説明

フロアマット用金型

【課題】フロアマットの形態の変化や繊維基材の厚みのバラツキに影響されずに、安定かつ確実に、樹脂側にスパイクないし貫通孔を形成できるフロアマット用金型を提供する。
【解決手段】下金型2の受圧面上に繊維基材C及び溶融樹脂Lを積層して載置し、上金型4の押圧面で溶融樹脂Lを押圧して繊維基材Cと溶融樹脂Lとを圧着すると共に押圧面に設けた複数の有底穴及び貫通ピンPにより溶融樹脂Lの表面に複数のスパイク及び貫通孔を形成するフロアマット用金型1であって、上金型4の押圧面K2に、貫通ピンPを突設した第一コマ部材18及び有底穴を設けた第二コマ部材24がそれぞれ交換可能に装着される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロアマットを形成するフロアマット用金型に関する。
【背景技術】
【0002】
防音性を備えたフロアマットとして、以下のものが知られている。
まず、複数の貫通孔が形成された発泡樹脂(バッキング層)と繊維基材(カーペット層)が積層された防音カーペット、及びラグマット(フロアマット)について説明する。
これらの防音カーペット及びラグマットでは、貫通孔によって発泡樹脂内の気泡の一部が開口されている。これにより、発泡樹脂における吸音率を向上させている(特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
また、通気性のある発泡性裏ゴムシート(バッキング層)とカーペット基布(カーペット層)との間にフェルト層を設けて吸音率を向上させたフロアマットも開示されている(特許文献3参照)。
【0004】
また、本出願人により、バッキング層とタフト層を有するフロアマットであって、バッキング層にはシート状のバッキングと、バッキング層と床部とを離間させる突起部と、床部とバッキングとの間の空間に連通しレゾネータを構成する貫通孔とが設けられているフロアマットが提案されている。このとき、この空間を構成要素とするレゾネータによって吸音率を高めたものである(先行出願:特願2008−227078号)。
【0005】
特許文献1−3及び先行出願のように、樹脂側にスパイクないし貫通孔を有するフロアマットを形成する金型として、例えば図15に示す金型Mが従来から使用されている。
図15に示す金型Mは、下金型M1と上金型M2から成り、上金型M2の押圧面K2には、貫通孔THを形成するために溶融樹脂Lを貫通する複数の貫通ピンPと、円柱状または円錐台状に形成されたスパイクSを形成するためのスパイク有底穴SHが一体的に設けられている。
【0006】
そこで、下金型M1の受圧面K1に載置した繊維基材C上部の溶融樹脂Lは、上面が上金型M2の押圧面K2で押圧されると、複数の貫通孔THとスパイクSを規則的に整列配置したフロアマットとして形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−238730号公報
【特許文献2】特開2002−282116号公報
【特許文献3】特開2003−291711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、上述したフロアマット形成用金型には以下の問題点がある。
すなわち、繊維基材Cは、厚みにバラツキが生じ易いため、厚みが薄く構成された部分では貫通ピンPが溶融樹脂Lを貫通しない領域が存在する。このため貫通孔THは、不完全な貫通孔となるのでレゾネータの吸音効果が生じない。
また、繊維基材Cは、厚みが薄く構成された部分では、一定のプレス圧では樹脂の内圧が不足するためスパイクSが不完全な形状となり、フロアマットの品質が安定しない。そこで、プレス圧を上げることにより対応していた(圧力制御)。しかしながら、プレス圧を上げるためには、プレス機を大型化する必要があり、コスト高となる。
【0009】
更に、フロアマットの形態(溶融樹脂Lに配設されるスパイクS又は貫通孔THのピッチや形状)が、車種によって変更になる場合は、上金型M2を新たに設計された専用の金型と交換する必要が生ずる。
これにより、従来の金型では、多大な工数が発生するだけでなく金型の種類も増加することから、フロアマットの形態変更に柔軟に対応することができる金型が要望されていた。
【0010】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、フロアマットの形態の変化や繊維基材の厚みのバラツキに影響されずに、安定かつ確実に、樹脂側にスパイクないし貫通孔を形成できるフロアマット用金型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るフロアマット用金型では、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
本発明に係るフロアマット用金型は、下金型の受圧面上に繊維基材及び溶融樹脂を積層して載置し、上金型の押圧面で前記溶融樹脂を押圧して前記繊維基材と前記溶融樹脂とを圧着すると共に前記押圧面に設けた複数の有底穴及び貫通ピンにより前記溶融樹脂の表面に複数のスパイク及び貫通孔を形成するフロアマット用金型であって、前記上金型の押圧面に、前記貫通ピンを突設した第一コマ部材及び前記有底穴を設けた第二コマ部材がそれぞれ交換可能に装着されていることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、繊維基材の厚みに応じて第一コマ部材及び第二コマ部材を交換することで、フロアマットの溶融樹脂に完全なスパイクまたは貫通孔を形成することができる。また、第一コマ部材及び第二コマ部材は、フロアマットの形態に応じて適宜変更することができ、形態の変更が生じても柔軟に対応することができる。
これにより、上金型は、専用の金型と交換せずにそのまま継続して使用することができる。
【0013】
また、前記上金型の押圧面には、前記第一コマ部材及び前記第二コマ部材がそれぞれ所定ピッチで装着可能であることを特徴とする。
これにより、第一コマ部材及び第二コマ部材は、所定ピッチで装着可能となっているので、所定ピッチの範囲で組み合わせを変更することができる。
【0014】
また、前記上金型または下金型の対向面に、繊維基材と溶融樹脂を積層したフロアマットの厚みを規定するストローク規制部材を取り付けたことを特徴とする。
これにより、フロアマットは、ストローク規制部材により肉厚の寸法管理が可能となるので、その厚みにバラツキが生じることなく、第一コマ部材から突設した貫通ピンにより完全な貫通孔を形成することができる。また、溶融樹脂を過剰に押圧しないので、製品外周に無駄な樹脂がはみ出ずに、樹脂量を低減できる。また、圧力制御の必要がないので、プレス機を大型化する必要がない。
【0015】
また、前記上金型は、前記下金型の受圧面に対面する押圧面を設けた第一上金型と、前記第一上金型の上部にあって前記第一上金型の下降時に所定ストローク範囲で追従移動する第二上金型と、を有し、前記第一上金型には、前記第一コマ部材が装着され、前記第二上金型には、前記第一上金型に形成した貫通孔に挿通する第二コマ部材が装着され、前記第一上金型に前記第二上金型が当接した際に、前記第二コマ部材の下端面が前記第一上金型の押圧面に一致するように位置決めされることを特徴とする。
これにより、第一上金型が、下降時にストローク規制部材に当接すると、所定ストローク範囲で追従移動する第二上金型が遅れて下降移動する。そして、第二コマ部材は、第二コマ部材の下端面が第一上金型の押圧面と一致するまで第一上金型の貫通孔内に収容された溶融樹脂を押圧する。従って、貫通孔内の溶融樹脂内圧が上昇するため確実な形状のスパイクを形成することができる。
【0016】
また、前記第二コマ部材は、前記スパイクの外周部を成形すべく下端面に形成された拡開穴及び該拡開穴に連通する挿通孔が形成されたスリーブと、前記挿通孔に挿嵌した軸部材と、からなることを特徴とする。
これにより、前記軸部材は、下端部までの長さを予め設定しておくことにより、挿通孔に軸部材を挿嵌した際に拡開穴の有底部の深さ(スパイクの高さ)を決定することができる。また、前記軸部材は、挿通孔に対し遊嵌状態で挿通保持させることにより溶融樹脂内部に発生した気泡を外部に排気することができる。
従って、確実な形状のスパイクを成型することができる。
【0017】
また、前記下金型の受圧面から前記ストローク規制部材の上方に向けて突出するプランジャーの上端に、第一上金型の押圧面が当接して前記第一上金型の衝撃を緩衝する緩衝装置34を設けたことを特徴とする。
これにより、第一上金型の押圧面が緩衝装置のプランジャーに当接して下降速度が緩衝されると共に、溶融樹脂は、第一上金型の貫通孔内に徐々に収容されて第二金型の自重により有底部を形成した拡開穴に徐々に充填されるので、気泡の存在しない確実な形状のスパイクを形成することができる。
【0018】
また、前記第一コマ部材又は前記第二コマ部材に代えて、前記貫通ピンのない第一ダミーコマ部材又は前記有底穴のない第二ダミーコマ部材を装着したことを特徴とする。
これにより、フロアマットの形態(貫通孔やスパイクの存在しない部分など)に設計変更が生じた場合でも、第一コマ部材又は第二コマ部材を、貫通ピンのない第一ダミーコマ部材又は前記有底穴のない第二ダミーコマ部材に交換するだけで柔軟に対応することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、下金型の受圧面には繊維基材が載置されると共に繊維基材の上面に溶融樹脂を積層し、前記溶融樹脂は上金型の押圧面により押圧され、溶融樹脂には、上金型の押圧面に交換可能に装着された第一コマ部材及び第二コマ部材とにより、スパイクないし貫通孔が形成される。
これにより、フロアマットの形態が設計変更されても、専用の金型と交換せずにそのまま金型を継続して使用することができる。その結果、組立て作業工数を大幅に削減することができるため、フロアマット製造コストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】フロアマットの模式平面図である。
【図2】図1のA−A模式断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係るフロアマット用金型の主要断面図である。
【図4】上金型が上昇端にある状態を示すフロアマット用金型の動作説明図である。
【図5】上金型の第一上金型が溶融樹脂に接触した状態を示すフロアマット用金型の動作説明図である。
【図6】上金型の第一上金型がストローク規制部材に当接した状態を示すフロアマット用金型の動作説明図である。
【図7】第二コマ部材が下降移動する際に溶融樹脂が貫通孔内に押し上げられる状態を示す部分拡大断面図である。
【図8】第二上金型と共に第二コマ部材が下降する状態を示すフロアマット用金型の動作説明図である。
【図9】第二コマ部材が下降端まで下降した状態を示すフロアマット用金型の動作説明図である。
【図10】押圧成型後に第二コマ部材が上昇を始めた状態を示すフロアマット用金型の動作説明図である。
【図11】スパイク成型後に第二コマ部材が上昇移動する状態を示す部分拡大断面図である。
【図12】第一ダミーコマ部材と第二ダミーコア部材を示すフロアマット用金型の断面図である。
【図13】所定ピッチでスパイク及び貫通孔を整列配置したフロアマットの平面図である。
【図14】所定ピッチで整列配置したスパイク及び貫通孔の一部を第一、第二ダミーコア部材により廃止したフロアマットの平面図である。
【図15】従来のフロアマット用金型の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係るフロアマット用金型の実施形態につき図面を参照して説明する。
先ず、本発明に係るフロアマット用金型で成型される防音性を備えたフロアマットに付き図1、図2を参照して説明する。
【0022】
(フロアマットの構成)
図1は、フロアマットの模式平面図(裏面)、図2はフロアマットのA−A模式断面図である。
【0023】
フロアマット101は、バッキング層110とカーペット層としてのタフト層130とが積層された構造を有しており、バッキング層110を床部190側に設置して使用する。
カーペット層としては、タフト層に限定されるものではなく、例えば、二―ハン層や緞通層であってもよい。
【0024】
図2に示すように、タフト層130は、基布層となる繊維基材Cとパイル132とからなる。
繊維基材Cは通気性を有しており、パイル132を縫い込むための基材として使用する。パイル132は、人に踏まれた場合や、物品が設置された際の衝撃を緩和するためのものである。そしてパイル132は、繊維基材Cの法線方向に略起立した状態で繊維基材Cに縫い込まれている。そして接着層133によって、タフト層130とバッキング層110とが貼り合わされている。
【0025】
図1、図2に示すように、バッキング層110は、シート状のバッキング112、複数のスパイク(突起部)S及び貫通孔THからなり、後述する溶融樹脂Lから一体成型される。
【0026】
スパイク(図1では黒丸で表示)Sは、バッキング112と一体で形成される。また、スパイクSの形状は、特に限定されるものではなく、例えば、円柱状や円錐台状などであってもよい。
【0027】
そして、バッキング112には、複数の貫通孔(図1では白丸で表示)THが形成されている。貫通孔THは、バッキング112と繊維基材Cとを貫通し、空間150とタフト層130の外側の空間とを連通している。
なお、貫通孔THは、必ずしも繊維基材Cを貫通する必要はない。繊維基材Cが通気性を有しているので、空間150とタフト層130の外側の空間とが連通するからである。
【0028】
貫通孔THの形状は、特に限定されものではない。例えば、円柱形や円錐台状などであってもよい。
なお、図1では、スパイクSと貫通孔THとが、交互に等間隔で格子点状に配置されているが、配置例はこれに限らない。
【0029】
(レゾネータ)
ここで、フロアマット101及び床部190により形成されるレゾネータに付き説明する。レゾネータは、貫通孔TH及び空間150で構成されており、その形状に基づいた所定の周波数で吸音率が高くなる。このレゾネータは、ホルムヘルツ型レゾネータと呼ばれ、外部の音を吸収することができる。
【0030】
すなわち、外部の音が貫通孔THを介してレゾネータ(空間150)に導入される。レゾネータ(空間150)に導入された音は、あらゆる周波数が組み合わされたものであるが、レゾネータ(空間150)は、その形状に基づいた所定の周波数で単共振状態を引き起こして、その周波数の音を吸収するようになっている。
【0031】
(フロアマット用金型の構成)
次に、本発明に係る防音性を備えたフロアマットを成型するフロアマット用金型の実施形態につき図面を参照して説明する。
図3は実施形態に係るフロアマット用金型の主要断面図を示している。図3において、実施形態に係るフロアマット用金型1は、溶融樹脂Lに後述する複数のスパイクSや貫通孔THを所定間隔(ピッチ)で整列配置したフロアマット101の形態として成型するものである。
【0032】
フロアマット用金型1は、下金型2と、この下金型2の受圧面K1上に繊維基材Cを載置すると共にこの繊維基材Cの上面に積層した溶融樹脂Lを押圧する押圧面K2を備えた上金型4と、から構成されている。
【0033】
図3に示すフロアマット用金型1は、下金型2の受圧面K1(図4参照)上に載置した繊維基材C上面の溶融樹脂Lを上金型4の押圧面K2(図4参照)で押圧している状態を示している。
上金型4は、下金型2の受圧面K1に対向する押圧面K2を有する第一上金型5と、この第一上金型5の直上に配置される第二上金型6とに分割された構成となっており、第一上金型5と第二上金型6は、上下方向に接近離反可能に構成されている。
【0034】
第一上金型5には、段付き孔12が形成されており、この段付き孔12の上部内周には、雌ネジが螺設されている。段付き孔12には、第一コマ部材18が挿嵌されており、この第一コマ部材18は、段付き孔12上部の雌ネジに螺合した止めネジ20により押圧保持されている。
【0035】
第一コマ部材18の下端には、貫通ピンPが突設しており、この貫通ピンPは、段付き孔12に保持された状態において、第一上金型5の押圧面K2から下方に突出している。この貫通ピンPは、溶融樹脂Lの厚みより僅かに長い寸法で形成されており、第一上金型5で溶融樹脂Lを押圧した際に溶融樹脂Lを貫通させて貫通ピンPの下端が繊維基材Cに喰い込む構成となっている。
【0036】
第二上金型6は、第一上金型5の直上にあって、下端面から順に第一ブロック6a、第二ブロック6b、天板7を積層して連結した一体構成となっている。第二ブロック6bと天板7には、上端のフランジ8aが挟持されて連結軸8が保持されており、下方に形成されたネジ部8bには、第一ブロック6aが螺着されている。
【0037】
第二上金型6の第一ブロック6aには、上下に貫通する段付き孔14が形成されており、この段付き孔14には、第二コマ部材22が挿嵌されている。
第二コマ部材22は、上端にフランジ25aが形成されると共に下端部に後述するスパイクSの外周部を成形する拡開穴24を形成したスリーブ25と、スリーブ25の軸芯を貫通する挿通孔25bに挿嵌された軸部材26とから構成されている。
【0038】
第二コマ部材22のフランジ25aは、段付き孔14と第二ブロック6bとの間に挟持されている。第一上金型5には、第二上金型6の段付き孔14の同軸上には貫通孔15が形成されており、この貫通孔15には、段付き孔14を挿通したスリーブ25の下方外周が上下方向に摺動可能に挿通保持されている。
【0039】
スリーブ25の拡開穴24は、例えば先細のテーパー状に形成されており、前記貫通孔15に挿通保持した軸部材26の下端面によって、スパイクSの外周部を成形するテーパー状のスパイク有底穴SHが形成されている。
第二ブロック6bと天板7には、上端のフランジ10aが挟持されてガイド軸10が垂直に保持されている。ガイド軸10は、第一、第二ブロック6a,6bを挿通した下端部が、第一上金型5に装着されたガイドブッシュGに摺動可能に保持されており、第一上金型5を上下移動可能に案内している。
【0040】
第一ブロック6aの下端面に形成されたネジ穴28bには、ストローク規制軸28の上端が螺着されており、ストローク規制軸28の下端に形成されたフランジ28aは、第一上金型5の下端面に開口する有底穴30内に収容されている。
【0041】
一方、下金型2の受圧面K1上には、複数のストローク規制部材32が所定間隔で取付けられている。これにより、上金型4が下降移動したときは、第一上金型5の押圧面K2がストローク規制部材32に当接するので、前記押圧面K2が溶融樹脂Lを過剰に押圧するのを規制している。これにより、製品外周にはみ出る無駄な樹脂の量が最小限となるので、樹脂量の低減を図ることができる。
【0042】
したがって、フロアマット101は、ストローク規制部材32により、肉厚の寸法管理が可能となるので、その厚みにバラツキが生じても第一コマ部材18から突設した貫通ピンPにより完全な貫通孔THを形成することができる。
また、下金型2を支持する基台B上には、緩衝装置となるダンパー34が設置され、このダンパー34の上部には、衝撃を緩衝するためのプランジャー35が突出しており、下降移動する第一上金型5の押圧面K2に当接するように構成されている。
【0043】
すなわち、上金型4の押圧面K2が溶融樹脂Lを押圧した状態では、ストローク規制軸28のフランジ28a下端面は、第一上金型5の下端面と面一に位置している。同様に、ガイド軸10の下端面も第一上金型5の下端面と面一に位置している。
【0044】
(フロアマット用金型の作用)
次に、フロアマット用金型の作用に付き、図4〜図11を参照して説明する。
図4において、フロアマット用金型1の初期位置では、上金型4は、下金型2に対し上方に大きく離反した状態で上昇端に位置している。この状態では、第一上金型5は、ガイド軸10に案内されて第二上金型6から下方に移動した位置(間隔H)にあり、ストローク規制軸28のフランジ28aにより保持されている。
【0045】
そこで、下金型2の受圧面K1上に、繊維基材Cが載置されて複数のストローク規制部材32の間に配設されると、繊維基材Cの上面には加熱された溶融樹脂Lが積層される。
【0046】
図5において、上金型4は、第一ブロック6aと第一上金型5の間隔Hを保ちつつガイドブッシュGに案内されて下金型2に向け下降移動する。上金型4の下降移動により第一上金型5の押圧面K2は、ダンパー34のプランジャー35に当接する。
これにより、第一上金型5の下降速度が緩衝されると共に、溶融樹脂Lは、第一上金型5の貫通孔15内に徐々に収容されて第二上金型6の自重により有底部を形成した拡開穴に徐々に充填されるので、気泡の存在しない確実な形状のスパイクを形成することができる。
【0047】
そこで、第一上金型5下端の押圧面K2は、下金型2上面の溶融樹脂L表面に接触する。この状態で前記押圧面K2は、ストローク規制部材32の上面に未だ当接していないが、押圧面K2から下方に向けて突設した貫通ピンPは、溶融樹脂L内に圧入される。
【0048】
図6において、上金型4が更に下金型2に向けて下降移動を続けると、第一上金型5の押圧面K2がストローク規制部材32の上面に当接する。
第一上金型5は、押圧面K2がストローク規制部材32の上面に当接すると下降移動は停止するが、第二上金型6は下降移動を続ける。これにより、第二上金型6に取付けられている連結軸8、ガイド軸10、第二コマ部材22は、第一上金型5より遅れて下降移動する。
その結果、第二上金型6と第一上金型5の間隔Hは、H1に縮まると共にストローク規制軸28のフランジ28a裏面と有底穴30底面との間隔はH2(=H−H1)に開く。
【0049】
ここで、図7を参照して、第二コマ部材22が下降移動する際に、溶融樹脂Lが貫通孔15内に押し上げられる状態を説明する。
第一上金型5の押圧面K2が、ストローク規制部材32の上面に当接した状態では、貫通ピンPが溶融樹脂Lを貫通して繊維基材Cに喰い込む。これと同時に、第一上金型5の押圧面K2により押圧された溶融樹脂Lは、その押圧力により溶融樹脂Lの内圧が昇圧する。
【0050】
これにより、貫通孔15内の溶融樹脂L1は、白矢印のように貫通孔15の内部に押し上げられる。この状態で、第二コマ部材22のスリーブ25は、第二上金型6の下降移動により第一上金型5の下降移動より遅れて貫通孔15内を下降移動する。
【0051】
次いで、図8において、更に、連結軸8、ガイド軸10、第二コマ部材22が第二上金型6と共に下降移動すると、第二上金型6と第一上金型5の間隔H1はH3に縮まり、ストローク規制軸28のフランジ28a裏面と有底穴30底面との間隔H2はH4に拡大する。
【0052】
これにより、貫通孔15の内部に押し上げられた溶融樹脂L1は、第二上金型6の下降移動により下降移動してきた第二コマ部材22の下端面に押圧されてスリーブ25下端の拡開穴24内部に押し上げられて略スパイク状の溶融樹脂L2が形成される。
【0053】
図9において、下降移動する第二上金型6が、第一上金型5に当接するとその間隔H3は0になり、ストローク規制軸28のフランジ28aの下端面とガイド軸10の下端面は、第一上金型5の押圧面K2と面一に位置する(図3と同じ状態)。
そこで、拡開穴24内部の溶融樹脂L2は、第二コマ部材22の下降移動により押圧されてスパイク有底穴SHの内部に圧入される。これにより、溶融樹脂L2は、外周部が先細となる完成されたテーパー状のスパイクSとして形成される。
【0054】
ここで、溶融樹脂Lがスパイク有底穴SH内部に圧入されるに際し、溶融樹脂L内部に生じる気泡は、貫通孔15に遊嵌状態で挿通保持されるスリーブ25、ないしスリーブ25の挿通孔25bと軸部材26の隙間を通して外部に排気することができる。これにより、溶融樹脂Lの上面に内部に気泡が存在しない確実なスパイクSを形成することができる。
【0055】
勿論、溶融樹脂Lには、第一コマ部材18の貫通ピンPによって、貫通孔THが形成される。これにより、シート状の溶融樹脂Lには、複数のスパイクSと貫通孔THが所定ピッチで整列配置されたフロアマット101として成型することができる。
【0056】
図10において、フロアマット成型後の金型1は、先に、第二上金型6が上昇移動を始める。これにより、連結軸8、ガイド軸10、第二コマ部材22は、第二上金型6と共に上昇して第二上金型6と第一上金型5が離間する。
【0057】
ここで、図11を参照して、溶融樹脂によるスパイクSの成型後に第二コマ部材22が上昇移動する状態を説明する。
第二上金型6が上昇移動すると、先ず第二コマ部材22が上昇移動する。この第二コマ部材22の上昇移動によって、スリーブ25は、軸部材26と共に貫通孔15内を上昇移動する。これにより、スリーブ25下端のスパイク有底穴SHは、溶融樹脂Lの上面に形成されたスパイクSから抜き出される。
【0058】
より具体的には、スパイクSの外周が形成される拡開穴24の内部には、スリーブ25の上昇移動に伴って貫通孔15とスリーブ25間の隙間、ないしスリーブ25と軸部材26の隙間から外気が拡開穴24内部に吸入される。これにより、拡開穴24は、第二上金型6の上昇作用によって成型後のスパイクSから離反されるので、第二コマ部材22を容易に抜き出すことができる。
【0059】
フロアマット用金型1では、第一コマ部材18及び第二コマ部材22を交換可能な構成としている。これにより、フロアマット101の形態に応じて適宜変更することができ、形態の変更が生じても柔軟に対応することができる。したがって、上金型4は、専用の金型と交換せずにそのまま継続して使用することができる。
【0060】
従来のフロアマット用金型Mは、図15に示すように、上金型M2の押圧面K2に貫通孔THを形成するために溶融樹脂Lを貫通する複数の貫通ピンPと、円柱状または円錐台状に形成されたスパイクSを形成するためのスパイク有底穴SHが一体的に設けた構成であったので、フロアマット101の形態の変更に応じることができなかった。
これに対して、上述したように、フロアマット用金型1では、従来のフロアマット用金型Mにおける問題点を解消できる。
【0061】
なお、フロアマット101として、溶融樹脂Lには、複数のスパイクS又は貫通孔THが所定ピッチで整列配置された形態で形成されるが、繊維基材Cの厚みにバラツキが生じるため、繊維基材Cの厚みが薄い場合には、第一コマ部材18の貫通ピンPが溶融樹脂Lを貫通しない領域が発生する。
【0062】
このような場合には、成型されたフロアマット101の不完全孔部を検査により確認し、この不完全孔部に対応する第一コマ部材18を貫通ピンPの長い第一コマ部材に交換することで、完全な貫通孔THが形成されたフロアマット101として成型することができる。
【0063】
(第一ダミーコマ部材及び第二ダミーコマ部材)
次に、貫通ピンのない第一ダミーコマ部材又は有底穴のない第二ダミーコマ部材に付き、図12を参照して説明する。
【0064】
前述したように、複数のスパイクSと貫通孔THを所定ピッチで整列配置したフロアマット101は、使用される車種によってスパイクSや貫通孔THが不要な箇所や、追加する個所が発生する。このような場合には、新たなフロアマットの形態として専用の金型が必要となる。
【0065】
そこで、少なくともスパイクSや貫通孔THが不要な箇所には、第一コマ部材18又は第二コマ部材22に代えて、貫通ピンのない第一ダミーコマ部材18A又は有底穴のない第二ダミーコマ部材22Aを装着することで、上金型4を共用可能として専用の金型を削減するようにしたものである。
【0066】
図12において、第一ダミーコマ部材18Aは、第一コマ部材18の下端から突設する貫通ピンPを削除して平坦な下端面を形成したコマ部材として形成されている。
また、第二ダミーコマ部材22Aは、第二コマ部材22の一部を構成するスリーブ25の拡開穴24及び挿通孔25bの無い、下端面が平坦な中実のコマ部材として構成されている。
これにより、第一コマ部材18,第二コマ部材22に代えて、第一ダミーコマ部材18A,第二ダミーコマ部材22Aを装着することによって、溶融樹脂Lに貫通孔TH,スパイクSが形成される部位は、貫通孔TH,スパイクSの無い平坦な面として形成される。
【0067】
次に、第一ダミーコマ部材18A及び第二ダミーコマ部材22Aの使用例に付き図13、図14を参照して説明する。
図13において、フロアマット40は、シート状の溶融樹脂Lに複数のスパイクSと貫通孔THが、所定ピッチで整列配置した形態で成形されている。ここで、例えば、フロアマット40外側のX−X及びY−Yの縦横列に配置される複数のスパイクSと貫通孔THが不要となる形態に変更される場合は、X−X及びY−Yの縦横列のスパイクSと貫通孔THに対応する第一コマ部材18及び第二コマ部材22に代えて、第一ダミーコマ部材18A及び第二ダミーコマ部材22Aが装着される。
【0068】
これにより、図14に2点鎖線で示すようにX−X及びY−Yの縦横列にスパイクSや貫通孔THの無い形態のフロアマット42が形成される。
このように、第一コマ部材18及び第二コマ部材22は、フロアマット101の形態に応じて適宜変更することができ、形態の変更が生じても柔軟に対応することができる。これにより、上金型M2は、専用の金型と交換せずにそのまま継続して使用することができる。
また、第一コマ部材18及び第二コマ部材22は、所定ピッチで装着可能となっているので、所定ピッチの範囲で組み合わせを変更することができる。
【0069】
なお、前述した実施の形態で示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【符号の説明】
【0070】
1…フロアマット用金型、 2…下金型、 4…上金型、 5…第一上金型、 6…第二上金型、 15…貫通孔、 18…第一コマ部材、 18A…第一ダミーコマ部材、 22…第二コマ部材、 22A…第二ダミーコマ部材、 25…スリーブ、 25b…挿通孔、 26…軸部材、 32…ストローク規制部材、 34…ダンパー(緩衝装置)、 35…プランジャー、 101…フロアマット K1…受圧面、 K2…押圧面、 P…貫通ピン、 SH…スパイク有底穴、 C…繊維基材、 L…溶融樹脂、 S…スパイク、 TH…貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下金型の受圧面上に繊維基材及び溶融樹脂を積層して載置し、上金型の押圧面で前記溶融樹脂を押圧して前記繊維基材と前記溶融樹脂とを圧着すると共に前記押圧面に設けた複数の有底穴及び貫通ピンにより前記溶融樹脂の表面に複数のスパイク及び貫通孔を形成するフロアマット用金型であって、
前記上金型の押圧面に、前記貫通ピンを突設した第一コマ部材及び前記有底穴を設けた第二コマ部材がそれぞれ交換可能に装着されることを特徴とするフロアマット用金型。
【請求項2】
前記上金型の押圧面に、前記第一コマ部材及び前記第二コマ部材がそれぞれ所定ピッチで装着可能であることを特徴とする請求項1に記載のフロアマット用金型。
【請求項3】
前記上金型または下金型の対向面に、繊維基材と溶融樹脂を積層したフロアマットの厚みを規定するストローク規制部材を取り付けたことを特徴とする請求項1に記載のフロアマット用金型。
【請求項4】
前記上金型は、前記下金型の受圧面に対面する押圧面を設けた第一上金型と、前記第一上金型の上部にあって前記第一上金型の下降時に所定ストローク範囲で追従移動する第二上金型と、を有し、
前記第一上金型には、前記第一コマ部材が装着され、
前記第二上金型には、前記第一上金型に形成した貫通孔に挿通する第二コマ部材が装着され、前記第一上金型に前記第二上金型が当接した際に、前記第二コマ部材の下端面が前記第一上金型の押圧面に一致するように位置決めされることを特徴とする請求項1または2に記載のフロアマット用金型。
【請求項5】
前記第二コマ部材は、前記スパイクの外周部を成形すべく下端面に形成された拡開穴及び該拡開穴に連通する挿通孔が形成されたスリーブと、前記挿通孔に挿嵌した軸部材と、からなることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載のフロアマット用金型。
【請求項6】
前記下金型の受圧面から前記ストローク規制部材の上方に向けて突出するプランジャーの上端に、前記第一上金型の押圧面が当接して前記第一上金型の衝撃を緩衝する緩衝装置を設けたことを特徴とする請求項3から5の何れか1項に記載のフロアマット用金型。
【請求項7】
前記第一コマ部材又は前記第二コマ部材に代えて、前記貫通ピンのない第一ダミーコマ部材又は前記有底穴のない第二ダミーコマ部材を装着したことを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載のフロアマット用金型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−73308(P2011−73308A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−227672(P2009−227672)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(504136889)株式会社ファルテック (57)
【Fターム(参考)】