説明

フローコータ装置

【課題】脱気装置を設置することなく効果的に消泡でき、被塗装物に均一且つ平滑な塗装面を施すことが可能なフローコータ装置を提供する。
【解決手段】塗装用ヘッド装置1と、この塗装用ヘッド装置1に塗料2を供給する塗料供給路3とを備える。塗装用ヘッド装置1が、塗料供給路3から塗料2が供給される前タンク部4、被塗装物5に塗装するために塗料2をカーテン状の膜として流下させるカーテン形成流下部6を有する塗装用ヘッド部7と、前タンク部4から塗装用ヘッド部7に塗料2を流す傾斜シュート部8を備えて構成される。傾斜シュート部8は、塗料2を膜状にして移動させるための傾斜面9を有し、且つ、傾斜面9が親水性能を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フローコータ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フローコータ装置は、図3に示されるように、塗装用ヘッド部7と、貯留タンク13から塗装用ヘッド部7に塗料2を供給する塗料供給路3と、余剰塗料を受ける受け部14と、受け部14から貯留タンク13に塗料2を返送する返送路15を備えている。
【0003】
塗装用ヘッド部7には、カーテン形成流下部6が形成され、このカーテン形成流下部6から塗料2をカーテン状の膜として流下させることで、下方を通過する被塗装物5に塗料2が塗装される。
【0004】
従来のフローコータ装置においては、図3に示されるように、塗料供給路3に脱気装置30を設けて従来塗料2中に含まれる気泡を脱気するようになっている。なお、図3において符号16はポンプを示す。
【0005】
一方、主タンクに貯留した塗料をポンプでスプレーガンに供給して塗装を行うスプレー塗装において、主タンクに滞留する前段階で塗料中に含まれる気泡を消泡する技術が引用文献1により知られている。
【0006】
この特許文献1に示される従来例は、主タンクの上流側にサブタンクを設け、サブタンクに内に流入した液体をサブタンクに設けた堰を越えて主タンクに流下させるように構成されている。
【0007】
そして、液体が堰の上端を越えて主タンクに流下する際、堰の上端を乗り越えた液体が堰の垂直又は傾斜した外表面に沿って膜状に流れることで、液体内部に含まれる気泡が消泡されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7−308512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記の塗料供給路に脱気装置を設ける従来例は、塗料供給経路の途中に脱気装置を設置するため、フローコータ全体が複雑なシステムとなるという問題がある。
【0010】
また、特許文献1に示される従来例は、スプレーガンによる塗装であるため、スプレーガンから噴霧された塗料は、無数の塗料粒粒子が霧状となって空気と接触しながら飛翔して被塗装物の表面に塗装される。したがって、せっかくスプレーガンの上流側で塗料中に含まれる空気を消泡しても、最終の塗装段階で空気を巻き込んで塗装されやすい。
【0011】
しかも、主タンクの前で消泡するといえども、堰の垂直又は傾斜した外表面に沿って液体が膜状に流れることで消泡するだけなので、十分な消泡効果が得難い。
【0012】
本発明は、上記の従来の問題点に鑑みて発明したもので、脱気装置を設置することなく効果的に消泡でき、被塗装物に均一且つ平滑な塗装面を施すことが可能なフローコータ装置を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のフローコータ装置は、塗装用ヘッド装置と、この塗装用ヘッド装置に塗料を供給する塗料供給路とを備え、前記塗装用ヘッド装置が、前記塗料供給路から前記塗料が供給される前タンク部と、被塗装物に塗装するために前記塗料をカーテン状の膜として流下させるカーテン形成流下部を有する塗装用ヘッド部と、前記前タンク部から前記塗装用ヘッド部に前記塗料を流す傾斜シュート部を備えて構成され、前記傾斜シュート部は、前記塗料を膜状にして移動させるための傾斜面を有し、且つ、前記傾斜面が親水性能を有していることを特徴とする
また、前記傾斜シュート部は、傾斜の異なる複数の傾斜面を流れ方向に連続して備えることが好ましい。
【0014】
また、前記傾斜シュート部の上流に前記塗料中に含まれる大径の気泡を消泡又は細かくするためのメッシュフィルタを備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、塗料が傾斜シュート部の傾斜面上を膜状になって移動すること、及び、傾斜面が親水性であることによる相乗効果で、塗料中に含まれる気泡が消泡しやすくなる。この結果、脱気装置を設置することなく効果的に消泡でき、被塗装物に均一且つ平滑な塗装面を施すことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のフローコータ装置の一実施形態の概略構成図である。
【図2】同上の他の実施形態の概略構成図である。
【図3】従来のフローコータ装置の一実施形態の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基づいて説明する。
【0018】
図1にはフローコータ装置12の一実施形態の概略構成図を示している。
【0019】
フローコータ装置12は、塗装用ヘッド装置1と、貯留タンク13と、貯留タンク13と塗装用ヘッド装置1を接続する塗料供給路3と、塗装用ヘッド装置1から流下した塗料2を受ける受け部14と、受け部14と貯留タンク13を接続する返送路15を備える。
【0020】
塗料供給路3は、貯留タンク13側から塗装用ヘッド装置1側にかけて順にポンプ16、フィルタ装置17を備える。
【0021】
塗装用ヘッド装置1は、上流側から下流側にかけて順に、前タンク部4、傾斜シュート部8、塗装用ヘッド部7を備える。
【0022】
前タンク部4は、塗料供給路3から塗料2が供給される塗料流入部18と、オーバーフロー用堰部19を有する。
【0023】
また、前タンク部4の内部は、塗料流入部18からオーバーフロー用堰部19にかけてメッシュフィルタ20により複数の部屋21、22に仕切られる。
【0024】
塗装用ヘッド部7は、被塗装物5に塗装するために塗料2をカーテン状の膜として流下させるカーテン形成流下部6を有する。
【0025】
図1に示す実施形態においては、塗装用ヘッド部7はタンクにより形成され、このタンクの一側下端に、開閉手段(図示せず)を有する細長いスリット23よりなるゲートが形成され、スリット23の下端縁を外側方に突出して流下ガイド突片24が形成される。この流下ガイド突片24の上面は平坦な水平面に形成される。
【0026】
本実施形態では、開閉手段を有する細長いスリット23と流下ガイド突片24とで塗料2をカーテン状の膜として流下させるカーテン形成流下部6が形成される。
【0027】
傾斜シュート部8は上端がオーバーフロー用堰部19に連続し、且つ、下端が塗装用ヘッド部7のカーテン形成流下部6から離れた側の上端縁に連続するように形成される。
【0028】
傾斜シュート部8には、オーバーフロー用堰部19をオーバーフローした塗料2が、膜状になって自重により塗装用ヘッド部7側に移動させるための傾斜面9を有している。この傾斜面9は塗装用ヘッド部7ほど低くなるように傾斜しており、また、親水性能を有している。傾斜面9に親水性能を持たせるには、傾斜面9の表面に親水性材料の層を形成したり、あるいは、傾斜シュート部8を親水性材料で形成する。
【0029】
カーテン形成流下部6の下方には、被塗装物5を移動させて、被塗装物5の上面にカーテン形成流下部6から流下するカーテン状の塗料2が塗布されるようになっている。
【0030】
更に、カーテン形成流下部6の下方の被塗装物5を移動する位置よりも更に下方に、受け部14が配置される。この受け部14は、カーテン形成流下部6から流下する塗料2のうち被塗装物5に塗布されないで更に下方に流下した塗料2を受ける。
【0031】
返送路15は、受け部14で受けた塗料2を貯留タンク13に返送するためのもので、途中にフィルタ装置25を備える。
【0032】
なお、受け部14から貯留タンク13に返送路15を介して塗料2を返送するに当り、塗料2が重力の作用で流れて返送される場合は、ポンプは必要ないが、重力の作用で流れて返送されない場合はポンプが設けられる。
【0033】
また、貯留タンク13内は、返送路15からの返送口と、塗料供給路3の吸込口との間がメッシュフィルタ26で複数の部屋に仕切られ、塗料2がメッシュフィルタ26を通過する際に大きな気泡が消泡されたり、細かくされる。
【0034】
上記のような構成のフローコータ装置12は、塗料供給路3に備えたポンプ16を運転することで、貯留タンク13から塗料供給路3を経て塗装用ヘッド装置1の前タンク部4に塗料2が供給される。
【0035】
この場合、塗料供給路3に設けたフィルタ装置17で塗料2に混入している塵などの異物が除去される。
【0036】
前タンク部4内に供給された塗料2は、メッシュフィルタ20を通過しオーバーフロー用堰部19側に流れる。
【0037】
塗料2がメッシュフィルタ20を通過する際、塗料2中に含まれる大きな泡が消泡されるか、又は、細かくされる。
【0038】
オーバーフロー用堰部19側に流れた塗料2は、オーバーフロー用堰部19を越えて傾斜シュート部8の傾斜面9を薄い膜状になって自重により流れる。
【0039】
この場合、塗料2が、傾斜シュート部8の傾斜面9上を膜状になって移動することで塗料中に含まれる気泡が塗料2の表面側に出て消泡される。
【0040】
また、傾斜面9が親水性能を有しているので、塗料2中に含まれる気泡が塗料2の表面側に移動して消泡される。特に、傾斜面9と塗料2との界面に位置する気泡が薄い膜状の塗料2の表面側に出て消泡される。
【0041】
この結果、本実施形態では、塗料2が傾斜面9上を膜状になって移動すること、及び、傾斜面9が親水性であることによる相乗効果で、塗料2中に含まれる気泡が効果的に消泡される。
【0042】
親水性能の傾斜面9を膜状になって流れた塗料2は、タンク状の塗装用ヘッド部7に流入されて溜まる。塗装用ヘッド部7に溜まった塗料2は、開閉手段を開くことで、細長いスリット23から流出し、流下ガイド突片24の上面を薄い膜状に流れて前端から下方にカーテン状の膜として流下し、下方を移動する被塗装物5の表面に塗料2が塗装される。
【0043】
被塗装物5としては、例えば、表面柄の凹凸が2mm未満の床材や洗面台の扉材などに用いられるボード材を挙げることができるが、必ずしもこれに限定されないのはもちろんである。
【0044】
前述のように塗装用ヘッド装置1で気泡を消泡した塗料2が、カーテンフローにより被塗装物5に塗装されるので、被塗装物5の表面に気泡を含まない平滑な塗装面が均一に形成される。
【0045】
カーテン状の膜として流下する塗料2のうち、被塗装物5に塗布されず、更に下方に流下した塗料2は、受け部14で受けられ、返送路15を経て貯留タンク13に返送される。
【0046】
この塗料2の返送の際、フィルタ装置25で塗料2に混入している塵などの異物が除去される。
【0047】
ところで、使用される塗料2としては、異物、柄材の混入がなく、粘度が低い(目安として1000cpm以下)のものを用いる以外は、材質は問わない。
【0048】
塗料2によって泡が取り除き難い時は、傾斜シュート部8の傾斜面9の長さ、傾斜面9の傾斜角度を変更して調整する。
【0049】
また、傾斜シュート部8に傾斜面9を設けるに当り、傾斜面9として、図2のように流れ方向にかけて(上流側から下流側にかけて)連続する傾斜の異なる複数の傾斜面91、92を形成してもよい。図2には傾斜の異なる2つの傾斜面91、92を形成した例を示すが、傾斜の3つ以上の傾斜面91、92……を上流側から下流側にかけて連続して形成してもよい。
【0050】
この実施形態では、塗料2が上流側から下流側にかけて傾斜の異なる複数の傾斜面91、92を膜状になって流れる際の速度や膜状の厚み等が変化し、この結果、より効果的に塗料2中に含まれる気泡を消泡することが可能となる。
【0051】
ここで傾斜の異なる傾斜面91、92のうち、図2のように傾斜の急な傾斜面91を上流側、傾斜の緩い傾斜面92を下流側に位置させてもよく、あるいは図示を省略しているが、傾斜の緩い傾斜面92を上流側、傾斜の急な傾斜面92を下流側に位置させてもよい。
【0052】
図2の実施形態は、前述の塗料2が傾斜の異なる複数の傾斜面91、92を流れることによって効果的に消泡されることに加え、塗料2が塗装用ヘッド部7に入る際のエアー噛みの防止が可能となる。
【0053】
すなわち、傾斜面91の傾斜が急すぎると塗装用ヘッド部7に入る際、エアーを噛みこむ可能性がある。しかし、図2に示されるように傾斜の急な傾斜面91に続いて傾斜の緩い傾斜面92を連続させると、塗料2が塗装用ヘッド部7に入る際の速度を落とし、エアー噛みの防止が可能となる。
【符号の説明】
【0054】
1 塗装用ヘッド装置
2 塗料
3 塗料供給路
4 前タンク部
5 被塗装物
6 カーテン形成流下部
7 塗装用ヘッド部
8 傾斜シュート部
9 傾斜面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗装用ヘッド装置と、この塗装用ヘッド装置に塗料を供給する塗料供給路とを備え、
前記塗装用ヘッド装置が、前記塗料供給路から前記塗料が供給される前タンク部と、被塗装物に塗装するために前記塗料をカーテン状の膜として流下させるカーテン形成流下部を有する塗装用ヘッド部と、前記前タンク部から前記塗装用ヘッド部に前記塗料を流す傾斜シュート部を備えて構成され、
前記傾斜シュート部は、前記塗料を膜状にして移動させるための傾斜面を有し、且つ、前記傾斜面が親水性能を有していることを特徴とするフローコータ装置。
【請求項2】
前記傾斜シュート部は、傾斜の異なる複数の傾斜面を流れ方向に連続して備えることを特徴とする請求項1記載のフローコータ装置。
【請求項3】
前記傾斜シュート部の上流に前記塗料中に含まれる大径の気泡を消泡又は細かくするためのメッシュフィルタを備えることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のフローコータ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−66810(P2013−66810A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205006(P2011−205006)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】