説明

フロー値の調整方法、アタパルジャイト液の製造方法、及び、硬化材

【課題】 可塑剤等を配合させることなく、アタパルジャイト液のフロー値を容易に調整することができるフロー値の調整方法を提供することを課題とする。
【解決手段】 アタパルジャイトと水とが回転する攪拌翼によって混練された混練液からなるアタパルジャイト液のフロー値を調整するフロー値の調整方法であって、前記混練液のフロー値に基づいて、攪拌翼の回転数、又は、混練時間を調節することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アタパルジャイトと水とが混練されてなるアタパルジャイト液のフロー値を調整する方法に関する。また、該フロー値の調整方法を用いたアタパルジャイト液の製造方法、及び、該製造方法で製造されたアタパルジャイト液を用いた硬化材に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、構造物中に形成された空間を埋め込む際には、セメントと水とが混練されてなるセメント液と、アタパルジャイトと水とが混練されてなるアタパルジャイト液とを混合して得られる硬化材が使用される。該硬化材は、構造物中の空間に注入されて硬化することで、斯かる空間を埋め込むように構成されている。このため、硬化材には、斯かる空間への供給をスムーズに行うことができると共に、斯かる空間を隙間なく埋め込むことができるように、適度な流動性が要求されている。
【0003】
また、硬化材を供給する空間に水分が溜まっている場合には、斯かる空間に供給された硬化材が水分を吸収し、硬化材の水分比率が変化してしまう虞がある。このため、硬化材には、水分と接触した際に水分を吸収し難くなるように、適度な粘性が要求されている。
【0004】
上述のように、硬化材に要求される流動性及び粘性の評価は、硬化材のフロー値を測定することによって行われる。このため、所望するフロー値が得られるように、硬化材の配合や水分比率が設定されている。特に、硬化材のフロー値は、アタパルジャイト液のフロー値に影響を受けるため、アタパルジャイト液のフロー値が所望する値となるように、アタパルジャイト液の配合や水分比率が設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−48629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、アタパルジャイトは、産地や採掘時期などによって僅かに性状が異なる場合がある。このため、アタパルジャイト液を作製する際に、所定の配合や水分比率で混練を行った場合であっても、アタパルジャイト液のフロー値が適正なものとならない場合がある。このようなアタパルジャイト液を用いて硬化材を作製すると、硬化材のフロー値も所望する値とならないため、硬化材に要求される流動性及び粘性を得ることが困難となる。このような場合、アタパルジャイト液に可塑剤等を配合して、所望するフロー値を得ることも可能であるが、施工現場などでは可塑剤等を添加することが容易にできない場合もある。
【0007】
そこで、本発明は、可塑剤等を配合させることなく、アタパルジャイト液のフロー値を容易に調整することができるフロー値の調整方法を提供することを課題とする。また、該フロー値の調整方法を用いたアタパルジャイト液の製造方法、及び、該製造方法によって製造されたアタパルジャイト液を用いた硬化材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るフロー値の調整方法は、アタパルジャイトと水とが回転する攪拌翼によって混練された混練液からなるアタパルジャイト液のフロー値を調整するフロー値の調整方法であって、前記混練液のフロー値に基づいて、攪拌翼の回転数、又は、混練時間を調節することを特徴とする。
【0009】
斯かる構成によれば、アタパルジャイトと水とが回転する攪拌翼によって混練された混練液のフロー値に基づいて、攪拌翼の回転数、又は、混練時間を調節することで、該混練液からなるアタパルジャイト液のフロー値を所望するフロー値に調整することができる。
【0010】
具体的には、アタパルジャイト液のフロー値は、混練液中のアタパルジャイト粒子の解砕度合によって影響を受ける。混練液中のアタパルジャイト粒子は、撹拌翼との接触や乱流の影響による剪断力を受けて解砕される。つまり、攪拌翼の回転数、又は、混練時間を調節することで、アタパルジャイト粒子が撹拌翼と接触する頻度や、アタパルジャイト粒子が受ける剪断力を調節することができる。これにより、アタパルジャイト粒子の解砕度合を調節することができる。
【0011】
従って、混練液のフロー値に基づいて、攪拌翼の回転数、又は、混練時間を調節することで、上述のように、混練液中のアタパルジャイト粒子の解砕度合が調節され、アタパルジャイト液のフロー値を所望する値に調整することができる。
【0012】
前記混練液のフロー値が所定の値よりも高い場合に、攪拌翼の回転数を増加させることが好ましい。
【0013】
斯かる構成によれば、攪拌翼の回転数を増加させることで、混練液中のアタパルジャイト粒子が撹拌翼と接触する頻度を高めることができると共に、乱流の影響によってアタパルジャイト粒子に加わる剪断力を高めることができる。このため、アタパルジャイト粒子の解砕度合を向上させることができる。これにより、混練液のフロー値を所定の値に低下させることができるため、アタパルジャイト液のフロー値を所望する値に調整することができる。
【0014】
前記混練液のフロー値が所定の値よりも高い場合に、混練時間を延長することが好ましい。
【0015】
斯かる構成によれば、混練時間を延長することで、混練液中のアタパルジャイト粒子が撹拌翼と接触する頻度を高めることができると共に、乱流の影響によってアタパルジャイト粒子に剪断力が加わる頻度を高めることができる。このため、アタパルジャイト粒子の解砕度合を向上させることができる。これにより、混練液のフロー値を所定の値に低下させることができ、アタパルジャイト液のフロー値を所望する値に調整することができる。
【0016】
本発明に係るアタパルジャイト液の製造方法は、アタパルジャイトと水とが回転する攪拌翼によって混練された混練液からなるアタパルジャイト液の製造方法であって、前記混練液のフロー値に基づいて、攪拌翼の回転数、又は、混練時間を調節することを特徴とする。
【0017】
本発明に係る硬化材は、セメントを含有する硬化材であって、上記に記載のアタパルジャイト液の製造方法を用いて製造されたアタパルジャイト液と、セメントと水とを含有するセメント液とが混合されてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明によれば、可塑剤等を配合させることなく、アタパルジャイト液のフロー値を容易に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】(a)は、アタパルジャイト液を作製する際の撹拌翼の回転数、混練時間、及び、アタパルジャイト液のフロー値の関係を示したグラフ、(b)は、アタパルジャイト液を作製する際の撹拌翼の回転数、混練時間、及び、硬化材のフロー値の関係を示したグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0021】
本発明に係るフロー値の調整方法は、アタパルジャイトと水とが混練された混練液からなるアタパルジャイト液を作製するに際し、該アタパルジャイト液のフロー値を調整するものである。アタパルジャイトの性状としては、特に限定されるものではないが、水中に分散させ易い形状であることが好ましい。例えば、粒状に形成されたアタパルジャイトを用いることが好ましい。具体的には、80メッシュのふるいを通過する大きさの粒状のアタパルジャイトを用いることが好ましい。
【0022】
アタパルジャイトと水とを混練する際には、回転する攪拌翼(図示せず)が用いられる。該撹拌翼の形状としては、特に限定されるものではなく、セメント等の水硬性材料と水とを混練する際に用いられる一般的な形状のものを用いることができる。また、撹拌翼は、任意に回転数を設定可能に構成されることが好ましい。具体的には、撹拌翼は、ミキサー等の本体部(図示せず)に取り付けられることで、本体部によって回転数を設定可能に構成されていることが好ましい。
【0023】
アタパルジャイトと水とを混練してアタパルジャイト液を作製する方法としては、例えば、以下のような方法を用いることができる。具体的には、所定サイズの容器内に水を所定量投入し、攪拌翼を回転させて容器内の水を攪拌しつつ、アタパルジャイトの粉末を容器内に投入する。そして、アタパルジャイトと水とを所定時間混練することで、アタパルジャイト液を作製することができる。
【0024】
アタパルジャイトと水との配合割合としては、特に限定されるものではなく、本発明に係るフロー値の調整方法で、所定のフロー値に調整可能となるような割合であればよい。例えば、アタパルジャイト100重量部に対して、水が200重量部以上であることが好ましく、250重量部以上であることがより好ましい。また、アタパルジャイト100重量部に対して、水が1000重量部以下であることが好ましく、750重量部以下であることがより好ましい。
【0025】
本発明に係るフロー値の調整方法では、アタパルジャイト液を構成する混練液のフロー値に基づいて、攪拌翼の回転数、又は、混練時間を調節する。具体的には、アタパルジャイトと水とを所定時間混練して得られた混練液のフロー値を測定し、該フロー値に基づいて、攪拌翼の回転数、又は、混練時間を調節する。混練液のフロー値は、所定の条件で測定される。具体的には、NEXCO試験方法「エアモルタル及びエアミルクの試験法(試験法 313 1999:シリンダー法)」を用いてフロー値を測定することができる。
【0026】
本発明に係るフロー値の調整方法では、混練液のフロー値が所定の値よりも高い場合には、撹拌翼の回転数を増加させ、又は、混練時間を延長させることが好ましい。具体的には、アタパルジャイトと水とを所定時間混練して混練液を作製し、該混練液のフロー値を測定する。そして、測定したフロー値が所定の値よりも高い場合には、撹拌翼の回転数を増加させて混練液を再度混練し、混練液のフロー値を所望する値に低下させるようにしてもよい。又は、撹拌翼の回転数を変えずに混練液の混練を再度実施し(即ち、混練時間を延長し)、混練液のフロー値を所望する値に低下させるようにしてもよい。上述のような撹拌翼の回転数や混練時間の調節は、混練液のフロー値が所定の値となるまで、1回以上行われる。そして、本発明に係るアタパルジャイト液は、上述のようにフロー値が所望する値に調整されてなる混練液から構成される。
【0027】
アタパルジャイト液のフロー値としては、特に限定されるものではないが、250mm以上であることが好ましい。また、アタパルジャイト液のフロー値としては、470mm以下であることが好ましく、350mm以下であることがより好ましい。また、アタパルジャイト液の粘度としては、特に限定されるものではないが、2dPa・s以上であることが好ましく、3.5dPa・s以上であることがより好ましい。また、アタパルジャイト液の粘度としては、10dPa・s以下であることが好ましく、7dPa・s以下であることがより好ましい。
【0028】
アタパルジャイト液は、必要に応じて、混和剤を含有してもよい。混和剤としては、流動化剤、減水剤、増粘剤、遅延剤等を用いることができる。
【0029】
本発明に係るアタパルジャイト液は、セメントと水とが混練されてなるセメント液と混合されることで、硬化材を形成する。該硬化材は、例えば、構造物中に形成された空間に注入されて硬化することで該空間を埋め込んだり、水と接触する環境で構造物を形成(水中で打設)したりする際に用いられる。
【0030】
セメント液とアタパルジャイト液との混合割合としては、セメント液100重量部に対して、アタパルジャイト液が5重量部以上であることが好ましく、10重量部以上であることがより好ましい。また、セメント液100重量部に対して、アタパルジャイト液が200重量部以下であることが好ましく、150重量部以下であることがより好ましい。硬化材のフロー値としては、特に限定されるものではないが、80mm以上であることが好ましい。また、硬化材のフロー値としては、160mm以下であることが好ましく、120mm以下であることがより好ましい。
【0031】
セメントとしては、特に限定されるものではないが、例えば、普通、早強、超早強、白色、耐硫酸塩、中庸熱、低熱等の各種ポルトランドセメントを用いることができる。また、前記ポルトランドセメントの少なくとも一種と、高炉スラグ、フライアッシュなどの少なくとも一種とを混合した混合セメントも用いることができる。更には、ジェットセメント、アルミナセメントなどの特殊セメントや、他のセメント系固化材等を用いることができる。
【0032】
また、セメント液は、必要に応じて、混和材を含有してもよい。混和材としては、水硬性材料ではなく、砂や粘土鉱物、炭酸カルシウム、石膏などの無機系鉱物などを用いることができる。また、セメント液は、必要に応じて、混和剤を含有してもよい。混和剤としては、起泡剤、減水剤、遅延剤、分散剤等を用いることができる。また、セメントと水との配合割合としては、特に限定されるものではなく、硬化材のフロー値が上記のような範囲となるような割合であることが好ましい。例えば、セメント100重量部に対して、水が40重量部以上であることが好ましく、50重量部以上であることがより好ましい。また、セメント100重量部に対して、水が150重量部以下であることが好ましく、100重量部以下であることがより好ましい。
【0033】
以上のように、本発明に係るフロー値の調整方法、アタパルジャイト液の製造方法、及び、硬化材によれば、アタパルジャイト液の配合を変えることなく、アタパルジャイト液のフロー値を容易に調整することができる。
【0034】
即ち、アタパルジャイト液のフロー値は、混練液中のアタパルジャイト粒子の解砕度合によって影響を受ける。混練液中のアタパルジャイト粒子は、撹拌翼との接触や乱流の影響による剪断力を受けて解砕される。つまり、攪拌翼の回転数、又は、混練時間を調節することで、アタパルジャイト粒子が撹拌翼と接触する頻度や、アタパルジャイト粒子が受ける剪断力を調節することができる。これにより、アタパルジャイト粒子の解砕度合を調節することができる。
【0035】
このため、混練液のフロー値に基づいて、攪拌翼の回転数、又は、混練時間を調節することで、上述のように、混練液中のアタパルジャイト粒子の解砕度合が調節され、アタパルジャイト液のフロー値を所望する値に調整することができる。
【0036】
また、攪拌翼の回転数を増加させることで、混練液中のアタパルジャイト粒子が撹拌翼と接触する頻度を高めることができ、また、乱流の影響によってアタパルジャイト粒子に加わる剪断力を高めることができる。このため、アタパルジャイト粒子の解砕度合を向上させることができる。これにより、混練液のフロー値を所定の値に低下させることができ、アタパルジャイト液のフロー値を所望する値に調整することができる。
【0037】
また、混練時間を延長することで、混練液中のアタパルジャイト粒子が撹拌翼と接触する頻度を高めることができ、また、乱流の影響によってアタパルジャイト粒子に剪断力が加わる頻度を高めることができる。このため、アタパルジャイト粒子の解砕度合を向上させることができる。これにより、混練液のフロー値を所定の値に低下させることができ、アタパルジャイト液のフロー値を所望する値に調整することができる。
【0038】
また、アタパルジャイト液に可塑剤等を配合することがないので、アタパルジャイト液や硬化材を製造する際のコストを低減することができる。
【実施例】
【0039】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0040】
=試験I=
<セメント液(A液)、アタパルジャイト液(B液)>
1.使用材料
・セメント(製品名:JETMS A材、住友大阪セメント社製)
・アタパルジャイト(製品名:MIN−U−GEL400、巴工業社製)
・分散剤(製品名:JETMS B材混和剤、住友大阪セメント社製)
・混和剤(製品名:JETMS A材混和剤、住友大阪セメント社製)
【0041】
2.配合
下記表1に示す配合で、上記の材料と水とを混練し、セメント液(A液)、及び、アタパルジャイト液(B液)を作製した。混練には、回転する撹拌翼を備えたミキサー(下記表2に示すもの)を用いた。なお、B液については、撹拌翼の回転数が異なる3つのミキサー(撹拌翼の形状、大きさが同一のもの)を用いた。
【0042】
3.アタパルジャイト液(B液)のフロー値の測定
各回転数における所定の混練時間毎のB液を構成する混練液から試料1〜8を採取し、NEXCO試験方法「エアモルタル及びエアミルクの試験法(試験法 313 1999:シリンダー法)」に基づいて、各試料のフロー値を測定した。フロー値の測定結果、撹拌翼の回転数、及び、混練時間については、下記表3及び図1(a)のグラフに示す。
【0043】
また、各回転数における所定の混練時間毎のB液の密度及び粘度についても、下記表3に示す。なお、密度は、1LのB液の質量を電子天秤で測定して算出した。また、粘度は、粘度計(ビスコテスター VT−04、リオン社製)を用いて測定した。
【0044】
【表1】

【0045】
【表2】

【0046】
【表3】

【0047】
<硬化材>
A液と、各試料を採取した各B液とを容積比で1:2の割合で混合し、硬化材1〜8(JETMS)を作製した。そして、NEXCO試験方法「エアモルタル及びエアミルクの試験法(試験法 313 1999:シリンダー法)」に基づいて、各硬化材のフロー値を測定した。フロー値の測定結果、B液を作製した時の撹拌翼の回転数、及び、B液の混練時間については、下記表4及び図1(b)のグラフに示す。なお、各硬化材の密度についても、下記表4に示す。
【0048】
【表4】

【0049】
<まとめ>
1.アタパルジャイト液(B液)について
表3及び図1(a)を見ると、混練時間が同一の場合には、撹拌翼の回転数を多くした方がB液のフロー値を低くすることができると認められる。また、撹拌翼の回転数を多くした方がフロー値を早期に低下させることができると認められる。つまり、回転数を調節することによって、B液のフロー値を調整することができる。
【0050】
このため、アタパルジャイトと水とが混練されてなる混練液のフロー値に基づいて、撹拌翼の回転数を調節することで、B液のフロー値が所望する値となるように調整することができる。特に、混練液のフロー値が所望するB液のフロー値よりも高い場合には、撹拌翼の回転数を増加させることで、B液のフロー値を早期に所望する値に調整する(低下させる)ことができる。
【0051】
また、撹拌翼の回転数が同一の場合には、混練時間を長くした方がフロー値を低くすることができると認められる。つまり、混練時間を調節することによって、B液のフロー値を調整することができる。
【0052】
このため、混練液のフロー値に基づいて、混練時間を調節することで、B液のフロー値が所望する値となるように調整することができる。特に、混練液のフロー値が所望するB液のフロー値よりも高い場合には、混練時間を延長することで、B液のフロー値を所望する値に調整する(低下させる)ことができる。
【0053】
2.硬化材について
次に、表4及び図1(b)を見ると、B液を作製した時の混練時間が同一の場合には、B液を作製した時の撹拌翼の回転数が多い方が硬化材のフロー値を低くすることができると認められる。つまり、B液を作製する際の撹拌翼の回転数を調節することによって、硬化材のフロー値を調整することができる。
【0054】
このため、上述のように、B液を作製するときの撹拌翼の回転数を調節することで、硬化材のフロー値が所望する値となるように調整することができる。特に、硬化材のフロー値を低下させたい場合には、撹拌翼の回転数を増加させてB液を作製し、斯かるB液をA液と混合して硬化材を作製することで、硬化材のフロー値を低下させることができる。
【0055】
また、B液を作製した際の撹拌翼の回転数が同一である場合、混練時間の長いB液を用いた硬化材のフロー値の方が混練時間の短いB液を用いた硬化材よりもフロー値が低くなることが認められる。つまり、B液を作製する際の混練時間を調節することによって、硬化材のフロー値を調整することができる。
【0056】
このため、上述のように、混練時間を調節することで、硬化材のフロー値が所望する値となるように調整することができる。特に、硬化材のフロー値を低下させたい場合には、混練時間を長くしてB液を作製し、斯かるB液をA液と混合して硬化材を作製することで、硬化材のフロー値を低下させることができる。
【0057】
=試験II=
回転する撹拌翼を備えたミキサーとして、試験Iで用いたミキサーとは撹拌翼の形状が異なるもの(東邦地下工業社製 並列二層式ミキサー 回転数:500rpm)を用いたこと以外は、試験Iと同一の方法で、A液、及び、B液(混練時間の異なる2種類)を作製し、A液とB液のそれぞれとを混合して、硬化材9及び10を作製した。そして、各硬化材のフロー値を試験Iと同一の方法で測定した。フロー値の測定結果については、下記5に示す。
【0058】
【表5】

【0059】
<まとめ>
B液を作製した時の撹拌翼の回転数が同一である場合、混練時間の長いB液を用いた硬化材10の方が硬化材9よりもフロー値が低くなることが認められる。つまり、試験Iの撹拌翼とは形状の異なる撹拌翼を用いた場合であっても、B液を作製する際の混練時間を調節することによって、硬化材のフロー値を調整することができる。
このため、上述のように、B液を作製する際の混練時間を調節することで、硬化材のフロー値が所望する値となるように調整することができる。特に、硬化材のフロー値を低下させたい場合には、混練時間を長くしてB液を作製し、斯かるB液をA液と混合して硬化材を作製することで、硬化材のフロー値を低下させることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アタパルジャイトと水とが回転する攪拌翼によって混練された混練液からなるアタパルジャイト液のフロー値を調整するフロー値の調整方法であって、
前記混練液のフロー値に基づいて、攪拌翼の回転数、又は、混練時間を調節することを特徴とするフロー値の調整方法。
【請求項2】
前記混練液のフロー値が所定の値よりも高い場合に、攪拌翼の回転数を増加させることを特徴とする請求項1に記載のフロー値の調整方法。
【請求項3】
前記混練液のフロー値が所定の値よりも高い場合に、混練時間を延長することを特徴とする請求項1に記載のフロー値の調整方法。
【請求項4】
アタパルジャイトと水とが回転する攪拌翼によって混練された混練液からなるアタパルジャイト液の製造方法であって、
前記混練液のフロー値に基づいて、攪拌翼の回転数、又は、混練時間を調節することを特徴とするアタパルジャイト液の製造方法。
【請求項5】
セメントを含有する硬化材であって、
請求項4に記載のアタパルジャイト液の製造方法を用いて製造されたアタパルジャイト液と、セメントと水とを含有するセメント液とが混合されてなることを特徴とする硬化材。

【図1】
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【公開番号】特開2013−79513(P2013−79513A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−219525(P2011−219525)
【出願日】平成23年10月3日(2011.10.3)
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【Fターム(参考)】