説明

フローサイトメトリーと多重HPV遺伝子型同定を併用する統合試験法

臨床的に得られた子宮頚部上皮細胞集団から、タンパク質バイオマーカー表現型と特定のHPV遺伝子型データを共に収集することが可能な、2つの部分からなる試験法が開示されている。形質転換関連多重タンパク質バイオマーカーの存在は、細胞ソーティングのゲーティング基準として作用し、その後、ソーティングで捕捉された細胞から個々のHPV型を検出し同定するのに十分な感度を有するPCRプロトコールが適用される。ワークフローは、常法によりPreservCyt(Cytyc)に固定された細胞を扱うように最適化されており、パップテストが行われた後に保存された試料に残っている残留細胞に対して実施することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
米国政府の権利
本開示の試験法および方法は、National Institute of Health(NIH)と結んだ契約第R21 CA125370号に基づき、政府の支援によってなされたものである。米国政府は本出願に対して一定の権利を有し得る。
【0002】
臨床由来の子宮頚部上皮細胞の集団から、タンパク質バイオマーカー表現型およびHPV遺伝子型の双方のデータを収集することができる、2つの部分からなる分析法を開示する。
【背景技術】
【0003】
子宮頚癌は、最も一般的な形態の悪性腫瘍として、全世界の女性の発生率および死亡率の両方で乳癌に次いで第2位である。スクリーニングのための子宮頚部細胞診(パップスメアテスト、または「パップテスト」)を全人口レベルで行うことにより、米国および他の先進工業国においては、子宮頚癌の罹患率および死亡率が劇的に低下してきている。パップテストの成功にもかかわらず、子宮頚部病変の細胞診は、細胞診で悪性度の低い異常を有する患者において、臨床的悪性度の非常に高い病変に対する特異性が低いという厄介な問題に悩まされている。その結果、毎年400万人を超える女性が、悪性度の高い異形成または癌である可能性を除外するために、さらなる評価を必要とする細胞診を受けている。殆どの場合、さらなる評価を行っても、軽度細胞診異常患者に潜在する高度病変は確認されない。高リスク型ヒトパピローマウイルスの簡単な検出は、患者の分類には重要な役割を果たし得るが、検出それ自体は、いくつかの細胞診にとって有用ではなかった。具体的に言えば、高リスクHPVの単なる検出では、最初の感染と発病の間に長い時間のずれ(10年以下)があるために、潜在している高悪性度の病変を予測できない。さらに、予後は高リスクHPVの型によっても異なり得ることが、いくつかの研究で示されているが、現在の商業的に利用できる高リスクHPV用試験では、個々のHPVの型は特定されない。
【0004】
子宮頸管粘膜の前癌病変の細胞診は、パパニコロウ標本の細胞学的検査(パップスメアテスト)によって検出される子宮頸管粘膜の前癌病変を含む。細胞学的所見は、ベセスダシステムにより、正常/良性の反応性変化(正常/BRC)、扁平上皮細胞異常および腺細胞異常として分類される。扁平上皮細胞異常は、意義不明異型扁平上皮細胞(ASCUS)、ヒトパピローマウイルス(HPV)への感染および/または軽度の異形成の証拠を含む軽度扁平上皮内病変(LSIL)、ならびに中等度の異形成(CIN2)および高度の異形成/上皮内癌(CIN3)を含む高度上皮内病変(HSIL)を含む。改訂ベセスダ2001システムでは、ASCUSの一般カテゴリーが2つの新しい診断カテゴリー:「異型扁平上皮細胞−意義不明」(ASC−US)および「異型扁平上皮細胞−HSILを除外できない」(ASC−H)に置き換えられた。以前は反応プロセスを示唆するASCUSに分類されたであろう症例は、新分類システムでは良性細胞変化のカテゴリーに含まれる。LSILとHSILの分類は、以前のベセスダ分類システムと相対的には不変のままであるが、浸潤癌が疑われる特徴を有する症例を報告するために、HSILのサブカテゴリーが追加された。子宮頸管内腺性粘膜の潜在的な前癌病変もまた、子宮頚癌細胞診の標本で認識することができる。改訂2001ベセスダシステムの細胞学的分類では、腺癌より軽度の腺細胞異常は、異型腺細胞(AGC)、特定不能な子宮頸管内、子宮内膜または「腺細胞」(AGC NOS);異型腺細胞、腫瘍性を示唆する子宮頸管内細胞または「腺細胞」(AGC「腫瘍性示唆」)、および子宮頸管上皮内腺癌(AIS)に分類される。
【0005】
パパニコロウテストは癌の有効なスクリーニング手段である。しかしながら、その成功にもかかわらず、診断細胞病理学の実施は、軽度の細胞学的異常を示す症例において、臨床的に重大な潜在病変に対する特異性の低さから限られている。米国では、毎年、400万を超える症例がASC−US、ASC−H、LSILまたはAGCと診断され、子宮頚部生検で発見される臨床的に重大な高度病変を有する部分集団患者群を同定するために、さらなる評価を必要としている(表1)。しかしながら、殆どの症例で、さらなる評価が軽度細胞学的異常を示した患者の高度扁平上皮病変または腺病変を同定することはない。細胞診でASC(特定不能)と診断された患者は、子宮頚部生検により5〜17%の潜在的CIN2/3を有し、ASC−Hとの診断は、コルポ診生検でCIN2/3である可能性が24〜94%であることが示されている。コルポ診検査を勧められたLSILの症例では、高度子宮頸管異形成(CIN2または3)が25%に見られ、CIN1が45%に見られたが、25%を超えるLSIL症例で異型性は見られなかった。AGCの細胞診も、子宮頸管粘膜の臨床的に重大な潜在的病変の存在については明白に示さない。AGCと診断された症例では、CIN2、CIN3またはAISのリスクが9〜41%であることがわかっているが、AGC症例の大半は、扁平上皮粘膜または腺性粘膜のいずれかの臨床的に重大な病変について生検による確認がなされていない。
【0006】
【表1】

【0007】
パップテストの成績に関する上の統計が、女性100,000人当たりの死亡率が世界の先進工業地域の3〜7倍である開発途上国で実施されていないという問題に対処するものでないことは言うまでもない。現在の実施に伴う他の問題点は、臨床医が大量の標本を素早く読むようにプレッシャーをかけられていることである。細胞検査技師はスライド1枚当たり約4〜5分の速さで、すなわち、8時間に100枚のスライドをスクリーニングすることができる。言い換えれば、細胞検査技師は、4ないし5分間で、1枚のスライド上の50,000〜300,000個の細胞を可視化し、陽性標本中の僅かに10〜50個の異型細胞を同定する必要がある。スクリーニングした全標本中の約90%が陰性である。したがって、スクリーニングする人の時間とエネルギーの大部分は健康な細胞を見ることに費やされる。疲れと単調さによりスクリーニング者の鋭敏さが損なわれ、その結果、数少ない陽性細胞は見落とされ易くなる。
【0008】
分子レベルでの子宮頚癌の検出は、HPVの発癌遺伝子E6およびE7の検出と、p16INK4a過剰発現の検出を含む。すなわち、ヒトパピローマウイルスは、子宮頚癌の発症リスクによって約200の型に分類されている。16型および18型のHPVは、最も流行性の高い「高リスク」型であり、子宮頚癌の70%を占め、残りの症例は殆ど全てが、あまり一般的でない他の高リスク型HPVに陽性である。HPVゲノムは2つの主要な発癌遺伝子E6およびE7を含む。E6タンパク質はp53に結合し、ユビキチン介在プロセスによりその分解を誘導する。E7タンパク質はRbおよび関連タンパク質に結合し、これらを不安定化する。これらの作用が一緒になって、分化角化細胞中で細胞周期進行およびウイルスDNA複製が促進される。前癌子宮頸管病変および子宮頚癌では、ヒトパピローマウイルスDNAが宿主ゲノムへ組込まれることによって、ウイルスのE2オープンリーディングフレームが破壊され、HPV発癌遺伝子E6およびE7の無秩序な過剰発現が生じ得る。
【0009】
Rb遺伝子機能を喪失した癌では、p16INK4aが過剰に発現し、数種類の癌でpRbとp16INK4aの間に逆相関性があることが確立されている。大部分の正常な細胞では、p16INK4aの発現はmRNAおよびタンパク質レベルでは低いことが知られている。HPV感染期間中、HPVのE7タンパク質の発現は、Rbに結合し、ユビキチン−プロテアソーム経路で分解されるようにすることにより、Rbを不活性化する。したがって、p16INK4aの過剰発現は、確立された子宮頚癌細胞系統と、16型および18型HPVにより不死化されたヒトの子宮膣部細胞の両方に観測される。さらに、HPV感染によるp16INK4aのアップレギュレーションは、高リスク型HPVと低リスク型HPVで異なることが示されており、最も強力なアップレギュレーションは、低リスクHPV6より高リスク型HPV16に見られる。
【0010】
p16INK4aタンパク質は、次に示すように、免疫組織化学的および免疫細胞化学的マーカーとして子宮頚癌を検出するために使用されている。いくつかの研究は、高度子宮頸部異形成および浸潤癌のほぼ100%でp16INK4aレベルが非常に高く、一方、同じ抗体を使用した正常な子宮頚部上皮ではp16INK4a−陽性染色が全く見られなかったことを示している。さらに、p16INK4aの過剰発現とRbの発現の低下は、子宮頚部異形成の発生と相関している。最近の研究では、mcm5もまた子宮頚部上皮内腫瘍および癌の存在のマーカーであり得るが、軽度異形成病変やある正常な増殖性扁平細胞でも発現し得ることが示されている。子宮頚部の病理学的状態の重篤度を追跡する定量的な方法で二重陽性細胞を検出するために、免疫学的染色法およびフローサイトメトリーを使用して、p16INK4aおよびmcm5を併用し得ることが実証されている。
【0011】
分子レベルでの子宮頚癌の検出(他のタンパク質バイオマーカー)が、フローサイトメトリーによる癌細胞タンパク質バイオマーカーの検出と定量化を含むいくつかの研究で、実証されている。フローサイトメトリーで一般に検出される癌バイオマーカーは、ki67、PCNA、サイクリン−D1およびサイクリン−B1、ならびにp16INK4aを含む。これらの癌バイオマーカーの殆どは、主に、肺、結腸および乳癌組織で検出された。しかしながら、最近の結果は、p16INK4a、mcm5およびサイクリンD1の発現の増加が、子宮頚癌の検体でも検出されることを示している。この方法論は現在p16INK4a、mcm5、およびPCNAで開発中であるが、検出手順は、形質転換した子宮頸部上皮細胞内での発現が実証されているバイオマーカーであればいかなるものに対しても、理論的に互換性がある。
【0012】
子宮頚癌におけるヒトパピローマウイルスの役割が解き明かされるにつれて、ウイルスの他の遺伝子系統への分岐が、宿主細胞の形質転換、ひいては病気の進行の程度の変化をもたらしていることが明らかになってきた。HPVの5種類の遺伝子型:16、18、31、33および45が、最も流行性の強い高リスクの形態であることが認識されている。これらの中で、16型は全子宮頚癌の約半数に現れるが、HPV18は子宮頚癌の約20%を占めるに過ぎないにもかかわらず、一貫して最悪の予後をもたらすようであることは広く認識されている。癌の実際の症例に加えて他の子宮頚部の病変(ASCUS、LSIL、HSIL)を考慮すると、16型および18型のHPVの頻度は、両者が有する高い相対的リスクを反映する形で、病変のクラスにより明らかに変化することが、病気の重篤度のHPV型に対する依存性を検出する代替の方法によって示されている。したがって、患者のHPV遺伝子型データと病理学的重篤度のデータの組み合わせは、HPV型が、細胞異常が始まった症例の予後に対する有用な情報であることを示している。これまでの問題は、高リスクHPVの感染と癌の発病までの約10年間の潜伏期間が、それ自身のHPV型データが予後の観点で解釈されるのを妨げていることである。
【0013】
Digene HPV HC2テスト(Qiagen)は、13の高リスク型HPVに対するRNAプローブの混合物を使用するが、陽性の試験結果は、最終的にはDNA−RNAハイブリッドに対するジェネリックな抗体によって検出され、いかなるHPV型が存在するかは示さない。さらに、HC2テストは、検体の妥当性に対する内部標準を欠くことによって制限されている。研究の場では様々なPCRストラテジーが採用されてきたが、これらには、通常、増幅物を縮重プライマーと結合させ、その後、特定の多重PCRプライマーと第2の反応を行わせるネストPCR反応が含まれる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
HPV遺伝子型を予後とより関連するツールとするための、HPV型データと、形質転換に関連したタンパク質バイオマーカーの検出との組み合わせを開示する。特に、細胞ソーティングによって標的細胞を単離した後、1回の増幅反応を必要とするだけの、非常に高い感度と特異性を組み合わせた試験法を開示する。
【0015】
一実施形態では、フローサイトメトリーと多重HPV遺伝子型同定法を組み合わせた、2つの部分からなる統合試験法が開示される。タンパク質バイオマーカー表現型と特定のHPV遺伝子型が、1つの臨床試料の同じ細胞集団について評価される。この目的は、子宮頚部初期病変の検出とキャラクタリゼーションの全体的な精度と特異性を改善することにある。本試験法は、従来のPreservCyt(Cytyc)で固定した試料にも適合し、したがって、初めに、正常子宮頚部の洗浄物の1部として収集された残留細胞に適用することができる。高速の細胞ソーティングは、形質転換を集団的に示すことが報告されている多重タンパク質バイオマーカーの過剰発現に陽性の細胞を回収する。回収されると、これらの同じ細胞は、縮重HPVプライマーによる予備増幅を必要とせずに、多重反応で動作するように注意深く設計された一組のPCRプライマーを使用して、高リスクHPV遺伝子型が調べられる。最後に、GenomeLab GeXP(Beckman Coulter)キャピラリー電気泳動プラットフォームを使用して、増幅フラグメントのサイズを自動的に検出することにより、個々のHPV型を検出することができる。
【0016】
また、以下のオリゴヌクレオチド配列およびそれらの逆相補配列を開示するが、配列は慣例により5’から3’結合の方向に記載されている。
配列1 TGGACCGGTCGATGTATGTCTTGT
配列2 TACGCACAACCGAAGCGTAGAGTC
配列3 AGTGTGACTCTACGCTTCGGTTGT
配列4 GTGTGCCCATTAACAGGTCTTCCA
配列5 ACTATAGAGGCCAGTGCCATTCGT
配列6 TCGTCGGGCTGGTAAATGTTGATG
配列7 CATCAACATTTACCAGCCCGACGA
配列8 AAACAGCTGCTGGAATGCTCGAAG
配列9 AACATAGGAGGAAGGTGGACAGGA
配列10 GTGTGCTCTGTACACACAAACGAAG
配列11 GAGGACACAAGCCAACGTTAAAGG
配列12 GGTTCGTAGGTCACTTGCTGTACT
配列13 GACAGTACCGAGGGCAGTGTAATA
配列14 TACTTGTGTTTCCCTACGTCTGCGA
配列15 GCGTGTGTATTATGTGCCTACGCT
配列16 TTACACTTGGGTCACAGGTCGG
配列17 AGGTGACACTATAGAATATGGACCGGTCGATGTATGTCTTGT
配列18 GTACGACTCACTATAGGGATACGCACAACCGAAGCGTAGAGTC
配列19 AGGTGACACTATAGAATAAGTGTGACTCTACGCTTCGGTTGT
配列20 GTACGACTCACTATAGGGAGTGTGCCCATTAACAGGTCTTCCA
配列21 AGGTGACACTATAGAATAACTATAGAGGCCAGTGCCATTCGT
配列22 GTACGACTCACTATAGGGATCGTCGGGCTGGTAAATGTTGATG
配列23 AGGTGACACTATAGAATACATCAACATTTACCAGCCCGACGA
配列24 GTACGACTCACTATAGGGAAAACAGCTGCTGGAATGCTCGAAG
配列25 AGGTGACACTATAGAATAAACATAGGAGGAAGGTGGACAGGA
配列26 GTACGACTCACTATAGGGAGTGTGCTCTGTACACACAAACGAAG
配列27 AGGTGACACTATAGAATAGAGGACACAAGCCAACGTTAAAGG
配列28 GTACGACTCACTATAGGGAGGTTCGTAGGTCACTTGCTGTACT
配列29 AGGTGACACTATAGAATAGACAGTACCGAGGGCAGTGTAATA
配列30 GTACGACTCACTATAGGGATACTTGTGTTTCCCTACGTCTGCGA
配列31 AGGTGACACTATAGAATAGCGTGTGTATTATGTGCCTACGCT
配列32 GTACGACTCACTATAGGGATTACACTTGGGTCACAGGTCGG
【0017】
他の一実施形態では、常法により固定し、免疫学的に染色した子宮頚部細胞集団を細胞ソーティングすることにより、1種以上のタンパク質バイオマーカーが過剰発現している細胞を捕捉し、その後、ヒトパピローマウイルスの含有量を直接調べるシーケンシャルな方法が開示される。この方法は、分類上は階層的方法であり、特定の遺伝子型が、タンパク質バイオマーカー表現型について既にキャラクタライズされている細胞の亜集団に起因するものであることがわかる。この方法で、子宮頚部の病気の複合リスク因子を個々に示す細胞が検出される。このことは、タンパク質バイオマーカーが示す病気の状態の兆候と特定の高リスクHPV型の存在を共に含む細胞系統の存在を明確に示している。特定の理論に縛られずに言うならば、細胞ソーティングは、特に、1)子宮頚部細胞集団におけるバイオマーカーの過剰発現の発生を比例的に定量化する希少事象検出法として、また2)異常細胞のみをHPV試験に流す予備選別ワークフローとしての働きをする。開示した方法では、フローサイトメトリーによる細胞ソーティングのゲーティング基準は、p16INK4a、mcm5、PCNAおよび子宮頚部上皮細胞の形質転換に関係する他の任意のタンパク質バイオマーカー(これらに限定されない)を含むセット中の、任意の2種のタンパク質の過剰発現を示す細胞を単離するように設定することができる。
【0018】
一実施形態では、細胞ソーティングで捕捉された細胞から直接、多重PCR増幅を1回実施することにより、個々の高リスクHPV型16、18、31、33、45および/または52を特異的検出し同定するために、配列17〜32の中の任意または全ての配列が使用される。さらに、本請求項では、その後、自動キャピラリー電気泳動法で標的アンプリコンを分離することにより、個々のHPV型が同定される。
【0019】
一実施形態では、細胞ソーティングで捕捉された細胞から多重PCR増幅を1回実施することにより、個々の高リスクHPV型16、18、31、33、45および/または52を特異的に検出し同定するために、蛍光色素を末端に標識した配列1〜16の中の任意または全ての配列が使用される。本請求項では、その後、自動キャピラリー電気泳動法で標的アンプリコンを分離することにより、個々のHPV型が同定される。あるいは、本請求項では、個々のHPV型は、サイズが十分に異なる標的アンプリコンによって表されるので、検出は標準のアガロースゲル電気泳動法で行うことができる。
【0020】
一実施形態では、HPVの検出および同定の感度と特異性は、通常、qPCRで使用する基準に従って最適化されたサーモサイクリングプログラムを使用することにより促進されるが、その場合、≧35サイクルでは、非常に短いインキュベーション時間内に、変性およびアニーリング/伸長をそれぞれ行う2サイクルの工程があるのみである。
【0021】
上記の方法により決定された、タンパク質バイオマーカー表現型対HPV型の行列に基づいて、臨床予後の計画を構築する方法が開示される。この場合、タンパク質バイオマーカー表現型には、具体的には、検出された特定のタンパク質バイオマーカーと、細胞集団におけるそれらの割合(細胞ソーティングプロセスで自動カウントされた陽性ソーティングイベント対陰性ソーティングイベントから決定される)が共に含まれる。上記試験法から得られた個々の臨床検体の複合化されたタンパク質およびHPV型の同定と、病歴からの病理学データが一つに集められ、細かく分類された、試験結果対予想される病気の転帰を示す連想行列が作られる。
【0022】
他の利点および特徴は、添付の図面とともに以下の詳細な説明を読めば明らかになるであろう。
【0023】
開示の方法および装置をより完全に理解するには、添付の図面でより詳細に説明されている実施形態を参照すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、開示の試験法の細胞ソーティング工程を示すフロー図である。
【図2−1】図2は、開示の試験法のPCRおよびキャピラリー電気泳動工程を示すフロー図である。
【図2−2】図2は、開示の試験法のPCRおよびキャピラリー電気泳動工程を示すフロー図である。
【図2−3】図2は、開示の試験法のPCRおよびキャピラリー電気泳動工程を示すフロー図である。
【図2−4】図2は、開示の試験法のPCRおよびキャピラリー電気泳動工程を示すフロー図である。
【図3】図3は、ヒトタンパク質p16INK4aおよびMCM5に対する抗体を用いる免疫蛍光染色法のシグナル強度によってキャラクタライズされた臨床的に正常な子宮頚部細胞を示すグラフである。
【図4】図4は、ヒトタンパク質p16INK4aおよびMCM5に対する抗体を用いる免疫蛍光染色法のシグナル強度によってキャラクタライズされた軽度扁平上皮内病変細胞を示すグラフである。
【図5】図5は、ヒトタンパク質p16INK4aおよびMCM5に対する抗体を用いる免疫蛍光染色法のシグナル強度によってキャラクタライズされた高度扁平上皮内病変細胞を示すグラフである。
【図6】図6は、ヒトタンパク質p16INK4aおよびMCM5に対する抗体を用いる免疫蛍光染色法のシグナル強度によってキャラクタライズされたHeLa細胞を示すグラフである。
【図7】図7は、図3〜6に示した試料について、試料のクラスによるシグナルの種類の割合を示すグラフである。
【図8】図8は、予備分取した細胞からHPVを検出する開示の方法が、高い感度および特異性を有することを示す試験結果である。
【図9−1】図9は、蛍光標識プライマーを用いた多重PCRからの蛍光標識HPVアンプリコンの検出を、自動キャピラリー電気泳動プラットフォームを使用して行うという概念の実証を示す試験結果である。
【図9−2】図9は、蛍光標識プライマーを用いた多重PCRからの蛍光標識HPVアンプリコンの検出を、自動キャピラリー電気泳動プラットフォームを使用して行うという概念の実証を示す試験結果である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図面は必ずしも尺度通りではなく、また、開示した実施形態が、図面で、しかも部分図で説明されていることがあることは理解すべきである。ある場合には、開示した方法および装置を理解するために必ずしも必要ではない詳細、あるいは他の詳細の理解を困難にするような詳細は省略されていることもある。言うまでもなく、本開示が本明細書で説明している特定の実施形態に限定されないことは理解すべきである。
【0026】
臨床的に得られた子宮頚部上皮細胞集団から、タンパク質バイオマーカー表現型と特定のHPV遺伝子型データを共に収集することが可能な、2つの部分からなる試験法を開示する。データは階層的に収集される。形質転換関連多重タンパク質バイオマーカーの存在は、細胞ソーティングのゲーティング基準として作用し、その後、ソーティングで捕捉された細胞から個々のHPV型を検出し同定するのに十分な感度を有するPCRプロトコールが適用される。ワークフローは、常法によりPreservCyt(Cytyc)に固定された細胞を扱うように最適化されており、パップテストが行われた後に保存された試料に残っている残留細胞に対して実施することができる。
【0027】
タンパク質バイオマーカーのデータは、陽性ソーティングイベント対陰性ソーティングイベントをカウントすることにより、細胞集団において比例的に定量化する。したがって、臨床検体のバイオマーカーデータは、全体の染色強度を表す単一の値ではなく、細胞集団の割合を反映する1つの値であり、そこでは、個々の細胞が2種以上のバイオマーカーのそれぞれの閾値強度を超えている。陽性ソーティングイベントに対するゲーティング基準は、使用するタンパク質バイオマーカーに対する所望のシグナル強度の組み合わせとして設定することができる。バイオマーカーは、蛍光標識抗体を使用して固定細胞を免疫染色する従来の方法により検出され、それには、子宮頚部上皮細胞の形質転換に関連することが報告されている、p16INK4a、mcm5などのタンパク質や、他の悪性腫瘍の進行に関連する、PCNA、caPCNA、mcm2などの他のタンパク質(これらに限定されない)が含まれる。ゲーティング基準を満たした細胞は、0.2mlのPCRウェル(個別のチューブか、または96ウェルPCRプレートのいずれか)に直接分取される。
【0028】
HPVの検出および同定は、さらなる試料を調製せず、分取した細胞を直接テンプレートとして用い、さらなる試料は調製しない多重PCR法により行う。この反応では、3つの一般的基準に従って注意深く設計されたプライマー対を使用する。
【0029】
プライマー対は、HPV型の分離株の中で多型であることが知られている位置によって、アニーリングサイトがカバーされないように設計した。各HPV型に対して、GenBankに寄託された、E6および/またはE7遺伝子の配列を含む全ての利用可能な分離株を使用して、それら2つの遺伝子のそれぞれに対して個別の配列アライメントを作成した。仮想的にアミノ酸配列へ変換した後、オープンリーディングフレームのアライメントを行うために、ClustalXなどの配列アライメントツールを使用して、アライメントを行った。ギャップを、アミノ酸の位置の相同のアライメントを最大限保持するように、ギャップを手動で挿入し、その後、DNA版のアライメントされた配列にギャップを挿入した。連続するE6−E7クエリ配列が、プライマー設計用PrimerQuestSM(Integrated DNA Technologies)などのプライマー設計ツールに提示されたなら、HPV型内で多型性を示す配列位置を、「除外領域」として記載し、標識を付した。最適な速度論的特性を有する潜在プライマーサイトの数が限られるときは、プライマーは、5’側半分のプライマー配列でのみ1つの多型サイトをカバーすることが許容した。これにより、3’末端の安定性は維持され、また全体の感度への影響も無視し得るであろう。表4Aおよび4Bに、遺伝子E6およびE7の型内配列(within−type sequence)アライメントを作成するために使用した全HPV配列のGenBankアクセッション番号を示す。最後に、単一のHPV型については、PrimerQuestSMに提示するクエリ配列を、E6の5’末端からE7の3’末端までのウイルスゲノムをカバーする連続したフラグメントから構成した。各HPV型では、このフラグメントを、その型に対して提示された参照用全ゲノム配列から採取した。HPV52では、多型性を検出するための分離株を利用できないので、E7は設計クエリから除外した。それぞれの型で使用した全ゲノム参照配列のGenBankアクセッション番号を、表4Aおよび4Bの各列にトップアクセッション番号として示す。PrimerQuestSMは、各クエリについて50の潜在的プライマー対を返すように指示されているため、最終的な多重プライマーは、HPV型それぞれのアニーリングサイトで配列分岐を最大化するプライマー対を選び取ることによって構築することができた。
【0030】
プライマーは全て、速度論的特性が可能な限り類似するように設計した。T値を、摂氏4度の範囲内に制限し、対応対の2つのプライマーの間では2度以下の差を許容した。プライマー長は22〜25ヌクレオチドの範囲であり、全16中の13が24ヌクレオチドの長さである。(配列17〜32は、単に配列1〜16に18merおよび19merのユニバーサルプライミング配列を付加したものである−下記の本発明の好ましい検出に関する実施形態を参照)。GC%は48%〜54%の範囲である。3’末端安定性のスコアは、PrimerQuestSMで使用のアルゴリズムでは、約3〜7である。配列1〜16が使用される場合、全ての標的アンプリコンは300bp未満である。配列17〜32では、全ての標的アンプリコンは350bp未満である。Platinum PFX(Invitrogen)などの高性能組換DNAポリメラーゼと組み合わせた場合、qPCRで使用するプログラムを模倣する厳密なサーモサイクリングパラメータを使用することができる。この第2の設計の見地は、感度と特異性を同時に高め、多重化した状況において、個々のHPV型を検出し同定するシングルPCRを成功裡に使用することに寄与する。
【0031】
最後に、16、18、31、33、45および52型HPVについて、連続するE6およびE7オープンリーディングフレームの多重配列アライメントを構築した。配列を、再び、Genbankに寄託された参照用全ゲノム配列からHPV型毎に採取した。アライメントを、最初、GeneDoc2.6.002でリーディングフレームを翻訳し、その後、アミノ酸配列のアライメントをClustalXで作成することにより行った。このようにして、全てのギャップがフレームに導入され、進化的に相同な位置はよりアライメントされ易い。その後、ギャップ挿入とGeneDocのスライド機能により、アミノ酸アライメントに合うように、ヌクレオチド配列を手動でアライメントした。各HPV型に対するプライマー対を、6つのアライメントされた全配列の間でアニーリングサイトとの相同領域とを比較することにより選択した。他のHPV型から最も分岐したアニーリングサイトをカバーするプライマー対は、各プライマーの3’末端近辺の配列分岐に特別な注意を払って選択した。同時に、全HPV型に対する標的アンプリコンが互いに少なくとも7bpだけ異なるように、プライマー対を選択した。表2に配列1〜16を、それらの実際のプライマー名および主要な特性と共に示す。表3に、配列17〜32を単にそれらのプライマー名および標的アンプリコン長とともに示す。
【0032】
多重PCRからのアンプリコンの最終的な検出は、GenomeLab GeXP Genetic Analysis System(Beckman Coulter)などの自動パラレルキャピラリー電気泳動プラットフォームを使用して行う。PCRマスターミックスは、ユニバーサルプライマーとして働く2種の蛍光染料標識オリゴヌクレオチドを含有する。これらのオリゴヌクレオチドの配列は、それぞれ、配列17、19、21、23、25、27、29、および31の5’末端に共通の18ヌクレオチド配列と、配列18、20、22、24、26、28、30および32の5’末端に共通の19ヌクレオチド配列に対して相補的である。GenomeLab GeXP Start KitのPCRマスターミックスと共に配列17〜32を使用すると、最初の約3サイクルはHPV型に特異的なプライマーが標的の増幅を支配し、その後、色素標識ユニバーサルプライマーによるプライミング支配へと移行する速度論的交代が可能になる。その後、GenomeLab DNASize Standard Kit−400を使用する標準のフラグメント分析により、検出と分析が行われる。
【0033】
末端に直接蛍光色素を標識した配列1〜16を使用して多重PCRを行い、その後、GenomeLab GeXP Genetic Analysis System(Beckman Coulter)などの自動パラレルキャピラリー電気泳動プラットフォームにより、アンプリコンの検出を行ってもよい。この代替法は、GenomeLab GeXP Start KitのPCRマスターミックスに含まれるユニバーサルプライマーの使用を必要としない。あるいは、アンプリコンは、アガロースゲル電気泳動を用いる標準フラグメントサイズ分析により検出してもよい。ゲル溶解性は、50%Synergel(Diversified Biotech)と、従来の分子生物学グレードのアガロースを組み合わせることにより促進される。Platinum PFX DNA polymerase(Invitrogen)の使用に対して、試験性能は下記のサーモサイクリングプロトコールに従って最適化される:
工程1 95℃で2分間の初期変性/細胞溶解
工程2 95℃で15秒間
工程3 62℃で5秒間
工程4 72℃で5秒間
工程5 工程2へ、39×
工程6 4℃に保持
【0034】
【表2】

【0035】
開始=各HPV型に対するプライマー設計の標的として使用した参照配列内の5’開始位置。逆方向プライマーは、参照配列内のアニーリングサイトが逆の相補体であり、したがって、開始位置は参照配列に対してアニーリングサイトの3’末端となる。ES=末端安定性。PP=ペアペナルティ。PS=生成物サイズ。ESおよびPPはPrimerQuestSM(Integrated DNA Technologies)により報告されている値である。
【0036】
【表3】

【0037】
開始=表2のように、各HPV型に対するプライマー設計の標的として使用した参照配列内の5’開始位置。ユニバーサルプライミング配列を追加すれば、Genome Lab GeXP(Beckman Coulter)を使用して、この試験に標的アンプリコンの自動検出を組み込むことが特に可能となる。
【0038】
【表4】

【0039】
表4Aに示したそれぞれの場合において、先頭に記載したアクセッション番号は、各HPV型の完全なゲノム配列である。それぞれの場合におけるプライマー設計のためのクエリ配列は、完全なゲノム配列内からコピーした、連続したE6〜E7配列である。ClustalXを使用して、ある型内のE6およびE7遺伝子に対して別々のアライメントを作成した。続いて、ある型内の分離株の間で観察された全ての可変サイトを、可能であるものについてはプライマー設計から除外した。可変サイトが避けられない場合は、それらの5’末端近傍の1つ以下の可変サイトをカバーするプライマーを選択した。
【0040】
【表5】

【0041】
表4Bに示したそれぞれの場合において、先頭に記載したアクセッション番号は各HPV型の完全なゲノム配列である。E6およびE7配列の使用、およびアライメントの作成は、表4Aと同様である。HPV52の場合は、遺伝子E6のみが複数の分離株で示されたので、プライマーの設計はE6に限った。
【0042】
p16およびmcm5への免疫染色を使用して、臨床検体から異形成細胞をフローサイトメトリーにより検出する方法を開示する。フローサイトメトリーは、臨床検体の細胞形態学的分類を辿る方法によって、p16およびmcm5の過剰発現に対する二重陽性を検出することができる。正常、LSILおよびHSILとして分類された臨床検体の細胞集団およびHeLa細胞について分析した。図1〜5は全細胞集団についてのフローサイトメトリーの結果を示す。全ての細胞をPreservCyt(Cytyc、90%MeOH/10%H2O)中に固定した。細胞をp16/FITCおよびmcm5/APC抗体と共にインキュベートした。細胞試料を前方/側方散乱ダイヤグラムに基づいてゲートした(図2〜5の左上パネル)。ゲートした細胞のp16およびmcm5の濃度を分析した。デュアルパラメータダイヤグラム(図2〜5の右上パネル)は、いずれかのマーカーに対して陰性または陽性の細胞の割合を示す。それぞれの個別のマーカーに対する陽性細胞の割合は、図2〜5の左下および右下パネルに示されている。各種組織に対し3つの独立した実験を行った。各種組織内で各種シグナルを示す細胞の割合を図6に要約する。
【0043】
図8に、HPV16、HPV18およびHPV45の、高感度で、かつ高特異的な多重PCR検出を示す。3プレックスのPCRプライマー対による原理の証明が示されている。HPV16、HPV18およびHPV45について、それぞれ272bp、247bpおよび80bpのアンプリコンを生成するように、プライマーを設計した。全てのアンプリコンはE6およびE7オープンリーディングフレームの連続領域内に収まる。設計ストラテジーは、非特異的増幅を避けながら、それぞれの型の中で確実な検出を行うことに明確な焦点を置いた。各HPV型において、臨床分離株の間で多型性を検出するために、NCBI Nucleotideデータベースから選択した分離株の、E6およびE7の多重配列アライメントを行った。表4Aおよび4Bは、HPV16、HPV18およびHPV45のアライメントを行うために使用した全ての分離株のGenbankアクセッション番号を含む。PrimerQuestSM(IDT)を使用してプライマーを設計した。この設計アプリケーションは標的配列中の位置を除外することができ、多型サイトのアニーリングへの影響を確実に排除する。プライマー対を、GC%、Tおよび3’末端安定性が可能な限り類似するようにプライマー対を選択し、その結果、多重反応内の別々のHPV型に対して類似の検出感度が得られた。最後に、任意の標的HPV型と他のものの間で大きく分化した、E6〜E7内の位置をカバーするプライマーセットを選択した。表5に、この3プレックスで使用したプライマリー対に対するTおよびアンプリコンサイズを示す。
【0044】
【表6】

【0045】
HPV16、HPV18およびHPV45の統合遺伝子複製物をそれぞれ含有する、HeLa、SiHaおよびMS751の細胞系統を使用して、HPV16/18/45の3プレックスの特異性と感度を試験した。臨床検体がPreservCyt(Cytyc)で固定されている場合に通常行われるように、まず、細胞を90%メタノール中に固定した。細胞を、p16/FITCおよびmcm5/APC抗体と共にインキュベートし、上記のように分取した。分取した細胞の全部を90%メタノールに再度懸濁させた。懸濁液は、1マイクロリットル当たり単一の型の細胞が20個、および1マイクロリットル当たり各型の細胞が20個となるようにした。分取細胞を、1μlの細胞懸濁液アリコットを0.2mlのPCRチューブに加えることにより、PCRテンプレートとして直接使用し、Speed Vac(Savant)中で加熱せずに乾燥させた。PCRマスターミックスのアリコット25μlを乾燥細胞の上に直接加えた。並行して、細胞物質から増幅人工産物を除外するための正のコントロールとして、同一の細胞系統から精製したゲノムDNAを使用して同一セットの増幅を行った。正のコントロール反応は、10ngの1種類のDNA(レーン12〜17)または10ngのそれぞれの種類のDNA(レーン18〜19)を含有するものであった。図7は、HPVの検出が高い特異性および特異性を有することを示す。第1に、約20個の各細胞系統を個別に見ると(レーン4〜9)、3組の多重プライマー対が、HPVの型に対して、それぞれの場合に予想される正しい標的サイズのアンプリコンを生成するのみである。第2に、それらの反応の全てにおいて、ヒトゲノム物質から非特異的に増幅した結果として、設計外のアンプリコンは生成されていない。第3に、3種の細胞系統を全て混合すると、3プレックスは、同じ目視強度を有する3つのHPV型全てを検出することができ、標的の増幅効率は反応中に複数のHPV型が存在しても妨害されないことを示している。精製した細胞系統のゲノムDNAを使用した反応では、同一のアンプリコンセットを生成し、同一の相対強度を示しており、したがって、他の細胞由来の物質が増幅人工産物を生成していることはない。最後に、多数回のサイクルが感度を増加させるか否かを見るために、これらの試験では、40サイクルを繰り返すサーモサイクリングプログラムを使用した。40回のサイクル後でもこれらの明確な結果が得られることは、プライマー設計が強固な特異性を有することを示している。
【0046】
図7では:レーン1、25bpのDNAステップラダー(Promega);レーン2〜3、無テンプレートコントロール−−疑似テンプレートとして1μlのHOを添加した25μlのPCRマスターミックスのアリコット;レーン4〜9各細胞系統に個別に適用した3プレックスのプライマーセットの複製対(各反応は、免疫染色およびソーティングプロセスをパスした約20個の細胞を含む。);レーン10〜11−−3種の細胞系統全ての混合物に適用した3プレックスのプライマーセットの2つの複製物(約20個の各系統の細胞);レーン(12〜19)−−レーン4〜11と同じパターンのテンプレートタイプを再現するために使用した、3種の細胞系統から精製したゲノムDNA;単一種類の細胞の反応(レーン12〜17)は各細胞系統からのゲノムDNAを10ng含有したが、レーン18および19は、10ngの各DNAタイプの混合テンプレートから増幅した2つの複製物を示す。ゲルは1×のTAE中に1.25%のアガロース、1.25%のSynergel(Diversified Biotech)を加えたものである。分離は70Vで約30分間行った。ゲルを臭化エチジウムでポストステインした。
【0047】
キャピラリー電気泳動プラットフォームによるアンプリコン検出原理の証明が、同じ3プレックスのプライマーにユニバーサルプライマーの相補的配列を付加したキメラ版を使用して示されている。これらのキメラ型プライマーは請求項1の配列17、18、21、22、29および30に対応する。これらのプライマーは、HeLa、SiHaおよびMS751細胞から精製した、溶液1μl当たり各10ngのDNA混合物からなるテンプレートを標的とした。増幅は、キメラ型プライマーの5’末端に相補的な、順方向および逆方向のユニバーサルプライマーを含むGenomeLab GeXP Start Kit(Beckman Coulter,Inc.)に含まれる5×PCR緩衝溶液を使用して行った。逆方向ユニバーサルプライマーは、5’末端にWellRED D4、すなわち、670nmに放射ピークを有する近赤外蛍光色素を標識している。陽性の検出試行と、テンプレートDNAの代わりに水を加えた無テンプレートコントロール条件の両方用に、3回の複製反応を実施した。3相のサーマルサイクリングプログラムを使用して、このPCRの化学を利用するときにシーケンシャルに行う3つの異なるアニーリング条件を決定した(3つのアニーリングイベントの説明については図2の左側を参照)。サーマルサイクリングプログラムは以下の通りである:
1 95℃で10分間
2 94℃で15秒間
3 65℃で20秒間
4 72℃で30秒間
5 2へ。2×
6 94℃で15秒間
7 72℃で1分間
8 6へ。4×
9 94℃で30秒間
10 55℃で30秒間
11 70℃で1分間
12 9へ。34×
13 4℃に保持
サーマルサイクリングに続いて、0.5μlのPCR反応物に39μlのGeXP Sample Loading Solution(Beckman Coulter,Inc.)および0.5μlのDNA Size Standard−400(Beckman Coulter,Inc.)を加えることにより、フラグメント分析用の試料を生成した。陽性の検出試行と無テンプレートコントロールの両者の各複製物用として、フラグメント分離試料を調製した。フラグメントの分離と検出は、GenomeLab GeXP Genetic Analysis System用の装置制御ソフトウェアに収録の「Frag−3」メソッドを使用して行った。図9は、検出が成功した電気泳動図のピークを示しており、これらのピークはHPV16、18および45について予想されたアンプリコンサイズに特有のものである。3つのピークの全ては無テンプレートコントロールでは出現しない。
【0048】
若干の実施形態についてのみ記載してきたが、当業者であれば上の記載から代替および修正を行い得ることは明らかであろう。これらと他の代替は等価であり、本開示の精神と範囲の中にあると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
子宮頚部細胞試料における高リスクHPV遺伝子型の検出方法であって、
子宮洗浄またはパップテストから前記試料を収集する工程;
前記試料の細胞を多重バイオマーカーを標的とする蛍光標識抗体により固定する工程;
1種以下のバイオマーカーが陽性の細胞から、多重バイオマーカー陽性細胞を分離する工程;
前記多重バイオマーカー陽性細胞にポリメラーゼ連鎖反応(PCR)マスターミックスを適用する工程であって、前記マスターミックスは複数のPCRプライマーを含み、前記PCRプライマーは、16、18、31、33、45および53からなる群から選択される少なくとも1種のHPV型の遺伝子E6およびE7の少なくとも1方の型内配列(within−type sequence)を形成するオリゴヌクレオチド配列を含む工程;
1回の多重PCR増幅を実施して、複数の増幅末端標識アンプリコンを生成する工程;および
電気泳動法により、前記複数の増幅末端標識アンプリコンのHPV型を同定する工程
を含む方法。
【請求項2】
前記オリゴヌクレオチド配列が、
配列1 TGGACCGGTCGATGTATGTCTTGT
配列2 TACGCACAACCGAAGCGTAGAGTC

配列3 AGTGTGACTCTACGCTTCGGTTGT
配列4 GTGTGCCCATTAACAGGTCTTCCA

配列5 ACTATAGAGGCCAGTGCCATTCGT
配列6 TCGTCGGGCTGGTAAATGTTGATG

配列7 CATCAACATTTACCAGCCCGACGA
配列8 AAACAGCTGCTGGAATGCTCGAAG

配列9 AACATAGGAGGAAGGTGGACAGGA
配列10 GTGTGCTCTGTACACACAAACGAAG

配列11 GAGGACACAAGCCAACGTTAAAGG
配列12 GGTTCGTAGGTCACTTGCTGTACT

配列13 GACAGTACCGAGGGCAGTGTAATA
配列14 TACTTGTGTTTCCCTACGTCTGCGA

配列15 GCGTGTGTATTATGTGCCTACGCT
配列16 TTACACTTGGGTCACAGGTCGG

配列17 AGGTGACACTATAGAATATGGACCGGTCGATGTATGTCTTGT
配列18 GTACGACTCACTATAGGGATACGCACAACCGAAGCGTAGAGTC

配列19 AGGTGACACTATAGAATAAGTGTGACTCTACGCTTCGGTTGT
配列20 GTACGACTCACTATAGGGAGTGTGCCCATTAACAGGTCTTCCA

配列21 AGGTGACACTATAGAATAACTATAGAGGCCAGTGCCATTCGT
配列22 GTACGACTCACTATAGGGATCGTCGGGCTGGTAAATGTTGATG

配列23 AGGTGACACTATAGAATACATCAACATTTACCAGCCCGACGA
配列24 GTACGACTCACTATAGGGAAAACAGCTGCTGGAATGCTCGAAG

配列25 AGGTGACACTATAGAATAAACATAGGAGGAAGGTGGACAGGA
配列26 GTACGACTCACTATAGGGAGTGTGCTCTGTACACACAAACGAAG

配列27 AGGTGACACTATAGAATAGAGGACACAAGCCAACGTTAAAGG
配列28 GTACGACTCACTATAGGGAGGTTCGTAGGTCACTTGCTGTACT

配列29 AGGTGACACTATAGAATAGACAGTACCGAGGGCAGTGTAATA
配列30 GTACGACTCACTATAGGGATACTTGTGTTTCCCTACGTCTGCGA

配列31 AGGTGACACTATAGAATAGCGTGTGTATTATGTGCCTACGCT
配列32 GTACGACTCACTATAGGGATTACACTTGGGTCACAGGTCGG
およびこれらの逆方向相補配列からなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記オリゴヌクレオチド配列が、
配列1 TGGACCGGTCGATGTATGTCTTGT
配列2 TACGCACAACCGAAGCGTAGAGTC

配列3 AGTGTGACTCTACGCTTCGGTTGT
配列4 GTGTGCCCATTAACAGGTCTTCCA

配列5 ACTATAGAGGCCAGTGCCATTCGT
配列6 TCGTCGGGCTGGTAAATGTTGATG

配列7 CATCAACATTTACCAGCCCGACGA
配列8 AAACAGCTGCTGGAATGCTCGAAG

配列9 AACATAGGAGGAAGGTGGACAGGA
配列10 GTGTGCTCTGTACACACAAACGAAG

配列11 GAGGACACAAGCCAACGTTAAAGG
配列12 GGTTCGTAGGTCACTTGCTGTACT

配列13 GACAGTACCGAGGGCAGTGTAATA
配列14 TACTTGTGTTTCCCTACGTCTGCGA

配列15 GCGTGTGTATTATGTGCCTACGCT
配列16 TTACACTTGGGTCACAGGTCGG
およびこれらの逆方向相補配列からなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記オリゴヌクレオチド配列が、
配列17 AGGTGACACTATAGAATATGGACCGGTCGATGTATGTCTTGT
配列18 GTACGACTCACTATAGGGATACGCACAACCGAAGCGTAGAGTC

配列19 AGGTGACACTATAGAATAAGTGTGACTCTACGCTTCGGTTGT
配列20 GTACGACTCACTATAGGGAGTGTGCCCATTAACAGGTCTTCCA

配列21 AGGTGACACTATAGAATAACTATAGAGGCCAGTGCCATTCGT
配列22 GTACGACTCACTATAGGGATCGTCGGGCTGGTAAATGTTGATG

配列23 AGGTGACACTATAGAATACATCAACATTTACCAGCCCGACGA
配列24 GTACGACTCACTATAGGGAAAACAGCTGCTGGAATGCTCGAAG

配列25 AGGTGACACTATAGAATAAACATAGGAGGAAGGTGGACAGGA
配列26 GTACGACTCACTATAGGGAGTGTGCTCTGTACACACAAACGAAG

配列27 AGGTGACACTATAGAATAGAGGACACAAGCCAACGTTAAAGG
配列28 GTACGACTCACTATAGGGAGGTTCGTAGGTCACTTGCTGTACT

配列29 AGGTGACACTATAGAATAGACAGTACCGAGGGCAGTGTAATA
配列30 GTACGACTCACTATAGGGATACTTGTGTTTCCCTACGTCTGCGA

配列31 AGGTGACACTATAGAATAGCGTGTGTATTATGTGCCTACGCT
配列32 GTACGACTCACTATAGGGATTACACTTGGGTCACAGGTCGG
およびこれらの逆方向相補配列からなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記多重バイオマーカー陽性細胞の分離工程が、p16INK4a、mcm5、および子宮頚部上皮細胞形質転換に関連する他の任意のタンパク質バイオマーカーからなる群から選択される任意の2種のタンパク質の過剰表現を示す細胞の分離を含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記電気泳動法が、ゲル電気泳動法である請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記電気泳動法が、キャピラリー電気泳動法である請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記増幅末端標識アンプリコンのサーモサイクリング工程をさらに含む請求項1に記載の方法であって、前記サーモサイクリング工程が複数回の繰り返しサイクルを含み、各サイクルが変性工程およびアニーリング/伸長工程を含む方法。
【請求項9】
前記サーモサイクリング工程が、約35回未満のサイクルを含む請求項8に記載の方法。
【請求項10】
1回の多重PCRを実施して、複数の増幅末端標識アンプリコンを生成する前記工程が、変性HPVプライマーによる予備増幅を行わずに実施される請求項1に記載の方法。
【請求項11】
細胞ソーティングで使用される前記蛍光標識抗体が、形質転換、癌の発生、癌の進行、または癌の浸潤と機能的関係を有することが知られている、EGFR1、VEGF、HIF−1α、IGFBP−3、P−カドヘリン、MCM7、p16INK4aまたはMCM5など(これらに限定されない)の2種以上のタンパク質バイオマーカーに向けられる請求項1に記載の方法。
【請求項12】
16、18、31、45および53からなる群から選択される少なくとも1種のHPV型の遺伝子E6およびE7の少なくとも一方の型内配列(within−type sequence)を生成するオリゴヌクレオチド配列であって、
配列1 TGGACCGGTCGATGTATGTCTTGT
配列2 TACGCACAACCGAAGCGTAGAGTC

配列3 AGTGTGACTCTACGCTTCGGTTGT
配列4 GTGTGCCCATTAACAGGTCTTCCA

配列5 ACTATAGAGGCCAGTGCCATTCGT
配列6 TCGTCGGGCTGGTAAATGTTGATG

配列7 CATCAACATTTACCAGCCCGACGA
配列8 AAACAGCTGCTGGAATGCTCGAAG

配列9 AACATAGGAGGAAGGTGGACAGGA
配列10 GTGTGCTCTGTACACACAAACGAAG

配列11 GAGGACACAAGCCAACGTTAAAGG
配列12 GGTTCGTAGGTCACTTGCTGTACT

配列13 GACAGTACCGAGGGCAGTGTAATA
配列14 TACTTGTGTTTCCCTACGTCTGCGA

配列15 GCGTGTGTATTATGTGCCTACGCT
配列16 TTACACTTGGGTCACAGGTCGG

配列17 AGGTGACACTATAGAATATGGACCGGTCGATGTATGTCTTGT
配列18 GTACGACTCACTATAGGGATACGCACAACCGAAGCGTAGAGTC

配列19 AGGTGACACTATAGAATAAGTGTGACTCTACGCTTCGGTTGT
配列20 GTACGACTCACTATAGGGAGTGTGCCCATTAACAGGTCTTCCA

配列21 AGGTGACACTATAGAATAACTATAGAGGCCAGTGCCATTCGT
配列22 GTACGACTCACTATAGGGATCGTCGGGCTGGTAAATGTTGATG

配列23 AGGTGACACTATAGAATACATCAACATTTACCAGCCCGACGA
配列24 GTACGACTCACTATAGGGAAAACAGCTGCTGGAATGCTCGAAG

配列25 AGGTGACACTATAGAATAAACATAGGAGGAAGGTGGACAGGA
配列26 GTACGACTCACTATAGGGAGTGTGCTCTGTACACACAAACGAAG

配列27 AGGTGACACTATAGAATAGAGGACACAAGCCAACGTTAAAGG
配列28 GTACGACTCACTATAGGGAGGTTCGTAGGTCACTTGCTGTACT

配列29 AGGTGACACTATAGAATAGACAGTACCGAGGGCAGTGTAATA
配列30 GTACGACTCACTATAGGGATACTTGTGTTTCCCTACGTCTGCGA

配列31 AGGTGACACTATAGAATAGCGTGTGTATTATGTGCCTACGCT
配列32 GTACGACTCACTATAGGGATTACACTTGGGTCACAGGTCGG

およびこれらの逆方向相補配列からなる群から選択されるオリゴヌクレオチド配列。
【請求項12】
請求項11のオリゴヌクレオチド配列を含むPCRプライマー。
【請求項13】
請求項12の少なくとも1種のPCRプライマーを含むPCRマスターミックス。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図2−3】
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【図2−4】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【公表番号】特表2013−521000(P2013−521000A)
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−556262(P2012−556262)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【国際出願番号】PCT/US2011/027181
【国際公開番号】WO2011/109705
【国際公開日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(598063203)パーデュー・リサーチ・ファウンデーション (59)
【氏名又は名称原語表記】PURDUE RESEARCH FOUNDATION
【Fターム(参考)】