説明

フローリング材

【課題】転倒による怪我を軽減するための衝撃吸収性を有し、かつ嵌合外れ、実鳴り等の不具合なく、沈み込みの大きすぎないフローリング材を提供すること。
【解決手段】複数の板状部材をその各側面に設けた嵌合形状により嵌合して敷設可能とする板状部材からなるフローリング材において、前記板状部材の表面側に化粧シートを積層し、前記板状部材の裏面側にクッション層を積層してなり、前記クッション層のJIS K 7181に準拠して測定した圧縮弾性率が0.015〜0.030MPaであり、前記クッション層の厚みが4.0〜7.0mmであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床面に複数の板状部材を嵌合して敷設して用いるフローリング材に関するものであって、特には転倒による怪我を軽減するための衝撃吸収性を有し、嵌合による施工適性を有するフローリング材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の屋内床面にはフローリング材が多く用いられている。フローリング材には、合板、MDF、パーチクルボード、樹脂板などに塗装したものや、化粧シートをラミネートしたものなどが知られている。
【0003】
これらフローリング材には表面の耐傷付性、耐衝撃性が求められるあまり、基材となる合板、MDF、パーチクルボード、樹脂板などはより高密度で硬く、耐傷付性、耐衝撃性に優れたものが使われるようになってきた。しかしながら、転倒衝突時には打撲、骨折あるいは死亡事故に繋がるケースもあり、衝撃吸収性の優れたフローリング材が求められてきている。
【0004】
転倒衝突時の衝撃を吸収するために、板状部材の表面側にクッション層を設ける方法も考えられたが、クッション層の厚みや柔軟性を調整することで或る程度の衝撃吸収性を得ることができたとしても、その場合は歩行感が悪くなったり、耐傷付き性が弱くなったりするという問題点があった。
【0005】
そのため、板状部材の裏面側にクッション層を設けるフローリング材が効果的であると考えられた。クッション層の硬度を軟らかく、かつ厚めに設ければ十分な衝撃吸収性を得ることができるが、フローリング材は設計上の都合で合計の層厚が12mm程度に限定されている。クッション層の硬度を軟らかく、厚くして板状基材を薄くすると、板状基材の材質に限らず、嵌合外れや実鳴り等の不具合が発生する。また、歩行の際の沈み込みが大きく、船酔いに似た症状が出ることもある。
【0006】
クッション層に用いる構成材料や発泡などの加工条件も影響するが、上記のように層厚の影響の方が大きい。軟らか過ぎれば嵌合外れ、実鳴り等の不具合が発生し、硬すぎれば十分な衝撃吸収性が得られない。これらを満たすための前記層厚範囲内での条件設定が困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−291836
【特許文献2】特開2010−106654
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたものであり、すなわちその課題とするところは、転倒による怪我を軽減するための衝撃吸収性を有し、かつ嵌合外れ、実鳴り等の不具合なく、沈み込みの大きすぎないフローリング材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明はこの課題を解決したものであり、すなわちその請求項1記載の発明は、複数の板状部材をその各側面に設けた嵌合形状により嵌合して敷設可能とする板状部材からなるフローリング材において、前記板状部材の表面側に化粧シートを積層し、前記板状部材の裏面側にクッション層を積層してなり、前記クッション層のJIS K 7181に準拠して測定した圧縮弾性率が0.015〜0.030MPaであり、前記クッション層の厚みが4.0〜7.0mmであることを特徴とするフローリング材である。
【発明の効果】
【0010】
本発明はその請求項1記載の発明により、限定された範囲の圧縮弾性率と厚みのクッション層により転倒により衝撃吸収性を有し、板状部材により嵌合による施工適性を有するものとなるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のフローリング材の一実施例の断面の形状を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を図面に基づき詳細に説明する。図1に本発明のフローリング材の一実施例の断面の形状を示す。クッション層1と板状部材2と化粧シート3とからなる。
【0013】
本発明におけるクッション層1としては、JIS K 7181に準拠して測定した圧縮弾性率が0.015〜0.030MPaであり、前記クッション層の厚みが4.0〜7.0mmのものを用いる。
この値の範囲内であれば、後述する板状部材2と化粧シート3との組み合わせにより、十分な衝撃吸収性を有するフローリング材とすることが可能となる。本発明者らはこの条件設定を見出すために試行錯誤したが、条件設定が決まっていれば、あとは従来公知の材料や製造技術により所望のものを調整して得ることは可能である。
【0014】
具体的には発泡倍率が6〜7倍のポリオレフィン系樹脂シートからなるものが好適に用いられる。ポリオレフィン系樹脂としてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレンビニルアルコール、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、これら数種のうちの2種以上の混合体などがあげられる。
【0015】
前記クッション層1と後述する板状部材2は適宜接着剤を使用して接着すれば良い。(図示しない。)具体的には2液ウレタン水性接着剤や1液酢酸ビニル樹脂エマルジョン系接着剤、湿気硬化型ウレタン樹脂系ホットメルト接着剤などがあげられるが、例えば、前記のポリオレフィン系樹脂シートであって、後述するポリオレフィン系樹脂に木粉とタルクを配合した木質樹脂基材であれば、湿気硬化型ウレタン系ホットメルト接着剤が好適に用いられる。厚みとしては乾燥後で10〜100μm程度が好適である。
【0016】
本発明における板状部材2としては、公知のフローリング材の板状部材として使用されているものであれば、適宜使用可能である。厚みとしては4〜5mmが好適である。構成材料としては合板、MDF、木質樹脂等特に限定せず利用可能であるが、例えば、ポリオレフィン系樹脂100重量部に木粉10〜30重量部とタルク5〜15重量部とを配合し溶融押出成形した木質樹脂基材からなるものが好適に用いられる。ポリオレフィン系樹脂としては前記クッション層1で用いたものと同様のものが使用可能である。また、発泡剤を添加して1〜2倍程度の発泡を行っても良い。さらにはマイカ、熱安定剤、これらの相溶化剤などを適宜添加しても良い。
【0017】
前記板状部材2と後述する化粧シート3は適宜接着剤を使用して接着すれば良い。(図示しない。)具体的には2液ウレタン水性接着剤や1液酢酸ビニル樹脂エマルジョン系接着剤、湿気硬化型ウレタン樹脂系ホットメルト接着剤などがあげられるが、具体的には前記のポリオレフィン系樹脂に木粉とタルクを配合した木質樹脂基材と後述するポリオレフィン系樹脂シートを基材とする化粧シートであれば、湿気硬化型ウレタン系ホットメルト接着剤が好適に用いられる。厚みとしては乾燥後で10〜100μm程度が好適である。
【0018】
本発明における化粧シート3としては、基材シート上に意匠性を付与する絵柄模様層、フローリング材表面の耐傷性や各種物性を付与する表面保護層等からなる公知のものであれば適宜使用可能であり、特に限定しない。前記板状部材2がポリオレフィン系樹脂からなるものであれば、ポリオレフィン系樹脂シートを基材シートとするものが好適に用いられる。ポリオレフィン系樹脂としては前記クッション層で用いたものと同様のものが使用可能である。
【実施例1】
【0019】
<板状部材の作製>
ポリプロピレン(プライムポリマー(株)製「E105」)70重量部を用い、これにタルク10重量部、木粉20重量部を200℃で設定した二軸押出機で溶融過熱混合した。一方、厚み5mm、巾150mm、本実形状金型を押出機の先端に取り付けておき、これで前記溶融過熱混合した樹脂を発泡倍率1.6倍で押出し、冷却水を循環させた前記金型と同型の冷却金型に引き込み、冷却固化した後、900mmの長さに切断、堆積し、80℃のオーブンで6時間加熱した後外気冷却を行い、木質樹脂基材を得た。
【0020】
<クッション層の作製>
低密度ポリエチレン(密度:0.92g/cm、メルトインデックス:3.6g/10分)100重量部に発泡剤としてアゾジカルボンアミド15重量部をヘンシェルミキサーに投入し、300rpmで3分間回転させ、さらに1000rpmで3分間回転させ、た。それを160℃のT台から押出し、架橋させた後、230℃の縦型熱風発泡機に連続的に導入し発泡倍率10倍、厚み7mmのクッション層を得た。これをJIS K7181に準拠して圧縮弾性率を測定すると0.02MPaの測定値を得た。
【0021】
<フローリング材の作製>
前記木質基材の裏面に湿気硬化型ウレタン樹脂系ホットメルト接着剤(DIC(株)製「タイフォース」を乾燥後の塗布厚が50μmとなるように塗布し、前記クッション層を貼り合せフローリング材を作製した。
【0022】
<衝撃吸収性の評価>
このようにして得たフローリング材を転倒衝突時の床のかたさ試験(JIS A 6519)に定めるGs値を測定すると65であった。この試験は体育館用鋼製床下地構成材に関するものであり、100が体育館床、60が柔道用畳床の規格範囲となっている。本発明ではGs値が100以下であれば十分な衝撃吸収性があるものとする。
【実施例2】
【0023】
前記板状部材としてMDF(樹種 ラジアタパイン、密度 0.72g/cm、厚み5mm)を用いた以外は実施例1と同様にしてフローリング材を作製した。Gs値を測定すると72であった。
【実施例3】
【0024】
前記板状部材として合板(樹種ラワン、厚み7mm)を用い、前記クッション層を5mmとした以外は実施例1と同様にしてフローリング材を作製した。Gs値を測定すると80であった。
【0025】
<比較例1>
クッション層の厚みを3mm、板状部材が9mmとした以外は実施例1と同様にしてフローリング材を作製し、Gs値を測定すると102であった。
【0026】
<比較例2>
クッション層の厚みを3mm、板状部材が9mmとした以外は実施例2と同様にしてフローリング材を作製し、Gs値を測定すると105であった。
【0027】
<比較例3>
クッション層の厚みを8mm、板状部材が4mmとした以外は実施例1と同様にしてフローリング材を作製し、歩行テスト(体重70kg素足で歩行したり、つま先立ちをしたりして局部荷重をかける)を実施した。その結果、実部分を歩行した際に雌実側の沈み込みが大きく実が外れそうになり、かつ雄実と雌実が擦れて実鳴りが発生した。
【0028】
<比較例4>
クッション層の厚みを8mm、板状部材が4mmとした以外は実施例3と同様にしてフローリング材を作製し、歩行テスト(体重70kg素足で歩行したり、つま先立ちをしたりして局部荷重をかける)を実施した。その結果、実部分を歩行した際に雌実側の沈み込みが大きく実が外れそうになり、かつ雄実と雌実が擦れて実鳴りが発生した。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明のフローリング材は屋内床面に利用可能である。
【符号の説明】
【0030】
1…クッション層
2…板状部材
3…化粧シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の板状部材をその各側面に設けた嵌合形状により嵌合して敷設可能とする板状部材からなるフローリング材において、前記板状部材の裏面側にクッション層を積層してなり、前記クッション層のJIS K 7181に準拠して測定した圧縮弾性率が0.015〜0.030MPaであり、前記クッション層の厚みが4.0〜7.0mmであることを特徴とするフローリング材。

【図1】
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【公開番号】特開2012−62689(P2012−62689A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−207799(P2010−207799)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(593173840)株式会社トッパン・コスモ (243)
【Fターム(参考)】