説明

フローインジェクションによるアンモニア態窒素の比色検出方法及びその装置

本発明はフローインジェクションによるアンモニア態窒素の比色検出方法を提供する。濃度が0.01mol/l〜0.03mol/lのNaOH溶液を放出液とし、深溝を含む気液分離器が接続されている毛管路系に前記放出液を注入し、放出液を有する毛管路に一定量の試水を注入してサンプルゾーンを形成し、ポンプによる輸送によって、前記サンプルゾーンが放出液と共に毛管路系において循環的に流動し、気液分離器の深溝を通過する際にアンモニアガスを放出する。前記アンモニアガスが溝口部まで拡散して通気膜を透過し、毛管グルーブにおける酸塩基指示薬を変色させ、アンモニアの放出が終了するまでにサンプルゾーンを連続的に循環させ、アンモニアが吸収された受液を注射ポンプによって比色計のフローセルまで輸送し、波長560nmの光で照射し、光電変換によって試水におけるアンモニア態窒素の濃度を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学的分析及び水環境監視分析の分野に属する、水又は溶液におけるアンモニア態窒素の含有量を検出し、或いはアンモニア態窒素の含有量をオンラインでモニターするためのフローインジェクションによるアンモニア態窒素の比色検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アンモニアは、非イオンのアンモニア(NH)又はアンモニウムイオン(NH)の形で存在する窒素のことであり、水に溶解している時、その一部が水と反応してアンモニウムイオンを生成し、他の一部がアンモニア水(非イオンのアンモニア)を形成するため、アンモニア態窒素と総称される。
【0003】
アンモニアは自然界において、通常に窒素含有有機物の分解生成物として川や湖、海に幅広く存在している。水におけるアンモニアは酸素のある環境下では、亜硝酸塩に変化し、酸素のない環境下では、その亜硝酸塩が微生物の作用でアンモニアに還元され、ひいては引き続き硝酸塩に変化することができる。水溶液におけるアンモニア態窒素とは、遊離アンモニア(非イオンのアンモニア(NH)ともいう)又はアンモニウムイオン(NH)の形で存在している窒素のことである。アンモニアは水に溶解している時、その一部が水と反応してアンモニウムイオンを生成し、他の一部がアンモニア水(非イオンのアンモニア)を生成する。
【0004】
水におけるアンモニア態窒素の含有量が多すぎると、湖に藍藻が爆発的に増殖し、人の健康を損なうとともに魚類にも有害である。そのため、水におけるアンモニア態窒素の含有量は、水がどれほど窒素含有有機物に汚染されたかの基準であり、厳しく抑制しなければならない。経済の発展に伴って、多くの工業生産は大量のアンモニアを生じ、環境に対するアンモニア汚染源となる。例えば、肥料生産、硝酸、コークス化、石炭ガス、ニトロセルロース、レーヨン、合成ゴム、炭化カルシウム、染料、ワニス、苛性ソーダ、電気メッキ、石油採掘及び石油産品の加工などは、いずれもアンモニア汚染を発生する要因である。そのため、工業廃水又は川や湖などに対して常に迅速に分析し、水におけるアンモニア態窒素のリアルタイム含有量のデータを提供することができるアンモニア態窒素含有量のオンラインモニターは、非常に重要であり、これによって、対応する措置をとり、企業からの廃水が排出基準に達すること、また、川や湖などにおけるアンモニア態窒素の含有量が安全基準内にあることを確保する。
【0005】
現在、アンモニア態窒素を測定する方法として、主にサリチル酸―次亜塩素酸塩又はヨウ化水銀を試薬とする分光光度比色法(ネスラー法)、酸塩基の中和滴定法及びイオン電極法がある。
【0006】
ネスラー法はアンモニアを測定する典型的な方法であり、多くの国で標準的な分析方法とされている。ヨウ化水銀及びヨウ化カリウムのアルカリ性溶液はアンモニアと反応し、広い波長域に強い吸収を持つ薄赤褐色のコロイド状の化合物を生成する。しかし、ネスラー試薬とアンモニアとの反応は実際的に沈降反応である。混濁又は有色サンプル、或いはアルカリ条件で沈殿を生じる金属イオン及び有機物などが共にあるサンプルについては、予め凝集沈降法又は水蒸気蒸留の前処理を施してから定量を行う必要があり、それ以外にも、試薬の毒性が強く、方法の感度が高くないという欠点がある。
【0007】
サリチル酸―次亜塩素酸塩による比色法はニトロプルシドナトリウムの存在下において、アンモニウム及びフェノールが次亜塩素酸イオンと反応して青色化合物を生成するものであり、このような反応はBerthelot反応と呼ばれ、波長697nmに最大吸収を持つ。しかし、次亜塩素酸ナトリウムは安定的なものではなく、調製された直後に使用する必要があるから、モニターされていないオンライン型機器への使用には適合しない。
【0008】
酸塩基の滴定法は、試水を加熱して蒸留する必要があり、放出されたアンモニアがホウ酸溶液に吸収され、メチルレッド―メチレンブルーを指示薬とし、酸標準溶液で留出液におけるアンモニウムに対して滴定を行う。測定方法は比較的に煩雑で、測定に時間がかかる。この条件で留出され得る、また滴定の際に酸と反応可能なものが試水に含まれると、測定結果の値は高くなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、操作が煩雑で、試薬の毒性があり、又は試薬を長期間保存できないなどのような、従来のネスラー試薬による分光光度法、サリチル酸―次亜塩素酸塩による分光光度法、アンモニア電極法などのアンモニア態窒素の検出方法における欠点を克服し、NH−Nに対する自動的なオンライン検出を実現するために、操作が簡単で、迅速で信頼でき、試薬の毒性がなく、またランニングコストが安いフローインジェクションによるアンモニア態窒素の検出方法、及びそのためのフローインジェクションによるアンモニア態窒素の検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
つまり、本発明は、
【0011】
濃度が0.01mol/l〜0.03mol/lのNaOH溶液を放出液とし、サンプルと通気膜との接触を防止できる深溝を含む気液分離器が接続されている毛管路系に前記放出液を注入し、放出液を有する毛管路に一定量の試水を注入してサンプルゾーンを形成し、ポンプによる輸送によって、サンプルゾーンが放出液と共に毛管−気液分離器流路系において循環的に流動し、気液分離器の深溝を通過する際にアンモニアガスを放出し、このアンモニアガスが溝口部まで上昇し、次いで通気膜を透過し、膜のもう一方の側にある毛管グルーブにおける酸塩基指示薬を含む受液に吸収されてアンモニウムイオンとなり、酸塩基指示薬を変色させ、サンプルゾーンを連続的に循環させてアンモニアを放出させ、アンモニアが吸収された受液を注射ポンプによって比色計のフローセルに輸送し、波長560nmの光で照射し、この光が受液を透過する時の光電圧変化を測定し、換算によってサンプルにおけるアンモニア態窒素の濃度を算出するフローインジェクションによるアンモニア態窒素の検出方法である。
【0012】
前記一定量の試水は、サンプル注入弁によって循環しているキャリア液に分けて間欠的に注入され、循環する毛管−気液分離器流路において間欠的に分布した複数のサンプルゾーンを形成してもよく、一定量の試水を放出液に間欠的に混合させ、アンモニアガスの放出及び富化を速やかにする。
【0013】
前記酸塩基指示薬を含む受液の酸塩基指示薬は、弱酸性のブロモチモールブルー溶液である。
【0014】
当該方法では、NaOHの希薄溶液を供試サンプルのアンモニア放出液と兼ねてキャリア液とし、サンプルにおけるアンモニウムイオンとヒドロキシ基とが反応してアンモニアガスを生成し、即ちNH++OH→NHOである。試水はキャリア液と共に循環し、気液分離器を通過する際にアンモニアガスを放出し、このアンモニアガスが通気膜を透過して受液に入り、酸塩基指示薬溶液(以下、受液という)に吸収されてアンモニウムイオンとなり、前記受液はそのアルカリ性がアンモニウムイオンの増加に伴って増大し、酸塩基指示薬であるブロモチモールブルーは黄緑色から青色に変化し、青色がアンモニウムイオンの濃度の増加に従って深くなるとともに線形関係となるため、波長560nmの光で照射し、光電変換器によりこの光が受液を透過する時の光電圧を測定し、対応するピークの高さを有する応答曲線を取得し、既知の標準サンプルの測定値と比較することにより、試水におけるアンモニア態窒素の濃度を算出することができる。
【0015】
本発明は、上記したアンモニア態窒素の検出方法を実現するために、専用のフローインジェクションによるアンモニア態窒素の検出装置を設計した。
【0016】
このフローインジェクションによるアンモニア態窒素の検出装置は、毛管によって気液分離器と、光電検出用フローセルと、放出液輸送ポンプP2と、試水輸送ポンプP1と、受液注射ポンプP3と、サンプル注入用の六方弁V1と、七方切替弁V2と、を接続してなり、前記気液分離器に深溝式のアンモニア放出プールが設けられ、このアンモニア放出プールの上部に通気膜及び受液の溝板が順に積層され、前記アンモニア放出プールの深溝の内底面に、その両端にそれぞれ入口接続管及び出口接続管が設置された放出液の毛管導流グルーブが設けられ、前記溝板の下面に、下へ向けて開口してその両端に入口接続管及び出口接続管が設置された受液の毛管グルーブが設けられ、そのうち出口接続管が光電比色フローセルに連通され、サンプル注入用の前記六方弁V1はその接続口2と接続口5との間にサンプリングループSが接続され、その接続口4がアンモニア放出液の毛管グルーブの入口接続管に連通され、その接続口1が輸送ポンプP1に連通される試水の廃液の出口であり、その接続口6が試水の入口であり、その接続口3が七方弁V2の接続口5に接続され、前記七方弁V2はその接続口1が溝板における受液の入口接続管に連通され、その接続口2が注射ポンプP3に接続され、その接続口3が受液の入口であり、その接続口4が放出液の入口であり、その接続口6が放出液輸送ポンプP2によってアンモニア放出プールにおけるキャリア液の毛管グルーブの出口接続管に連通され、その接続口7が放出液の廃液の出口である。
【0017】
薄膜状の通気膜については、アンモニア放出プールの上部と通気膜との間に支持プレートを設置する必要がある場合もあり、前記支持プレートに、溝板における受液の毛管グルーブに合わせるスルーホールが設けられる。支持プレートは通気膜を支持し、また上昇しているアンモニアガスを通過させることができる。
【0018】
本装置においては、まず、ポンプP1によって試水をバルブV1における定量サンプリングループSに輸送し、注射ポンプP3によって受液を気液分離器の溝板における受液グルーブ及びフローセルに注入し、ポンプP2による輸送によって、放出液を放出液の毛管路及びアンモニア放出プールの毛管グルーブに輸送し、その後、バルブV1を切り替えてサンプリングループを放出液の流路に接続し、そしてバルブV2を切り替えて放出液の毛管路をループに形成し、ポンプP2の作用で放出液を循環的に流動させることができる。このようにして、ポンプP2の作用で、サンプリングループにおける試水は、放出液と共に循環的に流動して且つ絶えず放出液へ互いに拡散する1つのサンプルゾーンを形成し、気液分離器を通過する際に、グルーブの上方で急激に拡大する深溝式の気体上昇溝が現れ、これによって、サンプルにおけるアンモニアが放出されて上昇し、通気膜を通過して溝板のグルーブにおける受液に吸収され、酸塩基指示薬を変色させ、アンモニアの放出が終了した後、注射ポンプを作動させ、変色した受液をフローセルに輸送し、これによって、サンプルにおけるアンモニアの含有量を測定することができる。
【0019】
本装置のさらなる改良は下記の通りである。
【0020】
受液に存在している可能性がある微気泡が光電検出を妨げることを避けるために、受液の毛管グルーブの出口端はスルーホールを通過して溝板の上面へ延伸し、上へ向けて開口した毛管グルーブとなり、また、グルーブの末端が広い溝に拡大し、溝板の上に通気膜及びカバープレートが複合され、カバープレートの下面に、前記溝板の上面における広い溝の溝口部に対向してそれに合わせるガス収集溝が設けられ、ガス収集溝に、大気に連通される排気穴が設けられる。受液に微気泡が含まれる時に、微気泡は受液と共に溝板の下面におけるグルーブから上面におけるグルーブまで上昇し、気泡が広い溝において上昇し、溝板の上に積層された通気膜を透過してカバープレートのガス収集溝まで上昇し、排気穴から大気に排出され、そのため、気泡が光電フローセルに入り込むことにより検出精度に影響する現象を防止することができる。
【0021】
本装置においては、標準サンプルの測定を便宜にするために、サンプル注入弁V1の接続口6と試水との接続管路に、試水及び標準サンプルの変換用の1個〜3個の電磁弁が設けられる。当該装置において、気液分離器における放出プールは深溝式であり、プールの底部におけるグルーブから放出されるアンモニアガスが深溝を通過して上へ拡散し、そして通気膜を通過して受液系に入り込む。通気膜は、水ではなく気体のみが透過可能であるため、アンモニアガスと液体との分離をさらに確保する。深溝は通気膜をグルーブにおけるサンプルから離し、サンプルにおけるパレットのような不純物で通気膜の通気穴が詰まることを避ける。本検出装置は、自動制御システムによって所定のプロセスに基づいて各バルブを変換させ、アンモニアに対する自動的なオンライン検出を実現することができる。
【発明の効果】
【0022】
以上により、本発明はフローインジェクション分析法(FIA)及び専用の検出装置を使用し、水酸化ナトリウムを放出液とし、弱酸性の酸塩基指示薬を含む蒸留水を受液とすることによって、NH−Nに対する自動的なオンライン検出を実現し、また検出過程が簡単且つ迅速で、検出データが正確で信頼でき、1回の検出のために注入される試水は50μl〜1mlのみであり、消費される試薬の量が極めて小さく、ランニングコストが安く、試薬の毒性がなく、且つ汚染物質を排出しない。操作が煩雑で、試薬に毒性があり、又は試薬を長期間保存できず、機器の価格が高いなどのような、ネスラー試薬による分光光度法、サリチル酸−次亜塩素酸塩による分光光度法、及びイオンクロマトグラフィーなどの方法における欠点を克服した。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1(1)】フローインジェクションによるアンモニア態窒素の比色検出システムのサンプリング状態及び循環富化状態の原理のフローチャートである。
【図1(2)】フローインジェクションによるアンモニア態窒素の比色検出システムのサンプリング状態及び循環富化状態の原理のフローチャートである。
【図2】気液分離器の立体構造の模式図である。
【図3】気液分離器の断面構造の模式図である。
【図4】図3のA−Aによる断面図である。
【図5】図3のB−Bによる断面図である。
【図6】フローインジェクションによるアンモニア態窒素の比色検出装置のシステムフローの構成模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
濃度が0.01mol/l〜0.03mol/lのNaOH溶液を放出液とし、
サンプルと通気膜との接触を防止するための深溝を含む気液分離器が接続されている毛管路系に前記放出液を注入し、
前記放出液を有する毛管路に一定量の試水を注入してサンプルゾーンを形成し、
ポンプによる輸送によって、前記サンプルゾーンが前記放出液と共に前記毛管路系において循環的に流動し、前記気液分離器の前記深溝を通過する際にアンモニアガスを放出し、
このアンモニアガスが溝口部まで上昇し、次いで前記通気膜を透過し、前記通気膜のもう一方の側にある毛管グルーブにおける酸塩基指示薬を含む受液に吸収され、前記酸塩基指示薬を変色させ、
アンモニアガスの放出が終了するまでに前記サンプルゾーンを連続的に循環させ、アンモニアガスが吸収された前記受液を注射ポンプによって比色計のフローセルに移送し、波長560nmの光で照射し、
この光が前記受液を透過する時の光電圧変化を測定し、換算によって前記試水におけるアンモニア態窒素の濃度を算出する、
ことを特徴とするフローインジェクションによるアンモニア態窒素の比色検出方法である。
【請求項2】
前記酸塩基指示薬はブロモチモールブルーであり、前記受液は弱酸性のブロモチモールブルー溶液であることを特徴とする請求項1に記載のアンモニア態窒素の比色検出方法。
【請求項3】
一定量の前記試水はサンプル注入弁によってキャリア液に分けて間欠的に注入され、循環する毛管−気液分離器流路に間欠的に分布した複数の前記サンプルゾーンを形成することを特徴とする請求項1に記載のアンモニア態窒素の比色検出方法。
【請求項4】
毛管によって気液分離器と、光電検出用フローセルと、放出液輸送ポンプ(P2)と、試水輸送ポンプ(P1)と、受液注射ポンプ(P3)と、サンプル注入用の六方弁(V1)と、七方逆転弁(V2)と、を接続してなり、
前記気液分離器に深溝式のアンモニア放出プール(13)が設けられ、
前記アンモニア放出プールの上部に、通気膜(16)と受液溝板(17)とが順に積層され、
前記アンモニア放出プールの深溝(23)の内底面に、その両端にそれぞれ入口接続管(11)と出口接続管(10)とが設置された放出液の毛管導流グルーブ(24)が設けられ、
前記溝板(17)の下面に、下へ向けて開口してまたその両端に入口接続管(12)と出口接続管(14)とが設置された受液の毛管グルーブ(21)が設けられ、
そのうち前記出口接続管(14)が光電比色フローセルに連通され、前記六方弁(V1)における接続口(2)と接続口(5)との間にサンプリングループ(S)が接続され、サンプル注入用の前記六方弁(V1)の接続口(4)がアンモニア放出液の前記毛管導流グルーブ(24)の前記入口接続管(11)に連通され、前記六方弁(V1)の接続口(1)が前記輸送ポンプ(P1)によって輸送される試水の廃液の出口であり、接続口(6)が前記試水の入口であり、
接続口(3)が前記七方弁(V2)の前記接続口(5)に接続され、前記七方弁(V2)の接続口(1)が前記溝板(17)における受液の入口接続管(12)に連通され、接続口(2)が前記注射ポンプ(P3)に接続され、前記七方弁(V2)の接続口(3)が前記受液の接続口であり、その接続口(4)が放出液の接続口であり、その接続口(6)が前記放出液輸送ポンプ(P2)によって前記放出液の前記毛管導流グルーブ(24)の前記出口接続管(10)に連通され、その接続口7が前記放出液の廃液の出口である、
ことを特徴とするフローインジェクションによるアンモニア態窒素の比色検出装置。
【請求項5】
前記アンモニア放出プールの上部と前記通気膜との間に支持プレート(15)が設けられ、前記支持プレートに、前記溝板(17)における前記受液の毛管グルーブ(21)に合わせるスルーホール(25)が設けられることを特徴とする請求項4に記載の比色検出装置。
【請求項6】
前記受液の毛管グルーブ(21)の出口端はスルーホール(26)を通過して前記溝板(17)の上面へ延伸し、上へ向けて開口した排気グルーブ(22)となり、また、グルーブの末端が広い溝に拡大し、溝板の上方に通気膜(16’)及びカバープレート(18)が積層され、カバープレート(18)の下面に、前記溝板(17)の上面における広い溝の溝口部に対向して且つそれに合わせるガス収集溝(20)が設けられ、前記ガス収集溝(20)に大気に連通される排気穴(19)が設けられることを特徴とする請求項4に記載の比色検出装置。
【請求項7】
サンプル注入用の前記六方弁(V1)の前記接続口(6)と前記試水との接続管路に、前記試水と標準サンプルとの変換のための1個〜3個の電磁弁が設けられることを特徴とする請求項4又は5に記載の比色検出装置。

【図6】(1)、(2)はそれぞれ図6におけるバルブV1、V2の切り替え状態を示す図である。
【図7】標準サンプルの測定システムを含むフローインジェクションによるアンモニア態窒素の比色検出装置のシステムフローの構成模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明のフローインジェクションによるアンモニア態窒素の比色検出方法の実施フロー及び操作過程を図1(1)に基づいて説明する。
【0025】
本検出方法によるアンモニア態窒素の検出原理を図1(1)、図1(2)に示す。
【0026】
図1(1)、図1(2)は、いずれも上部が発色受液の毛管路系で、下部が放出液の毛管路系で、両方が気液分離器で接続されることを示す。
【0027】
図1(1)は、システムがサンプリング状態であることを示し、受液は注射ポンプによって毛管に注入され、通気膜の上方に位置する、気液分離器上部で毛管グルーブを通過してフローセルへ通液し、このフローセルから流れ出し、上部の毛管路系を充満させ、その後注射ポンプを止める。一方、蠕動ポンプは切換弁によって放出液であるNaOHの希薄溶液を下部の管路系に通液させ、矢印の方向に従って末端まで流動させ、そして排出させる。試水は注入弁によって管路の途中に注入され、1つのサンプルゾーンが形成される。
【0028】
図1(2)は、システムが富化状態であることを示し、下部の管路は切換弁によって密閉したシステムとなり、放出液が循環的に流動し、試水が気液分離器のグルーブを経由して流れる時、水におけるアンモニアガスが深溝を通過して上昇し、通気膜を透過して受液に受けられ、サンプルの連続的循環に従って、アンモニアが留まった受液に富化される。図における拡大部は、下部のサンプルゾーンが流動している放出液において拡散状態となっていることを示し、サンプルにおけるアンモニア(NH)が放出されて通気膜まで上昇し、膜の上方の受液に入り込む。アンモニアが適当に富化された後、注射ポンプによって受液をフローセルへ押して光電検出を行い、ピークの高さの曲線図を取得した後、換算によってアンモニアの含有量を算出する。
【0029】
図2〜図5は気液分離器にかかる実施形態の構造を示す。
【0030】
気液分離器は図2に示すように、下から上に、放出液の入口接続管11及び出口接続管10が設けられるアンモニア放出プール13と、支持プレート15と、通気膜16と、受液の入口接続管12及び出口接続管14が設けられる溝板17と、通気膜16’と、排気穴19が設けられるカバープレート18と、を順に重ね合わせて接続することにより構成される。
【0031】
図3は分離器の内部構造を示す。アンモニア放出プール13に深溝23が設けられ、溝内の底面に放出液の毛管導流グルーブ24(図5参照)が設けられ、グルーブの一端に入口接続管11が接続され、他端が出口接続管10に連通される。通気膜16の下側に膜を支持するための支持プレート15が設けられ、支持プレートにスルーホール25が設けられる。溝板17の下面に受液グルーブ21が設けられ、その上面に排気グルーブ22が設けられ、両グルーブはスルーホール26で連通される。溝板17とカバープレート18との間には、支持プレート15のスルーホール25に合わせる通気膜16’が設けられる。
【0032】
上記分離器は接続管11、10によって放出液の毛管路系へ接続され、また接続管12、14によって受液の毛管路系へ接続される。試水が放出液と共に入口接続管11からグルーブ24へ流れ込むと、アンモニアガスがグルーブ24から上へ放出され、深溝23の上部まで上昇して支持プレート15のスルーホール25を通過し、通気膜16を透過して溝板17の受液グルーブ21に入り、受液に受けられる。
【0033】
受液に微気泡が含まれると、受液が穴26を通過する時に、そのうち微気泡がグルーブ22まで上昇し、ガス収集溝20の下側における通気膜を通過する際に通気膜16’を透過してガス収集溝20に入り、そして排気穴19から系外へ排出される。
【0034】
図6はフローインジェクションによるアンモニア態窒素の比色検出装置のシステムフローの構成を示し、以下、図6に基づいて当該装置によるアンモニア態窒素検出の動作過程を説明し、その工程は下記の通りである。
【0035】
[1.洗浄]
a.V1、V2は例えば図6のV1B、V2Bの状態に切り替えられ、蠕動ポンプP2は作動し、放出液は、放出液→V2の接続口4→接続口5→V1の接続口3→接続口4→気液分離器→蠕動ポンプP2→V2の接続口6→接続口7→廃液瓶という流路に従って流動し、分離器に残留したNHをt1秒間洗浄する。
【0036】
b.注射ポンプP3が作動し、光電圧がベースラインに戻るまでに受液を注射ポンプ→V2の接続口2→接続口1→気液分離器→フローセル→廃液瓶という流路に従って流動させ、20秒維持して洗浄を終了させる。
【0037】
[2.サンプリング]
c.V1はV1B状態のままで、V2は例えば図6(2)のV2Aの状態に切り替えられ、P2は止まり、P1は作動し、試水を試水瓶→V1の接続口6→接続口5→接続口2→接続口1→蠕動ポンプP1→廃液瓶という流路に従って60秒間流動させる。試水がサンプリングループSに充満した。
【0038】
[3.サンプルの途中注入]
d.P1は止まり、V1はV1Bの状態のままで、V2はV2Bの状態に切り替えられ、P2は作動し、放出液は引き続き工程aの流路に従って10秒間流動した後、V1は例えば図6(1)のV1Aの状態に切り替えられ、P2は再度25秒間作動し、流路は放出液→V2の接続口4→接続口5→V1の接続口3→接続口2→接続口5→接続口4→気液分離器→蠕動ポンプP2→V2の接続口6→接続口7→廃液瓶であり、サンプリングループSにおける試水を放出液流の途中で注入する。
【0039】
[4.循環富化]
e.V1はV1Aの状態のままで、V2は例えば図6(2)のV2Aの状態に切り替えられると、放出液は密閉したシステムとなり、ポンプP2は引き続き作動し、放出液は試水を押して下記の流路のようにt3秒間循環的に流動させ、試水におけるアンモニアガスを放出させ、受液に富化させる。
V1の接続口3→2→5→4→気液分離器
↑ ↓
V2の接続口5←V2の接続口6←蠕動ポンプP2
【0040】
[5.測定]
f.P2は止まり、t4秒後、V1はV1Aの状態のままで、V2はV2B状態に切り替えられ、循環は終了する。注射ポンプP3は作動し、注射ポンプP3→V2の接続口2→接続口1→気液分離器→フローセル→廃液瓶に従って、気液分離器におけるアンモニアが吸収された受液を光電比色フローセルへ押し、光電圧を測定し、ベースラインとピークを計測し、アンモニアの含有量を算出する。
【0041】
図7は標準サンプルの測定システムを含むフローインジェクションによるアンモニア態窒素の検出装置のフローチャートであり、図6のシステムに3つの電磁弁V3、V4、V5を追加したものである。
【実施例】
【0042】
アンモニア態窒素検出の実施例
[1.試薬の調製]
放出液の調製:分析用水酸化ナトリウム0.8gを量り、水100mlに溶解させ、1000mlの目盛り線まで水を添加して均一に振り混ぜる。濃度0.02mol/lのNaOH溶液を作製した。 受液の調製:ブロモチモールブルー50mgを量り、小さいビーカーに置き、無水エタノール8mlを添加して溶解させた後、容量が1000mlの瓶に移し、水を添加して1000mlに近づく時、黄褐色(pH=6.7)になるまで0.02mol/lのNaOHを添加し、水で1000mlに定容する。
【0043】
また、200mg/lより濃度が大きいアンモニア態窒素の試水に対しては、受液のpHを6.2程度(色はpH=6.7の場合より黄色い)に調整することができる。
【0044】
標準サンプルの調製:2セットの標準サンプルを調製し、セット毎の三つの標準サンプルにおけるアンモニア態窒素の含有量(mg/l)はそれぞれ下記の通りである。
【0045】
セット1:
標準サンプル1:50mg/l、標準サンプル2:70mg/l、標準サンプル3:100mg/l
【0046】
セット2:
標準サンプル1:800mg/l、標準サンプル2:1000mg/l、標準サンプル3:1200mg/l。
【0047】
[2.実験]
上記のような洗浄、サンプリング、サンプルの途中注入、循環富化、測定という操作工程に基づいてアンモニアを検出する。
【0048】
(1)サンプル1
セット1の標準サンプルを参照とし、標準サンプルとサンプル1の測定を行い(富化時間:130秒、静置時間:25秒、洗浄回数:5回とする)、データは下記の表の通りである。
【表1】
image rotate

【0049】
(2)サンプル2
セット1の標準サンプルを参照として、標準サンプルとサンプル2との測定を行い(富化時間:100秒、静置時間:5秒、洗浄回数:12回とする)、データは下記の表の通りである。
【表2】
image rotate

【産業上の利用可能性】
【0050】
上記の2つの実験から、当該方法によって測定されたサンプルのアンモニア態窒素の濃度はサンプルの実際の濃度に比べ、誤差が極めて小さいことがわかり、これは検出精度が高いことを示す。
【符号の説明】
【0051】
10 (放出液の)出口接続管
11 (放出液の)入口接続管
12 (受液の)入口接続管
13 アンモニア放出プール
14 (受液の)出口接続管
15 支持プレート
16、16’ 通気膜
17 溝板
18 カバープレート
19 排気穴
20 ガス収集溝
21 受液グルーブ (受液の)毛管グルーブ
22 排気グルーブ
23 放出プールの深溝
24 毛管導流グルーブ
25 スルーホール
26 スルーホール
P1 試水輸送ポンプ
P2 放出液輸送ポンプ
P3 受液注射ポンプ
V1 六方弁
V2 七方弁、七方逆転弁
【図1(1)】
image rotate

【図1(2)】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2011−508227(P2011−508227A)
【公表日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−539993(P2010−539993)
【出願日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際出願番号】PCT/CN2008/001334
【国際公開番号】WO2009/079903
【国際公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(510177773)
【Fターム(参考)】