説明

フローティングゴルフボール

【課題】 内層と、カバー層と、空洞とを含むゴルフボールを提供する。
【解決手段】 空洞は、空洞をゴルフボールの外部に連結する導管を含む。空洞は、第2材料によって互いに結合された第1材料の粒子を含むマトリックスを収容している。第1材料の密度は水よりも大きく、第2材料は水溶性である。マトリックスは、長期間に亘って水中に沈むと溶解し、第1材料粒子を空洞から出すことができる。第1材料粒子の質量がなくなることにより、ゴルフボールの密度が低下し、ゴルフボールを水面に浮かび上がらせることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ゴルフの試合では、プレイヤーは、ゴルフボールをクラブでグラウンドのホールに向かって打つ。多くの場合、ホールは、ハザードによって取り囲まれている。これらのハザードには、湖、沼、場合によっては海等のウォーターハザードが含まれる。ウォーターハザードに入ったゴルフボールは、代表的には、水よりも密度が高いというゴルフボールの規格のため、沈む。ウォーターハザードに沈んだゴルフボールの回収は困難であり、水域に残ったゴルフボールは環境にとってリスクである。ウォーターハザードから容易に回収できるゴルフボールを提供するのが有利である。
【背景技術】
【0002】
本開示のゴルフボールは、長期間に亘って水中に沈んだ後、質量を変化するように設計されている。質量が変化することにより、ゴルフボールは、沈んだ後、ウォーターハザードの表面に浮くことができる。代表的には、質量の減少は、密度が高い材料を収容するポケットをゴルフボールに設けることによって行われる。密度が高い材料は、水溶性材料によってポケット内に保持される。ゴルフボールが水中に沈んで水溶性材料が溶解したとき、ゴルフボールの浮力が負から正に変化し、これによってゴルフボールは表面に浮き上がることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
例示の実施例では、ゴルフボールは、内層と、カバー層と、空洞とを含む。空洞は、空洞をゴルフボールの外部に連結する導管を含む。空洞は、第2材料によって互いに結合された第1材料の粒子を含むマトリックス即ち複合材料を収容している。第1材料の密度は水よりも大きく、第2材料は水溶性である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
別の例示の実施例では、ゴルフボールは、カバー層及び少なくとも一つの空洞を含んでいてもよい。空洞は、空洞をゴルフボールの外部に連結するチャンネルを含む。チャンネルは、材料が空洞から出たり空洞に入ったりしないように形成されたプラグを含む。空洞は、複数の第1材料のペレットを収容している。プラグは、水溶性材料で形成されている。
【0005】
更に別の例示の実施例では、ゴルフボールは、カバー層及びカバー層の開口部からゴルフボールの内部分内に延びる少なくとも一つのチャンバを含む。ゴルフボールは初期質量を有する。ゴルフボールは、所定時間よりも長期間に亘って水没したときに第2質量に移行するように形成されている。
【0006】
本発明は、添付図面を参照して以下の説明を読むことにより更によく理解されるであろう。図示の構成要素は必ずしも等縮尺ではなく、本発明の原理を例示するにあたり強調がなされている。更に、添付図面では、全ての図面に亘り同様の参照番号が対応する部分に附してある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、空洞を含むゴルフボールの一実施例の断面図である。
【図2】図2は、ゴルフボールの一実施例の空洞の断面図である。
【図3】図3は、第2材料によって互いに結合された第1材料の粒子のマトリックスの斜視図である。
【図4】図4は、ウォーターハザードに水没した直後のゴルフボールの空洞を示す図である。
【図5】図5は、ウォーターハザードに第1の所定時間に亘って水没した後のゴルフボールの空洞を示す図である。
【図6】図6は、ウォーターハザードに第2の所定時間に亘って水没した後のゴルフボールの空洞を示す図である。
【図7】図7は、ゴルフボールがウォーターハザードに長時間に亘って水没した後にウォーターハザードの表面に浮いたゴルフボールの空洞を示す図である。
【図8】図8は、多数の導管を持つ空洞を含むゴルフボールの一実施例の断面図である。
【図9】図9は、空洞を含むゴルフボールの一実施例の断面図である。
【図10】図10は、空洞がプラグで塞いであるゴルフボールの一実施例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書中に説明した実施例は、ゴルフボールが、代表的には、水中に所定の時間に亘って沈んだとき、その質量の一部を失うように形成されたゴルフボールを開示する。ゴルフボールは、元来、負の浮力を持ち、即ちゴルフボールは水中に沈む。質量喪失は、一般的には、水がゴルフボールの第1材料を浸食し、その結果、第2材料がゴルフボールから流出できるようにボールを形成することによって行われる。第2材料は水よりも密度が高く、密度が比較的高い材料が水と入れ替わることにより、ゴルフボールは、最終的には、水中で正の浮力を持つようになり、その結果、ゴルフボールは表面に浮き、回収が容易になる。
【0009】
図1は、沈んだときに質量が経時的に変化するように形成されたゴルフボール101の一実施例の1/4の断面図である。水中に沈むことに関して本明細書中に論じたけれども、ゴルフボール101は、任意の種類の液体に沈んだ場合、又は特定のガスに露呈された場合にその質量を変えるように容易に設計できると考えられる。ゴルフボール101は、実質的に球形であってもよく、複数のディンプル107が設けられた表面を備えていてもよい。
【0010】
ゴルフボール101は、当該技術分野で周知の任意の種類のゴルフボールであってもよく、即ち単一の材料で形成されたソリッドの球体を含む1ピースボールであってもよく、又は多数の層を含むマルチピースボールであってもよい。ゴルフボール101は、一般的には、内部分113を取り囲むカバー115を含んでいてもよい。
【0011】
本明細書中で使用されているように、「カバー」又は「カバー層」という用語は、比較的薄い仕上げ層を除くゴルフボールの最外構造層と理解される。カバー115は、幾つかの実施例では、内カバー層又はマントル層等の多数の下層を含んでいてもよい。カバー115は、当該技術分野で周知の任意の材料で形成されていてもよく、任意の形体を備えていてもよい。カバー115用の材料の代表的な例には、アイオノマー、ゴム、バラタ、ウレタン、及びこの他の種類の材料に加えて、これらの材料の組み合わせが含まれる。
【0012】
カバー115は、フレッツ即ちランド109によって取り囲まれたディンプル107を含んでいてもよい。ランド109は、ゴルフボール101の最大直径を提供するものと考えられるカバー115の部分である。ディンプル107は、ゴルフボール101の航空力学的特性を改善するため、又はこれに影響を及ぼすため、ゴルフボール101に設けられた任意の窪み又は突出部である。ディンプル107は多くの形状及び特性を備えていてもよい。幾つかの実施例では、ディンプル107は、規則的な幾何学的形状を備えていてもよい。幾つかの実施例では、ディンプル107は、円形の周囲を持ち、カバー115に半球状の窪みを形成してもよい。
【0013】
代表的には、内部分113は少なくとも一つのコアを提供する。内コア層、外コア層、マントル層、及び内カバー層等の他の層が内部分113に含まれていてもよいと考えられる。内部分113は、当該技術分野で周知の任意の一つ又はそれ以上の材料で形成されていてもよい。内部分113についての代表的な材料には、天然ゴム及び合成ゴム、ゴム配合物、ゴムコンパウンド、特にポリブタジエンゴム、アイオノマー、ウレタン、ポリウレタン、ポリマー、特に高度に中和したポリマー、熱硬化性材料及び熱可塑性材料、充填体としての金属、内部分113の様々な層を互いに結合するための、エチレンビニルアセテート(EVA)等の接着剤材料、及びこれらの材料の組み合わせが含まれるが、これらの材料に限定されない。
【0014】
コーティング層、塗料層、印刷層等の仕上げ層などの追加の層がカバー115の外面などに設けられていてもよい。
【0015】
ゴルフボール101は、水没したときに質量が低下するように形成されている。幾つかの実施例では、ゴルフボール101は、質量の低下を助長するための手段を含む。図示の実施例では、これらの手段は、一つ又はそれ以上の空洞103を含んでいてもよい。図2は、空洞103を含むゴルフボール101の拡大部分図を示す。空洞103は、ゴルフボール101内又はカバー層115に設けられた、導管105によってゴルフボール101の外面に連結された、中空空間、空所、凹み、窪み、等であってもよい。空洞103は、所定量の除去可能材料を収容するように形成されており、導管105は、所定量の除去可能材料の少なくとも一部が、ゴルフボール101を取り囲む環境に出ることを可能にするように形成されている。
【0016】
空洞103は、任意の大きさ及び形状を備えていてもよい。幾つかの実施例では、空洞103は、ゴルフボール101内の不規則な形状の空所空間であってもよい。しかしながら、図示のように、空洞103は、ゴルフボール101内の実質的に球形のチャンバである。ゴルフボール101の直径と比較して比較的小径であるように示してあるけれども、空洞103の直径は、他の実施例では、かなり大きくてもよい。設計者は、空洞103の大きさを変えることによって、即ち空洞103の容積を変えることによって、空洞103内に保持される除去可能材料の量を容易に変えることができる。従って、設計者がゴルフボール101の層に対して比較的高密度の材料を使用しようとする場合、設計者は、比較的多くの材料がゴルフボール101から除去されることにより、除去後のゴルフボール101が水中及び/又は塩水中で正の浮力を得ることができるように、比較的大容積の空洞103を提供してもよい。
【0017】
別の態様では、設けられた空洞103の数を変えることにより、ゴルフボール101の除去可能材料の総容積を変えてもよい。図面には例示の空洞103が一つしか示してないけれども、ゴルフボール101の様々な場所に多数の空洞103が設けられていてもよい。多数の空洞103が設けられた幾つかの実施例では、これらの空洞103は、ゴルフボール101の周囲に亘って等間隔に間隔が隔てていてもよい。多数の空洞103が設けられた幾つかの実施例では、偶数の空洞103が設けられている。多数の空洞103が設けられた他の実施例では、奇数の空洞103が設けられている。多数の空洞103が設けられた幾つかの実施例では、二つ、三つ、又はそれ以上の空洞が設けられていてもよい。
【0018】
幾つかの実施例では、ゴルフボール101の特定の所望の性能特性が得られるように、空洞103の大きさでなく、空洞103の数を変えてもよい。幾つかの実施例では、ゴルフボール101の特定の所望の性能特性が得られるように、空洞103の数でなく、空洞103の大きさを変えてもよい。他の実施例では、ゴルフボール101の特定の所望の性能特性が得られるように、空洞103の大きさ及び数の両方を選択してもよい。
【0019】
空洞103は、ゴルフボール101の内部部分に設けられた空所即ち中空空間である。図2に示す実施例等の幾つかの実施例では、空洞103は内部分113に設けられている。このような実施例では、空洞103は、マントル層、コア層、内コア層、外コア層、及びこれらの層の組み合わせ等の内部分113の任意の層又は部分に設けられていてもよい。図示していない他の実施例では、空洞103は、カバー115に設けられていてもよい。図示していない他の実施例では、空洞103は、カバー115から内部分113内に延びていてもよい。ゴルフボール101の最外表面は、カバー115及び/又は任意のコーティング又はカバー115上に配置された他の同様の層によって形成されていてもよく、そのため、空洞103は、ゴルフボール101の最外表面の下に配置されているものと考えられる。
【0020】
空洞103は、空洞103をゴルフボール101の最外表面に連結する一つ又はそれ以上の導管105を含んでいてもよい。導管105の穴即ち口部が、ゴルフボール101の最外表面に又はこの表面を通して形成されていてもよい。換言すると、導管105は、空洞103からゴルフボール101の最外表面まで延びるボアを提供する。その結果、導管105の穴即ち口部が、空洞103の内外への材料の出入りを制御できる。幾つかの実施例では、空洞103は、単一の導管105を含んでいてもよい。他の実施例では、空洞103は多数の導管105を含んでいてもよい。導管105の数は、空洞103の所望の流出特性に基づいて選択されてもよい。図2は、単一の導管105を持つ空洞103を示す。更に別の実施例では、単一のボアが高密度の除去可能材料を収容し、ゴルフボール101が、最初、水中で負の浮力を持つように、空洞103及び導管105が合一されていてもよい。
【0021】
導管105は、多くの形状及び大きさを備えていてもよい。幾つかの実施例では、導管105は、カバー115を貫通した通路である。別の態様では、導管105は、特に空洞103がゴルフボール101の最外表面の近くに位置決めされている場合、カバー115の開口部又は穴であってもよい。導管105は、空洞103内の除去可能材料がゴルフボール101からゴルフボール101を取り囲む環境内に放出されるように、ゴルフボール101の内部の空洞103をゴルフボール101の最外表面に連結するように形成されている。導管105は、材料を空洞103とゴルフボール101を取り囲む環境との間で移動するための入口及び出口として役立つ。
【0022】
導管105は、直径又は幅等の寸法を有する。図2は、直径Dの導管105を示す。導管直径Dは、空洞103とゴルフボール101の外部との間を移動する材料の流れを制御するように選択される。例えば、導管直径Dよりも大きい物体は、空洞103に入ることも出ることもできない。かくして、導管直径Dは、所定の大きさよりも大きい物体が空洞103に入ったりここから出たりしないように選択される。
【0023】
図2に示すように、導管105は、カバー115に設けられた細い通路である。他の実施例では、導管105は、この他の形体を備えていてもよい。しかしながら、導管105が細い通路である実施例では、導管105の大きさ及び寸法を使用し、導管105を通る材料の移動を制御してもよい。例えば、密度が高い除去可能材料の粒子の寸法が、導管105の最大寸法よりも大きい場合には、導管105の形状により、導管105を通る高密度の除去可能材料の移動が妨げられる。
【0024】
導管105は、ゴルフボール101の最外表面の任意の箇所で終端してもよく、即ちゴルフボール101の最外表面の任意の箇所に終端点を有する。「終端」及び「終端点」という用語は、本明細書中、空洞103からゴルフボール101を取り囲む環境までの経路を提供するため、導管105の穴即ち口部が、カバー115及び任意のコーティング又は他の層を通過する場所に関して使用される。図示のように、導管105はディンプル107内で終端する。終端点をディンプル107内に置くことにより、導管105の意図せぬ開放を阻止するのを補助する。これは、導管105を塞いでいる材料がカバー115の材料よりも脆性であってもよいためである。代表的には、ゴルフボール101をゴルフクラブで打ったとき、ディンプル107の底部の変形は、ランド109の材料よりも小さい。従って、導管105の終端点がディンプル107の底部に配置された場合、導管105を塞ぐ材料に加わる歪が比較的小さい。しかしながら、他の実施例では終端点は、ディンプル107に置かれていてもよいしランド109に置かれていてもよく、又は同じ終端点について、ディンプル107の位置及びランド109の位置の組み合わせに置かれていてもよい。
【0025】
空洞103は、一つ又はそれ以上の複合材料121を含んでいてもよい。複合材料121は、水溶性第2材料125によって互いに結合された第1材料123の粒子を含んでいてもよい。図3は、複合材料121の一実施例を示す。複合材料121は、立方体として示してあるが、任意の大きさ又は形状を備えていてもよい。複合材料121は、レッグ寸法等の最長寸法、直径、等を備えていてもよい。最長寸法は、複合材料最長寸法であると考えられ、複合材料最長寸法は、空洞103又は導管105内、及び/又は導管105の穴即ち口部を通って移動する複合材料121の性能を制御する。
【0026】
第1材料粒子123は、密度が水よりも高い任意の適当な材料であってもよい。例えば、適当な材料には、ガラス、砂、他の経済的な材料(例えば周囲環境に悪影響をほとんど及ぼさない材料、周囲環境に及ぼされる悪影響が最小の又は限定的な材料)、環境にやさしい不活性材料(例えば周囲環境と相互作用しない材料)、及び/又はこれらの材料の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。第1材料粒子123は、任意の形状即ち形体を備えていてもよい。図2及び図3に示すように、第1材料粒子123は、球形材料ペレットである。しかしながら、他の実施例では、第1材料粒子123は、円筒形、偏球、凹凸形状、多角形、粉体、及び/又はこれらの形状の組み合わせ等の任意の規則的形状又は不規則な形状を持つペレットであってもよい。第1材料粒子123の直径又は幅は、導管直径Dよりも小さくてもよい。
【0027】
第1材料粒子123は、複合材料121に対してばら質量を提供する。複合材料121を空洞103内に配置すると、ゴルフボール101の質量が増大し、場合によっては、例えば、水と比較して極めて高密度の材料を第1材料粒子123として使用した場合、質量が大幅に増大する。かくして、ゴルフボール101の質量は、第1材料粒子123を空洞103に加えること、又は除去することによって変化する。この質量の変化は、ゴルフボール101の浮力を、ゴルフボール101が沈もうとする負の浮力からゴルフボール101が浮こうとする正の浮力に変えるのに十分であってもよい。水よりも密度が高い材料をカバー115の近くに位置決めすることによる別の利点は、質量をカバー115に向かって移動することにより、ゴルフボール101の慣性モーメントが増大するということである。
【0028】
第2材料125は、任意の適当な水溶性結合材料であってもよい。第2材料125は、水溶性エポキシ、塩、スターチをベースとした結合剤、デパート(depart)等の様々なポリマー、及び/又は他の種類の水溶性材料であってもよい。第2材料125は第1材料粒子123を複合材料121内に互いに結合する。第2材料125は、水溶性であることに加え、水と反応したときに気泡を発生する即ち発泡する粒子を含んでいてもよい。例えば、第2材料125は、大量の水溶性材料とともに炭酸水素ナトリウム及びクエン酸の粒子を含んでいてもよい。炭酸水素ナトリウムは、水に溶解してナトリウムイオン(Na+)及び炭酸水素イオン(HCO3−)になる。炭酸水素イオンはクエン酸の水素イオン(H+)と反応し、二酸化炭素及び水を発生する。二酸化炭素が気泡を発生する。この発泡又は気泡の作用は、ゴルフボール101が水中に沈んだとき、空洞103からの第1材料123の放出を補助する。
【0029】
幾つかの実施例では、複合材料121は、空洞103全体を充填していてもよい。他の実施例では、複合材料121は空洞103の一部しか充填していなくてもよい。他の実施例では、ゴルフボール101が水没したときに水が複合材料121を完全に取り囲むように、複合材料121が空洞103を緩く充填していてもよい。複合材料121は、ゴルフボール101の使用中に複合材料121が移動しないように空洞103全体を充填するように形成されていてもよい。
【0030】
ゴルフボール101は、空洞103が初期量の複合材料121を収容し、導管105が塞がれた初期状態を備えていてもよい。ゴルフボール101は、この初期状態と関連した様々な初期特性を有する。これらの初期特性には、初期質量、初期密度、及び空洞103内に配置された初期数又は量の複合材料121が含まれる。空洞103内に配置された複合材料121の数は、ゴルフボール101の初期質量及び初期密度が、ゴルフボールについての規定質量及び規定密度であるように選択されてもよい。更に、複合材料121の数は、ゴルフボール101から所定の%の複合材料121が除去されたときにゴルフボール101の浮力が負の浮力から正の浮力に移行するように選択されてもよい。幾つかの実施例では、空洞103は単一の複合材料121を収容していてもよく、複合材料121内の第1材料粒子123の量は、ゴルフボール101の初期質量及び初期密度が、ゴルフボールについての規定質量及び規定密度であるように選択されてもよい。同様に、複合材料121中の第1材料粒子123の量は、ゴルフボール101から所定%の第1材料粒子123が除去されたとき、ゴルフボール101の浮力が負の浮力から正の浮力に移行するように選択されてもよい。
【0031】
次に、ゴルフボール101の実施例の使用時の作動態様を図4乃至図7を使用して説明する。プレー中、ゴルフボール101を水域131に打ち込んでしまう場合がある。水域131は水133を含む。
【0032】
ゴルフボール101の初期密度は、水133よりも大きいように定められていてもよい。換言すると、ゴルフボール101は、水中で負の浮力を有する。従って、ゴルフボール101が水域131に入ると、ゴルフボールは底に沈む。図4はこの効果を示す。
【0033】
図4は、更に、空洞103の初期状態を示す。空洞103は、複数の複合材料121及び空気で充填されていてもよい。各複合材料121の寸法は、複合材料121が導管105を通って移動しないように、導管直径Dよりも大きくてもよい。空洞103内の材料が導管105を通って移動できないため、ゴルフボール101の質量及び密度は一定のままである。
【0034】
ゴルフボール101が水中に沈んだとき、空洞103は、最初は水133が入らない。空洞103は、水の進入を遅らせるように形成されていてもよい。例えば、導管105の直径Dは、空洞103内の空気とゴルフボール101の外部からの水との交換に所定の長さの時間を要するのに十分に小さくてもよい。例えば、このプロセスには、数時間、数日、又は場合によっては数週間かかる。別の態様では、下文に説明する実施例で論じるように、空洞103は、水133が空洞103に入らないようにするプラグを含んでいてもよい。
【0035】
ゴルフボール01が所定時間に亘って水133中に沈んだままであると、空洞103は水133で充填され始める。図5は、この効果を示す。空洞103は、所定時間の後、水が空洞103を充填できるように形成されていてもよい。
【0036】
空洞103がひとたび水133で充填されると、水133は水溶性第2材料125を溶解し始める。第2材料125が溶解すると、複合材料121の構造的一体性が損なわれる。時間が経つにつれて、複合材料121は完全に溶解し、結合が解かれた第1材料粒子123だけが残る。幾つかの実施例では、第1材料粒子123の部分が複合材料121から経時的に外れる。これは、所定数又は量の第1材料粒子123が結合を解かれ、導管105を通ってゴルフボール101を取り囲む環境に移動するときにだけゴルフボール101の浮力が負からゼロにそして正に移行することにより、ゴルフボール101が浮くことができるようにする上での第2の時間的遅延として作用する。図5に示す実施例では、環境は、水133を含む。
【0037】
図6は、複合材料121が完全に溶解した後の空洞103を示す。第1材料粒子123は空洞103内で自由に浮動する。第1材料粒子123は導管直径Dよりも小さい。かくして、図6に示すように、第1材料粒子123は導管105を通って空洞103を出てもよい。上文中に論じたように、このプロセスは、複合材料121が完全に溶解することを必要としない。複合材料121の所定部分が溶解することにより、十分な量の第1材料粒子123が導管105を通ってゴルフボール101から流出でき、これにより、ゴルフボール101の浮力を負から正にシフトできる。
【0038】
この溶解プロセスには、所定の時間がかかる。時間の長さは、溶解されるべき特定の物質又は材料、溶解されるべき物質又は材料の露呈表面積、水の動き(急速に移動する水は、物質又は材料を静水よりも溶解し易い)、水の温度(温度が比較的高い水は、物質又は材料を比較的低温の水よりも溶解し易い)、ボールの古さ、等を含むファクタで決まる。溶解プロセスに要する時間の長さは、数分から、数時間、数日、数週間、又は場合によっては数カ月又は数年の範囲内にある。
【0039】
第1材料粒子123の密度は、水133よりも高い。かくして、第1材料粒子123は水域131の底に落下する。空洞103からの第1材料粒子123の引き出しを重力が補助する。幾つかの実施例では、特に空洞103及び導管105が水域131の底に向かって配向されていない場合、複合材料121中の気泡発生粒子が空洞103からの第1材料粒子123の放出を補助する。
【0040】
各第1材料粒子123が空洞103を出ると、ゴルフボール101の総質量が低下し、初期質量から新たな低い質量になる。これにより、ゴルフボール101の密度が初期密度から低下する。十分な量の第1材料粒子123が空洞103を出て、導管105を通ってゴルフボール101を取り囲む環境に流出すると、ゴルフボール101の密度は水133の密度よりも低い密度まで低下する。
【0041】
図7は、ゴルフボール101における質量の変化の効果を示す。ゴルフボール101の密度が水133の密度よりも低い密度まで低下すると、ゴルフボール101は水域131の表面に浮き上がる。この状態で、水域131からのゴルフボール101の回収が容易になる。
【0042】
図8は、ゴルフボール801の別の実施例を示す。図8は、ゴルフボール801の一実施例の四分の一断面図を示す。ゴルフボール801は、多くの点に関してゴルフボール101と同様である。しかしながら、この実施例では、空洞803は、空洞803をゴルフボール801の最外表面に連結する二つ又はそれ以上の導管805を含んでいてもよい。導管805の穴即ち口部は、ゴルフボール801の最外表面に又はこれを通して形成されていてもよい。換言すると、導管805は、空洞803からゴルフボール801の最外表面まで延びるボアを形成し、そのため、導管805の穴即ち口部は、空洞803からの材料の出入りを制御できる。導管805の数は、図8に二つであるように示してあるが、空洞803からの所望の流出特性に基づいて選択されてもよい。
【0043】
多数の導管805を使用することにより、空洞803に流入する及び流出する材料の流れを変化してもよい。例えば、空洞803内に延びる多数の導管805を使用することにより、ゴルフボール801が水没した場合に空洞803に入る水の流れを改善してもよい。例えば、一つの導管805が空洞803内の空気を逃がすと同時に別の導管805を介して水を空洞803に引き入れてもよい。
【0044】
複数の複合材料821が空洞803内に配置されていてもよい。これらの複合材料821は、水溶性第2材料825によって結合された複数の第1材料823の粒子を含んでいてもよい。複合材料821の寸法は、導管805の寸法よりも大きい。第1材料粒子823の寸法は、各導管805の寸法よりも小さくてもよい。ゴルフボール801は、水没したとき、図4乃至図7に関して論じた実施例と同様の挙動を示す。
【0045】
導管805は、第1材料粒子823を空洞803から出すプロセスを補助するように位置決めされていてもよい。例えば、各導管805が空洞803から様々な角度で延びるように多数の導管805を配向することによって、少なくとも一つの導管805が、第1材料粒子823を空洞803から重力で引き出すように配向されていてもよい。図8は、多数の角度の多数の導管805が第1材料粒子823の流れに及ぼす効果を示すのを補助する。図8に示すように、空洞803は、紙面の配向に関し、ゴルフボール801の最下点に配向されていない。しかし、図8に示す二つの導管805のうちの一方は、実質的に下方への経路を形成する。かくして、ゴルフボール801が例示の位置にある場合、重力が第1材料粒子823を空洞803から引き出す。従って、多数の導管805を使用することにより、第1材料粒子823を空洞803から出すプロセスを補助する。
【0046】
図9は、ゴルフボール901の別の実施例を示す。ゴルフボール901は、多くの点で、上文中に説明したゴルフボール101及びゴルフボール801と類似しており、導管905によってゴルフボール901の最外表面と関連した空洞903を有する。
【0047】
空洞903は、一つ又はそれ以上の複合材料921で充填されていてもよい。各複合材料921は、水溶性第2材料925によって結合された複数の第1材料923の粒子を含んでいてもよい。複合材料921の寸法は、導管905の寸法よりも大きい。第1材料粒子923の寸法は、各導管905の寸法よりも小さくてもよい。ゴルフボール901は、水没したとき、図4乃至図7に関して論じた実施例と同様の挙動を示す。
【0048】
図10は、ゴルフボール1001の別の実施例の四分の一断面図を示す。ゴルフボール1001は、多くの点に関し、上文中に論じたゴルフボール101、ゴルフボール801、及びゴルフボール901と同様である。詳細には、ゴルフボール1001は、導管1005によってゴルフボール1001の最外表面と関連した一つ又はそれ以上の空洞1003を含んでいてもよい。
【0049】
図10に示す実施例では、空洞1003は複数の第1材料1023のペレットで充填されていてもよい。第1材料1023は、水よりも密度が高い任意の材料で形成されていてもよい。第1材料ペレット1023は、任意の形状又は形体を備えていてもよい。図10に示すように、第1材料ペレット1023は球形のペレットである。しかしながら、他の実施例では、第1材料ペレット1023は、粉体、ナノ粒子、ナノチューブ、等を含む任意の大きさ又は形状を備えていてもよい。各第1材料ペレット1023の最大寸法、例えば最大直径、最大長さ、又は最大幅は、例えば導管1005の最小直径、最小長さ、又は最小幅等の導管1005の最小寸法よりも小さい。
【0050】
幾つかの実施例では、空洞1003には第1材料ペレット1023が一杯に詰め込まれていてもよい。空洞1003には、ゴルフボール1001の使用中に第1材料ペレット1023が移動したり緩んだりしないように十分にきつく詰め込まれていてもよい。第1材料ペレット1023が空洞1003内で移動しないようにすることにより、使用中にゴルフボール1001の飛翔特性が変化しないようにする。他の実施例では、空洞1003を第1材料ペレット1023で緩く充填してもよいし、空洞1003を第1材料ペレット1023で部分的に充填してもよい。
【0051】
第1材料ペレット1023は、ゴルフボール1001内に質量を提供する。第1材料ペレット1023を空洞1003内に配置したとき、ゴルフボール1001の質量が増大する。ゴルフボール1001の質量は、空洞1003への第1材料ペレット1023の追加、及び空洞1003からの第1材料ペレット1023の除去によって変化する。
【0052】
導管1005は、第2材料で形成されたプラグ1025を含んでいてもよい。プラグ1025は、第1材料ペレット1023や泥の粒子等の材料が空洞1003から出たり入ったりしないようにする。ゴルフボール1001の質量は、プラグ1025が所定の場所にある場合には、実質的に一定のままである。
【0053】
第2材料は、水溶性であってもよい。第2材料は、水溶性エポキシ又は本明細書中に論じた任意の水溶性材料であってもよい。第2材料は、所定期間に亘って水に露呈されたとき、溶解する。従って、ゴルフボール1001がかなりの期間に亘って水没したとき、プラグ1025が溶解し、空洞1003へのアクセスを制限しない。
【0054】
プラグ1025が溶解すると、第1材料ペレット1023が空洞1003を出る。第1材料ペレットがなくなると、ゴルフボール1001の質量及び密度が変化する。ゴルフボール1001は、初期質量及び初期密度を持つ初期状態を有する。ゴルフボール1001の初期密度は水よりも大きく、そのため、ゴルフボール1001は水中で負の浮力を有する。プラグ1025が溶解し、十分な数の第1材料ペレット1023が空洞1003を出ると、ゴルフボール1001は水よりも小さい第2密度に達し、その結果、ゴルフボール1001は水中で正の浮力を有する。次いで、ゴルフボール1001は浮き上がる。
【0055】
上文中に説明した実施例は、例示の目的で使用される。この他のシステム、方法、特徴、及び利点は、添付図面及び詳細な説明を検討することにより、当業者に明らかになるであろう。このような追加のシステム、方法、特徴、及び利点は、本明細書中の記載に含まれ、本発明の範疇にあり、特許請求の範囲によって保護される。
【符号の説明】
【0056】
101 ゴルフボール
103 空洞
105 導管
107 ディンプル
109 ランド
113 内部分
115 カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴルフボールにおいて、
内層と、
カバー層と、
空洞とを含み、前記空洞は、前記空洞を前記ゴルフボールの外部に連結する導管を含み、
前記空洞は、第1材料の粒子及び第2材料を含む複合材料を収容し、前記第1材料は、密度が水よりも大きく、前記第2材料は水溶性である、ゴルフボール。

【請求項2】
請求項1に記載のゴルフボールにおいて、
前記導管は導管直径を有し、
前記複合材料の寸法は、前記導管直径よりも大きく、
各第1材料粒子の寸法は、全ての第1材料粒子が前記導管を通過できるように、前記導管直径よりも小さい、ゴルフボール。

【請求項3】
請求項1に記載のゴルフボールにおいて、
前記空洞は、前記ゴルフボールが水没したときに水が前記空洞に入ることができるように形成されており、
前記第2材料は、所定時間よりも長期間に亘って水中に浸漬された後、溶解するように形成されている、ゴルフボール。

【請求項4】
請求項1に記載のゴルフボールにおいて、
前記第2材料は、水中に浸漬したとき、溶解して第1材料粒子を非結合状態にするように形成されており、
前記空洞は、非結合状態の第1材料粒子が前記空洞を出ることができるように形成されている、ゴルフボール。

【請求項5】
請求項1に記載のゴルフボールにおいて、
前記空洞は、少なくとも二つの導管を含む、ゴルフボール。

【請求項6】
請求項5に記載のゴルフボールにおいて、
各導管は、異なる角度で配向されている、ゴルフボール。

【請求項7】
請求項1に記載のゴルフボールにおいて、
前記複合材料は、前記空洞を一杯に充填している、ゴルフボール。

【請求項8】
ゴルフボールにおいて、
前記ゴルフボールの最外表面を形成する層と、
前記ゴルフボールの前記最外表面の下に配置された空洞と、
前記空洞を前記ゴルフボールの前記最外表面に連結するチャンネルと、
前記チャンネルへのアクセスを制御するように形成された、前記最外表面に形成された穴と、
前記空洞内に配置された、第1材料のピースと、
前記第1材料のピースを前記空洞内に固定するように形成された、前記チャンネルに配置されたプラグとを含み、
前記プラグは、水溶性材料で形成されている、ゴルフボール。

【請求項9】
請求項8に記載のゴルフボールにおいて、
前記チャンネルはチャンネル直径を有し、
前記第1材料のピースは、前記第1材料のピースの最大寸法であるピース長を有し、
前記ピース長は、前記チャンネル直径よりも小さい、ゴルフボール。

【請求項10】
請求項8に記載のゴルフボールにおいて、
前記プラグは、前記ゴルフボールが所定時間よりも長い期間に亘って水中に浸漬したときに溶解するように形成されている、ゴルフボール。

【請求項11】
請求項8に記載のゴルフボールにおいて、更に、
追加のチャンネルを含む、ゴルフボール。

【請求項12】
請求項11に記載のゴルフボールにおいて、
各チャンネルは、前記空洞から遠ざかる方向に異なる角度で延びている、ゴルフボール。

【請求項13】
請求項8に記載のゴルフボールにおいて、
前記プラグは、前記穴の手前に配置されている、ゴルフボール。

【請求項14】
ゴルフボールにおいて、
前記ゴルフボールの最外表面を形成する層と、
前記層の開口部から前記ゴルフボールの内部分内に延びるチャンバとを含み、
前記ゴルフボールは初期質量を有し、
前記ゴルフボールは、水没したときに第2質量に移行するように形成されている、ゴルフボール。

【請求項15】
請求項14に記載のゴルフボールにおいて、
前記ゴルフボールは、前記ゴルフボールが所定時間よりも長期間に亘って水没した後、前記チャンバに収容された材料を放出することによって第2質量に移行する、ゴルフボール。

【請求項16】
請求項14に記載のゴルフボールにおいて、
前記ゴルフボールは、前記ゴルフボールが前記初期質量を有するとき、水中で負の浮力を有し、
前記ゴルフボールは、前記ゴルフボールが前記第2質量に移行した後、水中で正の浮力を有する、ゴルフボール。

【請求項17】
請求項14に記載のゴルフボールにおいて、
前記チャンバは、第2材料によって互いに結合された第1材料の粒子を含む複合材料を収容し、
前記第1材料は水よりも密度が高く、
前記第2材料は水溶性である、ゴルフボール。

【請求項18】
請求項17に記載のゴルフボールにおいて、
前記複合材料は、前記カバー層の開口部よりも大きく、前記第1材料粒子は、前記カバー層の開口部よりも小さい、ゴルフボール。

【請求項19】
請求項14に記載のゴルフボールにおいて、
前記チャンバは複数の第1材料の粒子を収容し、
プラグが前記層の前記開口部に配置されており、
前記第1材料は水よりも密度が高く、
前記プラグは水溶性第2材料から形成されている、ゴルフボール。

【請求項20】
請求項19に記載のゴルフボールにおいて、
前記プラグは、所定時間に亘って水没した後に溶解し、前記複数の第1材料の粒子の少なくとも一部が前記チャンバから出る、ゴルフボール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−35079(P2012−35079A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−170295(P2011−170295)
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(505424859)ナイキ インターナショナル リミテッド (249)