説明

フードフレームを含む自動車前部

【課題】フードの周囲に車体部品を基準位置に合わすことができ、フェンダーの形状だけを変えることによって、様々なタイプの車両にフレームを再利用できる自動車前部を提供する。
【解決手段】本発明は、少なくとも閉鎖位置をとることができるフードの支持に適した自動車フードフレーム3を含む自動車前部に関し、前記フードフレームが、閉鎖位置でフード2の周辺に沿って延び、周囲の車体部品を基準位置に合わす点6を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フードフレーム(dormant de capot)を含む自動車前部と、このフードの周囲の車体部品を基準位置に合わすこととに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、エンジンフードは、エンジンが車両の前方にある場合、ヒンジと、エンジンルームの前端にあるロックのストライカ(gache de serrure)とによって、空の車体(caisse en blanc)に固定される。
【0003】
自動車前部では、フードは、その寸法が大きいために、幾何学的な不均衡が大きいことがあるので、車体部品は、一般的にフードに対して位置決めされる。従って、まずフードを配置してから、このフードに対してフェンダー(aile)を配置し、次いで光学機器(optique)を配置し、さらに、シールド(bouclier)や空気の取り入れ口すなわちフロントグリルを配置する。
【0004】
車体組立ラインでは、フードは、フロントドアのヒンジ(固定肘壺(charnon)の制御穴)を長手方向(方向X)の基準として組み付けられ、あるいはフェンダーとドアとの隙間(jeu)を基準として組みつけられる。この隙間は、ストッパ(butee)から構成されるか、または、同様に制御穴(trou pilote)を基準とみなすフードの支持手段により構成される。
【0005】
フードの垂直方向の位置決め(方向Z)は、空の車体に設けられた支点(appui)上に指標付けられる。
【0006】
フードの横方向の配置(方向Y)は、ヒンジの固定によって得られる。
【0007】
また、フェンダーは、以下の方向に従って基準位置に合わされる。
・ 長手方向X:同じ制御穴を用いる。
・ 垂直方向Z:調整が全くできない垂直ストッパをなす支持領域を用いる。
・ 横方向Y:制御穴か、フードに対する隙間の基準止め具か、それ自体が制御穴を基準とする手段を用いる。
【0008】
一定の車両では、さらに、衝突時に歩行者を保護する役割を果たす部品を、空の車体とフェンダーとの間に介在させる。
【特許文献1】仏国特許出願第8804070号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
いずれにせよ、フードは、車両の組立ラインでかなり早くから車両に組み付けることが必要である。
【0010】
フードの位置決めには、特に空の車体で支持される多数の基準点と境界とが必要であるが、空の車体は、その設計上、車両の前端に接近するにつれて形状差が大きくなる。
【0011】
しかも、フードの存在は、エンジンルームの内部へのアクセスが必要不可欠な、幾つかの固定作業または組立作業を実施するのに邪魔になることが分かっている。従って、何度もフードを開け閉めしなければならないが、これは望ましくない操作である。
【0012】
また、仏国特許出願第8804070号明細書から知られている自動車前部は、
・ 少なくとも一つの閉鎖位置をとることができるフードと、
・ フードの支持に適したフレームであって、このフレームが、閉鎖位置でフードの周辺に沿って延びる枠を含む、フレームと、
・ 2個のフェンダーおよび1個のバンパーとを含むフードを囲む複数の車体部品とを含むタイプである。
【0013】
この文献では、自動車のフレームとフェンダーとが一体部品を形成している。
【0014】
こうした一体部品は、その寸法が大きいために、特に製造が難しい。
【0015】
さらに、この文献に記載された自動車前部は、バンパー、フェンダー、およびフード間の従来のような自動車前部の分割に適さない。そのため、この文献に記載された自動車前部は、単一タイプの自動車に固有のものであり、新型車両の設計時には全面的な修正を要する。
【0016】
その上、この文献に記載された自動車前部は、必ずフードを開けて車両に取り付けなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明が目的とする自動車前部は、
・ 少なくとも一つの閉鎖位置をとることができるフードと、
・ フードの支持に適したフレームであって、閉鎖位置でフードの周辺に沿って延びる枠を含む、フレームと、
・ 2個のフェンダーおよび1個のバンパーを含む、フードを囲む複数の車体部品とを含むタイプであって、
フレームが、周囲の車体部品を基準位置に合わす点を含み、フレームが、フェンダーとバンパーとは別であることを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、フレームが、フェンダーとは別であるので、フェンダーの形状だけを変えることによって、様々なタイプの車両にフレームを再利用できる。実際、フレームは、車両前部を車両に組み付けると、フェンダーとフードとによって隠される部品である。フレームとフードとからなるアセンブリは、ライン外の部署で組立可能なモジュールを構成する。
【0019】
ライン外でのモジュールの組立は、測定用計器(gabarit)を用いて実施できる。
【0020】
フレームは、電気泳動による腐食防止処理の前または後に空の車体に組付可能である。
【0021】
フレームが電気泳動前の空の車体に組み付けられる場合で、フードがフレームと一体成形されている場合、フードは、着脱式の心出し機(centreur)により、基準位置Y、すなわち車両前部の中央点に合わされる。心出し機は、また、電気泳動の適切な状態に必要な開放位置にフードを保持できる。
【0022】
フレームが塗装後に組み付けられる場合も、ロックが、フードの基準Yを構成する。
【0023】
腐食防止処理後に空の車体に組み付けられるために、フレームで電気泳動が行われない場合、フレームは、空の車体にモジュールを取り付けるとエンジンルームを被覆するように構成されたエンジンカバー(cache)を含むことができる。
【0024】
このカバーは、装飾機能と遮断(isolation)機能とを兼ね備えた外皮(peau)から構成可能であり、カバーの適切な場所に専用の恒常的なアクセスすなわちハッチ(trappse)によって、エンジンのメンテナンス(タンクの充填、ゲージの出し入れ)を実施できる。
【0025】
カバーは、モジュールを備えた空の車体に到着するので、カバーを存在させて組み付けるにあたって、車両の組立ラインでの特別な操作は全く不要である。
【0026】
一方で、カバーは、エンジン修理の際に修理工により取り外し可能である。
【0027】
フレームは、塗装前または塗装後に空の車体に組み付け可能である。
【0028】
フレームが塗装後に組み付けられる場合、塗装の焼成は行われず、エンジンフードおよび/またはロックなどの付加的な部材を含むことができる。
【0029】
本発明による自動車前部の長所の一つは、衝突時、特に歩行者との衝突時に、空の車体の損傷を少なくできることにある。
【0030】
もう一つの別の長所は、フレームが、車両の外部スタイルと空の車体との間の境界を形成することにあり、これによって、車両構造を変えずにスタイル(「デザイン」と呼ばれることもある)を変化させられる。特に、共通の構造が、二つの異なる車両の基本構造の役割を果たすことができる。
【0031】
本発明によれば、フレームのみ、またはフードを備えたフレームを、車両にはめ込むことができるが、いずれの場合も、エンジンの開閉作業を何回もしなくてもすむ。何故なら、フェンダー、光学機器、フロントバンパーを位置決めするには、車両の車体にフレームがあるだけで十分だからである。
【0032】
(特定の実施形態)
・ フレームは、フードロックを固定可能な前方横部材(traverse avant)を含み、前記前方横部材が、フロントバンパーの外皮を基準位置に合わす役割を果たすことができる。
・ フレームは、前方横部材と、フェンダー支持体と、車体へフレームが組付られるとフロントガラスの基部に配置されるスカットル(auvent)とからなる構造枠である。このスカットルは、ワイパモータ、車室の換気回路のモータ、または車室の空調回路のコンプレッサ等の様々な機能部品を含むことができる。
・ フレームの各構成部品が、エアバッグまたは、衝突時に歩行者を保護するためのフードリフト(soulevement)機構を含むことができる。
・ 場合によっては、フードリフト機構またはエアバッグが、フレームにより機械および/または電子的に容易に結合可能なアクチュエータを含む。そのため、これらのアクチュエータが適切に動作しているかどうかについて、空の車体にモジュールを組み付ける前に検査できる。
・ 枠が、開放位置と閉鎖位置との間でフードを回転させるためのヒンジと、閉鎖位置にフードを保持するためのロックとを支持する。
【0033】
次に、本発明をいっそうよく理解するために、添付図面を参照しながら、本発明の範囲の限定的ではなく例として挙げられた実施形態について説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
図1は、フード2により上部が閉じられた自動車のエンジンルーム1の上部を示す。フードは、剛性の構造枠からなるフレーム3に組みつけられている。「構造」という用語は、枠が、フードと、場合によっては自動車の他の機能部品とを支持できることを意味する。
【0035】
枠3は、フードの後方に、エンジンルーム1から分離された区画をなすスカットルケース(cassette d’auvent)4(スカットルと示されることもある)を含み、この区画が、タンク(ウィンドウウォッシャー、ブレーキオイル)、バッテリー、ワイパモータ、あるいは空調回路のコンプレッサ等の機能部品(図示せず)を収容可能である。
【0036】
スカットルケースには、フードの操作ヒンジ10が設けられている。
【0037】
スカットルケース4の各端を起点として、2個の側方アーム5が、ほぼフードの周辺に沿ってフードを縁取っている。これらの側方アームにより、場合によっては追加される機能部品の固定に加えて、フェンダー等の周囲の車体部品をフードに対して基準位置に合わすことができる。こうした基準位置に合わすことは、側方アームに設けられた基準位置合わせ点6により、フードの有無や開閉にかかわらず実施できる。
【0038】
フード用のヒンジは、スカットルと側方アームとの交差点でフレームにより同様に支持される。
【0039】
さらに、枠は、フード2の前縁の下にある前方横部材7により閉じられ、閉鎖位置でフードの施錠ロック(serrure de verrouillage)8を支持し、また、場合によってはフードの閉鎖ストッパ9や、たとえばエンジンの冷却回路のラジエータなどの他の機能部品を支持する。前方横部材7は、フロントバンパー等の周囲の車体部品を基準位置に合わせることを可能にする。
【0040】
枠と、枠が含む部品と、フードとからなるアセンブリが、フードモジュールを構成する。
【0041】
好適には、フードモジュールは、車両の組立ラインの外で組み立てられ、ラインのできるだけ後段で車両にはめ込まれる。この場合、フードモジュールと同時に車両にはめ込まれる多数の機能部品とフード自体とを、フードモジュールに組み込むことができる。
【0042】
自動車にフードモジュールが組み立てられて車体部品が固定されると、フード2、フレーム3、フェンダー、およびバンパーを含む本発明による自動車前部が得られる。
【0043】
このモジュールの有利な別の用途は、衝突時に歩行者を保護する装置を側方アーム5に組み込むことからなる。
【0044】
もちろん、上記の実施形態は、本発明の範囲を少しも限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】自動車の前方フードモジュール領域の長手方向垂直面の断面図である。
【図2】図1のフードモジュールの上面図である。
【符号の説明】
【0046】
1 エンジンルーム
2 フード
3 フレーム
4 スカットルケース
5 側方アーム
6 位置基準合わせ点
7 前方横部材
8 施錠ロック
9 閉鎖ストッパ
10 操作ヒンジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの閉鎖位置をとることができるフード(2)と、
フード(2)の支持に適したフレームであって、該フレームが、閉鎖位置でフード(2)の周辺に沿って延びる枠を含む、フレームと、
2個のフェンダーおよび1個のバンパーを含むフードを囲む複数の車体部品とを含むタイプの自動車前部であって、
フレームが、周囲の車体部品を基準位置に合わす点(6)を含み、フレームが、フェンダーとバンパーとは別であることを特徴とする、自動車前部。
【請求項2】
フレームが、さらに、空の車体にフレームを取り付けると、エンジンルームを覆うように構成されたエンジンカバーを含む、請求項1に記載の自動車前部。
【請求項3】
エンジンカバーが、装飾機能と遮断機能とを兼ね備えた外皮から構成され、エンジンカバーの適切な場所に専用の恒常的なアクセスすなわちハッチによって、エンジンのメンテナンス(タンクの充填、ゲージの出し入れ)を実施可能にする、請求項2に記載の自動車前部。
【請求項4】
枠が、前方横部材を含み、該前方横部材にフードのためのロックが固定可能であり、前記前方横部材が、フロントバンパーの外皮を基準位置に合わす役割を果たすことができる、請求項1から3のいずれか一項に記載の自動車前部。
【請求項5】
枠が、前方横部材と、フェンダー支持体と、自動車の車体へフレームが組付けられるとフロントガラスの基部に配置されるスカットルとからなる構造枠である、請求項4に記載の自動車前部。
【請求項6】
フレームが、ワイパモータ、車室の換気回路のモータ、または車室の空調回路のコンプレッサ等の様々な機能部品を含む、請求項5に記載の自動車前部。
【請求項7】
フレームの各構成部品が、エアバッグまたは、衝突時に歩行者を保護するためのフードリフト機構を含むことができる、請求項1から6のいずれか一項に記載の自動車前部。
【請求項8】
フレームが、開放位置と閉鎖位置との間でフードを回転させるためのヒンジと、閉鎖位置にフードを保持するためのロックとを支持する、請求項1から7のいずれか一項に記載の自動車前部。
【請求項9】
枠(3)が、フロントガラスの基部に配置されたスカットルケース(4)を含み、該スカットルケースが、ワイパモータ、車室の空調回路のモータ、または車室の空調回路のコンプレッサ等の様々な機能部品を収容可能である、請求項1から8のいずれか一項に記載の自動車前部。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−168724(P2006−168724A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−358898(P2005−358898)
【出願日】平成17年12月13日(2005.12.13)
【出願人】(504037391)コンパニ・プラステイツク・オムニウム (11)
【Fターム(参考)】