フローリソグラフィおよび重合による微細構造合成
高分子微細構造体を合成する方法において、単量体流は、流体チャネル内で、選択した流量で流動される。少なくとも1つの成形された照明パルスが、前記単量体流に照射され、当該単量体流内で、前記照明パルスの形状に対応する少なくとも1つの微細構造の形状を画定する一方で、前記単量体内で、前記照明パルスにより、前記微細構造の形状を重合する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、ポリマー材料に関し、より詳細には、高分子微細構造体を合成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
(関連出願)
本願は、2005年10月25日に出願された米国仮出願第60/730,052号の利益を請求するものであり、前記出願はその開示内容全体を本願明細書の一部として援用する。
【0003】
(米国政府後援の研究に関する記述)
本発明は、NSF(米国科学財団)により承認された契約第CTS−0304128号に基づいた米国政府による支援を受けて為されたものである。米国政府は、本発明に一定の権利を有する。
【0004】
高分子微細構造は、MEMS、生体材料、薬物送達(ドラッグデリバリ)、自己組織化、および他の用途を含む幅広い用途において重要である。微細構造は、本明細書では、約10nmから約1000μmの範囲の大きさの形体を有する構造として定義するが、このような微細構造を制御可能に合成することは、塗料、レオロジー流体、触媒作用、診断法、およびフォトニック材料などの用途を実現するために益々重要になっている。単分散高分子微細構造は、ここで、分布の>90%が中央の微細構造サイズの5%以内に収まるような微細構造サイズ分布を持つものであると定義するが、このような単分散高分子微細構造は、外部場に対して、一定かつ予測可能な応答を示すことができ、また、予測可能な方式での自己組織できるため特に望ましい。
【0005】
従来から、高分子微細構造の合成は、フォトリソグラフィ、打ち抜き加工、または乳化重合などの回分法によって、あるいは、流入式マイクロ流体合成などのエマルションベースのマイクロ流体技術によって実行される。これらの技術は、微細構造の合成に顕著な進歩をもたらしたが、これらの各技術には、概して、微細構造の組成および幾何学的配置の両方またはそのいずれかに制約があることが判っている。たとえば、フォトリソグラフィ技術は、概して、微細構造の材料を、フォトリソグラフィ処理に適合するような材料に限定し、たとえば、構造材料としてフォトレジストを必要とする。歴史的に、マイクロ流体による高分子微細構造の合成は、ほぼ排他的に球状微細構造に集約されているが、その原因の一部は、微細構造の界面エネルギの最小化が、最終的に、球体の形成や、棒状体、楕円体、円盤などの球体や円筒体の変形に至ることにある。
【0006】
高分子微細構造の組成および形状におけるこれらの制約に加え、従来の高分子微細構造の合成は、概して、材料の等方性構造配列を必要とする。また、このようなプロセスの処理量は、一般に、1度に1つの構造を作製する、または、フォトマスクによって画定される限定的な構造体フィールドを1度に1つ作製するという要件によって制限される。高分子微細構造合成の処理量、微細構造の形状、形態、および機能性における前述したような制限は、その数が増え続けている、高分子微細構造が適しているとされる重要な用途に対応する能力に対する制約となっている。
【0007】
【非特許文献1】Sugiuraら、“Preparation of Monodispersed Polymeric Microspheres over 50 μm Employing Microchannel Emulsification,” Ind. Eng. Chem. Res., V. 41, pp. 4043-4047, 2002
【非特許文献2】Fialkowskiら、“Self-assembly of polymeric microspheres of complex internal structures,” Nature Materials, V. 4, pp. 93-97, December 2004
【非特許文献3】Millmanら、“Anisotropic particle synthesis in dielectrophoretically controlled microdroplet reactors,” Nature Materials, V. 4, pp. 98-102, December 2004
【非特許文献4】Dendukuriら、“Controlled Synthesis of Nonspherical Microparticles Using Microfluidics,” Langmuir, Vo. 21, pp. 2113-2116, February 2005
【非特許文献5】Kimら、“Hydrodynamic fabrication of polymeric barcoded strips as components for parallel bio-analysis and programmable microactuation,” Lab Chip, Vo. 5, pp. 1168-1172, August 2005
【非特許文献6】Rollandら、“Direct Fabrication and Harvaesting of Monodisperse, Shape-specific Nanobiomaterials,” J. Am. Chem. Soc., V. 127, pp. 10096-10100, 2005
【非特許文献7】Rohら、“Biophasic Janus particles with nanoscale anisotropy,” Nature Materials, V. 4, pp. 759-763, September 2005
【非特許文献8】Dendukuriら、“Continuous-flow lithography for high-throughput microparticles synthesis,” Nature Materials, Vo. 5, pp. 365-369, April 2006
【非特許文献9】Nisisakoら、“Synthesis of Monodisperse Bicolored Janus Particles with Electrical Anisotropy Using a Microfluidic Co-Flow System,” Adv. Mater., V. 18, pp. 1152-1156, 2006
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来の高分子微細構造の合成における制約を克服し、各種異なる複雑な形状および化学的性質を持つ高分子微細構造を連続的に合成できる、リソグラフィを基準とするマイクロ流体方式の微細構造合成技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の高分子微細構造合成方法の一例において、単量体流は、指定の流量で、流体チャネルを通って流され、前記単量体に対して、少なくとも1つの成形照明パルスが照射される。この照明の照射は、単量体流内に、前記照明パルスの形状に対応する少なくとも1つの微細構造の形状を画定する一方で、前記照明パルスにより、その微細構造の形状を前記単量体流内で重合させる。
【0010】
本発明によって提供される合成プロセスの更なる例において、単量体流は、指定の流量で流体チャネルに流され、また、前記単量体流に照明を照射して、前記単量体流内で、少なくとも1つの微細構造を前記照明により重合させる。流体チャネルの内部壁面に、少なくとも1つの重合停止種を提供することで、微細構造の重合中に重合が行われ得る、チャネル壁面上の活性重合サイトを停止させる。これにより、前記活性重合サイトにおける重合が消失し、チャネル壁面に隣接して単量体流の非重合ボリュームが残る。
【0011】
この高処理量技術は、微細構造の幾何学的配置と、形状と、組成と、異方性とに対する高度な制御を実現できる。この技術により、それぞれが複数の異なる材料領域を持つ、非球状高分子微細構造を合成でき、また、それぞれ複数の異なる材料領域を持つ、平面状の高分子微細構造も同様に合成することができる。本発明の他の特徴および利点は、下記の説明および添付の図面から、また請求項から明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1Aを参照すると、本発明に従って例示する高分子微細構造合成システム10の模式図が示されている。このシステム10は、選択された中空断面を持つ幾何学的配置を含むマイクロ流体デバイス12を含む。図1Aのマイクロ流体デバイスの例では、長方形チャネル状の断面が示されているが、後述するように、他の各種広範囲の断面を持つ幾何学的配置を利用することができる。一実施例において、マイクロ流体デバイスのチャネル幅は、たとえば、約100nmから約1mmまでの内部チャネル幅と、たとえば、約100μmと1cmの間の厚さを持つチャネル壁と、たとえば、約1mmと数センチメートルの間のチャネル長さと、によって特徴付けられる。マイクロ流体デバイスは、単量体流15を受け入れるように構成され、この単量体流15は、マイクロ流体デバイスの中空断面またはチャネルに誘導されてデバイス内を通過する。マイクロ流体デバイスは、下記で説明するように、任意の適切な材料で形成される。図1Aの構成例において、マイクロ流体デバイスは、たとえば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)や、他の適切な材料で構成することができる。
【0013】
単量体流15は、後で詳述するように、さまざまな構成要素を含むことができる。そのような構成要素の少なくとも1つは、指定の重合プロセス、たとえば、光重合や、熱重合や、他のプロセスなどで重合できる液相単量体として供給される。図1Aに例示するシステムにおいて、単量体流は、光重合可能な単量体および感光性開始剤種を含む。適切な光重合可能な単量体の一例は、たとえば、400の分子量を持つポリ(エチレングリコール)ジアクリレート(PEG−DA)で、前記感光性開始剤種として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンが採用される。単量体流は、後述するように、選択された他の単量体も、粒子、分子、ポロゲン、および他の化学種と同様に含むこともできる。いずれの成分から成るものであっても、単量体流は、マイクロ流体デバイス12を通る流路を実現できる、少なくとも1つの液相の重合可能単量体を含む。
【0014】
マイクロ流体デバイスに沿った1つ以上のポイントにおいて、単量体流内での微細構造の形成および重合を実現できる刺激が提供される。図1Aの例において、単量体流は光重合可能な単量体を含み、マイクロ流体デバイスの長さに沿った1つ以上の選択したポイントに、マイクロ流体デバイス12に向かって照射される照明17の光源16が設けられる。マイクロ流体デバイスの壁面は、照明17の波長をほぼ透過するものであることが好ましい。可視光、UV光、IR光、または他の波長の光は、下記で詳述するように、選択した単量体種に適したものであれば採用できる。前述したPEG−DA単量体については、UV照明が適切な重合照射である。
【0015】
重合照射は、所望の高分子微細構造形状に対応するように成形される。たとえば、照明光源とマイクロ流体デバイスの間には、1つ以上のリソグラフィマスクや、照明を成形する他のリソグラフィシステムを設けることができる。図1Aの例には、合成する高分子微細構造に求められる1つ以上の形状20を含む暗視野リソグラフィマスク18が配設されている。図1Aに示すように、マスクは、複数の異なる形状を含んでいても、あるいは、単一形状のいくつかの繰り返しを含んでいてもよい。
【0016】
マスクを介して照射される照明17の倍率、焦点、または他の側面を制御する必要がある場合は、リソグラフィマスクとマイクロ流体デバイスの間に、レンズ系22を挿入することができる。照明は、レンズ系を出た後、マイクロ流体デバイスに照射される。本発明によれば、照明は、選択した期間の照明パルスを提供するように、時間的に制御される。シャッタ23または照明期間を制御する他の機構は、レンズ系22および照明光源16と共に適切な構成で好ましく配設される。各照明パルスの期間は、単量体流の流量と、その単量体流内の単量体の重合特性と、微細構造の所望の形状と、に基づいて設定される。下記に詳述するように、照明の時間制御と連携して、単量体流の流量も制御でき、単量体流を停止させることができる。照明パルスは、特定の用途についての指定に従って、選択した各期間からなる一連のパルスとして、または期間の長い単一のパルスとして供給されてよい。
【0017】
図1Bも参照しながら説明すると、マイクロ流体デバイスの長さ方向と、マイクロ流体デバイスの指定した壁面の周囲と、のうちの少なくともいずれかに、複数の照明光源およびレンズ系22,35,37を配設して、マイクロ流体デバイスの廻りで、異なる角度および位置から単量体流に照明パルスを送ることができる。判り易くするため、図1Bには、レンズ系22,35,37を示したが、これらは、前述した図1Aの方式と同様に、シャッタシステムと、照明光源と、照明マスクまたは他の成形デバイスと、をレンズ系と組み合わせて含んだ状態を表すことを意図して示したものである。
【0018】
ここで図1Aに戻って説明する。マイクロ流体デバイス12内を流れる単量体流15が、成形された照明24のパルスに晒されることで、直接、単量体流内で、マスクによって規定される微細構造形状30が重合する。この照明の露光は、高分子微細構造の形状を画定すると同時に、成形された微細構造を重合させる。このリソグラフィ−重合の二重作用は、単量体流の連続相内で生じる。すなわち、単量体流内の1つ以上の重合可能な液相単量体は、単量体流の連続相として機能し、かつ、その単量体自体が重合する。したがって、リソグラフィ−重合の二重作用による重合微細構造は、単量体流の連続相から得られる高分子材料を含んでいる。
【0019】
前述したように、単量体流の流れは、照明の照射との連動方式で制御でき、ひいては、微細構造の重合特性を制御することができる。流量および露光期間は、照明露光サイトにおいて、マスクによって定義される微細構造を単量体流内で実質的に完全に重合させる、所定のボリュームの単量体流の十分な停留時間が得られるように、好ましく一緒に選択される。必要な場合は、照明パルスの照射と連携して、単量体流の流動を実質的に停止させることもできる。連続した単量体流の流動によって、たとえば、毎秒100個の微細構造という高い合成処理量を達成することができる。このような処理量は、前述した方式でマイクロ流体デバイスの長さ方向に複数の照明ポイントを挿入して、照明領域を増やすと共に、その増加した領域に投射される、対応数の微細構造形状を増やすことでさらに拡張できる。
【0020】
図1Aに示すように、単量体流内で高分子微細構造30が重合すると、重合した微細構造は、単量体流の非重単量体を通ってマイクロ流体デバイスの中を移流する。このような重合構造の集合32は、図1Aにおいて、リソグラフィ−重合ポイントの下流に模式的に示されている。リソグラフィ−重合ステップの後、流内に残留している非重合連続相単量体のボリュームは、マイクロ流体デバイスからその外部に重合微細構造を送達する役割を担う。容器34が設けられており、重合微細構造の個体群38を含む、出力された単量体流36を回収する。認識されるように、透過マスク形状を1つのみ採用した場合、微細構造の個体群は均質であり、また、好ましくは単分散である。
【0021】
合成された微細構造は、容器で水洗を行うことも、あるいは、水洗用の他の容器に、たとえば、ピペットで移載されてもよい。微細構造個体群を含む単量体流は、たとえば、前記容器からエッペンドルフ管にピペット移動し、凝集を防止するために、界面活性剤を有する緩衝液内に懸濁させ、さらに遠心分離にかけて単量体流から微細構造個体群を取り出すことができる。この後、微細構造個体群は、選択した用途に利用することができる。
【0022】
マイクロ流体デバイスからその外部に重合微細構造を運び出す単量体流の機能は、本発明に従って、単量体流の非重合ボリュームをマイクロ流体デバイスの壁面位置に保持することによって、また、重合化照明から遮蔽された場所における微細構造の間の非重合流ボリュームによって実現できる。デバイスの壁面位置に単量体流の非重合ボリュームを保持することで、重合作用がデバイスの壁面に及ぶことを防ぎ、かつ、重合微細構造がデバイスの壁面に付着することを阻止する。本発明によれば、このことは、概して、マイクロ流体デバイス壁面の内側表面に、重合停止ステップに関与できる化学種、すなわち、重合作用が生じる活性重合サイトを停止させて、デバイスの壁面近傍の活性重合サイトにおける重合作用を消滅させるように反応できる化学種を提供することによって達成される。
【0023】
選択した重合停止種は、所定の用途に適した従来の方法で、マイクロ流体デバイスの内壁に導入できる。たとえば、重合停止種は、下記に詳述するように、デバイスの壁面において、中空の断面を持つ、マイクロ流体デバイスのチャネルを通るように誘導できる。あるいは、マイクロ流体デバイスの壁面を通り抜けて周囲環境から内壁表面に化学種を拡散させることによって、重合停止種を導入してもよい。多くの用途に関して、この仕組みは、極めて都合よく、また、すっきりと簡単に実施できるもので、必要なのは、選択した停止種の拡散を実現できる十分な浸透性を持つ一方で、デバイス内に単量体流を包含する十分な固さを持つ物質として、マイクロ流体デバイスを提供することのみである。
【0024】
たとえば、マイクロ流体デバイスの壁面からの重合停止種の分散において、停止種は、周辺酸素として指定され、重合されることになる単量体は、ラジカル重合単量体、たとえば、前述したように、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン光開始剤を持つ、前述のPEG−DA単量体として指定される。ここで、マイクロ流体デバイスは、前述したように、酸素に対する浸透性のあるPDMSで形成される。あるいは、適切な他の酸素透過性物質、たとえば、マイラー、ポリウレタン、ポリエテレン(polyethelene)、ポリクロロフェン(polychlorophene)、メルカプトエステルベースの樹脂、たとえば、ニュージャージー州、ニューブランズウィックのノーランド社(Norland Optical Products, Inc.)製のノーランド(Norland)60や、ニュージャージー州、ミクルトン(Mickleton)のサンゴバン社(Saint-Gobain Performance Plastics)製の多孔質タイゴン(Tygon(登録商標))チューブや、他の物質で形成される。
【0025】
PDMSデバイスを通るPEG−DAベースの単量体流がUV照明パルスに曝されると、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン光開始剤が遊離基を形成し、その遊離基のうちの一部がPEG−DA単量体に渡されて、PEG−DA単量体の重合を開始させる。マイクロ流体デバイスのPDMS壁面から拡散される酸素は、これらの遊離基と反応して、開始剤種と単量体の両方について、分子ラジカルサイトを停止させる。これにより、ラジカルサイトは連鎖停止過酸化基に変換される。そして、変換されたサイトにおいて、高分子連鎖の成長は、阻害されるか、あるいは消滅する。
【0026】
PDMSデバイス壁面の内側表面近傍においてこの重合停止プロセスは存続し続けるが、これは、デバイス壁面付近の単量体流内で、ラジカルサイトの連鎖停止変換に酸素が消費された結果、デバイス壁面からさらに多くの酸素が拡散することになるためである。これにより、マイクロ流体デバイスの壁面に、架橋されていない非重合潤滑単量体層が薄く形成される。この潤滑単量体層は、重合微小構造を運ぶことができる連続相単量体流のボリュームを提供すると共に、デバイス壁面への微細構造の付着を阻止する。
【0027】
この酸素援用(oxygen-aided)の重合阻止技法により、本発明は、通常は、ほとんどの用途で障害と見なされるラジカル重合の停止を活用でき、また、これを制御可能に強化することにより、単量体流の端部において重合を阻止し、また、非重合単量体を保存して、単量体流内に分散された重合微細構造を搬送することで、直接、連続相の単量体流内で重合を実現できるという発見をもたらす。例示した酸素を基準とする停止プロセスは、あらゆるラジカル重合システムに適用できる。たとえば、下記に詳述するように、単量体、特に、1,1,1−トリ(メチルプロパントリアクリレート)、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、およびポリ(エチレングリコールジメタクリル酸)などは、DMPAや、ニューヨーク州タリータウンのチバ・スペシャルティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)製のイルガキュア(IRGACURE)184(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン)などの光開始剤と共に利用することができる。
【0028】
マイクロ流体デバイスの壁面における非重合潤滑単量体層の厚さは、リソグラフィ照明によって遊離基を生成する、単量体流内の化学種の濃度と、照明の局部輝度と、デバイス壁面を通る停止種の程度、たとえば、酸素流量と、によって規定される。また、各重合化学反応は、単量体流内の遊離基濃度を調整する固有の反応動力学によって特徴付けられることが認識される。したがって、多くの用途について、十分な潤滑単量体層を提供するプロセスパラメータの決定には、実験的分析が好ましいものとなる。多くの用途において、約1μmから約5μmまでの厚さの潤滑層は、マイクロ流体デバイスから微細構造が運び出される際に、微細構造の壁面への付着を十分に阻止する。
【0029】
本発明の重合停止プロセスは、さまざまな高分子化学と停止種とを用いて実施できる。たとえば、HQ(ヒドロキノン)や、MEHQ(モノメチルエーテルヒドロキノン)などのラジカル停止種と、適切な浸透性を持つデバイス材料と、を利用して、微細構造重合プロセスのラジカル種を停止させることができる。また、重合処理は、必ずしも光開始でなくてもよく、各種のラジカル重合開始種を重合に利用することができる。たとえば、熱により活性化されるラジカル開始剤、たとえば、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)を適切な熱源、たとえば、レーザ照明またはパターン化した導電電極と共に使用して、遊離基に基づく重合のために遊離基を生成し、酸素や他の停止種を用いて、マイクロ流体デバイスの壁面における重合を阻止することができる。
【0030】
このプロセスは、これ以外の点では、ラジカル停止に限定されない。たとえば、ニューヨーク州ニューヨークのシェルケミカル社(Shell Chemical)製のエポン(EPON)SU−8エポキシをベースとするフォトレジストSU−8が単量体流内の重合種であるとすると、マイクロ流体デバイスの側壁におけるSU−8の重合の停止は、選択した塩基種、たとえば、3−エチルアミン、3−オクチルアミン、またはSU−8重合を消滅させる他の適切な塩基などを用いて実現できる。選択した塩基種は、側壁からの分散により、マイクロ流体デバイスの側面の内側表面において、単量体に供給できるが、この場合、側壁は適切な気孔率を持っているものとする。たとえば、PDMSや他の適切な浸透性材料からなるデバイスを採用して、当該デバイスから液体塩基または他の液種を拡散させることができる。ここで、選択した液体種で最初にデバイスを飽和させ、その液体を、たとえば、浴構成(bath arrangement)内でデバイスの外面に連続的に供給し、マイクロ流体デバイス内で消費された際に液体が補充されるようにする。
【0031】
マイクロ流体デバイスの壁面からの拡散によって、その壁面の内側表面に停止種が供給される構成である場合、マイクロ流体デバイスの材料は、問題の停止種に対する十分な浸透性を持つことが好ましい。たとえば、停止種の酸素に対して、デバイスの壁面は、少なくとも約10バーラー(約3.35×10−15kmol・m/(s・m2・kPa))のO2気体透過率を持つことが好ましい。選択した液体の停止種に関しては、デバイスの壁面が約10バーラーの液体透過度を持つことが好ましい。
【0032】
マイクロ流体デバイスは、前述した材料例の場合のように高分子であっても、あるいは、高分子以外であってもよい。たとえば、選択した停止種を浸透させるのに適したナノスケールの孔を持つ、ガラス製のマイクロ流体デバイス壁を利用できる。また、マイクロ流体デバイス壁は、たとえば、トラックエッチメンブレンとして設けることができ、また、たとえば、多孔質シリカ基板や、スライドガラスなどの他の無機構造を含む他の構造として設けることもできる。すべての壁面が浸透性である必要はないが、重合作用因子、たとえば、照明など、に曝される壁面は、指定の停止種を透過して、その壁面における重合を停止できるものであることが好ましい。もちろん、既に説明したように、そこから単量体流に照明を誘導する1つ以上の壁面は、照明波長に対して実質的に透過的であることが好ましく、照明は、該当する壁面において重合停止を誘発するために、複数のデバイス壁面から照射されてよい。
【0033】
本発明によれば、停止種は、マイクロ流体デバイスの壁面からチャネル内に拡散させるのではなく、単量体流と一緒に単量体流のフローチャネル内に導入することもできる。このような構成の一例において、選択した停止種を含む流体の環状さや型フローは、単量体流の内側円筒状フローを囲繞するように、マイクロ流体デバイスのチャネル入口に供給される。他の構成例において、湿潤性が異なる2つの流体は、後でより詳しく説明する方式で、互いに平行に流れるように、チャネルへのY接合入力口に導入される。ここで、プロセス条件を調整して、停止種を含む流体が、デバイスの表面壁を選択的に湿らせて、重合される単量体流の化学種を包囲するように構成できる。
【0034】
次に、図2も参照しながら説明する。図2は、成形照明24がデバイスに照射されるデバイス上のポイントで切り取った図1Aのマイクロ流体デバイス12の断面図で、図1Aに定義されたx−y平面における重合微細構造30の形は、透過マスク18に組み込まれた形体20の形によって決定される。微細構造のz−平面の突出は、マイクロ流体デバイス断面の高さと、照明に曝される壁面上に作製される重合阻止層40の厚さと、に左右される。重合阻止層の厚さは、デバイスの高さに依存しないため、重合阻止層がデバイス高の大部分を占める、背の低いデバイス内で合成される微細構造に対して、より顕著な影響を与える。
【0035】
図3A〜3Gに、高分子微細構造の各種の形態を例示する。これらの形態は、図1と同様の合成システムを用いて、本発明によって実現される。図3A〜3Gは、それぞれ、透過マスクの形状50の例と、前述した合成プロセスで生成される、前記マスクに対応する高分子微細構造52と、を示す。これらの図に示したように、曲線状、直線エッジ状、中空の幾何学的配置は、ほぼ自由な組み合わせで作製することができる。微細構造の多くは、平面状の微細構造として特徴付けることができ、選択された平面、たとえば、x−y平面の大きさがz−平面の大きさを大幅に上回るように形成される。図3H〜3Jも参照すると、マスクに形状のグレースケール形体が付与された、グレースケールマスク構成55によって形が生成された場合、対応する成形輪郭を持つ微細構造58は、z−平面の微細構造輪郭が調整された状態で、本発明の微細構造合成プロセスから得られる。
【0036】
ここで、図3K、3L、3Mおよび3Nを参照して説明すると、リソグラフィ−重合ステップによって、リボン状構造も生成することができる。図3Kに示されるように、選択したマスク60を利用して、リボン微細構造62の幅および他の形体が設定される。このマスクは、押し出されるリボン構造の幅方向の特徴を規定するために、たとえば、長方形や、正方形や、円形や、他の幾何学的配置に形成されてよい。このようなリボン状構造の形成において、照明の照射は、前述したパルス方式では行われず、代わりに、照明は、連続して照射され、この状態は、前記構造がリソグラフィにより画定および重合され、マイクロ流体デバイスを通って搬送される間、維持されている。
【0037】
図3Lに示すように、動的マスク技法を採用して、微細構造が流体マイクロデバイスを通って押し出されるときに、重合リボン状微細構造に、可変マスク形状を印加することができる。下記に詳述するように、このような動的マスク技法は、たとえば、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)や他の適切なデバイスを用いて実施することができ、この動的マスク技法では、リソグラフィ−重合プロセスの実行中に連続照明を維持しながら、マスク形体を変化させることができる。図3Lの例では、3つの変動マスク形状64,66,68を利用して、リボンの長さ方向に一連の異なる形状を持つリボン構造70を作製する。この技法により、リボン微細構造の形体のカスタマイズに大幅な柔軟性を持たせることができる。
【0038】
図3Mに示すように、リボン構造の形体も、リボンが重合される際に動的マスク技法で調整できる。たとえば、長さが異なる2つの長方形72,74を想定した場合、変調する幅を持つリボン構造76は、連続して流れる単量体流を2つのマスク幾何学的配置に交互に曝すことによって生成できる。また、図3Nに示すように、2つの個別マスク形体として採用される単一の長方形72と、2つの長方形74とを用いて、リボンの幅が変調することに加え、リボンに沿った形体が変化するリボン構造78を作製できる。
【0039】
図3O〜3Pを参照すると、微細構造マスク形状と組み合わせて制御される照明状態から得られる円錐輪郭を持つ高分子微細構造77,79を生成できることが示されている。図3Oに示すように、ここでは、円形のマスク形状73を利用する。この円形マスク形状は、マイクロ流体デバイスのチャネルが十分な高さを持ち、チャネル内の複数のポイントが、そのチャネル上で合焦する照明の焦点深度から外れて位置する場合に、図3O〜3Pの構造を作製することができる。照明がチャネルの中心に集光され、かつ、焦点深度がチャネル高さより浅い場合は、図3Pの二重円錐形微細構造が合成される。照明がチャネルの中心以外の点に集光され、かつ、焦点深度がチャネル高さより浅い場合は、図3Oの円錐微細構造が合成され、その各円錐構造の大きさは、チャネル高さを基準とした焦点の位置によって決定される。
【0040】
次に、図4A〜4Bを参照して説明する。単量体流の流量および照明パルスの動作周期を制御して、単量体流のボリュームにまさに近接し、または単量体流のボリュームと僅かに重複して重合作用が生じるようにした場合、マスク形体80,82を利用して、それぞれ、各連鎖が一連の連結高分子形状として形成される、鎖状微細構造84,86を形成することができる。
【0041】
図4Cに、図4Bの鎖状構造86の作製に用いられる、一連のリソグラフィ−重合イベントの例を模式的に示す。図示したように左から右に向かう単量体流のフローにおいて、照明パルスは、単量体流が連続して流れているとき、成長する鎖状の構造の最後尾に各高分子形状が追加され、その追加の高分子形状は、それぞれ、重複する重合領域によって連結されるように繰り返し印加される。たとえば、第1照明パルス(1)において、最初の円筒構造が形成され、第2パルス(2)において、最初の円筒構造の後尾に2番目の円筒構造が追加され、さらに、第3パルス(3)において、2番目の後尾に3番目の円筒構造が追加され、第4パルス(4)において、3番目の後尾に4番目の円筒構造が追加される。このように、所望の長さまで鎖状構造を伸長させることができる。
【0042】
図4Dに、鎖状微細構造に追加される微細構造の形状を調整または変更できる動的マスク技法を用いて鎖状構造を作製する際に用いられる、一連のリソグラフィ−重合イベントの例を模式的に示す。この場合も図示したように左から右に向かう単量体流のフローにおいて、照明パルスは、単量体流が連続して流れているときに、成長する鎖状構造の最後尾に各形状単位が追加され、その各形状単位が、重複する重合領域によって連結されるように繰り返し印加される。第1照明パルス(1)において、最初の円筒構造が形成され、第2パルス(2)において、円筒の後尾に長方形の構造が追加され、第3パルス(3)において、長方形の後尾に正方形の構造が追加され、第4パルス(4)において、正方形の後尾に長方形が追加され、さらに、第5パルス(5)において、長方形の後尾に三角形が追加される。この動的マスク連鎖形成により、鎖状構造に対する高度な個別設定を実現できることに加え、ほぼ任意の範囲の連鎖の組み合わせを生成することが可能になる。
【0043】
図3〜4に示した形状および形体の幾何学的配置は、本発明に従って作製することができる高分子微細構造の代表例ではあるが、このような高分子微細構造の例を網羅的に示したものではない。これらの例は、離散的な粒子状の微細構造と、リボンまたは連鎖のような相互連結された微細構造の両方を、本発明の微細構造合成プロセスによって生成できることを示したものである。微細構造は、図3D〜3Fの微細構造の例に示したように、微細構造の平面において非連続であってよい。追加の微細構造の幾何学的配置は、たとえば、六角形のような多角形形体と、コロイド状立方形微細構造と、円形、三角形、または正方形の断面を持つ柱などのような縦横比の大きい物体と、非対称物体とを含む。ここで、「微細構造」という用語は、約10nmから約1000μmの長さ規模の形体サイズを持つあらゆる構造を指すものである。この用語は、特定の幾何学的配置や対称性を示唆するものではない。ただし、円形、丸みを帯びた形状、対称形、およびこのような他の幾何学的配置は、本発明に従って作製することができる。多くの用途で、「微細構造」という用語は、連続相内に分散可能な異なる個別要素である微細構造を表すために用いることができる。前述したリボン微細構造および鎖状微細構造は、微小粒子として特徴付けられる最も多くの用途に即したものではないが、本発明で検討される微細構造である。
【0044】
マスク形状と結果的に得られる微細構造の幾何学的配置との相関性は、部分的には、単一ステップのリソグラフィ−重合プロセスの投影リソグラフィを実施するために用いられるレンズ系に基づいている。多くの用途で、レンズ系として倒立顕微鏡対物レンズを利用すると便利である。この例において、マスク形体のサイズは、系内の顕微鏡対物レンズと他のレンズの特徴によって規定される倍率で縮小される。一般に、追加のレンズは、視野絞りスライダと顕微鏡レンズ系の対物レンズの間の光路内に位置する。ここで、たとえば、20倍の対物レンズである場合、対物レンズと視野絞りスライダの間の2.57倍レンズによって、7.8倍の形体の縮小が行われる。この場合、350μm角のマスク形体で、図1〜2に定義したような微細構造立方体、すなわち、x−y平面に長さ45μmの側面を持つ長方形の平行6面体が合成される。
【0045】
図1〜2に示したように、微細構造のz平面の高さは、ほとんどの2次元微細構造に関して、マイクロ流体デバイスの断面およびそのデバイス内の非重合潤滑層によって規定される。前述した酸素援用の重合阻止プロセスの例では、高さが約1μmから約5μmの間の非重合潤滑層で十分である。厚さ約2.5μmの非重合潤滑層を用いた場合に、マイクロ流体デバイスの断面高さが20μmであるとすると、結果的に得られる高分子微細構造は、約5μm短いものになる。換言すると、この例では、図1〜2に定義したz平面の高さが約15μmになる。
【0046】
多くの用途について、前述した例と同様の投影リソグラフィ技法の基本的制約は、利用する対物レンズの光学分解能および焦点深度によって規定される。対物レンズの分解能は、ここでは、見分けることができる最小判別可能形体を意味し、焦点深度は、ここでは、対物レンズから出た光線が一定の直径を持つと考えられる長さを意味するものとする。本発明の投影リソグラフィ技法において、光学分解能は、合成可能な最小形体サイズを規定し、焦点深度は、重合微細構造の側壁が直線状であり得る長さを規制する。光学解像度を大きくすると、焦点深度が短くなる。また、透過マスクに印刷可能な最小形体サイズは、形体のサイズに対する制約の一因である。
【0047】
所定の用途に対応した適切な透過マスクを作製できるならば、投影リソグラフィプロセスにレンズ系を採用する必要はない。対物レンズが存在しない場合、照明はマスクを通過した後、形体サイズが縮小することなく、マイクロ流体デバイス内の単量体流に誘導される。そして、マスクの形体は、重合する単量体流内で同一形状に再生される。
【0048】
本発明は、特定のタイプのマスクに限定されるものではなく、単量体流内において高分子微細構造の形状定義と重合とを同時に実現できる任意の適切なマスクまたは照明構成を採用することができる。開口、インクマスク、クロムマスクなどの金属マスク、写真フィルム、前述したデジタルマイクロミラーデバイスなどの動的マスク、および他の同様のマスクと技法を利用してよい。一般に、必要とされるのは、マイクロ流体デバイス内の単量体流に対した照明を照射または誘導することのみである。
【0049】
多光子照明および多重ビームのリソグラフィ技術も利用でき、これにより、たとえば、3次元の微細構造形体を作製できる。図5は、本発明に従って合成され、3D形体を含む高分子微細構造90の例を模式的に示す図である。この例において、三角形のマスク形体92が、レーザ干渉リソグラフィに利用されて、レーザ照明により微細構造が重合されるときに、その微細構造をリソグラフィ方式で画定する。その結果得られる微細構造は、構造全体に相互貫入穴を持つマトリックスによって特徴付けられる。本発明の高分子微細構造に追加された3Dの次元性は、選択した機能または他の作用に対応した各種の用途に利用できる。本発明は、特定の3D技術または微細構造の特定の種類に限定されずに、微細構造形体に対するほぼ自由な3Dの個別設定を実現できる。
【0050】
また、本発明の合成プロセスに用いられるマイクロ流体デバイスの断面の幾何学的配置を調整して、微細構造の幾何学的配置を個別設定することもできる。図6A〜6Eは、マイクロ流体デバイスの幾何学的配置の例を示す模式的断面図である。これらの例には、マイクロ流体デバイスのアセンブリ工程が示されており、このアセンブリ工程は、広範囲にわたるデバイスの幾何学的配置の簡便な製造を実現できる。
【0051】
図6Aに、図1A〜1Bと同様のデバイス12の例を示す。このデバイス12は、長方形の断面ボリューム95を持ち、単量体流はこのボリューム内を通ることができる。このデバイスの製造は、高分子デバイス材料、たとえば、PDMSに関して好都合に実行できる。このようなシナリオにおいて、たとえば、シリコン基板に、リソグラフィ方式でパターン印刷され、かつ、選択したデバイス断面の幾何学的配置にエッチングされた型が設けられる。対応するPDMS構造100は、この基板の型を用いて、従来の成形技法により成形される。その結果得られるPDMS構造100は、デバイスの上面および側面を構成する。透明の支持構造、たとえば、ガラス板104の上に、PDMS層102が配設されて、PDMSデバイスの底面を提供する。PDMS構造100は、ガラス板上のPDMS層102と結合されて、中空の長方形マイクロ流体デバイスを形成する。このアセンブリ工程は、特に簡便であり、また、ガラス板などの支持構造をデバイスに設けることができる。
【0052】
次に、図6Bの例を参照しながら説明する。上部のPDMS構造100は、前述したように成形でき、パターン印刷および成形されたPDMS層106がグラス板104の上に設けられる。これにより、デバイスの幅に沿って形体を有する断面、すなわちチャネル108を実現できる。図6Cに示すように、この例は、多重レベルリソグラフィ技法を利用してPDMS構造110とPDMS層112の両方をパターン化することで拡張することができる。リソグラフィステップのこの組み合わせにより、複雑なデバイス断面114を作製することができる。
【0053】
図6Dに、マイクロ流体デバイス断面の例を模式的に示す。この例において、PDMS構造116は、丸みのある断面118を作製するために、管またはロッドの周囲に成形される。成形された構造116は、その構造自体が、たとえば、ガラス板104上で直接支持されてよい。図6Eは、マイクロ流体デバイスの例を模式的に示すが、この例において、PDMS構造120は、グレースケールリソグラフィ技法を利用して形成されており、その構造の幅方向に角度の付いた幾何学的配置を実現している。角度付き断面122は、この構成から得られたものである。ここで、ガラス板104の上に、前述した方式でPDMS層102を設けることができる。あるいは、リソグラフィ方式によるPDMS層の画定を利用して、断面輪郭の形体を増やすこともできる。
【0054】
マイクロ流体デバイスの断面の高さは、投影マスクの形体サイズと共に、前述した図1の感光性単量体の例に示した微細構造を完全に重合させるために必要な露光時間を規定する。重合の露光時間は、デバイスの断面およびマスクの形体サイズの両方に反比例する。照射される照明と整合する方向におけるチャネルの広がりが小さくなると、あるいはマスク形体サイズが小さくなると、より長い重合期間が必要になる。マスク形体サイズが縮小すると、照明の合焦に用いられる顕微鏡の光学縦列、または採用される他の光学系内の回折に誘発される制約により、重合量を増やすことが必要になる。
【0055】
必要な重合期間の増加は、ひいては、単量体流内における重合微細構造の望ましくない形状変形を避けるために、マイクロ流体デバイスを通って連続して流れる単量体流の最大許容速度を制限することになる。本発明によれば、微細構造形体サイズ許容範囲を規定し、その許容範囲と、マイクロ流体デバイスとマスク形体サイズに必要な重合期間と、に基づいて、指定した微細構造形体サイズ許容範囲を満たす単量体流の流量を決定することが好ましい。単量体流の流量は、たとえば、シリンジポンプ動作や、毛管作用や、圧力や、電気運動力や、他の指定の動作で制御することができる。
【0056】
前述したように、ストップフローリソグラフィは、本発明に係る連続フローリソグラフィの代替として、図1に示したものと同様のマイクロ流体デバイス内の単量体流と共に利用することができる。ストップフローリソグラフィ処理において、単量体流のフローは、リソグラフィ−重合ステップが開始される前に、ほぼ完全に停止される。リソグラフィ−重合ステップが完了すると、単量体のフローが再開され、合成粒子は、リソグラフィ−重合が行われたチャネル領域から完全に流し出される。これにより、合成された微細構造が、後に続く微細構造の重合と干渉することを確実に回避する。
【0057】
多くの用途に関して、このストップフローリソグラフィ技法は、連続フローリソグラフィと比べて向上した、合成高分子微細構造形体分解能を提供できる。ストップフローリソグラフィ技法は、また、連続フローリソグラフィよりも向上した微細構造合成処理量を達成することができるが、これは、微細構造の流し出しステップを高流量率で実行できることから、より高い平均単量体流流量率を採用できるためである。連続フローリソグラフィは、一般に、ストップフローリソグラフィよりも機構的に単純であり、そのために、ストップフローリソグラフィ特有の利点を必要としない用途に選択される。ストップフローリソグラフィは、小さい形体、たとえば、〜10μm以下の形体を持つ高精度微細構造を作製するために用いられる用途において、または、後述するような、微細構造内の隣接する化学的性質の間に先鋭な界面を作製する必要がある場合に、連続フローリソグラフィよりも好ましいとされる。2つの混和性の流れの間の界面は、隣接する流れの間で分子種が拡散できる滞留時間が短くなるにつれてより先鋭になる。ストップフローリソグラフィ設定において、一方は、2つの高速に流動する流れが停止した直後に重合できるため、停留時間が削減され、界面をさらに先鋭に形成できる。
【0058】
図7は、例示するストップフローリソグラフィシステム150の要素を示すブロック図である。このストップフローリソグラフィシステム150を利用して、前述の図1を参照して説明したような微細構造の感光性重合を実行することができる。ストップフローリソグラフィシステム150は、圧力駆動による単量体流の流動のための制御圧力源152と、前記圧力源152からの加圧を停止および開始する三方バルブ154と、を含む。圧力源は、圧力源機構の動的応答が優れているため、この用途では、シリンジポンプよりも圧力源の方が好ましい。
【0059】
投影リソグラフィ用の光源、たとえば、UV光源156が設けられる。シャッタ158または他の制御機構を設けて照明の期間を制御し、マスク160または他のシステムは、前述した方式でマイクロ流体デバイス162と整列される。また、必要に応じて、顕微鏡対物レンズ164や他のレンズ系を設けて、照明形体サイズを小さくする。コンピュータ166や、他の処理装置や、他の処理システムを設けて、シャッタ158およびバルブ154の同期制御を行い、マイクロ流体デバイスを通る単量体流のフローが、単量体流の照光と一致して停止および始動するように調整する。
【0060】
バルブおよびシャッタは、たとえば、シリアルRS232接続や、USB接続や、データ収集ボードや、他の適切な接続を介して接続された、適切な制御ソフトウェア、たとえば、テキサス州オースティンのナショナルインスツルメンツ社(National Instruments CORP)製のラブビュー(LabVIEW)など、を用いて制御することができる。あるいは別の構成として、コンピュータ制御された圧力変換器を用いて、指定のフロー圧力と停止フローのゼロ圧力の間で単量体流の圧力を調整してもよい。圧力源は、たとえば、約0〜30psiを供給できる任意の適切なガス圧力源として設けることもできる。三方バルブまたは圧力変換器は、たとえば、10μLのピペットチップによってマイクロ流体デバイスに嵌めこまれる適切な細管、たとえば、直径1/32”(約0.79mm)のタイゴン(登録商標)細管を介してマイクロ流体デバイスに連結される。一例のシナリオにおいて、このピペットチップは、所定のボリュームの単量体流で満たされ、マイクロ流体デバイス内に挿入されて、そのデバイスを通る単量体のフローを始動する。ここで、圧縮ガスヘッドを採用して、前記細管に接続し、その細管を通ってピペットチップまで空気が流れるように構成し前記フローを駆動することもできる。
【0061】
図7のシステム150について、特にストップフローリソグラフィ処理に関連して説明したが、システム150は、連続フローリソグラフィ処理において単量体流の流量を制御するために利用することもできる。この態様の動作において、三方バルブは、開状態に維持されて、デバイス内を流れる単量体流に一定の圧力が印加される。ここで、コンピュータを利用して、シャッタスピードと相関的に、単量体流の流量を制御することができる。
【0062】
次に、本発明の微細構造合成プロセスに用いられる高分子化学の具体的な特性について説明する。このプロセスは、重合可能な任意の液相の単量体を用いて実行でき、このプロセスにおいて、微細構造形状の画定および重合は、リソグラフィ−重合の単一ステップで達成される。好ましくは、選択した単量体も、停止種で停止可能な重合作用によって特徴付けられる。したがって、停止種と、リソグラフィ照明と、単量体成分とは、本発明のプロセスのこのような機能すべてを協働して実現するように選択される。
【0063】
前述したように、特に適した高分子の1つの類は、UV照明、可視光照明、熱開始反応、または他の起爆放射線や起爆剤による遊離基開始重合を行う種類の重合性単量体である。このような単量体系統は、好ましくは、遊離基開始重合の連鎖延長を起こす1つ以上の不飽和(二重結合)種を含む。このような単量体の例は、アクリレート類と、マルチアクリレート類(multi-acrylates)と、メタクリエート類(methacryates)と、マルチメタクリレート類(multi-methacrylates)と、ビニル類と、これらの任意の混合物とを含む。
【0064】
下記の表1は、本発明に係る高分子微細構造合成に利用できる各種の単量体について、網羅的なものではないが、その一部を示すリストである。
【0065】
【表1】
【0066】
光重合可能なこれらの単量体については、単量体流に光開始剤種を挿入して重合プロセスを実現できる。事実上、照明を吸収した結果として、流体の単量体流内に遊離基を生成できる任意の化学物質は、光開始剤種として利用できる。一般に、2種類の光開始剤が存在する。第1の種において、化学物質は、単分子結合開裂を経て遊離基を発生させる。このような光開始剤の例は、ベンゾインエーテル類と、ベンジルケタール類と、a−ジアルコキシ−アセトフェノン類と、a−アミノ−アルキルフェノン類と、アシルホスフィンオキシド類と、を含む。光開始剤の第2の種は、光開始剤が共開始剤と反応して遊離基を形成する二分子反応によって特徴付けられる。このような種の例には、ベンゾフェノン類/アミン類と、チオキサントン類/アミン類と、チタノセン類(可視光)とがある。
【0067】
下記の表2は、本発明に係る高分子微細構造合成で光重合可能単量体と共に利用できる各種の光開始剤について、網羅的なものではないが、その一部を列挙したリストである。
【0068】
【表2】
【0069】
本発明によれば、高分子微細構造が合成されることになる単量体流は、選択した微細構造の官能性をもたらす種々の官能基を受け入れることができ、これにより、たとえば、環境検知、自己集合、レオロジー、生体検知、薬物送達、および他の用途に微細構造を応用できるようになる。官能基は、たとえば、共有結合取り込みにより化学的に微細構造に付加されても、あるいは、物理的に微細構造に付加または混入されてもよい。共有結合により取り込まれる部分は、単量体流内に、微細構造合成のリソグラフィ−重合ステップによって重合される単量体として提供できる。この単量体は、単独、または共重合種と組み合わせて取り込むことができ、単独、または共重合種と共に、合成高分子微細構造内に、選択した官能基を提供する。
【0070】
たとえば、単量体流に単量体種を混入して、温度感受性高分子微細構造を合成することができる。ここでは、N−イソプロピルアクリルアミド単量体または他の適切な単量体を利用できる。単量体流内に単量体種を混入して、pH−反応性高分子微細構造を合成することができ、この場合、たとえば、アクリル酸や、メタクリル酸や、他の適切な化学種などの単量体を利用できる。さらに、単量体流内に単量体種を混入して、感光性高分子微細構造を合成することができ、この場合、アゾベンゼン、N,N−ジメチルアクリルアミド、または他の適切な単量体の共重合体を利用できる。単量体流内に単量体種を混入して、抗原応答性高分子微細構造を合成することができる。この場合、N−スクシンイミジルアクリレートと結合されたヤギ抗ウサギIgG、または他の適切な単量体を利用できる。これらの例では、選択した単量体種を混入することによって、合成微細構造に広範囲の官能性を付与できることを示した。
【0071】
さらに、本発明によれば、修飾生物材料と同様に、生分解性単量体も単量体流内に混入することができる。たとえば、単量体流にDNAまたはRNAを混入できる。これらは、カスタム合成したり、あるいは市販されているものから取得したりできる。ポリペプチド類や、抗体や、酵素や、他の同様の化学種も単量体流内に混入できる。選択した各化学種は、微細構造が重合される際に、共有結合による組み込みを実現できるように、必要に応じて修飾することができる。また、蛍光体および発色団、たとえば、フルオレセインジアクリレートおよびメタクリル酸ローダミンなど、または他の分子や大きな分子の一部は、光によって活性化されて蛍光発光したり、あるいは特定の波長の光を選択的に吸収したりできるものであり、これらもまた単量体流内に混入できる。
【0072】
また、本発明によれば、選択した要素は、本発明のリソグラフィ−重合ステップによって微細構造が重合されるときに、高分子微細構造の高分子マトリクス内に物理的に閉じ込められるように、単量体流内に供給することができる。たとえば、量子ドットのような粒子と、乳化液滴と、気泡と、導電性金属粒子種と、金または銀のやすり粉(filing)または粒子と、ナノメートルサイズの磁鉄鉱粒子や磁赤鉄鉱粒子などの磁気感受性粒子種と、カーボンナノチューブと、マイクロエレクトロニクス材料または他の材料からなる三次元マイクロマシン構造または三次元微細加工構造と、他の化学種と、を混入できる。これらは、必要または要望に応じて、単量体流内に供給された1つ以上の単量体と物理的または化学的に結合されてよい。さらに、液晶と、ウィルスと、ミトコンドリア、タンパク質、酵素、核酸などの全細胞または細胞成分と、他のこのような化学種と、を単量体流に混入して、高分子微細構造マトリクス内に閉じ込めることもできる。単量体流に各種のポロゲン(porogen)、たとえば、界面活性剤、気泡、溶解可能な微小粒子、またはPMMAナノ粒子のようなナノ粒子など、を追加することで、その結果得られる高分子微細構造の気孔率を制御することができる。
【0073】
図8A〜8Cは、本発明に従って合成され、選択部分を含む高分子微細構造の例を模式的に示した図である。図8Aの例では、四角形マスク形状200が用いられ、選択部分205は、結果的に得られる長方形微細構造208の高分子マトリクス内に組み込まれている。ここでは、ビード、乳濁液滴、気泡、細胞、前述した粒子や他の選択した要素、または他の化学種を混入することができる。
【0074】
図8Bは、高分子微細構造210の例を模式的に示す図である。この高分子微細構造210も正方形マスク形体200を用いて合成されるが、ここでは、前記構造の高分子マトリクス内にDNAスタンド212が組み込まれている。図8Cは、円形マスク形体216を用いて合成される高分子微細構造214の例を模式的に示す図である。結果的に得られる円形微細構造214は、ここでは、微細構造の高分子マトリクス内に組み込まれたタンパク質218または他の部分を含んでいる。これらの例は、限定するためのものではなく、微細構造の高分子マトリクス内に組み込まれる、選択した化学種を用いて作製できる各種の高分子微細構造を例示するためのものである。
【0075】
高分子微細構造合成中に組み込まれるように単量体に追加される、1つ以上の選択した化学種は、たとえば、渦混合や、音波処理や、他の指定の技法を用いて単量体に混合することができる。また、単量体に界面活性剤を混合して、ポロゲンや、部分や、他の追加要素が凝集しないように安定させることができる。単量体に追加される一部の化学種は、単量体流内の流体の単量体の連続相に粒子の分散相を形成する。本発明によれば、このような分散層は、微細構造を作製するために重合される相を構成するものではない。前述したように、単量体流の連続相は、重合されるものであるが、分散相は、微細構造マトリクス内に共有結合方式で結合されていない場合、結果的に得られる合成高分子微細構造の形状内に閉じ込められる。一般に、この分散相は、合成高分子微細構造形状の外形または幾何学的配置を規定しない。微細構造形状を規定するのは、重合連続相に適用されるリソグラフィマスクの形状である。
【0076】
本発明によれば、高分子微細構造は、微細構造の平面上の異方性配列内に2つ以上の官能性および化学的性質の少なくともいずれかを包含するように、制御可能に合成できる。図9Aと図9Cは、このような合成を実現する流動構成の2つの例を模式的に示す平面図である。図9Aに例示する流動構成において、2つの入口232,234を持つY字形流動構造230が設けられ、その各入口は、前述したようなマイクロ流体デバイスの断面ボリュームに、選択した個別の単量体流236,238をそれぞれ導入するように指定される。この断面ボリュームは、ここでは、2つの流れ236,238の隣接配列239の領域に模式的に示されている。
【0077】
2つの隣接する単量体流から微細構造を合成するには、選択したマスク形状、たとえば、図9Aのリング形状240を、前述した本発明のリソグラフィ−重合合成に利用する。第1例の合成プロセスにおいて、マスク240および照明源は、選択した方式で、2つの流れの界面241をまたいで整列され、この状態に応じて選択した割合の各流れを、合成される微細構造の中に取り込む。第2例の合成プロセスにおいて、マスクおよび照明源は、流れの側面から、2つの流れを通り抜けるように整列され、図1Bのレンズ系35の構成例と同様に、微細構造の厚さ方向に所定の割合の各流れを取り込む。この構成に加えて、あるいはこの構成に代えて、この2つの流れの相対流量を制御して、微細構造に取り込まれる各流れの割合を調整してもよい。これらの技法により、両方の単量体流の成分を所定の割合で取り込んだ高分子微細構造が作製される。
【0078】
図9Bは、図9Aのような2つの単量体流にまたがるリソグラフィ−重合ステップから得られる高分子微細構造242の例を模式的に示す図である。この微細構造は、一方の単量体流238に対応する第1ボリューム245と、もう一方の単量体流236に対応する第2ボリューム247とを含む。この2つのボリューム245,247は、図9Bの微細構造に、ほぼ同等に図示されているが、必ずしも等しい必要はなく、前述したように、任意の割合を選択することができる。図9Bに示したような二成分微細構造は、一般に、ヤヌス粒子または2面性粒子として知られている。ヤヌス粒子は、さまざまな用途で極めて有用であり、処理量が高く、信頼でき、再現性のある本発明の高分子合成プロセスの特徴は、ヤヌス粒子の作製を実用的な方式で実現できる。
【0079】
図9Cを参照して説明すると、本発明に従って、マイクロ流体デバイスを通る3つ以上の単量体流の同時フローを利用して、これらの流れにまたがる微細構造を合成し、多数の隣接する化学物質および官能基の少なくともいずれかを有する微細構造を生成できる。図9Cに、4つの異なる単量体流252,254,256,258を収容するY字形流動構造250を模式的に示す。これらの流れは、すべてマイクロ流体デバイスを通るように誘導され、ここでは流れの隣接配列260によって模式的に図示されている。これら4つの流れにまたがるリソグラフィおよび重合に対応したマスク形状262が設けられる。その結果得られる高分子微細構造264を図9Dに模式的に示した。4つの単量体流252,254,256,258は、それぞれ、対応する微細構造ボリューム264,266,268,270を生成する。この数の化学物質の割合を調整する機能は、複数の構成要素を提供する、いわゆるバーコード式微細構造の設計に、大幅な柔軟性をもたらすことができる。
【0080】
図10A〜10Hは、高分子微細構造の追加の例を示す模式図である。これらの高分子微細構造は、微細構造の形状をリソグラフィ方式で画定しながら、複数の並流単量体流にまたがって、あるいはその単量体を横切って、前記形状を重合することによって合成できる。図10Aの例では、長方形マスク300と4つの単量体流とを用いて、対応する長方形の4分割微細構造305を作製する。図10Bの例において、長方形マスク300は、3つの単量体流と共に用いられており、そのうちの1つは、たとえば、ポロゲン205を含み、また、1つは、たとえば、DNAスタンド212を含むことで、前述した方式で、複数の異なる官能基を持つ3分割微細構造308を作製する。
【0081】
図10Cの例では、3つが同一で、3つが異なる6つの単量体流と共に円形マスク310を用いて、円盤状微細構造311を作製している。この円盤状微細構造311には、同一成分を持つ3つの領域312,314,316が組み込まれており、これらの3つの領域は、成分が異なる3つの領域318,320,322によって区分けされている。この例の微細構造において、結果的に得られる微細構造の6つの領域は、それぞれ、対応する単量体流の流量によって設定される個別の幅によって特徴付けられる。
【0082】
図10Dは、2つの単量体流にまたがって合成された高分子微細構造330を模式的に示す図で、ここでは、各単量体流に対応する微細構造領域に個別形体の幾何学的配置を提供するマスク形状を利用している。図10Eは、S字形マスク336を利用して、5つの単量体流にまたがって合成された高分子微細構造334を模式的に示す図である。ポリマー種の区別は構造全体で維持される。
【0083】
本発明によれば、高分子微細構造の合成に用いられる、並行流の単量体流は、混和性で、化学的に類似する流れであってよい。この場合、結果的に得られる微細構造における異なる領域の間の界面は、分子拡散により、鋭いものにはならない。層流の特徴である拡散律速混合を活用して、単量体流が確実にマイクロ流体デバイス内を個別に流れるようにできるが、この場合、隣接する重合領域の間で分子拡散が発生することになる。一方、並行流の単量体流が不混和性である場合は、合成高分子領域間に先鋭な界面を実現できるため、際立って分離された化学的性質を持つことに加え、界面エネルギが異なる複数の領域を含む微細構造を作製することができる。
【0084】
図10Fは、2つの単量体流にまたがって合成された高分子微細構造340の例を示す図であり、この単量体流のうちの1つは、親水性高分子領域342を提供し、単量体流のうちの1つは、疎水性高分子領域344を提供する。微細構造内の2つの領域の界面346は、この2つの領域の異種の界面エネルギによって、特徴的に曲げられている。このような微細構造の両親媒性の性質を利用して、この微細構造の個体群の自己集合化を実現できる。
【0085】
図10G〜10Hは、並行流の複数の単量体流にまたがるのではなく、複数の単量体流を貫通して行われるリソグラフィおよび重合で合成された高分子微細構造352,358を示す模式図である。図10Gに示すように、円形マスク350を用いて、3材質微細構造が作製されており、この構造体の円形断面の成分は、当該構造体の厚さ方向に変化する。同様に、図10Hに示した星形高分子微細構造は、4つの異なる単量体流にまたがって合成されて、星形構造体の厚さ方向の成分が異なる一方で、その構造体の所定の星形平面に一定の成分を持つ微細構造358を形成する。
【実施例】
【0086】
[実施例1]
まず、マサチューセッツ州ニュートンのマイクロケム(Microchem)社製のフォトレジストSU−8を用いてシリコン基板をパターニングして、図6Aに示したような長方形マイクロ流体デバイス断面に対応する型構造を画定することで、いくつかのマイクロ流体デバイスを作製した。結果的に得られた前記シリコン基板の雄型チャネルに、ミシガン州ミッドランドにあるダウコーニング(Dow Corning)社製のシルガード(Sylgard(登録商標))184シリコンエラストマとして提供されたPDMSを注入し、図6Aに示したような上部PDMSデバイス構造100を成形した。長さ1cmの長方形マイクロ流体デバイスについて、パターニングにより、3つの異なる幅、すなわち、20μm幅と、600μm幅と、1000μm幅と、に画定し、また、パターニングにより、3つの異なる長方形マイクロ流体チャネル高さ、すなわち、10μmの高さと、20μmの高さと、40μmの高さと、に画定した。スライドガラス上に、PDMSの層をスピンコートして、図6Aに示したようなマイクロ流体デバイスの底面を形成した。成形された上部PDMSデバイス構造を、PDMSコートされたスライドガラスと結合して、完全なマイクロ流体デバイスを形成した。
【0087】
これらのマイクロ流体デバイスを用いて、本発明のリソグラフィ−重合処理を実行するため、これらのデバイスから選択した1つを倒立顕微鏡に搭載した。この倒立顕微鏡は、ニューヨーク州ソーンウッドのカールツァイスマイクロイメージング社(Carl Zeiss MicroImaging, Inc.)製のアキシオバート(Axiovert)200倒立顕微鏡である。電荷結合素子(CCD)カメラ、ニューヨーク州タリータウンの日立アメリカ社(Hitachi America, Ltd.)製Hitachi KP−M1AモノクロCCDカメラを配設して、マイクロ流体動作時の画像を取得した。NIH Imageソフトウェアを利用して、CCD画像を取り込んで処理した。
【0088】
選択した微小構造形状の暗視野透過性フォトマスクは、設計ツール、カリフォルニア州サンラフェルのオートデスク社(Autodesk, Inc.)製オートキャド(AutoCAD(登録商標))2005を有するソフトウェアで設計し、カリフォルニア州ポウエイのCADアートサービス(CAD Art Services)により高解像度プリンタで印刷した。結果的に得られた透過マスクは、顕微鏡の視野絞り内に挿入した。UV照明源は、マサチューセッツ州ダンバースのオスラムシルバニア社(OSRAM Sylvania)製100W OSRAM HBO(登録商標)水銀ショートアークランプにより提供した。広範囲のUV励起を実現できるバーモント州ロッキンガムのクロマテクノロジー社(Chroma Technology CORP)製のフィルタセット、11000v2:UVを利用して、所望の照明波長である365nmを選択できるようにした。ニューヨーク州ロチェスターのヴィンセント社(Vincent Ass.)製のプログラム機構付電子シャッタ、ユニブリッツ(UniBlitz(登録商標))VS25を、同社のコンピュータ制御シャッタドライバコントローラ、VMM−D1によって駆動して、指定のパルスのUV光を生成した。
【0089】
ニューヨーク州タリータウンのチバスペシャリティケミカルズ社(Ciba Specialty Chemicals)製の光開始剤ダロキュア(DAROCUR(登録商標))1173を5%(v/v)含む、ペンシルベニア州ウォリントンのポリサイエンス社(Polysciences)製のポリ(エチレングリコール)(400)ジアクリレート(PEG−DA)のモノマー溶液を利用した。PEG−DAの粘度は、25℃において57cP(57mPa・s)であると供給業者から報告された。また、トリメチルプロパントリアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、およびトリ(プロピレングリコール)ジアクリレートの追加のモノマー溶液も調製した。マサチューセッツ州ホリストンのケーディー・サイエンティフィック社(kdScientific)製のシリンジポンプ、KDS100単一シリンジ薬物注入ポンプに、前記溶液のうちの選択した1つを装填して、マイクロ流体デバイスのうちの選択した1つ内に送達した。
【0090】
透過マスクおよびマイクロ流体デバイスを介して、そのマイクロ流体デバイス内を流れるモノマー溶液にUV光のパルスを照射した。そのパルスによって、単量体内で高分子微細構造が重合されると、微細構造は、前記デバイスを通って、デバイス壁面における酸素誘起重合阻止によって生じる、単量体の非重合ボリューム内に運ばれた。単量体−微細構造溶液は、デバイスの長方形チャネルの出力部に設けた容器内に回収した。この溶液内の微細構造は、遠心分離により収集し、洗浄し、さらに、エタノール内での再懸濁を3回行って、微細構造上に残留する未重合の単量体を溶解させた。次に、微細構造を水中で3回洗浄してから水中に懸濁させた。
【0091】
個別の微細構造合成プロセスで、4つの異なる顕微鏡対物レンズ、すなわち、20倍、40倍、63倍、および100倍の対物レンズを利用した。下記の表3に、各対物レンズの実倍率と、理論分解能と、実用分解能と、焦点深度とを示す。
【0092】
【表3】
【0093】
実倍率の係数は、マイクロ流体デバイス内の単量体流に投影される際にマスク形状のサイズが縮小される倍率である。これは、視野絞りスライダと対物レンズの間の光路内の追加の2.57Xレンズにより、対物レンズの倍率とは異なったものになっている。理論分解能は、次に示すレイリーの式を用いて計算した。
【0094】
【数1】
【0095】
前式において、λは、利用した照明の波長365nmで、NAは対物レンズの開口数である。実用分解能は、異なる対物レンズを用いて、10μmのマスク形体が縮小されるサイズである。焦点深度(DOF)は、レンズ製造業者によって提供される式を用いて、次式のように計算した。
【0096】
【数2】
【0097】
このことから、対物レンズの倍率が高くなると、分解能は大きくなるが、焦点深度は小さくなるということがわかる。
【0098】
リソグラフィ−重合プロセスのCCD画像の分析により、選択した単量体の重合反応速度が高速であることから、微細構造は約0.1秒未満ですばやく形成されたことが判明した。PDMS面近傍における酸素によって補助された重合阻止は、デバイスの全長にわたり、非重合単量体流内での微細構造の流動を可能にした。図3〜4に示したような、三角形、四角形、六角形、柱状、および他の微細構造幾何学的配置が合成された。すべての粒子は、オリジナルのマスク形体寸法に対する優れた忠実度を示し、まっすぐな側壁を持っていた。
【0099】
[実施例2]
実施例1の方法で、10μmから500μmの範囲のエッジ長さを持つ四角形マスク形体を用いて、四角形高分子微細構造を合成した。この微細構造の合成は、20倍対物レンズおよび40倍対物レンズについて、繰り返して行った。10μmと、20μmと、40μmのチャネル高さを持つ、実施例1に記載した3つのマイクロ流体デバイスを利用した。マイクロ流体デバイス内で、実施例1のPEG−DAおよびダロキュア(DAROCUR(登録商標))1173光開始剤単量体流を利用し、リソグラフィ−重合ステップの実行中、前述したストップフロー処理において、単量体流の流れを停止させた。その結果得られた微細構造を回収して、実施例1と同様に分析した。
【0100】
微細構造の分析を行って、異なる高さのチャネルにおいて所定の露光時間で重合可能な最小マスク形体を特定した。図11Aは、20倍の対物レンズについて、重合できる最小マスク形体と露光時間との関係を示したグラフである。図11Bは、40倍の対物レンズについて、重合できる最小マスク形体と露光時間との関係を示したグラフである。この判定は、対応するマスク四角形の10%の許容範囲内で、所定のサイズの四角形が重合された時点を記録することにより実行した。形体サイズまたはチャネル高さが減少するにつれて、四角形微細構造の重合に、より長い露光時間が必要になった。
【0101】
[実施例3]
実施例1のマイクロ流体デバイスのうち、断面チャネル高さが38μmである(40μmを意図した)ものを採用して、PDMSで被覆したスライドガラスを被覆していないスライドガラスに入れ替え、実施例1と同様の単量体を用いて、高分子微細構造の合成を実行した。合成された微細構造はガラス板に貼り付くことが判明した。この結果は、実施例1におけるPDMS被覆によって実現される酸素の阻止効果が存在しないため、合成された微細構造がガラス表面にいたるまで重合できたものと考えられる。
【0102】
高分子微細構造は、実施例1と同様の方式で、いずれも38μmの断面チャネル高さを持つ、PDMS被覆スライドガラスデバイスと、被覆していないスライドガラスデバイスと、を用いて合成した。2つのデバイスそれぞれで、0.1秒の露光時間texpと、360μm角のマスク形状と、20倍の対物レンズとを利用した。
【0103】
2つのマイクロ流体デバイスで合成された微細構造は、前述の実施例1と同様に、回収および分析した。被覆されていないスライドガラスデバイスで合成された微細構造は、35.5μmの高さを特徴とした。PDMS被覆スライドガラスデバイスで合成された微細構造は33μmの高さを特徴とした。被覆されたスライドガラスデバイスでの合成中に、酸素により補助された阻止層が形成されたものとして、デバイスの上部と下部両方の壁面において、非重合潤滑層は2.5μmであると特定した。
【0104】
この実験は、チャネル高さが10μm、40μm、および75μmの長方形マイクロ流体デバイスについて繰り返し実行した。いずれのチャネル高さについても、2.5μmの重合阻止層の厚さが測定された。この結果は、重合阻止層の厚さは、マイクロ流体デバイスの断面高さとは無関係であることを示している。
【0105】
[実施例4]
実施例1と同様に、10μmから500μmの範囲の異なるサイズの形体を持つ透過マスクを作製した。単量体流としてフルオレセイン溶液を採用して、実施例1のリソグラフィ−重合プロセスを実行した。このプロセスで合成された微細構造は、実施例1の方法で回収および分析した。
【0106】
顕微鏡対物レンズの視野絞り面において透過マスクを通過した光は、250μmの臨界形体サイズ未満で、形体サイズに依存した強度を持つことが判明した。この臨界形体サイズの上では、光の強度があらゆるマスク形体寸法で等しくなり、そのような形体が同一の露光期間で重合した。この臨界サイズを下回ると、ビーム強度は、形体のサイズに応じて減少することが判明した。測定されたこの強度変動は、開口部のサイズが減少するにつれて、光線の拡散量が大きくなるため、マスクを透過する光がクリッピングされることが原因であるものと認められる。
【0107】
[実施例5]
10μm、20μm、40μmの四角形チャネル高さを持つマイクロ流体デバイスで、20倍の対物レンズと、PEG−DAおよび光開始剤からなる単量体流と、を利用して、実施例1のリソグラフィ−重合プロセスを実行した。プロセス間で、約100μm/sと約1700μm/sの間で単量体流の速度を変化させ、4つの異なる重合プロセスを実行した。これらのプロセスで合成された重合微細構造は、実施例1と同様に回収および分析した。
【0108】
図12は、許容率10%の長さスケールで、所定の速度のPEG−DA単量体流内で重合できた最小マスク形体サイズの測定値を示すグラフである。このデータを指標として利用して、選択したマスク形体サイズを合成するために利用できる最大単量体流速度を特定することができる。より小さい形体を有する微細構造を生成するためには、より低速の単量体流を必要とし、より大きな微細構造は、より高速の単量体流で合成できた。
【0109】
[実施例6]
2ポートフロー構造を用いて、実施例1のリソグラフィ−重合プロセスを実行した。この2ポートフロー構造は、実施例1の1ポート構造の方式で作製したが、ここでは、図9Aと同様のY字形の幾何学的配置を利用して、長方形のヤヌス粒子を生成した。単量体流が並行して流れるチャネル領域の断面は、高さ200μm、幅20μmとした。この構造の第1ポート内に、図1のPEG−DAおよびダロキュア(DAROCUR(登録商標))1173の単量体流のフローを誘導した。前記構造の第2ポート内に、ローダミン標識架橋剤である、ペンシルベニア州ウォリントンのポリサイエンス社製の蛍光メタクリルオキシメチルチオカルバモイルローダミンB(fluorescent methacryloxyethyl thiocarbamoyl rhodamine B)の0.005wt%溶液と共に、ダロキュア(DAROCUR(登録商標))1173とPEG−DAのフローを誘導して、高分子に蛍光ラベルを設定した。長方形のマスク形体を、2つの単量体流のフローにまたがるように配列し、実施例1と同様に、リソグラフィ−重合を実行し、重合微細構造を回収して分析した。図9Bに示したように、蛍光標識が設定された部分と設定されていない部分とが明確に形成されたことが、蛍光顕微鏡検査により検証された。
【0110】
[実施例7]
実施例1の実験条件を用いて、Y字形の2ポートのPDMSマクロ流体デバイスで、実施例6のリソグラフィ−重合プロセスを実施した。このデバイスは、長方形断面のチャネルで、チャネル高さ30μm、チャネル幅200μmと300μmとを持つ。PDMSマイクロ流体デバイスのそれぞれに、容器を挟み込んで、合成微細構造を回収した。シャッタ制御は、0.03秒のリソグラフィ露光時間と、連続する露光の間に5秒の休止と、を提供するように設定した。
【0111】
ペンシルバニア州ウォリントンのポリサイエンス社製のトリ(メチルプロパン)トリアクリレート(TMPTA)内の5%(v/v)のダロキュア(DAROCUR(登録商標))1173光開始剤からなる疎水性単量体流を用いて、両親媒性高分子微細構造を合成した。親水性相単量体流は、ポリ(エチレングリコール)(600)(PEG−DA)の65%水溶液内にダロキュア(DAROCUR(登録商標))1173の5%(v/v)溶液を含むものを供給した。TMPTAは水に溶けないため、2つの単量体流は混和しなかった。PEG−DAおよびTMPTAは、いずれも25℃において、それぞれ90cP(90mPa・s)および106cP(106mPa・s)の粘度を持つと、供給業者から報告された。
【0112】
2つの流れの平行な並行流が実現するように流動様式を規制しながら、シリンジポンプを用いて、約100から約300μm/sの間の流速になるように2つの単量体流を制御した。2つの単量体流は不混和性であったため、これらの流れは、マイクロ流体デバイスの出口までの全行程を並んで進んだ。これにより、界面全域に沿って2相の凝離(segregation)が行われたため、大量の微細構造の形成に好都合であった。この凝離がなければ、拡散混合が、重合に利用できる領域を抑制していた可能性があった。
【0113】
実施例1の方式で、三角形と長方形の間の形状範囲に属する楔形の微細構造で透過マスクを作製した。これらは、円錐と円筒の間の形状範囲の対物レンズによって表現された両親媒性分子の2次元の相似形で、この対物レンズの本体部は疎水性の尾部を表し、親水性の熱は円形面によって表現される。この形状範囲を利用して、パッキングの形状の効果を示す。
【0114】
図13は、前述のマスクを用いたリソグラフィ−重合プロセスの模式図で、単量体流の2つのフローに投影された5つの楔形形状の列を含み、楔形の微細構造は、並行流の流れにまたがって、5つが同時に合成された。20倍の顕微鏡対物レンズを利用したため、マスクサイズの約8分の1の大きさを持つ微細構造が得られた。利用した2つのアクリレートの共重合により、界面に、親水性部分と疎水性部分の化学結合が生じ、形成された微細構造に安定性が付加された。リソグラフィ−重合プロセスが進行すると、楔形の微細構造が形成され、この微細構造は、前述したように、PDMS表面における酸素誘起の重合阻止により生じた非重合単量体のフローの中で、連続してマイクロ流体デバイス内を通過した。
【0115】
微細構造は、前述した方式で、非重合単量体内で回収し、次いで、エタノール内に分散させてクラスタ化を防止した。親水性ポリマー前駆体と疎水性ポリマー前駆物質はいずれもエタノール内に完全に溶解可能であるため、エタノール内での微細構造の選択的配列は生じなかった。ただし、各微細構造の親水性部位は、エタノール内でより大きな度合いで膨潤し、その結果、元の形状が僅かに変形することが判明した。乾燥時に、各微細構造の親水性部位は、疎水性相と比べて収縮することが判明した。
【0116】
合成された微細構造のサイズは、微細構造が形成されている最中に、1/10000秒という短いカメラ露光時間で、流動している微細構造の画像を取り込むことにより、算出した。0.03秒の露光時間で形成された100個の連続する微細構造について統計を取った。図14に定義したように、微細構造の楔形形状の5つの異なる長さ変数、w1,w2,w3,h1、およびh2の配分を測定することで、粒子単分散の包括的分析を行った。マスクによって画定される微細構造のエッジ、w1と、w3と、(h1+h2)とに加え、親水性部位の長さh1と疎水性部位の長さh2は、重合が生じた際の界面の正確な位置に規定されるものと認められる。これらの長さはすべて、マイクロ流体デバイス内に微細構造が形成された時点で測定された。
【0117】
図15A〜15Eは、測定したこれらの寸法の分布を示す柱状グラフである。測定した5つの寸法すべてにおいて、サイズの変動係数(COV)は2.5%未満であったため、粒子は、単分散として適正に分類できる。ここで、分布の90%を超える部分が、中央の微細構造サイズの5%内に入っていた。さらに、親水性部位の長さh1と疎水性部位の長さh2を変えることにより、微細構造の両親媒性の程度も厳密に制御できることが判明した。図14のy方向における粒子の厚さは、25μmであると測定されたが、この厚さは、前述した例と同様、マイクロ流体デバイスの上部壁面および下部壁面における非重合潤滑層の2.5μmの厚さに相当する。
【0118】
楔形の微細構造のうちの1つの断面を検査することで、微細構造の親水性部位と疎水性部位の界面は、図10Fに図示したような有限曲率によって特徴付けられることが示された。この有限曲率は、この例について図16に定義されている。この曲率は、2つの流動している単量体流の不混和性によって生じたもので、結果的には、先鋭な湾曲界面が得られた。疎水性(‘o’)相は、親水性(‘w’)相上のPDMSを選択的に湿らせる。2つの相の界面とPDMS壁面との接触角度βは、親水性相と疎水性相との間の界面張力と、PDMSと前記2相との間の固液界面張力と、によって規定された。
【0119】
単純な幾何学的配置を用いると、界面における曲率半径Rは、R=H/2cosβ’として表すことができる。前式のHは、マイクロ流体デバイスの断面高さである。上記に指定した実験パラメータにおいて、17.4μmの推算半径が特定された。これは、実験的に特定した16±1.5μmの値によく適合することが判った。このことは、2つの単量体流の界面特性を利用して、2つの微細構造部分の間の界面の曲率を調整できることを示している。
【0120】
2つの異なる相内の粒子の架橋結合の程度は、フーリエ変換赤外(FTIR)分光法を利用して変換した二重結合の割合を測定することで特徴化した。このFTIR分光法は、マサチューセッツ州ウォールサムのサーモエレクトロン社(Thermo Electron CORP.)製のニコレット(Nikolet)分光計を用いて、架橋重合体の薄膜内の1635cm−1における末端のC=C伸縮の減少を計測することによって実行した。FTIRを実行するため、使用したマイクロ流体デバイスと同一寸法のチャネルにそれぞれのオリゴマーを装填し、その後、合成微細構造と同様に0.03秒の照射線量を付与し、さらに、完全な架橋形成のために120秒の照射線量を付与して、それぞれが親水性または疎水性のいずれかである個別サンプルを調製した。形成された高分子フィルムの細片を使用してFTIR測定を行った。接触角と表面張力の測定は、ノースカロライナ州マシューズを拠点とするDruss USA社製の張力計DSA10を用いて実行した。
【0121】
図17Aは疎水性単量体流のFTIRスペクトルを示すグラフで、図17Bは親水性単量体流のFTIRスペクトルを示すグラフで、これらは両方とも、0秒、0.03秒、および120秒の露光時間について示したグラフである。UV光に対する0.03秒の露光期間において、二重結合の変換は、親水性相で47%、疎水性相で35%であることが判る。多重官能性アクリレート類を正常に架橋するために必要な二重結合の変換は、通常、5%より小さいため、この露光線量は、微細構造の架橋形成に十分であると結論付けられる。
【0122】
両親媒性分子と同様に、親水性部位と疎水性部位の両方を備える微細構造は、自身の界面エネルギを最小化するように自分自身を配向する傾向を示す。単独の熱エネルギでは、微細構造が自身のエネルギ地形を模索できる十分なエネルギではない場合は、微細構造が自身のエネルギ最小値を特定して自己集合を行うことを補助するために、たとえば、撹拌によって提供される外部エネルギを利用した。楔形の両親媒性微細構造を分離し、純水性相の中と、水中油型乳剤または油中水型乳剤の界面と、のうちのいずれかにおける集合化を、撹拌を利用して誘導した。その結果により、粒子は、自身の表面エネルギを抑制するために自己を配向しようとする強い傾向を持つことが示された。
【0123】
不混和性微細構造を合成する本方法は、前述したような化学的異方性を持つ、広範囲の非球状粒子の合成を実現できる十分な普遍性を持つもので、たとえば、ロッド状の疎水性尾部と円盤型の親水性頭部とを持つ両親媒性粒子を合成することができる。粒子のこのようなライブラリは、メソスケールの自己集合およびレオロジーにおける幾何学的配置と化学的異方性の作用を研究する場合に有用なものになる。また、水−油−水(w-o-w)のようなより複雑なモチーフを持つ構造であっても、極めて簡単に形成することができる。
【0124】
これらの実施例および上記の説明により、本発明は、リソグラフィに基づくマイクロ流体技法を提供し、この技法を用いることで、簡潔な二連のリソグラフィ−重合ステップにより、各種複雑な形状と、化学特性と、官能性と、を持つ高分子微細構造を連続的または準連続的に合成できることを示した。合成される微細構造の形態特性および化学特性は独立して制御できるため、多くの用途、特に、薬物送達、バイオセンシング、マイクロアクチュエーション、および自己集合とレオロジーに関する基礎研究などの用途に対応した大量の高分子微細構造を、それぞれ固有の形体で官能性を持つように作製できる。本発明の合成処理における高処理量により、前述した多数の用途に求められる規模での高分子微細構造の合成を実用的に達成することが可能になる。
【0125】
当然ながら、この分野に対する本貢献の精神および範囲から逸脱せずに、前述した実施形態に各種の修正および追加を行えることは当業者であれば理解されるであろう。したがって、ここで要求している保護は、本発明の範囲に入る主要請求項とその等価物すべてに公正に及ぶべきものである。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1A】本発明に係る高分子微細構造合成システムの一例を示す模式図である。
【図1B】図1Aの微細構造合成システムについて、本発明に従って、複数の照明源を用いて構成した状態を示す模式図である。
【図2】図1の微細構造合成システムにおいて合成された3つの高分子微細構造を模式的に示す断面図である。
【図3A】本発明に係る、高分子微細構造の例と、各微細構造の作製に用いられる対応リソグラフィマスクの例と、を示す模式図である。
【図3B】本発明に係る、高分子微細構造の例と、各微細構造の作製に用いられる対応リソグラフィマスクの例と、を示す模式図である。
【図3C】本発明に係る、高分子微細構造の例と、各微細構造の作製に用いられる対応リソグラフィマスクの例と、を示す模式図である。
【図3D】本発明に係る、高分子微細構造の例と、各微細構造の作製に用いられる対応リソグラフィマスクの例と、を示す模式図である。
【図3E】本発明に係る、高分子微細構造の例と、各微細構造の作製に用いられる対応リソグラフィマスクの例と、を示す模式図である。
【図3F】本発明に係る、高分子微細構造の例と、各微細構造の作製に用いられる対応リソグラフィマスクの例と、を示す模式図である。
【図3G】本発明に係る、高分子微細構造の例と、各微細構造の作製に用いられる対応リソグラフィマスクの例と、を示す模式図である。
【図3H】本発明に係る、高分子微細構造の例と、各微細構造の作製に用いられる対応リソグラフィマスクの例と、を示す模式図である。
【図3I】本発明に係る、高分子微細構造の例と、各微細構造の作製に用いられる対応リソグラフィマスクの例と、を示す模式図である。
【図3J】本発明に係る、高分子微細構造の例と、各微細構造の作製に用いられる対応リソグラフィマスクの例と、を示す模式図である。
【図3K】本発明に係る、高分子微細構造の例と、各微細構造の作製に用いられる対応リソグラフィマスクの例と、を示す模式図である。
【図3L】本発明に係る、高分子微細構造の例と、各微細構造の作製に用いられる対応リソグラフィマスクの例と、を示す模式図である。
【図3M】本発明に係る、高分子微細構造の例と、各微細構造の作製に用いられる対応リソグラフィマスクの例と、を示す模式図である。
【図3N】本発明に係る、高分子微細構造の例と、各微細構造の作製に用いられる対応リソグラフィマスクの例と、を示す模式図である。
【図3O】本発明に係る、高分子微細構造の例と、各微細構造の作製に用いられる対応リソグラフィマスクの例と、を示す模式図である。
【図3P】本発明に係る、高分子微細構造の例と、各微細構造の作製に用いられる対応リソグラフィマスクの例と、を示す模式図である。
【図4A】本発明に係る、鎖状高分子微細構造の例と、各微細構造の作製に用いられる対応リソグラフィマスクの例と、を示す模式図である。
【図4B】本発明に係る、鎖状高分子微細構造の例と、各微細構造の作製に用いられる対応リソグラフィマスクの例と、を示す模式図である。
【図4C】本発明に係る、鎖状高分子微細構造の合成におけるリソグラフィ−重合の順次ステップと、各微細構造の生成に用いられる対応リソグラフィマスクと、を示す模式図である。
【図4D】本発明に係る、鎖状高分子微細構造の合成におけるリソグラフィ−重合の順次ステップと、各微細構造の生成に用いられる対応リソグラフィマスクと、を示す模式図である。
【図5】本発明に係る、3次元の形体を含む高分子微細構造と、各微細構造の生成に利用される対応リソグラフィマスクと、を示す模式図である。
【図6A】本発明に従って利用できるマイクロ流体デバイス断面の例を模式的に示す断面図である。
【図6B】本発明に従って利用できるマイクロ流体デバイス断面の例を模式的に示す断面図である。
【図6C】本発明に従って利用できるマイクロ流体デバイス断面の例を模式的に示す断面図である。
【図6D】本発明に従って利用できるマイクロ流体デバイス断面の例を模式的に示す断面図である。
【図6E】本発明に従って利用できるマイクロ流体デバイス断面の例を模式的に示す断面図である。
【図7】本発明に係るストップフロー高分子微細構造合成の制御システムを示すブロック図である。
【図8A】本発明に係る、選択部分を含む高分子微細構造の例と、各微細構造の作製に用いられる対応リソグラフィマスクと、を示す模式図である。
【図8B】本発明に係る、選択部分を含む高分子微細構造の例と、各微細構造の作製に用いられる対応リソグラフィマスクと、を示す模式図である。
【図8C】本発明に係る、選択部分を含む高分子微細構造の例と、各微細構造の作製に用いられる対応リソグラフィマスクと、を示す模式図である。
【図9A】複数の異なる単量体流にまたがって、本発明に係る高分子微細構造の合成を実現できる流動構造の例を示す模式図である。
【図9B】本発明に従って、それぞれ、図9Aの各構成で作製された複数の異なる高分子領域を含む高分子微細構造の例を示す模式図である。
【図9C】複数の異なる単量体流にまたがって、本発明に係る高分子微細構造の合成を実現できる流動構造の例を示す模式図である。
【図9D】本発明に従って、それぞれ、図9Cの各構成で作製された複数の異なる高分子領域を含む高分子微細構造の例を示す模式図である。
【図10A】本発明に係る、複数の異なる高分子領域を含む高分子微細構造の例と、各微細構造の作製に用いられる対応リソグラフィマスクの例と、を示す模式図である。
【図10B】本発明に係る、複数の異なる高分子領域を含む高分子微細構造の例と、各微細構造の作製に用いられる対応リソグラフィマスクの例と、を示す模式図である。
【図10C】本発明に係る、複数の異なる高分子領域を含む高分子微細構造の例と、各微細構造の作製に用いられる対応リソグラフィマスクの例と、を示す模式図である。
【図10D】本発明に係る、複数の異なる高分子領域を含む高分子微細構造の例と、各微細構造の作製に用いられる対応リソグラフィマスクの例と、を示す模式図である。
【図10E】本発明に係る、複数の異なる高分子領域を含む高分子微細構造の例と、各微細構造の作製に用いられる対応リソグラフィマスクの例と、を示す模式図である。
【図10F】本発明に係る、複数の異なる高分子領域を含む高分子微細構造の例と、各微細構造の作製に用いられる対応リソグラフィマスクの例と、を示す模式図である。
【図10G】本発明に係る、複数の異なる高分子領域を含む高分子微細構造の例と、各微細構造の作製に用いられる対応リソグラフィマスクの例と、を示す模式図である。
【図10H】本発明に係る、複数の異なる高分子領域を含む高分子微細構造の例と、各微細構造の作製に用いられる対応リソグラフィマスクの例と、を示す模式図である。
【図11A】図1Aのシステムにおけるマイクロ流体デバイスの3つのチャネル高さに関して、高分子微細構造形体サイズの測定値と照明露光期間との相関を示した、20倍の顕微鏡対物レンズに対応するグラフである。
【図11B】図1Aのシステムにおけるマイクロ流体デバイスの3つのチャネル高さに関して、高分子微細構造形体サイズの測定値と照明露光期間との相関を示した、40倍の顕微鏡対物レンズに対応するグラフである。
【図12】マイクロ流体デバイスの3つのチャネル高さに関して、最小形体サイズの測定値と単量体流の速度との相関を示すグラフである。
【図13】親水性単量体流と疎水性単量体流とにまたがって、本発明に係る高分子微細構造の合成を実現できる流動構造を示す模式図である。
【図14】図13の流動構造によって合成された両親媒性高分子微細構造を模式的に示して、その微細構造の幾何学的パラメータを定義した図である。
【図15A】図14に定義した幾何学的パラメータの測定値W1について計数された高分子微細構造の個数を示すグラフである。
【図15B】図14に定義した幾何学的パラメータの測定値W2について計数された高分子微細構造の個数を示すグラフである。
【図15C】図14に定義した幾何学的パラメータの測定値W3について計数された高分子微細構造の個数を示すグラフである。
【図15D】図14に定義した幾何学的パラメータの測定値h1について計数された高分子微細構造の個数を示すグラフである。
【図15E】図14に定義した幾何学的パラメータの測定値h2について計数された高分子微細構造の個数を示すグラフである。
【図16】図13の流動構造によって合成された両親媒性高分子微細構造を示して、その微細構造の疎水性相と親水性相の間の界面の局率半径を規定する幾何学的パラメータを定義した模式的斜視図である。
【図17A】疎水性オリゴマーの3つの照明露光時間に関して、透過率と波数との相関を示した、疎水性オリゴマーに対応するFTIRグラフである。
【図17B】親水性オリゴマーの3つの照明露光時間に関して、透過率と波数との相関を示した、親水性オリゴマーに対応するFTIRグラフである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、ポリマー材料に関し、より詳細には、高分子微細構造体を合成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
(関連出願)
本願は、2005年10月25日に出願された米国仮出願第60/730,052号の利益を請求するものであり、前記出願はその開示内容全体を本願明細書の一部として援用する。
【0003】
(米国政府後援の研究に関する記述)
本発明は、NSF(米国科学財団)により承認された契約第CTS−0304128号に基づいた米国政府による支援を受けて為されたものである。米国政府は、本発明に一定の権利を有する。
【0004】
高分子微細構造は、MEMS、生体材料、薬物送達(ドラッグデリバリ)、自己組織化、および他の用途を含む幅広い用途において重要である。微細構造は、本明細書では、約10nmから約1000μmの範囲の大きさの形体を有する構造として定義するが、このような微細構造を制御可能に合成することは、塗料、レオロジー流体、触媒作用、診断法、およびフォトニック材料などの用途を実現するために益々重要になっている。単分散高分子微細構造は、ここで、分布の>90%が中央の微細構造サイズの5%以内に収まるような微細構造サイズ分布を持つものであると定義するが、このような単分散高分子微細構造は、外部場に対して、一定かつ予測可能な応答を示すことができ、また、予測可能な方式での自己組織できるため特に望ましい。
【0005】
従来から、高分子微細構造の合成は、フォトリソグラフィ、打ち抜き加工、または乳化重合などの回分法によって、あるいは、流入式マイクロ流体合成などのエマルションベースのマイクロ流体技術によって実行される。これらの技術は、微細構造の合成に顕著な進歩をもたらしたが、これらの各技術には、概して、微細構造の組成および幾何学的配置の両方またはそのいずれかに制約があることが判っている。たとえば、フォトリソグラフィ技術は、概して、微細構造の材料を、フォトリソグラフィ処理に適合するような材料に限定し、たとえば、構造材料としてフォトレジストを必要とする。歴史的に、マイクロ流体による高分子微細構造の合成は、ほぼ排他的に球状微細構造に集約されているが、その原因の一部は、微細構造の界面エネルギの最小化が、最終的に、球体の形成や、棒状体、楕円体、円盤などの球体や円筒体の変形に至ることにある。
【0006】
高分子微細構造の組成および形状におけるこれらの制約に加え、従来の高分子微細構造の合成は、概して、材料の等方性構造配列を必要とする。また、このようなプロセスの処理量は、一般に、1度に1つの構造を作製する、または、フォトマスクによって画定される限定的な構造体フィールドを1度に1つ作製するという要件によって制限される。高分子微細構造合成の処理量、微細構造の形状、形態、および機能性における前述したような制限は、その数が増え続けている、高分子微細構造が適しているとされる重要な用途に対応する能力に対する制約となっている。
【0007】
【非特許文献1】Sugiuraら、“Preparation of Monodispersed Polymeric Microspheres over 50 μm Employing Microchannel Emulsification,” Ind. Eng. Chem. Res., V. 41, pp. 4043-4047, 2002
【非特許文献2】Fialkowskiら、“Self-assembly of polymeric microspheres of complex internal structures,” Nature Materials, V. 4, pp. 93-97, December 2004
【非特許文献3】Millmanら、“Anisotropic particle synthesis in dielectrophoretically controlled microdroplet reactors,” Nature Materials, V. 4, pp. 98-102, December 2004
【非特許文献4】Dendukuriら、“Controlled Synthesis of Nonspherical Microparticles Using Microfluidics,” Langmuir, Vo. 21, pp. 2113-2116, February 2005
【非特許文献5】Kimら、“Hydrodynamic fabrication of polymeric barcoded strips as components for parallel bio-analysis and programmable microactuation,” Lab Chip, Vo. 5, pp. 1168-1172, August 2005
【非特許文献6】Rollandら、“Direct Fabrication and Harvaesting of Monodisperse, Shape-specific Nanobiomaterials,” J. Am. Chem. Soc., V. 127, pp. 10096-10100, 2005
【非特許文献7】Rohら、“Biophasic Janus particles with nanoscale anisotropy,” Nature Materials, V. 4, pp. 759-763, September 2005
【非特許文献8】Dendukuriら、“Continuous-flow lithography for high-throughput microparticles synthesis,” Nature Materials, Vo. 5, pp. 365-369, April 2006
【非特許文献9】Nisisakoら、“Synthesis of Monodisperse Bicolored Janus Particles with Electrical Anisotropy Using a Microfluidic Co-Flow System,” Adv. Mater., V. 18, pp. 1152-1156, 2006
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来の高分子微細構造の合成における制約を克服し、各種異なる複雑な形状および化学的性質を持つ高分子微細構造を連続的に合成できる、リソグラフィを基準とするマイクロ流体方式の微細構造合成技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の高分子微細構造合成方法の一例において、単量体流は、指定の流量で、流体チャネルを通って流され、前記単量体に対して、少なくとも1つの成形照明パルスが照射される。この照明の照射は、単量体流内に、前記照明パルスの形状に対応する少なくとも1つの微細構造の形状を画定する一方で、前記照明パルスにより、その微細構造の形状を前記単量体流内で重合させる。
【0010】
本発明によって提供される合成プロセスの更なる例において、単量体流は、指定の流量で流体チャネルに流され、また、前記単量体流に照明を照射して、前記単量体流内で、少なくとも1つの微細構造を前記照明により重合させる。流体チャネルの内部壁面に、少なくとも1つの重合停止種を提供することで、微細構造の重合中に重合が行われ得る、チャネル壁面上の活性重合サイトを停止させる。これにより、前記活性重合サイトにおける重合が消失し、チャネル壁面に隣接して単量体流の非重合ボリュームが残る。
【0011】
この高処理量技術は、微細構造の幾何学的配置と、形状と、組成と、異方性とに対する高度な制御を実現できる。この技術により、それぞれが複数の異なる材料領域を持つ、非球状高分子微細構造を合成でき、また、それぞれ複数の異なる材料領域を持つ、平面状の高分子微細構造も同様に合成することができる。本発明の他の特徴および利点は、下記の説明および添付の図面から、また請求項から明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1Aを参照すると、本発明に従って例示する高分子微細構造合成システム10の模式図が示されている。このシステム10は、選択された中空断面を持つ幾何学的配置を含むマイクロ流体デバイス12を含む。図1Aのマイクロ流体デバイスの例では、長方形チャネル状の断面が示されているが、後述するように、他の各種広範囲の断面を持つ幾何学的配置を利用することができる。一実施例において、マイクロ流体デバイスのチャネル幅は、たとえば、約100nmから約1mmまでの内部チャネル幅と、たとえば、約100μmと1cmの間の厚さを持つチャネル壁と、たとえば、約1mmと数センチメートルの間のチャネル長さと、によって特徴付けられる。マイクロ流体デバイスは、単量体流15を受け入れるように構成され、この単量体流15は、マイクロ流体デバイスの中空断面またはチャネルに誘導されてデバイス内を通過する。マイクロ流体デバイスは、下記で説明するように、任意の適切な材料で形成される。図1Aの構成例において、マイクロ流体デバイスは、たとえば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)や、他の適切な材料で構成することができる。
【0013】
単量体流15は、後で詳述するように、さまざまな構成要素を含むことができる。そのような構成要素の少なくとも1つは、指定の重合プロセス、たとえば、光重合や、熱重合や、他のプロセスなどで重合できる液相単量体として供給される。図1Aに例示するシステムにおいて、単量体流は、光重合可能な単量体および感光性開始剤種を含む。適切な光重合可能な単量体の一例は、たとえば、400の分子量を持つポリ(エチレングリコール)ジアクリレート(PEG−DA)で、前記感光性開始剤種として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンが採用される。単量体流は、後述するように、選択された他の単量体も、粒子、分子、ポロゲン、および他の化学種と同様に含むこともできる。いずれの成分から成るものであっても、単量体流は、マイクロ流体デバイス12を通る流路を実現できる、少なくとも1つの液相の重合可能単量体を含む。
【0014】
マイクロ流体デバイスに沿った1つ以上のポイントにおいて、単量体流内での微細構造の形成および重合を実現できる刺激が提供される。図1Aの例において、単量体流は光重合可能な単量体を含み、マイクロ流体デバイスの長さに沿った1つ以上の選択したポイントに、マイクロ流体デバイス12に向かって照射される照明17の光源16が設けられる。マイクロ流体デバイスの壁面は、照明17の波長をほぼ透過するものであることが好ましい。可視光、UV光、IR光、または他の波長の光は、下記で詳述するように、選択した単量体種に適したものであれば採用できる。前述したPEG−DA単量体については、UV照明が適切な重合照射である。
【0015】
重合照射は、所望の高分子微細構造形状に対応するように成形される。たとえば、照明光源とマイクロ流体デバイスの間には、1つ以上のリソグラフィマスクや、照明を成形する他のリソグラフィシステムを設けることができる。図1Aの例には、合成する高分子微細構造に求められる1つ以上の形状20を含む暗視野リソグラフィマスク18が配設されている。図1Aに示すように、マスクは、複数の異なる形状を含んでいても、あるいは、単一形状のいくつかの繰り返しを含んでいてもよい。
【0016】
マスクを介して照射される照明17の倍率、焦点、または他の側面を制御する必要がある場合は、リソグラフィマスクとマイクロ流体デバイスの間に、レンズ系22を挿入することができる。照明は、レンズ系を出た後、マイクロ流体デバイスに照射される。本発明によれば、照明は、選択した期間の照明パルスを提供するように、時間的に制御される。シャッタ23または照明期間を制御する他の機構は、レンズ系22および照明光源16と共に適切な構成で好ましく配設される。各照明パルスの期間は、単量体流の流量と、その単量体流内の単量体の重合特性と、微細構造の所望の形状と、に基づいて設定される。下記に詳述するように、照明の時間制御と連携して、単量体流の流量も制御でき、単量体流を停止させることができる。照明パルスは、特定の用途についての指定に従って、選択した各期間からなる一連のパルスとして、または期間の長い単一のパルスとして供給されてよい。
【0017】
図1Bも参照しながら説明すると、マイクロ流体デバイスの長さ方向と、マイクロ流体デバイスの指定した壁面の周囲と、のうちの少なくともいずれかに、複数の照明光源およびレンズ系22,35,37を配設して、マイクロ流体デバイスの廻りで、異なる角度および位置から単量体流に照明パルスを送ることができる。判り易くするため、図1Bには、レンズ系22,35,37を示したが、これらは、前述した図1Aの方式と同様に、シャッタシステムと、照明光源と、照明マスクまたは他の成形デバイスと、をレンズ系と組み合わせて含んだ状態を表すことを意図して示したものである。
【0018】
ここで図1Aに戻って説明する。マイクロ流体デバイス12内を流れる単量体流15が、成形された照明24のパルスに晒されることで、直接、単量体流内で、マスクによって規定される微細構造形状30が重合する。この照明の露光は、高分子微細構造の形状を画定すると同時に、成形された微細構造を重合させる。このリソグラフィ−重合の二重作用は、単量体流の連続相内で生じる。すなわち、単量体流内の1つ以上の重合可能な液相単量体は、単量体流の連続相として機能し、かつ、その単量体自体が重合する。したがって、リソグラフィ−重合の二重作用による重合微細構造は、単量体流の連続相から得られる高分子材料を含んでいる。
【0019】
前述したように、単量体流の流れは、照明の照射との連動方式で制御でき、ひいては、微細構造の重合特性を制御することができる。流量および露光期間は、照明露光サイトにおいて、マスクによって定義される微細構造を単量体流内で実質的に完全に重合させる、所定のボリュームの単量体流の十分な停留時間が得られるように、好ましく一緒に選択される。必要な場合は、照明パルスの照射と連携して、単量体流の流動を実質的に停止させることもできる。連続した単量体流の流動によって、たとえば、毎秒100個の微細構造という高い合成処理量を達成することができる。このような処理量は、前述した方式でマイクロ流体デバイスの長さ方向に複数の照明ポイントを挿入して、照明領域を増やすと共に、その増加した領域に投射される、対応数の微細構造形状を増やすことでさらに拡張できる。
【0020】
図1Aに示すように、単量体流内で高分子微細構造30が重合すると、重合した微細構造は、単量体流の非重単量体を通ってマイクロ流体デバイスの中を移流する。このような重合構造の集合32は、図1Aにおいて、リソグラフィ−重合ポイントの下流に模式的に示されている。リソグラフィ−重合ステップの後、流内に残留している非重合連続相単量体のボリュームは、マイクロ流体デバイスからその外部に重合微細構造を送達する役割を担う。容器34が設けられており、重合微細構造の個体群38を含む、出力された単量体流36を回収する。認識されるように、透過マスク形状を1つのみ採用した場合、微細構造の個体群は均質であり、また、好ましくは単分散である。
【0021】
合成された微細構造は、容器で水洗を行うことも、あるいは、水洗用の他の容器に、たとえば、ピペットで移載されてもよい。微細構造個体群を含む単量体流は、たとえば、前記容器からエッペンドルフ管にピペット移動し、凝集を防止するために、界面活性剤を有する緩衝液内に懸濁させ、さらに遠心分離にかけて単量体流から微細構造個体群を取り出すことができる。この後、微細構造個体群は、選択した用途に利用することができる。
【0022】
マイクロ流体デバイスからその外部に重合微細構造を運び出す単量体流の機能は、本発明に従って、単量体流の非重合ボリュームをマイクロ流体デバイスの壁面位置に保持することによって、また、重合化照明から遮蔽された場所における微細構造の間の非重合流ボリュームによって実現できる。デバイスの壁面位置に単量体流の非重合ボリュームを保持することで、重合作用がデバイスの壁面に及ぶことを防ぎ、かつ、重合微細構造がデバイスの壁面に付着することを阻止する。本発明によれば、このことは、概して、マイクロ流体デバイス壁面の内側表面に、重合停止ステップに関与できる化学種、すなわち、重合作用が生じる活性重合サイトを停止させて、デバイスの壁面近傍の活性重合サイトにおける重合作用を消滅させるように反応できる化学種を提供することによって達成される。
【0023】
選択した重合停止種は、所定の用途に適した従来の方法で、マイクロ流体デバイスの内壁に導入できる。たとえば、重合停止種は、下記に詳述するように、デバイスの壁面において、中空の断面を持つ、マイクロ流体デバイスのチャネルを通るように誘導できる。あるいは、マイクロ流体デバイスの壁面を通り抜けて周囲環境から内壁表面に化学種を拡散させることによって、重合停止種を導入してもよい。多くの用途に関して、この仕組みは、極めて都合よく、また、すっきりと簡単に実施できるもので、必要なのは、選択した停止種の拡散を実現できる十分な浸透性を持つ一方で、デバイス内に単量体流を包含する十分な固さを持つ物質として、マイクロ流体デバイスを提供することのみである。
【0024】
たとえば、マイクロ流体デバイスの壁面からの重合停止種の分散において、停止種は、周辺酸素として指定され、重合されることになる単量体は、ラジカル重合単量体、たとえば、前述したように、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン光開始剤を持つ、前述のPEG−DA単量体として指定される。ここで、マイクロ流体デバイスは、前述したように、酸素に対する浸透性のあるPDMSで形成される。あるいは、適切な他の酸素透過性物質、たとえば、マイラー、ポリウレタン、ポリエテレン(polyethelene)、ポリクロロフェン(polychlorophene)、メルカプトエステルベースの樹脂、たとえば、ニュージャージー州、ニューブランズウィックのノーランド社(Norland Optical Products, Inc.)製のノーランド(Norland)60や、ニュージャージー州、ミクルトン(Mickleton)のサンゴバン社(Saint-Gobain Performance Plastics)製の多孔質タイゴン(Tygon(登録商標))チューブや、他の物質で形成される。
【0025】
PDMSデバイスを通るPEG−DAベースの単量体流がUV照明パルスに曝されると、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン光開始剤が遊離基を形成し、その遊離基のうちの一部がPEG−DA単量体に渡されて、PEG−DA単量体の重合を開始させる。マイクロ流体デバイスのPDMS壁面から拡散される酸素は、これらの遊離基と反応して、開始剤種と単量体の両方について、分子ラジカルサイトを停止させる。これにより、ラジカルサイトは連鎖停止過酸化基に変換される。そして、変換されたサイトにおいて、高分子連鎖の成長は、阻害されるか、あるいは消滅する。
【0026】
PDMSデバイス壁面の内側表面近傍においてこの重合停止プロセスは存続し続けるが、これは、デバイス壁面付近の単量体流内で、ラジカルサイトの連鎖停止変換に酸素が消費された結果、デバイス壁面からさらに多くの酸素が拡散することになるためである。これにより、マイクロ流体デバイスの壁面に、架橋されていない非重合潤滑単量体層が薄く形成される。この潤滑単量体層は、重合微小構造を運ぶことができる連続相単量体流のボリュームを提供すると共に、デバイス壁面への微細構造の付着を阻止する。
【0027】
この酸素援用(oxygen-aided)の重合阻止技法により、本発明は、通常は、ほとんどの用途で障害と見なされるラジカル重合の停止を活用でき、また、これを制御可能に強化することにより、単量体流の端部において重合を阻止し、また、非重合単量体を保存して、単量体流内に分散された重合微細構造を搬送することで、直接、連続相の単量体流内で重合を実現できるという発見をもたらす。例示した酸素を基準とする停止プロセスは、あらゆるラジカル重合システムに適用できる。たとえば、下記に詳述するように、単量体、特に、1,1,1−トリ(メチルプロパントリアクリレート)、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、およびポリ(エチレングリコールジメタクリル酸)などは、DMPAや、ニューヨーク州タリータウンのチバ・スペシャルティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)製のイルガキュア(IRGACURE)184(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン)などの光開始剤と共に利用することができる。
【0028】
マイクロ流体デバイスの壁面における非重合潤滑単量体層の厚さは、リソグラフィ照明によって遊離基を生成する、単量体流内の化学種の濃度と、照明の局部輝度と、デバイス壁面を通る停止種の程度、たとえば、酸素流量と、によって規定される。また、各重合化学反応は、単量体流内の遊離基濃度を調整する固有の反応動力学によって特徴付けられることが認識される。したがって、多くの用途について、十分な潤滑単量体層を提供するプロセスパラメータの決定には、実験的分析が好ましいものとなる。多くの用途において、約1μmから約5μmまでの厚さの潤滑層は、マイクロ流体デバイスから微細構造が運び出される際に、微細構造の壁面への付着を十分に阻止する。
【0029】
本発明の重合停止プロセスは、さまざまな高分子化学と停止種とを用いて実施できる。たとえば、HQ(ヒドロキノン)や、MEHQ(モノメチルエーテルヒドロキノン)などのラジカル停止種と、適切な浸透性を持つデバイス材料と、を利用して、微細構造重合プロセスのラジカル種を停止させることができる。また、重合処理は、必ずしも光開始でなくてもよく、各種のラジカル重合開始種を重合に利用することができる。たとえば、熱により活性化されるラジカル開始剤、たとえば、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)を適切な熱源、たとえば、レーザ照明またはパターン化した導電電極と共に使用して、遊離基に基づく重合のために遊離基を生成し、酸素や他の停止種を用いて、マイクロ流体デバイスの壁面における重合を阻止することができる。
【0030】
このプロセスは、これ以外の点では、ラジカル停止に限定されない。たとえば、ニューヨーク州ニューヨークのシェルケミカル社(Shell Chemical)製のエポン(EPON)SU−8エポキシをベースとするフォトレジストSU−8が単量体流内の重合種であるとすると、マイクロ流体デバイスの側壁におけるSU−8の重合の停止は、選択した塩基種、たとえば、3−エチルアミン、3−オクチルアミン、またはSU−8重合を消滅させる他の適切な塩基などを用いて実現できる。選択した塩基種は、側壁からの分散により、マイクロ流体デバイスの側面の内側表面において、単量体に供給できるが、この場合、側壁は適切な気孔率を持っているものとする。たとえば、PDMSや他の適切な浸透性材料からなるデバイスを採用して、当該デバイスから液体塩基または他の液種を拡散させることができる。ここで、選択した液体種で最初にデバイスを飽和させ、その液体を、たとえば、浴構成(bath arrangement)内でデバイスの外面に連続的に供給し、マイクロ流体デバイス内で消費された際に液体が補充されるようにする。
【0031】
マイクロ流体デバイスの壁面からの拡散によって、その壁面の内側表面に停止種が供給される構成である場合、マイクロ流体デバイスの材料は、問題の停止種に対する十分な浸透性を持つことが好ましい。たとえば、停止種の酸素に対して、デバイスの壁面は、少なくとも約10バーラー(約3.35×10−15kmol・m/(s・m2・kPa))のO2気体透過率を持つことが好ましい。選択した液体の停止種に関しては、デバイスの壁面が約10バーラーの液体透過度を持つことが好ましい。
【0032】
マイクロ流体デバイスは、前述した材料例の場合のように高分子であっても、あるいは、高分子以外であってもよい。たとえば、選択した停止種を浸透させるのに適したナノスケールの孔を持つ、ガラス製のマイクロ流体デバイス壁を利用できる。また、マイクロ流体デバイス壁は、たとえば、トラックエッチメンブレンとして設けることができ、また、たとえば、多孔質シリカ基板や、スライドガラスなどの他の無機構造を含む他の構造として設けることもできる。すべての壁面が浸透性である必要はないが、重合作用因子、たとえば、照明など、に曝される壁面は、指定の停止種を透過して、その壁面における重合を停止できるものであることが好ましい。もちろん、既に説明したように、そこから単量体流に照明を誘導する1つ以上の壁面は、照明波長に対して実質的に透過的であることが好ましく、照明は、該当する壁面において重合停止を誘発するために、複数のデバイス壁面から照射されてよい。
【0033】
本発明によれば、停止種は、マイクロ流体デバイスの壁面からチャネル内に拡散させるのではなく、単量体流と一緒に単量体流のフローチャネル内に導入することもできる。このような構成の一例において、選択した停止種を含む流体の環状さや型フローは、単量体流の内側円筒状フローを囲繞するように、マイクロ流体デバイスのチャネル入口に供給される。他の構成例において、湿潤性が異なる2つの流体は、後でより詳しく説明する方式で、互いに平行に流れるように、チャネルへのY接合入力口に導入される。ここで、プロセス条件を調整して、停止種を含む流体が、デバイスの表面壁を選択的に湿らせて、重合される単量体流の化学種を包囲するように構成できる。
【0034】
次に、図2も参照しながら説明する。図2は、成形照明24がデバイスに照射されるデバイス上のポイントで切り取った図1Aのマイクロ流体デバイス12の断面図で、図1Aに定義されたx−y平面における重合微細構造30の形は、透過マスク18に組み込まれた形体20の形によって決定される。微細構造のz−平面の突出は、マイクロ流体デバイス断面の高さと、照明に曝される壁面上に作製される重合阻止層40の厚さと、に左右される。重合阻止層の厚さは、デバイスの高さに依存しないため、重合阻止層がデバイス高の大部分を占める、背の低いデバイス内で合成される微細構造に対して、より顕著な影響を与える。
【0035】
図3A〜3Gに、高分子微細構造の各種の形態を例示する。これらの形態は、図1と同様の合成システムを用いて、本発明によって実現される。図3A〜3Gは、それぞれ、透過マスクの形状50の例と、前述した合成プロセスで生成される、前記マスクに対応する高分子微細構造52と、を示す。これらの図に示したように、曲線状、直線エッジ状、中空の幾何学的配置は、ほぼ自由な組み合わせで作製することができる。微細構造の多くは、平面状の微細構造として特徴付けることができ、選択された平面、たとえば、x−y平面の大きさがz−平面の大きさを大幅に上回るように形成される。図3H〜3Jも参照すると、マスクに形状のグレースケール形体が付与された、グレースケールマスク構成55によって形が生成された場合、対応する成形輪郭を持つ微細構造58は、z−平面の微細構造輪郭が調整された状態で、本発明の微細構造合成プロセスから得られる。
【0036】
ここで、図3K、3L、3Mおよび3Nを参照して説明すると、リソグラフィ−重合ステップによって、リボン状構造も生成することができる。図3Kに示されるように、選択したマスク60を利用して、リボン微細構造62の幅および他の形体が設定される。このマスクは、押し出されるリボン構造の幅方向の特徴を規定するために、たとえば、長方形や、正方形や、円形や、他の幾何学的配置に形成されてよい。このようなリボン状構造の形成において、照明の照射は、前述したパルス方式では行われず、代わりに、照明は、連続して照射され、この状態は、前記構造がリソグラフィにより画定および重合され、マイクロ流体デバイスを通って搬送される間、維持されている。
【0037】
図3Lに示すように、動的マスク技法を採用して、微細構造が流体マイクロデバイスを通って押し出されるときに、重合リボン状微細構造に、可変マスク形状を印加することができる。下記に詳述するように、このような動的マスク技法は、たとえば、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)や他の適切なデバイスを用いて実施することができ、この動的マスク技法では、リソグラフィ−重合プロセスの実行中に連続照明を維持しながら、マスク形体を変化させることができる。図3Lの例では、3つの変動マスク形状64,66,68を利用して、リボンの長さ方向に一連の異なる形状を持つリボン構造70を作製する。この技法により、リボン微細構造の形体のカスタマイズに大幅な柔軟性を持たせることができる。
【0038】
図3Mに示すように、リボン構造の形体も、リボンが重合される際に動的マスク技法で調整できる。たとえば、長さが異なる2つの長方形72,74を想定した場合、変調する幅を持つリボン構造76は、連続して流れる単量体流を2つのマスク幾何学的配置に交互に曝すことによって生成できる。また、図3Nに示すように、2つの個別マスク形体として採用される単一の長方形72と、2つの長方形74とを用いて、リボンの幅が変調することに加え、リボンに沿った形体が変化するリボン構造78を作製できる。
【0039】
図3O〜3Pを参照すると、微細構造マスク形状と組み合わせて制御される照明状態から得られる円錐輪郭を持つ高分子微細構造77,79を生成できることが示されている。図3Oに示すように、ここでは、円形のマスク形状73を利用する。この円形マスク形状は、マイクロ流体デバイスのチャネルが十分な高さを持ち、チャネル内の複数のポイントが、そのチャネル上で合焦する照明の焦点深度から外れて位置する場合に、図3O〜3Pの構造を作製することができる。照明がチャネルの中心に集光され、かつ、焦点深度がチャネル高さより浅い場合は、図3Pの二重円錐形微細構造が合成される。照明がチャネルの中心以外の点に集光され、かつ、焦点深度がチャネル高さより浅い場合は、図3Oの円錐微細構造が合成され、その各円錐構造の大きさは、チャネル高さを基準とした焦点の位置によって決定される。
【0040】
次に、図4A〜4Bを参照して説明する。単量体流の流量および照明パルスの動作周期を制御して、単量体流のボリュームにまさに近接し、または単量体流のボリュームと僅かに重複して重合作用が生じるようにした場合、マスク形体80,82を利用して、それぞれ、各連鎖が一連の連結高分子形状として形成される、鎖状微細構造84,86を形成することができる。
【0041】
図4Cに、図4Bの鎖状構造86の作製に用いられる、一連のリソグラフィ−重合イベントの例を模式的に示す。図示したように左から右に向かう単量体流のフローにおいて、照明パルスは、単量体流が連続して流れているとき、成長する鎖状の構造の最後尾に各高分子形状が追加され、その追加の高分子形状は、それぞれ、重複する重合領域によって連結されるように繰り返し印加される。たとえば、第1照明パルス(1)において、最初の円筒構造が形成され、第2パルス(2)において、最初の円筒構造の後尾に2番目の円筒構造が追加され、さらに、第3パルス(3)において、2番目の後尾に3番目の円筒構造が追加され、第4パルス(4)において、3番目の後尾に4番目の円筒構造が追加される。このように、所望の長さまで鎖状構造を伸長させることができる。
【0042】
図4Dに、鎖状微細構造に追加される微細構造の形状を調整または変更できる動的マスク技法を用いて鎖状構造を作製する際に用いられる、一連のリソグラフィ−重合イベントの例を模式的に示す。この場合も図示したように左から右に向かう単量体流のフローにおいて、照明パルスは、単量体流が連続して流れているときに、成長する鎖状構造の最後尾に各形状単位が追加され、その各形状単位が、重複する重合領域によって連結されるように繰り返し印加される。第1照明パルス(1)において、最初の円筒構造が形成され、第2パルス(2)において、円筒の後尾に長方形の構造が追加され、第3パルス(3)において、長方形の後尾に正方形の構造が追加され、第4パルス(4)において、正方形の後尾に長方形が追加され、さらに、第5パルス(5)において、長方形の後尾に三角形が追加される。この動的マスク連鎖形成により、鎖状構造に対する高度な個別設定を実現できることに加え、ほぼ任意の範囲の連鎖の組み合わせを生成することが可能になる。
【0043】
図3〜4に示した形状および形体の幾何学的配置は、本発明に従って作製することができる高分子微細構造の代表例ではあるが、このような高分子微細構造の例を網羅的に示したものではない。これらの例は、離散的な粒子状の微細構造と、リボンまたは連鎖のような相互連結された微細構造の両方を、本発明の微細構造合成プロセスによって生成できることを示したものである。微細構造は、図3D〜3Fの微細構造の例に示したように、微細構造の平面において非連続であってよい。追加の微細構造の幾何学的配置は、たとえば、六角形のような多角形形体と、コロイド状立方形微細構造と、円形、三角形、または正方形の断面を持つ柱などのような縦横比の大きい物体と、非対称物体とを含む。ここで、「微細構造」という用語は、約10nmから約1000μmの長さ規模の形体サイズを持つあらゆる構造を指すものである。この用語は、特定の幾何学的配置や対称性を示唆するものではない。ただし、円形、丸みを帯びた形状、対称形、およびこのような他の幾何学的配置は、本発明に従って作製することができる。多くの用途で、「微細構造」という用語は、連続相内に分散可能な異なる個別要素である微細構造を表すために用いることができる。前述したリボン微細構造および鎖状微細構造は、微小粒子として特徴付けられる最も多くの用途に即したものではないが、本発明で検討される微細構造である。
【0044】
マスク形状と結果的に得られる微細構造の幾何学的配置との相関性は、部分的には、単一ステップのリソグラフィ−重合プロセスの投影リソグラフィを実施するために用いられるレンズ系に基づいている。多くの用途で、レンズ系として倒立顕微鏡対物レンズを利用すると便利である。この例において、マスク形体のサイズは、系内の顕微鏡対物レンズと他のレンズの特徴によって規定される倍率で縮小される。一般に、追加のレンズは、視野絞りスライダと顕微鏡レンズ系の対物レンズの間の光路内に位置する。ここで、たとえば、20倍の対物レンズである場合、対物レンズと視野絞りスライダの間の2.57倍レンズによって、7.8倍の形体の縮小が行われる。この場合、350μm角のマスク形体で、図1〜2に定義したような微細構造立方体、すなわち、x−y平面に長さ45μmの側面を持つ長方形の平行6面体が合成される。
【0045】
図1〜2に示したように、微細構造のz平面の高さは、ほとんどの2次元微細構造に関して、マイクロ流体デバイスの断面およびそのデバイス内の非重合潤滑層によって規定される。前述した酸素援用の重合阻止プロセスの例では、高さが約1μmから約5μmの間の非重合潤滑層で十分である。厚さ約2.5μmの非重合潤滑層を用いた場合に、マイクロ流体デバイスの断面高さが20μmであるとすると、結果的に得られる高分子微細構造は、約5μm短いものになる。換言すると、この例では、図1〜2に定義したz平面の高さが約15μmになる。
【0046】
多くの用途について、前述した例と同様の投影リソグラフィ技法の基本的制約は、利用する対物レンズの光学分解能および焦点深度によって規定される。対物レンズの分解能は、ここでは、見分けることができる最小判別可能形体を意味し、焦点深度は、ここでは、対物レンズから出た光線が一定の直径を持つと考えられる長さを意味するものとする。本発明の投影リソグラフィ技法において、光学分解能は、合成可能な最小形体サイズを規定し、焦点深度は、重合微細構造の側壁が直線状であり得る長さを規制する。光学解像度を大きくすると、焦点深度が短くなる。また、透過マスクに印刷可能な最小形体サイズは、形体のサイズに対する制約の一因である。
【0047】
所定の用途に対応した適切な透過マスクを作製できるならば、投影リソグラフィプロセスにレンズ系を採用する必要はない。対物レンズが存在しない場合、照明はマスクを通過した後、形体サイズが縮小することなく、マイクロ流体デバイス内の単量体流に誘導される。そして、マスクの形体は、重合する単量体流内で同一形状に再生される。
【0048】
本発明は、特定のタイプのマスクに限定されるものではなく、単量体流内において高分子微細構造の形状定義と重合とを同時に実現できる任意の適切なマスクまたは照明構成を採用することができる。開口、インクマスク、クロムマスクなどの金属マスク、写真フィルム、前述したデジタルマイクロミラーデバイスなどの動的マスク、および他の同様のマスクと技法を利用してよい。一般に、必要とされるのは、マイクロ流体デバイス内の単量体流に対した照明を照射または誘導することのみである。
【0049】
多光子照明および多重ビームのリソグラフィ技術も利用でき、これにより、たとえば、3次元の微細構造形体を作製できる。図5は、本発明に従って合成され、3D形体を含む高分子微細構造90の例を模式的に示す図である。この例において、三角形のマスク形体92が、レーザ干渉リソグラフィに利用されて、レーザ照明により微細構造が重合されるときに、その微細構造をリソグラフィ方式で画定する。その結果得られる微細構造は、構造全体に相互貫入穴を持つマトリックスによって特徴付けられる。本発明の高分子微細構造に追加された3Dの次元性は、選択した機能または他の作用に対応した各種の用途に利用できる。本発明は、特定の3D技術または微細構造の特定の種類に限定されずに、微細構造形体に対するほぼ自由な3Dの個別設定を実現できる。
【0050】
また、本発明の合成プロセスに用いられるマイクロ流体デバイスの断面の幾何学的配置を調整して、微細構造の幾何学的配置を個別設定することもできる。図6A〜6Eは、マイクロ流体デバイスの幾何学的配置の例を示す模式的断面図である。これらの例には、マイクロ流体デバイスのアセンブリ工程が示されており、このアセンブリ工程は、広範囲にわたるデバイスの幾何学的配置の簡便な製造を実現できる。
【0051】
図6Aに、図1A〜1Bと同様のデバイス12の例を示す。このデバイス12は、長方形の断面ボリューム95を持ち、単量体流はこのボリューム内を通ることができる。このデバイスの製造は、高分子デバイス材料、たとえば、PDMSに関して好都合に実行できる。このようなシナリオにおいて、たとえば、シリコン基板に、リソグラフィ方式でパターン印刷され、かつ、選択したデバイス断面の幾何学的配置にエッチングされた型が設けられる。対応するPDMS構造100は、この基板の型を用いて、従来の成形技法により成形される。その結果得られるPDMS構造100は、デバイスの上面および側面を構成する。透明の支持構造、たとえば、ガラス板104の上に、PDMS層102が配設されて、PDMSデバイスの底面を提供する。PDMS構造100は、ガラス板上のPDMS層102と結合されて、中空の長方形マイクロ流体デバイスを形成する。このアセンブリ工程は、特に簡便であり、また、ガラス板などの支持構造をデバイスに設けることができる。
【0052】
次に、図6Bの例を参照しながら説明する。上部のPDMS構造100は、前述したように成形でき、パターン印刷および成形されたPDMS層106がグラス板104の上に設けられる。これにより、デバイスの幅に沿って形体を有する断面、すなわちチャネル108を実現できる。図6Cに示すように、この例は、多重レベルリソグラフィ技法を利用してPDMS構造110とPDMS層112の両方をパターン化することで拡張することができる。リソグラフィステップのこの組み合わせにより、複雑なデバイス断面114を作製することができる。
【0053】
図6Dに、マイクロ流体デバイス断面の例を模式的に示す。この例において、PDMS構造116は、丸みのある断面118を作製するために、管またはロッドの周囲に成形される。成形された構造116は、その構造自体が、たとえば、ガラス板104上で直接支持されてよい。図6Eは、マイクロ流体デバイスの例を模式的に示すが、この例において、PDMS構造120は、グレースケールリソグラフィ技法を利用して形成されており、その構造の幅方向に角度の付いた幾何学的配置を実現している。角度付き断面122は、この構成から得られたものである。ここで、ガラス板104の上に、前述した方式でPDMS層102を設けることができる。あるいは、リソグラフィ方式によるPDMS層の画定を利用して、断面輪郭の形体を増やすこともできる。
【0054】
マイクロ流体デバイスの断面の高さは、投影マスクの形体サイズと共に、前述した図1の感光性単量体の例に示した微細構造を完全に重合させるために必要な露光時間を規定する。重合の露光時間は、デバイスの断面およびマスクの形体サイズの両方に反比例する。照射される照明と整合する方向におけるチャネルの広がりが小さくなると、あるいはマスク形体サイズが小さくなると、より長い重合期間が必要になる。マスク形体サイズが縮小すると、照明の合焦に用いられる顕微鏡の光学縦列、または採用される他の光学系内の回折に誘発される制約により、重合量を増やすことが必要になる。
【0055】
必要な重合期間の増加は、ひいては、単量体流内における重合微細構造の望ましくない形状変形を避けるために、マイクロ流体デバイスを通って連続して流れる単量体流の最大許容速度を制限することになる。本発明によれば、微細構造形体サイズ許容範囲を規定し、その許容範囲と、マイクロ流体デバイスとマスク形体サイズに必要な重合期間と、に基づいて、指定した微細構造形体サイズ許容範囲を満たす単量体流の流量を決定することが好ましい。単量体流の流量は、たとえば、シリンジポンプ動作や、毛管作用や、圧力や、電気運動力や、他の指定の動作で制御することができる。
【0056】
前述したように、ストップフローリソグラフィは、本発明に係る連続フローリソグラフィの代替として、図1に示したものと同様のマイクロ流体デバイス内の単量体流と共に利用することができる。ストップフローリソグラフィ処理において、単量体流のフローは、リソグラフィ−重合ステップが開始される前に、ほぼ完全に停止される。リソグラフィ−重合ステップが完了すると、単量体のフローが再開され、合成粒子は、リソグラフィ−重合が行われたチャネル領域から完全に流し出される。これにより、合成された微細構造が、後に続く微細構造の重合と干渉することを確実に回避する。
【0057】
多くの用途に関して、このストップフローリソグラフィ技法は、連続フローリソグラフィと比べて向上した、合成高分子微細構造形体分解能を提供できる。ストップフローリソグラフィ技法は、また、連続フローリソグラフィよりも向上した微細構造合成処理量を達成することができるが、これは、微細構造の流し出しステップを高流量率で実行できることから、より高い平均単量体流流量率を採用できるためである。連続フローリソグラフィは、一般に、ストップフローリソグラフィよりも機構的に単純であり、そのために、ストップフローリソグラフィ特有の利点を必要としない用途に選択される。ストップフローリソグラフィは、小さい形体、たとえば、〜10μm以下の形体を持つ高精度微細構造を作製するために用いられる用途において、または、後述するような、微細構造内の隣接する化学的性質の間に先鋭な界面を作製する必要がある場合に、連続フローリソグラフィよりも好ましいとされる。2つの混和性の流れの間の界面は、隣接する流れの間で分子種が拡散できる滞留時間が短くなるにつれてより先鋭になる。ストップフローリソグラフィ設定において、一方は、2つの高速に流動する流れが停止した直後に重合できるため、停留時間が削減され、界面をさらに先鋭に形成できる。
【0058】
図7は、例示するストップフローリソグラフィシステム150の要素を示すブロック図である。このストップフローリソグラフィシステム150を利用して、前述の図1を参照して説明したような微細構造の感光性重合を実行することができる。ストップフローリソグラフィシステム150は、圧力駆動による単量体流の流動のための制御圧力源152と、前記圧力源152からの加圧を停止および開始する三方バルブ154と、を含む。圧力源は、圧力源機構の動的応答が優れているため、この用途では、シリンジポンプよりも圧力源の方が好ましい。
【0059】
投影リソグラフィ用の光源、たとえば、UV光源156が設けられる。シャッタ158または他の制御機構を設けて照明の期間を制御し、マスク160または他のシステムは、前述した方式でマイクロ流体デバイス162と整列される。また、必要に応じて、顕微鏡対物レンズ164や他のレンズ系を設けて、照明形体サイズを小さくする。コンピュータ166や、他の処理装置や、他の処理システムを設けて、シャッタ158およびバルブ154の同期制御を行い、マイクロ流体デバイスを通る単量体流のフローが、単量体流の照光と一致して停止および始動するように調整する。
【0060】
バルブおよびシャッタは、たとえば、シリアルRS232接続や、USB接続や、データ収集ボードや、他の適切な接続を介して接続された、適切な制御ソフトウェア、たとえば、テキサス州オースティンのナショナルインスツルメンツ社(National Instruments CORP)製のラブビュー(LabVIEW)など、を用いて制御することができる。あるいは別の構成として、コンピュータ制御された圧力変換器を用いて、指定のフロー圧力と停止フローのゼロ圧力の間で単量体流の圧力を調整してもよい。圧力源は、たとえば、約0〜30psiを供給できる任意の適切なガス圧力源として設けることもできる。三方バルブまたは圧力変換器は、たとえば、10μLのピペットチップによってマイクロ流体デバイスに嵌めこまれる適切な細管、たとえば、直径1/32”(約0.79mm)のタイゴン(登録商標)細管を介してマイクロ流体デバイスに連結される。一例のシナリオにおいて、このピペットチップは、所定のボリュームの単量体流で満たされ、マイクロ流体デバイス内に挿入されて、そのデバイスを通る単量体のフローを始動する。ここで、圧縮ガスヘッドを採用して、前記細管に接続し、その細管を通ってピペットチップまで空気が流れるように構成し前記フローを駆動することもできる。
【0061】
図7のシステム150について、特にストップフローリソグラフィ処理に関連して説明したが、システム150は、連続フローリソグラフィ処理において単量体流の流量を制御するために利用することもできる。この態様の動作において、三方バルブは、開状態に維持されて、デバイス内を流れる単量体流に一定の圧力が印加される。ここで、コンピュータを利用して、シャッタスピードと相関的に、単量体流の流量を制御することができる。
【0062】
次に、本発明の微細構造合成プロセスに用いられる高分子化学の具体的な特性について説明する。このプロセスは、重合可能な任意の液相の単量体を用いて実行でき、このプロセスにおいて、微細構造形状の画定および重合は、リソグラフィ−重合の単一ステップで達成される。好ましくは、選択した単量体も、停止種で停止可能な重合作用によって特徴付けられる。したがって、停止種と、リソグラフィ照明と、単量体成分とは、本発明のプロセスのこのような機能すべてを協働して実現するように選択される。
【0063】
前述したように、特に適した高分子の1つの類は、UV照明、可視光照明、熱開始反応、または他の起爆放射線や起爆剤による遊離基開始重合を行う種類の重合性単量体である。このような単量体系統は、好ましくは、遊離基開始重合の連鎖延長を起こす1つ以上の不飽和(二重結合)種を含む。このような単量体の例は、アクリレート類と、マルチアクリレート類(multi-acrylates)と、メタクリエート類(methacryates)と、マルチメタクリレート類(multi-methacrylates)と、ビニル類と、これらの任意の混合物とを含む。
【0064】
下記の表1は、本発明に係る高分子微細構造合成に利用できる各種の単量体について、網羅的なものではないが、その一部を示すリストである。
【0065】
【表1】
【0066】
光重合可能なこれらの単量体については、単量体流に光開始剤種を挿入して重合プロセスを実現できる。事実上、照明を吸収した結果として、流体の単量体流内に遊離基を生成できる任意の化学物質は、光開始剤種として利用できる。一般に、2種類の光開始剤が存在する。第1の種において、化学物質は、単分子結合開裂を経て遊離基を発生させる。このような光開始剤の例は、ベンゾインエーテル類と、ベンジルケタール類と、a−ジアルコキシ−アセトフェノン類と、a−アミノ−アルキルフェノン類と、アシルホスフィンオキシド類と、を含む。光開始剤の第2の種は、光開始剤が共開始剤と反応して遊離基を形成する二分子反応によって特徴付けられる。このような種の例には、ベンゾフェノン類/アミン類と、チオキサントン類/アミン類と、チタノセン類(可視光)とがある。
【0067】
下記の表2は、本発明に係る高分子微細構造合成で光重合可能単量体と共に利用できる各種の光開始剤について、網羅的なものではないが、その一部を列挙したリストである。
【0068】
【表2】
【0069】
本発明によれば、高分子微細構造が合成されることになる単量体流は、選択した微細構造の官能性をもたらす種々の官能基を受け入れることができ、これにより、たとえば、環境検知、自己集合、レオロジー、生体検知、薬物送達、および他の用途に微細構造を応用できるようになる。官能基は、たとえば、共有結合取り込みにより化学的に微細構造に付加されても、あるいは、物理的に微細構造に付加または混入されてもよい。共有結合により取り込まれる部分は、単量体流内に、微細構造合成のリソグラフィ−重合ステップによって重合される単量体として提供できる。この単量体は、単独、または共重合種と組み合わせて取り込むことができ、単独、または共重合種と共に、合成高分子微細構造内に、選択した官能基を提供する。
【0070】
たとえば、単量体流に単量体種を混入して、温度感受性高分子微細構造を合成することができる。ここでは、N−イソプロピルアクリルアミド単量体または他の適切な単量体を利用できる。単量体流内に単量体種を混入して、pH−反応性高分子微細構造を合成することができ、この場合、たとえば、アクリル酸や、メタクリル酸や、他の適切な化学種などの単量体を利用できる。さらに、単量体流内に単量体種を混入して、感光性高分子微細構造を合成することができ、この場合、アゾベンゼン、N,N−ジメチルアクリルアミド、または他の適切な単量体の共重合体を利用できる。単量体流内に単量体種を混入して、抗原応答性高分子微細構造を合成することができる。この場合、N−スクシンイミジルアクリレートと結合されたヤギ抗ウサギIgG、または他の適切な単量体を利用できる。これらの例では、選択した単量体種を混入することによって、合成微細構造に広範囲の官能性を付与できることを示した。
【0071】
さらに、本発明によれば、修飾生物材料と同様に、生分解性単量体も単量体流内に混入することができる。たとえば、単量体流にDNAまたはRNAを混入できる。これらは、カスタム合成したり、あるいは市販されているものから取得したりできる。ポリペプチド類や、抗体や、酵素や、他の同様の化学種も単量体流内に混入できる。選択した各化学種は、微細構造が重合される際に、共有結合による組み込みを実現できるように、必要に応じて修飾することができる。また、蛍光体および発色団、たとえば、フルオレセインジアクリレートおよびメタクリル酸ローダミンなど、または他の分子や大きな分子の一部は、光によって活性化されて蛍光発光したり、あるいは特定の波長の光を選択的に吸収したりできるものであり、これらもまた単量体流内に混入できる。
【0072】
また、本発明によれば、選択した要素は、本発明のリソグラフィ−重合ステップによって微細構造が重合されるときに、高分子微細構造の高分子マトリクス内に物理的に閉じ込められるように、単量体流内に供給することができる。たとえば、量子ドットのような粒子と、乳化液滴と、気泡と、導電性金属粒子種と、金または銀のやすり粉(filing)または粒子と、ナノメートルサイズの磁鉄鉱粒子や磁赤鉄鉱粒子などの磁気感受性粒子種と、カーボンナノチューブと、マイクロエレクトロニクス材料または他の材料からなる三次元マイクロマシン構造または三次元微細加工構造と、他の化学種と、を混入できる。これらは、必要または要望に応じて、単量体流内に供給された1つ以上の単量体と物理的または化学的に結合されてよい。さらに、液晶と、ウィルスと、ミトコンドリア、タンパク質、酵素、核酸などの全細胞または細胞成分と、他のこのような化学種と、を単量体流に混入して、高分子微細構造マトリクス内に閉じ込めることもできる。単量体流に各種のポロゲン(porogen)、たとえば、界面活性剤、気泡、溶解可能な微小粒子、またはPMMAナノ粒子のようなナノ粒子など、を追加することで、その結果得られる高分子微細構造の気孔率を制御することができる。
【0073】
図8A〜8Cは、本発明に従って合成され、選択部分を含む高分子微細構造の例を模式的に示した図である。図8Aの例では、四角形マスク形状200が用いられ、選択部分205は、結果的に得られる長方形微細構造208の高分子マトリクス内に組み込まれている。ここでは、ビード、乳濁液滴、気泡、細胞、前述した粒子や他の選択した要素、または他の化学種を混入することができる。
【0074】
図8Bは、高分子微細構造210の例を模式的に示す図である。この高分子微細構造210も正方形マスク形体200を用いて合成されるが、ここでは、前記構造の高分子マトリクス内にDNAスタンド212が組み込まれている。図8Cは、円形マスク形体216を用いて合成される高分子微細構造214の例を模式的に示す図である。結果的に得られる円形微細構造214は、ここでは、微細構造の高分子マトリクス内に組み込まれたタンパク質218または他の部分を含んでいる。これらの例は、限定するためのものではなく、微細構造の高分子マトリクス内に組み込まれる、選択した化学種を用いて作製できる各種の高分子微細構造を例示するためのものである。
【0075】
高分子微細構造合成中に組み込まれるように単量体に追加される、1つ以上の選択した化学種は、たとえば、渦混合や、音波処理や、他の指定の技法を用いて単量体に混合することができる。また、単量体に界面活性剤を混合して、ポロゲンや、部分や、他の追加要素が凝集しないように安定させることができる。単量体に追加される一部の化学種は、単量体流内の流体の単量体の連続相に粒子の分散相を形成する。本発明によれば、このような分散層は、微細構造を作製するために重合される相を構成するものではない。前述したように、単量体流の連続相は、重合されるものであるが、分散相は、微細構造マトリクス内に共有結合方式で結合されていない場合、結果的に得られる合成高分子微細構造の形状内に閉じ込められる。一般に、この分散相は、合成高分子微細構造形状の外形または幾何学的配置を規定しない。微細構造形状を規定するのは、重合連続相に適用されるリソグラフィマスクの形状である。
【0076】
本発明によれば、高分子微細構造は、微細構造の平面上の異方性配列内に2つ以上の官能性および化学的性質の少なくともいずれかを包含するように、制御可能に合成できる。図9Aと図9Cは、このような合成を実現する流動構成の2つの例を模式的に示す平面図である。図9Aに例示する流動構成において、2つの入口232,234を持つY字形流動構造230が設けられ、その各入口は、前述したようなマイクロ流体デバイスの断面ボリュームに、選択した個別の単量体流236,238をそれぞれ導入するように指定される。この断面ボリュームは、ここでは、2つの流れ236,238の隣接配列239の領域に模式的に示されている。
【0077】
2つの隣接する単量体流から微細構造を合成するには、選択したマスク形状、たとえば、図9Aのリング形状240を、前述した本発明のリソグラフィ−重合合成に利用する。第1例の合成プロセスにおいて、マスク240および照明源は、選択した方式で、2つの流れの界面241をまたいで整列され、この状態に応じて選択した割合の各流れを、合成される微細構造の中に取り込む。第2例の合成プロセスにおいて、マスクおよび照明源は、流れの側面から、2つの流れを通り抜けるように整列され、図1Bのレンズ系35の構成例と同様に、微細構造の厚さ方向に所定の割合の各流れを取り込む。この構成に加えて、あるいはこの構成に代えて、この2つの流れの相対流量を制御して、微細構造に取り込まれる各流れの割合を調整してもよい。これらの技法により、両方の単量体流の成分を所定の割合で取り込んだ高分子微細構造が作製される。
【0078】
図9Bは、図9Aのような2つの単量体流にまたがるリソグラフィ−重合ステップから得られる高分子微細構造242の例を模式的に示す図である。この微細構造は、一方の単量体流238に対応する第1ボリューム245と、もう一方の単量体流236に対応する第2ボリューム247とを含む。この2つのボリューム245,247は、図9Bの微細構造に、ほぼ同等に図示されているが、必ずしも等しい必要はなく、前述したように、任意の割合を選択することができる。図9Bに示したような二成分微細構造は、一般に、ヤヌス粒子または2面性粒子として知られている。ヤヌス粒子は、さまざまな用途で極めて有用であり、処理量が高く、信頼でき、再現性のある本発明の高分子合成プロセスの特徴は、ヤヌス粒子の作製を実用的な方式で実現できる。
【0079】
図9Cを参照して説明すると、本発明に従って、マイクロ流体デバイスを通る3つ以上の単量体流の同時フローを利用して、これらの流れにまたがる微細構造を合成し、多数の隣接する化学物質および官能基の少なくともいずれかを有する微細構造を生成できる。図9Cに、4つの異なる単量体流252,254,256,258を収容するY字形流動構造250を模式的に示す。これらの流れは、すべてマイクロ流体デバイスを通るように誘導され、ここでは流れの隣接配列260によって模式的に図示されている。これら4つの流れにまたがるリソグラフィおよび重合に対応したマスク形状262が設けられる。その結果得られる高分子微細構造264を図9Dに模式的に示した。4つの単量体流252,254,256,258は、それぞれ、対応する微細構造ボリューム264,266,268,270を生成する。この数の化学物質の割合を調整する機能は、複数の構成要素を提供する、いわゆるバーコード式微細構造の設計に、大幅な柔軟性をもたらすことができる。
【0080】
図10A〜10Hは、高分子微細構造の追加の例を示す模式図である。これらの高分子微細構造は、微細構造の形状をリソグラフィ方式で画定しながら、複数の並流単量体流にまたがって、あるいはその単量体を横切って、前記形状を重合することによって合成できる。図10Aの例では、長方形マスク300と4つの単量体流とを用いて、対応する長方形の4分割微細構造305を作製する。図10Bの例において、長方形マスク300は、3つの単量体流と共に用いられており、そのうちの1つは、たとえば、ポロゲン205を含み、また、1つは、たとえば、DNAスタンド212を含むことで、前述した方式で、複数の異なる官能基を持つ3分割微細構造308を作製する。
【0081】
図10Cの例では、3つが同一で、3つが異なる6つの単量体流と共に円形マスク310を用いて、円盤状微細構造311を作製している。この円盤状微細構造311には、同一成分を持つ3つの領域312,314,316が組み込まれており、これらの3つの領域は、成分が異なる3つの領域318,320,322によって区分けされている。この例の微細構造において、結果的に得られる微細構造の6つの領域は、それぞれ、対応する単量体流の流量によって設定される個別の幅によって特徴付けられる。
【0082】
図10Dは、2つの単量体流にまたがって合成された高分子微細構造330を模式的に示す図で、ここでは、各単量体流に対応する微細構造領域に個別形体の幾何学的配置を提供するマスク形状を利用している。図10Eは、S字形マスク336を利用して、5つの単量体流にまたがって合成された高分子微細構造334を模式的に示す図である。ポリマー種の区別は構造全体で維持される。
【0083】
本発明によれば、高分子微細構造の合成に用いられる、並行流の単量体流は、混和性で、化学的に類似する流れであってよい。この場合、結果的に得られる微細構造における異なる領域の間の界面は、分子拡散により、鋭いものにはならない。層流の特徴である拡散律速混合を活用して、単量体流が確実にマイクロ流体デバイス内を個別に流れるようにできるが、この場合、隣接する重合領域の間で分子拡散が発生することになる。一方、並行流の単量体流が不混和性である場合は、合成高分子領域間に先鋭な界面を実現できるため、際立って分離された化学的性質を持つことに加え、界面エネルギが異なる複数の領域を含む微細構造を作製することができる。
【0084】
図10Fは、2つの単量体流にまたがって合成された高分子微細構造340の例を示す図であり、この単量体流のうちの1つは、親水性高分子領域342を提供し、単量体流のうちの1つは、疎水性高分子領域344を提供する。微細構造内の2つの領域の界面346は、この2つの領域の異種の界面エネルギによって、特徴的に曲げられている。このような微細構造の両親媒性の性質を利用して、この微細構造の個体群の自己集合化を実現できる。
【0085】
図10G〜10Hは、並行流の複数の単量体流にまたがるのではなく、複数の単量体流を貫通して行われるリソグラフィおよび重合で合成された高分子微細構造352,358を示す模式図である。図10Gに示すように、円形マスク350を用いて、3材質微細構造が作製されており、この構造体の円形断面の成分は、当該構造体の厚さ方向に変化する。同様に、図10Hに示した星形高分子微細構造は、4つの異なる単量体流にまたがって合成されて、星形構造体の厚さ方向の成分が異なる一方で、その構造体の所定の星形平面に一定の成分を持つ微細構造358を形成する。
【実施例】
【0086】
[実施例1]
まず、マサチューセッツ州ニュートンのマイクロケム(Microchem)社製のフォトレジストSU−8を用いてシリコン基板をパターニングして、図6Aに示したような長方形マイクロ流体デバイス断面に対応する型構造を画定することで、いくつかのマイクロ流体デバイスを作製した。結果的に得られた前記シリコン基板の雄型チャネルに、ミシガン州ミッドランドにあるダウコーニング(Dow Corning)社製のシルガード(Sylgard(登録商標))184シリコンエラストマとして提供されたPDMSを注入し、図6Aに示したような上部PDMSデバイス構造100を成形した。長さ1cmの長方形マイクロ流体デバイスについて、パターニングにより、3つの異なる幅、すなわち、20μm幅と、600μm幅と、1000μm幅と、に画定し、また、パターニングにより、3つの異なる長方形マイクロ流体チャネル高さ、すなわち、10μmの高さと、20μmの高さと、40μmの高さと、に画定した。スライドガラス上に、PDMSの層をスピンコートして、図6Aに示したようなマイクロ流体デバイスの底面を形成した。成形された上部PDMSデバイス構造を、PDMSコートされたスライドガラスと結合して、完全なマイクロ流体デバイスを形成した。
【0087】
これらのマイクロ流体デバイスを用いて、本発明のリソグラフィ−重合処理を実行するため、これらのデバイスから選択した1つを倒立顕微鏡に搭載した。この倒立顕微鏡は、ニューヨーク州ソーンウッドのカールツァイスマイクロイメージング社(Carl Zeiss MicroImaging, Inc.)製のアキシオバート(Axiovert)200倒立顕微鏡である。電荷結合素子(CCD)カメラ、ニューヨーク州タリータウンの日立アメリカ社(Hitachi America, Ltd.)製Hitachi KP−M1AモノクロCCDカメラを配設して、マイクロ流体動作時の画像を取得した。NIH Imageソフトウェアを利用して、CCD画像を取り込んで処理した。
【0088】
選択した微小構造形状の暗視野透過性フォトマスクは、設計ツール、カリフォルニア州サンラフェルのオートデスク社(Autodesk, Inc.)製オートキャド(AutoCAD(登録商標))2005を有するソフトウェアで設計し、カリフォルニア州ポウエイのCADアートサービス(CAD Art Services)により高解像度プリンタで印刷した。結果的に得られた透過マスクは、顕微鏡の視野絞り内に挿入した。UV照明源は、マサチューセッツ州ダンバースのオスラムシルバニア社(OSRAM Sylvania)製100W OSRAM HBO(登録商標)水銀ショートアークランプにより提供した。広範囲のUV励起を実現できるバーモント州ロッキンガムのクロマテクノロジー社(Chroma Technology CORP)製のフィルタセット、11000v2:UVを利用して、所望の照明波長である365nmを選択できるようにした。ニューヨーク州ロチェスターのヴィンセント社(Vincent Ass.)製のプログラム機構付電子シャッタ、ユニブリッツ(UniBlitz(登録商標))VS25を、同社のコンピュータ制御シャッタドライバコントローラ、VMM−D1によって駆動して、指定のパルスのUV光を生成した。
【0089】
ニューヨーク州タリータウンのチバスペシャリティケミカルズ社(Ciba Specialty Chemicals)製の光開始剤ダロキュア(DAROCUR(登録商標))1173を5%(v/v)含む、ペンシルベニア州ウォリントンのポリサイエンス社(Polysciences)製のポリ(エチレングリコール)(400)ジアクリレート(PEG−DA)のモノマー溶液を利用した。PEG−DAの粘度は、25℃において57cP(57mPa・s)であると供給業者から報告された。また、トリメチルプロパントリアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、およびトリ(プロピレングリコール)ジアクリレートの追加のモノマー溶液も調製した。マサチューセッツ州ホリストンのケーディー・サイエンティフィック社(kdScientific)製のシリンジポンプ、KDS100単一シリンジ薬物注入ポンプに、前記溶液のうちの選択した1つを装填して、マイクロ流体デバイスのうちの選択した1つ内に送達した。
【0090】
透過マスクおよびマイクロ流体デバイスを介して、そのマイクロ流体デバイス内を流れるモノマー溶液にUV光のパルスを照射した。そのパルスによって、単量体内で高分子微細構造が重合されると、微細構造は、前記デバイスを通って、デバイス壁面における酸素誘起重合阻止によって生じる、単量体の非重合ボリューム内に運ばれた。単量体−微細構造溶液は、デバイスの長方形チャネルの出力部に設けた容器内に回収した。この溶液内の微細構造は、遠心分離により収集し、洗浄し、さらに、エタノール内での再懸濁を3回行って、微細構造上に残留する未重合の単量体を溶解させた。次に、微細構造を水中で3回洗浄してから水中に懸濁させた。
【0091】
個別の微細構造合成プロセスで、4つの異なる顕微鏡対物レンズ、すなわち、20倍、40倍、63倍、および100倍の対物レンズを利用した。下記の表3に、各対物レンズの実倍率と、理論分解能と、実用分解能と、焦点深度とを示す。
【0092】
【表3】
【0093】
実倍率の係数は、マイクロ流体デバイス内の単量体流に投影される際にマスク形状のサイズが縮小される倍率である。これは、視野絞りスライダと対物レンズの間の光路内の追加の2.57Xレンズにより、対物レンズの倍率とは異なったものになっている。理論分解能は、次に示すレイリーの式を用いて計算した。
【0094】
【数1】
【0095】
前式において、λは、利用した照明の波長365nmで、NAは対物レンズの開口数である。実用分解能は、異なる対物レンズを用いて、10μmのマスク形体が縮小されるサイズである。焦点深度(DOF)は、レンズ製造業者によって提供される式を用いて、次式のように計算した。
【0096】
【数2】
【0097】
このことから、対物レンズの倍率が高くなると、分解能は大きくなるが、焦点深度は小さくなるということがわかる。
【0098】
リソグラフィ−重合プロセスのCCD画像の分析により、選択した単量体の重合反応速度が高速であることから、微細構造は約0.1秒未満ですばやく形成されたことが判明した。PDMS面近傍における酸素によって補助された重合阻止は、デバイスの全長にわたり、非重合単量体流内での微細構造の流動を可能にした。図3〜4に示したような、三角形、四角形、六角形、柱状、および他の微細構造幾何学的配置が合成された。すべての粒子は、オリジナルのマスク形体寸法に対する優れた忠実度を示し、まっすぐな側壁を持っていた。
【0099】
[実施例2]
実施例1の方法で、10μmから500μmの範囲のエッジ長さを持つ四角形マスク形体を用いて、四角形高分子微細構造を合成した。この微細構造の合成は、20倍対物レンズおよび40倍対物レンズについて、繰り返して行った。10μmと、20μmと、40μmのチャネル高さを持つ、実施例1に記載した3つのマイクロ流体デバイスを利用した。マイクロ流体デバイス内で、実施例1のPEG−DAおよびダロキュア(DAROCUR(登録商標))1173光開始剤単量体流を利用し、リソグラフィ−重合ステップの実行中、前述したストップフロー処理において、単量体流の流れを停止させた。その結果得られた微細構造を回収して、実施例1と同様に分析した。
【0100】
微細構造の分析を行って、異なる高さのチャネルにおいて所定の露光時間で重合可能な最小マスク形体を特定した。図11Aは、20倍の対物レンズについて、重合できる最小マスク形体と露光時間との関係を示したグラフである。図11Bは、40倍の対物レンズについて、重合できる最小マスク形体と露光時間との関係を示したグラフである。この判定は、対応するマスク四角形の10%の許容範囲内で、所定のサイズの四角形が重合された時点を記録することにより実行した。形体サイズまたはチャネル高さが減少するにつれて、四角形微細構造の重合に、より長い露光時間が必要になった。
【0101】
[実施例3]
実施例1のマイクロ流体デバイスのうち、断面チャネル高さが38μmである(40μmを意図した)ものを採用して、PDMSで被覆したスライドガラスを被覆していないスライドガラスに入れ替え、実施例1と同様の単量体を用いて、高分子微細構造の合成を実行した。合成された微細構造はガラス板に貼り付くことが判明した。この結果は、実施例1におけるPDMS被覆によって実現される酸素の阻止効果が存在しないため、合成された微細構造がガラス表面にいたるまで重合できたものと考えられる。
【0102】
高分子微細構造は、実施例1と同様の方式で、いずれも38μmの断面チャネル高さを持つ、PDMS被覆スライドガラスデバイスと、被覆していないスライドガラスデバイスと、を用いて合成した。2つのデバイスそれぞれで、0.1秒の露光時間texpと、360μm角のマスク形状と、20倍の対物レンズとを利用した。
【0103】
2つのマイクロ流体デバイスで合成された微細構造は、前述の実施例1と同様に、回収および分析した。被覆されていないスライドガラスデバイスで合成された微細構造は、35.5μmの高さを特徴とした。PDMS被覆スライドガラスデバイスで合成された微細構造は33μmの高さを特徴とした。被覆されたスライドガラスデバイスでの合成中に、酸素により補助された阻止層が形成されたものとして、デバイスの上部と下部両方の壁面において、非重合潤滑層は2.5μmであると特定した。
【0104】
この実験は、チャネル高さが10μm、40μm、および75μmの長方形マイクロ流体デバイスについて繰り返し実行した。いずれのチャネル高さについても、2.5μmの重合阻止層の厚さが測定された。この結果は、重合阻止層の厚さは、マイクロ流体デバイスの断面高さとは無関係であることを示している。
【0105】
[実施例4]
実施例1と同様に、10μmから500μmの範囲の異なるサイズの形体を持つ透過マスクを作製した。単量体流としてフルオレセイン溶液を採用して、実施例1のリソグラフィ−重合プロセスを実行した。このプロセスで合成された微細構造は、実施例1の方法で回収および分析した。
【0106】
顕微鏡対物レンズの視野絞り面において透過マスクを通過した光は、250μmの臨界形体サイズ未満で、形体サイズに依存した強度を持つことが判明した。この臨界形体サイズの上では、光の強度があらゆるマスク形体寸法で等しくなり、そのような形体が同一の露光期間で重合した。この臨界サイズを下回ると、ビーム強度は、形体のサイズに応じて減少することが判明した。測定されたこの強度変動は、開口部のサイズが減少するにつれて、光線の拡散量が大きくなるため、マスクを透過する光がクリッピングされることが原因であるものと認められる。
【0107】
[実施例5]
10μm、20μm、40μmの四角形チャネル高さを持つマイクロ流体デバイスで、20倍の対物レンズと、PEG−DAおよび光開始剤からなる単量体流と、を利用して、実施例1のリソグラフィ−重合プロセスを実行した。プロセス間で、約100μm/sと約1700μm/sの間で単量体流の速度を変化させ、4つの異なる重合プロセスを実行した。これらのプロセスで合成された重合微細構造は、実施例1と同様に回収および分析した。
【0108】
図12は、許容率10%の長さスケールで、所定の速度のPEG−DA単量体流内で重合できた最小マスク形体サイズの測定値を示すグラフである。このデータを指標として利用して、選択したマスク形体サイズを合成するために利用できる最大単量体流速度を特定することができる。より小さい形体を有する微細構造を生成するためには、より低速の単量体流を必要とし、より大きな微細構造は、より高速の単量体流で合成できた。
【0109】
[実施例6]
2ポートフロー構造を用いて、実施例1のリソグラフィ−重合プロセスを実行した。この2ポートフロー構造は、実施例1の1ポート構造の方式で作製したが、ここでは、図9Aと同様のY字形の幾何学的配置を利用して、長方形のヤヌス粒子を生成した。単量体流が並行して流れるチャネル領域の断面は、高さ200μm、幅20μmとした。この構造の第1ポート内に、図1のPEG−DAおよびダロキュア(DAROCUR(登録商標))1173の単量体流のフローを誘導した。前記構造の第2ポート内に、ローダミン標識架橋剤である、ペンシルベニア州ウォリントンのポリサイエンス社製の蛍光メタクリルオキシメチルチオカルバモイルローダミンB(fluorescent methacryloxyethyl thiocarbamoyl rhodamine B)の0.005wt%溶液と共に、ダロキュア(DAROCUR(登録商標))1173とPEG−DAのフローを誘導して、高分子に蛍光ラベルを設定した。長方形のマスク形体を、2つの単量体流のフローにまたがるように配列し、実施例1と同様に、リソグラフィ−重合を実行し、重合微細構造を回収して分析した。図9Bに示したように、蛍光標識が設定された部分と設定されていない部分とが明確に形成されたことが、蛍光顕微鏡検査により検証された。
【0110】
[実施例7]
実施例1の実験条件を用いて、Y字形の2ポートのPDMSマクロ流体デバイスで、実施例6のリソグラフィ−重合プロセスを実施した。このデバイスは、長方形断面のチャネルで、チャネル高さ30μm、チャネル幅200μmと300μmとを持つ。PDMSマイクロ流体デバイスのそれぞれに、容器を挟み込んで、合成微細構造を回収した。シャッタ制御は、0.03秒のリソグラフィ露光時間と、連続する露光の間に5秒の休止と、を提供するように設定した。
【0111】
ペンシルバニア州ウォリントンのポリサイエンス社製のトリ(メチルプロパン)トリアクリレート(TMPTA)内の5%(v/v)のダロキュア(DAROCUR(登録商標))1173光開始剤からなる疎水性単量体流を用いて、両親媒性高分子微細構造を合成した。親水性相単量体流は、ポリ(エチレングリコール)(600)(PEG−DA)の65%水溶液内にダロキュア(DAROCUR(登録商標))1173の5%(v/v)溶液を含むものを供給した。TMPTAは水に溶けないため、2つの単量体流は混和しなかった。PEG−DAおよびTMPTAは、いずれも25℃において、それぞれ90cP(90mPa・s)および106cP(106mPa・s)の粘度を持つと、供給業者から報告された。
【0112】
2つの流れの平行な並行流が実現するように流動様式を規制しながら、シリンジポンプを用いて、約100から約300μm/sの間の流速になるように2つの単量体流を制御した。2つの単量体流は不混和性であったため、これらの流れは、マイクロ流体デバイスの出口までの全行程を並んで進んだ。これにより、界面全域に沿って2相の凝離(segregation)が行われたため、大量の微細構造の形成に好都合であった。この凝離がなければ、拡散混合が、重合に利用できる領域を抑制していた可能性があった。
【0113】
実施例1の方式で、三角形と長方形の間の形状範囲に属する楔形の微細構造で透過マスクを作製した。これらは、円錐と円筒の間の形状範囲の対物レンズによって表現された両親媒性分子の2次元の相似形で、この対物レンズの本体部は疎水性の尾部を表し、親水性の熱は円形面によって表現される。この形状範囲を利用して、パッキングの形状の効果を示す。
【0114】
図13は、前述のマスクを用いたリソグラフィ−重合プロセスの模式図で、単量体流の2つのフローに投影された5つの楔形形状の列を含み、楔形の微細構造は、並行流の流れにまたがって、5つが同時に合成された。20倍の顕微鏡対物レンズを利用したため、マスクサイズの約8分の1の大きさを持つ微細構造が得られた。利用した2つのアクリレートの共重合により、界面に、親水性部分と疎水性部分の化学結合が生じ、形成された微細構造に安定性が付加された。リソグラフィ−重合プロセスが進行すると、楔形の微細構造が形成され、この微細構造は、前述したように、PDMS表面における酸素誘起の重合阻止により生じた非重合単量体のフローの中で、連続してマイクロ流体デバイス内を通過した。
【0115】
微細構造は、前述した方式で、非重合単量体内で回収し、次いで、エタノール内に分散させてクラスタ化を防止した。親水性ポリマー前駆体と疎水性ポリマー前駆物質はいずれもエタノール内に完全に溶解可能であるため、エタノール内での微細構造の選択的配列は生じなかった。ただし、各微細構造の親水性部位は、エタノール内でより大きな度合いで膨潤し、その結果、元の形状が僅かに変形することが判明した。乾燥時に、各微細構造の親水性部位は、疎水性相と比べて収縮することが判明した。
【0116】
合成された微細構造のサイズは、微細構造が形成されている最中に、1/10000秒という短いカメラ露光時間で、流動している微細構造の画像を取り込むことにより、算出した。0.03秒の露光時間で形成された100個の連続する微細構造について統計を取った。図14に定義したように、微細構造の楔形形状の5つの異なる長さ変数、w1,w2,w3,h1、およびh2の配分を測定することで、粒子単分散の包括的分析を行った。マスクによって画定される微細構造のエッジ、w1と、w3と、(h1+h2)とに加え、親水性部位の長さh1と疎水性部位の長さh2は、重合が生じた際の界面の正確な位置に規定されるものと認められる。これらの長さはすべて、マイクロ流体デバイス内に微細構造が形成された時点で測定された。
【0117】
図15A〜15Eは、測定したこれらの寸法の分布を示す柱状グラフである。測定した5つの寸法すべてにおいて、サイズの変動係数(COV)は2.5%未満であったため、粒子は、単分散として適正に分類できる。ここで、分布の90%を超える部分が、中央の微細構造サイズの5%内に入っていた。さらに、親水性部位の長さh1と疎水性部位の長さh2を変えることにより、微細構造の両親媒性の程度も厳密に制御できることが判明した。図14のy方向における粒子の厚さは、25μmであると測定されたが、この厚さは、前述した例と同様、マイクロ流体デバイスの上部壁面および下部壁面における非重合潤滑層の2.5μmの厚さに相当する。
【0118】
楔形の微細構造のうちの1つの断面を検査することで、微細構造の親水性部位と疎水性部位の界面は、図10Fに図示したような有限曲率によって特徴付けられることが示された。この有限曲率は、この例について図16に定義されている。この曲率は、2つの流動している単量体流の不混和性によって生じたもので、結果的には、先鋭な湾曲界面が得られた。疎水性(‘o’)相は、親水性(‘w’)相上のPDMSを選択的に湿らせる。2つの相の界面とPDMS壁面との接触角度βは、親水性相と疎水性相との間の界面張力と、PDMSと前記2相との間の固液界面張力と、によって規定された。
【0119】
単純な幾何学的配置を用いると、界面における曲率半径Rは、R=H/2cosβ’として表すことができる。前式のHは、マイクロ流体デバイスの断面高さである。上記に指定した実験パラメータにおいて、17.4μmの推算半径が特定された。これは、実験的に特定した16±1.5μmの値によく適合することが判った。このことは、2つの単量体流の界面特性を利用して、2つの微細構造部分の間の界面の曲率を調整できることを示している。
【0120】
2つの異なる相内の粒子の架橋結合の程度は、フーリエ変換赤外(FTIR)分光法を利用して変換した二重結合の割合を測定することで特徴化した。このFTIR分光法は、マサチューセッツ州ウォールサムのサーモエレクトロン社(Thermo Electron CORP.)製のニコレット(Nikolet)分光計を用いて、架橋重合体の薄膜内の1635cm−1における末端のC=C伸縮の減少を計測することによって実行した。FTIRを実行するため、使用したマイクロ流体デバイスと同一寸法のチャネルにそれぞれのオリゴマーを装填し、その後、合成微細構造と同様に0.03秒の照射線量を付与し、さらに、完全な架橋形成のために120秒の照射線量を付与して、それぞれが親水性または疎水性のいずれかである個別サンプルを調製した。形成された高分子フィルムの細片を使用してFTIR測定を行った。接触角と表面張力の測定は、ノースカロライナ州マシューズを拠点とするDruss USA社製の張力計DSA10を用いて実行した。
【0121】
図17Aは疎水性単量体流のFTIRスペクトルを示すグラフで、図17Bは親水性単量体流のFTIRスペクトルを示すグラフで、これらは両方とも、0秒、0.03秒、および120秒の露光時間について示したグラフである。UV光に対する0.03秒の露光期間において、二重結合の変換は、親水性相で47%、疎水性相で35%であることが判る。多重官能性アクリレート類を正常に架橋するために必要な二重結合の変換は、通常、5%より小さいため、この露光線量は、微細構造の架橋形成に十分であると結論付けられる。
【0122】
両親媒性分子と同様に、親水性部位と疎水性部位の両方を備える微細構造は、自身の界面エネルギを最小化するように自分自身を配向する傾向を示す。単独の熱エネルギでは、微細構造が自身のエネルギ地形を模索できる十分なエネルギではない場合は、微細構造が自身のエネルギ最小値を特定して自己集合を行うことを補助するために、たとえば、撹拌によって提供される外部エネルギを利用した。楔形の両親媒性微細構造を分離し、純水性相の中と、水中油型乳剤または油中水型乳剤の界面と、のうちのいずれかにおける集合化を、撹拌を利用して誘導した。その結果により、粒子は、自身の表面エネルギを抑制するために自己を配向しようとする強い傾向を持つことが示された。
【0123】
不混和性微細構造を合成する本方法は、前述したような化学的異方性を持つ、広範囲の非球状粒子の合成を実現できる十分な普遍性を持つもので、たとえば、ロッド状の疎水性尾部と円盤型の親水性頭部とを持つ両親媒性粒子を合成することができる。粒子のこのようなライブラリは、メソスケールの自己集合およびレオロジーにおける幾何学的配置と化学的異方性の作用を研究する場合に有用なものになる。また、水−油−水(w-o-w)のようなより複雑なモチーフを持つ構造であっても、極めて簡単に形成することができる。
【0124】
これらの実施例および上記の説明により、本発明は、リソグラフィに基づくマイクロ流体技法を提供し、この技法を用いることで、簡潔な二連のリソグラフィ−重合ステップにより、各種複雑な形状と、化学特性と、官能性と、を持つ高分子微細構造を連続的または準連続的に合成できることを示した。合成される微細構造の形態特性および化学特性は独立して制御できるため、多くの用途、特に、薬物送達、バイオセンシング、マイクロアクチュエーション、および自己集合とレオロジーに関する基礎研究などの用途に対応した大量の高分子微細構造を、それぞれ固有の形体で官能性を持つように作製できる。本発明の合成処理における高処理量により、前述した多数の用途に求められる規模での高分子微細構造の合成を実用的に達成することが可能になる。
【0125】
当然ながら、この分野に対する本貢献の精神および範囲から逸脱せずに、前述した実施形態に各種の修正および追加を行えることは当業者であれば理解されるであろう。したがって、ここで要求している保護は、本発明の範囲に入る主要請求項とその等価物すべてに公正に及ぶべきものである。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1A】本発明に係る高分子微細構造合成システムの一例を示す模式図である。
【図1B】図1Aの微細構造合成システムについて、本発明に従って、複数の照明源を用いて構成した状態を示す模式図である。
【図2】図1の微細構造合成システムにおいて合成された3つの高分子微細構造を模式的に示す断面図である。
【図3A】本発明に係る、高分子微細構造の例と、各微細構造の作製に用いられる対応リソグラフィマスクの例と、を示す模式図である。
【図3B】本発明に係る、高分子微細構造の例と、各微細構造の作製に用いられる対応リソグラフィマスクの例と、を示す模式図である。
【図3C】本発明に係る、高分子微細構造の例と、各微細構造の作製に用いられる対応リソグラフィマスクの例と、を示す模式図である。
【図3D】本発明に係る、高分子微細構造の例と、各微細構造の作製に用いられる対応リソグラフィマスクの例と、を示す模式図である。
【図3E】本発明に係る、高分子微細構造の例と、各微細構造の作製に用いられる対応リソグラフィマスクの例と、を示す模式図である。
【図3F】本発明に係る、高分子微細構造の例と、各微細構造の作製に用いられる対応リソグラフィマスクの例と、を示す模式図である。
【図3G】本発明に係る、高分子微細構造の例と、各微細構造の作製に用いられる対応リソグラフィマスクの例と、を示す模式図である。
【図3H】本発明に係る、高分子微細構造の例と、各微細構造の作製に用いられる対応リソグラフィマスクの例と、を示す模式図である。
【図3I】本発明に係る、高分子微細構造の例と、各微細構造の作製に用いられる対応リソグラフィマスクの例と、を示す模式図である。
【図3J】本発明に係る、高分子微細構造の例と、各微細構造の作製に用いられる対応リソグラフィマスクの例と、を示す模式図である。
【図3K】本発明に係る、高分子微細構造の例と、各微細構造の作製に用いられる対応リソグラフィマスクの例と、を示す模式図である。
【図3L】本発明に係る、高分子微細構造の例と、各微細構造の作製に用いられる対応リソグラフィマスクの例と、を示す模式図である。
【図3M】本発明に係る、高分子微細構造の例と、各微細構造の作製に用いられる対応リソグラフィマスクの例と、を示す模式図である。
【図3N】本発明に係る、高分子微細構造の例と、各微細構造の作製に用いられる対応リソグラフィマスクの例と、を示す模式図である。
【図3O】本発明に係る、高分子微細構造の例と、各微細構造の作製に用いられる対応リソグラフィマスクの例と、を示す模式図である。
【図3P】本発明に係る、高分子微細構造の例と、各微細構造の作製に用いられる対応リソグラフィマスクの例と、を示す模式図である。
【図4A】本発明に係る、鎖状高分子微細構造の例と、各微細構造の作製に用いられる対応リソグラフィマスクの例と、を示す模式図である。
【図4B】本発明に係る、鎖状高分子微細構造の例と、各微細構造の作製に用いられる対応リソグラフィマスクの例と、を示す模式図である。
【図4C】本発明に係る、鎖状高分子微細構造の合成におけるリソグラフィ−重合の順次ステップと、各微細構造の生成に用いられる対応リソグラフィマスクと、を示す模式図である。
【図4D】本発明に係る、鎖状高分子微細構造の合成におけるリソグラフィ−重合の順次ステップと、各微細構造の生成に用いられる対応リソグラフィマスクと、を示す模式図である。
【図5】本発明に係る、3次元の形体を含む高分子微細構造と、各微細構造の生成に利用される対応リソグラフィマスクと、を示す模式図である。
【図6A】本発明に従って利用できるマイクロ流体デバイス断面の例を模式的に示す断面図である。
【図6B】本発明に従って利用できるマイクロ流体デバイス断面の例を模式的に示す断面図である。
【図6C】本発明に従って利用できるマイクロ流体デバイス断面の例を模式的に示す断面図である。
【図6D】本発明に従って利用できるマイクロ流体デバイス断面の例を模式的に示す断面図である。
【図6E】本発明に従って利用できるマイクロ流体デバイス断面の例を模式的に示す断面図である。
【図7】本発明に係るストップフロー高分子微細構造合成の制御システムを示すブロック図である。
【図8A】本発明に係る、選択部分を含む高分子微細構造の例と、各微細構造の作製に用いられる対応リソグラフィマスクと、を示す模式図である。
【図8B】本発明に係る、選択部分を含む高分子微細構造の例と、各微細構造の作製に用いられる対応リソグラフィマスクと、を示す模式図である。
【図8C】本発明に係る、選択部分を含む高分子微細構造の例と、各微細構造の作製に用いられる対応リソグラフィマスクと、を示す模式図である。
【図9A】複数の異なる単量体流にまたがって、本発明に係る高分子微細構造の合成を実現できる流動構造の例を示す模式図である。
【図9B】本発明に従って、それぞれ、図9Aの各構成で作製された複数の異なる高分子領域を含む高分子微細構造の例を示す模式図である。
【図9C】複数の異なる単量体流にまたがって、本発明に係る高分子微細構造の合成を実現できる流動構造の例を示す模式図である。
【図9D】本発明に従って、それぞれ、図9Cの各構成で作製された複数の異なる高分子領域を含む高分子微細構造の例を示す模式図である。
【図10A】本発明に係る、複数の異なる高分子領域を含む高分子微細構造の例と、各微細構造の作製に用いられる対応リソグラフィマスクの例と、を示す模式図である。
【図10B】本発明に係る、複数の異なる高分子領域を含む高分子微細構造の例と、各微細構造の作製に用いられる対応リソグラフィマスクの例と、を示す模式図である。
【図10C】本発明に係る、複数の異なる高分子領域を含む高分子微細構造の例と、各微細構造の作製に用いられる対応リソグラフィマスクの例と、を示す模式図である。
【図10D】本発明に係る、複数の異なる高分子領域を含む高分子微細構造の例と、各微細構造の作製に用いられる対応リソグラフィマスクの例と、を示す模式図である。
【図10E】本発明に係る、複数の異なる高分子領域を含む高分子微細構造の例と、各微細構造の作製に用いられる対応リソグラフィマスクの例と、を示す模式図である。
【図10F】本発明に係る、複数の異なる高分子領域を含む高分子微細構造の例と、各微細構造の作製に用いられる対応リソグラフィマスクの例と、を示す模式図である。
【図10G】本発明に係る、複数の異なる高分子領域を含む高分子微細構造の例と、各微細構造の作製に用いられる対応リソグラフィマスクの例と、を示す模式図である。
【図10H】本発明に係る、複数の異なる高分子領域を含む高分子微細構造の例と、各微細構造の作製に用いられる対応リソグラフィマスクの例と、を示す模式図である。
【図11A】図1Aのシステムにおけるマイクロ流体デバイスの3つのチャネル高さに関して、高分子微細構造形体サイズの測定値と照明露光期間との相関を示した、20倍の顕微鏡対物レンズに対応するグラフである。
【図11B】図1Aのシステムにおけるマイクロ流体デバイスの3つのチャネル高さに関して、高分子微細構造形体サイズの測定値と照明露光期間との相関を示した、40倍の顕微鏡対物レンズに対応するグラフである。
【図12】マイクロ流体デバイスの3つのチャネル高さに関して、最小形体サイズの測定値と単量体流の速度との相関を示すグラフである。
【図13】親水性単量体流と疎水性単量体流とにまたがって、本発明に係る高分子微細構造の合成を実現できる流動構造を示す模式図である。
【図14】図13の流動構造によって合成された両親媒性高分子微細構造を模式的に示して、その微細構造の幾何学的パラメータを定義した図である。
【図15A】図14に定義した幾何学的パラメータの測定値W1について計数された高分子微細構造の個数を示すグラフである。
【図15B】図14に定義した幾何学的パラメータの測定値W2について計数された高分子微細構造の個数を示すグラフである。
【図15C】図14に定義した幾何学的パラメータの測定値W3について計数された高分子微細構造の個数を示すグラフである。
【図15D】図14に定義した幾何学的パラメータの測定値h1について計数された高分子微細構造の個数を示すグラフである。
【図15E】図14に定義した幾何学的パラメータの測定値h2について計数された高分子微細構造の個数を示すグラフである。
【図16】図13の流動構造によって合成された両親媒性高分子微細構造を示して、その微細構造の疎水性相と親水性相の間の界面の局率半径を規定する幾何学的パラメータを定義した模式的斜視図である。
【図17A】疎水性オリゴマーの3つの照明露光時間に関して、透過率と波数との相関を示した、疎水性オリゴマーに対応するFTIRグラフである。
【図17B】親水性オリゴマーの3つの照明露光時間に関して、透過率と波数との相関を示した、親水性オリゴマーに対応するFTIRグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体チャネルを通って、選択した流量で、単量体流を流動させ、
前記単量体流に、少なくとも1つの成形された照明パルスを照射して、その単量体流内で、前記照明パルスの形状に対応する少なくとも1つの微細構造の形状を画定する一方で、前記単量体内で、前記照明パルスにより、当該微細構造の形状を重合すること、
を含む高分子微細構造体の合成方法。
【請求項2】
前記照明パルスはUV照明を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記照明パルスは可視光照明を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記照明パルスはIR照明を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記照明パルスは一連の照明パルスを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記照明パルスは、前記微細構造を重合する十分な期間によって特徴付けられる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記照明パルスは、選択した微細構造の長さを重合する十分な期間によって特徴付けられる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記照明パルスは、光重合により前記微細構造を重合させる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記照明パルスは、熱重合により前記微細構造を重合させる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記照明パルスは、遊離基開始重合により前記微細構造を重合させる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記単量体流への照射のために、照明をシャッタ制御して照明パルスを成形することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記単量体に前記パルスが照射される前にマスクを通して前記パルスを照射することにより、前記照明パルスを成形することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記マスクは、複数の微細構造形状を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記マスクの前記複数の微細構造形状は実質的に同一である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記マスクの前記複数の微細構造形状のうち、少なくとも2つはそれぞれ異なるものである、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記マスクはリソグラフィマスクを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記マスクは透過マスクを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記マスクはクロムマスクを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記マスクはグレースケールマスクを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
前記成形された照明パルスを照射することは、デジタルマイクロミラーデバイスによって照明形状を制御することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記成形された照明パルスを照射することは、照光中に、パルス形状を動的に変化させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記成形された照明パルスを照射することは、選択した微細構造形状に対応するビーム構成で、複数の照明ビームを前記単量体流まで誘導することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記照明ビームはレーザビームを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記成形された照明ビームを、レンズを介して照射して、単量体流への照射前に、形状の倍率を調整することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記レンズは倒立顕微鏡対物レンズを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記流体チャネルは、高分子流体デバイスの中空断面を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記流体チャネルの断面は長方形である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記流体チャネルの断面は非長方形である、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記流体チャネルの断面は円形である、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記流体チャネルの断面は階段状である、請求項26に記載の方法。
【請求項31】
前記流体チャネルの断面は角度が付けられている、請求項26に記載の方法。
【請求項32】
前記単量体流は光重合可能単量体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項33】
前記単量体流は光開始剤種をさらに含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記光重合可能単量体はポリ(エチレングリコール)ジアクリレートを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記光開始剤種は、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記単量体流は連続液相流を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項37】
前記単量体流の流量は、当該単量体流内で微細構造を重合させる前記照明パルスの特徴的期間に対応する、請求項1に記載の方法。
【請求項38】
前記単量体流のフローは連続的である、請求項1に記載の方法。
【請求項39】
前記単量体流のフローは、当該単量体流へのパルス照明の照射中に実質的に停止される、請求項1に記載の方法。
【請求項40】
前記照明パルスは、単量体流の流量と協調的に制御されて微細構造連鎖を重合させる一連のパルスを含み、前記微細構造連鎖において、微細構造は、重複する重合領域によって連鎖に結合される、請求項1に記載の方法。
【請求項41】
前記微細構造連鎖は、複数の微細構造形状を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項42】
前記単量体流は、前記流体チャネルを通って一緒に流れる、複数の並行流の単量体流からなり、並列流の単量体流は、それぞれ異なる流動種を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項43】
前記異なる流動種は単量体種を含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記異なる流動種はポロゲン種を含む、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
前記異なる流動種は部分種を含む、請求項42に記載の方法。
【請求項46】
前記異なる流動種は粒子種を含む、請求項42に記載の方法。
【請求項47】
成形された照明パルスの照射は、成形された照明パルスを誘導することを含み、この誘導は、複数の並列流の単量体流を包含して、前記並列流の複数の単量体流から得た単量体を含む、少なくとも1つの微細構造を重合させるように行われる、請求項42に記載の方法。
【請求項48】
2つの隣接する並行流の流れ同士は混和性である、請求項42に記載の方法。
【請求項49】
2つの隣接する並行流の流れ同士は不混和性である、請求項42に記載の方法。
【請求項50】
1つ目の、並行流の単量体流は疎水性であり、前記1つ目に隣接した、並行流の単量体は親水性である、請求項42に記載の方法。
【請求項51】
並行流の単量体流それぞれの流量は個別に制御され、この制御により、微細構造に重合されることになる、前記並行流の単量体流から得られる単量体の割合を調整する、請求項42に記載の方法。
【請求項52】
流体チャネルの内部壁面に重合停止種を供給して、微細構造の重合中に重合が発生し得る、前記チャネル壁面の活性重合サイトを停止させ、前記サイトにおいて重合が消滅し、前記チャネル壁面に隣接して、単量体流の非重合ボリュームが保存されるようにすること、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項53】
単量体流の前記非重合ボリュームは、潤滑層と、チャネル内で重合微細構造を搬送できる流れと、を形成する、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記微細構造の重合はラジカル重合であり、前記停止種は遊離基を停止させる、請求項52に記載の方法。
【請求項55】
前記停止種は酸素である、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記微細構造重合は非ラジカル重合である、請求項52に記載の方法。
【請求項57】
前記停止種は塩基である、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記停止種は、前記流体チャネルの壁面からの、当該停止種の拡散によって供給される、請求項52に記載の方法。
【請求項59】
前記単量体流は、微細構造重合により、前記微細構造内に共有結合式に組み込まれる、少なくとも1つの部分を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項60】
前記部分は単量体を含む、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記単量体は温度感受性単量体を含む、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記単量体はpH反応性単量体を含む、請求項60に記載の方法。
【請求項63】
前記単量体は感光性単量体を含む、請求項60に記載の方法。
【請求項64】
前記単量体は抗原応答性単量体を含む、請求項60に記載の方法。
【請求項65】
前記単量体は生分解性単量体を含む、請求項60に記載の方法。
【請求項66】
前記単量体流は生体材料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項67】
前記生体材料はDNAを含む、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記生体材料はRNAを含む、請求項66に記載の方法。
【請求項69】
前記生体材料はポリペプチドを含む、請求項66に記載の方法。
【請求項70】
前記生体材料は酵素を含む、請求項66に記載の方法。
【請求項71】
前記生体材料は抗体を含む、請求項66に記載の方法。
【請求項72】
前記生体材料は、細胞の少なくとも一部を含む、請求項66に記載の方法。
【請求項73】
前記生体材料はミトコンドリアを含む、請求項66に記載の方法。
【請求項74】
前記単量体流は蛍光体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項75】
前記単量体流は発色団を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項76】
前記単量体流は、分散層を形成する部分を含み、前記分散層は、微細構造の重合によって前記微細構造内に物理的に取り込まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項77】
前記単量体流はポロゲンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項78】
前記単量体流は粒子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項79】
前記単量体流は量子ドットを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項80】
前記単量体流はカーボンナノチューブを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項81】
前記単量体流は乳化液滴を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項82】
前記単量体流は気泡を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項83】
前記単量体流は導電性粒子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項84】
前記単量体流は磁化粒子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項85】
前記単量体流は3次元微細加工構造を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項86】
前記単量体流はウィルスを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項87】
前記単量体内で重合された微細構造は3次元の形体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項88】
前記単量体流で重合された微細構造は、非球状の高分子微細構造を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項89】
前記単量体内で重合された微細構造は、平面状の高分子微細構造を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項90】
前記単量体流内で重合された微細構造は、少なくとも1つの直線エッジを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項91】
前記単量体流内で重合された微細構造は、複数の直線エッジを含む、請求項90に記載の方法。
【請求項92】
前記単量体流内で重合された微細構造は、少なくとも1つの丸みを帯びた形体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項93】
前記単量体流内で重合された微細構造は、中空の高分子微細構造を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項94】
前記単量体流内で重合された微細構造は、円筒状の高分子微細構造を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項95】
前記単量体流内で重合された微細構造は、前記微細構造の平面において非連続である高分子微細構造を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項96】
前記微細構造の開口が、前記微細構造の非連続性をもたらす、請求項95に記載の方法。
【請求項97】
少なくとも1つの開口は直線状のエッジである、請求項96に記載の方法。
【請求項98】
少なくとも1つの開口は丸みを帯びている、請求項96に記載の方法。
【請求項99】
2つの並行流の単量体流を含む、重合された微細構造は、複数の異なる材料領域を持つ高分子微細構造を含む、請求項47に記載の方法。
【請求項100】
前記異なる領域のうちの少なくとも2つは、異なる高分子成分からなる、請求項99に記載の方法。
【請求項101】
前記異なる領域のうちの少なくとも1つはポロゲンを含む、請求項99に記載の方法。
【請求項102】
前記異なる領域のうちの少なくとも1つは、共有結合式の結合部分を含む、請求項99に記載の方法。
【請求項103】
前記異なる領域のうちの少なくとも1つは疎水性であり、前記異なる領域のうちの少なくとも1つは親水性である、請求項99に記載の方法。
【請求項104】
流体チャネルを通って、選択した流量で、単量体流を流動させ、
前記単量体流に照明を照射して、当該単量体流内で、前記照明により少なくとも1つの微細構造を重合し、
前記流体チャネルの内部壁面に、少なくとも1つの重合停止種を供給することで、前記微細構造の重合中に重合が発生し得る、前記チャネル壁面の活性重合サイトを停止し、前記サイトにおける重合を消滅させて、前記チャネルの壁面に隣接して、前記単量体流の非重合ボリュームを保存すること、
を含む、高分子微細構造体の合成方法。
【請求項105】
単量体流の前記非重合ボリュームは、潤滑層と、チャネル内で重合微細構造を搬送できる流れと、を形成する、請求項104に記載の方法。
【請求項106】
前記微細構造の重合はラジカル重合であり、前記停止種は遊離基を停止させる、請求項104に記載の方法。
【請求項107】
前記停止種は酸素である、請求項106に記載の方法。
【請求項108】
前記微細構造の合成は非ラジカル合成である、請求項104に記載の方法。
【請求項109】
前記停止種は塩基である、請求項108に記載の方法。
【請求項110】
前記停止種は、前記流体チャネルの壁面を通って拡散される、前記請求項104に記載の方法。
【請求項111】
前記停止種はガス状分散種である、請求項110に記載の方法。
【請求項112】
前記停止種は液状分散種である、請求項110に記載の方法。
【請求項113】
複数の異なる材料領域を持つ、非球状高分子微細構造体。
【請求項114】
単分散の、非球状高分子微細構造内に提供された、請求項113に記載の高分子微細構造体。
【請求項115】
複数の異なる材料領域を持つ、平面状の高分子微細構造体。
【請求項116】
前記高分子微細構造は、異方性の材料組成によって特徴付けられる、請求項115に記載の高分子微細構造体。
【請求項117】
前記異なる領域のうちの少なくとも2つは、異なる高分子成分からなる、請求項115に記載の高分子微細構造体。
【請求項118】
前記異なる領域の少なくとも1つはポロゲンを含む、請求項115に記載の高分子微細構造体。
【請求項119】
前記異なる領域の少なくとも1つは共有結合式の結合部分を含む、請求項115に記載の高分子微細構造体。
【請求項120】
前記異なる領域のうちの少なくとも1つは疎水性で、前記異なる領域のうちの少なくとも1つは親水性である、請求項115に記載の高分子微細構造体。
【請求項121】
3次元の形体をさらに含む、請求項115に記載の高分子微細構造体。
【請求項122】
2次元の押し出し形体をさらに含む、請求項115に記載の高分子微細構造体。
【請求項123】
少なくとも1つの直線エッジをさらに含む、請求項115に記載の高分子微細構造体。
【請求項124】
複数の直線エッジをさらに含む、請求項123に記載の高分子微細構造体。
【請求項125】
少なくとも1つの丸みを帯びた形体をさらに含む、請求項115に記載の高分子微細構造体。
【請求項126】
前記微細構造は中空である、請求項115に記載の高分子微細構造体。
【請求項127】
前記微細構造は円筒形である、請求項115に記載の高分子微細構造体。
【請求項128】
前記微細構造は、微細構造の平面において非連続である、請求項115に記載の高分子微細構造体。
【請求項129】
前記微細構造の開口は、前記微細構造の非連続性をもたらす、請求項128に記載の高分子微細構造体。
【請求項130】
少なくとも1つの開口は直線エッジ状である、請求項129に記載の高分子微細構造体。
【請求項131】
少なくとも1つの開口は丸みを帯びている、請求項129に記載の高分子微細構造体。
【請求項132】
前記微細構造は、温度に対する感応性によって特徴付けられる、請求項115に記載の高分子微細構造体。
【請求項133】
前記微細構造は、pHに対する感応性によって特徴付けられる、請求項115に記載の高分子微細構造体。
【請求項134】
前記微細構造は、照明に対する感応性によって特徴付けられる、請求項115に記載の高分子微細構造体。
【請求項135】
前記微細構造は、少なくとも1つの抗原に対する反応性によって特徴付けられる、請求項115に記載の高分子微細構造体。
【請求項136】
前記微細構造は生分解性である、請求項115に記載の高分子微細構造体。
【請求項137】
前記微細構造は生体材料を含む、請求項115に記載の高分子微細構造体。
【請求項138】
前記生体材料はDNAを含む、請求項137に記載の高分子微細構造体。
【請求項139】
前記生体材料はRNAを含む、請求項137に記載の高分子微細構造体。
【請求項140】
前記生体材料はポリペプチドを含む、請求項137に記載の高分子微細構造体。
【請求項141】
前記生体材料は酵素を含む、請求項137に記載の高分子微細構造体。
【請求項142】
前記生体材料は抗体を含む、請求項137に記載の高分子微細構造体。
【請求項143】
前記生体材料は細胞の少なくとも1つの部分を含む、請求項137に記載の高分子微細構造体。
【請求項144】
前記生体材料はミトコンドリアを含む、請求項137に記載の高分子微細構造体。
【請求項145】
前記微細構造は蛍光体を含む、請求項115に記載の高分子微細構造体。
【請求項146】
前記微細構造は発色団を含む、請求項115に記載の高分子微細構造体。
【請求項147】
前記微細構造はポロゲンを含む、請求項115に記載の高分子微細構造体。
【請求項148】
前記微細構造は粒子を含む、請求項115に記載の高分子微細構造体。
【請求項149】
前記微細構造は量子ドットを含む、請求項115に記載の高分子微細構造体。
【請求項150】
前記微細構造はカーボンナノチューブを含む、請求項115に記載の高分子微細構造体。
【請求項151】
前記微細構造は乳化液滴を含む、請求項115に記載の高分子微細構造体。
【請求項152】
前記微細構造は気泡を含む、請求項115に記載の高分子微細構造体。
【請求項153】
前記微細構造は導電性粒子を含む、請求項115に記載の高分子微細構造体。
【請求項154】
前記微細構造は磁化粒子を含む、請求項115に記載の高分子微細構造体。
【請求項155】
前記微細構造は3次元構造を含む、請求項115に記載の高分子微細構造体。
【請求項156】
前記微細構造は液晶を含む、請求項115に記載の高分子微細構造体。
【請求項157】
前記微細構造は微細構造の連鎖からなり、前記連鎖内で、微細構造は、重複する重合領域によって当該連鎖に連結される、請求項115に記載の高分子微細構造体。
【請求項158】
単分散高分子微細構造の個体群内で提供される、請求項115に記載の高分子微細構造体。
【請求項1】
流体チャネルを通って、選択した流量で、単量体流を流動させ、
前記単量体流に、少なくとも1つの成形された照明パルスを照射して、その単量体流内で、前記照明パルスの形状に対応する少なくとも1つの微細構造の形状を画定する一方で、前記単量体内で、前記照明パルスにより、当該微細構造の形状を重合すること、
を含む高分子微細構造体の合成方法。
【請求項2】
前記照明パルスはUV照明を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記照明パルスは可視光照明を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記照明パルスはIR照明を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記照明パルスは一連の照明パルスを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記照明パルスは、前記微細構造を重合する十分な期間によって特徴付けられる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記照明パルスは、選択した微細構造の長さを重合する十分な期間によって特徴付けられる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記照明パルスは、光重合により前記微細構造を重合させる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記照明パルスは、熱重合により前記微細構造を重合させる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記照明パルスは、遊離基開始重合により前記微細構造を重合させる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記単量体流への照射のために、照明をシャッタ制御して照明パルスを成形することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記単量体に前記パルスが照射される前にマスクを通して前記パルスを照射することにより、前記照明パルスを成形することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記マスクは、複数の微細構造形状を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記マスクの前記複数の微細構造形状は実質的に同一である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記マスクの前記複数の微細構造形状のうち、少なくとも2つはそれぞれ異なるものである、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記マスクはリソグラフィマスクを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記マスクは透過マスクを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記マスクはクロムマスクを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記マスクはグレースケールマスクを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
前記成形された照明パルスを照射することは、デジタルマイクロミラーデバイスによって照明形状を制御することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記成形された照明パルスを照射することは、照光中に、パルス形状を動的に変化させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記成形された照明パルスを照射することは、選択した微細構造形状に対応するビーム構成で、複数の照明ビームを前記単量体流まで誘導することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記照明ビームはレーザビームを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記成形された照明ビームを、レンズを介して照射して、単量体流への照射前に、形状の倍率を調整することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記レンズは倒立顕微鏡対物レンズを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記流体チャネルは、高分子流体デバイスの中空断面を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記流体チャネルの断面は長方形である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記流体チャネルの断面は非長方形である、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記流体チャネルの断面は円形である、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記流体チャネルの断面は階段状である、請求項26に記載の方法。
【請求項31】
前記流体チャネルの断面は角度が付けられている、請求項26に記載の方法。
【請求項32】
前記単量体流は光重合可能単量体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項33】
前記単量体流は光開始剤種をさらに含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記光重合可能単量体はポリ(エチレングリコール)ジアクリレートを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記光開始剤種は、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記単量体流は連続液相流を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項37】
前記単量体流の流量は、当該単量体流内で微細構造を重合させる前記照明パルスの特徴的期間に対応する、請求項1に記載の方法。
【請求項38】
前記単量体流のフローは連続的である、請求項1に記載の方法。
【請求項39】
前記単量体流のフローは、当該単量体流へのパルス照明の照射中に実質的に停止される、請求項1に記載の方法。
【請求項40】
前記照明パルスは、単量体流の流量と協調的に制御されて微細構造連鎖を重合させる一連のパルスを含み、前記微細構造連鎖において、微細構造は、重複する重合領域によって連鎖に結合される、請求項1に記載の方法。
【請求項41】
前記微細構造連鎖は、複数の微細構造形状を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項42】
前記単量体流は、前記流体チャネルを通って一緒に流れる、複数の並行流の単量体流からなり、並列流の単量体流は、それぞれ異なる流動種を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項43】
前記異なる流動種は単量体種を含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記異なる流動種はポロゲン種を含む、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
前記異なる流動種は部分種を含む、請求項42に記載の方法。
【請求項46】
前記異なる流動種は粒子種を含む、請求項42に記載の方法。
【請求項47】
成形された照明パルスの照射は、成形された照明パルスを誘導することを含み、この誘導は、複数の並列流の単量体流を包含して、前記並列流の複数の単量体流から得た単量体を含む、少なくとも1つの微細構造を重合させるように行われる、請求項42に記載の方法。
【請求項48】
2つの隣接する並行流の流れ同士は混和性である、請求項42に記載の方法。
【請求項49】
2つの隣接する並行流の流れ同士は不混和性である、請求項42に記載の方法。
【請求項50】
1つ目の、並行流の単量体流は疎水性であり、前記1つ目に隣接した、並行流の単量体は親水性である、請求項42に記載の方法。
【請求項51】
並行流の単量体流それぞれの流量は個別に制御され、この制御により、微細構造に重合されることになる、前記並行流の単量体流から得られる単量体の割合を調整する、請求項42に記載の方法。
【請求項52】
流体チャネルの内部壁面に重合停止種を供給して、微細構造の重合中に重合が発生し得る、前記チャネル壁面の活性重合サイトを停止させ、前記サイトにおいて重合が消滅し、前記チャネル壁面に隣接して、単量体流の非重合ボリュームが保存されるようにすること、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項53】
単量体流の前記非重合ボリュームは、潤滑層と、チャネル内で重合微細構造を搬送できる流れと、を形成する、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記微細構造の重合はラジカル重合であり、前記停止種は遊離基を停止させる、請求項52に記載の方法。
【請求項55】
前記停止種は酸素である、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記微細構造重合は非ラジカル重合である、請求項52に記載の方法。
【請求項57】
前記停止種は塩基である、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記停止種は、前記流体チャネルの壁面からの、当該停止種の拡散によって供給される、請求項52に記載の方法。
【請求項59】
前記単量体流は、微細構造重合により、前記微細構造内に共有結合式に組み込まれる、少なくとも1つの部分を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項60】
前記部分は単量体を含む、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記単量体は温度感受性単量体を含む、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記単量体はpH反応性単量体を含む、請求項60に記載の方法。
【請求項63】
前記単量体は感光性単量体を含む、請求項60に記載の方法。
【請求項64】
前記単量体は抗原応答性単量体を含む、請求項60に記載の方法。
【請求項65】
前記単量体は生分解性単量体を含む、請求項60に記載の方法。
【請求項66】
前記単量体流は生体材料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項67】
前記生体材料はDNAを含む、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記生体材料はRNAを含む、請求項66に記載の方法。
【請求項69】
前記生体材料はポリペプチドを含む、請求項66に記載の方法。
【請求項70】
前記生体材料は酵素を含む、請求項66に記載の方法。
【請求項71】
前記生体材料は抗体を含む、請求項66に記載の方法。
【請求項72】
前記生体材料は、細胞の少なくとも一部を含む、請求項66に記載の方法。
【請求項73】
前記生体材料はミトコンドリアを含む、請求項66に記載の方法。
【請求項74】
前記単量体流は蛍光体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項75】
前記単量体流は発色団を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項76】
前記単量体流は、分散層を形成する部分を含み、前記分散層は、微細構造の重合によって前記微細構造内に物理的に取り込まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項77】
前記単量体流はポロゲンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項78】
前記単量体流は粒子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項79】
前記単量体流は量子ドットを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項80】
前記単量体流はカーボンナノチューブを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項81】
前記単量体流は乳化液滴を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項82】
前記単量体流は気泡を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項83】
前記単量体流は導電性粒子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項84】
前記単量体流は磁化粒子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項85】
前記単量体流は3次元微細加工構造を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項86】
前記単量体流はウィルスを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項87】
前記単量体内で重合された微細構造は3次元の形体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項88】
前記単量体流で重合された微細構造は、非球状の高分子微細構造を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項89】
前記単量体内で重合された微細構造は、平面状の高分子微細構造を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項90】
前記単量体流内で重合された微細構造は、少なくとも1つの直線エッジを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項91】
前記単量体流内で重合された微細構造は、複数の直線エッジを含む、請求項90に記載の方法。
【請求項92】
前記単量体流内で重合された微細構造は、少なくとも1つの丸みを帯びた形体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項93】
前記単量体流内で重合された微細構造は、中空の高分子微細構造を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項94】
前記単量体流内で重合された微細構造は、円筒状の高分子微細構造を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項95】
前記単量体流内で重合された微細構造は、前記微細構造の平面において非連続である高分子微細構造を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項96】
前記微細構造の開口が、前記微細構造の非連続性をもたらす、請求項95に記載の方法。
【請求項97】
少なくとも1つの開口は直線状のエッジである、請求項96に記載の方法。
【請求項98】
少なくとも1つの開口は丸みを帯びている、請求項96に記載の方法。
【請求項99】
2つの並行流の単量体流を含む、重合された微細構造は、複数の異なる材料領域を持つ高分子微細構造を含む、請求項47に記載の方法。
【請求項100】
前記異なる領域のうちの少なくとも2つは、異なる高分子成分からなる、請求項99に記載の方法。
【請求項101】
前記異なる領域のうちの少なくとも1つはポロゲンを含む、請求項99に記載の方法。
【請求項102】
前記異なる領域のうちの少なくとも1つは、共有結合式の結合部分を含む、請求項99に記載の方法。
【請求項103】
前記異なる領域のうちの少なくとも1つは疎水性であり、前記異なる領域のうちの少なくとも1つは親水性である、請求項99に記載の方法。
【請求項104】
流体チャネルを通って、選択した流量で、単量体流を流動させ、
前記単量体流に照明を照射して、当該単量体流内で、前記照明により少なくとも1つの微細構造を重合し、
前記流体チャネルの内部壁面に、少なくとも1つの重合停止種を供給することで、前記微細構造の重合中に重合が発生し得る、前記チャネル壁面の活性重合サイトを停止し、前記サイトにおける重合を消滅させて、前記チャネルの壁面に隣接して、前記単量体流の非重合ボリュームを保存すること、
を含む、高分子微細構造体の合成方法。
【請求項105】
単量体流の前記非重合ボリュームは、潤滑層と、チャネル内で重合微細構造を搬送できる流れと、を形成する、請求項104に記載の方法。
【請求項106】
前記微細構造の重合はラジカル重合であり、前記停止種は遊離基を停止させる、請求項104に記載の方法。
【請求項107】
前記停止種は酸素である、請求項106に記載の方法。
【請求項108】
前記微細構造の合成は非ラジカル合成である、請求項104に記載の方法。
【請求項109】
前記停止種は塩基である、請求項108に記載の方法。
【請求項110】
前記停止種は、前記流体チャネルの壁面を通って拡散される、前記請求項104に記載の方法。
【請求項111】
前記停止種はガス状分散種である、請求項110に記載の方法。
【請求項112】
前記停止種は液状分散種である、請求項110に記載の方法。
【請求項113】
複数の異なる材料領域を持つ、非球状高分子微細構造体。
【請求項114】
単分散の、非球状高分子微細構造内に提供された、請求項113に記載の高分子微細構造体。
【請求項115】
複数の異なる材料領域を持つ、平面状の高分子微細構造体。
【請求項116】
前記高分子微細構造は、異方性の材料組成によって特徴付けられる、請求項115に記載の高分子微細構造体。
【請求項117】
前記異なる領域のうちの少なくとも2つは、異なる高分子成分からなる、請求項115に記載の高分子微細構造体。
【請求項118】
前記異なる領域の少なくとも1つはポロゲンを含む、請求項115に記載の高分子微細構造体。
【請求項119】
前記異なる領域の少なくとも1つは共有結合式の結合部分を含む、請求項115に記載の高分子微細構造体。
【請求項120】
前記異なる領域のうちの少なくとも1つは疎水性で、前記異なる領域のうちの少なくとも1つは親水性である、請求項115に記載の高分子微細構造体。
【請求項121】
3次元の形体をさらに含む、請求項115に記載の高分子微細構造体。
【請求項122】
2次元の押し出し形体をさらに含む、請求項115に記載の高分子微細構造体。
【請求項123】
少なくとも1つの直線エッジをさらに含む、請求項115に記載の高分子微細構造体。
【請求項124】
複数の直線エッジをさらに含む、請求項123に記載の高分子微細構造体。
【請求項125】
少なくとも1つの丸みを帯びた形体をさらに含む、請求項115に記載の高分子微細構造体。
【請求項126】
前記微細構造は中空である、請求項115に記載の高分子微細構造体。
【請求項127】
前記微細構造は円筒形である、請求項115に記載の高分子微細構造体。
【請求項128】
前記微細構造は、微細構造の平面において非連続である、請求項115に記載の高分子微細構造体。
【請求項129】
前記微細構造の開口は、前記微細構造の非連続性をもたらす、請求項128に記載の高分子微細構造体。
【請求項130】
少なくとも1つの開口は直線エッジ状である、請求項129に記載の高分子微細構造体。
【請求項131】
少なくとも1つの開口は丸みを帯びている、請求項129に記載の高分子微細構造体。
【請求項132】
前記微細構造は、温度に対する感応性によって特徴付けられる、請求項115に記載の高分子微細構造体。
【請求項133】
前記微細構造は、pHに対する感応性によって特徴付けられる、請求項115に記載の高分子微細構造体。
【請求項134】
前記微細構造は、照明に対する感応性によって特徴付けられる、請求項115に記載の高分子微細構造体。
【請求項135】
前記微細構造は、少なくとも1つの抗原に対する反応性によって特徴付けられる、請求項115に記載の高分子微細構造体。
【請求項136】
前記微細構造は生分解性である、請求項115に記載の高分子微細構造体。
【請求項137】
前記微細構造は生体材料を含む、請求項115に記載の高分子微細構造体。
【請求項138】
前記生体材料はDNAを含む、請求項137に記載の高分子微細構造体。
【請求項139】
前記生体材料はRNAを含む、請求項137に記載の高分子微細構造体。
【請求項140】
前記生体材料はポリペプチドを含む、請求項137に記載の高分子微細構造体。
【請求項141】
前記生体材料は酵素を含む、請求項137に記載の高分子微細構造体。
【請求項142】
前記生体材料は抗体を含む、請求項137に記載の高分子微細構造体。
【請求項143】
前記生体材料は細胞の少なくとも1つの部分を含む、請求項137に記載の高分子微細構造体。
【請求項144】
前記生体材料はミトコンドリアを含む、請求項137に記載の高分子微細構造体。
【請求項145】
前記微細構造は蛍光体を含む、請求項115に記載の高分子微細構造体。
【請求項146】
前記微細構造は発色団を含む、請求項115に記載の高分子微細構造体。
【請求項147】
前記微細構造はポロゲンを含む、請求項115に記載の高分子微細構造体。
【請求項148】
前記微細構造は粒子を含む、請求項115に記載の高分子微細構造体。
【請求項149】
前記微細構造は量子ドットを含む、請求項115に記載の高分子微細構造体。
【請求項150】
前記微細構造はカーボンナノチューブを含む、請求項115に記載の高分子微細構造体。
【請求項151】
前記微細構造は乳化液滴を含む、請求項115に記載の高分子微細構造体。
【請求項152】
前記微細構造は気泡を含む、請求項115に記載の高分子微細構造体。
【請求項153】
前記微細構造は導電性粒子を含む、請求項115に記載の高分子微細構造体。
【請求項154】
前記微細構造は磁化粒子を含む、請求項115に記載の高分子微細構造体。
【請求項155】
前記微細構造は3次元構造を含む、請求項115に記載の高分子微細構造体。
【請求項156】
前記微細構造は液晶を含む、請求項115に記載の高分子微細構造体。
【請求項157】
前記微細構造は微細構造の連鎖からなり、前記連鎖内で、微細構造は、重複する重合領域によって当該連鎖に連結される、請求項115に記載の高分子微細構造体。
【請求項158】
単分散高分子微細構造の個体群内で提供される、請求項115に記載の高分子微細構造体。
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図3G】
【図3H】
【図3I】
【図3J】
【図3K】
【図3L】
【図3M】
【図3N】
【図3O】
【図3P】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図10E】
【図10F】
【図10G】
【図10H】
【図11A】
【図11B】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図15C】
【図15D】
【図15E】
【図16】
【図17A】
【図17B】
【図1B】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図3G】
【図3H】
【図3I】
【図3J】
【図3K】
【図3L】
【図3M】
【図3N】
【図3O】
【図3P】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図10E】
【図10F】
【図10G】
【図10H】
【図11A】
【図11B】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図15C】
【図15D】
【図15E】
【図16】
【図17A】
【図17B】
【公表番号】特表2009−513789(P2009−513789A)
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−537919(P2008−537919)
【出願日】平成18年10月25日(2006.10.25)
【国際出願番号】PCT/US2006/041668
【国際公開番号】WO2007/050704
【国際公開日】平成19年5月3日(2007.5.3)
【出願人】(596060697)マサチューセッツ・インスティテュート・オブ・テクノロジー (233)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年10月25日(2006.10.25)
【国際出願番号】PCT/US2006/041668
【国際公開番号】WO2007/050704
【国際公開日】平成19年5月3日(2007.5.3)
【出願人】(596060697)マサチューセッツ・インスティテュート・オブ・テクノロジー (233)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]