説明

フロントパネル構造

【課題】製造時の組付け工数の増大を抑えることができ、構造上の剛性が高く、さらに外観上の見栄えの良いフロントパネル構造を得ることができる。
【解決手段】フロントパネル構造1は、フロントパネルレインフォース2、ブラケット3、補強部材4及びフロントパネル5により構成されている。フロントパネル5は、補強部材4の前方に配置され、フロントパネルレインフォース2の上支持部2aに支持される上端部5aと、この上端部5aから下方へ延びて補強部材4の中間部4bに接着されるパネル本体5bとを有する。フロントパネル5は、フロントパネルレインフォース2の下支持部2bとブラケット3の接合部3c及び補強部材4の上接合部4aとの接合部分並びにブラケット3の延設部3hと補強部材4の下接合部4cとの接合部分を前方から覆っている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のフロントパネル構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のフロントパネルの前面に、外観品質を確保するための装飾部材を取り付けたフロントパネル構造が知られている。
【0003】
【特許文献1】特開2000−128022号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記構造では、フロントパネルに板金部品を溶接により接合した後、フロントパネルの所定位置に装飾部材を組み付けるため、板金部品の溶接工程に加えて、装飾部材の位置決め及び組み付け工程が必要である。また、フロントパネルに対する装飾部材の位置決め作業は煩雑である。このため、製造時の工数が自ずと増大してしまう。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、製造時の組み付け工数の増大を抑えた車両のフロントパネル構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係るフロントパネル構造は、フロントパネルレインフォースと、ブラケットと、補強部材と、フロントパネルと、を備える。
【0007】
フロントパネルレインフォースは、車幅方向に沿って配置され、上支持部と下支持部とを有する。ブラケットは、フロントパネルレインフォースの下支持部に接合される接合部と、この接合部から下方へ延びる延設部とを有する。補強部材は、ブラケットの前方で車幅方向に沿って配置され、フロントパネルレインフォースの下支持部に接合される上接合部と、この上接合部から前下方へ延びる中間部と、この中間部から下方へ延びてブラケットの延設部に接合される下接合部とを有する。フロントパネルは、補強部材の前方に配置され、フロントパネルレインフォースの上支持部に支持される上端部と、この上端部から下方へ延びて補強部材の中間部に接着されるパネル本体とを有し、フロントパネルレインフォースの下支持部とブラケットの接合部及び補強部材の上接合部との接合部分並びにブラケットの延設部と補強部材の下接合部との接合部分を前方から覆う。
【0008】
上記構成では、フロントパネルレインフォース、ブラケット、補強部材及びフロントパネルは、板金部品であるため、同じ溶接工程によって上記各部品を組み付けることができる。すなわち、既存の溶接工程において補強部材の位置決め及び溶接を行うことができる。従って、装飾部材を使用した場合のように工数の増大を招くことがない。
【0009】
また、補強部材は、フロントパネルレインフォースの下支持部とブラケットの延設部とに接合され、フロントパネルレインフォースの下支持部にはブラケットの接合部が接合される。従って、補強部材とブラケットとは、剛性の高い閉断面を形成する。このため、ブラケットによって支持される車載部品の取付け剛性を十分に確保することができる。また、フロントパネルのパネル本体は、補強部材の中間部に接着されて後方から支持されるため、パネル本体の剛性を高めることができる。
【0010】
さらに、フロントパネルは、補強部材の前方に配置され、フロントパネルレインフォースの下支持部とブラケットの接合部及び補強部材の上接合部との接合部分並びにブラケットの延設部と補強部材の下接合部との接合部分を前方から覆うので、外観上の見栄えが良い。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るフロントパネル構造によれば、製造時の組み付け工数の増大を抑えることができ、構造上の剛性が高く、さらに外観上の見栄えの良いフロントパネル構造を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を、図面に基づいて説明する。図1は本実施形態に係るフロントパネル構造を表す分解斜視図、図2は図1のフロントパネルレインフォース、ブラケット、補強部材及びフロントパネルを組み付けた状態におけるII−II矢視断面図、図3は図2のIII−III矢視断面図である。
【0013】
図1〜図3に示すように、車両前部のフロントパネル構造1は、フロントパネルレインフォース2、ブラケット3、補強部材4及びフロントパネル5により構成されている。
【0014】
フロントパネルレインフォース2は、車体前端(図示せず)に固定され、略L状断面を有する上支持部2aと、上支持部2aから曲折されて下方に延びる下支持部2bとを有し、車幅方向へ延びている。また、フロントパネルレインフォース2には、位置決め穴2cが形成されている。
【0015】
ブラケット3は、フロントパネルレインフォース2の下方に配置され、上部材3aと、下部材3bとにより構成されている。上部材3aは、フロントパネルレインフォース2の下支持部2bに沿う形状を有する接合部3cと、接合部3cから下方に延びる下延部3dとを有する。下延部3dの略中央部には、開口3eが形成されている。接合部3cは、その後面がフロントパネルレインフォース2の下支持部2bの前面に接合されている。下部材3bは、後接合部3fと、後接合部3fから曲折されて前方へ延びる中間部3gと、中間部3gから曲折されて上方へ延びる延設部3hとにより構成され、略U字状断面を有する。後接合部3fは、その前面が上部材3aの下延部3dの後面に接合されている。ブラケット3には、位置決め穴3iが形成されている。また、ブラケット3には、ブラケット3の車両後方に配置されるワイパーモーター8が固定されており、ワイパーモーター8の駆動軸が開口3eに挿通されている。
【0016】
補強部材4は、フロントパネルレインフォース2の下支持部2bに沿う形状を有する上接合部4aと、この上接合部4aから曲折されて前下方へ延びる中間部4bと、この中間部4bから曲折されて下方へ延びる下接合部4cとを有し、ブラケット3の車両前方に配置され、車幅方向へ延びている。上接合部4aは、その後面がフロントパネルレインフォース2の下支持部2bの前面に接合され、下接合部4cは、その後面がブラケット3の下部材3bの延設部3hの前面に接合される。また、補強部材4には、位置決め穴4eが形成されている。
【0017】
フロントパネル5は、上端部5aと、パネル本体5bとを有し、補強部材4の車両前方に配置され、車幅方向へ延びている。パネル本体5bは、上端部5aから下方に延びる上パネル部5cと、上パネル部5cから曲折されて前下方に延びる中パネル部5dと、中パネル部5dから曲折されて下方に延びる下パネル部5eとを有する。上パネル部5cと中パネル部5dとの間の形状変化部5fは、車両後方側に凹状に曲折しているため形状剛性が高い。また、フロントパネル5には、位置決め穴5gが形成されている。上端部5aは、その後面がフロントパネルレインフォース2の上支持部2aの前面に接合され、パネル本体5bは、その外縁部の後面が補強部材4の車両外側部4dの前面に接合される。すなわち、フロントパネル5は、その外周縁部が他の部材に接合されるため、取付け剛性が高い。この構成において、パネル本体5bの形状変化部5fは、補強部材4の中間部4bに近接した位置に配置され、パネル本体5bの下パネル部5eは、補強部材4の下接合部4cから離れた位置に配置される。そして、パネル本体5bの形状変化部5fは、その後面が補強部材4の中間部4bの前面に接着剤6で接着されて後方から支持される。フロントパネル5のパネル本体5bと補強部材4の下接合部4cとの間には、打音防止緩衝材7が設けられているため、パネル本体5bが撓んで補強部材4に接触して打音が発生されるのを防止することができる。また、フロントパネル5は、フロントパネルレインフォース2の下支持部2bとブラケット3の接合部3c及び補強部材4の上接合部4aとの接合部分並びにブラケット3の延設部3hと補強部材4の下接合部4cとの接合部分を車両前方から覆っている。
【0018】
上記構成では、フロントパネルレインフォース2、ブラケット3、補強部材4及びフロントパネル5は、板金部品であるため、同じ溶接工程によって上記各部品を組み付けることができる。すなわち、車両前方に向けて突出形成された車体前端の複数の位置決め突起(図示せず)に上記各部材に形成された位置決め穴2c、位置決め穴3i、位置決め穴4e及び位置決め穴5gがそれぞれ嵌合されて各部材の位置決めが行われ、位置決めされた部材に対してスポット溶接が行われることにより、複数の部材を順番に接合させることができる。従って、既存の溶接工程において補強部材4の位置決め及び溶接を行うことができる。すなわち、装飾部材を使用した場合のように工数の増大を招くことがない。
【0019】
また、補強部材4とブラケット3とは、剛性の高い閉断面を形成する。このため、ブラケット3によって支持されるワイパーモーター8の取付け剛性を十分に確保することができる。
【0020】
さらに、フロントパネル5は、補強部材4の前方に配置され、フロントパネルレインフォース2の下支持部2bとブラケット3の接合部3c及び補強部材4の上接合部4aとの接合部分並びにブラケット3の延設部3hと補強部材4の下接合部4cとの接合部分を前方から覆うので、外観上の見栄えが良い。
【0021】
また、フロントパネル5は、フロントパネルレインフォース2、ブラケット3及び補強部材4を前方から覆う必要があることから大型化が要求される。一方、軽量化及び材料費低減のためには、薄板化が要求される。ここで、フロントパネル5を薄板化した場合、フロントパネル5の外周縁部を固定しただけでは、パネル本体5bの中央部における剛性が不十分となるおそれがある。しかし、本実施形態では、パネル本体5bの形状変化部5fが、補強部材4の中間部4bに接着剤6で接着されて後方から支持されているため、フロントパネル5を薄板化した場合であっても、パネル本体5bの中央部において十分な剛性を確保することができる。
【0022】
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施形態について説明したが、この実施形態による本発明の開示の一部をなす論述及び図面により本発明は限定されることはない。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論であることを付け加えておく。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態に係るフロントパネル構造を表す分解斜視図である。
【図2】図1のフロントパネルレインフォース、ブラケット、補強部材及びフロントパネルを組み付けた状態におけるII−II矢視断面図である。
【図3】図2のIII−III矢視断面図である。
【符号の説明】
【0024】
1…フロントパネル構造、2…フロントパネルレインフォース、2a…上支持部、2b…下支持部、2c…位置決め穴、3…ブラケット、3a…上部材、3b…下部材、3c…接合部、3d…下延部、3e…開口、3f…後接合部、3g…中間部、3h…延設部、3i…位置決め穴、4…補強部材、4a…上接合部、4b…中間部、4c…下接合部、4d…車両外側部、4e…位置決め穴、5…フロントパネル、5a…上端部、5b…パネル本体、5c…上パネル部、5d…中パネル部、5e…下パネル部、5f…形状変化部、5g…位置決め穴、6…接着剤、7…打音防止用緩衝材、8…ワイパーモーター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向に沿って配置され、上支持部と下支持部とを有するフロントパネルレインフォースと、
前記フロントパネルレインフォースの下支持部に接合される接合部と、この接合部から下方へ延びる延設部とを有するブラケットと、
前記ブラケットの前方で車幅方向に沿って配置され、前記フロントパネルレインフォースの下支持部に接合される上接合部と、この上接合部から前下方へ延びる中間部と、この中間部から下方へ延びて前記ブラケットの延設部に接合される下接合部とを有する補強部材と、
前記補強部材の前方に配置され、前記フロントパネルレインフォースの上支持部に支持される上端部と、この上端部から下方へ延びて前記補強部材の中間部に接着されるパネル本体とを有し、前記フロントパネルレインフォースの下支持部と前記ブラケットの接合部及び前記補強部材の上接合部との接合部分並びに前記ブラケットの延設部と前記補強部材の下接合部との接合部分を前方から覆うフロントパネルと、
を備えたことを特徴とするフロントパネル構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate