説明

フロントバンパのグリル構造

【課題】上下に分割してフロントバンパに取り付けられたアッパグリルとロアグリルを一体的に見せる意匠とすることによって商品性を高めることができるフロントバンパのグリル構造を提供すること。
【解決手段】車両前部に配されたフロントバンパ1の車幅方向中央部に、意匠面1Bを挟んでこれの上下にアッパグリル用開口2とロアグリル用開口3をそれぞれ形成し、これらのアッパグリル用開口2とロアグリル用開口3にアッパグリル4とロアグリル5をそれぞれ取り付けて構成されるフロントバンパ1のグリル構造において、前記フロントパンパ1の前記アッパグリル用開口2と前記ロアグリル用開口間3の前記意匠面1Bの左右両端部に、前記アッパグリル4と前記ロアグリル5とを連結するガーニッシュ7をそれぞれ取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロントバンパの車幅方向中央部の上下に2箇所外気を導入する開口を設け、この開口にアッパグリルとロアグリルをそれぞれ取り付けて成るフロントバンパのグリル構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の前端下部に配されたフロントバンパの車幅方向中央部には、エンジンルーム内に走行風を取り入れるための開口が形成されてグリルが取り付けられるが、デザイン的な観点からグリルの高さ方向中間部にフロントバンパの意匠面を横方向に通し、この意匠面にライセンスプレートを取り付ける構成が採用される場合がある。
【0003】
斯かる構成を採用する場合、フロントバンパに1つの大きなグリルを取り付ける方式と、グリルをアッパグリルとロアグリルとに上下に2分割し、これらのアッパグリルとロアグリルをフロントバンパの上下の開口に個別に取り付ける方式が考えられる。
【0004】
ところで、特許文献1には、バンパ本体の空気取り入れ口を覆うガーニッシュとバンパ本体に取り付けられるライトの周りを覆うベゼルとを車幅方向に並設して成るフロントバンパにおいて、前記ガーニッシュと前記ベゼルを車幅方向に連続的に配置して両者間にフロントバンパの表面が見えないよう構成することによってデザイン性を高める提案がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−087615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、グリルの高さ方向中間部にフロントバンパの意匠面を横方向に通す構成を採用する場合のグリルの取付方式として前記2方式が考えられるが、フロントバンパに1つの大きなグリルを取り付ける前者の方式では、グリルの成形型が大きくなるとともに、グリルの重量も大きくなってコストアップを免れないという問題がある。
【0007】
又、グリルをアッパグリルとロアグリルとに上下に2分割し、これらのアッパグリルとロアグリルをフロントバンパに個別に取り付ける後者の方式では、グリルの重量増加とコストアップは避けられるものの、グリルの一体感が損なわれ、前者の方式に比して商品性が劣るという問題がある。
【0008】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、上下に分割してフロントバンパに取り付けられたアッパグリルとロアグリルを一体的に見せる意匠とすることによって商品性を高めることができるフロントバンパのグリル構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、車両前部に配されたフロントバンパの車幅方向中央部に、意匠面を挟んでこれの上下にアッパグリル用開口とロアグリル用開口をそれぞれ形成し、これらのアッパグリル用開口とロアグリル用開口にアッパグリルとロアグリルをそれぞれ取り付けて構成されるフロントバンパのグリル構造において、前記フロントパンパの前記アッパグリル用開口と前記ロアグリル用開口間の前記意匠面の左右両端部に、前記アッパグリルと前記ロアグリルとを連結するガーニッシュをそれぞれ取り付けたことを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記フロントバンパの前記意匠面を前記アッパグリルよりも車両前方に膨出させ、その左右両端部に車両後方に窪んだ凹部を上下方向にそれぞれ形成し、各凹部に前記ガーニッシュを収納固定したことを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記各ガーニッシュの上端部を前記アッパグリルの下端縁に係合させたことを特徴とする。
【0012】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明において、前記各ガーニッシュの上端部を前記アッパグリルの下端縁に車幅方向の移動を許容する係合構造によって係合させ、各ガーニッシュの上下方向中間部を前記バンパに上下方向の移動を許容する係合構造によって係合させ、各ガーニッシュの下端部を前記ロアグリルの上端縁に車幅方向の移動を許容する係合構造によって係合させたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の発明によれば、実際には2分割されたアッパグリルとロアグリルをフロントバンパに取り付ける構成を採用したにも拘らず、これらのアッパグリルとロアグリルの間に設けられたフロントバンパの意匠面の左右両端部に取り付けられたガーニッシュによってアッパグリルとロアグリルが一体化したものとして見える意匠とすることができ、これによって車両の商品性が高められる。又、グリルをアッパグリルとロアグリルに上下に2分割したため、成形型が小型化するとともに、アッパグリルとロアグリルの軽量化とコストダウンを図ることができる。
【0014】
請求項2記載の発明によれば、アッパグリルよりも車両前方に膨出するフロントバンパの意匠面を切り通し状態としてガーニッシュを配置することができるため、該ガーニッシュの車両前後方向の位置をアッパグリルとロアグリルの位置に近づけることができ、アッパグリルとロアグリル及びガーニッシュの一体感を容易に表現することが可能となって商品性が高められる。
【0015】
又、フロントバンパのアッパグリルとロアグリルの間の意匠面の左右両端部に上下方向に形成された凹部にガーニッシュを収納固定したため、該ガーニッシュの位置決めが容易となるとともに、その位置ずれが目立たなくなるために部品精度に特別な注意を払う必要がなくなり、該ガーニッシュの生産性が高められる。
【0016】
請求項3記載の発明によれば、ガーニッシュの上端部をアッパグリルの下端縁に係合させるため、該ガーニッシュの上端部とアッパグリルの相対的な位置決めが可能となり、両者間の隙間を小さく抑えてガーニッシュの一体感を容易に表現することができる。特に、ガーニッシュの上端部のアッパグリルへの連結部は目に付き易い箇所であるため、ガーニッシュとアッパグリルとの一体感が高められ、外観品質の向上が図られる。
【0017】
請求項4記載の発明によれば、ガーニッシュやフロントバンパ、アッパグリル及びロアグリルの寸法精度や熱膨張、外観への影響度等を考慮し、ガーニッシュとフロントバンパ、アッパグリル及びロアグリルとを車幅方向或は上下方向に移動可能に係合させたため、ガーニッシュによってアッパグリルとロアグリルとの一体感が高められて外観品質の向上が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係るグリル構造を備えたフロントバンパの正面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】図1のB−B線断面図である。
【図4】本発明に係るグリル構造を備えたフロントバンパの分解斜視図である。
【図5】図4のC部拡大詳細図である。
【図6】図5のD−D線断面図である。
【図7】図5のE−E線断面図である。
【図8】図5のF−F線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0020】
図1は本発明に係るグリル構造を備えたフロントバンパの正面図、図2は図1のA−A線断面図、図3は図1のB−B線断面図、図4は同フロントバンパの分解斜視図、図5は図4のC部拡大詳細図、図6は図5のD−D線断面図、図7は図5のE−E線断面図、図8は図5のF−F線断面図である。
【0021】
図1及び図4に示すフロントバンパ1は車両の前端下部に取り付けられる樹脂製部品であって、その車幅方向中央には正面視逆台形状のグリル取付部1Aが形成されており、このグリル取付部1Aの上下には後述する意匠面1Bを挟んでアッパグリル用開口2とロアグリル用開口3がそれぞれ形成されている。そして、これらのアッパグリル用開口2とロアグリル用開口3には上下に2分割された(別体に形成された)アッパグリル4とロアグリル5が内側(車両後方)からそれぞれ取り付けられている。
【0022】
而して、フロントバンパ1のグリル取付部1Aの上下に形成されたアッパグリル用開口2とロアグリル用開口3の間には横方向に延びる意匠面1Bが形成されている。換言すれば、意匠面1Bを境としてこれの上下にアッパグリル用開口2とロアグリル用開口3がそれぞれ形成され、これらのアッパグリル用開口2とロアグリル用開口3を覆うようにアッパグリル4とロアグリル5がそれぞれ取り付けられている。尚、アッパグリル4とロアグリル5は、走行風を通過させて不図示のエンジンルームへと導入することができるようルーバー状に形成されている。
【0023】
フロントバンパ1の上記意匠面1Bはアッパグリル4及びロアグリル5よりも車両の前方に配置されて外部に露出する外観面であって、図1に示すように、その車幅方向中央部にはライセンスプレートが取り付けられるライセンスプレート取付部6が形成されている。そして、フロントバンパ1の上記意匠面1Bの左右両端部には、アッパグリル4とロアグリル5の各左右両端部同士を連結する上下方向に長いガーニッシュ7が車両前方からそれぞれ取り付けられている。
【0024】
ここで、図2に示すように、フロントバンパ1の意匠面1Bはアッパグリル4よりも車両前方に膨出しており、その左右両端部には、図3に示すように、車両後方に窪んだ凹部1a(図3には一方のみ図示)が上下方向(図3の紙面垂直方向)にそれぞれ形成されており、各凹部1aには前記ガーニッシュ7が収納固定されている。
【0025】
次に、各ガーニッシュ7の取付構造を図5〜図8に基づいて説明する。尚、図5〜図8は一方(右側)のガーニッシュ7の取付構造についてのみ示すが、他方(左側)のガーニッシュ7の取付構造は同様であるため、これについての図示及び説明は省略する。
【0026】
図5に示すように、ガーニッシュ7の上端部と下端部には車両後方に向かって突出する水平な係合爪7b,7cがそれぞれ一体に形成され、高さ方向中間部の左右には垂直な一対の係合爪7acが車両後方に向かって一体に突設されている。詳細には、ガーニッシュ7の上端部はアッパグリル4に接近するように車両の後方側に向かって屈曲し、アッパグリル4の左右の下端縁に連続する形状に形成されており、その車両後方側の端部から水平板状の挿入部を併せ持つ係合爪7bが形成されている。同様に、ガーニッシュ7の下端部はロアグリル5に接近するように車両の後方側に向かって屈曲し、ロアグリル5の左右の上端縁に連続する形状に形成されており、その車両後方側の端部から水平板状の挿入部を併せ持つ係合爪7cが形成されている。係合爪7aはガーニッシュ7の高さ方向中間部の左右縁部であってややアッパグリル4に近い位置に形成され、車両後方に向かって垂直板状(車両の左右方向に垂直な板状)の挿入部を併せ持つように形成されている。
【0027】
又、アッパグリル4の左右の下端縁とロアグリル5の左右の上端縁には横方向に長いスリット状の係合孔4a,5aがそれぞれ形成されており、フロントバンパ1の意匠面1Bの左右両端部に形成された凹部1aの上下方向中間位置の左右には縦方向に長いスリット状の係合孔1bが形成されている。
【0028】
而して、ガーニッシュ7をこれに形成された係合爪7a,7b,7cを図6〜図8に示すようにアッパグリル4とロアグリル5及びフロントバンパ1に形成された係合孔4a,5a,1bに車両前方から差し込んでそれぞれ係合させることによって、該ガーニッシュ7がフロントバンパ1の意匠面1Bの左右両端に形成された凹部1aに収納固定され、このガーニッシュ7によってアッパグリル4とロアグリル5の左右両端部同士が連結される。
【0029】
ここで、ガーニッシュ7の上端部は係合爪7bと係合孔4aとの係合構造によって、上下方向には精度良く位置決めされた状態でアッパグリル4の下端縁に車幅方向に移動可能に係合され、ガーニッシュ7の上下方向中間部は係合爪7aと係合孔1bとの係合構造によってフロントバンパ1に上下方向に移動可能に係合され、ガーニッシュ7の下端部は係合爪7cbと係合孔5aとの係合構造によって、上下方向には精度良く位置決めされた状態でロアグリル5の上端縁に車幅方向に移動可能に係合されている。つまり、ガーニッシュ7は、車両の左右方向ではフロントバンパ1の凹部1aに従って位置決めされ、凹部1aに沿った方向ではアッパグリル4の下端縁の位置に従って位置決めされる。
【0030】
以上において、本実施の形態では、実際には2分割されたアッパグリル4とロアグリル5をフロントバンパ1に取り付ける構成を採用したにも拘らず、これらのアッパグリル4とロアグリル5の間に設けられたフロントバンパ1の意匠面1Bの左右両端部に取り付けられてフロントバンパ1の前方に配置されたガーニッシュ7によってアッパグリル4とロアグリル5が一体化したものとして見える意匠とすることができ、これによって車両の商品性が高められる。
【0031】
又、本実施の形態では、アッパグリル4よりも車両前方に膨出するフロントバンパ1の意匠面1Bを切り通し状態としてガーニッシュ7を配置することができるため、該ガーニッシュ7の車両前後方向の位置をアッパグリル4とロアグリル5の位置に近づけることができ、アッパグリル4とロアグリル5及びガーニッシュ7の一体感を容易に表現することが可能となって商品性が高められる。
【0032】
そして、フロントバンパ1のアッパグリル4とロアグリル5の間の意匠面1Bの左右両端部に上下方向に形成された凹部1aにガーニッシュ7を収納固定したため、該ガーニッシュ7の位置決めが容易となるとともに、その位置ずれが目立たなくなるために部品精度に特別な注意を払う必要がなくなり、該ガーニッシュ7の生産性が高められる。
【0033】
更に、本実施の形態では、ガーニッシュ7の上端部に形成された係合爪7bをアッパグリル4の下端縁に形成された係合孔4aに係合させる構成を採用したため、該ガーニッシュ7の上端部とアッパグリル4の相対的な位置決めが可能となり、両者間の隙間を小さく抑えてガーニッシュ7の一体感を容易に表現することができる。特に、ガーニッシュ7の上端部のアッパグリル4への連結部は目に付き易い箇所であるために外観品質に重要な箇所であり、係合爪7bと係合孔4aとの係合構造によって、ガーニッシュ7とアッパグリル4の境界線(略水平)に対して垂直方向の位置決め精度(ガーニッシュ7とアッパグリル4との水平方向の位置決め精度)を向上させてその隙間を効果的に減少させるとともに、車両の前後方向の位置決め精度を向上させ、ガーニッシュ7とアッパグリル4との一体感が高められ、外観品質の向上が図られる。
【0034】
そして、本実施の形態では、ガーニッシュ7やフロントバンパ1、アッパグリル4及びロアグリル5の寸法精度や熱膨張、外観への影響度等を考慮し、ガーニッシュ7とフロントバンパ1、アッパグリル4及びロアグリル5とを車幅方向或は上下方向に移動可能に係合させたため、ガーニッシュ7によってアッパグリル4とロアグリル5との一体感が高められて外観品質の向上が図られるという効果が得られる。
【符号の説明】
【0035】
1 フロントバンパ
1A フロントバンパのグリル取付部
1B フロントバンパの意匠面
1a フロントバンパの凹部
1b フロントバンパの係合孔
2 アッパグリル用開口
3 ロアグリル用開口
4 アッパグリル
4a アッパグリルの係合孔
5 ロアグリル
5a ロアグリルの係合孔
6 ライセンスプレート取付部
7 ガーニッシュ
7a〜7c ガーニッシュの係合爪




【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前部に配されたフロントバンパの車幅方向中央部に、意匠面を挟んでこれの上下にアッパグリル用開口とロアグリル用開口をそれぞれ形成し、これらのアッパグリル用開口とロアグリル用開口にアッパグリルとロアグリルをそれぞれ取り付けて構成されるフロントバンパのグリル構造において、
前記フロントパンパの前記アッパグリル用開口と前記ロアグリル用開口間の前記意匠面の左右両端部に、前記アッパグリルと前記ロアグリルとを連結するガーニッシュをそれぞれ取り付けたことを特徴とするフロントバンパのグリル構造。
【請求項2】
前記フロントバンパの前記意匠面を前記アッパグリルよりも車両前方に膨出させ、その左右両端部に車両後方に窪んだ凹部を上下方向にそれぞれ形成し、各凹部に前記ガーニッシュを収納固定したことを特徴とする請求項1記載のフロントバンパのグリル構造。
【請求項3】
前記各ガーニッシュの上端部を前記アッパグリルの下端縁に係合させたことを特徴とする請求項1又は2記載のフロントバンパのグリル構造。
【請求項4】
前記各ガーニッシュの上端部を前記アッパグリルの下端縁に車幅方向の移動を許容する係合構造によって係合させ、各ガーニッシュの上下方向中間部を前記フロントバンパに上下方向の移動を許容する係合構造によって係合させ、各ガーニッシュの下端部を前記ロアグリルの上端縁に車幅方向の移動を許容する係合構造によって係合させたことを特徴とする請求項3記載のフロントバンパのグリル構造。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−105053(P2011−105053A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−259519(P2009−259519)
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)