ブイの電源システム

【課題】低温環境下においてもブイに備えられる機器に電源を長期間にわたり安定して供給することができるブイの電源システムを提供する。
【解決手段】水上に浮遊するブイ2に備えられた電源システムであって、水中に配置されて水との熱交換が可能な水素吸蔵合金容器7と、水素吸蔵合金容器7に収容され、水との熱交換によって水素を放出可能な水素吸蔵合金と、水素を燃料として発電する燃料電池3と、水素吸蔵合金容器7と燃料電池3との間に接続され、水素吸蔵合金容器7から放出される水素が燃料電池3の燃料として供給される水素供給路9と、を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川、湖、または海で水上に浮遊するブイに備えられた電源システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
河川、湖、または海で水上に浮遊するブイは、その目的に応じて、気象観測用機器、通信機器、航路標識灯などとしてのLED灯器などの機器が備えられている。このため、ブイには、これらの機器に電源を供給する電源システムが必要とされる。しかし、水上のブイの設置場所まで船舶を出航して電源システムの保守管理を行っていたのではコストがかかってしまう。このため、ブイの電源システムには、長期間にわたって保守管理が不要であることが求められている。
【0003】
これまで、ブイの電源システムとしては、太陽電池と鉛蓄電池などの蓄電池とを組み合わせたものや、リチウムイオン電池などの二次電池を定期的に交換するものが用いられている。
また、燃料電池は、発電効率が高いため、長期間の電力の供給が必要とされる機器の電源として適しており、ブイの電源システムとして燃料電池を用いたものが提案されている(例えば特許文献1参照)。特許文献1には、観測用ブイなどの海洋浮体において、電力源としての燃料電池と、燃料電池へ燃料ガスを供給するための燃料ガスボンベと、燃料電池へ酸素ガスを供給するための酸素ガスボンベとを備え、燃料ガスボンベおよび酸素ガスボンベが海洋浮体における浮体構造の少なくとも一部を構成している海洋浮体構造が記載されている。
また、これらのほか、風力発電や波力発電による電源システムの利用も検討されているが、実用化されるには至っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−100990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のブイの電源システムには、以下に述べるような問題が存在している。
まず、太陽電池を用いた従来のブイの電源システムの場合、機器の消費電力が大きくなると、サイズの大きなソーラーパネルが必要となり、その結果、電源システムが大型化することになる。また、沿岸海域に設置した場合には、鳥の糞害などによってソーラーパネルが汚損して発電効率が低下することがある。さらに、悪天候が続いたときには、発電量が不足して蓄電池を十分に充電することができなくなり、ブイに備えられた機器からの通信が途絶えるなどのおそれもある。
また、リチウムイオン電池などの二次電池を用いた従来のブイの電源システムの場合、定期的な電池交換を要し、その都度水上のブイの設置場所まで船舶を出航して保守管理を行う必要があるため、コストがかかるという課題がある。
【0006】
また、燃料電池を用いた従来の電源システムの場合、燃料となる水素供給源として水素放出圧が低圧の水素吸蔵合金容器を用いると、外気温に左右されることなく燃料電池に水素を安定して供給することが困難であるという問題がある。特に、北海道などの寒冷地では、気温がマイナスにもなるため、この問題が著しい。
水素吸蔵合金容器に収容された水素吸蔵合金が水素を放出する際には、吸熱反応により水素吸蔵合金の温度が低下し、そのままでは水素吸蔵合金容器の内部圧力が低下して水素を放出することができなくなる。このため、燃料電池に水素を供給するためには、水素吸蔵合金容器を外部から加熱する必要がある。しかしながら、日本国内の通年の外気温の範囲はマイナス30℃からプラス35℃以上と幅広いため、外気との熱交換により水素吸蔵合金容器を安定的に加熱することは難しく、効果的な熱交換も容易ではない。
【0007】
また、日本国内で通常市販されている水素吸蔵合金容器は、高圧ガス保安法による規制を受けないように、1MPa未満の内部圧力で使用されている。高圧ガス保安法は、温度35℃において圧力が1MPa以上となる圧縮ガスなどを高圧ガスとし、高圧ガスの取り扱いなどを規制している。このため、通常市販されている水素吸蔵合金容器に収容される通常の水素吸蔵合金の合金特性は、35℃で水素を満充填することができるとともに、温度35℃での水素放出過程における平衡水素圧−組成等温線のプラトー領域における平衡水素圧が1MPa未満となる合金特性とされている。
しかしながら、通常の水素吸蔵合金は、冬期のマイナスの気温では水素を十分な圧力で放出することが困難な水素放出特性を有している。このため、通常の水素吸蔵合金を低温環境下においてそのまま水素供給源として使用することは困難であると考えられる。
【0008】
また、特許文献1に記載される電源システムのように、海洋浮体における浮体構造の少なくとも一部を燃料ガスボンベなどで構成していたのでは、浮体構造の大型化を回避することは困難であると考えられる。また、燃料ガスボンベの交換などのため、定期的な保守管理が必要となる。
【0009】
また、低温環境下において水素吸蔵合金容器の水素放出を可能とする方法として、一般的に、水素の供給先である燃料電池の排熱を水素吸蔵合金容器の加熱に利用する方法が知られている。しかしながら、航路標識灯に用いられるLED灯器などのように低消費電力の機器は、消費電力が数ワット程度である。このように低消費電力の機器に電力を供給する低出力の燃料電池の排熱では、水素吸蔵合金容器を加熱するのには不十分である。
【0010】
本発明の目的は、低温環境下においてもブイに備えられる機器に電源を長期間にわたり安定して供給することができるブイの電源システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、本発明のブイの電源システムのうち、第1の本発明は、河川、湖、または海で水上に浮遊するブイに備えられた電源システムであって、水中に配置されて前記水との熱交換が可能な水素吸蔵合金容器と、前記水素吸蔵合金容器に収容され、前記水との熱交換によって水素を放出可能な水素吸蔵合金と、水素を燃料として発電する燃料電池と、前記水素吸蔵合金容器と前記燃料電池との間に接続され、前記水素吸蔵合金容器から放出される水素が前記燃料電池の燃料として供給される水素供給路と、を有することを特徴とする。
【0012】
第2の本発明のブイの電源システムは、前記第1の本発明において、前記水素吸蔵合金は、温度0℃での水素放出過程における平衡水素圧−組成等温線のプラトー領域中心における平衡水素圧が0.15〜0.25MPaである水素放出特性を有することを特徴とする。
【0013】
第3の本発明のブイの電源システムは、前記第1または第2の本発明において、前記ブイは、前記水上に浮遊するブイ本体部と、前記ブイ本体部の下部に前記水中に位置するように設けられた水中部とを有し、前記水素吸蔵合金容器は、前記水中部に設置されていることを特徴とする。
【0014】
第4の本発明のブイの電源システムは、前記第1〜第3の本発明のいずれかにおいて、前記燃料電池は、水面下に位置するように前記ブイに設置されていることを特徴とする。
【0015】
第5の本発明のブイの電源システムは、前記第1〜第4の本発明のいずれかにおいて、前記ブイに備えられ、太陽光、風力、または波力により発電する第2の発電装置を有することを特徴とする。
【0016】
第6の本発明のブイの電源システムは、前記第1〜第5の本発明のいずれかにおいて、当該電源システムで発電された電気を蓄電する蓄電池が備えられていることを特徴とする。
【0017】
第7の本発明のブイの電源システムは、前記第1〜第6の本発明のいずれかにおいて、当該電源システムの状態を検知する状態検知部と、該状態検知部の検知結果を外部に出力する通信部とを備えることを特徴とする。
【0018】
第8の本発明のブイの電源システムは、前記第7の本発明において、前記ブイから離間した地点に設置され、前記検知結果を受信して前記検知結果に基づき当該電源システムの状態を監視する監視部とを有することを特徴とする。
【0019】
第9の本発明のブイの電源システムは、前記第7または第8の本発明において、前記状態検知部は、前記水素吸蔵合金が吸蔵していた初期水素吸蔵量と、前記燃料電池が発電した累積電気量とに基づき、前記水素吸蔵合金が放出可能な水素残量を検知するものであり、前記通信部は、前記検知結果として前記水素残量を示す水素残量信号を外部に出力するものであることを特徴とする。
【0020】
すなわち、本発明によれば、燃料電池に燃料として水素を供給する水素吸蔵合金容器が水中に配置されて水との熱交換が可能になっているので、低温環境下においても高い伝熱効率で水素吸蔵合金容器に水から熱を伝えることができる。これにより、水素吸蔵合金容器に収容される水素吸蔵合金が水素を放出する際の吸熱反応による水素吸蔵合金の温度の低下を抑制して、水素吸蔵合金の温度と水温との温度差を小さく維持することができる。その結果、水素吸蔵合金が水素を安定して放出することができ、燃料電池による発電を確実に行うことができる。したがって、本発明によれば、低温環境下においてもブイに備えられる機器に電源を長期間にわたり安定して供給することができる。
【0021】
水素吸蔵合金容器に収容される水素吸蔵合金は、特定の種類のものに限定されるものではなく、例えばAB系、AB系など、あらゆる種類のものを用いることができる。中でも、以下に述べる水素放出特性の観点からは、AB系合金(LaNiなどのLaNi系合金、MmNiなどのMmNi系合金など)、TiZrCrFe系合金などを好ましく用いることができる。なお、Mmは、希土類金属の複数種からなるミッシュメタルを示すものである。
【0022】
水素吸蔵合金は、以下に述べる水素放出特性を有するものが望ましい。
すなわち、まず、水素吸蔵合金は、温度0℃での水素放出過程における平衡水素圧−組成等温線のプラトー領域中心における平衡水素圧が0.15〜0.25MPaである水素放出特性を有するものとすることができる。このように低温でも燃料電池への水素供給に十分な平衡水素圧を示す水素放出特性を有することにより、低温の水中に水素吸蔵合金容器が配置される場合でも、燃料電池へ供給するのに十分な水素圧力を確保することができ、燃料電池による発電を確実に行うことができる。
また、水素吸蔵合金は、温度25℃での水素放出過程における平衡水素圧−組成等温線のプラトー領域中心おける平衡水素圧が0.6〜0.8MPaである水素放出特性を有するものとすることもできる。このように25℃での平衡水素圧が1MPa以下となる水素放出特性を有することにより、25℃以下の運用温度において高圧ガス保安法による規制を受けることなく水素吸蔵合金容器を使用することができる。なお、水素吸蔵合金は、35℃においても平衡水素圧が1MPaを超えない水素放出特性を有するものとすることができ、この場合、より確実に高圧ガス保安法による規制を受けないものとすることができる。
【0023】
ブイは、河川、湖、または海で使用されるものであり、その使用水域が限定されるものではないが、例えば日本近海で使用することができる。
図5および図6は、それぞれ3月上旬(1−10日)および9月上旬(1−10日)の日本近海の水深50mにおける平均水温を示す表層水温分布図である。なお、図5および図6は、それぞれ気象庁ホームページに掲載される気象統計情報における「日本近海旬平均表層水温」(URL:http://www.data.kishou.go.jp/kaiyou/db/kaikyo/jun/t100_jp.html)から引用したものである。
【0024】
図5に示すように、北海道の冬期の海水温度は、3月上旬で0℃程度である。このように比較的低温の海水中に水素吸蔵合金容器が配置された場合であっても、上記のように、水素吸蔵合金が、温度0℃での水素放出過程における平衡水素圧−組成等温線のプラトー領域中心における平衡水素圧が0.15〜0.25MPaである水素放出特性を有することにより、燃料電池へ供給するのに十分な水素圧力を確保することができる。なお、北海道の冬期の海水温度は、実際には−2〜−1℃となると考えられるが、前記水素放出特性を有すれば、このように低温の場合にも燃料電池へ供給するのに十分な水素圧力を確保することができる。
【0025】
他方、図6に示すように、日本近海で最も温度が高いとされる沖縄の海水温度は、9月上旬で25℃程度である。このように比較的高温の海水中に水素吸蔵合金容器が配置された場合であっても、上記のように、水素吸蔵合金が、温度25℃での水素放出過程における平衡水素圧−組成等温線のプラトー領域中心おける平衡水素圧が0.6〜0.8MPaである水素放出特性を有することにより、水素吸蔵合金容器の内部圧力が1MPaを超えることがない。したがって、高圧ガス保安法による規制を受けることなく、水素吸蔵合金容器を使用することができる。
【0026】
また、水素吸蔵合金容器は、河川、湖、または海における水中に種々の態様で配置することができる。例えば、ブイが、水上に浮遊するブイ本体部とブイ本体部の下部に水中に位置するように設けられた支柱部などの水中部とを有する場合、水素吸蔵合金容器は、ブイの水中部に設置して水中に配置することができる。また、水素吸蔵合金容器は、ワイヤーなどによりブイから水中に吊り下げて配置することもできる。
水中に配置された水素吸蔵合金容器は、水中において波や水流などにより揺れ動かされることにより水の対流熱伝達が起こる。特に水上に浮遊するブイ本体と水中部とを固定して一体化することで、ブイ本体が波で揺れる際に、水中部に設けた水素吸蔵合金容器が連動して揺動することで水と水素吸蔵合金容器との接触が促進される。このため、空気による伝熱の場合と比較して10倍以上、水の自然対流伝熱の場合と比較して2倍以上の高い伝熱効率で水から熱が伝わる。なお、水素吸蔵合金の波による効果的な揺動を得るためには、水素吸蔵合金容器の上端位置の深さが0.5m以上であるのが望ましい。ただし、余りに深い位置にあると、揺動が抑制されるので、50m以下が望ましい。
【0027】
さらに、水素吸蔵合金容器は、水中に配置されるものであるため、水上に浮遊するブイに直接設置される場合と比較してスペース的な制約が小さい。このため、ブイに備えられる機器に必要とされる燃料電池の出力に応じて、水素吸蔵合金容器の容量を適宜選択して用いることができる。したがって、ブイに備えられる機器の消費電力が大きく、高出力の燃料電池を用いる場合であっても、容量の大きな水素吸蔵合金容器を用いることにより容易に対応することができる。
【0028】
燃料電池は、特定のタイプのものに限定されるものではなく、水素吸蔵合金容器から放出される水素を燃料として発電するものであれば、固体高分子形、リン酸形などの種々のタイプのものを用いることができる。
また、燃料電池と水素吸蔵合金容器との間に接続される水素供給路は、水素吸蔵合金容器が配置される水中の状態などに応じて材質や構造を適宜選択して構成することができる。水素供給路は、例えば、金属製の配管、テフロン(登録商標)製のチューブなどにより構成することができる。
【0029】
また、燃料電池は、水面下に位置するようにブイに設置することができる。水面下に位置するように燃料電池をブイに設置することにより、燃料電池に対する外気温の影響を低減して燃料電池を安定して動作させることができる。
また、燃料電池のほか、ブイに備えられる通信部、制御装置などのその他の機器も、水面下に位置するようにブイに設置することができ、これにより機器に対する外気温の影響を低減して機器を安定して動作させることができる。上記燃料電池やその他の機器は、海水に直接接触しない密閉ケースに収めるのが望ましい。
【0030】
また、ブイには、燃料電池に加えて、太陽光、風力、または波力により発電する他の発電装置を設けることができる。燃料電池と他の発電装置とを併用することにより、電源システムの連続稼働期間を長期間のものとすることができるとともに、電源システムを小型化することができる。例えば、他の発電装置として既存の太陽光発電装置を燃料電池と組み合わせることにより、燃料電池を単独で用いた場合と比較して電源システムの連続稼働期間を例えば2倍以上に長くすることができ、また、既存の太陽光発電装置を単独で用いた場合と比較して電源システムのサイズを例えば1/2以下に小さくすることができる。他の発電装置は1種の他、2種以上であってもよい。
【0031】
また、電源システムは、当該電源システムで発電された電気を蓄電する蓄電池を備えることもできる。蓄電池を備えることにより、ブイに備えられた機器の電力消費状況などに応じて、電源システムで発電された電気を蓄電池に適宜蓄電することができ、高効率の電源供給を実現することができる。
【0032】
また、電源システムは、当該電源システムの状態を検知する状態検知部と、該状態検知部の検知結果を外部に出力する通信部とを備えることもできる。これら状態検知部と通信部とを備えることにより、外部から電源システムの状態を監視することが可能になり、電源システムの状態に応じて保守管理を適切に行うことが可能になる。
状態検知部と通信部とを備える電源システムは、通信部により出力される状態検知部の検知結果を受信して検知結果に基づき当該電源システムの状態を監視する監視部を備えることができる。監視部は、電源システムが備えられるブイから離間した地点に設置することができ、例えば、陸上の施設、車両、船舶などに設置することができる。
【0033】
状態検知部は、電源システムの状態として、電源システムの各部の状態を検知するように構成することができる。
例えば、状態検知部は、水素吸蔵合金が吸蔵していた初期水素吸蔵量と、燃料電池が発電した累積電気量とに基づき、水素吸蔵合金が放出可能な水素残量を検知するように構成することができる。この場合、通信部は、状態検知部により検知された水素残量を示す水素残量信号を外部に出力する。
【発明の効果】
【0034】
以上のとおり、本発明によれば、河川、湖、または海で水上に浮遊するブイに備えられた電源システムであって、水中に配置されて前記水との熱交換が可能な水素吸蔵合金容器と、前記水素吸蔵合金容器に収容され、前記水との熱交換によって水素を放出可能な水素吸蔵合金と、水素を燃料として発電する燃料電池と、前記水素吸蔵合金容器と前記燃料電池との間に接続され、前記水素吸蔵合金容器から放出される水素が前記燃料電池の燃料として供給される水素供給路と、を有するので、低温環境下においてもブイに備えられる機器に電源を長期間にわたり安定して供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施形態のブイの電源システムを示す概略図である。
【図2】同じく、ブイの電源システムの制御構成を示すブロック図である。
【図3】同じく、ブイの電源システムにおける水素吸蔵合金容器に収容される水素吸蔵合金の水素吸蔵過程および水素放出過程における平衡水素圧−組成等温線の一例を示す図である。
【図4】通常使用されている水素吸蔵合金容器に収容される水素吸蔵合金の水素吸蔵過程および水素放出過程における平衡水素圧−組成等温線の一例を示す図である。
【図5】3月上旬の日本近海の水深50mにおける平均水温を示す表層水温分布図である。
【図6】9月上旬の日本近海の水深50mにおける平均水温を示す表層水温分布図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明の一実施形態のブイの電源システムを図1〜図4に基づいて説明する。
本実施形態のブイの電源システムは、海で水上に浮遊するブイ2に備えられたものである。ブイ2は、定位置に留まることなく漂流する漂流型のブイであっても、シンカーなどにより定位置に係留される係留型のブイであってもよい。
【0037】
ブイ2は、水上に浮遊するブイ本体部2aと、ブイ本体部2aの下部に、水中に位置するように設けられた支柱部2bと、ブイ本体部2aの上部に突設されたやぐら部2cとを有している。支柱部2bは、本発明の水中部に相当する。
【0038】
ブイ本体部2aは、密閉されたケース形状を有しており、外部からの海水の浸入が防止されている。ブイ本体部2aの内部には、後述の水素吸蔵合金容器7から供給される水素を燃料として発電を行う燃料電池3が設置されている。また、ブイ本体部2aの内部には、蓄電池4が設置されており、燃料電池3および後述の太陽光発電装置11により発電された電気が蓄電池4に適宜蓄電されるように構成されている。さらに、ブイ本体部2aの内部には、各種通信を行う通信部5と、ブイ2に備えられた機器および電源システムの制御を行う制御装置6とが設置されている。
【0039】
すなわち、制御装置6に燃料電池3と蓄電池4とがそれぞれ制御可能に接続され、燃料電池3と蓄電池4とは、燃料電池3の発電電気を蓄電池4に充電できるように接続されている。なお、該充電も前記制御装置6によって制御される。また、制御装置6に前記通信部5が制御可能に接続され、外部との通信が可能になっている。
制御装置6は、例えばCPUとこれを動作させるプログラムを主にして構成することができる。
燃料電池3、蓄電池4、通信部5、および制御装置6は、ブイの本体部2aの内部において海1の海面下に位置するように設置されている。海面下に位置するように設置することで、外気温の影響を低減して燃料電池3、蓄電池4、通信部5、および制御装置6を動作させることができる。
【0040】
支柱部2bの下端部には、支持台2dが設けられている。支持台2d上には、水素吸蔵合金容器7が搭載されている。支持台2dに搭載された水素吸蔵合金容器7は、固定バンドや鎖などの固定具8により支柱部2bに固定されている。水素吸蔵合金容器7は、上端位置が例えば水深0.5〜50mに位置している。
【0041】
水素吸蔵合金容器7としては、例えば、株式会社日本製鋼所製の水素吸蔵合金キャニスターMHCh−800Lに水素吸蔵合金が充填されたものが用いられている。水素吸蔵合金としては、例えばMmNi系合金が用いられている。MmNi系合金としては、例えば、Mm(0.5+α)La(0.5−α)Ni4.4Mn0.1Co0.5(ただし、0.01≦α≦0.17)を挙げることができる。水素吸蔵合金は、水素を吸蔵した状態で用意され、水素吸蔵合金容器7に収納されて、支柱部2bに設置される。該水素吸蔵合金は、例えば、温度0℃での水素放出過程における平衡水素圧−組成等温線のプラトー領域中心における平衡水素圧が0.15〜0.25MPaであり、温度25℃での水素放出過程における平衡水素圧−組成等温線のプラトー領域中心おける平衡水素圧が0.6〜0.8MPaである水素放出特性を有している。
【0042】
水素吸蔵合金容器7と燃料電池3との間には、水素吸蔵合金容器7から放出される水素が燃料電池3の燃料として供給される水素供給路9が接続されている。水素供給路9は、金属製の配管やテフロン(登録商標)製のチューブにより構成されており、燃料電池3への水素の供給は、図示しない開閉弁などを用いて制御装置6で制御される。
【0043】
やぐら部2cの上部には、航路標識灯などとなるLED灯器10が設けられている。また、LED灯器10よりも上方のやぐら部2cの最頂部には、ソーラーパネルにより太陽光を受けて発電する太陽光発電装置11が設けられている。また、やぐら部2cには、通信部5のアンテナ5aが上空に向けて設けられており、前記通信部5が電気的に接続されている。
【0044】
図2に示すように、制御装置6は、燃料電池3により発電された電気、蓄電池4に蓄えられた電気、および太陽光発電装置11により発電された電気を、通信部5、制御装置6、LED灯器10などの負荷に供給する制御を行う。
また、制御装置6は、電源システムの状態を検知する本発明の状態検知部に相当し、水素吸蔵合金容器7に充填された水素吸蔵合金が放出可能な水素残量を検知するとともに、燃料電池3の出力電圧を検知するように構成されている。通信部5は、本発明の通信部に相当し、制御装置6により検知されたこれらの検知結果を外部に出力するように構成されている。
ブイ2から離間した例えば陸上の施設などには、通信部5により外部に出力された制御装置6の検知結果を受信する監視部(不図示)が設置されている。監視部は、受信した検知結果に基づき電源システムの状態を監視するように構成されている。
【0045】
次に、上記ブイの電源システムの動作について説明する。
海1で水上に浮遊するブイ2は、波などにより上下方向や横方向に動かされる。この結果、水中の支柱部2bに固定された水素吸蔵合金容器7が揺り動かされて、水中での海流に加えて水の対流熱伝達が効果的になされる。これにより、水素吸蔵合金容器7には、海1の水から高い伝熱効率で熱が伝わる。
【0046】
水素吸蔵合金容器7に海1の水から高い伝熱効率で熱が伝わることで、水素吸蔵合金容器7内の水素吸蔵合金から吸蔵していた水素が放出され、燃料電池3に水素を安定供給することができる。
【0047】
図3は、本実施形態のブイの電源システムにおける水素吸蔵合金容器に収容される水素吸蔵合金の一つであるMm(0.5+α)La(0.5−α)Ni4.4Mn0.1Co0.5(ただし、0.01≦α≦0.17)の温度0℃および25℃での水素吸蔵過程および水素放出過程における平衡水素圧−組成等温線を示している。なお、図中、実線は水素吸蔵過程における平衡水素圧−組成等温線を示し、破線は水素放出過程における平衡水素圧−組成等温線を示している。
図3に示す水素吸蔵合金のように、本実施形態における水素吸蔵合金は、温度0℃での水素放出過程における平衡水素圧−組成等温線のプラトー領域中心における平衡水素圧が0.15〜0.25MPaである水素放出特性を有している。このため、例えば北海道などの比較的低温の海域にブイ2が設置された場合であっても、燃料電池3へ供給するのに十分な水素圧力を確保することができる。
また、本実施形態における水素吸蔵合金は、温度25℃での水素放出過程における平衡水素圧−組成等温線のプラトー領域中心おける平衡水素圧が0.6〜0.8MPaである水素放出特性を有している。このため、例えば沖縄などの比較的高温の海域にブイ2が設置された場合であっても、海水温度が25℃を超えることはなく、水素吸蔵合金容器7の内部圧力が1MPaを超えることがない。したがって、高圧ガス保安法による規制を受けることなく、水素吸蔵合金容器7を使用することができる。
【0048】
他方、図4は、水素吸蔵合金容器に収容される、通常市販されているMmNi系水素吸蔵合金の一つであるMm0.5La0.5Ni4.4Mn0.1Co0.5の温度0℃および35℃での水素吸蔵過程および水素放出過程における平衡水素圧−組成等温線を示している。なお、図中、実線は水素吸蔵過程における平衡水素圧−組成等温線を示し、破線は水素放出過程における平衡水素圧−組成等温線を示している。
上記Mm0.5La0.5Ni4.4Mn0.1Co0.5の温度35℃での水素放出過程における平衡水素圧−組成等温線では、プラトー領域における平衡水素圧が1MPa未満となっている。このため、通常市販されている水素吸蔵合金容器は、高圧ガス保安法による規制を受けることなく使用することが可能になっている。
また、温度0℃での水素放出過程における平衡水素圧−組成等温線では、プラトー領域における平衡水素圧が大気圧よりも高くなっている。しかしながら、燃料電池に供給する水素の圧力は0.15MPa以上であることが必要であるため、このような水素放出特性では、冬期のマイナスの気温では、水素吸蔵合金が水素を十分な圧力で放出することは困難である。さらには、水素吸蔵合金容器は、空気との熱交換では伝熱効率が低いため、気温が約10℃以下であると水素の供給が困難になる。
【0049】
水素吸蔵合金容器7内に収容され、上記図3に示すような水素放出特性を有する水素吸蔵合金から放出された水素は、水素供給路9を通して燃料電池3に供給される。燃料電池3は、供給された水素と、空気中から取り込んだ酸素とにより発電する。
なお、水素吸蔵合金としては、温度0℃での水素放出過程における平衡水素圧−組成等温線のプラトー領域中心における平衡水素圧が0.15〜0.25MPaである、図3に示すような平衡水素圧−組成等温線を示すものであれば、本願発明に好適に使用することができる。
【0050】
他方、やぐら部2cの最頂部に設けられた太陽光発電装置11は、ソーラーパネルに太陽光を受けて発電する。
燃料電池3で発電された電気は、制御装置6に電源として供給され、また、制御装置6による制御を受けて、通信部5やLED灯器10に電源として供給される。例えば、消費電力2Wの通信部5に燃料電池3から電源を供給する場合、約2年間連続稼働させることができる。また、燃料電池3で発電された電気は、必要に応じて蓄電池4に蓄電される。
また、太陽光発電装置11で発電された電気は、インバーター11aによる直流交流変換を経た後、制御装置6による制御を受けて、通信部5やLED灯器10に電源として供給される。この際に直流化することができる。また、太陽光発電装置11で発電された電気は、必要に応じて蓄電池4に蓄電することができ、一旦蓄電池4に蓄電した後、負荷に供給するようにしてもよい。
また、蓄電池4に蓄電された電気は、制御装置6による制御を受けて、通信部5やLED灯器10に供給される。
【0051】
上記のように燃料電池3や太陽光発電装置11による発電などが行われて電源システムが稼働している間、制御装置6は、電源システムの状態を検知する。具体的には、制御装置6は、水素吸蔵合金容器7の水素吸蔵合金が吸蔵していた初期水素吸蔵量と、燃料電池3が発電した累積電力量とに基づき、水素吸蔵合金容器7の水素吸蔵合金が放出可能な水素残量を検知する。また、制御装置6は、燃料電池3の出力電圧、負荷電流を検知する。
【0052】
通信部5は、上記制御装置6による検知結果として、水素吸蔵合金が放出可能な水素残量を示す水素残量信号と、燃料電池3の出力を示す出力信号とをアンテナ5aを介して外部に出力する。
通信部5から出力された上記検知結果は、例えば陸上の施設に設置された監視部により受信されて電源システムの状態が監視される。監視部による監視結果に基づき、水素吸蔵合金容器7における水素残量が僅かになった場合には水素吸蔵合金容器7を交換したり、燃料電池3の出力電圧が低下した場合には燃料電池3の点検を行うなどの保守管理が行われる。
【0053】
なお、上記実施形態では、燃料電池3とともに太陽光発電装置11がブイ2に備えられているものを説明したが、太陽光発電装置11に代えて、風力発電装置や波力発電装置が備えられていてもよいし、これら発電装置の2種以上が備えられていてもよい。
【0054】
また、上記実施形態では、ブイ2には、電源を必要とするものとしてLED灯器10、通信部5が備えられていたが、そのほか、気象観測用の機器などが備えられていてもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、ブイ2が海1に設置されていたが、海に限らず、河川、湖などにブイを設置することもできる。
【0056】
以上、本発明について上記実施形態に基づいて説明を行ったが、本発明は上記実施形態の内容に限定されるものではなく、適宜の変更が可能である。
【符号の説明】
【0057】
1 海
2 ブイ
2a ブイ本体部
2b 支柱部
3 燃料電池
4 蓄電池
5 通信部
6 制御装置
7 水素吸蔵合金容器
9 水素供給路
10 LED灯器
11 太陽光発電装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
河川、湖、または海で水上に浮遊するブイに備えられた電源システムであって、
水中に配置されて前記水との熱交換が可能な水素吸蔵合金容器と、
前記水素吸蔵合金容器に収容され、前記水との熱交換によって水素を放出可能な水素吸蔵合金と、
水素を燃料として発電する燃料電池と、
前記水素吸蔵合金容器と前記燃料電池との間に接続され、前記水素吸蔵合金容器から放出される水素が前記燃料電池の燃料として供給される水素供給路と、を有することを特徴とするブイの電源システム。
【請求項2】
前記水素吸蔵合金は、温度0℃での水素放出過程における平衡水素圧−組成等温線のプラトー領域中心における平衡水素圧が0.15〜0.25MPaである水素放出特性を有することを特徴とする請求項1記載のブイの電源システム。
【請求項3】
前記ブイは、前記水上に浮遊するブイ本体部と、前記ブイ本体部の下部に前記水中に位置するように設けられた水中部とを有し、
前記水素吸蔵合金容器は、前記水中部に設置されていることを特徴とする請求項1または2に記載のブイの電源システム。
【請求項4】
前記燃料電池は、水面下に位置するように前記ブイに設置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のブイの電源システム。
【請求項5】
前記ブイに備えられ、太陽光、風力、または波力により発電する第2の発電装置を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のブイの電源システム。
【請求項6】
当該電源システムで発電された電気を蓄電する蓄電池が備えられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のブイの電源システム。
【請求項7】
当該電源システムの状態を検知する状態検知部と、該状態検知部の検知結果を外部に出力する通信部とを備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のブイの電源システム。
【請求項8】
前記ブイから離間した地点に設置され、前記検知結果を受信して前記検知結果に基づき当該電源システムの状態を監視する監視部とを有することを特徴とする請求項7記載のブイの電源システム。
【請求項9】
前記状態検知部は、前記水素吸蔵合金が吸蔵していた初期水素吸蔵量と、前記燃料電池が発電した累積電気量とに基づき、前記水素吸蔵合金が放出可能な水素残量を検知するものであり、
前記通信部は、前記検知結果として前記水素残量を示す水素残量信号を外部に出力するものであることを特徴とする請求項7または8に記載のブイの電源システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−95273(P2013−95273A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240041(P2011−240041)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(000004215)株式会社日本製鋼所 (840)
【Fターム(参考)】