説明

フローコータ装置

【課題】被塗装物に気泡が付着することを防止可能なフローコータ装置を提供することである。
【解決手段】フローコータ装置1は、塗料循環回路20の途中にリターン流路10を有する。塗料循環回路20は、塗料タンク2と、ポンプ7と、フィルタ8と、脱泡用タンク3と、ヘッド前貯留部4と、塗装用ヘッド部5と、塗料回収部6と、フィルタ9とが、その順番通りに配管19で接続されたもの。脱泡用タンク3は、塗料30に含まれる空気等を振動によって除去するための装置一体型の容器。脱泡用タンク3は、容器部11と、振動発生装置12と、オーバーフロー部13と、気泡排出装置14を有する。リターン流路10は、樋状部材15と消泡装置16を有し、樋状部材15にはローラ22が設置され、ローラ22と樋状部材15との間で気泡32を含む塗料30を挟み、気泡32を押し潰す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フローコータ装置に関し、さらに詳細には、被塗装物の表面を均一に塗装することが可能なフローコータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
板部材等の被塗装物の表面を均一に塗装する装置として、カーテンフローコータとも呼ばれているフローコータ装置が用いられている。フローコータ装置は、塗料をカーテン状に流下させるものであり、被塗装物を所定の速度でくぐらせることで、被塗装物に均一な塗装面を形成できる。例えば、特許文献1には、カーテンコータを備えた塗装システムが開示されている。
【0003】
特許文献1に記載された塗装システムでは、塗料タンクと塗装装置との間に脱泡処理装置が配置されている。脱泡処理装置は、塗料タンクから供給される塗料に含まれる気泡を取り除くための装置である。脱泡処理装置を用いることで、塗装時に被塗装物に気泡が付着することを防止し、被塗装物の塗装面を平坦化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63−229170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1に記載の塗装システムでは、脱泡処理装置が密閉されたタンクで構成されているため、例えば、脱泡して集めた気泡がタンク内に充満すれば、空気中に放出されたはずの気泡が、再びタンク内の塗料に押し込まれてしまうおそれがある。すなわち、密閉されたタンクでは、空気中に放出された気泡の量が一定量を超えた場合は、再び塗料中に戻るため、結果的に被塗装物の塗装面が凹凸状となることが懸念される。
【0006】
そこで、本発明は、被塗装物に気泡が付着することを防止可能なフローコータ装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、塗料を貯留する塗料タンクと、脱泡用タンクと、ヘッド前貯留部と、塗装用ヘッド部と、リターン流路とを有し、前記脱泡用タンクは容器部と振動発生装置とオーバーフロー部とを有し、前記塗料タンクの下流側に位置しており、前記容器部内に塗料を導入して前記振動発生装置で塗料に振動を与え、塗料に含まれる気泡を容器部の上部側に位置するオーバーフロー部に集めるものであり、前記ヘッド前貯留部は前記塗装用ヘッド部に供給する塗料を一時的に貯留するものであり、前記塗装用ヘッド部は、前記ヘッド前貯留部の下流側に位置しており、被塗装物に塗料を塗布するために前記塗料をカーテン状に流下させるものであり、前記塗料タンク内の塗料が脱泡用タンクを経てヘッド前貯留部に供給され、塗料はさらにヘッド前貯留部から塗装用ヘッド部に供給されて被塗装物の塗料に供され、前記リターン流路は、前記脱泡用タンクのオーバーフロー部と塗料タンクを繋ぐものであり、前記脱泡用タンクのオーバーフロー部から溢れ出た塗料が、前記リターン流路を経由して塗料タンクに戻されることを特徴とするフローコータ装置である。
【0008】
本発明で採用するフローコータ装置は、塗料をカーテン状に流下させることが可能な一般的なフローコータ装置の構成に加えて、オーバーフロー部とリターン流路を備えている。オーバーフロー部は、脱泡用タンクの上部側に位置しており、塗料から脱泡した気泡を溜める部位である。リターン流路は、脱泡用タンクのオーバーフロー部と塗料タンクを繋ぐものであり、オーバーフロー部から溢れ出た気泡を含む塗料を塗料タンクに戻すものである。そのため、脱泡用タンク内で脱泡した気泡が塗料に再度含まれることがない。その結果、被塗装物に気泡が付着することを防止できる。
【0009】
また、本発明で採用するフローコータ装置は、脱泡用タンクと塗装用ヘッド部との間に、ヘッド前貯留部を有している。ヘッド前貯留部は、いわゆるバッファ装置であり、脱泡用タンクから供給される塗料の勢いを緩衝して、安定させることができる。そのため、塗装用ヘッド部に送られる塗料に新たな気泡が含まれることを防止できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明のフローコータ装置によれば、被塗装物に気泡が付着することを防止できる。そのため、本発明のフローコータ装置を用いることで、被塗装物の塗装面が凸凹状となることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係るフローコータ装置を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のフローコータ装置の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明は、実施形態の理解を容易にするためのものであり、これによって、本発明が制限して理解されるべきではない。
【0013】
本発明の実施形態に係るフローコータ装置1は、図1に示すように、塗料循環回路20の途中にリターン流路10を有することを特徴とする塗装装置である。
【0014】
塗料循環回路20は、塗料タンク2と、ポンプ7と、フィルタ8と、脱泡用タンク3と、ヘッド前貯留部4と、塗装用ヘッド部5と、塗料回収部6と、フィルタ9とが、その順番通りに配管19で接続されたものである。
【0015】
塗料タンク2は、塗料30を貯留するための容器である。
【0016】
ポンプ7は、塗料30を塗料循環回路20に循環させるための動力源である。
【0017】
フィルタ8,9は、塗料30に含まれる異物等を除去するものである。
【0018】
脱泡用タンク3は、塗料30に含まれる空気等を振動によって除去するための装置一体型の容器である。脱泡用タンク3は、容器部11と、振動発生装置12と、オーバーフロー部13と、気泡排出装置14を有している。
【0019】
容器部11は、上部側が開放された容器である。振動発生装置12は、例えば、超音波等の振動を発生する装置であり、容器部11の下側の周囲に配置されている。オーバーフロー部13は、容器部11の上部側を指すものであり、塗料30から脱泡した気泡32を溜める部位である。
【0020】
気泡排出装置14は、オーバーフロー部13に溜まった気泡32を、容器部11の外に排出するための装置である。気泡排出装置14は、気泡32の排出が容易な掻き出し部材21を有している。掻き出し部材21は、例えば刷毛状や板状で形成されていることが好ましい。なお、掻き出し部材21は、オーバーフロー部13に位置しており、図示しない動力源を用いて水平移動が可能である。
【0021】
ヘッド前貯留部4は、いわゆるバッファ装置であり、脱泡用タンク3から供給される塗料30の勢いを緩衝して、安定して貯留するための容器である。
【0022】
塗装用ヘッド部5は、塗料30をカーテン状として流下させるための流下装置である。塗装用ヘッド部5から出される塗料30は、カーテン状の塗料35となる。
【0023】
塗料回収部6は、塗装用ヘッド部5から流下されて余ったカーテン状の塗料35を回収するための受け皿である。
【0024】
塗料循環回路20における塗料の流れについて簡単に説明すると、塗料タンク2内に貯留されている塗料30は、ポンプ7で汲み上げられ、フィルタ8を介して脱泡用タンク3に貯留される脱泡用タンク3では、塗料30に含まれる空気等の気泡が振動によって上方に向けて移動して、空気中に放出される(脱泡)。
【0025】
その後、脱泡された塗料30は、ヘッド前貯留部4を介して塗装用ヘッド部5に送られる。塗装用ヘッド部5では、カーテン状の塗料35が流下され、塗料回収部6で回収される。そして、回収された塗料30は、配管19を通り、フィルタ9を介して塗料タンク2に戻される。以降、同様の経路で塗料30が塗料循環回路20を循環するものである。被塗装物31を、塗装用ヘッド部5から流下されるカーテン状の塗料35にくぐらせることで、被塗装物31に均一な塗装面を形成することができる。
【0026】
一方、リターン流路10は、脱泡用タンク3のオーバーフロー部13と、塗料タンク2とを結ぶものである。リターン流路10は、樋状部材15と消泡装置16を有している。
【0027】
樋状部材15は、オーバーフロー部13から排出される気泡32を含んだ塗料30を、塗料タンク2に戻すための流路であり、上側が開放されている。
【0028】
消泡装置16は、オーバーフロー部13から排出される気泡32を物理的に潰す装置である。消泡装置としてローラ22が採用されている。
【0029】
すなわち、リターン流路10では、樋状部材15にローラ22が設置されており、塗料30に気泡32が含まれている場合であっても、ローラ22と樋状部材15との間で気泡32を含む塗料30を挟み、気泡32を押し潰す。その結果、塗料タンク2に戻す塗料30に気泡32が混入することを防止できる。
【0030】
なお、ローラ22と樋状部材15の代わりに、一対のローラの間に塗料を流し込んで、気泡を押し潰しても良い。
【0031】
以上のように、本発明の実施形態に係るフローコータ装置1によれば、脱泡用タンク3で確実に気泡32を除去できるため、被塗装物31に形成される塗装面が凸凹することがない。また、気泡排出装置14で脱泡用タンク3から排出した気泡32を、リターン流路10に備えた消泡装置16で確実に押し潰すことで、塗料タンク2に戻される塗料30に気泡32が混入することを防止できる。
【0032】
なお、上記実施形態において、脱泡用タンク3とヘッド前貯留部4とを結ぶ配管19は、両者の下部側同士をつなぐことで、気泡32が脱泡用タンク3からヘッド前貯留部4側に流出することを防止できる。
【符号の説明】
【0033】
1 フローコータ装置
2 塗料タンク
3 脱泡用タンク
4 ヘッド前貯留部
5 塗装用ヘッド部
10 リターン流路
11 容器部
12 振動発生装置
13 オーバーフロー部
30 塗料
31 被塗装物
32 気泡
35 カーテン状の塗料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗料を貯留する塗料タンクと、脱泡用タンクと、ヘッド前貯留部と、塗装用ヘッド部と、リターン流路とを有し、前記脱泡用タンクは容器部と振動発生装置とオーバーフロー部とを有し、前記塗料タンクの下流側に位置しており、前記容器部内に塗料を導入して前記振動発生装置で塗料に振動を与え、塗料に含まれる気泡を容器部の上部側に位置するオーバーフロー部に集めるものであり、前記ヘッド前貯留部は前記塗装用ヘッド部に供給する塗料を一時的に貯留するものであり、前記塗装用ヘッド部は、前記ヘッド前貯留部の下流側に位置しており、被塗装物に塗料を塗布するために前記塗料をカーテン状に流下させるものであり、前記塗料タンク内の塗料が脱泡用タンクを経てヘッド前貯留部に供給され、塗料はさらにヘッド前貯留部から塗装用ヘッド部に供給されて被塗装物の塗料に供され、前記リターン流路は、前記脱泡用タンクのオーバーフロー部と塗料タンクを繋ぐものであり、前記脱泡用タンクのオーバーフロー部から溢れ出た塗料が、前記リターン流路を経由して塗料タンクに戻されることを特徴とするフローコータ装置。

【図1】
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【公開番号】特開2013−107047(P2013−107047A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254674(P2011−254674)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】