説明

フローサイトメータ

【課題】測定対象物の配向率をより向上させることが可能なフローサイトメータを提供する。
【解決手段】この検出部21(フローサイトメータ)は、試料管60と、試料管60の下流に配置され、第1流路91を有するフローセル90と、第1流路91に通じる第2流路70aを有し、第2流路70a内に試料管60を配置した試料管収容部70と、試料管60に測定試料を供給する測定試料供給部27と、試料管収容部70の第2流路70aにシース液を供給するシース液供給部28と、を備え、試料管収容部70は、少なくとも一部に、第1流路91に向かうにつれて第2流路70aが狭くなる絞り部80を含み、絞り部80は、測定試料の流通方向と直交する流路の横断面のアスペクト比が1よりも大きい下流側絞り部82を有し、試料管60の下流側の先端62は、絞り部80の下流側絞り部82に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フローサイトメータに関し、特に、測定対象物を流通させるフローセルを備えたフローサイトメータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、測定対象物を流通させるフローセルを備えたフローサイトメータが知られている。具体的には、細胞、粒子などの測定対象物をフローセルに流し、フローセルを流れる測定対象物を撮像するフローサイトメータや、フローセルを流れる測定対象物に照射した光を検出するフローサイトメータが知られている。得られた測定対象物の撮像画像や光学情報を解析することにより、測定対象物の分析が行われる。このようなフローサイトメータにおいて、測定対象物が非対称の扁平形状などの場合、撮像方向または光照射方向に応じてフローセルを流れる測定対象物の向きを一定にする(配向させる)ことが高精度な分析結果を得るために必要となる。このため、従来、測定対象物の向きを一定にする構造を有するフローサイトメータが知られている(例えば、特許文献1および非特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1に記載のフローサイトメータは、フィンまたは円筒ロッドを用いてシース液を分割し、測定対象物を供給するサンプルチューブ(試料管)の出口付近で測定対象物の流れを分割したシース流で挟み込むように合流させることにより、測定対象物の向きを一定にしている。
【0004】
また、上記非特許文献1には、シース液で包まれた細胞浮遊液の流れを絞っていく過程で細胞の向きを一定にする技術が開示されている。具体的には、縦と横とで絞りの比率が異なる矩形断面のノズルや、円形から楕円形に絞る断面形状のノズルなどを用いてノズルを流れる細胞に回転モーメントを働かせることによって、細胞の向きを一定にすることが開示されている。また、上記非特許文献1には、サンプル管の先端形状をくさび形にすることにより、サンプル管の出口において細胞浮遊液がシース液に包まれる段階で細胞の向きを一定にすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第4988619号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】天神美夫、高橋学、野村和弘編、「フローサイトメトリーハンドブック」、株式会社サイエンスフォーラム、1984年11月30日発刊、p.398−403
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に記載のフローサイトメータでは、シース液を分割し、合流させているため、シース液およびシース液に包まれる測定対象物の流れに乱れが生じるという問題点があった。測定対象物の流れに乱れが生じると、測定対象物の向きがばらつくため、測定対象物の分析精度が低下してしまう。一方、上記非特許文献1に記載の技術では、例えば患者から採取された上皮細胞を測定するような場合には、様々な形状の細胞が含まれているので、十分に高い割合で測定対象物を配向させることが困難であった。そのため、更に高い割合で測定対象物の向きを一定に揃えること(測定対象物の配向率の更なる向上)が望まれている。
【0008】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、本発明の1つの目的は、測定対象物の配向率をより向上させることが可能なフローサイトメータを提供することである。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0009】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面によるフローサイトメータは、測定対象物を含む測定試料を通過させる試料管と、試料管の下流に配置され、第1流路を内部に有するフローセルと、試料管の外径よりも内径が大きく第1流路に通じる第2流路を内部に有し、第2流路内に試料管を配置した試料管収容部と、試料管に測定試料を供給する測定試料供給部と、試料管収容部の第2流路にシース液を供給するシース液供給部と、を備え、試料管収容部は、少なくとも一部に、第1流路に向かうにつれて第2流路が狭くなる絞り部を含み、絞り部は、測定試料の流通方向と直交する流路の横断面のアスペクト比が1よりも大きい第1絞り部を有し、試料管の下流側先端は、絞り部の第1絞り部に配置されている。
【0010】
この発明の一の局面によるフローサイトメータでは、上記のように、試料管収容部の少なくとも一部に、第1流路に向かうにつれて第2流路が狭くなる絞り部を設けるとともに、絞り部に、測定試料の流通方向と直交する流路の横断面のアスペクト比が1よりも大きい第1絞り部を設け、試料管の下流側先端を絞り部の第1絞り部に配置することによって、第1絞り部における第2流路の絞りの勾配を流路の横断面の短手方向側よりも長手方向側で大きくすることができる。このため、第1絞り部におけるシース流は、流路断面の長手方向両側が短手方向両側と比べて相対的に高圧になる。この第1絞り部に試料管の下流側先端が配置されるので、測定対象物を含む測定試料がシース流中に供給されると、第1絞り部の流路断面の長手方向両側からの内向きの力が測定対象物を挟み込むように作用し、測定対象物が一定方向に配向される。これにより、測定対象物の配向率をより向上させることができる。なお、配向率とは、例えば扁平な面とその外周部分である側面とからなる扁平細胞を測定する場合に、測定対象となった扁平細胞の総数に対して、扁平な面が一定方向に向いている上皮細胞の数の割合を指す。
【0011】
上記一の局面によるフローサイトメータにおいて、好ましくは、試料管の下流側先端の外側には、互いに対向し、先端に向かうにつれて両者の距離が小さくなる2つの傾斜面部が形成されており、2つの傾斜面部が絞り部の第1絞り部の横断面における短手方向と略平行である。このように構成すれば、試料管の周囲のシース流を2つの傾斜面部に沿わせることにより、試料管から供給される測定試料の試料流を第1絞り部の横断面における短手方向に沿った平坦な流れにすることができる。これにより、平坦な試料流の両面を長手方向の両側からシース流で挟み込むことができるので、第1絞り部における長手方向両側からの力を測定対象物に効果的に作用させて、測定対象物の配向率をより一層向上させることができる。
【0012】
上記一の局面によるフローサイトメータにおいて、好ましくは、絞り部の出口における第2流路の横断面は円形である。このように構成すれば、測定対象物を含む試料流およびシース流が絞り部から流出する際に乱流が発生するのを抑制することができるので、一定方向に配向させた測定対象物の向きが乱れるのを抑制することができる。
【0013】
上記一の局面によるフローサイトメータにおいて、好ましくは、第1流路は、横断面のアスペクト比が1より大きい形状であり、第2流路の第1絞り部の横断面の短手方向と第1流路の横断面の長手方向とが、略平行である。このように構成すれば、測定対象物が扁平形状の場合、第1絞り部では横断面の長手方向内向きの力によって扁平な測定対象物の長手側が第1絞り部の短手方向に沿うように配向するため、フローセルの第1流路の横断面の長手方向が配向した測定対象物の長手方向に一致する。これにより、第1流路の長手および短手方向のそれぞれを、配向した測定対象物の長手および短手方向に一致させることができるため、第1絞り部で配向された測定対象物の向きが変化するのを効果的に抑制することができる。
【0014】
上記試料管に2つの傾斜面部が形成される構成において、好ましくは、試料管の下流側先端の2つの傾斜面部は平坦面である。このように構成すれば、傾斜面部を容易に形成することができる。
【0015】
上記一の局面によるフローサイトメータにおいて、好ましくは、第1絞り部において試料管の下流側先端が配置された位置の流路の横断面のアスペクト比が1.2以上である。このように構成すれば、第1絞り部において、流路の横断面の長手方向両側と短手方向両側との圧力差をより大きくすることができるので、測定対象物の配向率をさらに向上させることができる。
【0016】
上記一の局面によるフローサイトメータにおいて、好ましくは、第1絞り部において試料管の下流側先端が配置された位置の流路の横断面の形状は、長手方向および短手方向に、それぞれ中心線対称である。このように構成すれば、第1絞り部において、流路の横断面の長手方向両側の圧力を略等しくすることができるとともに、流路の横断面の短手方向両側の圧力を略等しくすることができる。これにより、測定対象物に作用する内向きの力を長手方向の両側および短手方向の両側でそれぞれ略等しくして、測定対象物を精度よく配向させることができる。
【0017】
この場合において、好ましくは、第1絞り部において試料管の下流側先端が配置された位置の流路の横断面の形状は、長円形、楕円形または長方形である。このように構成すれば、長手方向および短手方向にそれぞれ中心線対称となる流路の横断面形状を容易に得ることができる。
【0018】
上記一の局面によるフローサイトメータにおいて、好ましくは、絞り部は、略円錐形状の第2絞り部をさらに有し、第1絞り部は、円錐形状の第2絞り部の途中部分から連続するように形成されている。このように構成すれば、円錐形状の第2絞り部を介してアスペクト比が1より大きい第1絞り部へとつなげることにより、流路を滑らかに絞ることができる。これにより、シース流が絞り部へと流入する際に乱流が発生するのを抑制することができる。
【0019】
この場合において、好ましくは、第1絞り部は、第2絞り部の横断面の一部と第1絞り部の横断面の一部とが結合した横断面形状を有する第1部分と、第1部分の下流側で第1絞り部の横断面のみからなる横断面形状を有する第2部分とを有し、絞り部は、第2絞り部と、第1絞り部の第1部分と、第2部分とが滑らかに連続するように形成されている。このように構成すれば、第2絞り部の横断面の一部と第1絞り部の横断面の一部とが結合した横断面形状を有する第1部分を形成して第1絞り部の横断面のみからなる横断面形状を有する第2部分へとつなげることにより、円錐形状の第2絞り部からアスペクト比が1より大きい第1絞り部(第2部分)に至る流路を、第1部分を介して連続的に滑らかにつなぐことができる。
【0020】
上記絞り部の出口における第2流路の横断面が円形である構成において、好ましくは、第1流路と、第2流路の絞り部の出口とを接続するとともに、第1流路に向かって流路が狭くなる略円錐形状の接続流路部をさらに備える。このように構成すれば、絞り部の出口からフローセルの第1流路に至る流路の横断面形状の変化を滑らかにすることができるので、試料流が第2流路から第1流路に流入する際に乱流が発生するのを抑制することができる。
【0021】
上記一の局面によるフローサイトメータにおいて、好ましくは、絞り部の第1絞り部の横断面における長手方向と平行な方向から、フローセルの第1流路を流れる測定対象物を撮像する撮像部をさらに備える。このように構成すれば、測定対象物が扁平形状の場合、第1絞り部では流路の横断面の長手方向内向きの力によって扁平な測定対象物の長手側が流路の横断面の短手方向に沿うように配向するため、扁平な測定対象物に対して正面側から撮像を行うことができる。
【0022】
上記一の局面によるフローサイトメータにおいて、好ましくは、絞り部の第1絞り部の横断面における長手方向と直交する方向から、フローセルの第1流路を流れる測定対象物から生じた前方散乱光を検出する散乱光検出部をさらに備える。
【0023】
上記一の局面によるフローサイトメータにおいて、好ましくは、絞り部の第1絞り部の横断面における長手方向と平行な方向から、フローセルの第1流路を流れる測定対象物から生じた蛍光を検出する蛍光検出部をさらに備える。
【0024】
上記一の局面によるフローサイトメータにおいて、好ましくは、測定対象物は、扁平上皮細胞である。本発明によれば、このような扁平上皮細胞を一定方向に配向させることができ、その結果、扁平上皮細胞の向きによって測定データがばらつくのを低減することができる。このため、本発明は、扁平上皮細胞を測定対象物とする場合に特に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態による検出部を用いた細胞分析装置の全体構成を示した斜視図である。
【図2】図1に示した細胞分析装置の測定装置の構成を示したブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態による検出部の構成を示した模式図である。
【図4】図3に示した検出部のフローセルユニットの構造を示した縦断面図である。
【図5】図4に示したフローセルユニットの試料管を示した斜視図である。
【図6】図5に示した試料管の下流側端部周辺の側面図である。
【図7】図5に示した試料管の下流側端部周辺の平面図である。
【図8】図4に示したフローセルユニットの試料管収容部の構造を説明するための斜視図である。
【図9】図4の101−101線に沿った試料管収容部(第2流路)の横断面図である。
【図10】図4の102−102線に沿った試料管収容部(第2流路)の横断面図である。
【図11】図4の103−103線に沿った試料管収容部(第2流路)の横断面図である。
【図12】図4の104−104線に沿った試料管収容部(第2流路)の横断面図である。
【図13】図4の105−105線に沿った試料管収容部(第2流路)の横断面図である。
【図14】図13に示した横断面図の拡大図である。
【図15】扁平上皮細胞の正面側からレーザ光を照射した場合の信号波形を説明するための図である。
【図16】扁平上皮細胞の側面側からレーザ光を照射した場合の信号波形を説明するための図である。
【図17】本発明の実施例1によるフローセルユニットの内部構造を示す斜視図である。
【図18】本発明の実施例2によるフローセルユニットの内部構造を示す斜視図である。
【図19】比較例によるフローセルユニットの内部構造を示す斜視図である。
【図20】実施例1、2および比較例のそれぞれの配向率の測定結果を示したグラフである。
【図21】本発明の一実施形態による検出部のフローセルユニットに用いる試料管の変形例を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0027】
まず、図1〜図16を参照して、本発明の一実施形態による細胞分析装置1の構成について説明する。本実施形態では、本発明のフローサイトメータを細胞分析装置1の測定装置2の検出部21に適用した例について説明する。
【0028】
細胞分析装置1は、患者から採取した細胞を含む測定試料をフローセルに流し、フローセルを流れる測定試料にレーザ光を照射する。そして、測定試料からの光(前方散乱光、側方蛍光など)を検出するとともに、光が照射された細胞の画像を撮像する。そして検出された光信号や撮像画像を分析することにより、細胞のDNA量に異常があるか否か等を判断する。より具体的には、細胞分析装置1は、子宮頸部の上皮細胞(扁平上皮細胞)を分析対象としており、子宮頸癌をスクリーニングするのに用いられる。
【0029】
図1に示すように、細胞分析装置1は、被検者から採取された生体試料に細胞分散処理や染色処理などを行って調製された測定試料に対して光学測定を行う測定装置2と、測定装置2での測定結果の分析などを行うデータ処理装置4とを備えている。データ処理装置4は、例えばPC(パーソナルコンピュータ)からなり、本体41と、表示部42と、入力部43とから主に構成されている。データ処理装置4には、測定装置2への動作命令の送信、測定装置2で行った測定結果の受信および分析処理、並びに、処理した分析結果および撮像画像の表示などを行うための操作プログラムがインストールされている。
【0030】
図2に示すように、測定装置2は、検出部21と、信号処理部22と、測定制御部23と、撮像部24と、モータ、アクチュエータおよびバルブなどの駆動部25と、各種センサ26と、測定試料供給部27(図3参照)およびシース液供給部28(図3参照)を含む流体回路部とを備えている。
【0031】
検出部21は、測定試料から測定対象細胞(子宮頸部の扁平上皮細胞)の数やその核のDNA量およびサイズなどを反映した光学情報を検出するフローサイトメータからなる。検出部21は、図3に示すように、半導体レーザからなる第1光源51と、フォトダイオードからなる前方散乱光受光部52と、フォトマルチプライヤ(光電子増倍管)からなる側方散乱光受光部53および側方蛍光受光部54と、フローセル90を有するフローセルユニット55とを主として備えている。なお、前方散乱光受光部52および側方蛍光受光部54は、本発明の「散乱光検出部」および「蛍光検出部」の一例である。
【0032】
図2に示すように、信号処理部22は、検出部21からの出力信号に対して増幅やA/D変換、フィルタ処理などの必要な信号処理を行う各種信号処理回路からなる。また、測定制御部23は、マイクロプロセッサ31と、記憶部32と、外部通信コントローラ33と、I/Oコントローラ34と、センサ信号処理部35と、駆動部制御ドライバ36とを含んでいる。記憶部32は、検出部21などの制御プログラムやデータを格納するROM、および、RAMなどからなる。
【0033】
マイクロプロセッサ31は、外部通信コントローラ33を介して、データ処理装置4に接続されている。これにより、データ処理装置4と各種データを送受信することが可能である。また、マイクロプロセッサ31には、センサ26からの信号がセンサ信号処理部35およびI/Oコントローラ34を介して伝達される。マイクロプロセッサ31は、センサ26からの信号に基づき、I/Oコントローラ34および駆動部制御ドライバ36を介して駆動部25の駆動制御を行う。駆動部25により、測定試料供給部27およびシース液供給部28からそれぞれ測定試料およびシース液を検出部21のフローセルユニット55に供給することが可能である。
【0034】
また、撮像部24は、図3に示すように、パルスレーザからなる第2光源56とCCDカメラ57とを備えている。撮像部24は、フローセルユニット55のフローセル90を流れる測定試料中の測定対象細胞の撮像画像を取得するように構成されている。
【0035】
測定試料供給部27は、測定試料の吸引を行うための吸引ピペットおよび定量供給を行うためのシリンジポンプなどを含む流体回路からなる。また、シース液供給部28は、シース液容器に接続されたシース液貯留チャンバなどを含む流体回路である。測定試料供給部27およびシース液供給部28は、それぞれ検出部21のフローセルユニット55に流体的に接続されている。
【0036】
なお、測定試料は、被験者の子宮頸部の上皮細胞を含む生体試料に濃縮、希釈、攪拌および染色処理などの公知の前処理が施されることにより調製される。染色処理は、色素を含む蛍光染色液であるヨウ化プロピジウム(PI)により行われる。PI染色では細胞内の核に選択的に染色が施されることにより、核からの蛍光が検出可能となる。調製された測定試料は、試験管に収容されて細胞分析装置1にセットされ、吸引ピペットにより測定試料供給部27に吸引されシリンジポンプによりフローセルユニット55に定量供給される。
【0037】
次に、検出部21および撮像部24の構成について具体的に説明する。
【0038】
図3に示すように、検出部21の第1光源51は、フローセルユニット55のフローセル90を流れる測定試料にレーザ光を照射するように構成されている。第1光源51のレーザ光はDR1方向に出射され、レンズ系58aを経て測定試料に集光される。レンズ系58aは、コリメータレンズ、シリンダーレンズ、コンデンサレンズ等を含むレンズ群から構成されている。
【0039】
レーザ光により測定試料中の細胞から生じた前方散乱光は、対物レンズ58bおよびフィルタ58cを経て光軸方向(DR1方向)奥側に配置された前方散乱光受光部52により検出される。
【0040】
また、細胞から生じた側方蛍光および側方散乱光は、フローセル90に対して光軸(DR1方向)と直交する側方(DR2方向)に配置された対物レンズ58dを経てダイクロイックミラー58eに入射する。そして、このダイクロイックミラー58eを反射した側方蛍光および側方散乱光は、ダイクロイックミラー58fに入射する。側方蛍光は、ダイクロイックミラー58fを透過し、フィルタ58gを経て側方蛍光受光部54によって検出される。また、側方散乱光は、ダイクロイックミラー58fにより反射され、フィルタ58hを経て側方散乱光受光部53によって検出される。
【0041】
前方散乱光受光部52、側方散乱光受光部53および側方蛍光受光部54は、受光した光信号を電気信号に変換して、それぞれ、前方散乱光信号(FSC)、側方散乱光信号(SSC)および側方蛍光信号(SFL)を出力する。これらの出力信号は測定装置2の信号処理部22(図2参照)に送られる。測定装置2の信号処理部22では、出力信号に対して所定の信号処理が施され、FSCデータ、SSCデータおよびSFLデータが取得される。また、測定制御部23(マイクロプロセッサ31)では、得られた各データ(FSC、SSC、SFL)に基づいて、前方散乱光強度やパルス幅、側方散乱光のパルス幅、側方蛍光強度などの各種の特徴パラメータが取得される。取得された各データ(FSCデータ、SSCデータおよびSFLデータおよび特徴パラメータ)は、それぞれ、マイクロプロセッサ31によって外部通信コントローラ33を介してデータ処理装置4に送信される。
【0042】
なお、データ処理装置4は、操作プログラムを実行することにより、各データ(FSCデータ、SSCデータおよびSFLデータおよび特徴パラメータ)に基づいて、測定試料中の粒子の弁別処理を行い、測定対象細胞(上皮細胞)が異常であるか否か、具体的にはDNA量の異常な細胞であるか否かを判定するとともに、細胞や核を分析するための頻度分布データを作成する。
【0043】
図3に示すように、撮像部24の第2光源56のパルスレーザ光は、第1光源51からのレーザ光軸(DR1方向)に略直交したDR2方向からフローセル90に入射するよう設けられている。第2光源56からの光は、レンズ系58iを経てフローセル90を流れる測定試料に照射され、対物レンズ58dおよびダイクロイックミラー58eを透過して、光軸方向(DR2方向)奥側のCCDカメラ57に結像するように構成されている。
【0044】
CCDカメラ57により撮像された撮像画像は、マイクロプロセッサ31によって外部通信コントローラ33を介してデータ処理装置4に送信される。撮像画像は、その細胞の前方散乱光データ(FSC)、側方散乱光データ(SSC)および側方蛍光データ(SFL)に基づいて求められた特徴パラメータに対応づけてデータ処理装置4に内蔵された記憶装置(図示せず)に記憶される。
【0045】
次に、検出部21のフローセルユニット55の構造について詳細に説明する。
【0046】
図4に示すように、フローセルユニット55は、試料管60と、試料管収容部70と、第1流路91が形成されたフローセル90とを主として含んでいる。
【0047】
試料管60は、測定対象の扁平上皮細胞を含んだ測定試料を通過させてフローセル90に供給する円筒状の管である。試料管60は、上流側(矢印C2方向)端部に設けられた接続部材60aを介して測定試料供給部27と流体的に接続している。図5〜図7に示すように、試料管60の外径はd1であり、試料管60は内径(流路径)d2の試料流路を有する。試料管60は、先細形状に形成された下流側端部61の先端62の開口62aから測定試料を吐出するように構成されている。なお、先端62は、本発明の「下流側先端」の一例である。
【0048】
下流側端部61には、2つの平坦面63が外表面に形成されている。2つの平坦面63は、下流側端部61を先細の円錐形状に形成した上で、いわゆる両面Dカット加工を施して円錐の一部を切り取ることにより形成されている。2つの平坦面63は、試料管60の軸中心を挟んで互いに対向し、先端に向かうにつれて両者の距離が小さくなるように形成されている。また、下流側端部61は、平坦面63の傾斜角度θ1(図6参照)が、平坦面63以外の円錐状部分の傾斜角度θ2(図7参照)よりも大きい。なお、下流側端部61の先端62において2つの平坦面63が対向する方向の厚みは試料管60の内径d2よりも小さくなっているため、両平坦面63の先端62側中央部には切欠状の凹部が形成されている。なお、平坦面63は、本発明の「傾斜面部」の一例である。
【0049】
図4および図8に示すように、試料管収容部70は、筒体71と、筒体71の下流側(C1方向)に取り付けられた導入部材72とを含んでいる。筒体71および導入部材72は中空部材であり、内部に筒体71および導入部材72を貫通するように第2流路70aが形成されている。導入部材72(第2流路70a)の下流側(C1方向)先端には、開口からなる出口部83が形成されている。導入部材72(第2流路70a)は、この出口部83でフローセル90の第1流路91に連通している。
【0050】
図4に示すように、筒体71は、円筒状部材からなる。筒体71内の第2流路70aの流路断面は円形状である。筒体71の内径d3(=第2流路70aの流路径D)は試料管60の外径d1よりも大きく、筒体71は、第2流路70aの内部に試料管60を収容している。筒体71の上流側端部(C2方向端部)には試料管60が挿入され固定されている。また、筒体71の上流側端部には貫通孔が形成され、第2流路70aが接続部材73のシース液導入口73aと連通している。接続部材73は、シース液供給部28と流体的に接続され、シース液供給部28からシース液を筒体71の第2流路70aに供給可能に構成されている。
【0051】
導入部材72には、第1流路91に向かう(矢印C1方向に向かう)につれて第2流路70aが狭くなる絞り部80が形成されている。絞り部80は、上流側絞り部81および下流側絞り部82と、第2流路70aの下流側端部である出口部83とを含んでいる。なお、上流側絞り部81および下流側絞り部82は、それぞれ、本発明の「第2絞り部」および「第1絞り部」の一例である。
【0052】
上流側絞り部81は、筒体71側の第2流路70a(流路の横断面が円形状で流路径D=d3の部分)と下流側絞り部82とを接続するように形成されている。上流側絞り部81では、第2流路70aが下流側(矢印C1方向)に向けて角度一定で絞られる円錐形状となっている。図4および図9に示すように、上流側絞り部81における第2流路70aの横断面は、上流側の筒体71における第2流路70aの横断面と同様、円形状である。この上流側絞り部81では、第2流路70aは、円形状の横断面形状を維持したまま、下流側(矢印C1方向)に向かうほど流路内径Dがd3から小さくなっていく。
【0053】
ここで、本実施形態では、下流側絞り部82は、円錐形状の上流側絞り部81の途中部分から連続するように形成されている。下流側絞り部82は、測定試料の流通方向(C方向)と直交する流路の横断面のアスペクト比(縦横比:A方向寸法/B方向寸法)が1よりも大きくなるように構成されている。具体的には、図8および図9に示すように、下流側絞り部82は、長手方向(A方向)の寸法La1、短手方向(B方向)の寸法Lb1を有する長円形状の流通孔を、下流側に向かうにつれて長手方向の幅が小さくなるように絞り、流路径D=Lb1の円形状の横断面となる出口部83に滑らかにつなげることにより形成されている。
【0054】
図4および図10に示すように、第2流路70aの流路内径DがD=La1になる位置が、上流側絞り部81と下流側絞り部82との境界(長手方向側の境界)となる。この位置よりも下流側では第2流路70aの横断面のアスペクト比が1よりも大きくなる。なお、図8に示すように、円錐形状の上流側絞り部81の途中に長円形状の横断面の流通孔を形成しているため、上流側絞り部81と下流側絞り部82との短手方向側の境界線が、流通方向(C方向)に沿って湾曲している。
【0055】
このため、下流側絞り部82は、上流側絞り部81の横断面の一部と下流側絞り部82の横断面の一部とが結合した横断面形状を有する第1部分84と、第1部分84の下流側で下流側絞り部82の横断面のみからなる横断面形状を有する第2部分85とを有している。これらの上流側絞り部81、下流側絞り部82の第1部分84および第2部分85は、滑らかに連続するように形成されている。
【0056】
第1部分84は、上流側絞り部81の円形状の横断面の内径Dを絞っていき、内径Dが長手方向(A方向)の寸法La1と一致する位置から、内径Dが短手方向(B方向)の寸法Lb1と一致する位置までの領域となる。図4および図11に示すように、第1部分84は、長手方向(A方向)の両側に下流側絞り部82の横断面の一部からなる長円形の部分84aを有し、短手方向(B方向)の両側に上流側絞り部81の横断面の一部からなる円形の部分84bを有する。
【0057】
図11に示すように、第1部分84の途中の103−103断面(図4参照)では、部分84aは、A方向両側における下流側絞り部82の長円形(長手方向の長さLa2、短手方向の長さLb1)の横断面の一部からなり、部分84bは、B方向両側における上流側絞り部81の円形(直径D=d4)の横断面の一部からなる。ここで、第2流路70aの流路断面のアスペクト比は、La2/d4(La2>d4)で1よりも大きい。そして、上流側絞り部81の円形状の横断面部分の直径がD=Lb1となる位置から下流側では、第2部分85となる。
【0058】
図4および図12に示すように、第2部分85は、第2流路70aの横断面において短手方向(B方向)の寸法がLb1となる位置(部分84bが流路の横断面からなくなる位置)から、出口部83までの領域となる。長円形状の第2部分85においては、第2流路70aの横断面の形状が長手方向(A方向)にのみ絞られ、短手方向(B方向)の横断面寸法(Lb1)は変化しない。したがって、第2部分85では、上流側(矢印C2方向)端部でアスペクト比が最大となり、下流側(矢印C1方向)に向かうにしたがってアスペクト比が連続的に小さくなる(アスペクト比が1に近づく)。
【0059】
ここで、本実施形態では、図12に示すように、第2部分85に、試料管60の下流側の先端62が配置されている。したがって、下流側絞り部82において試料管60の先端62が配置される位置(104−104断面の位置)における第2流路70aの横断面の形状は、長手方向(A方向)および短手方向(B方向)にそれぞれ中心線対称な長円形となっている。また、試料管60の先端62が配置される位置における第2流路70aの横断面のアスペクト比La3/Lb1は、1.2よりも大きくなるように構成されている。本実施形態では、104−104断面(試料管60の先端62が配置される位置)における第2流路70aの横断面のアスペクト比La3/Lb1は、約1.6である。なお、図10および図11に示すように、本実施形態では、試料管60は、下流側端部61に形成された一対の平坦面63のそれぞれが下流側絞り部82の横断面における短手方向(B方向)と平行になる向きで配置されている。
【0060】
また、図13および図14に示すように、第2部分85の下流側(矢印C1方向側、図4参照)の105−105断面における第2流路70aの横断面のアスペクト比La4/Lb1が上記104−104断面における第2流路70aの横断面のアスペクト比La3/Lb1よりも小さくなる。そして、出口部83では、第2流路70aの横断面の長手方向(A方向)寸法が短手方向(B方向)寸法Lb1と一致して横断面が円形状となる(アスペクト比が1になる)。
【0061】
図4および図8に示すように、フローセル90は、第1流路91と、第2流路70aの出口部83と第1流路91とを接続する接続流路部92とを含んでいる。
【0062】
接続流路部92は、円形状の横断面を有する出口部83と接続された円錐形状の流路である。接続流路部92は、直径Lb1の流路が下流側(矢印C1方向)に向かって角度一定で狭くなり、第1流路91に接続するように構成されている。
【0063】
第1流路91は、横断面が矩形(長方形)形状を有し、横断面のアスペクト比が1よりも大きくなるように形成されている。具体的には、図14に示すように、第1流路91の横断面は、長辺(長手方向)91aの寸法Lb2および短辺(短手方向)91bの寸法La5を有する。本実施形態では、第1流路91の横断面の長手方向(長辺91a)と第2流路70aの下流側絞り部82の横断面の短手方向(B方向)とが、略平行になるように構成されている。
【0064】
測定時には、測定対象細胞を含む試料流がフローセル90の第1流路91を通過する際に、第1光源51および第2光源56からの光がフローセル90(第1流路91)の側面側から照射される。本実施形態では、図3に示したように、第1光源51からのレーザ光の光軸方向DR1が、第1流路91の長手方向(B方向、すなわち下流側絞り部82の短手方向)と平行となっている。そして、第2光源56からの光の光軸方向DR2が、第1流路91の短手方向(A方向)と平行となっている。すなわち、撮像部24が、下流側絞り部82の横断面における長手方向(A方向、第1流路91の短手方向)と平行な方向から撮像するように構成されている。
【0065】
次に、図2〜図4および図8〜図16を参照して、本実施形態の測定装置2の検出部21(フローサイトメータ)による測定時においてフローセルユニット55を流れる試料流に含まれる測定対象細胞(子宮頸部の扁平上皮細胞)の配向について説明する。図15および図16に示すように、扁平上皮細胞SCは、扁平な面Pと、外周部分である側面Qとからなる扁平形状を有する。以下では、側面Q側から見た場合の長手方向(扁平な面Pと平行な方向)を測定対象細胞の長手方向とし、側面Q側から見た場合の短手方向(細胞の厚み方向)を測定対象細胞の短手方向として説明する。なお、配向とは、フローセルユニット55を流れる扁平上皮細胞の扁平な面Pを一定方向に向けることを指し、配向率とは、測定対象となった扁平上皮細胞の総数に対して、扁平な面Pが一定方向に向いている上皮細胞の数の割合を指す。
【0066】
図4に示すように、測定対象細胞SCの配向は、フローセルユニット55にシース液を供給して形成したシース流中に測定対象細胞SCを含んだ測定試料を吐出し、シース流によって所定方向の力を測定対象細胞SCに対して作用させることにより行う。
【0067】
図2〜図4に示すように、シース液は、マイクロプロセッサ31による駆動部25の駆動制御によって、シース液供給部28から接続部材73を介して試料管収容部70(筒体71)の内部(第2流路70a)に供給される。シース液は、所定の体積流量で第2流路70aに流入し、流路内部を満たしながら筒体71の後端部(上流側端部)から下流側(導入部材72側)に向かう矢印C1方向のシース流を形成する。
【0068】
シース流が導入部材72に流入すると、絞り部80によって第2流路70aが絞られる。シース流が図9に示した円錐状の上流側絞り部81に到達すると第2流路70aの内径Dが狭まり、シース流が圧縮されることにより流路の横断面において中心に向かう内向きの力が生じる。この場合、流路の内径Dは均一に小さくなるから、内向きの力はどの方向においても略一定である。
【0069】
図11に示すように、シース流が下流側絞り部82の第1部分84に到達すると、第2流路70aのアスペクト比が1よりも大きくなる。この第1部分84では、長手方向(A方向)の流路寸法の減少に比べて短手方向(B方向)の流路寸法が大きく減少する(アスペクト比が増大する)ため、シース流は短手方向(B方向)に相対的に大きく圧縮される。
【0070】
図12に示すように、シース流が下流側絞り部82の第2部分85に到達すると、第2流路70aの横断面は長円形状となる。この第2部分85では、短手方向(B方向)の流路寸法が一定のLb1となる一方、長手方向(A方向)の流路寸法が下流側に向かうに従って減少していく。このため、シース流は長手方向(A方向)に圧縮され、第2流路70aの横断面において長手方向両側の圧力が、短手方向両側の圧力よりも大きくなる圧力分布が生じる。
【0071】
測定対象細胞SCを含む測定試料は、このようなシース流の圧力分布が形成された状態で、104−104断面(図12参照)の位置(第2部分85)において試料管60の先端62から吐出される。測定試料は、マイクロプロセッサ31による駆動部25の駆動制御によって、測定試料供給部27から接続部材60aを介して試料管60の後端部(上流端部)に流入し、先端62から所定の体積流量でシース流の中央部に吐出される。試料管60の周囲を流れるシース流は、下流側端部61で内側に傾斜した平坦面63に沿って流れることにより、A方向の両側から測定試料を挟み込むように流れるため、試料管60の先端62から吐出される測定試料はB方向に沿った扁平な試料流となる。
【0072】
このとき、圧力分布が生じたシース流によって測定対象細胞SCに作用する力のうち、長手方向(A方向)の両側からの内向きの力FAが最大となり、短手方向(B方向)の両側からの内向きの力FBは相対的に小さくなる。このため、試料流中の測定対象細胞SCは、測定対象細胞SCの扁平な面P(図15参照)が長手方向の内向きの力FAを受けるように配向される。つまり、扁平な面Pが短手方向(B方向)に沿うように測定対象細胞が配向される。このようにして、測定対象細胞SCは、下流側絞り部82の第2部分85を通過する間に配向され、第2流路70aの出口部83からフローセル90の接続流路部92に入り、第1流路91に到達する。
【0073】
図8および図14に示すように、第1流路91では、長辺91aがB方向に平行で、短辺91bがA方向に平行となっているため、配向された測定対象細胞SCの向き(長手側がB方向、短手側がA方向)と第1流路91の長手方向および短手方向とが一致する。このため、下流側絞り部82で配向された測定対象細胞SCはその向きを変えることなく、第1流路91を進む。
【0074】
図3に示すように、測定対象細胞SCを含む流れが所定の検出位置まで到達すると、第1光源51によるレーザ光がB方向から照射され、光学測定が行われる。また、撮像部24によりA方向から撮像が行われる。これにより、扁平な面Pが短手方向(B方向)に沿うように配向された測定対象細胞SCを正面側(A方向)から撮像することが可能となる。測定対象細胞SCを正面側から撮像することにより、細胞の凝集や核の状態を精度よく観察することが可能となる。
【0075】
なお、第1光源51によるレーザ光を用いた光学測定においては、測定対象細胞SCの向きによって検出される信号(前方散乱光信号(FSC)、側方散乱光信号(SSC)および側方蛍光信号(SFL))の波形は異なるものとなる。
【0076】
図16は、本実施形態のように測定対象細胞SCを正面P側から撮像し、測定対象細胞SCに対して側面Q側からレーザ光を照射した場合(扁平な面Pと略平行なB方向から照射した場合)の説明図である。図16には撮像された細胞画像が示されている。図16に示すように、例えば前方散乱光信号(FSC)については、細胞の外形を反映して信号の立ち上がりおよび立ち下がりが急峻で、パルス幅の全幅に渡って信号強度が高くなる信号波形が検出される。
【0077】
一方、測定対象細胞SCを側面Q側から撮像し、細胞SCに対して正面からレーザ光を照射した場合の説明図が図15に示されている。図15には撮像された細胞画像が示されている。図15に示すように、細胞の核の部分のみに信号のピークが形成され、核以外の部分では信号強度がごく低くなる。
【0078】
このように、同じ細胞であっても向きによって検出される信号波形は異なったものとなる。そのため、細胞の向きを統一させてレーザ光を照射し、ばらつきのない信号波形を検出することにより細胞の分析精度を向上させることができる。
【0079】
本実施形態では、上記のように、試料管収容部70に、第1流路91に向かうにつれて第2流路70aが狭くなる絞り部80を設けるとともに、絞り部80の下流側絞り部82を、測定試料の流通方向と直交する流路の横断面のアスペクト比が1よりも大きくなるように形成し、試料管60の下流側の先端62を下流側絞り部82に配置することによって、下流側絞り部82における第2流路70aの絞りの勾配を流路の横断面の短手方向(B方向)側よりも長手方向(A方向)側で大きくすることができる。このため、下流側絞り部82におけるシース流には、流路断面の長手方向(A方向)両側が短手方向(B方向)両側と比べて相対的に高圧になる。この下流側絞り部82に試料管60の先端62が配置されるので、測定対象細胞を含む測定試料がシース流中に供給されると、下流側絞り部82の流路断面の長手方向両側からの内向きの力FAが測定対象細胞を挟み込むように作用し、測定対象細胞がB方向に沿うように配向される。これにより、測定対象細胞の配向率をより向上させることができる。
【0080】
なお、測定対象細胞の配向率が低い場合には細胞の向きがばらつくため、測定試料中の多数の測定対象細胞の測定結果(撮像画像および信号)を取得すると、その測定結果では、正面Pを撮像した撮像画像と側面Qを撮像した撮像画像とが混在するとともに、光学測定においては図15および図16に示した信号波形が混在することになる。このため、撮像画像から細胞の凝集や核の状態を精度よく観察することができず、各信号(FSC、SSC、SFL)波形がばらつくために光学測定に基づく分析精度も低下する。これに対し、本実施形態では、測定対象細胞の配向率を向上させることができるので測定結果のばらつきが抑制され、その結果、子宮頸部の上皮細胞(扁平上皮細胞)を分析精度の向上を図ることが可能となる。
【0081】
また、本実施形態では、上記のように、試料管60の下流側端部61(先端62)の外側に、互いに対向し、先端62に向かうにつれて両者の距離が小さくなる2つの平坦面63を形成し、2つの平坦面63が絞り部80の下流側絞り部82の横断面における短手方向(B方向)と平行となるように配置することによって、試料管60の周囲のシース流を2つの平坦面63に沿わせることにより、試料管60から供給される測定試料の試料流を下流側絞り部82の横断面における短手方向(B方向)に沿った平坦な流れにすることができる。これにより、平坦な試料流の両面を長手方向(A方向)の両側からシース流で挟み込むことができるので、下流側絞り部82における長手方向(A方向)両側からの内向きの力FAを試料流中の測定対象細胞に効果的に作用させて、測定対象細胞の配向率をより一層向上させることができる。
【0082】
また、本実施形態では、上記のように、絞り部80の出口部83における第2流路70aの横断面を円形に形成することによって、測定対象細胞を含む試料流およびシース流が絞り部80から流出する際に乱流が発生するのを抑制することができるので、一定方向に配向させた測定対象細胞の向きが乱れるのを抑制することができる。
【0083】
また、本実施形態では、上記のように、第1流路91を、横断面のアスペクト比が1より大きい矩形(長方形)に形成し、第2流路70aの下流側絞り部82の横断面の短手方向(B方向)と第1流路91の横断面の長手方向とが平行となるように配置することによって、下流側絞り部82では扁平な測定対象細胞の長手側が下流側絞り部82の短手方向(B方向)に沿うように配向するため、フローセル90の第1流路91の横断面の長手方向が、配向した測定対象細胞の長手方向に一致する。これにより、第1流路91の長手および短手方向のそれぞれを、配向した測定対象細胞の長手および短手方向に一致させることができるため、下流側絞り部82で配向された測定対象細胞の向きが変化するのを効果的に抑制することができる。
【0084】
また、本実施形態では、上記のように、試料管60の下流側端部61に2つの平坦面63を形成することによって、互いに対向し、先端に向かうにつれて両者の距離が小さくなる2つの傾斜面(平坦面63)を容易に形成することができる。
【0085】
また、本実施形態では、上記のように、下流側絞り部82において試料管60の先端62が配置された位置(図12の104−104断面参照)の横断面のアスペクト比が1.2以上となるように構成することによって、下流側絞り部82において、流路の横断面の長手方向(A方向)両側と短手方向(B方向)両側との圧力差(内向きの力の大きさの差)をより大きくすることができるので、測定対象細胞の配向率をさらに向上させることができる。
【0086】
また、本実施形態では、上記のように、下流側絞り部82において試料管60の先端62が配置された位置(図12の104−104断面参照)の横断面の形状を、長手方向および短手方向にそれぞれ中心線対称となるように形成することによって、下流側絞り部82において、流路の横断面の長手方向(A方向)両側の圧力を略等しくすることができるとともに、流路の横断面の短手方向(B方向)両側の圧力を略等しくすることができる。これにより、測定対象細胞に作用する内向きの力を長手方向の両側および短手方向の両側でそれぞれ略等しくして、測定対象細胞を精度よく配向させることができる。
【0087】
また、本実施形態では、上記のように、下流側絞り部82において試料管60の先端62が配置された位置の流路の横断面の形状を長円形に形成することによって、長手方向(A方向)および短手方向(B方向)にそれぞれ中心線対称となる流路の横断面形状を容易に得ることができる。
【0088】
また、本実施形態では、上記のように、下流側絞り部82を、円錐形状の上流側絞り部81の途中部分から連続するように形成することによって、円錐形状の上流側絞り部81を介してアスペクト比が1より大きい下流側絞り部82へとつなげることにより、第2流路70aを滑らかに絞ることができる。これにより、シース流が絞り部80へと流入する際に乱流が発生するのを抑制することができる。
【0089】
また、本実施形態では、上記のように、下流側絞り部82に、上流側絞り部81の横断面の一部と下流側絞り部82の横断面の一部とが結合した横断面形状を有する第1部分84と、第1部分84の下流側で下流側絞り部82の横断面のみからなる横断面形状を有する第2部分85とを形成し、絞り部80の上流側絞り部81と、下流側絞り部82の第1部分84と、第2部分85とを滑らかに連続するように形成することによって、上流側絞り部81の横断面(円形状)の一部と下流側絞り部82の横断面(長円形状)の一部との結合した横断面形状を有する第1部分84を形成して下流側絞り部82の横断面(長円形状)のみからなる横断面形状を有する第2部分85へとつなげることにより、円錐形状の上流側絞り部81からアスペクト比が1より大きい下流側絞り部82(第2部分85)に至る第2流路70aを、第1部分84を介して連続的に滑らかにつなぐことができる。
【0090】
また、本実施形態では、上記のように、第1流路91と、第2流路70aの絞り部80の出口部83とを接続するとともに、第1流路91に向かって流路が狭くなる略円錐形状の接続流路部92を設けることによって、絞り部80の出口部83からフローセル90の第1流路91に至る流路の横断面形状の変化を滑らかにすることができるので、試料流が第2流路70aから第1流路91に流入する際に乱流が発生するのを抑制することができる。
【0091】
また、本実施形態では、上記のように、絞り部80の下流側絞り部82の横断面における長手方向(A方向)と平行な方向から、フローセル90の第1流路91を流れる測定対象細胞を撮像する撮像部24を設けることによって、下流側絞り部82では流路の横断面の長手方向(A方向)内向きの力FAによって扁平な測定対象細胞の長手側が流路の横断面の短手方向(B方向)に沿うように配向するため、扁平な測定対象細胞に対して正面側から撮像を行うことができる。
【0092】
また、本実施形態では、上記のように、扁平上皮細胞を測定対象とする場合に、扁平上皮細胞を高確率で一定方向に配向させる(配向率を高くする)ことができる。この結果、扁平上皮細胞の向きによって測定データがばらつくのを低減することができるため、扁平上皮細胞を測定対象物とする場合に特に有効である。
【0093】
(実施例)
次に、図7、図9〜図12および図14〜図20を参照して、本発明の効果を検証した比較実験について説明する。
【0094】
この比較実験では、後述する実施例1および2と、比較例との3つのフローセルユニットを用いて、フローセルを流れる測定対象細胞SCを撮像部24により撮像し、得られた撮像画像から、測定対象細胞SCの配向率を算出して比較した。
【0095】
まず、実施例1、2および比較例に用いたフローセルユニットの構成について説明する。
【0096】
実施例1では、上記実施形態によるフローセルユニット55を用いた。図17に示すように、実施例1では、長手方向(A方向)の寸法La1=5.0mm、短手方向(B方向)の寸法Lb1=2.5mmの長円形状の流通孔(図9参照)を、流路径D=2.5mm(Lb1)の円形状の出口部83に滑らかにつなげることにより、下流側絞り部82を形成した。第2部分85の長手方向の傾斜角度θ3は50°であり、上流側絞り部81の傾斜角度θ4は60°である。
【0097】
また、実施例1では、第2流路70aの終端(出口部83)を基準位置として、基準位置からの矢印C2方向の距離D1=3.55mmの位置(第2部分85)に試料管60の先端62を配置した。先端62が配置される位置における第2流路70aの横断面の長手方向寸法La3(図12参照)は約5.5mmであり、第2流路70aの横断面のアスペクト比La3/Lb1は、約2.2である。なお、基準位置から第1部分84の上流側(矢印C2方向)端部までの距離D2は6.55mmであり、第1部分84の上流側端部と試料管60の先端62との間の距離D3は3.0mmである。また、基準位置から絞り部80の上流側端部までの距離D4は、8.7mmである。
【0098】
また、実施例1によるフローセル90の第1流路91は、横断面(図14参照)における長辺91aの寸法Lb2が300μmであり、短辺91bの寸法La5が250μmである。第1流路91の横断面のアスペクト比Lb2/La5は、1.2である。
【0099】
実施例2によるフローセルユニット155は、図18に示すように、試料管のみを上記実施例1(フローセルユニット55)と異ならせた。具体的には、平坦部63が形成された実施例1(フローセルユニット55)の試料管60と異なり、実施例2によるフローセルユニット155には、平坦部のない、円錐形状の下流側端部161を形成した試料管160を使用した。下流側端部161の傾斜角度は、上記実施例1(フローセルユニット55)による試料管60の平坦面63以外の円錐状部分の傾斜角度θ2(図7参照)と等しい。試料管160の先端162は、上記実施例1と同じく、基準位置からの距離D1=3.55mmの位置に配置した。したがって、先端162が配置される位置における第2流路70aの横断面のアスペクト比は、約2.2(実施例1と同じ)である。実施例2のその他の構成は、上記実施形態(実施例1)によるフローセルユニット55と同様である。
【0100】
比較例によるフローセルユニット255は、図19に示すように、上記実施例2の構成において、試料管160の先端162の位置を絞り部80よりも上流側(矢印C2方向)に移動させたものである。具体的には、比較例によるフローセルユニット255では、上記実施例2における先端162の位置(距離D1=3.55mm)から約15mm上流側に移動させて、試料管160の先端162を基準位置からの距離D1=18.7mmの位置に配置した。比較例によるフローセルユニット255のその他の構成は、上記実施例2によるフローセルユニット155と同様である。なお、上記の通り、基準位置から絞り部80の上流側端部までの距離D4は、8.7mmである。このため、この比較例では、試料管160の先端162は、絞り部80よりも上流側で、筒体71の内部に配置されている。この先端162が配置される位置における第2流路70aの横断面のアスペクト比は1である。
【0101】
上記実施例1、2および比較例について測定対象細胞Scの撮像を行い、配向率(および逆配向率)を算出した。具体的には、図15に示す測定対象細胞SCを側面Q側から撮像した画像を「配向」と定義し、図16に示す測定対象細胞SCを正面P側から撮像した画像を「逆配向」と定義し、全撮像画像中の「配向」の画像枚数の割合を配向率(「逆配向」の画像枚数の割合を逆配向率)として算出した。なお、「配向」および「逆配向」のいずれにも該当しない画像(判別不能)は除外した。得られた実験結果を図20に示す。この比較実験では、約220個の測定対象細胞Scの撮像を行い、得られた画像から配向率を算出した。そして、これを各フローセルユニット(55、155および255)について6回以上反復実施し、算出した配向率の平均値を図20に示している。
【0102】
実験結果を比較すると、実施例2(配向率72.3%)では、比較例(配向率60.4%)に対して配向率が11.9%向上している。比較例(図19参照)と実施例2(図18参照)とを比較すると、比較例のフローセルユニット255では試料管160の先端162が絞り部80よりも上流側の位置(筒体71の内部、第2流路70aのアスペクト比=1)にある一方、実施例2によるフロ−セルユニット155では、試料管160の先端162を下流側絞り部82の第2部分85(第2流路70aのアスペクト比=約2.2)に配置した点のみが異なる。このため、実施例2では、試料管160の先端162の位置を調整して、下流側絞り部82の第2部分85(第2流路70aのアスペクト比=約2.2)に試料管160の先端162を配置したことにより、配向率が向上したことがわかる。
【0103】
このことから、流路の横断面のアスペクト比が1よりも大きい下流側絞り部82(第2部分85)に試料管160の先端162を配置することによって、配向率をより向上させることができることが確認された。
【0104】
また、実施例1(配向率88.9%)では、実施例2(配向率72.3%)に対して配向率が16.6%向上している。実施例1によるフローセルユニット55は、実施例2によるフローセルユニット155と比較して、試料管60の下流側端部61に平坦面63を形成した点のみが異なるため、試料管60に平坦面63を形成したことにより配向率が向上したことがわかる。このことから、試料管60の下流側端部61(先端62)の外側に、互いに対向し、先端62に向かうにつれて両者の距離が小さくなる2つの平坦面63を形成し、2つの平坦面63が絞り部80の下流側絞り部82の横断面における短手方向(B方向)と平行となるように配置する(図10および図11参照)ことによって、更なる配向率の向上が得られることが確認された。
【0105】
なお、今回開示された実施形態および各実施例は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態および各実施例の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0106】
例えば、上記実施形態では、子宮頸部の上皮細胞を分析する細胞分析装置1の測定装置2の検出部21に本発明を適用した例を示したが、本発明はこれに限られない。尿試料や血液試料中の細胞など、子宮頸部の上皮細胞以外の細胞の分析を行う細胞分析装置の検出部(フローサイトメータ)に本発明を適用してもよい。また、上記実施形態では、データ処理装置4と検出部21を内蔵する測定装置2とを備えた細胞分析装置1の例を示したが、本発明はこれに限らず、測定装置単体または検出部単体で用いてもよい。
【0107】
また、上記実施形態では、本発明の傾斜面部の一例として、試料管60の下流側端部61に、先端62に向かうにつれて両者の距離が小さくなるように傾斜した2つの平坦面63を設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、傾斜面部(平坦面63)を設けなくともよい。また、傾斜面部は、平坦面ではなく、曲面であってもよい。
【0108】
また、上記実施形態では、試料管60の円錐状の下流側端部61に2つの平坦面63(傾斜面部)を設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、図21に示す変形例のように、下流側端部を円錐形状に形成しなくともよい。この変形例による試料管260には、先端262に向かうにつれて両者の距離が小さくなるように傾斜した2つの平坦面263が形成されている。試料管260では、円筒状の試料管260の下流側端部を円錐形状に絞ることなく、そのまま外周面を斜めに切り取ることにより、平坦面263が形成されている。このため、上記実施形態と異なり、先端262において、2つの平坦面263が向かい合う方向の厚みtは試料管260の外径d11よりも小さくなる一方、幅Wは小さくなることなく、外径d11と等しくなるように形成されている。この変形例による試料管260は、上記実施形態による試料管60と比べて、下流側端部61を円錐状に形成する必要がないため、2つの傾斜面部を形成した試料管を容易に得ることができる。
【0109】
また、上記実施形態では、下流側絞り部82(第2部分85)における第2流路70aの横断面を長円形状に形成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、下流側絞り部(第2部分)における横断面を楕円形状や長方形状などに形成してもよい。この他、下流側絞り部(第2部分)における横断面を六角形や八角形などの多角形や、角部にRをつけた角丸長方形などに形成してもよい。
【0110】
また、上記実施形態では、試料管60の先端62が配置される位置(図12参照)における第2流路70aの横断面のアスペクト比が1.2よりも大きくなるように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、試料管60の先端62が配置される位置における第2流路70aの横断面のアスペクト比が1よりも大きく、かつ、1.2以下となるように構成してもよい。
【0111】
また、上記実施形態では、試料管60の先端62を下流側絞り部82の第2部分85に配置した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、試料管60の先端62を下流側絞り部82の第1部分84に配置してもよい。試料管60の先端62は、第2流路70aの横断面のアスペクト比が1よりも大きくなる位置に配置すればよい。
【0112】
また、上記実施形態では、出口部83における第2流路70aの横断面を円形に形成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、出口部83における横断面を下流側絞り部82(第2部分85)における横断面形状と同じ長円形状に形成してもよい。また、出口部における第2流路70aの横断面を円形および長円形以外の横断面形状としてもよい。
【0113】
また、上記実施形態では、円形状の出口部83における第2流路70aの内径をLb1として、長円形状の下流側絞り部82(第2部分85)の短手方向(B方向)と一致させた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、出口部83の内径をLb1よりも小さくなるように形成してもよい。この場合、第2部分85では、長手方向(A方向)の寸法だけでなく短手方向(B方向)の寸法も下流側に向かって小さくなる。
【0114】
また、上記実施形態では、出口部83における第2流路70aのアスペクト比が1となるように形成し、長円形状の下流側絞り部82(第2部分85)におけるアスペクト比が下流側に向かうにつれて小さくなる(1に近づく)ように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、出口部83における第2流路70aのアスペクト比を下流側絞り部82(第2部分85)の長円形状のアスペクト比と一致させてもよい。すなわち、第2流路70aの横断面のアスペクト比が変わることなく、横断面形状が相似形状を保ったまま横断面の面積のみを小さくしてもよい。
【0115】
また、上記実施形態では、筒体71側の第2流路70a(横断面が円形状で流路径D=d3の部分)と下流側絞り部82とを接続するように円錐形状の上流側絞り部81を設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、上流側絞り部を円錐形状以外の形状に形成してもよい。また、下流側絞り部82の長円形状の長手方向の寸法を筒体71側の第2流路70aの流路径と一致(すなわち、A方向の寸法La1をd3に一致、図9参照)させてもよい。この場合、円錐形状部分と長円形状部分とが結合した第1部分84で絞り部80と筒体71側の第2流路70aとが接続される。
【0116】
また、上記実施形態では、フローセル90に第2流路70aの出口部83と第1流路91とを接続する接続流路部92を設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、接続流路部92を試料管収容部70(導入部材72)側に形成してもよい。
【符号の説明】
【0117】
21 検出部(フローサイトメータ)
24 撮像部
27 測定試料供給部
28 シース液供給部
52 前方散乱光受光部(散乱光検出部)
54 側方蛍光受光部(蛍光検出部)
60、160、260 試料管
62、162、262 先端(下流側先端)
63、263 平坦面(傾斜面部)
70 試料管収容部
70a 第2流路
80 絞り部
81 上流側絞り部(第2絞り部)
82 下流側絞り部(第1絞り部)
84 第1部分
85 第2部分
90 フローセル
91 第1流路
92 接続流路部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物を含む測定試料を通過させる試料管と、
前記試料管の下流に配置され、第1流路を内部に有するフローセルと、
前記試料管の外径よりも内径が大きく前記第1流路に通じる第2流路を内部に有し、前記第2流路内に前記試料管を配置した試料管収容部と、
前記試料管に測定試料を供給する測定試料供給部と、
前記試料管収容部の前記第2流路にシース液を供給するシース液供給部と、を備え、
前記試料管収容部は、少なくとも一部に、前記第1流路に向かうにつれて前記第2流路が狭くなる絞り部を含み、
前記絞り部は、測定試料の流通方向と直交する流路の横断面のアスペクト比が1よりも大きい第1絞り部を有し、
前記試料管の下流側先端は、前記絞り部の前記第1絞り部に配置されている、フローサイトメータ。
【請求項2】
前記試料管の下流側先端の外側には、互いに対向し、先端に向かうにつれて両者の距離が小さくなる2つの傾斜面部が形成されており、
前記2つの傾斜面部が前記絞り部の前記第1絞り部の横断面における短手方向と略平行である、請求項1に記載のフローサイトメータ。
【請求項3】
前記絞り部の出口における前記第2流路の横断面は円形である、請求項1または2に記載のフローサイトメータ。
【請求項4】
前記第1流路は、横断面のアスペクト比が1より大きい形状であり、
前記第2流路の前記第1絞り部の横断面の短手方向と前記第1流路の横断面の長手方向とが、略平行である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のフローサイトメータ。
【請求項5】
前記試料管の下流側先端の前記2つの傾斜面部は平坦面である、請求項2に記載のフローサイトメータ。
【請求項6】
前記第1絞り部において前記試料管の下流側先端が配置された位置の流路の横断面のアスペクト比が1.2以上である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のフローサイトメータ。
【請求項7】
前記第1絞り部において前記試料管の下流側先端が配置された位置の流路の横断面の形状は、長手方向および短手方向に、それぞれ中心線対称である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のフローサイトメータ。
【請求項8】
前記第1絞り部において前記試料管の下流側先端が配置された位置の流路の横断面の形状は、長円形、楕円形または長方形である、請求項7に記載のフローサイトメータ。
【請求項9】
前記絞り部は、略円錐形状の第2絞り部をさらに有し、
前記第1絞り部は、前記円錐形状の第2絞り部の途中部分から連続するように形成されている、請求項1〜8のいずれか1項に記載のフローサイトメータ。
【請求項10】
前記第1絞り部は、前記第2絞り部の横断面の一部と前記第1絞り部の横断面の一部とが結合した横断面形状を有する第1部分と、前記第1部分の下流側で前記第1絞り部の横断面のみからなる横断面形状を有する第2部分とを有し、
前記絞り部は、前記第2絞り部と、前記第1絞り部の第1部分と、前記第2部分とが滑らかに連続するように形成されている、請求項9に記載のフローサイトメータ。
【請求項11】
前記第1流路と、前記第2流路の前記絞り部の出口とを接続するとともに、前記第1流路に向かって流路が狭くなる略円錐形状の接続流路部をさらに備える、請求項3に記載のフローサイトメータ。
【請求項12】
前記絞り部の第1絞り部の横断面における長手方向と平行な方向から、前記フローセルの前記第1流路を流れる測定対象物を撮像する撮像部をさらに備える、請求項1〜11のいずれか1項に記載のフローサイトメータ。
【請求項13】
前記絞り部の第1絞り部の横断面における長手方向と直交する方向から、前記フローセルの前記第1流路を流れる測定対象物から生じた前方散乱光を検出する散乱光検出部をさらに備える、請求項1〜12のいずれか1項に記載のフローサイトメータ。
【請求項14】
前記絞り部の第1絞り部の横断面における長手方向と平行な方向から、前記フローセルの前記第1流路を流れる測定対象物から生じた蛍光を検出する蛍光検出部をさらに備える、請求項1〜13のいずれか1項に記載のフローサイトメータ。
【請求項15】
前記測定対象物は、扁平上皮細胞である、請求項1〜14のいずれか1項に記載フローサイトメータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2013−24629(P2013−24629A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157638(P2011−157638)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)