フードヒンジ
【課題】レバー比が設計値からずれた場合でもその誤差を従来のヒンジブラケットに比べて低減することができるフードヒンジを提供する。
【解決手段】車体200へ固定されるヒンジブラケット20とヒンジブラケット20に回動可能に取り付けられたヒンジアーム30とを備えたフードヒンジ10であって、ヒンジブラケット20は、車両前後方向に沿って車体200の取付面211に固定される一対の第1取付部21F,21Rと、フロントフェンダパネル400が取り付けられる第2取付部22と、ヒンジアーム30を取り付ける第3取付部23Hと、を備え、第3取付部23Hは一方の第1取付部21Fと他方の第1取付部21Rとの中間位置αを通る仮想線L2上に設けられ、第2取付部22は第3の取付部23Hの上側又は下側に設けられている。
【解決手段】車体200へ固定されるヒンジブラケット20とヒンジブラケット20に回動可能に取り付けられたヒンジアーム30とを備えたフードヒンジ10であって、ヒンジブラケット20は、車両前後方向に沿って車体200の取付面211に固定される一対の第1取付部21F,21Rと、フロントフェンダパネル400が取り付けられる第2取付部22と、ヒンジアーム30を取り付ける第3取付部23Hと、を備え、第3取付部23Hは一方の第1取付部21Fと他方の第1取付部21Rとの中間位置αを通る仮想線L2上に設けられ、第2取付部22は第3の取付部23Hの上側又は下側に設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のフードを回動可能に支持すると共にフロントフェンダパネルが取り付けられるフードヒンジに関する。
【背景技術】
【0002】
車体前部のエンジンルームを覆うフードは、その後端部における車幅方向の両端部をそれぞれ車体に固定したフードヒンジに支持されている。図12に示す従来のフードヒンジ100は、車体へ固定されるヒンジブラケット110とヒンジブラケット110に回動可能に取り付けられたヒンジアーム120とを備えている。
【0003】
ヒンジブラケット110は、図13に示すように、車体前部の骨格部材であるエプロンアッパーメンバー200に固定されるベースプレート部111と、このベースプレート部111の端部から上方へ立ち上がった縦壁部112と、から形成されている。この縦壁部112には図14に示すように穴113が形成されており、この穴113にピン150(図12)を介してヒンジアーム120が枢支されている。このようにヒンジブラケット110に対して回動可能なヒンジアーム120の先端側が、図12に示すようにフード300の裏面に固定されている。なお、エプロンアッパーメンバー200はヒンジブラケット110を取り付ける上面201を備えており、この上面201は例えば平坦に形成されている。
ヒンジブラケット110のベースプレート部111は、図14に示すようにA1の箇所とこの箇所A1から後方へずれた位置にある箇所A2とに図示省略するボルト挿通用の穴を有している。これらの穴に対応してエプロンアッパーメンバー200にボルト挿通用の穴(図示省略)とこの穴に対応して溶着しているナットとがあり、両者の穴にボルトを通しナットに螺着させることで、ベースプレート部111がエプロンアッパーメンバー200に固定される。
【0004】
車体前部の側面にはフロントフェンダパネル400が配設されている。図15に示す従来のフロントフェンダパネル400は、前輪領域を除いた車体外面領域の意匠面を成す縦壁状のエプロン部410と、このエプロン部410の上端部から垂下してエンジンルーム側へ突出したフランジ部420と、を備えている。フロントフェンダパネル400は、エプロンアッパーメンバー200に固定されたヒンジブラケット110に取り付けられる。具体的には、図14及び図15に示すように、ヒンジブラケット110の縦壁部112には、ヒンジアーム取付用の穴113より車両後方側へずれた位置にフロントフェンダパネル400のフランジ部420を取り付ける取付部114が設けられている。この取付部114は図13に示すように、ベースプレート部111と平行に延びるように縦壁部112の上縁から水平方向へ延出し、さらにその上面が平坦な取付面114Aとして形成されている。この取付面114Aとフランジ部420とにボルト挿通用の穴(図示省略)が形成されていて、それらに通したボルト(図示省略)を取付面114Aに溶着したナット(図示省略)に螺着させることで、フランジ部420がヒンジブラケット110に固定される。
【0005】
フード300とフロントフェンダパネル400との見切り隙を最小にし、さらにそれらの間に段差が生じないように、フード300とフロントフェンダパネル400とヒンジブラケット110との位置や連結箇所が選定されて、フード300とフロントフェンダパネル400とヒンジブラケット110とは車体に取り付けられている。
【0006】
特許文献1には、フードとフロントフェンダパネルとの建付性を向上するように、フードとフロントフェンダパネルとを車体に取り付けるためのフードヒンジ構造が開示されている。特許文献1のフードヒンジは、図12に示す従来のフードヒンジ100と同様に、ヒンジアームでフード300を支持し、ヒンジブラケット110でフロントフェンダパネル400を支持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−278121号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来、フード300とフロントフェンダパネル400とが所望の取付位置に配設されるよう、それらを支持するフードヒンジ110を予め決められたボディの取付位置に固定したとしても、車体自体が傾いている場合、例えばボディの精度が設計値からずれることで、建付にバラツキが生ずる。図14の実線が設計で決めた仮の理想状態を示し、二点破線がレバー比の相違に基づいてエプロンアッパーメンバー200の上面201が傾いている状態を示している。例えばヒンジブラケット110の前側の取付箇所A1を回転中心としてエプロンアッパーメンバー200が角度θ(1.1°)回転して、エプロンアッパーメンバー後側が高くなった場合、ヒンジアーム取付用の穴113の位置が上方へ0.69mm(Y1)、前方へ1.31mm(X1)移動し、フェンダの取付面114Aの位置は上方へ1.48mm(Y2)、前方へ1.52mm(X2)移動する。このような、ヒンジアーム取付用の穴113とフェンダの取付面114Aの移動に伴って、フード300とフェンダパネル400との段差が例えば0.79mm(=1.48−0.69)生ずる。車両に高い意匠性を確保するためにはこのような建付誤差を0に近づけることが望ましいが、従来のヒンジブラケット110はレバー比の影響を大きく受けてしまう。
【0009】
本発明は、以上の点に鑑みて創作されたもので、ボディ精度が設計値からずれた場合でもその誤差を従来のヒンジブラケットに比べて低減することができるフードヒンジを提供すること目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明は、車体へ固定されるヒンジブラケットと、上記ヒンジブラケットに回動可能に取り付けられたヒンジアームと、を備えたフードヒンジであって、上記ヒンジブラケットは、車体の取付面に固定される一対の第1取付部と、フロントフェンダパネルが取り付けられる第2取付部と、ヒンジアームを取り付ける第3取付部と、を備え、第3取付部は、一方の第1取付部と他方の第1取付部との中間位置を通る仮想線上に設けられ、第2取付部は、第3取付部の上側に設けられていることを特徴としている。
本発明のフードヒンジにおいて、第2取付部はボルト挿通用の穴を有し、この穴はボルトのネジ部の太さよりも大きく形成されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ボディのバラツキによる建付誤差を低減することができる。特にヒンジアーム取付用の第3取付部とフェンダ取付用の第2取付部とを近接させ、さらにそれらを上下方向に並設しているため、それぞれの上下方向の移動量が同じか或いは同程度になり、相対的な移動距離の差を従来技術に比べて小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態に係るフードヒンジ構造を示す図である。
【図2】図1のA−A線に沿ったフードヒンジ構造の概略断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係るヒンジブラケットの斜視図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係るヒンジブラケットの側面図である。
【図5】(A)は従来のヒンジブラケットを示す図であり、(B)は第1実施形態に係るヒンジブラケットを示す図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係るヒンジブラケットの実験例を説明するための図である。
【図7】本発明の第1実施形態に係るヒンジブラケットの実験例を説明するための図である。
【図8】本発明の第1実施形態の第1変形例に係るヒンジブラケットの斜視図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係るヒンジブラケットの斜視図である。
【図10】本発明の第2実施形態に係るヒンジブラケットを利用したヒンジ構造の概略断面図である。
【図11】本発明の第3実施形態の変形例に係るヒンジブラケットの斜視図である。
【図12】従来のフードヒンジの側面図である。
【図13】従来のヒンジブラケットの正面図である。
【図14】従来のヒンジブラケットの側面図である。
【図15】従来のフロントフェンダパネルの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。なお、図中のFrは車両前方を、Upは車両上方を、LHは車両の横幅方向であって左方を示す。背景技術の構成と同じ部材には同じ符号を用いる。
【0014】
[第1実施形態]
図1は本発明の第1実施形態に係るフードヒンジ構造1を示し、車体前部のエンジンルームRを覆うフード300の右側後端部周辺を示している。フード300の左側後端部には、車両前後方向に延びた仮想鉛直面を基準に右側のフードヒンジ構造1と対称に形成された左側のフードヒンジ構造が設けられている。以下、右側のフードヒンジ構造1について詳述する。また、図2は図1のA−A線に沿ったフードヒンジ構造1の概略断面図である。
【0015】
フードヒンジ構造1は、鋼材で成るフードヒンジ10を備えており、このフードヒンジ10によって車体前部のエンジンルームRを覆うフード300と、車体前部の側面を覆うフロントフェンダパネル400と、を支持している。
【0016】
フードヒンジ10は、車体へ固定されるヒンジブラケット20と、ヒンジブラケット20に回動可能に取り付けられたヒンジアーム30と、を備えている。
【0017】
図3は本実施形態に係るヒンジブラケット20の斜視図である。図4は本実施形態に係るヒンジブラケット20の側面図である。
ヒンジブラケット20は、車体前部の骨格部材であるエプロンアッパーメンバー200に固定され互いに距離を置いて設けられた一対の第1取付部21F,21Rと、一対の第1取付部21F,21R間に設けられると共に一対の第1取付部21F,21Rより高い位置に設けられた第2取付部22と、一対の第1取付部21F,21Rと第2取付部22とを連結する連結部23と、を備えている。
【0018】
連結部23は車幅方向へ面を向けた縦壁として形成されており、この縦壁は図4に示すように下壁部23Lと上壁部23Uとから構成されている。下壁部23Lは上壁部23Uよりも幅広に形成されており、上壁部23Uは下壁部23Lの前後方向の中間位置で下壁部23Lより上方へ突出するよう下壁部23Lから延出している。連結部23の外形は前後方向対称に形成されている。
【0019】
下壁部23Lの前側と後側の上縁部23E,23Fには、それぞれ第1取付部21F,21Rが設けられている。具体的には、前後の第1取付部21F,21Rは、図3に示すように連結部の上縁部23E,23FからL字型に折れ曲がる方向へ延出するように設けられている。各第1取付部21F,21Rは上面21Uと下面21Lとを有する。前側の第1取付部21Fの上面21Uは、後側の第1取付部21Rの上面21Uの延長上に配設されており、前側の第1取付部21Fの下面21Lも後側の第1取付部21Rの下面21Lの延長上に配設されている。各第1取付部21F,21Rにはボルト挿通用の穴21Hが形成されている。また、前後の第1取付部21F,21Rは、下壁部23Lの前後の上縁部23E,23Fより、矢印LHの反対方向へ延出している。
【0020】
これらの第1取付部21F,21Rが車体に固定される。本実施形態では、図1に示すように、エプロンアッパーメンバー200は上面201に台座210を備えており、この台座210の上面211は取付面として平坦に形成されている。さらに、各第1取付部21F,21Rの穴21Hに対応した開口(図示省略)が台座210に形成されている。第1取付部21F,21Rは図2に示すように台座210にボルト81とナット82とで固定される。なお、本実施形態では、台座210はエプロンアッパーメンバー200を構成する一要素である。このような台座210は、エプロンアッパーメンバー200が例えばアウタパネルとインナパネルとを接合して閉断面構造として構成される場合にアウタパネルに一体に形成してもよい。
【0021】
上壁部23Uの上縁部23Gには、第2取付部22が設けられている。具体的には、第2取付部22は、図3に示すように連結部23の上縁部23GからL字型に折れ曲がる方向へ延出するように設けられている。第2取付部22は上面22Uと下面とを有する。第2取付部22の上面22Uは前後の第1取付部21F,21Rの上面21Uと平行に形成されている。第2取付部22にはボルト挿通用の穴22Hが形成されており、下面にナットが溶着されている。
【0022】
第2取付部22には、フロントフェンダパネル400が固定される。図2に示すように、フロントフェンダパネル400は、前輪領域を除いた車体外面領域の意匠面を成すエプロン部410と、このエプロン部410の上端部から垂下してエンジンルーム側Rへ突出したフランジ部420と、を備えている。このフランジ部420は、取付面として平坦に形成され、第2取付部22の穴22Hに対応した開口(図示省略)が形成されている。フランジ部420は図2に示すように第2取付部22にボルト81とナット82とで固定されている。
【0023】
さらに、本実施形態の連結部23は、図4に示すように、前後の第1取付部21F,21Rと同じ高さ位置であって、さらに第2取付部22の下側に第3取付部である穴23Hを有する。具体的には、穴23Hは、一方の第1取付部21Fと他方の第1取付部21Rとを結んだ仮想線L1の中間位置α(図3参照)とすると、この中間位置αを通りさらに仮想線L1に直交する仮想水平線L2(図3参照)上に設けられている。第2取付部22は、中間位置αを通りさらに仮想線L1と仮想水平線L2とに直交する仮想線L3上にある。すなわち、当該中間位置αよりも、高い位置、つまり第1取付部21F,21Rより高い位置に設けられている。
【0024】
この穴23Hは、ヒンジアーム30を取り付けるために利用される。
図2に示すように、ヒンジアーム30の基端部に取り付けた回転軸であるピン150がヒンジブラケット20の穴23Hに支持されて、ヒンジアーム30はヒンジブラケット20に回動可能に支持される。ヒンジアーム30の先端側は、図1に示すようにフード300の裏面に固定されている。
なお、図2に示すように、ヒンジアーム30とヒンジブラケット10との連結部分が台座210と干渉しないように、連結部23と台座210との間には隙間Sが設けられている。
【0025】
図3及び図4において、連結部23の面からエンジンルーム側へ突出した凸部23Gは、穴23Hに一端部を回動可能に支持されたヒンジアーム30の回転、つまりフード300の過開きを防止する機能を有する。ヒンジアーム30の回転途中で、ヒンジアーム30が凸部23Gに衝接することで、フード300の開動作が規制される。
【0026】
このようなフードヒンジ構造1において、フードヒンジ10がヒンジアーム30及びヒンジブラケット20でフード300を支持し、ヒンジブラケット20でフロントフェンダパネル400を支持する。
【0027】
これらのフード300とフロントフェンダパネル400との見切り隙C(図2参照)を最小にし、さらにフード300とフロントフェンダパネル400との間に段差が生じないように、フード300とフロントフェンダパネル400との形状が設計され、さらにフード300とフロントフェンダパネル400とを支持するフードヒンジ10、特にヒンジブラケット20のボディへの取付位置が選定されている。
【0028】
このようなフードヒンジ構造1を車両に設定する際、ヒンジブラケット20を取り付けるエプロンアッパーメンバー200が設計した位置とずれた場合、例えば後ろ側が上方へ1.0mm上がるように設計位置よりずれている場合でも、ヒンジブラケット20が、ヒンジアーム30の回転中心である穴23Hを前後の第1取付部21F,21Rの中間位置に設けると共に、フェンダの取付面である第2取付部22を穴23Hより上方に設けているので、フード300を支持する穴23Hとフェンダパネル400を支持する第2取付部22の位置のずれ量を低減することができる。具体的には、本実施形態のヒンジブラケット20は、(イ)フード300を支持する穴23Hとフェンダパネル400を支持する第2取付部22とを互いに近づけ、(ロ)穴23Hと第2取付部22とを上下方向に並設し、(ハ)穴23Hと第2取付部22とをヒンジブラケット20の前後方向の中間領域に設けているので、ヒンジブラケット取付面の傾斜角度の変化に伴う穴23Hと第2取付部22の各位置のずれ量、特に車両上下方向のずれ量を同じか或いは同程度にすることができる。また、ヒンジアーム30を支持する穴23Hの前後の位置ずれ量をほぼ0にすることができる。
本実施形態のヒンジブラケット20はボディのバラツキによる影響が低いことが以下の実験例で確認できる。
【0029】
[実験例1]
従来のヒンジブラケット110(図12参照)と本実施形態のヒンジブラケット20との建付誤差、つまりヒンジ取付対象であるエプロンアッパーメンバー200のボディバラツキによる影響を評価した。
図5(A)は従来のヒンジブラケット110を示し、図5(B)は本実施形態のヒンジブラケット20を示している。各図の破線は正規の位置を示しており、実線は取付面が後上方へ傾斜している場合に取り付けた状態を示している。取付面の回転中心を各ヒンジブラケット110,20を取付面に固定するための前側の取付用の穴位置とした。この前側の穴位置を原点として、車両後方へ延びる線をX軸とし、上方へ延びる線をY軸とした。本実験では、取付面が回転中心まわりに角度1.15°回転した場合を前提とする。
図5(A)及び図5(B)に示す各ヒンジブラケット110,20の回転前後のヒンジアーム取付用の穴113,23Hの位置(XY座標)、フロントフェンダパネル400の取付部114,22の位置(XY座標)を下記の表1に示す。
【表1】
なお、表1の本実施形態の座面正寸Aは、前側の第1取付部21Fを車体へ固定する箇所であるボルト挿通用穴21Hと後側の第1取付部21Rを車体へ固定する箇所であるボルト挿通用穴21Hとの間隔を示す。以下、本実施形態では、この間隔を「一対の第1取付部21F,21Rの間隔」と称する。
【0030】
上記表1に示すように、従来のヒンジブラケット110では、ヒンジアーム取付用の穴113の位置が上方へ0.69mm、前方へ1.31mm移動し、フェンダの取付部114の位置は上方へ1.48mm、前方へ1.52mm移動した。ヒンジアーム取付用の穴113とフェンダ400の取付部114の移動に伴って、フードパネルとフェンダパネルとの段差が例えば0.79mm(=1.48−0.69)生じたことになる。
これに対して、本実施形態のヒンジブラケット20では、ヒンジアーム取付用の穴23Hの位置が上方へ0.50mm、前方へ0.01mm移動し、フェンダパネル400の第2取付部22の位置は上方へ0.50mm、前方へ0.31mm移動した。ヒンジアーム取付用の穴23Hとフェンダ取付用の第2取付部22の移動に伴っても、フードパネルとフェンダパネルとの段差の発生を防止できた。これは、本実施形態では、ヒンジアーム取付用の穴23Hとフェンダ取付用の第2取付部22とを近接させ、さらにそれらを上下方向に並設しているため、それぞれの上下方向の移動量が同じになり、相対的な移動距離の差を0(=0.50−0.50)とすることができたことに基づいている。
このように、本実施形態に係るヒンジブラケット20は、従来のヒンジブラケット110に比べて、ボディ精度による影響を受けず、建付誤差に基づく見切り隙Cでの段差発生を防止できる。
また、前方への移動量が0.01mmと少ないことから、図12に示すカウルルーバ500及び図15に示すヘッドランプ600との見切り隙への影響を少なくできる。なお、図12及び図15では、カウルルーバ500とヘッドランプ600の全体表示を省略し、それらの一部だけを表している。
【0031】
以下、第1実施形態の他の実験例について説明する。
[実験例2]
図6は、ボディへの取付部の座面正寸A(図5参照)を50.0mm、ボディバラツキとしての移動量Bを1.0mm、ボディバラツキとしての移動角度(Bの角度表示)Cを1.15°とした場合の、図5中のポイント(X,Y)における上下方向の変化量を説明するための図である。ポイントのX座標を5,12.5,15,20,25,30,35,37.5,45,50,55,62.5,65,75に設定し、ポイントのY座標を0,5,15,25,35,45,55,65,75に設定した。
X座標が50、Y座標が0〜75であるポイント(50,0〜75)にヒンジアーム取付用の穴23Hを設定したところ、X座標が50である各ポイントでのLの値、つまりY方向への移動量は略1.0であった。
X座標が37.5、Y座標が0〜75であるポイント(37.5,0〜75)にフェンダ取付用の第2取付部22を設定したところ、X座標が37.5である各ポイントでのLの値、つまりY方向への移動量は略0.75であった。
X座標が62.5、Y座標が0〜75であるポイント(62.5,0〜75)にフェンダ取付用の第2取付部22を設定したところ、X座標が62.5である各ポイントでのLの値、つまりY方向への移動量は略1.25であった。
このように、第3取付部としてのヒンジアーム取付用の穴23HのX座標とフェンダ取付用の第2取付部22のX座標の差を、12.5mm、つまり座面正寸Aの1/4以下にすることで、上方への移動量の差をほぼ0.25mm以下にすることができる。これにより、例えば従来の車両において望ましい設定である見切り隙でのフード300とフェンダ400との段差の寸法である0.5mmを半減することができる。
【0032】
[実験例3]
図6の各座標にヒンジアーム取付用の穴23Hを設定した場合の各ポイントでのLの値、つまりY方向への移動量は、X座標が20である各ポイントで略0.4mmであった。また、Y方向への移動量はX座標が25である各ポイントで略0.5mmであった。また、Y方向への移動量はX座標が30である各ポイントで略0.6mmであった。
このように、ヒンジアーム取付用の穴23Hの座標は、X座標を20〜30、つまり座面正寸Aの2/5〜3/5にすることで、上方への移動量をほぼ0.6mm以下にすることができる。これにより、望ましいと考えられる寸法、つまりフード300とカウルルーバ500(図12参照)との見切り段差への影響を少なくすることができる。
【0033】
[実験例4]
図7は、ボディへの取付部の座面正寸A(図5参照)を50.0mm、ボディバラツキとしての移動量Bを1.0mm、ボディバラツキとしての移動角度(Bの角度表示)Cを1.15°とした場合の、図5中のポイント(X,Y)における前後方向の変化量を説明するための図である。ポイントのX座標を5,12.5,15,20,25,30,35,37.5,45,50,55,62.5,65,75に設定し、ポイントのY座標を0,5,15,25,35,45,55,65,75に設定した。
図7の各座標にヒンジアーム取付用の穴23Hを設定した場合の各ポイントでのKの値、つまりX方向への移動量は、Y座標が0である各ポイントで略0であった。また、X方向への移動量はY座標が5である各ポイントで略−0.1であった。即ち、前方へほぼ0.1移動した。また、X方向への移動量はY座標が25である各ポイントで略−0.5であった。即ち、前方へほぼ0.5移動した。
このように、ヒンジアーム取付用の穴23Hの座標は、Y座標を25、つまり座面正寸Aの1/2以下にすることで、前方への移動量をほぼ0.5mm以下にすることができる。これにより、望ましいと考えられる寸法に設定できて、フード300とのカウルルーバ500或いはヘッドランプ600との見切り隙への影響を少なくすることができる。
【0034】
[第1実施形態の第1変形例]
図8は本発明の第1実施形態の第1変形例に係るヒンジブラケット20Aの斜視図である。前述の実施形態と同じ構成には同じ符号を付して、その説明を省略する。
ヒンジブラケット20Aは、車体前部の骨格部材であるエプロンアッパーメンバー200に固定され互いに距離を置いて設けられた一対の第1取付部21F,21Rと、これらの第1取付部21F,21Rの間に設けられると共に一対の第1取付部21F,21Rよりも高い位置に設けられた第2取付部22とを有する構成では、第1実施形態のヒンジブラケット20と同様の構成であるが、第1取付部21F,21Rと第2取付部22とを連結する連結部23Aの構成と、ヒンジアーム30を支持する穴23Hが第2取付部22から延出した延出部25に設けられている点で前述の実施形態と異なる。
【0035】
本実施形態の連結部20Aは、前側の第1取付部21Fの後縁と第2取付部22の前縁とを連結する第1壁部26と、後側の第1取付部21Rの前縁と第2取付部22の後縁とを連結する第2壁部27と、から構成されている。
さらに、本実施形態の第2取付部22は、エンジンルーム側の縁から下方へ延出する延出部25を有する。この延出部25にヒンジアーム30を取り付けるための穴23Hが形成されている。
【0036】
本実施形態の第1取付部21F,21Rと第2取付部22と穴23Hとは、第1実施形態と同様に、前側の第1取付部21Fの延長上に後側の第1取付部21Rが設けられ、さらに前後第1取付部21F,21Rの中間位置αを通る仮想水平線L2上に穴23Hが設けられ、この穴23Hより上方側に第2取付部22が設けられている。
【0037】
[第1実施形態の第2変形例]
本発明の第1実施形態の第2変形例に係るフロントフェンダパネル400(図2)のフランジ420には、ヒンジブラケット20の第2取付部22に形成された穴22Hに対応する穴400Hを有し、これらの穴22H,400Hを重ねてボルト81の軸81A(図2参照)よりも大きく形成されている。このように、穴400Hを大きく形成することで、ヒンジブラケット20に対するフロントフェンダパネル400の位置、つまり車両前後及び車両左右方向への位置を調整することができる。これにより、フード300とフェンダ400との見切り隙C(図2参照)をさらに、望ましい間隔に建付を調整することができる。
【0038】
[第2実施形態]
図9は本発明の第2実施形態に係るヒンジブラケット40の斜視図である。図10は本実施形態に係るヒンジブラケット40を利用したヒンジ構造1Aの概略断面図であり、図1のA−A線に沿った断面図に対応している。前述の実施形態と同じ構成には同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0039】
ヒンジブラケット40は、第1実施形態のヒンジブラケット20と同様に、一対の第1取付部21F,21Rと第2取付部22とを有するが、第1取付部21F,21Rと第2連結部22とを連結する連結部41の構成が第1実施形態と異なる。
【0040】
本実施形態の連結部41は、第1取付部21F,21Rにおけるエンジンルーム側の縁部にそれぞれ連結していると共に各第1取付部21F,21Rの縁部から下方へ延びる第1壁部41Aと、この第1壁部41Aの下端からエンジンルームR側へ向けて延びる底部41Bと、この底部41BのエンジンルームR側の縁部から上方へ立ち上がる第2壁部41Cとを有する。
第2壁部41Cの上縁の前後中間部からエンジンルームR側へ向けて延出するように、第2取付部22が設けられている。
さらに、第2壁部41Cには、前後の第1取付部21F,21Rの中間位置に対応した位置にヒンジアーム取付用の穴23Hが形成されている。図示するように、第2壁部41Cでは穴23周辺の領域、具体的に穴23Hの両側と上側とが一つの開口42で切り欠かれている。言い換えれば、第2壁部41Cは、ヒンジアーム支持用の第1凸片41Dと、この第1凸片41Dを囲うように門型に形成されたフェンダ支持用の第2凸片41Eとを有し、第1凸片41Dと第2凸片41Eとが直接繋がらないように構成されている。第1凸片41Dに穴23Hが設けられ、第2凸片41Eに第2取付部22が一体に形成されている。
【0041】
本実施形態の第1取付部21F,21Rと第2取付部22と穴23Hとは、第1実施形態と同様に、前側の第1取付部21Fの延長上に後側の第1取付部21Rが設けられ、さらに前後第1取付部21F,21Rの中間位置αを通る仮想水平線L2上に穴23Hが設けられ、この穴23Hより上方側に第2取付部22が設けられている。
【0042】
本実施形態によるヒンジブラケット40によれば、さらに、ヒンジアーム支持用の第1凸片41Dとこれを囲むように門型に形成されたフェンダ支持用の第2凸片41Eとが構造上分離しているから、例えばヒンジアーム30を支持する第1凸片41Dが変形しても、その変形の影響が第2凸片41Eへ伝達することを防止できる。
【0043】
[第3実施形態]
図11は本発明の第3実施形態の変形例に係るヒンジブラケット50の斜視図である。前述の実施形態と同じ構成には同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0044】
ヒンジブラケット50は、第1実施形態のヒンジブラケット20と同様に、一対の第1取付部21F,21Rと第2取付部とを有するが、第1取付部21F,21Rと第2取付部22とを連結する連結部51の構成と、第2取付部52の構成とにおいて前述の実施形態と異なる。
【0045】
本実施形態の連結部51は、前後の第1取付部21F,21RにおけるエンジンルームR側の縁部にそれぞれ連結し各第1取付部21F,21Rから上方へ延びる縦壁部として形成されている。
この連結部51は、前部と後部とにそれぞれ上縁部51E,51Fを有し、これらの上縁部51E,51Fの間から上方へ延びた延長部52をさらに有する。この延長部52の上縁から車幅方向外側へ延出するように第2取付部52が設けられている。
本実施形態の第2取付部52は、二つの取付面53,54を有するように形成されている。これは、本実施形態のヒンジブラケット50が左右各側のフードヒンジ構造で共用できるようにするためである。これに関連して、前後の各上縁51E,51Fには、フード300の過開きを防止するための、ヒンジアーム回転規制用の凸部55がそれぞれ設けられている。
さらに、本実施形態の連結部51では、その下側の前後方向の中間部が下方へ半円形状に膨出して形成されており、この膨出した部分の内側にヒンジアーム取付用の穴23Hが形成されている。
本実施形態のヒンジブラケット50は、前後方向の中間位置で上下に延びる仮想面を基準に前後対称に形成されている。
【0046】
本実施形態では、第1実施形態と同様に、前側の第1取付部21Fの延長上に後側の第1取付部21Rが設けられ、さらに前後の第1取付部21F,21Rの中間位置αを通る仮想水平線L2上に穴23Hが設けられ、この穴23Hより上方に第2取付部52が設けられている。
【0047】
本実施形態のヒンジブラケット50によれば、左右各側のフードヒンジ構造で利用できる。
【0048】
以上詳述したが、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において様々な形態で実施をすることができる。
【符号の説明】
【0049】
1,1A フードヒンジ構造
10 フードヒンジ
20,20A,40,50 ヒンジブラケット
21F, 21R 第1取付部
22 第2取付部
23H 第3取部付
30 ヒンジアーム
200 エプロンアッパーメンバー
300 フード
400 フロントフェンダパネル
R エンジンルーム
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のフードを回動可能に支持すると共にフロントフェンダパネルが取り付けられるフードヒンジに関する。
【背景技術】
【0002】
車体前部のエンジンルームを覆うフードは、その後端部における車幅方向の両端部をそれぞれ車体に固定したフードヒンジに支持されている。図12に示す従来のフードヒンジ100は、車体へ固定されるヒンジブラケット110とヒンジブラケット110に回動可能に取り付けられたヒンジアーム120とを備えている。
【0003】
ヒンジブラケット110は、図13に示すように、車体前部の骨格部材であるエプロンアッパーメンバー200に固定されるベースプレート部111と、このベースプレート部111の端部から上方へ立ち上がった縦壁部112と、から形成されている。この縦壁部112には図14に示すように穴113が形成されており、この穴113にピン150(図12)を介してヒンジアーム120が枢支されている。このようにヒンジブラケット110に対して回動可能なヒンジアーム120の先端側が、図12に示すようにフード300の裏面に固定されている。なお、エプロンアッパーメンバー200はヒンジブラケット110を取り付ける上面201を備えており、この上面201は例えば平坦に形成されている。
ヒンジブラケット110のベースプレート部111は、図14に示すようにA1の箇所とこの箇所A1から後方へずれた位置にある箇所A2とに図示省略するボルト挿通用の穴を有している。これらの穴に対応してエプロンアッパーメンバー200にボルト挿通用の穴(図示省略)とこの穴に対応して溶着しているナットとがあり、両者の穴にボルトを通しナットに螺着させることで、ベースプレート部111がエプロンアッパーメンバー200に固定される。
【0004】
車体前部の側面にはフロントフェンダパネル400が配設されている。図15に示す従来のフロントフェンダパネル400は、前輪領域を除いた車体外面領域の意匠面を成す縦壁状のエプロン部410と、このエプロン部410の上端部から垂下してエンジンルーム側へ突出したフランジ部420と、を備えている。フロントフェンダパネル400は、エプロンアッパーメンバー200に固定されたヒンジブラケット110に取り付けられる。具体的には、図14及び図15に示すように、ヒンジブラケット110の縦壁部112には、ヒンジアーム取付用の穴113より車両後方側へずれた位置にフロントフェンダパネル400のフランジ部420を取り付ける取付部114が設けられている。この取付部114は図13に示すように、ベースプレート部111と平行に延びるように縦壁部112の上縁から水平方向へ延出し、さらにその上面が平坦な取付面114Aとして形成されている。この取付面114Aとフランジ部420とにボルト挿通用の穴(図示省略)が形成されていて、それらに通したボルト(図示省略)を取付面114Aに溶着したナット(図示省略)に螺着させることで、フランジ部420がヒンジブラケット110に固定される。
【0005】
フード300とフロントフェンダパネル400との見切り隙を最小にし、さらにそれらの間に段差が生じないように、フード300とフロントフェンダパネル400とヒンジブラケット110との位置や連結箇所が選定されて、フード300とフロントフェンダパネル400とヒンジブラケット110とは車体に取り付けられている。
【0006】
特許文献1には、フードとフロントフェンダパネルとの建付性を向上するように、フードとフロントフェンダパネルとを車体に取り付けるためのフードヒンジ構造が開示されている。特許文献1のフードヒンジは、図12に示す従来のフードヒンジ100と同様に、ヒンジアームでフード300を支持し、ヒンジブラケット110でフロントフェンダパネル400を支持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−278121号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来、フード300とフロントフェンダパネル400とが所望の取付位置に配設されるよう、それらを支持するフードヒンジ110を予め決められたボディの取付位置に固定したとしても、車体自体が傾いている場合、例えばボディの精度が設計値からずれることで、建付にバラツキが生ずる。図14の実線が設計で決めた仮の理想状態を示し、二点破線がレバー比の相違に基づいてエプロンアッパーメンバー200の上面201が傾いている状態を示している。例えばヒンジブラケット110の前側の取付箇所A1を回転中心としてエプロンアッパーメンバー200が角度θ(1.1°)回転して、エプロンアッパーメンバー後側が高くなった場合、ヒンジアーム取付用の穴113の位置が上方へ0.69mm(Y1)、前方へ1.31mm(X1)移動し、フェンダの取付面114Aの位置は上方へ1.48mm(Y2)、前方へ1.52mm(X2)移動する。このような、ヒンジアーム取付用の穴113とフェンダの取付面114Aの移動に伴って、フード300とフェンダパネル400との段差が例えば0.79mm(=1.48−0.69)生ずる。車両に高い意匠性を確保するためにはこのような建付誤差を0に近づけることが望ましいが、従来のヒンジブラケット110はレバー比の影響を大きく受けてしまう。
【0009】
本発明は、以上の点に鑑みて創作されたもので、ボディ精度が設計値からずれた場合でもその誤差を従来のヒンジブラケットに比べて低減することができるフードヒンジを提供すること目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明は、車体へ固定されるヒンジブラケットと、上記ヒンジブラケットに回動可能に取り付けられたヒンジアームと、を備えたフードヒンジであって、上記ヒンジブラケットは、車体の取付面に固定される一対の第1取付部と、フロントフェンダパネルが取り付けられる第2取付部と、ヒンジアームを取り付ける第3取付部と、を備え、第3取付部は、一方の第1取付部と他方の第1取付部との中間位置を通る仮想線上に設けられ、第2取付部は、第3取付部の上側に設けられていることを特徴としている。
本発明のフードヒンジにおいて、第2取付部はボルト挿通用の穴を有し、この穴はボルトのネジ部の太さよりも大きく形成されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ボディのバラツキによる建付誤差を低減することができる。特にヒンジアーム取付用の第3取付部とフェンダ取付用の第2取付部とを近接させ、さらにそれらを上下方向に並設しているため、それぞれの上下方向の移動量が同じか或いは同程度になり、相対的な移動距離の差を従来技術に比べて小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態に係るフードヒンジ構造を示す図である。
【図2】図1のA−A線に沿ったフードヒンジ構造の概略断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係るヒンジブラケットの斜視図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係るヒンジブラケットの側面図である。
【図5】(A)は従来のヒンジブラケットを示す図であり、(B)は第1実施形態に係るヒンジブラケットを示す図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係るヒンジブラケットの実験例を説明するための図である。
【図7】本発明の第1実施形態に係るヒンジブラケットの実験例を説明するための図である。
【図8】本発明の第1実施形態の第1変形例に係るヒンジブラケットの斜視図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係るヒンジブラケットの斜視図である。
【図10】本発明の第2実施形態に係るヒンジブラケットを利用したヒンジ構造の概略断面図である。
【図11】本発明の第3実施形態の変形例に係るヒンジブラケットの斜視図である。
【図12】従来のフードヒンジの側面図である。
【図13】従来のヒンジブラケットの正面図である。
【図14】従来のヒンジブラケットの側面図である。
【図15】従来のフロントフェンダパネルの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。なお、図中のFrは車両前方を、Upは車両上方を、LHは車両の横幅方向であって左方を示す。背景技術の構成と同じ部材には同じ符号を用いる。
【0014】
[第1実施形態]
図1は本発明の第1実施形態に係るフードヒンジ構造1を示し、車体前部のエンジンルームRを覆うフード300の右側後端部周辺を示している。フード300の左側後端部には、車両前後方向に延びた仮想鉛直面を基準に右側のフードヒンジ構造1と対称に形成された左側のフードヒンジ構造が設けられている。以下、右側のフードヒンジ構造1について詳述する。また、図2は図1のA−A線に沿ったフードヒンジ構造1の概略断面図である。
【0015】
フードヒンジ構造1は、鋼材で成るフードヒンジ10を備えており、このフードヒンジ10によって車体前部のエンジンルームRを覆うフード300と、車体前部の側面を覆うフロントフェンダパネル400と、を支持している。
【0016】
フードヒンジ10は、車体へ固定されるヒンジブラケット20と、ヒンジブラケット20に回動可能に取り付けられたヒンジアーム30と、を備えている。
【0017】
図3は本実施形態に係るヒンジブラケット20の斜視図である。図4は本実施形態に係るヒンジブラケット20の側面図である。
ヒンジブラケット20は、車体前部の骨格部材であるエプロンアッパーメンバー200に固定され互いに距離を置いて設けられた一対の第1取付部21F,21Rと、一対の第1取付部21F,21R間に設けられると共に一対の第1取付部21F,21Rより高い位置に設けられた第2取付部22と、一対の第1取付部21F,21Rと第2取付部22とを連結する連結部23と、を備えている。
【0018】
連結部23は車幅方向へ面を向けた縦壁として形成されており、この縦壁は図4に示すように下壁部23Lと上壁部23Uとから構成されている。下壁部23Lは上壁部23Uよりも幅広に形成されており、上壁部23Uは下壁部23Lの前後方向の中間位置で下壁部23Lより上方へ突出するよう下壁部23Lから延出している。連結部23の外形は前後方向対称に形成されている。
【0019】
下壁部23Lの前側と後側の上縁部23E,23Fには、それぞれ第1取付部21F,21Rが設けられている。具体的には、前後の第1取付部21F,21Rは、図3に示すように連結部の上縁部23E,23FからL字型に折れ曲がる方向へ延出するように設けられている。各第1取付部21F,21Rは上面21Uと下面21Lとを有する。前側の第1取付部21Fの上面21Uは、後側の第1取付部21Rの上面21Uの延長上に配設されており、前側の第1取付部21Fの下面21Lも後側の第1取付部21Rの下面21Lの延長上に配設されている。各第1取付部21F,21Rにはボルト挿通用の穴21Hが形成されている。また、前後の第1取付部21F,21Rは、下壁部23Lの前後の上縁部23E,23Fより、矢印LHの反対方向へ延出している。
【0020】
これらの第1取付部21F,21Rが車体に固定される。本実施形態では、図1に示すように、エプロンアッパーメンバー200は上面201に台座210を備えており、この台座210の上面211は取付面として平坦に形成されている。さらに、各第1取付部21F,21Rの穴21Hに対応した開口(図示省略)が台座210に形成されている。第1取付部21F,21Rは図2に示すように台座210にボルト81とナット82とで固定される。なお、本実施形態では、台座210はエプロンアッパーメンバー200を構成する一要素である。このような台座210は、エプロンアッパーメンバー200が例えばアウタパネルとインナパネルとを接合して閉断面構造として構成される場合にアウタパネルに一体に形成してもよい。
【0021】
上壁部23Uの上縁部23Gには、第2取付部22が設けられている。具体的には、第2取付部22は、図3に示すように連結部23の上縁部23GからL字型に折れ曲がる方向へ延出するように設けられている。第2取付部22は上面22Uと下面とを有する。第2取付部22の上面22Uは前後の第1取付部21F,21Rの上面21Uと平行に形成されている。第2取付部22にはボルト挿通用の穴22Hが形成されており、下面にナットが溶着されている。
【0022】
第2取付部22には、フロントフェンダパネル400が固定される。図2に示すように、フロントフェンダパネル400は、前輪領域を除いた車体外面領域の意匠面を成すエプロン部410と、このエプロン部410の上端部から垂下してエンジンルーム側Rへ突出したフランジ部420と、を備えている。このフランジ部420は、取付面として平坦に形成され、第2取付部22の穴22Hに対応した開口(図示省略)が形成されている。フランジ部420は図2に示すように第2取付部22にボルト81とナット82とで固定されている。
【0023】
さらに、本実施形態の連結部23は、図4に示すように、前後の第1取付部21F,21Rと同じ高さ位置であって、さらに第2取付部22の下側に第3取付部である穴23Hを有する。具体的には、穴23Hは、一方の第1取付部21Fと他方の第1取付部21Rとを結んだ仮想線L1の中間位置α(図3参照)とすると、この中間位置αを通りさらに仮想線L1に直交する仮想水平線L2(図3参照)上に設けられている。第2取付部22は、中間位置αを通りさらに仮想線L1と仮想水平線L2とに直交する仮想線L3上にある。すなわち、当該中間位置αよりも、高い位置、つまり第1取付部21F,21Rより高い位置に設けられている。
【0024】
この穴23Hは、ヒンジアーム30を取り付けるために利用される。
図2に示すように、ヒンジアーム30の基端部に取り付けた回転軸であるピン150がヒンジブラケット20の穴23Hに支持されて、ヒンジアーム30はヒンジブラケット20に回動可能に支持される。ヒンジアーム30の先端側は、図1に示すようにフード300の裏面に固定されている。
なお、図2に示すように、ヒンジアーム30とヒンジブラケット10との連結部分が台座210と干渉しないように、連結部23と台座210との間には隙間Sが設けられている。
【0025】
図3及び図4において、連結部23の面からエンジンルーム側へ突出した凸部23Gは、穴23Hに一端部を回動可能に支持されたヒンジアーム30の回転、つまりフード300の過開きを防止する機能を有する。ヒンジアーム30の回転途中で、ヒンジアーム30が凸部23Gに衝接することで、フード300の開動作が規制される。
【0026】
このようなフードヒンジ構造1において、フードヒンジ10がヒンジアーム30及びヒンジブラケット20でフード300を支持し、ヒンジブラケット20でフロントフェンダパネル400を支持する。
【0027】
これらのフード300とフロントフェンダパネル400との見切り隙C(図2参照)を最小にし、さらにフード300とフロントフェンダパネル400との間に段差が生じないように、フード300とフロントフェンダパネル400との形状が設計され、さらにフード300とフロントフェンダパネル400とを支持するフードヒンジ10、特にヒンジブラケット20のボディへの取付位置が選定されている。
【0028】
このようなフードヒンジ構造1を車両に設定する際、ヒンジブラケット20を取り付けるエプロンアッパーメンバー200が設計した位置とずれた場合、例えば後ろ側が上方へ1.0mm上がるように設計位置よりずれている場合でも、ヒンジブラケット20が、ヒンジアーム30の回転中心である穴23Hを前後の第1取付部21F,21Rの中間位置に設けると共に、フェンダの取付面である第2取付部22を穴23Hより上方に設けているので、フード300を支持する穴23Hとフェンダパネル400を支持する第2取付部22の位置のずれ量を低減することができる。具体的には、本実施形態のヒンジブラケット20は、(イ)フード300を支持する穴23Hとフェンダパネル400を支持する第2取付部22とを互いに近づけ、(ロ)穴23Hと第2取付部22とを上下方向に並設し、(ハ)穴23Hと第2取付部22とをヒンジブラケット20の前後方向の中間領域に設けているので、ヒンジブラケット取付面の傾斜角度の変化に伴う穴23Hと第2取付部22の各位置のずれ量、特に車両上下方向のずれ量を同じか或いは同程度にすることができる。また、ヒンジアーム30を支持する穴23Hの前後の位置ずれ量をほぼ0にすることができる。
本実施形態のヒンジブラケット20はボディのバラツキによる影響が低いことが以下の実験例で確認できる。
【0029】
[実験例1]
従来のヒンジブラケット110(図12参照)と本実施形態のヒンジブラケット20との建付誤差、つまりヒンジ取付対象であるエプロンアッパーメンバー200のボディバラツキによる影響を評価した。
図5(A)は従来のヒンジブラケット110を示し、図5(B)は本実施形態のヒンジブラケット20を示している。各図の破線は正規の位置を示しており、実線は取付面が後上方へ傾斜している場合に取り付けた状態を示している。取付面の回転中心を各ヒンジブラケット110,20を取付面に固定するための前側の取付用の穴位置とした。この前側の穴位置を原点として、車両後方へ延びる線をX軸とし、上方へ延びる線をY軸とした。本実験では、取付面が回転中心まわりに角度1.15°回転した場合を前提とする。
図5(A)及び図5(B)に示す各ヒンジブラケット110,20の回転前後のヒンジアーム取付用の穴113,23Hの位置(XY座標)、フロントフェンダパネル400の取付部114,22の位置(XY座標)を下記の表1に示す。
【表1】
なお、表1の本実施形態の座面正寸Aは、前側の第1取付部21Fを車体へ固定する箇所であるボルト挿通用穴21Hと後側の第1取付部21Rを車体へ固定する箇所であるボルト挿通用穴21Hとの間隔を示す。以下、本実施形態では、この間隔を「一対の第1取付部21F,21Rの間隔」と称する。
【0030】
上記表1に示すように、従来のヒンジブラケット110では、ヒンジアーム取付用の穴113の位置が上方へ0.69mm、前方へ1.31mm移動し、フェンダの取付部114の位置は上方へ1.48mm、前方へ1.52mm移動した。ヒンジアーム取付用の穴113とフェンダ400の取付部114の移動に伴って、フードパネルとフェンダパネルとの段差が例えば0.79mm(=1.48−0.69)生じたことになる。
これに対して、本実施形態のヒンジブラケット20では、ヒンジアーム取付用の穴23Hの位置が上方へ0.50mm、前方へ0.01mm移動し、フェンダパネル400の第2取付部22の位置は上方へ0.50mm、前方へ0.31mm移動した。ヒンジアーム取付用の穴23Hとフェンダ取付用の第2取付部22の移動に伴っても、フードパネルとフェンダパネルとの段差の発生を防止できた。これは、本実施形態では、ヒンジアーム取付用の穴23Hとフェンダ取付用の第2取付部22とを近接させ、さらにそれらを上下方向に並設しているため、それぞれの上下方向の移動量が同じになり、相対的な移動距離の差を0(=0.50−0.50)とすることができたことに基づいている。
このように、本実施形態に係るヒンジブラケット20は、従来のヒンジブラケット110に比べて、ボディ精度による影響を受けず、建付誤差に基づく見切り隙Cでの段差発生を防止できる。
また、前方への移動量が0.01mmと少ないことから、図12に示すカウルルーバ500及び図15に示すヘッドランプ600との見切り隙への影響を少なくできる。なお、図12及び図15では、カウルルーバ500とヘッドランプ600の全体表示を省略し、それらの一部だけを表している。
【0031】
以下、第1実施形態の他の実験例について説明する。
[実験例2]
図6は、ボディへの取付部の座面正寸A(図5参照)を50.0mm、ボディバラツキとしての移動量Bを1.0mm、ボディバラツキとしての移動角度(Bの角度表示)Cを1.15°とした場合の、図5中のポイント(X,Y)における上下方向の変化量を説明するための図である。ポイントのX座標を5,12.5,15,20,25,30,35,37.5,45,50,55,62.5,65,75に設定し、ポイントのY座標を0,5,15,25,35,45,55,65,75に設定した。
X座標が50、Y座標が0〜75であるポイント(50,0〜75)にヒンジアーム取付用の穴23Hを設定したところ、X座標が50である各ポイントでのLの値、つまりY方向への移動量は略1.0であった。
X座標が37.5、Y座標が0〜75であるポイント(37.5,0〜75)にフェンダ取付用の第2取付部22を設定したところ、X座標が37.5である各ポイントでのLの値、つまりY方向への移動量は略0.75であった。
X座標が62.5、Y座標が0〜75であるポイント(62.5,0〜75)にフェンダ取付用の第2取付部22を設定したところ、X座標が62.5である各ポイントでのLの値、つまりY方向への移動量は略1.25であった。
このように、第3取付部としてのヒンジアーム取付用の穴23HのX座標とフェンダ取付用の第2取付部22のX座標の差を、12.5mm、つまり座面正寸Aの1/4以下にすることで、上方への移動量の差をほぼ0.25mm以下にすることができる。これにより、例えば従来の車両において望ましい設定である見切り隙でのフード300とフェンダ400との段差の寸法である0.5mmを半減することができる。
【0032】
[実験例3]
図6の各座標にヒンジアーム取付用の穴23Hを設定した場合の各ポイントでのLの値、つまりY方向への移動量は、X座標が20である各ポイントで略0.4mmであった。また、Y方向への移動量はX座標が25である各ポイントで略0.5mmであった。また、Y方向への移動量はX座標が30である各ポイントで略0.6mmであった。
このように、ヒンジアーム取付用の穴23Hの座標は、X座標を20〜30、つまり座面正寸Aの2/5〜3/5にすることで、上方への移動量をほぼ0.6mm以下にすることができる。これにより、望ましいと考えられる寸法、つまりフード300とカウルルーバ500(図12参照)との見切り段差への影響を少なくすることができる。
【0033】
[実験例4]
図7は、ボディへの取付部の座面正寸A(図5参照)を50.0mm、ボディバラツキとしての移動量Bを1.0mm、ボディバラツキとしての移動角度(Bの角度表示)Cを1.15°とした場合の、図5中のポイント(X,Y)における前後方向の変化量を説明するための図である。ポイントのX座標を5,12.5,15,20,25,30,35,37.5,45,50,55,62.5,65,75に設定し、ポイントのY座標を0,5,15,25,35,45,55,65,75に設定した。
図7の各座標にヒンジアーム取付用の穴23Hを設定した場合の各ポイントでのKの値、つまりX方向への移動量は、Y座標が0である各ポイントで略0であった。また、X方向への移動量はY座標が5である各ポイントで略−0.1であった。即ち、前方へほぼ0.1移動した。また、X方向への移動量はY座標が25である各ポイントで略−0.5であった。即ち、前方へほぼ0.5移動した。
このように、ヒンジアーム取付用の穴23Hの座標は、Y座標を25、つまり座面正寸Aの1/2以下にすることで、前方への移動量をほぼ0.5mm以下にすることができる。これにより、望ましいと考えられる寸法に設定できて、フード300とのカウルルーバ500或いはヘッドランプ600との見切り隙への影響を少なくすることができる。
【0034】
[第1実施形態の第1変形例]
図8は本発明の第1実施形態の第1変形例に係るヒンジブラケット20Aの斜視図である。前述の実施形態と同じ構成には同じ符号を付して、その説明を省略する。
ヒンジブラケット20Aは、車体前部の骨格部材であるエプロンアッパーメンバー200に固定され互いに距離を置いて設けられた一対の第1取付部21F,21Rと、これらの第1取付部21F,21Rの間に設けられると共に一対の第1取付部21F,21Rよりも高い位置に設けられた第2取付部22とを有する構成では、第1実施形態のヒンジブラケット20と同様の構成であるが、第1取付部21F,21Rと第2取付部22とを連結する連結部23Aの構成と、ヒンジアーム30を支持する穴23Hが第2取付部22から延出した延出部25に設けられている点で前述の実施形態と異なる。
【0035】
本実施形態の連結部20Aは、前側の第1取付部21Fの後縁と第2取付部22の前縁とを連結する第1壁部26と、後側の第1取付部21Rの前縁と第2取付部22の後縁とを連結する第2壁部27と、から構成されている。
さらに、本実施形態の第2取付部22は、エンジンルーム側の縁から下方へ延出する延出部25を有する。この延出部25にヒンジアーム30を取り付けるための穴23Hが形成されている。
【0036】
本実施形態の第1取付部21F,21Rと第2取付部22と穴23Hとは、第1実施形態と同様に、前側の第1取付部21Fの延長上に後側の第1取付部21Rが設けられ、さらに前後第1取付部21F,21Rの中間位置αを通る仮想水平線L2上に穴23Hが設けられ、この穴23Hより上方側に第2取付部22が設けられている。
【0037】
[第1実施形態の第2変形例]
本発明の第1実施形態の第2変形例に係るフロントフェンダパネル400(図2)のフランジ420には、ヒンジブラケット20の第2取付部22に形成された穴22Hに対応する穴400Hを有し、これらの穴22H,400Hを重ねてボルト81の軸81A(図2参照)よりも大きく形成されている。このように、穴400Hを大きく形成することで、ヒンジブラケット20に対するフロントフェンダパネル400の位置、つまり車両前後及び車両左右方向への位置を調整することができる。これにより、フード300とフェンダ400との見切り隙C(図2参照)をさらに、望ましい間隔に建付を調整することができる。
【0038】
[第2実施形態]
図9は本発明の第2実施形態に係るヒンジブラケット40の斜視図である。図10は本実施形態に係るヒンジブラケット40を利用したヒンジ構造1Aの概略断面図であり、図1のA−A線に沿った断面図に対応している。前述の実施形態と同じ構成には同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0039】
ヒンジブラケット40は、第1実施形態のヒンジブラケット20と同様に、一対の第1取付部21F,21Rと第2取付部22とを有するが、第1取付部21F,21Rと第2連結部22とを連結する連結部41の構成が第1実施形態と異なる。
【0040】
本実施形態の連結部41は、第1取付部21F,21Rにおけるエンジンルーム側の縁部にそれぞれ連結していると共に各第1取付部21F,21Rの縁部から下方へ延びる第1壁部41Aと、この第1壁部41Aの下端からエンジンルームR側へ向けて延びる底部41Bと、この底部41BのエンジンルームR側の縁部から上方へ立ち上がる第2壁部41Cとを有する。
第2壁部41Cの上縁の前後中間部からエンジンルームR側へ向けて延出するように、第2取付部22が設けられている。
さらに、第2壁部41Cには、前後の第1取付部21F,21Rの中間位置に対応した位置にヒンジアーム取付用の穴23Hが形成されている。図示するように、第2壁部41Cでは穴23周辺の領域、具体的に穴23Hの両側と上側とが一つの開口42で切り欠かれている。言い換えれば、第2壁部41Cは、ヒンジアーム支持用の第1凸片41Dと、この第1凸片41Dを囲うように門型に形成されたフェンダ支持用の第2凸片41Eとを有し、第1凸片41Dと第2凸片41Eとが直接繋がらないように構成されている。第1凸片41Dに穴23Hが設けられ、第2凸片41Eに第2取付部22が一体に形成されている。
【0041】
本実施形態の第1取付部21F,21Rと第2取付部22と穴23Hとは、第1実施形態と同様に、前側の第1取付部21Fの延長上に後側の第1取付部21Rが設けられ、さらに前後第1取付部21F,21Rの中間位置αを通る仮想水平線L2上に穴23Hが設けられ、この穴23Hより上方側に第2取付部22が設けられている。
【0042】
本実施形態によるヒンジブラケット40によれば、さらに、ヒンジアーム支持用の第1凸片41Dとこれを囲むように門型に形成されたフェンダ支持用の第2凸片41Eとが構造上分離しているから、例えばヒンジアーム30を支持する第1凸片41Dが変形しても、その変形の影響が第2凸片41Eへ伝達することを防止できる。
【0043】
[第3実施形態]
図11は本発明の第3実施形態の変形例に係るヒンジブラケット50の斜視図である。前述の実施形態と同じ構成には同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0044】
ヒンジブラケット50は、第1実施形態のヒンジブラケット20と同様に、一対の第1取付部21F,21Rと第2取付部とを有するが、第1取付部21F,21Rと第2取付部22とを連結する連結部51の構成と、第2取付部52の構成とにおいて前述の実施形態と異なる。
【0045】
本実施形態の連結部51は、前後の第1取付部21F,21RにおけるエンジンルームR側の縁部にそれぞれ連結し各第1取付部21F,21Rから上方へ延びる縦壁部として形成されている。
この連結部51は、前部と後部とにそれぞれ上縁部51E,51Fを有し、これらの上縁部51E,51Fの間から上方へ延びた延長部52をさらに有する。この延長部52の上縁から車幅方向外側へ延出するように第2取付部52が設けられている。
本実施形態の第2取付部52は、二つの取付面53,54を有するように形成されている。これは、本実施形態のヒンジブラケット50が左右各側のフードヒンジ構造で共用できるようにするためである。これに関連して、前後の各上縁51E,51Fには、フード300の過開きを防止するための、ヒンジアーム回転規制用の凸部55がそれぞれ設けられている。
さらに、本実施形態の連結部51では、その下側の前後方向の中間部が下方へ半円形状に膨出して形成されており、この膨出した部分の内側にヒンジアーム取付用の穴23Hが形成されている。
本実施形態のヒンジブラケット50は、前後方向の中間位置で上下に延びる仮想面を基準に前後対称に形成されている。
【0046】
本実施形態では、第1実施形態と同様に、前側の第1取付部21Fの延長上に後側の第1取付部21Rが設けられ、さらに前後の第1取付部21F,21Rの中間位置αを通る仮想水平線L2上に穴23Hが設けられ、この穴23Hより上方に第2取付部52が設けられている。
【0047】
本実施形態のヒンジブラケット50によれば、左右各側のフードヒンジ構造で利用できる。
【0048】
以上詳述したが、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において様々な形態で実施をすることができる。
【符号の説明】
【0049】
1,1A フードヒンジ構造
10 フードヒンジ
20,20A,40,50 ヒンジブラケット
21F, 21R 第1取付部
22 第2取付部
23H 第3取部付
30 ヒンジアーム
200 エプロンアッパーメンバー
300 フード
400 フロントフェンダパネル
R エンジンルーム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体へ固定されるヒンジブラケットと、上記ヒンジブラケットに回動可能に取り付けられたヒンジアームと、を備えたフードヒンジであって、
上記ヒンジブラケットは、車両前後方向に沿って車体の取付面に固定される一対の第1取付部と、フロントフェンダパネルが取り付けられる第2取付部と、上記ヒンジアームを取り付ける第3取付部と、を備え、
上記第3取付部は、一方の第1取付部と他方の第1取付部との中間位置を通る仮想線上に設けられ、
上記第2取付部は、上記第3の取付部の上側又は下側に設けられていることを特徴とする、フードヒンジ。
【請求項2】
車両前後方向に沿った前記第2取付部と前記第3取付部との間隔が前記一対の第1取付部の間隔の1/4以下に設定されていることを特徴とする、請求項1に記載のフードヒンジ。
【請求項3】
車両前側の前記第1取付部と前記第3取付部との間隔が前記一対の第1取付部の間隔の2/5〜3/5以下に設定されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のフードヒンジ。
【請求項4】
車体の取付面からの前記第3取付部の位置が前記一対の第1取付部の間隔の1/2以下に設定されていることを特徴とする、請求項1〜3の何れかに記載のフードヒンジ。
【請求項1】
車体へ固定されるヒンジブラケットと、上記ヒンジブラケットに回動可能に取り付けられたヒンジアームと、を備えたフードヒンジであって、
上記ヒンジブラケットは、車両前後方向に沿って車体の取付面に固定される一対の第1取付部と、フロントフェンダパネルが取り付けられる第2取付部と、上記ヒンジアームを取り付ける第3取付部と、を備え、
上記第3取付部は、一方の第1取付部と他方の第1取付部との中間位置を通る仮想線上に設けられ、
上記第2取付部は、上記第3の取付部の上側又は下側に設けられていることを特徴とする、フードヒンジ。
【請求項2】
車両前後方向に沿った前記第2取付部と前記第3取付部との間隔が前記一対の第1取付部の間隔の1/4以下に設定されていることを特徴とする、請求項1に記載のフードヒンジ。
【請求項3】
車両前側の前記第1取付部と前記第3取付部との間隔が前記一対の第1取付部の間隔の2/5〜3/5以下に設定されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のフードヒンジ。
【請求項4】
車体の取付面からの前記第3取付部の位置が前記一対の第1取付部の間隔の1/2以下に設定されていることを特徴とする、請求項1〜3の何れかに記載のフードヒンジ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−131434(P2012−131434A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286769(P2010−286769)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000157083)関東自動車工業株式会社 (1,164)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000157083)関東自動車工業株式会社 (1,164)
【Fターム(参考)】
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