フロンタルアフィニティクロマトグラフィー/MALDIタンデム質量分析
捕捉されたジヒドロ葉酸還元酵素を収容する、ゾル−ゲル由来のモノリシックシリカカラムを、低分子混合物のフロンタルアフィニティクロマトグラフィーのために使用した。このカラムからの出力を、マトリックス分子(HCCA)を含有する第二のストリームと組み合わせ、そして従来のMALDIプロ−と上に直接沈着させ、このMALDIプレートを、コンピュータ制御されるx−yステージを介してカラムに対して移動させ、FAC実行の半永久的な記録を作成した。MALDI MSの使用は、FAC法とMS法との切り離しを可能にし、かなり高いイオン強度の緩衝液が、FAC研究のために使用されることを可能にし、これにより、複数の実行にわたるタンパク質活性のより良好な保持が可能になった。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、クロマトグラフィー分析からの化合物を、特に、質量分析を使用して分析する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
バイオアフィニティクロマトグラフィーは、サンプルの精製および浄化1、キラル分離2、タンパク質のオンラインタンパク質分解消化3、支持された生体触媒の開発4、およびより最近は、フロンタルアフィニティクロマトグラフィー(FAC)方法を介する化合物ライブラリーのスクリーニング5、6のために、広範に使用されている。FACの基本的な前提は、化合物の連続的な注入が、遊離状態と結合状態との間でのリガンドの平衡を可能にし、ここで、遊離リガンドの正確な濃度が既知であることである。この場合、この化合物の漏出時間は、固定された生体分子に対するリガンドの親和性に対応する。より高い親和性を有するリガンドは、より遅く漏出する。
【0003】
このカラムから溶出する化合物の検出は、蛍光7、放射能6、またはエレクトロスプレー質量分析5のような方法を使用して、達成され得る。前者2つの方法は、通常、標識されたライブラリー、または標識された指示薬化合物を使用する。この標識された指示薬化合物は、より強い結合リガンドが存在する場合、より早く交換されることに関して、既知の非標識化合物と競合する。しかし、いずれの場合にも、これらの方法は、標識された化合物を得る必要性、およびアッセイにおいて使用される化合物の事前の知識に対する必要性に起因して、制限された汎用性を有する。なぜなら、構造の情報が、検出器によって提供されないからである。従って、蛍光測定法および放射線測定法は、異なる化合物の分析のためのみに、有用である傾向がある。
【0004】
他方で、FACをESI−MSと連動させることは、化合物の混合物をスクリーニングするための、非常に汎用性のある方法であることが示された5。MS、および特に、MS/MS検出の使用は、種々の化合物についての構造の情報を同時に得る機会を提供する。混合物中の化合物の正体が既知である場合、これらの分析物は、多重反応モニタリング(MRM)モードを使用して、同時に、そして定量的な様式で検出され得、その方法のスループットを改善する。FAC/MS技術のこの独特の局面は、化合物混合物のハイスループットのスクリーニング5、8のような用途のための主要な利点であると考えられるが、質量分析計への化合物の導入のためにエレクトロスプレーイオン化を使用する結果として生じる、いくつかの潜在的な欠点が存在する。例えば、安定なエレクトロスプレーを得ることは、低いイオン強度の溶出物の使用を必要とし、このことは、いくつかの場合において、カラムに固定されたタンパク質の活性を維持することと、両立しないかもしれない9。低いイオン強度はまた、効果的ではない二重層をもたらし得、これは、化合物とシリカカラムとの静電相互作用を介して、かなりの非選択的結合を引き起こし得る。さらに、ESI/MSを使用する場合、分析の1つのモードのみが、1回のクロマトグラフィーの実行について可能である。最後に、分析物のレベルは、エレクトロスプレーにおいて、大きいイオン電流を引き起こし得、これは、イオン抑制をもたらし得る10。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
バイオアフィニティカラムから溶出する化合物を検出するための、より適合性活より効率的な手段に対する必要性が、残っている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の要旨)
バイオアフィニティカラムから溶出する化合物を検出する、現在使用される方法に付随する、上に列挙された問題を克服するために、質量分析工程をオフラインで実施することにより、クロマトグラフィーと質量分析とを切り離すことが、有利である。このことは、フロンタルアフィニティクロマトグラフィー(FAC)を、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)MSと組み合わせることによって、最も効率的に達成される。その一般的なアプローチは、MALDI標的にFAC溶出物を沈着させ、その後、MALDI/MS分析を行うことである。ESIと比較して、MALDI分析は、緩衝液に対するより高い許容性、1つの分析物あたりのより低いサンプル消費、および減少した分析時間という利点を有する。SM工程とMS工程との分離はまた、各分析物についてのMS検出パラメータの、独立した最適化を可能にする。
【0007】
本発明者らは、FACを、新たに開発されたゾル−ゲル由来のモノリシックバイオアフィニティカラム9を使用して、MALDI−MS/MS検出に統合し、そして異なるイオン強度での溶出を使用して、小さい酵素インヒビターが捕捉されたジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)と相互作用する能力を試験することによって、その作動を、FAC−ESI/MS/MSと比較した。この連動は、カラム溶出物を、適切なマトリックスと混合すること、引き続いて、噴霧器により補助される、この混合物のMALDIプレート上へのエレクトロスプレー沈着を包含する。このMALDIプレートは、コンピュータ制御されるx−y並進ステージ上に存在する。クロマトグラフィーの残りを、半永久的にMALDIプレート上に沈着させ、MALDI/MS/MSによる、オフラインでの引き続く分析物を可能にする。カラムによって沈着されたトラックの上をレーザーで操作し、一方で、溶出した化合物をMRMモードでモニタリングすることによって、フロンタルクロマトグラムが直接再構築され、各分析物についての漏出曲線を与え得る。FACのための検出方法として、MALDI/MS/MSは、ESI/MS/MSと比較して、多数の利点を有することが示される。例えば、高いイオン強度の溶出緩衝液に対するより良好な許容(これは、カラム内のタンパク質の活性を維持することを補助し、そして非特異的な結合を減少させる);FACの実行後ほんの数分での、1つのプレートからの十分な多重MS走査の能力;およびイオン抑制効果が制限された状態での、高いレベルの潜在的なインヒビターを検出する能力が挙げられる。これらの結果は、FAC/MALDI−MSが、化合物混合物のハイスループットスクリーニングに十分に適していることを示す。
【0008】
従って、本発明は、化学サンプルを分析するためのシステムを包含し、このシステムは、MALDI質量分析計と連動する、フロンタルアフィニティクロマトグラフィーカラムを備える。
【0009】
本発明はまた、フロンタフアフィニティクロマトグラフィー(FAC)からのサンプルを分析する方法を包含し、この方法は、以下の工程を包含する:
(a)FACカラムからの溶出物をマトリックスと混合する工程;
(b)(a)における混合物を表面に沈着させる工程;および
(c)MALDI質量分析を使用して、沈着された混合物を分析する工程。
【0010】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明から明らかになる。しかし、詳細な説明および具体的な実施例は、本発明の好ましい実施形態を示すものの、これらは、例示のみとして与えられることが理解されるべきである。なぜなら、本発明の精神および範囲に入る種々の変更および改変が、この詳細な明細書から、当業者に明らかになるからである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明が、ここで、図面に関連して記載される。
【0012】
(発明の詳細な説明)
FAC/MS研究のための新たなプラットフォームとしての、MALDI/MSとバイオアフィニティカラムとの連動が、本明細書中に記載される。捕捉されたジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)を収容する毛管カラムを、低分子混合物のフロンタルアフィニティクロマトグラフィーのために使用した。このカラムからの出力が、メタノール中にマトリックス分子であるα−シアノ−ヒドロキシコハク酸(CHCA)を含有する第二のストリームと混合され、そして噴霧器により補助されるエレクトロスプレー法を使用して、従来のMALDIプレート上に沈着され、このプレートは、コンピュータ制御されるx−yステージを介してカラムに対して移動し、FAC実行の半永久的な記録を作成した。MALDI MS/MSの使用は、FAC法とMA方途の切り離しを可能にし、かなり高いイオン強度の緩衝液が、FAC研究のために使用されることを可能にし、これによって、イオン性化合物の非特異的な結合が減少し、そして複数の実行にわたって、タンパク質活性のより良好な保持が可能になった。沈着後、MALDI分析は、クロマトグラフィーの実行時間の一部のみを必要とし、そして沈着したトラックは、複数回にわたって再実行され得、イオン化パラメータを最適化し、そして信号対雑音を改善するために、信号の平均化を可能にした。さらに、高レベルの潜在的なインヒビターが、制限されたイオン抑制効果で、MALDIを介して検出され得た。同じイオン強度条件が使用された場合、MALDIベースの分析とESIベースの分析との両方が、化合物混合物中に存在するインヒビターの、類似の保持を示した。これらの結果は、FAC/MALDI−MSが、化合物混合物のハイスループットのスクリーニングについて、FAC/ESI−MSより優れた利点を提供することを示す。
【0013】
従って、本発明は、化学サンプルを分析するためのシステムを包含し、このシステムは、MALDI質量分析計と連動する、フロンタルアフィニティクロマトグラフィー(FAC)を備える。
【0014】
用語「分析(する)」とは、本明細書中で使用される場合、化学サンプル中の1つ以上の化合物についての情報が、そのシステムを使用して得られることを意味する。このような情報としては、化合物の実体(分子量および断片化パターンを介する)、ならびにカラム中の生物学的材料とのその化合物の相互作用に関連する親和性、反応性、および他の速度論的定数(すなわち、カラム上での保持時間)が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0015】
「連動(する)」とは、FACカラムからの溶出物ストリームが、例えば、別のストリームからのMALDIマトリックス材料と混合され、そしてこの混合物が、MALDI−MS検出のための任意の適切な表面(例えば、標準的なMALDI−MSプレート)上に沈着することを意味する。この混合物は、任意の適切な方法(例えば、MALDI沈着の前の画分収集11;毛管からのスポット12、13、14またはトラック15、16の、噴霧器により補助される直接的な沈着;電気力学的荷電液滴処理17;加熱された液滴界面を使用する沈着18;微小分配を介する圧電フロースルー19、20;減圧により補助される沈着21;電場により駆動される液滴沈着22;エレクトロスプレー沈着23;または毛管噴霧器スプレー24、25であるが、これらに限定されない)を使用して、不連続なスポットとしてか、または連続的なトラックとして、沈着され得る。本発明の1つの実施形態において、沈着は、噴霧器により補助される、トラックの直接的な沈着である。
【0016】
本発明の1つの実施形態において、沈着の間のプレートの動きは、コンピュータによって制御される。
【0017】
本発明のシステムの例示的な実施形態が、図1に示されている。MALDIプレート上への沈着のために、カラム(10)からの溶出物が、MALDIマトリックス(20)と混合され得る。次いで、得られる全体の流れが、MALDIプレート(30)上に、任意の公知の沈着方法(例えば、連続的な沈着)を使用して、沈着され得る。プレートの、X−Y−Z並進ステージ内での移動は、コンピュータ(40)によって制御され得る。これらの並進ステージは、X−Y面内での沈着運動、およびMALDIプレートからのZ軸に沿ったスプレー器の分離を制御する。3つ全ての軸内での動きと一緒に、高電圧および噴霧器ガスの流れの適用もまた、1つのコンピュータ(40)によって制御され得る。カラムの流れは、マトリックスと混合されて、T字型接合部(50)を通って、流れを形成し得る。この混合された流れは、例えば、融解シリカチュービングによって運ばれ、ステンレス鋼電極(60)を通過する。この電極自体は、噴霧器の内部にある。融解シリカとステンレス鋼の電極との両方が、ノズル(70)からわずかに突出する。別の混合用T字管(80)が、この噴霧器を設置し、そして不活性ガス(90)(例えば、N2)を導入するために、使用される。エレクトロスプレー電圧と噴霧器の気体の流れとの両方が、手動で調節され得、そして指で作動され得る。
【0018】
当該分野において公知の方法を使用して、沈着パラメータ(プレートの上方へのスプレー器の距離、噴霧器の気体の流れ、および電場が挙げられる)が、最大のトラック均質性および最小のトラック幅を得るために、最適化され得る。プレートが沈着チップの下で移動される並進速度もまた、最適なトラックの厚さを提供し、同時に必要なクロマトグラフィー分解能を維持するために、最適化され得る。
【0019】
本発明のシステムは、タンデムで実行される複数のFACカラムを使用する、化学サンプルの分析に適用され得る。複数のFACカラムとMSプレートとの間の界面の例示的な実施形態を示す概略が、図2に示される。
【0020】
沈着されたプレートは、MALDIイオン源を備える任意の質量分析計を使用して、当該分野において公知の技術を使用して、分析され得る。
【0021】
FACカラムは、FACが使用される任意の用途において固体支持体として使用される、任意の型のカラムであり得る。本発明の1つの実施形態において、FACカラムは、バイオアフィニティ毛管カラムである。本発明のさらなる実施形態において、FACカラムは、モノリシックなシリカマトリックスを収容する。適切には、このモノリシックなシリカマトリックスは、ゾル−ゲル技術を使用して調製される。本発明の複数の実施形態において、このモノリシックなシリカマトリックスは、生体分子適合性の技術を使用して、調製される。「生体分子適合性」とは、その技術が、タンパク質および/または他の生体分子を安定化するか、あるいはこれらの変性を促進しないことを意味する。FACのために適切な、生体分子適合性のシリカマトリックスを調製するための方法は、Ahangら、米国特許出願公開番号US−2004−0249082−A1(2004年12月9日公開)において報告されている。
【0022】
化学サンプルは、任意の数の化学的実体を含有する溶液であり得る。1つの実施形態において、この方法は、モジュレーター、基質、および/もしくは生物学的分子(例えば、タンパク質、ペプチドもしくは核酸(DNAおよびRNAが挙げられる)または生物学的材料(例えば、細胞および組織)に結合する他の化合物についての、ハイスループットのスクリーンにおいて使用され、ここで、この生物学的分子または生物学的材料は、カラムのマトリックス内に捕捉されるか、またはこのカラムの表面に他の様式で固定される。このサンプルは、例えば、化合物のライブラリーまたは天然供給源からの抽出物を含有し得る。この方法はまた、全ての化学的実体(酵素反応の基質および産物が挙げられる)をモニタリングしながら、推定酵素モジュレーターのスクリーニングのために使用され得る(例えば、ハイスループットの酵素反応の特徴付け、または他の生体分子反応において)。
【0023】
用語「生体分子」または「生物学的材料」とは、本明細書中で使用される場合、シリカ内に捕捉され得る、広範な種々のタンパク質、酵素および他の感受性生体高分子(DNAおよびRNA)ならびにこれらの誘導体、ならびに複雑な系(植物全体、動物全体、および微生物細胞全体が挙げられる)の、天然に存在するものと合成によるものとの両方のいずれかを包含し、そしてこれらを意味する。生体分子は、適切な溶媒(例えば、水性緩衝溶液)に溶解され得る。本発明の1つの実施形態において、生物学的物質は、その活性形態にある。
【0024】
本発明はまた、フロンタルアフィニティクロマトグラフィー(FAC)からの化学サンプルを分析する方法を包含し、この方法は、以下の工程を包含する:
(a)FACカラムからの溶出物をマトリックスと混合する工程;
(b)(a)における混合物を表面に沈着させる工程;および
(c)この沈着した混合物を、MALDI質量分析を使用して分析する工程。
【0025】
このマトリックスは、MALDI−MSにおいて使用される任意の材料であり得る。本発明の1つの実施形態において、このマトリックスは、メタノールに溶解した、α−シアノ−ヒドロキシコハク酸(CHCA)である。適切には、このCHCA溶液の濃度は、0.01M〜約0.1M、より適切には、約0.03M〜約0.05Mであり得る。
【0026】
溶出物とマトリックスとは、約1:5〜約5:1の体積比、適切には、約1:2〜2:1の体積比で、混合され得る。1つの実施形態において、溶出物とマトリックスとは、約1:1の体積比で混合される。
【0027】
FACカラムからの溶出物は、溶出液と、必要に応じて、サンプル由来の1種以上の化合物とを含有する。FACのために適切な任意の溶出液および使用される特定のカラムが、使用され得る。溶出液が、高いイオン強度の溶出緩衝液(例えば、10nMより大きいイオン強度を有する緩衝液)が使用され得ることは、本発明の特定の利点である。
【0028】
当業者は、適切な流量、溶出液および他のクロマトグラフィーパラメータを、例えば、カラムの大きさ、カラム材料およびサンプルの実体に基づいて、当該分野において公知の方法を使用して、決定し得る。
【実施例】
【0029】
(化学物質)
テトラエチルオルトシリケート(TEOS、99.999%)および3−アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)をAldrich(Oakville,ON)から入手した。ジグリセリルシラン前駆体を、TEOSから、他の箇所26に記載されるように調製した。トリメトプリム、ピリメタミン、葉酸、ポリ(エチレングリコール)(PEG/PEO,MW10kDa)およびフルオレセインを、Sigma(Oakville,ON)から入手した。MALDIマトリックス溶液(メタノール中6.2mg/mLのα−シアノ−ヒドロキシコハク酸、CHCA)を、Agilent(部品番号G2037A)から入手した。組換えジヒドロ葉酸還元酵素(E.coli由来)(これを、メトトレキサートカラムでアフィニティ精製した)を、Eric Brown教授(McMaster University)から入手した27。融解シリカ毛管チュービング(内径250μm、外径360μm、ポリイミドコーティング)を、Polymicro Technologies(Phoenix,AZ)から入手した。全ての水を、Milli−Q合成A10水精製システムを使用して、蒸留および脱イオンした。他の全ての試薬は、分析等級のものであり、そして入手した状態のままで使用した。
【0030】
(器具)
(FAC/MSシステム)
FAC/ESI−MS研究のために使用したシステムを、図3に示す。シリンジポンプ(Harvard Instruments Model 22)を使用して、溶液を送達し、そして流れ切り換え弁を使用して、アッセイ緩衝液と、化合物混合物を含有する溶液との間を切り替えた。次いで、この溶液を、カラムに通してポンプ送達し、平衡に達せさせた。溶出物を、適切な有機改変剤と混合して、三重四重極MSシステム(PE−Sciex API 3000TM)を使用する、安定なエレクトロスプレーの発生およびスプレーされる成分の検出可能性を補助した。Rheodyne 8125インジェクタ弁を使用して、操作の間、緩衝液ストリームから、緩衝液+分析物のストリームに切り替えた。カラムを、ルアー毛管アダプタ(ルアーアダプタ、Upchurch製のFerrule and Green Microtight Sleeve(P−659,M−100,F−185X))を使用して、FACシステムと連動させた。構成要素間の他の全ての接続を、融解シリカチュービングを使用して達成した。
【0031】
FAC/MALDI/MS/MSのための器具が、図1に示される。MALDIプレート上への沈着のために、カラムの溶出物を、メタノール中のα−シアノ−ヒドロキシコハク酸(CHCA)MALDIマトリックス(5μL/分で流れる)と、1:1の体積比で混合した。次いで、得られた流れ全体を、MALDIプレート上に、連続沈着プロセスを使用して沈着させた。この実験において、誂えで組み立てた、噴霧器で補助されるエレクトロスプレーシステムを使用して、コンピュータ制御されるX−Y並進ステージ上に設置されたApplied Biosystems MALDIサンプルプレート(Opti−TOFTMシステム)上に、トラックを沈着させた。この並進ステージは、404シリーズの軸からなる3軸位置決めシステムの一部であり、Parker Hanifin製のAries制御器およびCompumotors製のACR PIC制御カードが、X−Yプレート内での沈着の動き、およびZ軸に沿ったMALDIプレートからのスプレー器の分離を制御する。3つ全ての軸、および高電圧(誂えで組み立てた、指で制御される高電圧電源、4kV)の印加、および噴霧器の気体の流れ(Clippard minimatics弁Et−2M)を、1つのDell Precision 340コンピュータから、ACR制御カードを介して制御した。カラムの流れを、Valco製のステンレス鋼製のT字型接合部において、CHCA形成流れと混合した。この混合した流れを、融解シリカチュービング(外径/内径200μm/100μm)によって運び、ステンレス鋼製の電極に通した。この電極自体は、噴霧器の内部に存在した。融解シリカとステンレス鋼電極との両方は、ノズル(内径0.6mm)からわずかに(1mm)突出した。混合用のT字管を使用して、噴霧器を設置し、そしてこの噴霧器に、N2ガスを導入した。エレクトロスプレー電圧と噴霧器の気体の流れとの両方を、手動で調節し、そして指で作動させた。
【0032】
沈着パラメータ(プレート上のスプレー器の距離、噴霧器の気体の流れ、および電場が挙げられる)を、最大のトラック均質性および最小のトラック幅を得るために、最適化した。沈着チップの下方でプレートを移動させる並進速度もまた、必要なクロマトグラフィー分解能を維持しながら最適なトラック厚さを提供するために、最適化した。エレクトロスプレーチップの最適な高さは、サンプルプレートの8mm上方であり、一方で、気体の流れ(1.5L/分の窒素)と電場(エレクトロスプレーチップとMALDIプレートとの間で3kV)との組み合わせを使用して、トラックを沈着させた。この作業のために、MALDIプレートを、静止した沈着チップに対して、0.2mm/秒で移動させた。
【0033】
沈着させたプレートを、AB/Sciex oMALDITMイオン源およびJDS Uniphase製の高反復速度(1.4kHz)PowerChip Nanolase(355nm)を備えるAB/Sciex API 4000TM三重四重極質量分析計を使用して分析した。減圧に基づくoMALDITMイオン源で、API 4000TMとそのTurbo VTM源との通常のオリフィス/界面アセンブリを置き換え、これによって、MALDIサンプルプレートを、界面減圧ポンプによって排気された領域内に、図4に示されるように、分析器の軸に対して直交する配向で配置した。通常の供給源パラメータを使用して、oMALDITMイオン源を設定および制御した。供給源の内部で、MALDIプレートを、スキマー(skimmer)のオリフィスの前方で、X−Y併進ステージ上に保持した。スキマーは、このMALDIプレートを分析器から隔離する。改変したAPI 4000TMは、走査モードと走査速度とのその全能力を維持した。他に言及されない限り、MALDI分析の間、沈着されたトラック(プレート)を、MALDI源X−Yステージによって、3.8mm/秒の一定の速度で、脱離用レーザービームに対して移動させた。この脱離用レーザービームは、トラック表面に、180μm×230μmのスポットの焦点を合わせた。
【0034】
(手順)
(カラムの準備)
捕捉されたDHFRを収容するマクロ細孔シリカカラムを、他の箇所9に詳細に記載されるように、準備した。簡単に言えば、内径250μmの毛管を、最初に、APTESの層でコーティングし、モノリシックなシリカカラムの静電的結合を容易にした。シリカゾルを、最初に、1gのDGS(微細に粉砕した固体)と990μLのH2Oと混合して、1分間〜25分間の超音波処理後に約1.5mLの加水分解したDGAを得ることによって、調製した。pH7.5の50mM HEPESの第二の水溶液(16%(w/v)のPEO(MW=10kDa)および0.6%(v/v)のAPTESを含有する)を調製した。この水溶液はまた、約20μMのDHFRを含有した。100μLの緩衝液/PEG/APTES/DHFR溶液を、100μLの加水分解したDGSと混合し、そしてこの混合物を、シリンジポンプを介して、融解シリカ毛管(約2m長)に即座に装填した。この溶液の最終濃度は、25mM HEPES緩衝液中、8% w/v PEO(10kDa)、0.3% v/v APTESおよび10μM DHFRであった。この混合物は、シリカの重合(約10分間)の約2分〜3分の前の、1秒間〜3秒間にわたるスピノダール分解(相分離)に起因して曇り、捕捉されたタンパク質を収容する水和マクロ細孔モノリシックカラムが得られる。ゾル−ゲル混合物の装填後、これらのモノリシックカラムを、4℃で2日間〜5日間熟成させ、次いで、使用前に5cmの長さに切断した。これらのカラムは、5cmの中に、25pmolの活性DHFRを最初に装填され、このうちの約6pmolが活性であり、そしてこのカラムの中でアクセス可能であった9。
【0035】
(FAC/MS研究)
代表的なFAC/MS実験は、50nMの各化合物を含有し、空隙マーカーとしてのN−アセチルグルコサミンおよび/またはフルオレセイン、葉酸(マイクロモル濃度の基質)ならびにピリメタミンおよびトリメトプリム(nMのインヒビター)を含有する、化合物の混合物の注入を包含した。最初の実行の前に、カラムを、50mMのNH4OAc緩衝液(pH6.6、100mM NaCl)で、30分間、5μL/分の流量でフラッシュし、あらゆるグリセロールおよび捕捉されていないタンパク質を除去し、次いで、0〜100mM HH4OAcで、30分間、5μL/分で平衡化した。試験した全ての化合物は、0〜100mM NH4OAc中に存在し、そしてシリンジポンプを使用して、5μL/分の速度で送達された。形成流れ(安定なエレクトロスプレーイオン化の発生を補助するために使用した)は、10%(v/v)のNH4OH緩衝液(2mM)からなり、5μL/分で送達され、ESI質量分析形に入る、10μL/分の総流量を得た。MALDIについては、この形成流れを、5μL/分のマトリックスの流れ(CHCA、メタノール中6.2mg/mL)で置き換えた。ESI質量分析計を、MRMモードで作動させ、m/z 222→m/z 204(N−アセチルグルコサミンCE15eV);m/z 249→m/z 233(ピリメタミンCE42eV);m/z 291→m/z 230(トリメトプリムCE35eV);m/z 333→m/z 202(フルオレセインCE15eV)およびm/z 442→m/z 295(葉酸)を、同時に検出した。MALDI MS/MS分析をまた、MRM走査モードを使用して実施したが、MALDI脱離プロセスの間の断片化に起因して、N−アセチルグルコサミンおよび葉酸についての遷移は、それぞれ、m/z 204→m/z 138(CE18eV)およびm/z 295→m/z 276(CE30eV)に変化した。
【0036】
MALDIを使用して達成可能な、ずっと短い分析時間は、十分なサンプリング頻度を維持するために、信号蓄積ビン持続時間(滞留時間)の減少を必要にする。ESIに基づくMRM分析は、1000msの滞留時間を使用し、一方で、MALD MRMの滞留時間は、1つの遷移あたり40msに減少した。従って、定常状態のMRM信号変動を、2つのイオン化方法の間で比較する場合、MALDI信号のより高い雑音レベルは、蓄積した計数の通常の統計学的変動の増加(減少した滞留時間の副作用)、およびトラックの均質性の変動に起因する(ESIは、プレートが全ての分析物を捕捉する時間(あらゆる一時的な変動および乾燥/結晶化の変動を含む)にわたって安定なスプレーの少量をサンプリングする)。
【0037】
(酢酸アンモニウム中でのDHFRの安定性)
DHFRを、2mMまたは100mMの酢酸アンモニウム(これは、3μMのHEPESおよび2μMのNaClを含有した)中に、40nMに希釈し、そして24時間までの種々の時間にわたって、インキュベートした。特定の間隔で、100μLのアリコートを、50mM Tris・HCl(pH=7.5)、2mM DTT、100μM NADPHおよび100μM DHFを含有する100μLの溶液と混合した。DHFR活性を、Tecan Safireマイクロプレートリーダーを使用して、340nmの吸光度の減少をモニタリングすることにより、測定した。活性データを、2mMのDTTを含有する50mM Tris・HcL(pH7.5)中に希釈したDHFRサンプルから得られた活性に対して報告する。
【0038】
(結果)
(実施例1:FAC/ESI−MS/MS)
図5は、DHFRインヒビターとコントロール化合物との混合物の、タンパク質を含まない(パネルA)か、または25pmolの活性DHFRの初期装填を含む(パネルB)、DGS/PEO/APESカラムを通しての溶出から得られた、FAC/ESI−MS/MSトレースを示す。ブランクカラムは、最初の数分間(1分と4分との間)における全ての化合物の、予測されたバックグラウンドを示すが、ピリメタミンとトリメトプリムとの両方は、陽イオン性であるが、陰イオン性の化合物であるフルオレセインおよび葉酸よりわずかに長く保持された。保持(これは、2mMの酢酸アンモニウム緩衝液を使用する場合に存在する)は、陽イオン性化合物と陰イオン性のシリカカラムとの間の、非選択的な相互作用を示し、このことは、順相シリカクロマトグラフィーが、低いイオン強度において、完全には抑制されないことを示す。パネルBは、2つのDHFRインヒビター(トリメトプリム(Kd=4nM、溶出時間22分)およびピリメタミン(Kd=45nM、保持時間28.5分))のかなり長い保持、弱い基質のより短い保持(葉酸、Kd=11μM、保持時間=3分)、およびDHFR装填されたカラム上の非選択的リガンド(フルオレセイン、N−アセチル−グルコンアミド、保持時間=1.5分)の保持がないことを示す。この結果は、DHFRが、カラム内に捕捉される場合に活性であることを示し、このことは、DGS由来の材料を捕捉する場合のDHFRの良好な活性を示す最近の結果9、28と一致する。ESI/MS/MS由来のクロマトグラムの興味深い局面は、ピリメタミンの溶出の際の、トリメトプリムについてのイオン電流の大きい減少である。このような効果は、以前には、「ロールアップ」現象と関連付けられていた。この現象において、より強く結合する化合物は、より弱い結合因子の効力をなくし、より弱く結合するリガンドの一時的な過剰濃縮を引き起こす5。しかし、本発明の場合、イオン電流の損失は、ロールアップ効果に起因するのではなく、むしろ、トリメトプリムのイオン電流の抑制(これは、この研究において使用されるインヒビター濃度(50nM)において、優勢である)に起因する。これらの化合物を低レベル(20nM)で使用する、以前のFAC−ESI/MS/MS研究は、このような効果を示さなかった9。イオン抑制効果は、以下に提供されるFAC−MALDI/MS/MSデータによって、さらに確認される。
【0039】
トリメトプリムとピリメタミンとの、(それぞれのKd値に基づいて)予測される溶出時間の逆転は、以前に報告されていた9が、現時点では完全には理解されていない。この現象は、オン速度とオフ速度との差に関連し得、これは、カラム表面の化合物の全体の保持時間を決定する際に、重要な役割を果たすようであることが、考えられる。
【0040】
(実施例2:FAC−MALDI/MS/MS)
(a)MALDI MRM遷移の最適化:
MALDIによるオフラインMS分析の有用な特徴は、サンプルトラックを複数回再実行し、異なるMSデータを獲得することを可能にする能力である。これにより、MRMパラメータの最適化が可能になる。図6は、4つの標的分析物(葉酸、ピリメタミン、トリメトプリムおよびフルオレセイン)の混合物の、適切なバックグラウンドを減算してCHCAバックグラウンド信号を減少させた後の、MALDI Q1スペクトルを示す。ピークは、これらの4つの化合物の各々について明らかである。しかし、葉酸についての主要なピークは、m/z 442ではなくm/z 295で起こる。このことは、断片イオンが、この化合物について存在する主要な種であることを示す。葉酸に焦点を当てると、m/z 295の親イオンを使用して同じトラックから得られた生成物イオンの走査は、m/z 176に極大ピークを示し、その強度は、5.5×105cpsである。m/z 442の親イオンから得られる、最も多い生成物イオンは、m/z 295→m/z 176のイオン対の強度のほんの15%であった。このことは、ESIの場合とは対照的である。ESIの場合、m/z 442→m/z 295の遷移が、最大の強度を示し、そしてMRM遷移をMALDIプレート上で直接最適化し得ることの重要性を強調する。
【0041】
(b)MALDIパラメータの最適化:
MALDIプレート上に沈着したトラックの分析は、本発明の沈着パラメータを使用して得られた代表的なトラック幅が、約2.5mmであったことを示す。レーザーのスポットサイズは、180μm×230μmであり、これは、沈着したトラックの幅の約10%のトラックの燃焼をもたらす。MALDIの獲得の間の、少量のみの沈着サンプルの利用は、方法の設定において利点を与える。ここで、MRM選択および分析器の最適化が、トラック/スポットの再実行を介して、ESI(約10pg)と比較して、少量のサンプル(約10pg)で達成され得る。
【0042】
生じる問題は、トラックの特定の領域が再実行され得る回数である。なぜなら、この回数は、トラックのすでにサンプリングされた部分を再実行する能力を、どのように最もよく利用し、これによって、検出プロセスの効率を増加させるかを決定るからである。トラックが再実行され得る回数は、レーザーがこのサンプルにわたって並進される周波数および速度に依存する。MALDIプロセスについて使用されるレーザーの周波数は、3μJ/パルスに設定された。この値は、トラック表面の熱分解を最小にしながら、信号対雑音比を最適化し、これによって、最大のサンプル利用を可能にした。トラックのある領域にわたる、可能な再実行の数に対する、サンプリング速度の影響が、図7に示される。サンプルの消費は、レーザーがトラックを横断する速度に依存することが明らかである。より大きい速度は、より少ないサンプル消費を引き起こし、より多くの再実行を可能にする。MALDI源ステージの最大速度(3.8mm/秒)は、トラックの所定の領域において起こるサンプルの排出の前に、約30回の再実行を可能にする。この領域において、信号の大部分が、最初の15回の通過の間に脱離する。しかし、トラック全体のうちのほんの小さい部分(約10%)のみがサンプリングされるので、1つのトラックあたり7個〜8個までの異なる領域がサンプリングされるようであり、従って、実際に、1つの沈着されたトラックが、100回にわたってサンプリングされ得る。光源によって可能にされる値にわたって、レーザーの併進速度を変化させることにより(0.5mm/秒、1mm/秒、および3.8mm/秒)、より低い速度で最大の信号強度がかなり増加するが、なされ得る再実行の数が減少することが示される。従って、所定のサンプル領域の完全な排出によって得られる全信号は、比較的一定なままであり、そしてデータが生成される速度とは無関係である。高い併進速度を使用することにより、解釈可能な信号の最速の獲得が与えられ、従って、スループットが最大になる。
【0043】
分析物:マトリックスの比もまた、3:1〜1:3(v:v)の範囲で変動させて、上記4つの化合物についての最適な検出を達成した。その結果を、信号を、1ユニットの分析物あたりのバックグラウンドで除算したものとして表現して、表1にまとめる。最適な比は、化合物に特異的であることが明らかである。しかし、1:1(v:v)の使用は、全ての化合物を検出する全体的な感度と能力との間の、最もよい妥協を与える。実際に、フルオレセインの検出は、1:1の分析物:マトリックスの比のみで可能であった。なぜなら、m/z 333→m/z 202の遷移についてのマトリックスのバックグラウンドは、極端に高く、そして他の分析物:マトリックスの比でのフルオレセイン信号を圧倒した。高い緩衝液濃度でのMALDIの性能は、わずかに高いCHCA含有量により改善されることもまた、観察された。このことは、結晶化と荷電のための競合との両方を改善し得る。
【0044】
(c)FAC−MALDI/MS/MS分析:
図8は、ブランクカラム(図8a)またはDHFRカラム(図8b)からの溶出物が、実行緩衝液として2mM酢酸アンモニウムを使用して沈着された、MALDIプレートからの沈着に関して得られた、FACトレースを示す。図8において、化合物は、MALDIプレート上に沈着した最初の2つのトレースにおいて溶出する(矢印は、分析されたトレースを示す)。図8の下の目盛は、MALDIの分析時間を示し、これは、沈着速度対レーザー読み取り速度の比(これは、この場合には、19である)を倍率因子として使用して、LC溶出時間に変換され得る。FAC−ESI/MS/MSについての場合と同様に、フルオレセイン、N−アセチルグルコサミンおよび葉酸が、最初に溶出し(1.5分間のLC時間)、引き続いて、トリメトプリム(3分間のLC時間)およびピリメタミン(3.5分間のLC時間)が溶出した。ここでまた、低いイオン濃度の緩衝液を使用する場合の、分析物の非特異的な結合が示される。このことは、驚くべきことではない。なぜなら、溶出時間は、検出のために使用されるMSの特定の型ではなく、カラムによって決定されるからである。より興味深いことには、プレート上のトレースを分析するために必要とされるMSの分析時間は、実際のLC時間の8分間と比較して、0.5分未満である。従って、LC沈着時間は、両方の方法について類似であるが、同じサンプルを解釈するためにMSの複数のモードを使用することが、可能である(図7を参照のこと)。各モードは、実行のために数分しか必要としない。
【0045】
図8bは、DHFRを装填されたカラムから得られたデータを示す。ここでまた、2nMのインヒビターは、かなり長い保持を示し、保持時間は、FAC−ESI/MS/MSから得られた保持時間と類似である(トリメトプリム;t−t0=20分、ピリメタミン;t−t0=28.5分)。ESI/MSと比較してわずかに長い溶出時間は、FAC/MALDI研究のために使用されたカラムが、FAC/ESIのために使用されたカラムよりわずかに長かったという事実を反映する。FAC/MALDI分析からの重要な知見は、低いイオン抑制であり、これは、MALDI MS/MS法の別の重要な利点を示す。このことは、MALDIイオン化の性質が、ESIよりも化学イオン化(およびAPCI)により近いことに起因し得る。MALDIの場合、レーザーにより脱離された種は、表面から発生した煙の内部での、CHCAイオンとの相互作用によってイオン化される。このような場合、それらの結果は、APCIプロセスにおける減少したイオン抑制の十分に確立された観察10、29、30と一致する。高レベルの不純物に起因するMALDI信号抑制は、Krause31およびGharahdi32によって報告されているが、これは、サンプルの結晶化の変化(この場合、このような条件下でのウェットスポット結晶化は、不均質な縁付きのスポットを生じる)によって、または不十分なCHCAがサンプル中に存在することによって、よりよく引き起こされ得る。このような場合、レーザービームに対する表面の不透明性が、乾燥の際に生じる。本発明の沈着方法において、結晶化プロセスとCHCA量との両方が、小さい結晶(ほぼ乾燥したスプレーがMALDIプレートに衝突する)の高密度のトラックを、高い表面対体積比(MALDIのような表面で駆動されるプロセスについて重要なパラメータ)で生じるために最適化された。
【0046】
表2は、MALDIについては2mMと100mMとの酢酸アンモニウム(AA)緩衝液レベル、そしてESIについては2mMを使用して、ESI方法とMALDI MS/MS方法とから得られた、信号対バックグラウンドレベルを比較し、そして標準化されたプロットの、絶対計数への変換のための手段を提供する。ESI実験およびMALDI実験の各々が、異なる質量分析器(それぞれ、API 3000TMおよびAPI 4000TM)を使用してなされたにもかかわらず、一般的な比較(指標のみと指定とされる)が可能であることが留意されるべきである。なぜなら、MALDIの作動についてのAPI 4000TMを、oMALDITM源を取り付けることによって変換することにより、その通常のオリフィス/界面およびTurbo VTM源が除去されるからである。これらの構成要素が、約50μL/分の流量でのAPI 3000TMより優れた有意な性能増強を提供する。これらのデータは、MALDIが、100mMの緩衝液を用いて、ESIが2mMの緩衝液を用いて与える信号とおよそ同じレベルの信号を与えるものの、MALDIは、2mMのAA緩衝液を用いて、感度のかなりの増加を与えることを示す。この結果は、表3に示されるように、2つの技術によって一定量のサンプルについて発生した全信号を比較することによって、さらに確実にされる。2mM AA緩衝液中の各分析物の50nMの溶液のMALDI分析は、ESIから得られる全信号の約20倍から100倍を生成する。ESIプロセスについて、非常に少量のスプレーされたサンプルのみが、実際に分析器に入り、そして検出され、ここで、MALDIトラックは、サンプルの全てを捕捉し、そしてトラックおよび捕捉されたサンプルの繰り返しの分析を可能にする。
【0047】
MALDIにおける信号レベルは、EAIにおける信号レベルより高いが、MALDIの獲得は、ESIについての1000msに対して40msというより短い滞留時間、およびトラックにおける不均一性に起因するさらなる雑音に起因して、より大きい雑音に悩まされる。そうであっても、MALDIプロセスは、トラックの多数の再実行からの信号を組み合わせることによって、その雑音を低下させる能力を与える。信号の平均により得られる雑音減少は、データ解釈のために必要とされる所望のレベルに達するまで適用され得る。トラックの迅速なレーザー再実行および合計の選択的な適用は、時間感受性の様式で、一定量のサンプルの効率的な使用を可能にする。
【0048】
MALDI分析が、100mMのAA緩衝液を用いてさえ可能であるとして、イオン強度も、FACプロセスに対する影響を調査した。図9は、イオン強度の、非特異的結合の程度に対する影響を、ブランクのモノリシックカラムを使用して示す。この場合には、葉酸、ピリメタミンおよびトリメトプリムのみが溶出し、葉酸が、空隙マーカーとして働いた。全てのデータを、同じカラムで実行し、低いイオン強度から開始し、100mMのイオン強度まで増加させた。0mMのイオン強度において、カラムでの全ての分析物がかなり長い時間保持され、そしてより興味深いことには、溶出が、非常に広い時間範囲にわたって広がる。このことは、かなりの量の非特異的結合を示す。2mMのイオン強度の使用(上記を参照のこと)は、より鋭利な溶出プロフィールをもたらすが、化合物(葉酸を含めて)の、数分間までのかなり長い保持を引き起こす。他方で、50mMまたは100mMのいずれかのイオン強度が使用される場合、化合物は、より早い時点で(全強度の50%に達する時間に基づく)、ずっと狭い範囲にわたって、溶出する。このことは、非特異的な結合が抑制されたことを示す。これらの実験からの重要な点は、100mMのイオン強度においてさえも、噴霧器により補助されるエレクトロスプレー方法を使用して、LC溶出物を満足に沈着させることが可能であったことである。さらに、緩衝液としての酢酸アンモニウムの使用は、有意な付加イオンを生成せず、同じMRM遷移が、使用される緩衝液の濃度にかかわらず使用されることを可能にした。他方で、100mMのサンプルの不連続なスポッティングは、マトリックス/緩衝液のほとんどを、スポットの縁部に沈着させ(データは示さない)、MALDI分析のための信号レベルと雑音レベルの、有意な非再現性をもたらす。
【0049】
イオン強度に依存する別の要因は、捕捉されるタンパク質の活性の維持であり、これは、バイオアフィニティカラムが再使用され得るか否かを決定する。DHFRカラムを備えるFAC−ESI/MS/MSを使用した、以前の研究は、2mMのイオン強度の使用が、2mMの酢酸アンモニウム中でのDHFRの低い安定性に起因して、カラム性能の有意な低下を生じたことを示した9。図10は、DHFRタンパク質が、100mMの酢酸アンモニウム中での2時間のインキュベーション後に、完全な活性を保持するが、2mMの酢酸アンモニウムの存在下では、類似の時間の後に、その初期の活性の半分未満を維持することを示す。5時間後、タンパク質は、100mMの緩衝液中で、80%を超える活性を保持するが、2mMの緩衝液中では、10%未満の活性を保持する。これらのインキュベーション時間は、FACに通常関連する最も長い実行時間に対応し、そして明らかに、MALDI/MSのみと適合性である高いイオン強度の緩衝液の使用が、FAC実験の必要とされる実行時間にわたって、活性を保持する結果となるべきことを実証する。
【0050】
図11は、モノリシックなDHFRカラムの再使用可能性に対する、高いイオン強度の影響を示す。パネルAは、10mMの酢酸アンモニウム中50nMの葉酸、ポリメタミンおよびトリメトプリムを使用して、カラムの初期の実行について得られた、FAC−MALDI/MS/MSトレースを示す。パネルBは、100mMの酢酸アンモニウムを使用して得られた回復実行を示し、そしてパネルCは、パネルAにおいて使用された条件と同じ条件下での、同じカラムの2回目の実行を示す。1回目の実行と2回目の実行との間の保持時間が、わずかに減少しているが、100mMのイオン強度を使用する場合のカラムの全体の性能は、2mMのイオン強度を使用する場合に得られる性能よりはるかに優れている。例えば、トリメトプリムとピリメタミンとの両方についての保持時間は、100mMのイオン強度にて、20%のみ減少するが(トリメトプリムについて11.5分から10分、ピリメタミンについて16.5分から13.5分)、一方で、ほぼ85%の保持時間の減少が、2mMのイオン強度にて得られた9。100mMのイオン強度における全ての化合物についての保持時間が、2mMにおいて得られた保持時間より有意に短かったこともまた、価値あることである。このことは、部分的に、後者の実験についてのより短いカラムの使用(6cmに対して5cm)に起因したが、おそらく、より低い非特異的結合、およびより高いイオン強度の結果として起こったかもしれない脱離定数の変化にもまた、起因した。実行の間での保持時間の20%の移動は、比較的大きいが、このような損失は、タンパク質の変性よりもむしろ、ゆるく捕捉されたタンパク質のゆっくりした漏出に起因し得る。細孔型態の観点でのカラムのさらなる最適化は、カラムの再使用のさらなる改善を可能にし得、そしてFAC研究を高いイオン強度で実行する能力と組み合わせられる場合(上で実証されたように)、このようなカラムを数回再使用することが可能であり得る。
【0051】
(実施例1および実施例2についての考察)
毛管規模のメソ細孔/マクロ細孔ゾル−ゲルベースのモノリシックバイオアフィニティカラムは、理想的には、混合物中の特定の化合物の同定のための、フロンタルアフィニティクロマトグラフィーを質量分析検出と一緒に使用する、化合物混合物のスクリーニングのために適切である。ゾル−ゲル由来のカラムの特定の利点は、それらの種々の異なるタンパク質との良好な適合性である。本研究は、可溶性酵素の捕捉に焦点を当てたが、本明細書中において使用されるゾル−ゲル方法は、広範な重要な薬物標的(膜結合タンパク質28およびレセプター33、ならびに全細胞34さえもが挙げられる)の捕捉にもまた、適用可能である。さらに、DGA由来のメタノールへの捕捉は、他の方法によって固定することが困難な不安定な酵素(例えば、第Xa因子およびCox−II28)の固定を可能にする。従って、モノリシックカラムは、広範な種々の有用な標的に対する、化合物混合物のスクリーニングにおいて、用途を見出し得る。
【0052】
内径が小さいモノリシックカラムの別の利点は、毛管カラムを、ESIまたはMALDI質量分析計と直接連動させる能力であり、このことは、おそらく、これらのカラムを、FAC/MSを使用する化合物のHTSのために適切にする。具体的には、本発明のモノリシックカラムの小さい内径は、これらのカラムが、分析物の比較的薄いストリームをMALDIプレート上に沈着させることを可能にし、高密度(1つのプレートあたり12のトレースまで)の沈着を可能にする。MALDIプレートの時間容量は、沈着されたトラックの幅、およびその沈着速度によって、決定される。沈着速度を低下させることにより、プレート容量が増加するが、これはまた、任意の瞬間において溶出する材料が有限領域(スプレー直径によって与えられる)およびにわたって沈着される場合に、LC分解能を損ない、そして2つの隣接する事象の重なりが増加する。スプレー直径は、プレートの容量とクロマトグラフィー記録の正確さとの両方に直接影響を与えるので、この直径を、可能な限り小さく維持することが重要である。実用的に言えば、許容され得るクロマトグラフィー分解能の損失は、最低沈着速度を決定する。LCの実行および分析は、ここで2つの時間に依存しない事象として切り離されたので、沈着速度と問い合わせ速度との間の比が、1つのトラックにわたって一度に、いかに多くの再実行および異なる分析実験が実施され得、LCの再実行にわたってかなりの時間を節約し得るかを決定する。
【0053】
本明細書中に報告されたFAC−MALDI/MS/MSに伴う特定のパラメータは、性能を増強するために最適化され得る。例えば、より狭い、より少ない沈着トレースを生じ得る沈着方法は、プレート上でのより高密度の分析物を提供する35。このことは、レーザービーム内のより高い分析物濃度、および従って、より良好なLODをもたらすはずである。より小さい直径のカラムは、より低い流量での、より迅速なLC分離を可能にし得、このことは、MALDI標的上の薄いトラックの沈着と両立する。より細いカラムに加えて、MALDIマトリックスから固有のバックグラウンドを抑制する方法は、分析物信号からバックグラウンド信号を減算する必要性を最小にする。このことは、MRMモードを使用する場合にはさほど問題にならず、実際に、現在の研究においては必要とされないが、このような方法は、現在使用されているMALDIマトリックス種と構造が類似している生成物イオンを有する薬物化合物に関して、使用され得る。
【0054】
FAC研究のためのESI/MSと比較したMALDI/MSの利点は、より高いイオン強度の緩衝液を、FAC実行の間に使用する能力である。タンパク質の活性は、溶液のpHおよびイオン強度のような要因に非常に依存することが公知であり、そしてほとんどの場合には、最大の活性は、生理学的条件を模倣する緩衝液(すなわち、20〜50mMの緩衝液、100mM KCl、pH約7.4)を使用して得られる。さらに、高いイオン強度は、より効果的な二重層を提供し、これは、陰イオン性シリカ表面の電荷をより良好にスクリーニングし、従って、荷電分析物とシリカ表面との間の静電相互作用を減少させる。本発明の研究において、Na+およびK+は、付加イオン形成に付随する問題を回避するために、回避された。実際に、酢酸アンモニウム(これは、揮発性緩衝液である)が、イオン強度を調節するために選択された。この緩衝液の使用は、付加イオンの形成をもたらさず、そして100mMの濃度でさえも、LC沈着に適用可能な条件を提供した。より高レベルの酢酸アンモニウムが、FAC/MALDIのために使用されることが可能であるが、このようなレベルは、この研究においては試験されなかった。上で示されたように、高いイオン強度の使用は、非特異的結合の予測された減少をもたらし、そしてまた、カラムの繰り返しの使用の際の、タンパク質活性のより良好な維持を生じた。このことは、明らかに、MALDI/MSの使用が、タンパク質をドープされたカラムを使用するFAC研究のために、ESI/MSより優れたかなりの利点を有することを示す。
【0055】
MALDI/MS/MSの使用は、フロンタルアフィニティクロマトグラフィー研究のための、ESI/MS/MSの使用より優れた、かなりの利点を提供する。MALDI/MS/MSは、高いイオン強度の緩衝液のより良好な許容性、低いイオン抑制、より速いMS分析時間、1回のLC実行あたりのより多くのMS分析のモードへのアクセスを提供し、そして異なる質量分析器(三重−四重極、TOF、TOF−TOF、Q−TOF、イオントラップ、FT−MS)を使用して、同じサンプルからデータを獲得する能力を潜在的に与える。このことは、より高い分子量の種が分析される場合に、有利であり得る。これらの利点は、フロンタルアフィニティクロマトグラフィーを、生理学的条件をよりよく模倣する条件下で実施する能力をもたらし、固定されたタンパク質についての活性のより良好な保持をもたらし、そしておそらく、より信頼性のある結合定数データを提供する。1回のLC実行に付き複数のMS分析を実行する能力は、低濃度の分析物の検出を最適化するため、または天然産物のライブラリーもしくは類似の化合物混合物中に存在し得る未知の化合物を同定するために、有利に使用され得る。ESI/MSにおいて、化合物のMRM遷移、および従って実体は、FACの実行の前に既知でなければならない。さもなければ、未知の化合物は、「ロールアップ」モードで、指示薬化合物を使用して間接的に、化合物の同定をオフラインで実施して、同定されなければならない。本明細書中に示されるように、このようなロールアップ効果は、ESI/MS/MSを使用する場合、イオン抑制を妨げ得、指示薬モードを使用する場合に、真の「ヒット」を同定する際に困難を生じる。MALDI/MS/MSは、これらの問題を最少にし、指示薬モードをより信頼性のあるものにし、そしてまた、沈着した分析物の完全なMS分析を可能にし、未知のものの同定を補助する。全体として、本研究の結果は、MALDI/MS/MSが、FACと組み合わせて使用される場合に、ESI/MS/MSより優れた多数の利点を提供し得、LC/MSに基づくハイスループットのスクリーニングのための、改善された方法を提供する。
【0056】
本発明が、上記実施例を参照して記載されたが、本発明は、開示された実施例に限定されないことが理解されるべきである。逆に、本発明は、添付の特許請求の範囲の精神および範囲に含まれる、種々の改変および等価な配置を網羅することが意図される。
【0057】
全ての刊行物、特許および特許出願は、各個々の刊行物、特許または特許出願の各々が、その全体が本明細書中に参考として援用されると具体的かつ個々に示されると同程度まで、その全体が本明細書中に参考として援用される。本願中の用語が、本明細書中に参考として援用された文献において、異なって記載されていることが見出される場合、本明細書中に提供される定義が、その用語についての定義として働くべきである。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
【表3】
【0061】
【表4】
【0062】
【表5】
【0063】
【表6】
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】図1は、FAC−MALDI/MS/MSのために使用される、本発明の1つの実施形態を図示する、システムの概略図である。カラム出口は、噴霧器内に直接流れるMALDIマトリックス溶液の添加のための、混合用T字管に接続され、この混合物を、MALDIプレート上にスプレーすることを可能にする。このMALDIプレートは、カラムの出口の下で、コンピュータ制御されるX−Y並進ステージ上を移動する。
【図2】図2は、複数のFACカラムとMALDI−MSプレートとの連動の例示的な実施形態を示す概略図である。
【図3】図3は、FAC−ESI/MS/MSのために使用される、先行技術のシステムの概略図である。切り換え弁が、緩衝液から、緩衝液+分析物に切り替えるために使用され、このカラムへの、分析物の連続的な注入を可能にする。カラムの出口は、補給緩衝液の添加のための混合用T字管に接続される。この緩衝液は、PE/Sciex API 3000三重四重極質量分析計に直接流入する。
【図4】図4は、API 4000の、減圧に基づくoMALDITMイオン源アセンブリを示す概略である。API 4000は、MALDIサンプルプレートを、界面減圧ポンプによって排気された領域に、分析器の軸に対して直交する配向で配置する。
【図5】図5は、タンパク質を充填されたカラムおよびブランクのDGS/PEO/APTESモノリシックカラムを使用して得られた、代表的なFAC−ESI/MS/MSトレースを示す。パネルA:タンパク質を含まないブランクカラム;パネルB:25pmolのDHFR(初期充填)を含むカラム。N−アセチルグルコサミン、フルオレセイン、葉酸、ポリメタミンおよびトリメトプリムを、50nMで注入した。トレースは、実際のイオン電流を示し、イオン抑制効果のより明瞭な指標を提供する。
【図6】図6は、MALDI/MSを使用する、葉酸のMRM遷移の多経路選択を示す。パネルAは、葉酸、フルオレセイン、ポリメタミンおよびトリメトプリム(各々50nM)の、MeOH中6.2mg/mLのCHCAと1:1(v:v)で混合した、MALDIプレート上に沈着した混合物の、Q1全走査を示す。Q1スペクトルは、減算によって除かれたマトリックスから生じるバックグラウンド信号を有した。パネルBは、m/zが442の親イオンから生じるQ3生成物イオン走査を示す。パネルCは、m/z 295の親イオンから生じるQ3生成物イオン走査を示す。全ての走査は、中程度のレーザー並進速度(1mm/秒)を使用して得られ、そして所定のサンプル領域にわたる5回の再実行の平均である。
【図7】図7は、遅い並進速度(0.5mm/s、黒三角)、中程度の並進速度(1mm/s、黒四角)、および速い並進速度(3.8mm/s、黒丸)について、所定の領域の再実行の回数の関数としての、MALDI/MS信号の強度を示す。ピーク値とは、トラックにわたる最初の通過について得られた計数をいい、合計値とは、特定の速度で所定のトラックにわたる全ての実行から得られる全計数をいう。
【図8】図8は、タンパク質を装填されたカラムおよびブランクのDGS/PEO/APTESモノリシックカラムを使用して得られた、FAC−MALDI/MS/MSトレースを示す。パネルA:タンパク質を含まないブランクカラム;パネルB:25pmolのDHFR(初期充填)を含むカラムであって、早期時点でのN−アセチルグルコサミン、フルオレセインおよび葉酸、トリメトプリムおよび最後にポリメタミンの漏出を示す。全ての化合物を、50nMで注入した。全てのトレースを、化合物の漏出後に得られた最大信号に対して標準化する。MALDI分析時間は、LC沈着時間より19倍速いことに留意のこと。全てのFACトレースを、高速レーザー遷移速度(3.5mm/秒)を使用して得、そしてこれらは、所定のサンプル領域にわたる5回の再実行の平均である。
【図9】図9は、FAC/MALDIによって分析された、ブランクのモノリシックカラムに対して、化合物の非特異的結合に対するイオン強度の結果を示す。MALDI MRMトレースは、a)2mMの酢酸アンモニウム緩衝液、b)50mMの緩衝液およびc)100mMの緩衝液を使用して、最初の葉酸、トリメトプリムおよびピリメタミン(各々50nM)の実行について、示される。全てのデータを、同じカラムにおいて、化合物の導入の前に適切な緩衝液中でカラムを予備インキュベートして実行した。全てのFACトレースを、高速レーザー遷移速度(3.8mm/秒)を使用して得、そしてこれらは、所定のサンプル領域にわたる5回の再実行の平均である。
【図10】図10は、2mMおよび100mMの酢酸アンモニウム緩衝溶液中でのインキュベーション時間の関数としての、DHFRの活性を示す。
【図11】図11は、FAC/MALDIを使用する、モノリシックDHFRカラムの再使用に対するイオン強度の影響を示す。パネルAは、葉酸、トリメトプリムおよびピリメタミン(各々50nM)について、100mM酢酸アンモニウム緩衝液を使用して最初の実行から得られた、MALDI MRMトレースを示す。パネルBは、100mMの酢酸アンモニウムを使用するカラムの回復の際の、溶出物の沈着の間に、プレートから得られたMALDI MRMトレースを示す。パネルCは、同じモノリシックカラムを通しての、上に列挙された化合物の2回目の実行の間の、カラム溶出物の沈着によって形成されたプレートからの、MALDI MRMトレースを示す。注記:全実行時間は、5μL/分において120分であり、これは、122カラム体積に対応する。全てのFACトレースは、より速いレーザー遷移速度(3.8mm/秒)を使用して得られ、そしてこれらは、所定のサンプル領域にわたる5日の再実行の平均である。
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、クロマトグラフィー分析からの化合物を、特に、質量分析を使用して分析する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
バイオアフィニティクロマトグラフィーは、サンプルの精製および浄化1、キラル分離2、タンパク質のオンラインタンパク質分解消化3、支持された生体触媒の開発4、およびより最近は、フロンタルアフィニティクロマトグラフィー(FAC)方法を介する化合物ライブラリーのスクリーニング5、6のために、広範に使用されている。FACの基本的な前提は、化合物の連続的な注入が、遊離状態と結合状態との間でのリガンドの平衡を可能にし、ここで、遊離リガンドの正確な濃度が既知であることである。この場合、この化合物の漏出時間は、固定された生体分子に対するリガンドの親和性に対応する。より高い親和性を有するリガンドは、より遅く漏出する。
【0003】
このカラムから溶出する化合物の検出は、蛍光7、放射能6、またはエレクトロスプレー質量分析5のような方法を使用して、達成され得る。前者2つの方法は、通常、標識されたライブラリー、または標識された指示薬化合物を使用する。この標識された指示薬化合物は、より強い結合リガンドが存在する場合、より早く交換されることに関して、既知の非標識化合物と競合する。しかし、いずれの場合にも、これらの方法は、標識された化合物を得る必要性、およびアッセイにおいて使用される化合物の事前の知識に対する必要性に起因して、制限された汎用性を有する。なぜなら、構造の情報が、検出器によって提供されないからである。従って、蛍光測定法および放射線測定法は、異なる化合物の分析のためのみに、有用である傾向がある。
【0004】
他方で、FACをESI−MSと連動させることは、化合物の混合物をスクリーニングするための、非常に汎用性のある方法であることが示された5。MS、および特に、MS/MS検出の使用は、種々の化合物についての構造の情報を同時に得る機会を提供する。混合物中の化合物の正体が既知である場合、これらの分析物は、多重反応モニタリング(MRM)モードを使用して、同時に、そして定量的な様式で検出され得、その方法のスループットを改善する。FAC/MS技術のこの独特の局面は、化合物混合物のハイスループットのスクリーニング5、8のような用途のための主要な利点であると考えられるが、質量分析計への化合物の導入のためにエレクトロスプレーイオン化を使用する結果として生じる、いくつかの潜在的な欠点が存在する。例えば、安定なエレクトロスプレーを得ることは、低いイオン強度の溶出物の使用を必要とし、このことは、いくつかの場合において、カラムに固定されたタンパク質の活性を維持することと、両立しないかもしれない9。低いイオン強度はまた、効果的ではない二重層をもたらし得、これは、化合物とシリカカラムとの静電相互作用を介して、かなりの非選択的結合を引き起こし得る。さらに、ESI/MSを使用する場合、分析の1つのモードのみが、1回のクロマトグラフィーの実行について可能である。最後に、分析物のレベルは、エレクトロスプレーにおいて、大きいイオン電流を引き起こし得、これは、イオン抑制をもたらし得る10。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
バイオアフィニティカラムから溶出する化合物を検出するための、より適合性活より効率的な手段に対する必要性が、残っている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の要旨)
バイオアフィニティカラムから溶出する化合物を検出する、現在使用される方法に付随する、上に列挙された問題を克服するために、質量分析工程をオフラインで実施することにより、クロマトグラフィーと質量分析とを切り離すことが、有利である。このことは、フロンタルアフィニティクロマトグラフィー(FAC)を、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)MSと組み合わせることによって、最も効率的に達成される。その一般的なアプローチは、MALDI標的にFAC溶出物を沈着させ、その後、MALDI/MS分析を行うことである。ESIと比較して、MALDI分析は、緩衝液に対するより高い許容性、1つの分析物あたりのより低いサンプル消費、および減少した分析時間という利点を有する。SM工程とMS工程との分離はまた、各分析物についてのMS検出パラメータの、独立した最適化を可能にする。
【0007】
本発明者らは、FACを、新たに開発されたゾル−ゲル由来のモノリシックバイオアフィニティカラム9を使用して、MALDI−MS/MS検出に統合し、そして異なるイオン強度での溶出を使用して、小さい酵素インヒビターが捕捉されたジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)と相互作用する能力を試験することによって、その作動を、FAC−ESI/MS/MSと比較した。この連動は、カラム溶出物を、適切なマトリックスと混合すること、引き続いて、噴霧器により補助される、この混合物のMALDIプレート上へのエレクトロスプレー沈着を包含する。このMALDIプレートは、コンピュータ制御されるx−y並進ステージ上に存在する。クロマトグラフィーの残りを、半永久的にMALDIプレート上に沈着させ、MALDI/MS/MSによる、オフラインでの引き続く分析物を可能にする。カラムによって沈着されたトラックの上をレーザーで操作し、一方で、溶出した化合物をMRMモードでモニタリングすることによって、フロンタルクロマトグラムが直接再構築され、各分析物についての漏出曲線を与え得る。FACのための検出方法として、MALDI/MS/MSは、ESI/MS/MSと比較して、多数の利点を有することが示される。例えば、高いイオン強度の溶出緩衝液に対するより良好な許容(これは、カラム内のタンパク質の活性を維持することを補助し、そして非特異的な結合を減少させる);FACの実行後ほんの数分での、1つのプレートからの十分な多重MS走査の能力;およびイオン抑制効果が制限された状態での、高いレベルの潜在的なインヒビターを検出する能力が挙げられる。これらの結果は、FAC/MALDI−MSが、化合物混合物のハイスループットスクリーニングに十分に適していることを示す。
【0008】
従って、本発明は、化学サンプルを分析するためのシステムを包含し、このシステムは、MALDI質量分析計と連動する、フロンタルアフィニティクロマトグラフィーカラムを備える。
【0009】
本発明はまた、フロンタフアフィニティクロマトグラフィー(FAC)からのサンプルを分析する方法を包含し、この方法は、以下の工程を包含する:
(a)FACカラムからの溶出物をマトリックスと混合する工程;
(b)(a)における混合物を表面に沈着させる工程;および
(c)MALDI質量分析を使用して、沈着された混合物を分析する工程。
【0010】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明から明らかになる。しかし、詳細な説明および具体的な実施例は、本発明の好ましい実施形態を示すものの、これらは、例示のみとして与えられることが理解されるべきである。なぜなら、本発明の精神および範囲に入る種々の変更および改変が、この詳細な明細書から、当業者に明らかになるからである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明が、ここで、図面に関連して記載される。
【0012】
(発明の詳細な説明)
FAC/MS研究のための新たなプラットフォームとしての、MALDI/MSとバイオアフィニティカラムとの連動が、本明細書中に記載される。捕捉されたジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)を収容する毛管カラムを、低分子混合物のフロンタルアフィニティクロマトグラフィーのために使用した。このカラムからの出力が、メタノール中にマトリックス分子であるα−シアノ−ヒドロキシコハク酸(CHCA)を含有する第二のストリームと混合され、そして噴霧器により補助されるエレクトロスプレー法を使用して、従来のMALDIプレート上に沈着され、このプレートは、コンピュータ制御されるx−yステージを介してカラムに対して移動し、FAC実行の半永久的な記録を作成した。MALDI MS/MSの使用は、FAC法とMA方途の切り離しを可能にし、かなり高いイオン強度の緩衝液が、FAC研究のために使用されることを可能にし、これによって、イオン性化合物の非特異的な結合が減少し、そして複数の実行にわたって、タンパク質活性のより良好な保持が可能になった。沈着後、MALDI分析は、クロマトグラフィーの実行時間の一部のみを必要とし、そして沈着したトラックは、複数回にわたって再実行され得、イオン化パラメータを最適化し、そして信号対雑音を改善するために、信号の平均化を可能にした。さらに、高レベルの潜在的なインヒビターが、制限されたイオン抑制効果で、MALDIを介して検出され得た。同じイオン強度条件が使用された場合、MALDIベースの分析とESIベースの分析との両方が、化合物混合物中に存在するインヒビターの、類似の保持を示した。これらの結果は、FAC/MALDI−MSが、化合物混合物のハイスループットのスクリーニングについて、FAC/ESI−MSより優れた利点を提供することを示す。
【0013】
従って、本発明は、化学サンプルを分析するためのシステムを包含し、このシステムは、MALDI質量分析計と連動する、フロンタルアフィニティクロマトグラフィー(FAC)を備える。
【0014】
用語「分析(する)」とは、本明細書中で使用される場合、化学サンプル中の1つ以上の化合物についての情報が、そのシステムを使用して得られることを意味する。このような情報としては、化合物の実体(分子量および断片化パターンを介する)、ならびにカラム中の生物学的材料とのその化合物の相互作用に関連する親和性、反応性、および他の速度論的定数(すなわち、カラム上での保持時間)が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0015】
「連動(する)」とは、FACカラムからの溶出物ストリームが、例えば、別のストリームからのMALDIマトリックス材料と混合され、そしてこの混合物が、MALDI−MS検出のための任意の適切な表面(例えば、標準的なMALDI−MSプレート)上に沈着することを意味する。この混合物は、任意の適切な方法(例えば、MALDI沈着の前の画分収集11;毛管からのスポット12、13、14またはトラック15、16の、噴霧器により補助される直接的な沈着;電気力学的荷電液滴処理17;加熱された液滴界面を使用する沈着18;微小分配を介する圧電フロースルー19、20;減圧により補助される沈着21;電場により駆動される液滴沈着22;エレクトロスプレー沈着23;または毛管噴霧器スプレー24、25であるが、これらに限定されない)を使用して、不連続なスポットとしてか、または連続的なトラックとして、沈着され得る。本発明の1つの実施形態において、沈着は、噴霧器により補助される、トラックの直接的な沈着である。
【0016】
本発明の1つの実施形態において、沈着の間のプレートの動きは、コンピュータによって制御される。
【0017】
本発明のシステムの例示的な実施形態が、図1に示されている。MALDIプレート上への沈着のために、カラム(10)からの溶出物が、MALDIマトリックス(20)と混合され得る。次いで、得られる全体の流れが、MALDIプレート(30)上に、任意の公知の沈着方法(例えば、連続的な沈着)を使用して、沈着され得る。プレートの、X−Y−Z並進ステージ内での移動は、コンピュータ(40)によって制御され得る。これらの並進ステージは、X−Y面内での沈着運動、およびMALDIプレートからのZ軸に沿ったスプレー器の分離を制御する。3つ全ての軸内での動きと一緒に、高電圧および噴霧器ガスの流れの適用もまた、1つのコンピュータ(40)によって制御され得る。カラムの流れは、マトリックスと混合されて、T字型接合部(50)を通って、流れを形成し得る。この混合された流れは、例えば、融解シリカチュービングによって運ばれ、ステンレス鋼電極(60)を通過する。この電極自体は、噴霧器の内部にある。融解シリカとステンレス鋼の電極との両方が、ノズル(70)からわずかに突出する。別の混合用T字管(80)が、この噴霧器を設置し、そして不活性ガス(90)(例えば、N2)を導入するために、使用される。エレクトロスプレー電圧と噴霧器の気体の流れとの両方が、手動で調節され得、そして指で作動され得る。
【0018】
当該分野において公知の方法を使用して、沈着パラメータ(プレートの上方へのスプレー器の距離、噴霧器の気体の流れ、および電場が挙げられる)が、最大のトラック均質性および最小のトラック幅を得るために、最適化され得る。プレートが沈着チップの下で移動される並進速度もまた、最適なトラックの厚さを提供し、同時に必要なクロマトグラフィー分解能を維持するために、最適化され得る。
【0019】
本発明のシステムは、タンデムで実行される複数のFACカラムを使用する、化学サンプルの分析に適用され得る。複数のFACカラムとMSプレートとの間の界面の例示的な実施形態を示す概略が、図2に示される。
【0020】
沈着されたプレートは、MALDIイオン源を備える任意の質量分析計を使用して、当該分野において公知の技術を使用して、分析され得る。
【0021】
FACカラムは、FACが使用される任意の用途において固体支持体として使用される、任意の型のカラムであり得る。本発明の1つの実施形態において、FACカラムは、バイオアフィニティ毛管カラムである。本発明のさらなる実施形態において、FACカラムは、モノリシックなシリカマトリックスを収容する。適切には、このモノリシックなシリカマトリックスは、ゾル−ゲル技術を使用して調製される。本発明の複数の実施形態において、このモノリシックなシリカマトリックスは、生体分子適合性の技術を使用して、調製される。「生体分子適合性」とは、その技術が、タンパク質および/または他の生体分子を安定化するか、あるいはこれらの変性を促進しないことを意味する。FACのために適切な、生体分子適合性のシリカマトリックスを調製するための方法は、Ahangら、米国特許出願公開番号US−2004−0249082−A1(2004年12月9日公開)において報告されている。
【0022】
化学サンプルは、任意の数の化学的実体を含有する溶液であり得る。1つの実施形態において、この方法は、モジュレーター、基質、および/もしくは生物学的分子(例えば、タンパク質、ペプチドもしくは核酸(DNAおよびRNAが挙げられる)または生物学的材料(例えば、細胞および組織)に結合する他の化合物についての、ハイスループットのスクリーンにおいて使用され、ここで、この生物学的分子または生物学的材料は、カラムのマトリックス内に捕捉されるか、またはこのカラムの表面に他の様式で固定される。このサンプルは、例えば、化合物のライブラリーまたは天然供給源からの抽出物を含有し得る。この方法はまた、全ての化学的実体(酵素反応の基質および産物が挙げられる)をモニタリングしながら、推定酵素モジュレーターのスクリーニングのために使用され得る(例えば、ハイスループットの酵素反応の特徴付け、または他の生体分子反応において)。
【0023】
用語「生体分子」または「生物学的材料」とは、本明細書中で使用される場合、シリカ内に捕捉され得る、広範な種々のタンパク質、酵素および他の感受性生体高分子(DNAおよびRNA)ならびにこれらの誘導体、ならびに複雑な系(植物全体、動物全体、および微生物細胞全体が挙げられる)の、天然に存在するものと合成によるものとの両方のいずれかを包含し、そしてこれらを意味する。生体分子は、適切な溶媒(例えば、水性緩衝溶液)に溶解され得る。本発明の1つの実施形態において、生物学的物質は、その活性形態にある。
【0024】
本発明はまた、フロンタルアフィニティクロマトグラフィー(FAC)からの化学サンプルを分析する方法を包含し、この方法は、以下の工程を包含する:
(a)FACカラムからの溶出物をマトリックスと混合する工程;
(b)(a)における混合物を表面に沈着させる工程;および
(c)この沈着した混合物を、MALDI質量分析を使用して分析する工程。
【0025】
このマトリックスは、MALDI−MSにおいて使用される任意の材料であり得る。本発明の1つの実施形態において、このマトリックスは、メタノールに溶解した、α−シアノ−ヒドロキシコハク酸(CHCA)である。適切には、このCHCA溶液の濃度は、0.01M〜約0.1M、より適切には、約0.03M〜約0.05Mであり得る。
【0026】
溶出物とマトリックスとは、約1:5〜約5:1の体積比、適切には、約1:2〜2:1の体積比で、混合され得る。1つの実施形態において、溶出物とマトリックスとは、約1:1の体積比で混合される。
【0027】
FACカラムからの溶出物は、溶出液と、必要に応じて、サンプル由来の1種以上の化合物とを含有する。FACのために適切な任意の溶出液および使用される特定のカラムが、使用され得る。溶出液が、高いイオン強度の溶出緩衝液(例えば、10nMより大きいイオン強度を有する緩衝液)が使用され得ることは、本発明の特定の利点である。
【0028】
当業者は、適切な流量、溶出液および他のクロマトグラフィーパラメータを、例えば、カラムの大きさ、カラム材料およびサンプルの実体に基づいて、当該分野において公知の方法を使用して、決定し得る。
【実施例】
【0029】
(化学物質)
テトラエチルオルトシリケート(TEOS、99.999%)および3−アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)をAldrich(Oakville,ON)から入手した。ジグリセリルシラン前駆体を、TEOSから、他の箇所26に記載されるように調製した。トリメトプリム、ピリメタミン、葉酸、ポリ(エチレングリコール)(PEG/PEO,MW10kDa)およびフルオレセインを、Sigma(Oakville,ON)から入手した。MALDIマトリックス溶液(メタノール中6.2mg/mLのα−シアノ−ヒドロキシコハク酸、CHCA)を、Agilent(部品番号G2037A)から入手した。組換えジヒドロ葉酸還元酵素(E.coli由来)(これを、メトトレキサートカラムでアフィニティ精製した)を、Eric Brown教授(McMaster University)から入手した27。融解シリカ毛管チュービング(内径250μm、外径360μm、ポリイミドコーティング)を、Polymicro Technologies(Phoenix,AZ)から入手した。全ての水を、Milli−Q合成A10水精製システムを使用して、蒸留および脱イオンした。他の全ての試薬は、分析等級のものであり、そして入手した状態のままで使用した。
【0030】
(器具)
(FAC/MSシステム)
FAC/ESI−MS研究のために使用したシステムを、図3に示す。シリンジポンプ(Harvard Instruments Model 22)を使用して、溶液を送達し、そして流れ切り換え弁を使用して、アッセイ緩衝液と、化合物混合物を含有する溶液との間を切り替えた。次いで、この溶液を、カラムに通してポンプ送達し、平衡に達せさせた。溶出物を、適切な有機改変剤と混合して、三重四重極MSシステム(PE−Sciex API 3000TM)を使用する、安定なエレクトロスプレーの発生およびスプレーされる成分の検出可能性を補助した。Rheodyne 8125インジェクタ弁を使用して、操作の間、緩衝液ストリームから、緩衝液+分析物のストリームに切り替えた。カラムを、ルアー毛管アダプタ(ルアーアダプタ、Upchurch製のFerrule and Green Microtight Sleeve(P−659,M−100,F−185X))を使用して、FACシステムと連動させた。構成要素間の他の全ての接続を、融解シリカチュービングを使用して達成した。
【0031】
FAC/MALDI/MS/MSのための器具が、図1に示される。MALDIプレート上への沈着のために、カラムの溶出物を、メタノール中のα−シアノ−ヒドロキシコハク酸(CHCA)MALDIマトリックス(5μL/分で流れる)と、1:1の体積比で混合した。次いで、得られた流れ全体を、MALDIプレート上に、連続沈着プロセスを使用して沈着させた。この実験において、誂えで組み立てた、噴霧器で補助されるエレクトロスプレーシステムを使用して、コンピュータ制御されるX−Y並進ステージ上に設置されたApplied Biosystems MALDIサンプルプレート(Opti−TOFTMシステム)上に、トラックを沈着させた。この並進ステージは、404シリーズの軸からなる3軸位置決めシステムの一部であり、Parker Hanifin製のAries制御器およびCompumotors製のACR PIC制御カードが、X−Yプレート内での沈着の動き、およびZ軸に沿ったMALDIプレートからのスプレー器の分離を制御する。3つ全ての軸、および高電圧(誂えで組み立てた、指で制御される高電圧電源、4kV)の印加、および噴霧器の気体の流れ(Clippard minimatics弁Et−2M)を、1つのDell Precision 340コンピュータから、ACR制御カードを介して制御した。カラムの流れを、Valco製のステンレス鋼製のT字型接合部において、CHCA形成流れと混合した。この混合した流れを、融解シリカチュービング(外径/内径200μm/100μm)によって運び、ステンレス鋼製の電極に通した。この電極自体は、噴霧器の内部に存在した。融解シリカとステンレス鋼電極との両方は、ノズル(内径0.6mm)からわずかに(1mm)突出した。混合用のT字管を使用して、噴霧器を設置し、そしてこの噴霧器に、N2ガスを導入した。エレクトロスプレー電圧と噴霧器の気体の流れとの両方を、手動で調節し、そして指で作動させた。
【0032】
沈着パラメータ(プレート上のスプレー器の距離、噴霧器の気体の流れ、および電場が挙げられる)を、最大のトラック均質性および最小のトラック幅を得るために、最適化した。沈着チップの下方でプレートを移動させる並進速度もまた、必要なクロマトグラフィー分解能を維持しながら最適なトラック厚さを提供するために、最適化した。エレクトロスプレーチップの最適な高さは、サンプルプレートの8mm上方であり、一方で、気体の流れ(1.5L/分の窒素)と電場(エレクトロスプレーチップとMALDIプレートとの間で3kV)との組み合わせを使用して、トラックを沈着させた。この作業のために、MALDIプレートを、静止した沈着チップに対して、0.2mm/秒で移動させた。
【0033】
沈着させたプレートを、AB/Sciex oMALDITMイオン源およびJDS Uniphase製の高反復速度(1.4kHz)PowerChip Nanolase(355nm)を備えるAB/Sciex API 4000TM三重四重極質量分析計を使用して分析した。減圧に基づくoMALDITMイオン源で、API 4000TMとそのTurbo VTM源との通常のオリフィス/界面アセンブリを置き換え、これによって、MALDIサンプルプレートを、界面減圧ポンプによって排気された領域内に、図4に示されるように、分析器の軸に対して直交する配向で配置した。通常の供給源パラメータを使用して、oMALDITMイオン源を設定および制御した。供給源の内部で、MALDIプレートを、スキマー(skimmer)のオリフィスの前方で、X−Y併進ステージ上に保持した。スキマーは、このMALDIプレートを分析器から隔離する。改変したAPI 4000TMは、走査モードと走査速度とのその全能力を維持した。他に言及されない限り、MALDI分析の間、沈着されたトラック(プレート)を、MALDI源X−Yステージによって、3.8mm/秒の一定の速度で、脱離用レーザービームに対して移動させた。この脱離用レーザービームは、トラック表面に、180μm×230μmのスポットの焦点を合わせた。
【0034】
(手順)
(カラムの準備)
捕捉されたDHFRを収容するマクロ細孔シリカカラムを、他の箇所9に詳細に記載されるように、準備した。簡単に言えば、内径250μmの毛管を、最初に、APTESの層でコーティングし、モノリシックなシリカカラムの静電的結合を容易にした。シリカゾルを、最初に、1gのDGS(微細に粉砕した固体)と990μLのH2Oと混合して、1分間〜25分間の超音波処理後に約1.5mLの加水分解したDGAを得ることによって、調製した。pH7.5の50mM HEPESの第二の水溶液(16%(w/v)のPEO(MW=10kDa)および0.6%(v/v)のAPTESを含有する)を調製した。この水溶液はまた、約20μMのDHFRを含有した。100μLの緩衝液/PEG/APTES/DHFR溶液を、100μLの加水分解したDGSと混合し、そしてこの混合物を、シリンジポンプを介して、融解シリカ毛管(約2m長)に即座に装填した。この溶液の最終濃度は、25mM HEPES緩衝液中、8% w/v PEO(10kDa)、0.3% v/v APTESおよび10μM DHFRであった。この混合物は、シリカの重合(約10分間)の約2分〜3分の前の、1秒間〜3秒間にわたるスピノダール分解(相分離)に起因して曇り、捕捉されたタンパク質を収容する水和マクロ細孔モノリシックカラムが得られる。ゾル−ゲル混合物の装填後、これらのモノリシックカラムを、4℃で2日間〜5日間熟成させ、次いで、使用前に5cmの長さに切断した。これらのカラムは、5cmの中に、25pmolの活性DHFRを最初に装填され、このうちの約6pmolが活性であり、そしてこのカラムの中でアクセス可能であった9。
【0035】
(FAC/MS研究)
代表的なFAC/MS実験は、50nMの各化合物を含有し、空隙マーカーとしてのN−アセチルグルコサミンおよび/またはフルオレセイン、葉酸(マイクロモル濃度の基質)ならびにピリメタミンおよびトリメトプリム(nMのインヒビター)を含有する、化合物の混合物の注入を包含した。最初の実行の前に、カラムを、50mMのNH4OAc緩衝液(pH6.6、100mM NaCl)で、30分間、5μL/分の流量でフラッシュし、あらゆるグリセロールおよび捕捉されていないタンパク質を除去し、次いで、0〜100mM HH4OAcで、30分間、5μL/分で平衡化した。試験した全ての化合物は、0〜100mM NH4OAc中に存在し、そしてシリンジポンプを使用して、5μL/分の速度で送達された。形成流れ(安定なエレクトロスプレーイオン化の発生を補助するために使用した)は、10%(v/v)のNH4OH緩衝液(2mM)からなり、5μL/分で送達され、ESI質量分析形に入る、10μL/分の総流量を得た。MALDIについては、この形成流れを、5μL/分のマトリックスの流れ(CHCA、メタノール中6.2mg/mL)で置き換えた。ESI質量分析計を、MRMモードで作動させ、m/z 222→m/z 204(N−アセチルグルコサミンCE15eV);m/z 249→m/z 233(ピリメタミンCE42eV);m/z 291→m/z 230(トリメトプリムCE35eV);m/z 333→m/z 202(フルオレセインCE15eV)およびm/z 442→m/z 295(葉酸)を、同時に検出した。MALDI MS/MS分析をまた、MRM走査モードを使用して実施したが、MALDI脱離プロセスの間の断片化に起因して、N−アセチルグルコサミンおよび葉酸についての遷移は、それぞれ、m/z 204→m/z 138(CE18eV)およびm/z 295→m/z 276(CE30eV)に変化した。
【0036】
MALDIを使用して達成可能な、ずっと短い分析時間は、十分なサンプリング頻度を維持するために、信号蓄積ビン持続時間(滞留時間)の減少を必要にする。ESIに基づくMRM分析は、1000msの滞留時間を使用し、一方で、MALD MRMの滞留時間は、1つの遷移あたり40msに減少した。従って、定常状態のMRM信号変動を、2つのイオン化方法の間で比較する場合、MALDI信号のより高い雑音レベルは、蓄積した計数の通常の統計学的変動の増加(減少した滞留時間の副作用)、およびトラックの均質性の変動に起因する(ESIは、プレートが全ての分析物を捕捉する時間(あらゆる一時的な変動および乾燥/結晶化の変動を含む)にわたって安定なスプレーの少量をサンプリングする)。
【0037】
(酢酸アンモニウム中でのDHFRの安定性)
DHFRを、2mMまたは100mMの酢酸アンモニウム(これは、3μMのHEPESおよび2μMのNaClを含有した)中に、40nMに希釈し、そして24時間までの種々の時間にわたって、インキュベートした。特定の間隔で、100μLのアリコートを、50mM Tris・HCl(pH=7.5)、2mM DTT、100μM NADPHおよび100μM DHFを含有する100μLの溶液と混合した。DHFR活性を、Tecan Safireマイクロプレートリーダーを使用して、340nmの吸光度の減少をモニタリングすることにより、測定した。活性データを、2mMのDTTを含有する50mM Tris・HcL(pH7.5)中に希釈したDHFRサンプルから得られた活性に対して報告する。
【0038】
(結果)
(実施例1:FAC/ESI−MS/MS)
図5は、DHFRインヒビターとコントロール化合物との混合物の、タンパク質を含まない(パネルA)か、または25pmolの活性DHFRの初期装填を含む(パネルB)、DGS/PEO/APESカラムを通しての溶出から得られた、FAC/ESI−MS/MSトレースを示す。ブランクカラムは、最初の数分間(1分と4分との間)における全ての化合物の、予測されたバックグラウンドを示すが、ピリメタミンとトリメトプリムとの両方は、陽イオン性であるが、陰イオン性の化合物であるフルオレセインおよび葉酸よりわずかに長く保持された。保持(これは、2mMの酢酸アンモニウム緩衝液を使用する場合に存在する)は、陽イオン性化合物と陰イオン性のシリカカラムとの間の、非選択的な相互作用を示し、このことは、順相シリカクロマトグラフィーが、低いイオン強度において、完全には抑制されないことを示す。パネルBは、2つのDHFRインヒビター(トリメトプリム(Kd=4nM、溶出時間22分)およびピリメタミン(Kd=45nM、保持時間28.5分))のかなり長い保持、弱い基質のより短い保持(葉酸、Kd=11μM、保持時間=3分)、およびDHFR装填されたカラム上の非選択的リガンド(フルオレセイン、N−アセチル−グルコンアミド、保持時間=1.5分)の保持がないことを示す。この結果は、DHFRが、カラム内に捕捉される場合に活性であることを示し、このことは、DGS由来の材料を捕捉する場合のDHFRの良好な活性を示す最近の結果9、28と一致する。ESI/MS/MS由来のクロマトグラムの興味深い局面は、ピリメタミンの溶出の際の、トリメトプリムについてのイオン電流の大きい減少である。このような効果は、以前には、「ロールアップ」現象と関連付けられていた。この現象において、より強く結合する化合物は、より弱い結合因子の効力をなくし、より弱く結合するリガンドの一時的な過剰濃縮を引き起こす5。しかし、本発明の場合、イオン電流の損失は、ロールアップ効果に起因するのではなく、むしろ、トリメトプリムのイオン電流の抑制(これは、この研究において使用されるインヒビター濃度(50nM)において、優勢である)に起因する。これらの化合物を低レベル(20nM)で使用する、以前のFAC−ESI/MS/MS研究は、このような効果を示さなかった9。イオン抑制効果は、以下に提供されるFAC−MALDI/MS/MSデータによって、さらに確認される。
【0039】
トリメトプリムとピリメタミンとの、(それぞれのKd値に基づいて)予測される溶出時間の逆転は、以前に報告されていた9が、現時点では完全には理解されていない。この現象は、オン速度とオフ速度との差に関連し得、これは、カラム表面の化合物の全体の保持時間を決定する際に、重要な役割を果たすようであることが、考えられる。
【0040】
(実施例2:FAC−MALDI/MS/MS)
(a)MALDI MRM遷移の最適化:
MALDIによるオフラインMS分析の有用な特徴は、サンプルトラックを複数回再実行し、異なるMSデータを獲得することを可能にする能力である。これにより、MRMパラメータの最適化が可能になる。図6は、4つの標的分析物(葉酸、ピリメタミン、トリメトプリムおよびフルオレセイン)の混合物の、適切なバックグラウンドを減算してCHCAバックグラウンド信号を減少させた後の、MALDI Q1スペクトルを示す。ピークは、これらの4つの化合物の各々について明らかである。しかし、葉酸についての主要なピークは、m/z 442ではなくm/z 295で起こる。このことは、断片イオンが、この化合物について存在する主要な種であることを示す。葉酸に焦点を当てると、m/z 295の親イオンを使用して同じトラックから得られた生成物イオンの走査は、m/z 176に極大ピークを示し、その強度は、5.5×105cpsである。m/z 442の親イオンから得られる、最も多い生成物イオンは、m/z 295→m/z 176のイオン対の強度のほんの15%であった。このことは、ESIの場合とは対照的である。ESIの場合、m/z 442→m/z 295の遷移が、最大の強度を示し、そしてMRM遷移をMALDIプレート上で直接最適化し得ることの重要性を強調する。
【0041】
(b)MALDIパラメータの最適化:
MALDIプレート上に沈着したトラックの分析は、本発明の沈着パラメータを使用して得られた代表的なトラック幅が、約2.5mmであったことを示す。レーザーのスポットサイズは、180μm×230μmであり、これは、沈着したトラックの幅の約10%のトラックの燃焼をもたらす。MALDIの獲得の間の、少量のみの沈着サンプルの利用は、方法の設定において利点を与える。ここで、MRM選択および分析器の最適化が、トラック/スポットの再実行を介して、ESI(約10pg)と比較して、少量のサンプル(約10pg)で達成され得る。
【0042】
生じる問題は、トラックの特定の領域が再実行され得る回数である。なぜなら、この回数は、トラックのすでにサンプリングされた部分を再実行する能力を、どのように最もよく利用し、これによって、検出プロセスの効率を増加させるかを決定るからである。トラックが再実行され得る回数は、レーザーがこのサンプルにわたって並進される周波数および速度に依存する。MALDIプロセスについて使用されるレーザーの周波数は、3μJ/パルスに設定された。この値は、トラック表面の熱分解を最小にしながら、信号対雑音比を最適化し、これによって、最大のサンプル利用を可能にした。トラックのある領域にわたる、可能な再実行の数に対する、サンプリング速度の影響が、図7に示される。サンプルの消費は、レーザーがトラックを横断する速度に依存することが明らかである。より大きい速度は、より少ないサンプル消費を引き起こし、より多くの再実行を可能にする。MALDI源ステージの最大速度(3.8mm/秒)は、トラックの所定の領域において起こるサンプルの排出の前に、約30回の再実行を可能にする。この領域において、信号の大部分が、最初の15回の通過の間に脱離する。しかし、トラック全体のうちのほんの小さい部分(約10%)のみがサンプリングされるので、1つのトラックあたり7個〜8個までの異なる領域がサンプリングされるようであり、従って、実際に、1つの沈着されたトラックが、100回にわたってサンプリングされ得る。光源によって可能にされる値にわたって、レーザーの併進速度を変化させることにより(0.5mm/秒、1mm/秒、および3.8mm/秒)、より低い速度で最大の信号強度がかなり増加するが、なされ得る再実行の数が減少することが示される。従って、所定のサンプル領域の完全な排出によって得られる全信号は、比較的一定なままであり、そしてデータが生成される速度とは無関係である。高い併進速度を使用することにより、解釈可能な信号の最速の獲得が与えられ、従って、スループットが最大になる。
【0043】
分析物:マトリックスの比もまた、3:1〜1:3(v:v)の範囲で変動させて、上記4つの化合物についての最適な検出を達成した。その結果を、信号を、1ユニットの分析物あたりのバックグラウンドで除算したものとして表現して、表1にまとめる。最適な比は、化合物に特異的であることが明らかである。しかし、1:1(v:v)の使用は、全ての化合物を検出する全体的な感度と能力との間の、最もよい妥協を与える。実際に、フルオレセインの検出は、1:1の分析物:マトリックスの比のみで可能であった。なぜなら、m/z 333→m/z 202の遷移についてのマトリックスのバックグラウンドは、極端に高く、そして他の分析物:マトリックスの比でのフルオレセイン信号を圧倒した。高い緩衝液濃度でのMALDIの性能は、わずかに高いCHCA含有量により改善されることもまた、観察された。このことは、結晶化と荷電のための競合との両方を改善し得る。
【0044】
(c)FAC−MALDI/MS/MS分析:
図8は、ブランクカラム(図8a)またはDHFRカラム(図8b)からの溶出物が、実行緩衝液として2mM酢酸アンモニウムを使用して沈着された、MALDIプレートからの沈着に関して得られた、FACトレースを示す。図8において、化合物は、MALDIプレート上に沈着した最初の2つのトレースにおいて溶出する(矢印は、分析されたトレースを示す)。図8の下の目盛は、MALDIの分析時間を示し、これは、沈着速度対レーザー読み取り速度の比(これは、この場合には、19である)を倍率因子として使用して、LC溶出時間に変換され得る。FAC−ESI/MS/MSについての場合と同様に、フルオレセイン、N−アセチルグルコサミンおよび葉酸が、最初に溶出し(1.5分間のLC時間)、引き続いて、トリメトプリム(3分間のLC時間)およびピリメタミン(3.5分間のLC時間)が溶出した。ここでまた、低いイオン濃度の緩衝液を使用する場合の、分析物の非特異的な結合が示される。このことは、驚くべきことではない。なぜなら、溶出時間は、検出のために使用されるMSの特定の型ではなく、カラムによって決定されるからである。より興味深いことには、プレート上のトレースを分析するために必要とされるMSの分析時間は、実際のLC時間の8分間と比較して、0.5分未満である。従って、LC沈着時間は、両方の方法について類似であるが、同じサンプルを解釈するためにMSの複数のモードを使用することが、可能である(図7を参照のこと)。各モードは、実行のために数分しか必要としない。
【0045】
図8bは、DHFRを装填されたカラムから得られたデータを示す。ここでまた、2nMのインヒビターは、かなり長い保持を示し、保持時間は、FAC−ESI/MS/MSから得られた保持時間と類似である(トリメトプリム;t−t0=20分、ピリメタミン;t−t0=28.5分)。ESI/MSと比較してわずかに長い溶出時間は、FAC/MALDI研究のために使用されたカラムが、FAC/ESIのために使用されたカラムよりわずかに長かったという事実を反映する。FAC/MALDI分析からの重要な知見は、低いイオン抑制であり、これは、MALDI MS/MS法の別の重要な利点を示す。このことは、MALDIイオン化の性質が、ESIよりも化学イオン化(およびAPCI)により近いことに起因し得る。MALDIの場合、レーザーにより脱離された種は、表面から発生した煙の内部での、CHCAイオンとの相互作用によってイオン化される。このような場合、それらの結果は、APCIプロセスにおける減少したイオン抑制の十分に確立された観察10、29、30と一致する。高レベルの不純物に起因するMALDI信号抑制は、Krause31およびGharahdi32によって報告されているが、これは、サンプルの結晶化の変化(この場合、このような条件下でのウェットスポット結晶化は、不均質な縁付きのスポットを生じる)によって、または不十分なCHCAがサンプル中に存在することによって、よりよく引き起こされ得る。このような場合、レーザービームに対する表面の不透明性が、乾燥の際に生じる。本発明の沈着方法において、結晶化プロセスとCHCA量との両方が、小さい結晶(ほぼ乾燥したスプレーがMALDIプレートに衝突する)の高密度のトラックを、高い表面対体積比(MALDIのような表面で駆動されるプロセスについて重要なパラメータ)で生じるために最適化された。
【0046】
表2は、MALDIについては2mMと100mMとの酢酸アンモニウム(AA)緩衝液レベル、そしてESIについては2mMを使用して、ESI方法とMALDI MS/MS方法とから得られた、信号対バックグラウンドレベルを比較し、そして標準化されたプロットの、絶対計数への変換のための手段を提供する。ESI実験およびMALDI実験の各々が、異なる質量分析器(それぞれ、API 3000TMおよびAPI 4000TM)を使用してなされたにもかかわらず、一般的な比較(指標のみと指定とされる)が可能であることが留意されるべきである。なぜなら、MALDIの作動についてのAPI 4000TMを、oMALDITM源を取り付けることによって変換することにより、その通常のオリフィス/界面およびTurbo VTM源が除去されるからである。これらの構成要素が、約50μL/分の流量でのAPI 3000TMより優れた有意な性能増強を提供する。これらのデータは、MALDIが、100mMの緩衝液を用いて、ESIが2mMの緩衝液を用いて与える信号とおよそ同じレベルの信号を与えるものの、MALDIは、2mMのAA緩衝液を用いて、感度のかなりの増加を与えることを示す。この結果は、表3に示されるように、2つの技術によって一定量のサンプルについて発生した全信号を比較することによって、さらに確実にされる。2mM AA緩衝液中の各分析物の50nMの溶液のMALDI分析は、ESIから得られる全信号の約20倍から100倍を生成する。ESIプロセスについて、非常に少量のスプレーされたサンプルのみが、実際に分析器に入り、そして検出され、ここで、MALDIトラックは、サンプルの全てを捕捉し、そしてトラックおよび捕捉されたサンプルの繰り返しの分析を可能にする。
【0047】
MALDIにおける信号レベルは、EAIにおける信号レベルより高いが、MALDIの獲得は、ESIについての1000msに対して40msというより短い滞留時間、およびトラックにおける不均一性に起因するさらなる雑音に起因して、より大きい雑音に悩まされる。そうであっても、MALDIプロセスは、トラックの多数の再実行からの信号を組み合わせることによって、その雑音を低下させる能力を与える。信号の平均により得られる雑音減少は、データ解釈のために必要とされる所望のレベルに達するまで適用され得る。トラックの迅速なレーザー再実行および合計の選択的な適用は、時間感受性の様式で、一定量のサンプルの効率的な使用を可能にする。
【0048】
MALDI分析が、100mMのAA緩衝液を用いてさえ可能であるとして、イオン強度も、FACプロセスに対する影響を調査した。図9は、イオン強度の、非特異的結合の程度に対する影響を、ブランクのモノリシックカラムを使用して示す。この場合には、葉酸、ピリメタミンおよびトリメトプリムのみが溶出し、葉酸が、空隙マーカーとして働いた。全てのデータを、同じカラムで実行し、低いイオン強度から開始し、100mMのイオン強度まで増加させた。0mMのイオン強度において、カラムでの全ての分析物がかなり長い時間保持され、そしてより興味深いことには、溶出が、非常に広い時間範囲にわたって広がる。このことは、かなりの量の非特異的結合を示す。2mMのイオン強度の使用(上記を参照のこと)は、より鋭利な溶出プロフィールをもたらすが、化合物(葉酸を含めて)の、数分間までのかなり長い保持を引き起こす。他方で、50mMまたは100mMのいずれかのイオン強度が使用される場合、化合物は、より早い時点で(全強度の50%に達する時間に基づく)、ずっと狭い範囲にわたって、溶出する。このことは、非特異的な結合が抑制されたことを示す。これらの実験からの重要な点は、100mMのイオン強度においてさえも、噴霧器により補助されるエレクトロスプレー方法を使用して、LC溶出物を満足に沈着させることが可能であったことである。さらに、緩衝液としての酢酸アンモニウムの使用は、有意な付加イオンを生成せず、同じMRM遷移が、使用される緩衝液の濃度にかかわらず使用されることを可能にした。他方で、100mMのサンプルの不連続なスポッティングは、マトリックス/緩衝液のほとんどを、スポットの縁部に沈着させ(データは示さない)、MALDI分析のための信号レベルと雑音レベルの、有意な非再現性をもたらす。
【0049】
イオン強度に依存する別の要因は、捕捉されるタンパク質の活性の維持であり、これは、バイオアフィニティカラムが再使用され得るか否かを決定する。DHFRカラムを備えるFAC−ESI/MS/MSを使用した、以前の研究は、2mMのイオン強度の使用が、2mMの酢酸アンモニウム中でのDHFRの低い安定性に起因して、カラム性能の有意な低下を生じたことを示した9。図10は、DHFRタンパク質が、100mMの酢酸アンモニウム中での2時間のインキュベーション後に、完全な活性を保持するが、2mMの酢酸アンモニウムの存在下では、類似の時間の後に、その初期の活性の半分未満を維持することを示す。5時間後、タンパク質は、100mMの緩衝液中で、80%を超える活性を保持するが、2mMの緩衝液中では、10%未満の活性を保持する。これらのインキュベーション時間は、FACに通常関連する最も長い実行時間に対応し、そして明らかに、MALDI/MSのみと適合性である高いイオン強度の緩衝液の使用が、FAC実験の必要とされる実行時間にわたって、活性を保持する結果となるべきことを実証する。
【0050】
図11は、モノリシックなDHFRカラムの再使用可能性に対する、高いイオン強度の影響を示す。パネルAは、10mMの酢酸アンモニウム中50nMの葉酸、ポリメタミンおよびトリメトプリムを使用して、カラムの初期の実行について得られた、FAC−MALDI/MS/MSトレースを示す。パネルBは、100mMの酢酸アンモニウムを使用して得られた回復実行を示し、そしてパネルCは、パネルAにおいて使用された条件と同じ条件下での、同じカラムの2回目の実行を示す。1回目の実行と2回目の実行との間の保持時間が、わずかに減少しているが、100mMのイオン強度を使用する場合のカラムの全体の性能は、2mMのイオン強度を使用する場合に得られる性能よりはるかに優れている。例えば、トリメトプリムとピリメタミンとの両方についての保持時間は、100mMのイオン強度にて、20%のみ減少するが(トリメトプリムについて11.5分から10分、ピリメタミンについて16.5分から13.5分)、一方で、ほぼ85%の保持時間の減少が、2mMのイオン強度にて得られた9。100mMのイオン強度における全ての化合物についての保持時間が、2mMにおいて得られた保持時間より有意に短かったこともまた、価値あることである。このことは、部分的に、後者の実験についてのより短いカラムの使用(6cmに対して5cm)に起因したが、おそらく、より低い非特異的結合、およびより高いイオン強度の結果として起こったかもしれない脱離定数の変化にもまた、起因した。実行の間での保持時間の20%の移動は、比較的大きいが、このような損失は、タンパク質の変性よりもむしろ、ゆるく捕捉されたタンパク質のゆっくりした漏出に起因し得る。細孔型態の観点でのカラムのさらなる最適化は、カラムの再使用のさらなる改善を可能にし得、そしてFAC研究を高いイオン強度で実行する能力と組み合わせられる場合(上で実証されたように)、このようなカラムを数回再使用することが可能であり得る。
【0051】
(実施例1および実施例2についての考察)
毛管規模のメソ細孔/マクロ細孔ゾル−ゲルベースのモノリシックバイオアフィニティカラムは、理想的には、混合物中の特定の化合物の同定のための、フロンタルアフィニティクロマトグラフィーを質量分析検出と一緒に使用する、化合物混合物のスクリーニングのために適切である。ゾル−ゲル由来のカラムの特定の利点は、それらの種々の異なるタンパク質との良好な適合性である。本研究は、可溶性酵素の捕捉に焦点を当てたが、本明細書中において使用されるゾル−ゲル方法は、広範な重要な薬物標的(膜結合タンパク質28およびレセプター33、ならびに全細胞34さえもが挙げられる)の捕捉にもまた、適用可能である。さらに、DGA由来のメタノールへの捕捉は、他の方法によって固定することが困難な不安定な酵素(例えば、第Xa因子およびCox−II28)の固定を可能にする。従って、モノリシックカラムは、広範な種々の有用な標的に対する、化合物混合物のスクリーニングにおいて、用途を見出し得る。
【0052】
内径が小さいモノリシックカラムの別の利点は、毛管カラムを、ESIまたはMALDI質量分析計と直接連動させる能力であり、このことは、おそらく、これらのカラムを、FAC/MSを使用する化合物のHTSのために適切にする。具体的には、本発明のモノリシックカラムの小さい内径は、これらのカラムが、分析物の比較的薄いストリームをMALDIプレート上に沈着させることを可能にし、高密度(1つのプレートあたり12のトレースまで)の沈着を可能にする。MALDIプレートの時間容量は、沈着されたトラックの幅、およびその沈着速度によって、決定される。沈着速度を低下させることにより、プレート容量が増加するが、これはまた、任意の瞬間において溶出する材料が有限領域(スプレー直径によって与えられる)およびにわたって沈着される場合に、LC分解能を損ない、そして2つの隣接する事象の重なりが増加する。スプレー直径は、プレートの容量とクロマトグラフィー記録の正確さとの両方に直接影響を与えるので、この直径を、可能な限り小さく維持することが重要である。実用的に言えば、許容され得るクロマトグラフィー分解能の損失は、最低沈着速度を決定する。LCの実行および分析は、ここで2つの時間に依存しない事象として切り離されたので、沈着速度と問い合わせ速度との間の比が、1つのトラックにわたって一度に、いかに多くの再実行および異なる分析実験が実施され得、LCの再実行にわたってかなりの時間を節約し得るかを決定する。
【0053】
本明細書中に報告されたFAC−MALDI/MS/MSに伴う特定のパラメータは、性能を増強するために最適化され得る。例えば、より狭い、より少ない沈着トレースを生じ得る沈着方法は、プレート上でのより高密度の分析物を提供する35。このことは、レーザービーム内のより高い分析物濃度、および従って、より良好なLODをもたらすはずである。より小さい直径のカラムは、より低い流量での、より迅速なLC分離を可能にし得、このことは、MALDI標的上の薄いトラックの沈着と両立する。より細いカラムに加えて、MALDIマトリックスから固有のバックグラウンドを抑制する方法は、分析物信号からバックグラウンド信号を減算する必要性を最小にする。このことは、MRMモードを使用する場合にはさほど問題にならず、実際に、現在の研究においては必要とされないが、このような方法は、現在使用されているMALDIマトリックス種と構造が類似している生成物イオンを有する薬物化合物に関して、使用され得る。
【0054】
FAC研究のためのESI/MSと比較したMALDI/MSの利点は、より高いイオン強度の緩衝液を、FAC実行の間に使用する能力である。タンパク質の活性は、溶液のpHおよびイオン強度のような要因に非常に依存することが公知であり、そしてほとんどの場合には、最大の活性は、生理学的条件を模倣する緩衝液(すなわち、20〜50mMの緩衝液、100mM KCl、pH約7.4)を使用して得られる。さらに、高いイオン強度は、より効果的な二重層を提供し、これは、陰イオン性シリカ表面の電荷をより良好にスクリーニングし、従って、荷電分析物とシリカ表面との間の静電相互作用を減少させる。本発明の研究において、Na+およびK+は、付加イオン形成に付随する問題を回避するために、回避された。実際に、酢酸アンモニウム(これは、揮発性緩衝液である)が、イオン強度を調節するために選択された。この緩衝液の使用は、付加イオンの形成をもたらさず、そして100mMの濃度でさえも、LC沈着に適用可能な条件を提供した。より高レベルの酢酸アンモニウムが、FAC/MALDIのために使用されることが可能であるが、このようなレベルは、この研究においては試験されなかった。上で示されたように、高いイオン強度の使用は、非特異的結合の予測された減少をもたらし、そしてまた、カラムの繰り返しの使用の際の、タンパク質活性のより良好な維持を生じた。このことは、明らかに、MALDI/MSの使用が、タンパク質をドープされたカラムを使用するFAC研究のために、ESI/MSより優れたかなりの利点を有することを示す。
【0055】
MALDI/MS/MSの使用は、フロンタルアフィニティクロマトグラフィー研究のための、ESI/MS/MSの使用より優れた、かなりの利点を提供する。MALDI/MS/MSは、高いイオン強度の緩衝液のより良好な許容性、低いイオン抑制、より速いMS分析時間、1回のLC実行あたりのより多くのMS分析のモードへのアクセスを提供し、そして異なる質量分析器(三重−四重極、TOF、TOF−TOF、Q−TOF、イオントラップ、FT−MS)を使用して、同じサンプルからデータを獲得する能力を潜在的に与える。このことは、より高い分子量の種が分析される場合に、有利であり得る。これらの利点は、フロンタルアフィニティクロマトグラフィーを、生理学的条件をよりよく模倣する条件下で実施する能力をもたらし、固定されたタンパク質についての活性のより良好な保持をもたらし、そしておそらく、より信頼性のある結合定数データを提供する。1回のLC実行に付き複数のMS分析を実行する能力は、低濃度の分析物の検出を最適化するため、または天然産物のライブラリーもしくは類似の化合物混合物中に存在し得る未知の化合物を同定するために、有利に使用され得る。ESI/MSにおいて、化合物のMRM遷移、および従って実体は、FACの実行の前に既知でなければならない。さもなければ、未知の化合物は、「ロールアップ」モードで、指示薬化合物を使用して間接的に、化合物の同定をオフラインで実施して、同定されなければならない。本明細書中に示されるように、このようなロールアップ効果は、ESI/MS/MSを使用する場合、イオン抑制を妨げ得、指示薬モードを使用する場合に、真の「ヒット」を同定する際に困難を生じる。MALDI/MS/MSは、これらの問題を最少にし、指示薬モードをより信頼性のあるものにし、そしてまた、沈着した分析物の完全なMS分析を可能にし、未知のものの同定を補助する。全体として、本研究の結果は、MALDI/MS/MSが、FACと組み合わせて使用される場合に、ESI/MS/MSより優れた多数の利点を提供し得、LC/MSに基づくハイスループットのスクリーニングのための、改善された方法を提供する。
【0056】
本発明が、上記実施例を参照して記載されたが、本発明は、開示された実施例に限定されないことが理解されるべきである。逆に、本発明は、添付の特許請求の範囲の精神および範囲に含まれる、種々の改変および等価な配置を網羅することが意図される。
【0057】
全ての刊行物、特許および特許出願は、各個々の刊行物、特許または特許出願の各々が、その全体が本明細書中に参考として援用されると具体的かつ個々に示されると同程度まで、その全体が本明細書中に参考として援用される。本願中の用語が、本明細書中に参考として援用された文献において、異なって記載されていることが見出される場合、本明細書中に提供される定義が、その用語についての定義として働くべきである。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
【表3】
【0061】
【表4】
【0062】
【表5】
【0063】
【表6】
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】図1は、FAC−MALDI/MS/MSのために使用される、本発明の1つの実施形態を図示する、システムの概略図である。カラム出口は、噴霧器内に直接流れるMALDIマトリックス溶液の添加のための、混合用T字管に接続され、この混合物を、MALDIプレート上にスプレーすることを可能にする。このMALDIプレートは、カラムの出口の下で、コンピュータ制御されるX−Y並進ステージ上を移動する。
【図2】図2は、複数のFACカラムとMALDI−MSプレートとの連動の例示的な実施形態を示す概略図である。
【図3】図3は、FAC−ESI/MS/MSのために使用される、先行技術のシステムの概略図である。切り換え弁が、緩衝液から、緩衝液+分析物に切り替えるために使用され、このカラムへの、分析物の連続的な注入を可能にする。カラムの出口は、補給緩衝液の添加のための混合用T字管に接続される。この緩衝液は、PE/Sciex API 3000三重四重極質量分析計に直接流入する。
【図4】図4は、API 4000の、減圧に基づくoMALDITMイオン源アセンブリを示す概略である。API 4000は、MALDIサンプルプレートを、界面減圧ポンプによって排気された領域に、分析器の軸に対して直交する配向で配置する。
【図5】図5は、タンパク質を充填されたカラムおよびブランクのDGS/PEO/APTESモノリシックカラムを使用して得られた、代表的なFAC−ESI/MS/MSトレースを示す。パネルA:タンパク質を含まないブランクカラム;パネルB:25pmolのDHFR(初期充填)を含むカラム。N−アセチルグルコサミン、フルオレセイン、葉酸、ポリメタミンおよびトリメトプリムを、50nMで注入した。トレースは、実際のイオン電流を示し、イオン抑制効果のより明瞭な指標を提供する。
【図6】図6は、MALDI/MSを使用する、葉酸のMRM遷移の多経路選択を示す。パネルAは、葉酸、フルオレセイン、ポリメタミンおよびトリメトプリム(各々50nM)の、MeOH中6.2mg/mLのCHCAと1:1(v:v)で混合した、MALDIプレート上に沈着した混合物の、Q1全走査を示す。Q1スペクトルは、減算によって除かれたマトリックスから生じるバックグラウンド信号を有した。パネルBは、m/zが442の親イオンから生じるQ3生成物イオン走査を示す。パネルCは、m/z 295の親イオンから生じるQ3生成物イオン走査を示す。全ての走査は、中程度のレーザー並進速度(1mm/秒)を使用して得られ、そして所定のサンプル領域にわたる5回の再実行の平均である。
【図7】図7は、遅い並進速度(0.5mm/s、黒三角)、中程度の並進速度(1mm/s、黒四角)、および速い並進速度(3.8mm/s、黒丸)について、所定の領域の再実行の回数の関数としての、MALDI/MS信号の強度を示す。ピーク値とは、トラックにわたる最初の通過について得られた計数をいい、合計値とは、特定の速度で所定のトラックにわたる全ての実行から得られる全計数をいう。
【図8】図8は、タンパク質を装填されたカラムおよびブランクのDGS/PEO/APTESモノリシックカラムを使用して得られた、FAC−MALDI/MS/MSトレースを示す。パネルA:タンパク質を含まないブランクカラム;パネルB:25pmolのDHFR(初期充填)を含むカラムであって、早期時点でのN−アセチルグルコサミン、フルオレセインおよび葉酸、トリメトプリムおよび最後にポリメタミンの漏出を示す。全ての化合物を、50nMで注入した。全てのトレースを、化合物の漏出後に得られた最大信号に対して標準化する。MALDI分析時間は、LC沈着時間より19倍速いことに留意のこと。全てのFACトレースを、高速レーザー遷移速度(3.5mm/秒)を使用して得、そしてこれらは、所定のサンプル領域にわたる5回の再実行の平均である。
【図9】図9は、FAC/MALDIによって分析された、ブランクのモノリシックカラムに対して、化合物の非特異的結合に対するイオン強度の結果を示す。MALDI MRMトレースは、a)2mMの酢酸アンモニウム緩衝液、b)50mMの緩衝液およびc)100mMの緩衝液を使用して、最初の葉酸、トリメトプリムおよびピリメタミン(各々50nM)の実行について、示される。全てのデータを、同じカラムにおいて、化合物の導入の前に適切な緩衝液中でカラムを予備インキュベートして実行した。全てのFACトレースを、高速レーザー遷移速度(3.8mm/秒)を使用して得、そしてこれらは、所定のサンプル領域にわたる5回の再実行の平均である。
【図10】図10は、2mMおよび100mMの酢酸アンモニウム緩衝溶液中でのインキュベーション時間の関数としての、DHFRの活性を示す。
【図11】図11は、FAC/MALDIを使用する、モノリシックDHFRカラムの再使用に対するイオン強度の影響を示す。パネルAは、葉酸、トリメトプリムおよびピリメタミン(各々50nM)について、100mM酢酸アンモニウム緩衝液を使用して最初の実行から得られた、MALDI MRMトレースを示す。パネルBは、100mMの酢酸アンモニウムを使用するカラムの回復の際の、溶出物の沈着の間に、プレートから得られたMALDI MRMトレースを示す。パネルCは、同じモノリシックカラムを通しての、上に列挙された化合物の2回目の実行の間の、カラム溶出物の沈着によって形成されたプレートからの、MALDI MRMトレースを示す。注記:全実行時間は、5μL/分において120分であり、これは、122カラム体積に対応する。全てのFACトレースは、より速いレーザー遷移速度(3.8mm/秒)を使用して得られ、そしてこれらは、所定のサンプル領域にわたる5日の再実行の平均である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学サンプルを分析するためのシステムであって、該システムは、MALDI質量分析系と連動するフロンタルアフィニティクロマトグラフィー(FAC)カラムを備える、システム。
【請求項2】
前記FACカラムからの溶出物ストリームが、MALDIマトリックス材料と混合され、そして該混合物が、MALDI−MSプレート上に沈着される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記混合物が、不連続なスポットとしてか、または連続的なトラックとして沈着される、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記混合物が、連続的なトラックとして沈着される、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記混合物が、MALDI沈着の前の画分収集;毛管からのスポットまたはトラックの直接的な沈着;電気動力学的な荷電液滴処理;加熱された液滴界面を使用する沈着;圧電フロースルー微小分配減圧により補助される沈着、電場により駆動される液滴沈着、エレクトロスプレー沈着、あるいは毛管噴霧器スプレーによって沈着される、請求項2に記載のシステム。
【請求項6】
前記MALDIプレートが、コンピュータの制御下で移動される、請求項2〜5のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項7】
前記FACカラムが、バイオアフィニティ毛管カラムである、請求項1〜6のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項8】
前記FACカラムが、モノリシックなシリカマトリックスを収容する、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記モノリシックなシリカマトリックスが、ゾル−ゲル技術を使用して調製される、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記モノリシックなシリカマトリックスが、生体分子適合性の技術を使用して調製される、請求項8または9に記載のシステム。
【請求項11】
前記FACカラムが、該カラムの内部に捕捉されたか、または該カラムの表面に固定された、1つ以上の生物学的分子を備える、請求項1〜10のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項12】
前記化学サンプルが、化合物のライブラリーまたは天然供給源からの抽出物を含有する、請求項1〜11のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項13】
フロンタルアフィニティクロマトグラフィー(FAC)からの化学サンプルを分析する方法であって、該方法は、以下:
(a)FACカラムからの溶出物を、マトリックスと混合する工程;
(b)該(a)における混合物を、表面に沈着させる工程;および
(c)該沈着された混合物を、MALDI質量分析を使用して分析する工程、
を包含する、方法。
【請求項1】
化学サンプルを分析するためのシステムであって、該システムは、MALDI質量分析系と連動するフロンタルアフィニティクロマトグラフィー(FAC)カラムを備える、システム。
【請求項2】
前記FACカラムからの溶出物ストリームが、MALDIマトリックス材料と混合され、そして該混合物が、MALDI−MSプレート上に沈着される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記混合物が、不連続なスポットとしてか、または連続的なトラックとして沈着される、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記混合物が、連続的なトラックとして沈着される、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記混合物が、MALDI沈着の前の画分収集;毛管からのスポットまたはトラックの直接的な沈着;電気動力学的な荷電液滴処理;加熱された液滴界面を使用する沈着;圧電フロースルー微小分配減圧により補助される沈着、電場により駆動される液滴沈着、エレクトロスプレー沈着、あるいは毛管噴霧器スプレーによって沈着される、請求項2に記載のシステム。
【請求項6】
前記MALDIプレートが、コンピュータの制御下で移動される、請求項2〜5のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項7】
前記FACカラムが、バイオアフィニティ毛管カラムである、請求項1〜6のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項8】
前記FACカラムが、モノリシックなシリカマトリックスを収容する、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記モノリシックなシリカマトリックスが、ゾル−ゲル技術を使用して調製される、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記モノリシックなシリカマトリックスが、生体分子適合性の技術を使用して調製される、請求項8または9に記載のシステム。
【請求項11】
前記FACカラムが、該カラムの内部に捕捉されたか、または該カラムの表面に固定された、1つ以上の生物学的分子を備える、請求項1〜10のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項12】
前記化学サンプルが、化合物のライブラリーまたは天然供給源からの抽出物を含有する、請求項1〜11のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項13】
フロンタルアフィニティクロマトグラフィー(FAC)からの化学サンプルを分析する方法であって、該方法は、以下:
(a)FACカラムからの溶出物を、マトリックスと混合する工程;
(b)該(a)における混合物を、表面に沈着させる工程;および
(c)該沈着された混合物を、MALDI質量分析を使用して分析する工程、
を包含する、方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2007−538235(P2007−538235A)
【公表日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−516919(P2007−516919)
【出願日】平成17年5月24日(2005.5.24)
【国際出願番号】PCT/CA2005/000790
【国際公開番号】WO2005/114170
【国際公開日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(505377197)エムディーエス インコーポレイテッド ドゥーイング ビジネス スルー イッツ エムディーエス サイエックス ディヴィジョン (12)
【出願人】(505310541)アプレラ コーポレイション (12)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年5月24日(2005.5.24)
【国際出願番号】PCT/CA2005/000790
【国際公開番号】WO2005/114170
【国際公開日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(505377197)エムディーエス インコーポレイテッド ドゥーイング ビジネス スルー イッツ エムディーエス サイエックス ディヴィジョン (12)
【出願人】(505310541)アプレラ コーポレイション (12)
【Fターム(参考)】
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