表面と裏面とを接続するループ状縦糸をカットした編物からなり、前記縦糸のカット端がフック部として突出しているもの、二重織物を表織物と裏織物とに分離した織物の表織物又は裏織物からなり、前記表織物又は裏織物を構成する糸のカット端がフック部として突出しているもの、或いはパイル織物のループ(よこ糸)をカットした織物からなり、前記ループ(よこ糸)のカット端がフック部として突出しているものなどを用いることができる。
【0025】
この面ファスナーシート18が、樹脂バッキング16の裏側の一部又は全面に取り付けられているのである。面ファスナーシート18の取り付け態様としては、樹脂バッキング16の裏側の全面に取り付けるのが最も効果的ではあるが、面ファスナーシート18の取り付け箇所や面積を抑えて、その分、該フロアマットの軽量化及びコストの低減化を考慮する場合には、該フロアマットにおいて踵の踏力が加わる頻度が高い部分、或いは大きな踵の踏力が加わる部分に取り付けるのが効果的である。具体的には、該フロアマットを車両床面に適用する場合であって、運転席用マットの場合には、樹脂バッキング16のブレーキペダル近傍に置かれる部分及び樹脂バッキング16の中央部分、詳細には中央部から前方部分(床面に置いたときエンジンルーム側となる部分)にかけて取り付けるのが望ましい。運転席以外のマットの場合、或いは建物床面に適用する場合には、いずれも樹脂バッキングの中央部分に面ファスナーシートを取り付けるのが効果的である。
【0026】
このようなフロアマットは、例えば図3に示すように、繊維基材12裏面に樹脂バッキング16を配置すると共に、該樹脂バッキング16の裏側に床面に係止するフック部19を有する面ファスナーシート18を前記フック部19が裏側となるように配置し、さらに前記面ファスナーシート18のフック部19を保護する保護シート20を配置し、次いで、これらの積層物をプレス機21で熱プレスすることで、前記樹脂バッキング16を溶融させて前記繊維基材12及び樹脂バッキング16、並びに樹脂バッキング16及び面ファスナーシート18を一体化することで得ることができる。
【0027】
尚、本発明の範囲は、上記例に限定されるものではなく、例えば樹脂バッキングに表裏に貫通する多数の貫通孔を形成して該フロアマットに吸音性を付与したりするなど、特許請求の範囲に記載された範囲で自由に実施することができる。
【符号の説明】
【0028】
12・・・繊維基材
16・・・樹脂バッキング
18・・・面ファスナーシート
19・・・フック部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維基材裏面に樹脂バッキングを形成したフロアマットであって、
前記樹脂バッキングの裏側の一部又は全面に床面に係止するフック部を有する面ファスナーシートを取り付けたことを特徴とするフロアマット。
【請求項2】
フロアマットが車両用マットであり、樹脂バッキングの少なくとも中央部分に面ファスナーシートが取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載のフロアマット。
【請求項3】
フロアマットが車両の運転席用マットであり、樹脂バッキングの少なくともブレーキペダル近傍に置かれる部分に面ファスナーシートが取り付けられていることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載のフロアマット。
【請求項4】
面ファスナーシートが、表面と裏面とを有する縦編み横糸挿入編物の前記表面と裏面とを接続するループ状縦糸をカットした編物からなり、前記縦糸のカット端がフック部として突出していることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のフロアマット。
【請求項5】
面ファスナーシートが、二重織物を表織物と裏織物とに分離した織物の表織物又は裏織物からなり、前記表織物又は裏織物を構成する糸のカット端がフック部として突出していることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のフロアマット。
【請求項6】
面ファスナーシートが、パイル織物のループ(よこ糸)をカットした織物からなり、前記ループ(よこ糸)のカット端がフック部として突出していることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のフロアマット。
【請求項7】
樹脂バッキングが多数のズレ止め用突起を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のフロアマット。
【請求項8】
繊維基材裏面に多数のズレ止め用突起を有する樹脂バッキングを形成したフロアマットの製造方法であって、
前記繊維基材裏面に樹脂バッキングを配置すると共に、該樹脂バッキングの裏側の一部又は全面に床面に係止するフック部を有する面ファスナーシートを前記フック部が裏側となるように配置し、さらに前記面ファスナーシートのフック部を保護する保護シートを配置し、次いで、これらの積層物を熱プレスすることで、前記樹脂バッキングを溶融させて前記繊維基材及び樹脂バッキング、並びに樹脂バッキング及び面ファスナーシートを一体化することを特徴とするフロアマットの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−219066(P2011−219066A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−97393(P2010−97393)
【出願日】平成22年4月3日(2010.4.3)
【出願人】(000149664)株式会社大和 (35)
【出願人】(592083993)株式会社八千代 (34)
【出願人】(592084004)株式会社祥永 (34)
【Fターム(参考)】