説明

フローセルの洗浄方法およびフローセル

【課題】 簡単な構造でセル本体を効率よく振動できるようにする。
【解決手段】 フローセル10は、セル本体12が石英ガラスなどの透光体から形成してある。セル本体12には、試料液を通流させる試料流路14が上下方向に貫通して形成してある。セル本体12には、試料流路14の側方となる1つの側面に圧電素子16が取り付けてある。圧電素子16は、励振回路によって励振されて超音波振動をし、セル本体12を超音波振動させる。圧電素子16は、レーザビームを透過させる貫通孔18を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フローセルの洗浄方法に係り、特に試料流路を通流する液体試料にレーザ光を照射することができる透光体からなるフローセルの洗浄方法およびフローセルに関する。
【背景技術】
【0002】
試料液中に含まれている粒子、例えば細胞やタンパク質、細菌などの計数や性質などを調べるために、フローサイトメータと呼ばれる装置が使用されることがある。フローサイトメータは、石英などの透光体からなるフローセルに形成した試料流路に、シース液に包まれた形で試料液を通流させるとともに、試料液の流れに直交してレーザ光を試料液に照射し、レーザ光の試料液中に含まれている粒子からの散乱光や、粒子に標識した蛍光物質からの蛍光を検出して試料液中の粒子の持つ情報を得るようになっている。
【0003】
フローセルは、検査、調査などの目的に応じて種々の試料液が流される。このため、フローセルは、正確なデータ、情報を得るために使用後、試料流路を洗浄して清浄にする必要がある。試料液が細胞やタンパク質などの有機物を含んでいる場合、酸を含んだ洗浄液を流すことにより、流路を洗浄することができる。しかし、酸に溶けないビーズなどの無機物の粒子を計測する場合があり、少々の洗浄作業では流路を充分に洗浄できない。特に、フローサイトメータに用いられるフローセルは、試料流路が100μm程度と微小であるため、洗浄が容易でない。そして、フローセルの流路中にビーズが付着すると、試料液を層流状態で流すことができないばかりでなく、計測精度に影響を及ぼす。このため、特許文献1には、フローセルを配置するハウジングに圧電振動子を取り付けて、超音波を利用してフローセルの洗浄を行なうようにしている。
【特許文献1】特開2001−296241号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の洗浄方法は、接触プレートに圧電振動子を接着し、この接触プレートをハウジングモジュールに装着し、さらにハウジングモジュールをガラスからなるセル本体を保持した要素に取り付けてガラスセルに超音波を与えるようになっている。すなわち、特許文献1に記載の洗浄方法は、圧電振動子により発生させた超音波を複数の部材を介してガラスセルに伝播させるようになっている。このため、特許文献1に記載の方法は、洗浄機構が複雑になるとともに、複数の部材を介してガラスセルに超音波を与えるため、圧電振動子により発生させた超音波が周囲に伝播し、ガラスセルに超音波を効率よく伝播することができず、非常にエネルギー効率が悪い。
【0005】
本発明は、前記従来技術の欠点を解消するためになされたもので、簡単な構造でセル本体を効率よく振動できるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明に係るフローセルの洗浄方法は、透光体からなるセル本体の試料流路の側方に振動素子を取り付けて前記セル本体を振動させるとともに、前記試料流路に洗浄液を通流させて前記試料流路を洗浄する、ことを特徴としている。セル本体の振動は、超音波振動であることが望ましい。
【0007】
そして、上記洗浄方法を実施する本発明に係るフローセルは、貫通した試料流路が形成された透光体からなるセル本体と、前記試料流路側方の前記セル本体に取り付けられ、前記セル本体を超音波振動させる振動素子と、を有することを特徴としている。
【0008】
振動素子は、試料流路を照射するレーザ光を透過させる貫通孔を設けることができる。また、振動素子は、試料流路を照射するレーザ光の光路と交差しない面に取り付けてもよい。振動素子は、圧電素子であっても磁歪素子であってもよい。
【発明の効果】
【0009】
上記のごとくなっている本発明は、石英などの透光体からなるセル本体に振動素子を取り付けるようにしたことにより、振動素子が発生した振動を直接フローセルに伝播することができる。したがって、振動素子が発生した振動を非常に効率よくセル本体に伝播することができ、エネルギー効率が向上して洗浄効果を高めることができる。
【0010】
振動素子がセル本体に与える振動は、超音波振動が望ましい。超音波振動は、セル本体を激しく振動させるため、セル本体の試料流路に付着したビーズなどが振動による慣性によって、容易に流路の壁面から離脱させることができ、迅速な洗浄を行なうことができる。なお、振動素子は、接着剤を用いてセル本体に接着することが望ましい。振動素子の取り付けが容易であるとともに、振動素子により発生させた振動をフローセル本体に効率よく伝播することができる。
【0011】
振動素子にレーザ光を透過させる貫通孔を設けることにより、振動素子をセル本体のレーザ光と交差する面に配置しなければならない場合であっても、試料液にレーザ光を照射することができ、フローサイトメータの設計の自由度が向上する。もちろん、振動素子は、セル本体のレーザ光の光路と交差しない面に取り付けてもよい。この場合は、レーザ光の光路を気にせずに取り付けることができるばかりでなく、振動素子に貫通孔を設ける必要がなく、振動素子の製作が容易となる。
【0012】
振動素子は、水晶やニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、ランガサイトなどの圧電材料からなる圧電素子であってもよいし、Fe−Ni系合金、Fe−Co系合金、フェライトなとの磁歪材料、Te−Dy−Fe系合金などのいわゆる超磁歪材料からなる磁歪素子であってもよい。磁歪素子は、コイルを巻くだけで電極を形成する必要がなく、製作が容易である。また、磁歪素子は、貫通孔を有するものも容易に形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明に係るフローセルの洗浄方法およびフローセルの好ましい実施の形態を、添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係るフローセルの斜視図である。フローセル10は、セル本体12が石英ガラスなどの透光体によって直方体状に形成してある。また、フローセル10は、セル本体12の中心部に、上下方向に貫通した試料流路14を有している。さらに、フローセル10は、セル本体12の試料流路14の側方となる一側面に、振動素子である圧電素子16が取り付けてある。圧電素子16は、実施形態の場合、水晶から形成してあって、セル本体12の左右方向中央部に貫通孔18が形成してある。
【0014】
圧電素子16は、図2の断面図に示したように、エポキシ樹脂などからなる接着剤20によってセル本体12に接着してある。圧電素子16は、セル本体12への接着面とその反対側の面とに図示しない電極が形成してあり、電極に接続したリードを介して励振されて超音波振動し、セル本体12に超音波振動を与えることができるようになっている。そして、フローセル10は、圧電素子16が前方に配置したレーザ光源22から出射されたレーザビーム(レーザ光)24の光路と交差する面に接着してあり、レーザビーム24が圧電素子16の貫通孔18を透過するようになっている。このため、フローセル10は、圧電素子16の貫通孔18を透過させたレーザビーム24を、試料流路14を流れる試料液(図示せず)に照射できるようになっている。
【0015】
このようになっているフローセル10を洗浄する場合、試料流路14に洗浄液を流すとともに、圧電素子16を励振してセル本体12を超音波振動させる。これにより、試料流路14の壁面に付着しているビーズなどの異物は、セル本体12の超音波振動によって激しく揺さぶられ、大きな慣性により壁面から離脱して洗浄液によって洗い流される。
【0016】
このように、実施形態のフローセル10は、セル本体12に接着剤20を介して圧電素子16に直接取り付けてあるため、圧電素子16の発生した振動が他に漏れることがなく、効率よくセル本体12を振動させることができ、洗浄効果を高めることができる。
【0017】
なお、前記実施形態においては、振動素子が水晶からなる圧電素子16である場合について説明したが、圧電素子は、ニオブ酸リチウムやタンタル酸リチウム、ランガサイトなどの他の圧電材料によって形成してもよい。また、振動素子は、Fe−Ni系合金、Fe−Co系合金、フェライトなどの磁歪材料やTe−Dy−Fe系合金などの超磁歪材料からなる磁歪素子であってもよい。磁歪素子は、コイルを巻くだけで電極を形成する必要がなく、製作が容易である。また、磁歪素子は、貫通孔を有するものであっても容易に形成することができる。
【0018】
図3は、第2実施形態の説明図である。この実施形態に係るフローセル30は、セル本体12の、レーザ光源22が出射したレーザビーム24と交差しない側面に、超音波振動する振動素子32が取り付けてある。すなわち、振動素子32は、セル本体12の集光レンズ34と対抗した面の反対側の面に取り付けてある。集光レンズ34は、試料流路14を通流する試料液(図示せず)がレーザビーム24を照射され、試料液中の蛍光物質で標識された粒子から放射された蛍光36を集光して図示しない光センサに入射させる。そして、振動素子32は、前記実施形態と同様に圧電素子または磁歪素子からなっていて、図4に示したように、接着剤20によりセル本体12に接着してある。
【0019】
このようになっている第2実施形態のフローセル30は、レーザビーム24を透過させるための貫通孔を設ける必要がなく、振動素子の加工が容易となる。また、フローセル30は、レーザビーム24の光路を気にせずに振動素子32をセル本体12に取り付けることができ、高度な位置合わせなどを必要とせず、製作が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態に係るフローセルの斜視図である。
【図2】第1実施形態に係るフローセルの断面図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係るフローセルの平面図である。
【図4】第2実施形態に係るフローセルの断面図である。
【符号の説明】
【0021】
10、30………フローセル、12………セル本体、14………試料流路、16………振動素子(圧電素子)、18………貫通孔、22………レーザ光源、24………レーザ光(レーザビーム)、32………振動素子、34………集光レンズ、36………蛍光。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光体からなるセル本体の試料流路の側方に振動素子を取り付けて前記セル本体を振動させるとともに、
前記試料流路に洗浄液を通流させて前記試料流路を洗浄する、
ことを特徴とするフローセルの洗浄方法。
【請求項2】
請求項1に記載のフローセルの洗浄方法において、前記セル本体の振動は、超音波振動であることを特徴とするフローセルの洗浄方法。
【請求項3】
貫通した試料流路が形成された透光体からなるセル本体と、
前記試料流路側方の前記セル本体に取り付けられ、前記セル本体を超音波振動させる振動素子と、
を有することを特徴とするフローセル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−242850(P2006−242850A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−61104(P2005−61104)
【出願日】平成17年3月4日(2005.3.4)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【Fターム(参考)】