ブタサーコウイルスおよびパルボウイルスワクチン
【課題】PMWS症候群(ブタ多機能萎縮症候群、離乳後多機能萎縮症候群ともいわれる)に対するワクチンを提供。
【解決手段】互いに独立して無毒化した生の全抗原、不活性化した生の全抗原、サブユニット抗原、組み換え生ベクターおよびDNAベクターから成る群の中から選択された、ブタサーコウイルス抗原およびブタパルボウイルス抗原を含ブタ多機能性萎縮症候群(PMWS)に対する抗原性製剤およびワクチンと個別包装したワクチン接種キット。
【解決手段】互いに独立して無毒化した生の全抗原、不活性化した生の全抗原、サブユニット抗原、組み換え生ベクターおよびDNAベクターから成る群の中から選択された、ブタサーコウイルス抗原およびブタパルボウイルス抗原を含ブタ多機能性萎縮症候群(PMWS)に対する抗原性製剤およびワクチンと個別包装したワクチン接種キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PMWS症候群(ブタ多機能萎縮症候群:Porcine Multisystemic Wasting Syndrome)(離乳後多機能萎縮症候群:Post-weaning Multisystemic Wasting Syndromeともいわれる)に対するワクチンに関するものである。
以下では各種文献を引用し、各種文献を参照するが、これらの文献の全てを実際に本発明に関する従来例であると認めらたものではない。本明細書に引用した全ての文献およびそれらで引用された全ての文献の内容は本明細書の一部を成す。
【背景技術】
【0002】
PCV(ブタサーコウイルス、procine circoviridae)はブタ腎臓細胞株PK/15中に無毒病原性汚染物質として最初に見い出された。このウイルスPCVはチキン貧血症ウイルス(CAV、Chicken Anaemia Virus)および嘴・羽症候群ウイルス(PBFDV、Pscittacine Beak and Feather Disease Virus)とともにサーコウイルス群(Circoviridae)に分類された。これらのウイルスはエンベロプのない小さなウイルス(15〜24nm)で、その共通な特徴は1.76〜2.31kbの環状一本鎖のDNAからなるゲノムを含む点にある。このゲノムは約30kDaのポリペプチドをコード化すると考えられていた(非特許文献1)が、最近の研究でさらに複雑な転写がわかってきた(非特許文献2)。しかも、上記3種類のサーコウイルス(circovirus)はそのヌクレオチド配列に有意な相同性はなく、また、共通の抗原決定基もない。
【0003】
上記PK/15細胞由来のPCVは病原性ではないと考えられる。この配列は非特許文献3が明らかにしている。PCV株が病原性で、PMWS症候群と関連があるかもしれないと考えられるようになったのはほんの最近のことである(非特許文献4および非特許文献5)。Nayer達はPCR法を用いてPMWS症候群を示すブタ中にPCVのDNAを見い出した。
【0004】
カナダ、米国およびフランスで見られるPMWS症候群の臨床的な特徴は、体重を徐々に失い、頻呼吸症、呼吸困難および黄疸等を発症することである。病理的な面ではリンパ性または肉芽種性浸潤、リンパ節腫脹、まれには肝炎およびリンパ性または肉芽種性腎炎を発症する(非特許文献6、非特許文献7、非特許文献8、非特許文献9、非特許文献10)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Todd et al., Arch Virol 1991, 117; 129-135
【非特許文献2】Meehan B. M. et al., 1997,78; 221-227
【非特許文献3】B. M. Meehan et al., J. Gen. Virol 1997 (78) 221-227
【非特許文献4】Gupi P. S. Nayar et al., Can. Vet. J, Vol. 38, 1997: 385-387
【非特許文献5】Clark E. G., Proc. Am. Assoc. Swine Prac. 1997; 499-501
【非特許文献6】Clark E. G., Proc. Am. Assoc. Swine Prac. 1997; 499-501;
【非特許文献7】La Semaine Veterinaire 1996 (834)、
【非特許文献8】La Semaine Veterinaire No. 26;
【非特許文献9】La Semaine Veterinaire 1997 (857):54;
【非特許文献10】Gupi P. S. Nayar et al., Can. Vet. J, Vol. 38, 1997: 385-387
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本出願人は、カナダ、米国(カリフォルニア)およびフランス(ブリタニー)の農場から得た肺または神経節の標本から5つの新規なPCV株を単離することに成功した。これらのウイルスはPMWS症候群のブタの病変部に検出されるが、健康なブタには検出されない。
【0007】
本出願人はさらに、これらの4種の株(カナダおよび米国の株)と2種のフランスの株のゲノムの配列決定した。これらの株はヌクレオチドレベルで互いに非常に強い相同性(96%以上)を示す、一方、PK/15株ははるかに弱い相同性(約76%)しか示さない。従って、新規のタイプのブタサーコウイルス (circovirus)を代表するものと考えられ、PK/15に代表されるタイプI(第I群)に対して、本発明の新規な株はタイプII(第II群)とよぶことにする。
【0008】
5種の株の精製物はブダペスト条約に従ってECACC(European Collection of Cell Cultures, Centre for Applied Microbiology & Research, Porton Down, Salisbury, Wiltshire SP4 0JG, United Kingdom)に寄託された下記の精製物である:
1997年10月2日木曜日寄託:
寄託番号第V97100219号(以下、Imp.1008PCVという)
寄託番号第V97100218号(以下、Imp.1010PCVという)
寄託番号第V97100217号(以下、Imp.999PCVという)
1998年1月16日金曜日寄託:
寄託番号第V98011608号(以下、Imp.1011−48285という)
寄託番号第V98011609号(以下、Imp.1011−48121という)
本出願人はブタ多機能性萎縮症候群の実験的再生試験から、ブタパルボウイルスとブタサーコウイルスとを組合せたものは病気を悪化させるということを見い出した。
【課題を解決するための手段】
【0009】
従って、本発明の対象はブタパルボウイルスワクチンと、ブタサーコウイルス、特にタイプIまたはタイプII、好ましくはタイプIIのワクチンとを組合せて用いるブタのワクチン接種方法にある。これはブタサーコウイルスワクチンとブタパルボウイルスとの二価のワクチンをブタへワクチン接種するか、これらを同時に併用してブタにワクチン接種するということを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】Imp.1011−48121株のゲノムのDNA配列
【図2】図1の続き
【図3】図2の続き
【図4】図3の続き
【図5】Imp.1011−48285株のゲノムのDNA配列
【図6】図5の続き
【図7】図6の続き
【図8】図7の続き
【図9】Imp.999株のゲノムのDNA配列
【図10】図9の続き
【図11】図10の続き
【図12】図11の続き
【図13】Imp.1010株のゲノムのDNA配列
【図14】図13の続き
【図15】図14の続き
【図16】図15の続き
【図17】PCV PK/15株の配列と図1〜16の4つの配列との整列化
【図18】図17の続き
【図19】図18の続き
【図20】図19の続き
【図21】図20の続き
【図22】図21の続き
【図23】図22の続き
【図24】図23の続き
【図25】図24の続き
【図26】図25の続き
【発明を実施するための形態】
【0011】
パルボウイルス対照株はVR−742の参照番号でATCCの収集株からアクセス可能なNADL−2株である。ブタパルボウイルスに対するワクチン接種は当業者に周知であり、ブタパルボウイルスに対するワクチンは市販されている。その一例としてはParvovax(登録商標)を挙げることができる[メリアル(MERIAL)から供給されるブタパルボウイルスに対する不活性化ワクチン]。また非特許文献11、非特許文献12を参照されたい。
【非特許文献11】P.VannierおよびA.Laval.、Point.Vet.1993年、25(151)、53〜60頁
【非特許文献12】G.Florent達の第9回ブタ獣医学会会議の議事録(1986年7月15〜18日、スペイン、バルセロナ)
【0012】
DNAワクチンに関しては例えばWO-A98 03658を参照することができる。
従って、本発明の対象は少なくとも1種のブタサーコウイルス抗原(好ましくはタイプIIのサーコウイルス)と、少なくとも1種のブタパルボウイルス抗原とからなるPMWS症候群に対する抗原性製剤(調整物)にある。本発明で用いるブタサーコウイルス抗原(好ましくはタイプIIのサーコウイルス)およびブタパルボウイルス抗原は無毒化した生の全抗原、不活性化した生の全抗原、サブユニット抗原、組み換え生ベクターおよびDNAベクターから成る群の中から互いに独立して選択することができる。本発明の組合せ物は他の任意の適当な抗原または抗原性製剤を一緒に用いることができるということは理解できよう。所定の組合せに対して同じ形を用いる必要がないことも理解できよう。本発明の抗原性製剤は周知の方法で獣医学上許容されるビヒクルまたは賦形剤(さらに必要な場合には獣医学上許容されるアジュバント)をさらに含むことができる。
【0013】
本発明のさらに他の対象は、有効量の上記サーコウイルス+パルボウイルス抗原性製剤と、獣医学上許容されるビヒクルまたは賦形剤(さらに必要な場合には獣医学上許容されるアジュバント)とからなるPMWS症候群に対するワクチンにある。免疫抗原性組成物は免疫抗原性反応を誘発するが、この反応は保護的なものであることは必ずしも保護的でない場合もある。ワクチン組成物は保護的反応を誘発する。従って、「免疫抗原性組成物」には「ワクチン組成物」が含まれる(前者の用語は保護的組成物であるので)。
【0014】
本発明のさらに他の対象は、ブタサーコウイルスに対する抗原性製剤または免疫抗原性組成物またはワクチン、およびブタパルボウイルスに対する抗原性製剤または免疫抗原性組成物またはワクチンを含む個別包装した免疫抗原性またはワクチン接種キットにある。このキットは抗原性製剤、免疫抗原性組成物およびワクチンで記載の各種特徴を有することができる。
【0015】
本発明のさらに他の対象は、ブタサーコウイルスに対する免疫抗原性組成物またはワクチンと、ブタパルボウイルスに対する免疫抗原性組成物またはワクチンとを投与するか、各ウイルスに特有な各抗原性製剤を同一処方中に含む2価の免疫抗原性組成物またはワクチンを投与するPMWS症候群に対する免疫化またはワクチン接種の方法にある。この免疫化またはワクチン接種方法では特に上記のワクチンを用いる。
【0016】
本発明のさらに他の対象は、PMWS症候群予防用医薬組成物の製造における、パルボウイルスに対する抗原性製剤または免疫抗原性組成物またはワクチンとブタサーコウイルスに対する抗原性製剤または免疫抗原性組成物またはワクチンとを組合せた使用にある。
サーコウイルス抗原性製剤の製造用サーコウイルスは細胞株、特にPK/15細胞の継代で得ることができる。この培養上澄みまたは抽出物を抗原性製剤としては用いることができ、必要に応じて標準的な方法によって精製することができる。
【0017】
無毒化した抗原性製剤および無毒化した免疫抗原性組成物またはワクチンでの無毒化は通常の方法、例えば細胞の継代、好ましくはブタ細胞、特にPK/15細胞株の継代(特に50〜150、特に100回の継代)で行うことができる。この免疫抗原性組成物およびワクチンは一般に獣医学上許容される媒体または希釈液を含むことができ、必要に応じてさらに獣医学上許容されるアジュバントおよびフリーズドライ安定剤を含むことができる。
本発明の抗原性製剤、免疫抗原性組成物およびワクチンは上記の無毒化ウイルスを103〜107TCID50含むのが好ましい。
【0018】
本発明の抗原性製剤、免疫抗原性組成物およびワクチンは無毒化した生全ワクチンをベースとする免疫抗原性組成物およびワクチンにすることができる。無毒化した免疫抗原性組成物およびワクチンは獣医学上許容される媒体または希釈液を含むことができ、必要に応じてさらに獣医学上許容されるアジュバントを含むことができる。
【0019】
本発明のサーコウイルス(断片の形でもよい)は当業者に公知の方法で不活性化される。この不活性化は化学的方法、例えば抗原をホルムアルデヒド(ホルマリン)、パラフォルムアルデヒド、β−プロピオラクトン、エチレンイミンまたはその誘導体等の試薬で処理して行なうことができる。好ましい不活性化法は試薬、特にエチレンイミンまたはβ−プロピオラクトンで処理する方法である。
本発明の不活性化抗原性製剤および不活性化免疫抗原性組成物およびワクチンにはアジュバントを加え、当業者に公知の方法でエマルジョンの形、例えば油中水エマルジョンまたは水中油エマルジョン等の乳剤の形にするのが好ましい。一般的なアジュバント化合物を有効成分に添加してアジュバント処理することもできる。
【0020】
使用可能なアジュバントとしては例えば水酸化アルミニウム、サポニン(例えばQuillja saponinまたはQuil A;"Vaccin Design, The Subunit and Adjuvant Approach, 1995, Michael F. Powel と Mark J. Newman編、Plennum Press, New-York and London, p.210"参照)、Avridine(商標登録)(Vaccine Design p. 148参照)、DDA(ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド、Vaccine Design p. 157参照)、ポリホスファゼン(Vaccine Design p. 204参照)、さらには有機油、スクアラン(例えばSPT乳剤、Vaccine Design p. 147参照)、スクアレーン(例えばMF59、Vaccine Design p. 183参照)をベースとする水中油乳剤または代謝可能な油をベースとする油中水乳剤(好ましくは国際特許第WO-A-94-20071号による)および米国特許第5,422,109号に記載の乳剤を挙げることができる。アジュバントの組み合わせ、例えば乳剤Avridine(商標登録)またはDDAとの組み合せを選択することもできる。
本発明の抗原性製剤、免疫抗原性組成物およびワクチンは上記の不活性化全ウイルスを105〜108のTCID50含むのが好ましい。
【0021】
上記の生ワクチン用のアジュバントは不活性化ワクチン用のものから選択するこができる。乳剤が好ましい。不活性化ワクチン用のものには国際特許第WO-A-94-16681号に記載のものも加えることができる。
凍結安定剤としては例えばSPGA(Bovarnik et al., J. Bacteriology 59, 509, 950)、ソルビトール、マンニトール、スターチ、スクロース、デキストランまたはグルコース等の炭水化物、アルブミンまたはカゼイン等のプロテイン、これらの化合物の誘導体またはアルカリ金属燐酸塩等の緩衝剤を挙げることができる。
本発明の抗原性製剤、免疫抗原性組成物およびワクチンは1種以上の本発明のサーコウイルスおよび/またはパルボウイルスを有効成分(抗原)として含むことができる。
【0022】
本件出願人はさらに、配列ID番号1〜4で識別される4つのタイプIIのブタサーコウイルス単離株のゲノムを得た。株PK−15の配列は配列ID番号5で表される。本発明はこれと均等な配列すなわち上記配列の株の特徴または上記配列によりコードされるポリペプチドの機能を変更しない配列も含むものであるということは当然である。また、コードの欠失(degenerescence)により変化した配列も含むということは理解できよう。
本発明はさらに、厳密な条件下で上記配列と混成(ハイブリッド化)が可能であり、および/または、本発明株と高い相同性を有するという意味で均等な配列も含むものである。
【0023】
これらの配列およびその断片は適当なベクターを用いてインビトロまたはインビボでポリペプチドの有利に用いることができる。
特に、これに使用可能な本発明のDNA断片を形成するオープンリーディングフレーム(ORF1〜13)はタイプIIのサーコウイルスのゲノム配列で同定されている。本発明は、少なくともこれらのオープンリーディングフレーム(対応するアミノ酸配列)の一つを含む全てのポリペプチドに関するものである。特に、本発明は主としてORF4、ORF7、ORF10またはORF13で構成される蛋白に関するものである。
【0024】
インビトロのサブユニットを発現するための発現手段としては大腸菌(E. coli)またはバキュロウイルス(米国特許第4,745,051号)を用いるのが好ましい。上記の単数または複数のコード配列またはその断片をバキュロウイルスゲノム(例えばAutographa californica Nuclear Polyhedrosis Virus AcNPV)に組み込み、次いで、それを昆虫細胞、例えばSpodoptera fruigiperda Sf9(寄託番号ATCC CRL 1711)で増殖させる。また、イースト(例えば酵母)またはほ乳類細胞(例えばCHO、BHK)等の真核細胞でサブユニットを製造することもできる。
【0025】
本発明のさらに他の対象は、これらの発現手段によってインビトロで製造され、必要に応じて一般的な方法で精製されたポリペプチドのサブユニットの使用にある。サブユニット免疫抗原性組成物およびワクチンは、このようにして得られた少なくとも1つのポリペプチドまたはその断片を獣医学上許容される媒体または希釈液(必要に応じて獣医学上許容されるアジュバントをさらに含むことができる)中に含む。
【0026】
組み換え生タイプまたはDNAタイプのワクチンの免疫抗原性組成物およびワクチンの製造時にインビボ発現させるには単数または複数のコード化配列またはその断片を単数または複数のポリペプチドを発現できる条件下で適当な発現ベクターに挿入する。適切な生のベクターとしてはブタで増殖可能でブタに対しては非病原性の生ウイルスを当業者に周知の方法で使用するのが好ましい。特に、アウジェスキー病ウイルス、ブタアデノウイルス等のブタヘルペスウイルス、ポックスウイルス、特にワクシニアウイルス、トリポックスウイルス、カナリアポックスウイルス、ブタポックスウイルス等を用いることができる。DNAベクターをベクターとして用いることもできる(国際特許第WO-A-90-11092号、WO-A-93-19813号、WO-A-94-21797号、WO-A-95-20660号)。
【0027】
従って、本発明の他の対象は、このようにして調製されたベクターと、組み換え生タイプまたはDNA(ポリヌクレオチド)タイプの免疫抗原性組成物またはワクチンにある。これらの調製および使用、免疫抗原性組成物およびワクチンは獣医学上許容される媒体または希釈液を含むことができる。
DNA免疫抗原性組成物またはワクチンは、その定義上、抗原ポリペプチドをコード化するヌクレオチド配列を組み込み且つインビボで発現する、円形のワクチンプラスミド、スーパーコイル等または線状のDNA分子であるDNAベクターを含む。
組換えタイプおよびDNAタイプの免疫抗原性組成物およびワクチンはアジュバントを含むことができる。
【0028】
免疫化またはワクチン接種の組合せプログラムでは、上記のブタサーコウイルスおよびブタパルボウイルスに対する免疫化またはワクチン接種をブタの他の病原体、特にPMSW症候群に関連する病原体に対する免疫化またはワクチン接種と組合せることができる。本発明の免疫抗原性組成物またはワクチンはブタの他の病原体に対応する他のワクチン価を含むことができる。これらのブタの他の病原体はPRRS(Porcine Reproductory and Respiratory Syndrome:ブタ生殖器および呼吸器症候群)および/またはMycoplasma hyopneumonia、E. coli、および/または萎縮鼻炎(Atrophic Rhinitis)、および/または仮性狂犬病(アウジェスキー病)ウイルスおよび/またはブタインフルエンザおよび/またはアクチノバシラス胸膜肺炎菌および/またはブタコレラ、およびこれらの組合せの中から選択される。本発明の免疫化またはワクチン接種のプログラムおよびワクチンはサーコウイルスおよびパルボウイルスに対する免疫化またはワクチン接種と、PRRS(国際特許第WO-A-93-07898号、WO-A-94-18311号、フランス国特許第2,709,966号;C. Chareyre 他、第15回IPVS Congress,Birmingham, England, 5-9 July 1998, p. 139の議事録を参照)および/またはMycoplasma hyopneumonia(欧州特許第597,852号、第550,477号、第571,648号および前記の第15回IPVS CongressのO. Martinon 達、p. 157, 284, 285およびG. Reynaud達、p. 150を参照)および/またはブタインフルエンザとを組合せるのが好ましい。すなわち、任意の適当な免疫抗原性組成物またはワクチン、特に任意の市販のワクチンを用い、それと上記のブタサーコウイルスおよびブタパルボウイルスに対する免疫抗原性組成物またはワクチンとを組合せることができる。
【0029】
従って、本発明のさらに他の対象は免疫抗原性多価組成物および多価ワクチンと、多価ワクチンキットと、免疫化またはワクチン接種の組合せプログラムで使用可能な免疫化またはワクチン接種法にある。
以下、図面を参照して本発明の実施例をさらに詳細に説明する。しかし、本発明が下記実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0030】
実施例1
ブタサーコウイルス(circovirus)株の培養および分離
組織標本はフランス、カナダおよび米国で子豚の肺およびリンパ節から集めた。これらの子豚は離乳後多機能萎縮症候群に典型的な臨床的徴候を示したものである。ウイルスを単離するため組織標本は死体解剖直後に−70℃で冷凍した。
ウイルス単離のために無菌の乳鉢と乳棒を用いて無菌の砂で組織を粉砕し、イール(Earl)塩 (EMEM, BioWhittaker UK Ltd., Workingham, UK)、ペニシリン(100IU/ml)およびストレプトマイシン(100μm/ml)を含む最小培地(MEM−SA培地)中に約15%の組織標本を含む懸濁液を調製した。粉砕物をMEM−SAに溶解し、+4℃、3000gで30分間、遠心分離にかけて上澄みを回収した。
【0031】
細胞培地の接種前に、100μlのクロロホルムを2mlの各上澄みに添加し、室温で10分間混合した。この混合物を超遠心分離管に移し、10分間3000gで遠心分離して上澄みを回収した。次いで、この上澄みをウイルス分離実験で種菌として用いた。
全てのウイルス単離研究はブタサーコウイルス(PCV)、ペスチウイルス、ブタアデノウイルスおよびブタパルヴォウイルスに感染していないことが分かっているPK/15細胞培地で実施した(Allan G. et al., Pathogenesis of porcine circovirus experimental infections of colostrum-deprived piglets and examination of pig foetal material. Vet. Microbiol. 1995, 44, 49-64)。
【0032】
ブタサーコウイルスの単離は下記方法によって実施した:
PK/15細胞の単一層をトリプシン処理(トリプシン−versene混合物)によって集密的な培養から解離し、最終濃度が約400,000細胞/1mlであるペスチウイルス(=MEM−G培地)に感染していない15%のウシ胎児血清を含むMEM−SA培地に溶解した。次に、この細胞懸濁液の10mlの部分標本を2mlの前記接種材料の部分標本と混合し、最終混合物を2つの25cm2ファルコンフラスコに6mlの容積に分取した。+37℃で18時間、10%のCO2を含む雰囲気下で培養した。
【0033】
培養後、半集密的な単一層を300mMのD−グルコサミン(Cat # G48175、
Sigma-Aldrich株式会社、Poole, UK)で処理し(Tischr I. et al., Arch. Virol., 1987 96 39-57)、さらに37℃で48〜72時間培養を続けた。この最終培養に続いて、2つのファルコンの1方を3回凍結/融解サイクルにかけた。残りのファルコンのPK/15細胞はトリプシン−versene溶液で処理し、20mlのMEM−G培地中に再懸濁し、400,000細胞/ml濃度で75cm2ファルコン中に接種した。新しく接種されたフラスコは凍結/融解サイクル後に得られた対応する可溶化液5mlを添加して「超感染」させた。
【0034】
実施例2
免疫抗体法または切片上ハイブリッド形成法によるブタサーコウイルスを検出するためのするための細胞培地標本の調製
5mlの容積の「超感染」した懸濁液を回収し、無菌で脱脂したカバーガラスを含む直径55mmのペトリ皿中に接種した。フラスコ中およびカバーガラス上で+37℃で培養し、実施例1に記載のグルコサミンで処理した。カバーガラス上での培養はグルコサミン処理後24〜48時間で回収し、室温で10分間アセトンを用いて、または4時間緩衝剤処理した10%のホルムアルデヒドを用いて固定した。この固定後、全てのカバーガラスをシリカゲル上で−70℃で貯蔵してから、ハイブリッド形成の研究および細胞免疫の研究に使用した。
【0035】
実施例3
ハイブリッド形成法(in situ)によるPCV配列の検出法
ハイブリッド形成法(in situ)は病気のブタから集めた組織に対して実施し、
ホルムアルデヒドで固定し、ウイルス単離(実施例2参照)用に接種した細胞培地の調整で用い、カバーガラスに固定した。
PK/15ブタサーコウイルス(PCV)および感染性ニワトリ貧血症ウイルス(CAV)に対応する完全なゲノムプローブを用いた。1.7キロの塩基ペア(kbp)の挿入断片の形にクローン化されたPCVゲノムの複製型を含むプラスミドpPCVI(Meehan B. et al. Sequence of porcine circovirus DNA: affinities with plant circovirus, J. Gen. Virol. 1997, 78, 221-227)をPCV固有DNA源として用いた。2.3kbpの鳥サーコウイルスCAVの複製型を含む鳥プラスミドpCAAIを負対照として用いた。2つのプラスミドのグリセロール源をアルカリ法(Sambrook J. et al. Molecular cloning: A Laboratory Manual. 2nd Edition, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, New York, 1988)によってプラスミドの製造および精製で用い、これらはプローブ調製用のテンプレートとして用いた。PCVおよびCAVの完全なゲノムを表すサーコウイルスプローブはメーカー推薦の方法で市販の非放射性ラベリングキット("DIG DNA Labelling Kit"、Boehringer Mannheim, Lewis, UK)を用いて上記精製プラスミド(各プローブに1μg)およびヘキサヌクレオチドプライマーから製造した。
【0036】
ハイブリッド形成法(in situ)で使用する前に、プローブをジゴキシジェニンで標識化し、容積50〜100μlの純水に溶解した。
パラフィンに包み、ホルムアルデヒドで固定した病気のブタの組織標本と、ホルムアルデヒドで固定した感染細胞培地の製剤を下記方法でPCV核酸検出のために調製した:
5μm厚の切片をパラフィンに包まれた組織塊から切り出し、濃度を次第に薄くしたアルコール溶液中で再水和した。ホルムアルデヒドで固定した組織切片および細胞培地を15分間および5分間それぞれ5mMのEDTAを含む0.05MのTris−HCL緩衝剤(pH7.6)を用いた0.5%のプロテナーゼK溶液中で+37℃で培養した。次に、スライドガラスを加圧滅菌した蒸留水中の1%グリシン溶液中に30秒配置し、0.01MのPBS緩衝剤(燐酸緩衝食塩水)(pH7.2)で2度洗浄し、最後に無菌蒸留水で5分間洗浄した。スライドガラスを最後に外気で乾燥し、プローブと接触させた。
【0037】
各組織/プローブ製剤を清潔な脱脂カバーガラスで被覆し、+90℃の炉内に10分間配置した後、氷塊と1分間接触させ、最後に+37℃で18時間培養した。次に、調整物を2Xクエン酸ナトリウム塩(SSC)緩衝剤(pH7.0)に短時間含浸した後、2XのSSC緩衝剤中で5分間、2回洗浄し、最後にPBS緩衝剤中で5分間、2回洗浄した。
洗浄後、調整物を0.1Mのマレイン酸、0.15MのNaCL(pH7.5)(マレイン緩衝剤)の溶液中に10分間含浸し、マレイン緩衝剤中の遮断試薬の1%溶液(Cat # 1096176, Boehringer Mannheim UK, Lewis, East Sussex, UK)中で+37℃で20分間培養した。
【0038】
次に、調整物を遮断緩衝剤で希釈された抗ジゴキシジェニンモノクローナル性抗体(Boehringer Mannheim)の1/250溶液中で+37℃で1時間培養し、PBS中で洗浄し、最後に抗ネズミ免疫グロブリン抗体を用いて+37℃で30分間培養した。調整物をPBSで洗浄し、内因性ペルオキシダーゼ作用を室温で20分間、PBS中の0.5%水酸化ペルオキシド溶液で処理して遮断した。調整物を再度PBS中で洗浄し、使用直前に調製した3−アミノ−9−ジエチルカルバゾル(AEC)基質(Cambridge Bioscience, Cambridge, UK)で処理した。
最後に水道水で洗浄した後、調整物をヘマトキシリンで逆染色し、水道水で"青色化"して固定液(GVA Mount, Cambridge Bioscience, Cambridge, UK)で顕微鏡のカバーガラスに固定した。対照実験には無関係な負プローブ(CAV)と正プローブ(PCV)を病気のブタおよび病気ではないブタから得られた標本で使用することが含まれる。
【0039】
実施例4
免疫蛍光抗体法によるPCVの検出法
アセトンを用いて固定した全ての細胞倍地の最初のスクリーニングを貯蔵した大人のブタ血清の1/100希釈を用いた間接免疫蛍光抗体法(IIF)で実施した。この貯蔵血清は北アイルランドの25匹の大人の雌ブタからの血清を含み、PCV:ブタパルボウイルス、ブタアデノウイルスおよびPRRウイルスを含む広範囲のブタのウイルスに対する抗体を含むことで知られている。血清(PBSで希釈)を細胞培地と+37℃で1時間接触させた後、PBS中で2回洗浄してIIFを実施した。細胞培地をイソチオシアン酸フルオレセインに結合したPBSで1/80に希釈したウサギの抗ブタ免疫グロブリン抗体を用いて1時間染色し、PBSで洗浄し、グリセロール緩衝剤に固定し、紫外線下で顕微鏡観察した。
【0040】
実施例5
病気のブタの組織における切片上ハイブリッド形成結果
フランス、カナダおよびカリフォルニアの多機能性萎縮病変を有する子豚から集めた組織から調製したPCVゲノムプローブを用いた切片上ハイブリッド形成法から、研究された複数の病変部に病変部に関連するPCV核酸の存在が示された。これに対してPCVゲノムプローブを病気でないブタから集めた組織に用い時またはCAVプローブを病気のブタの組織に用いた時には何の徴候も見られなかった。PCV核酸の存在はサイトプラズムおよびカリフォルニアの子豚の肺の病変部を浸潤する多数の単核細胞の核に認められた。PCV核酸の存在は肺細胞、気管支および細気管支の上皮細胞および細動脈、細静脈およびリンパ管の内皮細胞にも見られた。
【0041】
病気のフランスのブタではPCV核酸の存在は多数の濾胞性リンパ細胞のサイトプラズマおよびリンパ節の同様な毛細血管内の単核細胞に検出された。また、PCV核酸は一次的合胞体にも検出された。これらの検出結果から、カリフォルニアのブタの肺、フランスのブタの腸間膜リンパ節およびカナダのブタの器官の標本を新規なブタサーコウイルス株の単離用に選択した。
【0042】
実施例6
新規なブタサーコウイルス株の細胞培養結果と、免疫蛍光抗体法による検出
多機能性萎縮症候群の臨床的徴候を示すフランスの子豚(Imp. 1008株)、カリフォルニアの子豚(Imp. 999株)およびカナダの子豚(Imp. 1010株)から集めた標本を培養した細胞培地には細胞変性作用(CPE)は全く見られなかった。しかし、アセトンを用いて固定した後、貯蔵されたブタのポリクローン化した血清を用いて培養した細胞培地から得られた製剤を免疫標識化することによって、カリフォルニアの子豚(Imp. 999株)の肺、フランスの子豚(Imp. 1008株)の縦隔リンパ節およびカナダの子豚(Imp. 1010株)の器官を用いて培養した培地中の多数の細胞に核蛍光が現れた。
【0043】
実施例7
ブタサーコウイルスのゲノムDNAの抽出
ブタサーコウイルス(PCV)の新規な株の複製型を72〜76時間の培養後に回収した感染したPK/15細胞培地(実施例1参照)(75cm2ファルコン10個)を用いて調製し、CAVの複製型のクローン化で記載したグルコサミンで処理した(Todd. D. et al., Dot blot hybridization assay for chicken anaemia agent using a cloned DNA probe. J. Clin. Microbiol. 1991, 29, 933-939)。この複製型の2本鎖DNAはHirt法(Hirt B. Selective extraction of polyoma virus DNA from infected cell cultures, J. Mol. Biol. 1967, 36, 365-369)の変形法で抽出した(Molitor T. W. et al. Porcine parvovirus DNA: characterization of the genomic and replicative form DNA of two virus isolates, Virology, 1984, 137, 241-254)に記載)。
【0044】
実施例8
ブタサーコウイルス Imp.999株のゲノムの複製型の制限地図
Hirt法で抽出されたDNA(1〜5μg)をメーカの推薦する方法に従ってS1ヌクレアーゼ(Amersham)で処理し、各種制限酵素(Boehringer Mannheim UK, Lewis, East Sussex, UK)で消化し、消化物をTodd達が記載の方法(Purification and biochemical characterization of chicken anemia agent. J. Gen. Virol. 1990, 71, 819-823)で、臭化エチジウムの存在下、1.5%のアガロースゲル上で電気泳動で分離した。Imp.999株の培地から抽出したDNAは独特のEcoRI部位、2つのSacI部位を有し、PstI部位は全く持たない。従って、この制限プロフィールは、逆にPstI部位を有し、EcoRI部位を全く持たないPCVのPK/15株(Meehan B. et al. Sequence of porcine circovirus) DNA: affinities with plant circovirus, 1997, 78, 221-227)が示す制限プロフィールとは異なっている。
【0045】
実施例9
ブタサーコウイルス Imp.999株のゲノムのクローン化
制限酵素EcoRIを有するPCV Imp.999株の2本鎖複製型の消化で生じた約1.8kbpの制限断片を市販のQiagen kit(QIAEXII Gel Extraction Kit, Cat # 20021, QIAGEN Ltd., Crawley, West Sussex, UK)を用いて1.5%アガロースゲル(実施例3参照)上で電気泳動で分離した。次に、このEcoRI−EcoRI制限断片を標準クローン化法(Sambrook J. et al. Molecular cloning: A Laboratory Manual. 2nd Edition, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, New York, 1988)によって予め同じ制限酵素を用いて消化し、脱リン酸したベクターpGEM-7(Promega, Medical Supply Company, Dublin, Ireland)と結合した。得られたプラスミドを標準的方法によってEscherichia coli JM109宿主株(Stratagene, La Jolla, USA)に変換した。同じく、PCV Imp.999株のEcoRI−EcoRI制限断片をベクターpBlueScript SK+(Stratagene, La Jolla, USA)のEcoRI部位にクローン化した。各宿主株に対して得られたクローンの中から所望の大きさの断片を有する少なくとも2つのクローンを選択した。次に、得られたクローンを培養し、Imp.999株の完全なゲノムを含むプラスミドを標準的なプラスミド調製および精製法によって少容量(2ml)または大容量(250ml)に精製した。
【0046】
実施例10
PCV Imp.999株のゲノムDNAの配列(2本鎖複製型)
2つのEcoRI Imp.999のクローン配列(クローンpGEM-7/2およびpGEM-7/8)をメーカー推薦の方法で配列キット"AmpliTaq DNA polymerase FS"(Cat # 402079 PE Applied Biosystems, Warrington, UK)および"Applied BioSystems AB1373A automatic sequencing apparatus"を用いてSangerのジデオキシヌクレオチド法で決定した。最初の配列反応はM13「前方」および「後方」自在プライマーを用いて実施した。続く配列反応は「DNA歩行」法によって実施した。その後の配列に必要なオリゴヌクレオチドはLife Technology(Inchinnan Business Park, Paisley, UK)によって合成された。
【0047】
得られた配列を集め、MacDNASIS version 3.2のソフトウェア(Cat # 22020101, Appligene, Durham, UK)を用いて分析した。各種のオープンリーディングフレームを"National Center for Biotechnology Information"(NCBI, Bethesda, MD, USA)サーバーで入手可能なBLAST algorithmを用いて解析した。
完全な配列(EcoRI-EcoRI)は配列ID番号3(図9〜図12)に表してある。この配列はこの株の配列を全て表しており、EcoRI部位の始めすなわち最初のヌクレオチドとしてGから任意に始まる。
【0048】
同様の方法で本発明の他の3つの分離株の配列を得た(配列ID番号1、2、
4および図1〜図4、図5〜図8、図13〜図16参照)。これら4つの株のゲノムの大きさは下記の通りである:
Imp.1011−48121 1767個のヌクレオチド
Imp.1011−48285 1767個のヌクレオチド
Imp.999 1768個のヌクレオチド
Imp.1010 1768個のヌクレオチド
【0049】
実施例11
PCV Imp.999株の配列の分析
Imp.999株から得られた配列をGenBankのデータバンクに収容された配列との相同性テストで用いた結果、検出された有意な相同性はPK/15株の配列(寄託番号Y09921)(図17〜26参照)と約76%の相同性があった。
データバンク(NABIサーバーのBLAST X algorithm)を用いた6つのフェーズでの配列の翻訳の相同性テストでは、アミノ酸レベルで、GenBank U49186配列でコードされるプラント(GenBank番号1841515)のサーコウイルスに類似のBBTBウイルスの理論的レプリカーゼに対応するオープンリーディングフレームと94%の相同性を示すということが分かった。
PCV Imp.999株から得られた配列と有意な相同性を示すものはデータバンクに収容された他の配列にはなかった。
多機能萎縮症候群の臨床的徴候を示すカリフォルニアの子豚から得られた病変部を用いて培養されたImp.999株から得られた配列のには解析から、この単分離ウイルスが新規なブタサーコウイルス株であることが明らかになった。
【0050】
実施例12
配列の比較分析
新規な4つのPCV株のヌクレオチド配列とPCVのPK/15株の配列(図17〜26)とを整列比較した。新規な4つの株と公知のPK/15株とに関する相同性マトリクスを作成した。結果は下記の通りである:
1:Imp.1011−48121
2:Imp.1011−48285
3:Imp.999
4:Imp.1010
5:PK/15
【0051】
【表1】
【0052】
2つのフランス株Imp. 1011-48121とImp. 1011-48285の相同性は99%以上(0.9977)である。2つの北米株Imp. 999とImp. 1010の相同性も99%以上(0.9949)以上である。フランス株と北米株との相同性はわずかに96%以上である。
これら全ての株とPK/15株との相同性は75〜76%の値に落ちる。
このことから、本発明の株はPK/15株に代表される種類とは異なる新規なブタサーコウイルスの代表であると言える。PK/15がタイプIを表すのに対し、PMWS症候群を示すブタから単離されたこの新規な株をタイプIIのブタサーコウイルスとよぶことにする。このタイプIIに属する株は実際には非常に離れた地理的領域から単離されたにもかかわらず、驚くべきヌクレオチド配列の相同性を示す。
【0053】
実施例13
新規なPCV株のゲノムによってコードされる蛋白の分析
Imp.1010単離株のヌクレオチド配列は多機能性萎縮症候群に関する他のサーコウイルス株を代表するものと考えられる。この配列をBLASTX algorithm(Altschl et al. J. Mol. Biol. 1990. 215. 403-410)と、ソフトウェアMacVector 6.0(Oxford Molecular Group, Oxford OX4 4GA, UK)のプログラムとを組み合わせを用いて詳細に分析した。この配列(環状ゲノム)上には20個のアミノ酸より大きいサイズのオープンリーディングフレーム(またはORF)が13個検出できた。この13個のORFは下記の通りである:
【0054】
【表2】
【0055】
各ORFの開始位置および終了位置は株1010のゲノムの図13〜図16に表された配列(配列ID番号4)を参照する。ORF1〜13の端部は株999と同一である。これらは下記ORF3と13を除き、株1011−48121および1011−48285とも同一である:
ORF3 1432−1539、センス、108nt、35aa
ORF3 314−1377、アンチセンス、705nt、234aa
これら13のORFの内で4つがクローン化ウイルスPCV PK/15のゲノム上に位置する類似のORFと有意な相同性を有する。多機能性萎縮症候群に関連するサーコウイルス単離株全てのゲノム上に存在するオープンリーディングフレームをそれぞれ分析した。これら4つのORFは下記の通り:
【0056】
【表3】
【0057】
各ORFの始めと終わりの位置は図13〜図16に表された配列(配列ID番号4)を参照する。ORFの大きさ(ヌクレオチド=ntで)は終止コドンを含む。
PCV Imp. 1010とPCV PK−15の単離株のゲノム機構の比較から、
2つのウイルスのゲノムに保存された4つのORFが同定できた。下記の表は観察された相同性の程度を表す:
【0058】
【表4】
【0059】
最大の相同性はORF4 Imp. 1010とORF1 PK−15との間に見られた(86%相同性)。このプロテインはおそらくウイルスのDNA複製に含まれ、ウイルスの複製に必須であるため、このことは予想されることである(Meehan et al., Gen. Virol. 1997,78; 221-227;Mankertz et al. J. Gen. Virol. 1998. 79. 381-384)。
ORF13 Imp. 1010とORF2 PK−15との間の配列同一性は余り強くない(66.4%の同一性)が、この2つのORFはそれぞれ、鳥サーコウイルスCAV(Meehan et al., Arch. Virol. 1992, 124. 301-319)の主構造プロテインのN−末端領域と同一な良く保存されたN−末端基本領域を有している。さらに、ORF7 Imp. 1010とORF3 PK−15との間と、ORF10 Imp. 1010とORF4 PK−15との間に大きな違いが見られた。PCV PK−15のORF3とORF4と比較すると、それぞれにImp. 1010分離株のORF7とORF10のC−末端領域に欠失がある。最大の配列相同性はORF7/ORF3(重複部分の水準において61.5%の相同性)とORF10/ORF4(重複部分の水準において83%の相同性)のN−末端領域の水準において見られる。
【0060】
ブタサーコウイルスのゲノム構造はゲノムが極端に高密度であるため非常に複雑であるように見える。主構造プロテインはおそらくブタサーコウイルスゲノムの同じ鎖上に位置する複数のオープンリーディングフレーム間のスプライシングに由来するものである。従って、上記の表に記載の全てのオープンリーディングフレーム(ORF1〜ORF13)でタイプIIのブタサーコウイルスにコードされた抗原プロテインの全てまたは一部を表すことができ、これらは特有の病気および/またはワクチン接種に使用可能な抗原である。本発明はこれらのORFを少なくとも1つ含む全てのプロテインに関するものである。本発明は主としてORF4、ORF7、ORF10またはORF13で構成されるプロテインに関するものである。
【0061】
実施例14
新規な株からクローンされたPCVゲノムの感染特性
Imp. 999単離株の完全なゲノム(複製型)を含むプラスミドpGEM-7/8をMeehan B. 達に記載の方法によってPK/15細胞に形質移入した(Characterization of viral DNAs from cells infected with chicken anemia agent: sequence analysis of the cloned replicative form and transfection capabilities of cloned genome gragments. Arch. Virol. 1992, 124. 301-319)。未感染のPK/15細胞に形質移入した後の最初の継代に対して実施された免疫抗体法の分析(実施例4参照)から、クローンpGEM-7/8のプラスミドは感染性PCVウイルスを誘導することが示された。感染性PCVの遺伝物質を含むクローンが利用可能になったことによってウイルス性ゲノムに任意の有用な処置をして無毒化ワクチンまたは組み換えワクチンを製造し、或いは診断キット用抗原を製造することができ、変成PCVウイルス(ブタで無毒化または欠失)を製造することができるようになった。
【0062】
実施例15
インビトロ培養によるPCV抗原の製造
感染していないPK/15細胞の培養およびウイルス処置を実施例1と同じ方法で実施した。感染細胞を37℃で4日間培養後、トリプシン処理し、回収し、命名した。次の継代は1mlにつき400,000個の感染細胞を接種した。
【0063】
実施例16
ウイルス性抗原の不活化
ウイルス培養の最後に、感染した細胞を回収し、超音波(Branson Sonifier)またはロータースタータータイプのコロイドミル(UltraTurrax, IKA)を用いて溶解した。次に、懸濁液を3700gで30分間、遠心分離した。このウイルス懸濁液を+37℃で18時間、0.1%エチレンイミンで、或いは、+28℃で24時間、竈−プロピオラクトンで不活化した。ウイルス価が不十分な場合にはウイルス懸濁液を300kDaのメンブレン(Millipore PTMK300)を用いた限外濾過で濃縮した。不活化ウイルス懸濁液は+5℃で貯蔵した。
【0064】
実施例17
有機油をベースにしたワクチン乳剤の製造
下記処方でワクチンを調製した:
不活化ブタサーコウイルス懸濁液 : 250ml
Mondanide(商標登録)ISA 70(SEPPIC) : 750ml
水相および油相は濾過によって別々に滅菌した。この乳剤はシルバーソンμタービン乳化機を用いて各成分を混合し、均質化して調製した。
一回のワクチン投与量は約107.5のTCID50を含む。皮膚経路の一回のワクチン投与容量は0.5ml、筋肉経路の投与量は2mlである。
このワクチンはParvovax(登録商標)ワクチンと組合せて多機能性萎縮症候群を防ぐためのワクチン接種プログラムで用いられる。
【0065】
実施例18
代謝可能な油ベースのワクチン乳剤の製造
下記処方でワクチンを調製した:
不活化ブタサーコウイルス懸濁液: 200ml
Dehymuls HRE 7(Henkel) : 60ml
Radia 7204(Oleofina) : 740ml
水相および油相は濾過によって別々に滅菌した。この乳剤はシルバーソンμタービン乳化機を用いて各成分を混合し、均質化して調製した。
一回のワクチン投与量は約107.5のTCID50を含む。皮膚経路の一回のワクチン投与容量は0.5ml、筋肉内経路の投与量は2mlである。
このワクチンはParvovax(登録商標)ワクチンと組合せて多機能性萎縮症候群を防ぐためのワクチン接種プログラムで用いられる。
【0066】
実施例19
過免疫血清(PCV−T)、PK/15から調製されたモノクローナル抗体F99およびカナダ株から調製された過免疫血清(PCV−C)で汚染されたアメリカおよびフランスのPCVウイルス株およびPK/15の間接免疫抗体法の結果
【0067】
【表5】
* 間接的免疫抗体法で正の反応を示した血清またはモノクローナル抗体の最後の希釈液の逆数。
【0068】
実施例20
ブタ多機能性萎縮症候群の実験的産生−プロトコル1
帝王切開で生まれ、隔離飼育器に入れた生後3日の純粋隔離群の子豚にPCVウイルス溶液を接種した。タイプIIのPCVには病気のブタから得られたリンパ節ホモジネートから得られたImp.1010単離株およびウイルスを用いた。5つの群を作った。〔表6〕の1.5mlのウイルス溶液を生後3日の全ての子豚に口鼻経路で接種した。
【0069】
【表6】
【0070】
抗原投与実験の結果
5週間の観察期間中に、B群の1匹の子豚に有意な消耗が見られたほかは臨床的徴候が見られなかった。死体解剖ではA群、B群、C群の子豚にリンパ節、特に顎下、気管支、腸間膜、腸骨および大腿の神経節の過形成(D群、E群の子豚の2〜10倍のサイズ)が見られた。この過形成は単球およびマクロファージの浸潤によって皮質領がかなり拡大することに関係がある。
A群、B群、C群の子豚には気管支リンパ組織の過形成も見られる。
各A群、B群、C群の1匹の子豚に肺炎が認められる。
有意な消耗が見られるB群の子豚、およびA群の1匹の子豚には胃潰瘍が認められる。
【0071】
さらに、A群、B群、C群の全ての子豚には胃腸の筋層に筋肉炎が認められる。
A群、B群、C群の大部分の子豚には心筋炎、リンパ球の多巣性肝炎、マクロファージおよび好酸球の浸潤、ならびに皮質および延髄の間質性腎炎が認められる。
C群の1匹の子豚は肝臓の表面に明らかな播種性の病巣があり、通常よりもサイズが大きい。
D群およびE群の子豚に病変は認められなかった。
A群、B群、C群の子豚の器官からサーコウイルスを単離した。
【0072】
実施例21
ブタ多機能萎縮症候群の実験的再産生−プロトコル2、3
出生後に母親から隔離した通常飼育の子豚にタイプIIのPCVウイルス、ブタパルボウイルスまたはこれら2つのウイルスの混合物ウイルス溶液を接種した。
タイプIIのPCVウイルスにはImp.1010およびImp.1011単離株(株48121)を用いた。
PPVウイルスにはカナダの単離株Imp.1005を用いる。このウイルスは周知な他のブタパルボウイルス株(PPV株NADL−2およびKresse株)の配列と同一の1つの配列(配列決定されたゲノムの1/3)を有する。
2つの実験的プロトコルを実施した。
【0073】
プロトコル2
生後3日の子豚からなる3つの群を作成した。全ての子豚に〔表7〕の1mlのウイルス溶液を口鼻経路で接種した。
【0074】
【表7】
【0075】
抗原投与実験の結果
A群:接種の21日後に2匹の子豚が死んだ。24日後に1匹の子豚を無痛屠殺した。
B群:接種の23日後に1匹の子豚が死んだ。24日後に1匹の子豚を無痛屠殺した。
感染後に死んだ子豚の死体解剖では有意な巨視的病変の存在が示された:胸膜腔中の体液の存在、肺浮腫、腎臓の出血、腎臓上のピン頭形の淡い色の病変、肝臓の壊死がみられた。これらの病変はフィールドでみられる病変と同一である。
屠殺した子豚の死亡解剖では巨視的病変はみられなかった。
【0076】
感染後に死んだA群およびB群の子豚およびこれら2つの群の屠殺した子豚から取り出した器官に対して行った組織学試験ではフィールドの子豚で見られるブタ多機能萎縮症候群の病変の典型的かつ完全なパターンがみられた:肝臓の壊死、リンパ節の壊死、膵臓の壊死、腎臓の焦点壊死および激しい出血、肺中の合胞体の存在、核封入体の存在を伴う肝細胞の激しい壊死。
これら全ての病変(死んだブタまたは犠牲のブタ)で大量のPCV抗原が発見されたが、これらの同じ病変にPPV抗原の存在を示すことができなかったことは注目すべきである。
C群の対照子豚からは病変を検出できなかった。
【0077】
プロトコル3
生後4週間の子豚からなる4つの群を作成した。全ての子豚に〔表8〕の1mlのウイルス溶液を口鼻経路で接種した。
【0078】
【表8】
【0079】
抗原投与実験の結果
各実験群(B群、C群、D群)の1匹の「対照」ブタおよび2匹のブタを接種の2週間後に無痛屠殺し、死体解剖した。D群(PCV+PPV同時感染)の2匹の子豚に有意な免疫組織学的病変が認められた。これらの病変にブタパルボウイルスの存在を示すことはできなかったが、D群の全ての子豚にブタパルボウイルスに関連するセロコンバージョンが認められたことは注目すべきである。
対照子豚および他の群の子豚には巨視的または組織学的病変を検出することはできなかった。
【0080】
従って、PCV+PPVの組合せによってブタ多機能萎縮症候群の典型的な組織学的病変を再生することができるように思われる。
これら2つの実験的プロトコルから、PCV+PPV混合物としてPCVのみを接種することによってブタ多機能萎縮症候群を多かれ少なかれ大量に再生できるが、病変からはブタサーコウイルスしか検出できないことが理解できる。逆に、PPVのみに実験的に感染させることによって(プロトコル3のB群)、巨視的および組織学的病変を誘発させることはできない。しかし、PVCの存在下では、生後4週間の子豚に病変の出現が認められた(プロトコル3のD群)。
【0081】
[配列表]
配列ID番号1 = Imp.1011−48121株のゲノムのDNA配列
配列ID番号2 = Imp.1011−48285株のゲノムのDNA配列
配列ID番号3 = Imp.999株のゲノムのDNA配列
配列ID番号4 = Imp.1010株のゲノムのDNA配列
配列ID番号5 = PK/15株のゲノムのDNA配列
【技術分野】
【0001】
本発明は、PMWS症候群(ブタ多機能萎縮症候群:Porcine Multisystemic Wasting Syndrome)(離乳後多機能萎縮症候群:Post-weaning Multisystemic Wasting Syndromeともいわれる)に対するワクチンに関するものである。
以下では各種文献を引用し、各種文献を参照するが、これらの文献の全てを実際に本発明に関する従来例であると認めらたものではない。本明細書に引用した全ての文献およびそれらで引用された全ての文献の内容は本明細書の一部を成す。
【背景技術】
【0002】
PCV(ブタサーコウイルス、procine circoviridae)はブタ腎臓細胞株PK/15中に無毒病原性汚染物質として最初に見い出された。このウイルスPCVはチキン貧血症ウイルス(CAV、Chicken Anaemia Virus)および嘴・羽症候群ウイルス(PBFDV、Pscittacine Beak and Feather Disease Virus)とともにサーコウイルス群(Circoviridae)に分類された。これらのウイルスはエンベロプのない小さなウイルス(15〜24nm)で、その共通な特徴は1.76〜2.31kbの環状一本鎖のDNAからなるゲノムを含む点にある。このゲノムは約30kDaのポリペプチドをコード化すると考えられていた(非特許文献1)が、最近の研究でさらに複雑な転写がわかってきた(非特許文献2)。しかも、上記3種類のサーコウイルス(circovirus)はそのヌクレオチド配列に有意な相同性はなく、また、共通の抗原決定基もない。
【0003】
上記PK/15細胞由来のPCVは病原性ではないと考えられる。この配列は非特許文献3が明らかにしている。PCV株が病原性で、PMWS症候群と関連があるかもしれないと考えられるようになったのはほんの最近のことである(非特許文献4および非特許文献5)。Nayer達はPCR法を用いてPMWS症候群を示すブタ中にPCVのDNAを見い出した。
【0004】
カナダ、米国およびフランスで見られるPMWS症候群の臨床的な特徴は、体重を徐々に失い、頻呼吸症、呼吸困難および黄疸等を発症することである。病理的な面ではリンパ性または肉芽種性浸潤、リンパ節腫脹、まれには肝炎およびリンパ性または肉芽種性腎炎を発症する(非特許文献6、非特許文献7、非特許文献8、非特許文献9、非特許文献10)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Todd et al., Arch Virol 1991, 117; 129-135
【非特許文献2】Meehan B. M. et al., 1997,78; 221-227
【非特許文献3】B. M. Meehan et al., J. Gen. Virol 1997 (78) 221-227
【非特許文献4】Gupi P. S. Nayar et al., Can. Vet. J, Vol. 38, 1997: 385-387
【非特許文献5】Clark E. G., Proc. Am. Assoc. Swine Prac. 1997; 499-501
【非特許文献6】Clark E. G., Proc. Am. Assoc. Swine Prac. 1997; 499-501;
【非特許文献7】La Semaine Veterinaire 1996 (834)、
【非特許文献8】La Semaine Veterinaire No. 26;
【非特許文献9】La Semaine Veterinaire 1997 (857):54;
【非特許文献10】Gupi P. S. Nayar et al., Can. Vet. J, Vol. 38, 1997: 385-387
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本出願人は、カナダ、米国(カリフォルニア)およびフランス(ブリタニー)の農場から得た肺または神経節の標本から5つの新規なPCV株を単離することに成功した。これらのウイルスはPMWS症候群のブタの病変部に検出されるが、健康なブタには検出されない。
【0007】
本出願人はさらに、これらの4種の株(カナダおよび米国の株)と2種のフランスの株のゲノムの配列決定した。これらの株はヌクレオチドレベルで互いに非常に強い相同性(96%以上)を示す、一方、PK/15株ははるかに弱い相同性(約76%)しか示さない。従って、新規のタイプのブタサーコウイルス (circovirus)を代表するものと考えられ、PK/15に代表されるタイプI(第I群)に対して、本発明の新規な株はタイプII(第II群)とよぶことにする。
【0008】
5種の株の精製物はブダペスト条約に従ってECACC(European Collection of Cell Cultures, Centre for Applied Microbiology & Research, Porton Down, Salisbury, Wiltshire SP4 0JG, United Kingdom)に寄託された下記の精製物である:
1997年10月2日木曜日寄託:
寄託番号第V97100219号(以下、Imp.1008PCVという)
寄託番号第V97100218号(以下、Imp.1010PCVという)
寄託番号第V97100217号(以下、Imp.999PCVという)
1998年1月16日金曜日寄託:
寄託番号第V98011608号(以下、Imp.1011−48285という)
寄託番号第V98011609号(以下、Imp.1011−48121という)
本出願人はブタ多機能性萎縮症候群の実験的再生試験から、ブタパルボウイルスとブタサーコウイルスとを組合せたものは病気を悪化させるということを見い出した。
【課題を解決するための手段】
【0009】
従って、本発明の対象はブタパルボウイルスワクチンと、ブタサーコウイルス、特にタイプIまたはタイプII、好ましくはタイプIIのワクチンとを組合せて用いるブタのワクチン接種方法にある。これはブタサーコウイルスワクチンとブタパルボウイルスとの二価のワクチンをブタへワクチン接種するか、これらを同時に併用してブタにワクチン接種するということを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】Imp.1011−48121株のゲノムのDNA配列
【図2】図1の続き
【図3】図2の続き
【図4】図3の続き
【図5】Imp.1011−48285株のゲノムのDNA配列
【図6】図5の続き
【図7】図6の続き
【図8】図7の続き
【図9】Imp.999株のゲノムのDNA配列
【図10】図9の続き
【図11】図10の続き
【図12】図11の続き
【図13】Imp.1010株のゲノムのDNA配列
【図14】図13の続き
【図15】図14の続き
【図16】図15の続き
【図17】PCV PK/15株の配列と図1〜16の4つの配列との整列化
【図18】図17の続き
【図19】図18の続き
【図20】図19の続き
【図21】図20の続き
【図22】図21の続き
【図23】図22の続き
【図24】図23の続き
【図25】図24の続き
【図26】図25の続き
【発明を実施するための形態】
【0011】
パルボウイルス対照株はVR−742の参照番号でATCCの収集株からアクセス可能なNADL−2株である。ブタパルボウイルスに対するワクチン接種は当業者に周知であり、ブタパルボウイルスに対するワクチンは市販されている。その一例としてはParvovax(登録商標)を挙げることができる[メリアル(MERIAL)から供給されるブタパルボウイルスに対する不活性化ワクチン]。また非特許文献11、非特許文献12を参照されたい。
【非特許文献11】P.VannierおよびA.Laval.、Point.Vet.1993年、25(151)、53〜60頁
【非特許文献12】G.Florent達の第9回ブタ獣医学会会議の議事録(1986年7月15〜18日、スペイン、バルセロナ)
【0012】
DNAワクチンに関しては例えばWO-A98 03658を参照することができる。
従って、本発明の対象は少なくとも1種のブタサーコウイルス抗原(好ましくはタイプIIのサーコウイルス)と、少なくとも1種のブタパルボウイルス抗原とからなるPMWS症候群に対する抗原性製剤(調整物)にある。本発明で用いるブタサーコウイルス抗原(好ましくはタイプIIのサーコウイルス)およびブタパルボウイルス抗原は無毒化した生の全抗原、不活性化した生の全抗原、サブユニット抗原、組み換え生ベクターおよびDNAベクターから成る群の中から互いに独立して選択することができる。本発明の組合せ物は他の任意の適当な抗原または抗原性製剤を一緒に用いることができるということは理解できよう。所定の組合せに対して同じ形を用いる必要がないことも理解できよう。本発明の抗原性製剤は周知の方法で獣医学上許容されるビヒクルまたは賦形剤(さらに必要な場合には獣医学上許容されるアジュバント)をさらに含むことができる。
【0013】
本発明のさらに他の対象は、有効量の上記サーコウイルス+パルボウイルス抗原性製剤と、獣医学上許容されるビヒクルまたは賦形剤(さらに必要な場合には獣医学上許容されるアジュバント)とからなるPMWS症候群に対するワクチンにある。免疫抗原性組成物は免疫抗原性反応を誘発するが、この反応は保護的なものであることは必ずしも保護的でない場合もある。ワクチン組成物は保護的反応を誘発する。従って、「免疫抗原性組成物」には「ワクチン組成物」が含まれる(前者の用語は保護的組成物であるので)。
【0014】
本発明のさらに他の対象は、ブタサーコウイルスに対する抗原性製剤または免疫抗原性組成物またはワクチン、およびブタパルボウイルスに対する抗原性製剤または免疫抗原性組成物またはワクチンを含む個別包装した免疫抗原性またはワクチン接種キットにある。このキットは抗原性製剤、免疫抗原性組成物およびワクチンで記載の各種特徴を有することができる。
【0015】
本発明のさらに他の対象は、ブタサーコウイルスに対する免疫抗原性組成物またはワクチンと、ブタパルボウイルスに対する免疫抗原性組成物またはワクチンとを投与するか、各ウイルスに特有な各抗原性製剤を同一処方中に含む2価の免疫抗原性組成物またはワクチンを投与するPMWS症候群に対する免疫化またはワクチン接種の方法にある。この免疫化またはワクチン接種方法では特に上記のワクチンを用いる。
【0016】
本発明のさらに他の対象は、PMWS症候群予防用医薬組成物の製造における、パルボウイルスに対する抗原性製剤または免疫抗原性組成物またはワクチンとブタサーコウイルスに対する抗原性製剤または免疫抗原性組成物またはワクチンとを組合せた使用にある。
サーコウイルス抗原性製剤の製造用サーコウイルスは細胞株、特にPK/15細胞の継代で得ることができる。この培養上澄みまたは抽出物を抗原性製剤としては用いることができ、必要に応じて標準的な方法によって精製することができる。
【0017】
無毒化した抗原性製剤および無毒化した免疫抗原性組成物またはワクチンでの無毒化は通常の方法、例えば細胞の継代、好ましくはブタ細胞、特にPK/15細胞株の継代(特に50〜150、特に100回の継代)で行うことができる。この免疫抗原性組成物およびワクチンは一般に獣医学上許容される媒体または希釈液を含むことができ、必要に応じてさらに獣医学上許容されるアジュバントおよびフリーズドライ安定剤を含むことができる。
本発明の抗原性製剤、免疫抗原性組成物およびワクチンは上記の無毒化ウイルスを103〜107TCID50含むのが好ましい。
【0018】
本発明の抗原性製剤、免疫抗原性組成物およびワクチンは無毒化した生全ワクチンをベースとする免疫抗原性組成物およびワクチンにすることができる。無毒化した免疫抗原性組成物およびワクチンは獣医学上許容される媒体または希釈液を含むことができ、必要に応じてさらに獣医学上許容されるアジュバントを含むことができる。
【0019】
本発明のサーコウイルス(断片の形でもよい)は当業者に公知の方法で不活性化される。この不活性化は化学的方法、例えば抗原をホルムアルデヒド(ホルマリン)、パラフォルムアルデヒド、β−プロピオラクトン、エチレンイミンまたはその誘導体等の試薬で処理して行なうことができる。好ましい不活性化法は試薬、特にエチレンイミンまたはβ−プロピオラクトンで処理する方法である。
本発明の不活性化抗原性製剤および不活性化免疫抗原性組成物およびワクチンにはアジュバントを加え、当業者に公知の方法でエマルジョンの形、例えば油中水エマルジョンまたは水中油エマルジョン等の乳剤の形にするのが好ましい。一般的なアジュバント化合物を有効成分に添加してアジュバント処理することもできる。
【0020】
使用可能なアジュバントとしては例えば水酸化アルミニウム、サポニン(例えばQuillja saponinまたはQuil A;"Vaccin Design, The Subunit and Adjuvant Approach, 1995, Michael F. Powel と Mark J. Newman編、Plennum Press, New-York and London, p.210"参照)、Avridine(商標登録)(Vaccine Design p. 148参照)、DDA(ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド、Vaccine Design p. 157参照)、ポリホスファゼン(Vaccine Design p. 204参照)、さらには有機油、スクアラン(例えばSPT乳剤、Vaccine Design p. 147参照)、スクアレーン(例えばMF59、Vaccine Design p. 183参照)をベースとする水中油乳剤または代謝可能な油をベースとする油中水乳剤(好ましくは国際特許第WO-A-94-20071号による)および米国特許第5,422,109号に記載の乳剤を挙げることができる。アジュバントの組み合わせ、例えば乳剤Avridine(商標登録)またはDDAとの組み合せを選択することもできる。
本発明の抗原性製剤、免疫抗原性組成物およびワクチンは上記の不活性化全ウイルスを105〜108のTCID50含むのが好ましい。
【0021】
上記の生ワクチン用のアジュバントは不活性化ワクチン用のものから選択するこができる。乳剤が好ましい。不活性化ワクチン用のものには国際特許第WO-A-94-16681号に記載のものも加えることができる。
凍結安定剤としては例えばSPGA(Bovarnik et al., J. Bacteriology 59, 509, 950)、ソルビトール、マンニトール、スターチ、スクロース、デキストランまたはグルコース等の炭水化物、アルブミンまたはカゼイン等のプロテイン、これらの化合物の誘導体またはアルカリ金属燐酸塩等の緩衝剤を挙げることができる。
本発明の抗原性製剤、免疫抗原性組成物およびワクチンは1種以上の本発明のサーコウイルスおよび/またはパルボウイルスを有効成分(抗原)として含むことができる。
【0022】
本件出願人はさらに、配列ID番号1〜4で識別される4つのタイプIIのブタサーコウイルス単離株のゲノムを得た。株PK−15の配列は配列ID番号5で表される。本発明はこれと均等な配列すなわち上記配列の株の特徴または上記配列によりコードされるポリペプチドの機能を変更しない配列も含むものであるということは当然である。また、コードの欠失(degenerescence)により変化した配列も含むということは理解できよう。
本発明はさらに、厳密な条件下で上記配列と混成(ハイブリッド化)が可能であり、および/または、本発明株と高い相同性を有するという意味で均等な配列も含むものである。
【0023】
これらの配列およびその断片は適当なベクターを用いてインビトロまたはインビボでポリペプチドの有利に用いることができる。
特に、これに使用可能な本発明のDNA断片を形成するオープンリーディングフレーム(ORF1〜13)はタイプIIのサーコウイルスのゲノム配列で同定されている。本発明は、少なくともこれらのオープンリーディングフレーム(対応するアミノ酸配列)の一つを含む全てのポリペプチドに関するものである。特に、本発明は主としてORF4、ORF7、ORF10またはORF13で構成される蛋白に関するものである。
【0024】
インビトロのサブユニットを発現するための発現手段としては大腸菌(E. coli)またはバキュロウイルス(米国特許第4,745,051号)を用いるのが好ましい。上記の単数または複数のコード配列またはその断片をバキュロウイルスゲノム(例えばAutographa californica Nuclear Polyhedrosis Virus AcNPV)に組み込み、次いで、それを昆虫細胞、例えばSpodoptera fruigiperda Sf9(寄託番号ATCC CRL 1711)で増殖させる。また、イースト(例えば酵母)またはほ乳類細胞(例えばCHO、BHK)等の真核細胞でサブユニットを製造することもできる。
【0025】
本発明のさらに他の対象は、これらの発現手段によってインビトロで製造され、必要に応じて一般的な方法で精製されたポリペプチドのサブユニットの使用にある。サブユニット免疫抗原性組成物およびワクチンは、このようにして得られた少なくとも1つのポリペプチドまたはその断片を獣医学上許容される媒体または希釈液(必要に応じて獣医学上許容されるアジュバントをさらに含むことができる)中に含む。
【0026】
組み換え生タイプまたはDNAタイプのワクチンの免疫抗原性組成物およびワクチンの製造時にインビボ発現させるには単数または複数のコード化配列またはその断片を単数または複数のポリペプチドを発現できる条件下で適当な発現ベクターに挿入する。適切な生のベクターとしてはブタで増殖可能でブタに対しては非病原性の生ウイルスを当業者に周知の方法で使用するのが好ましい。特に、アウジェスキー病ウイルス、ブタアデノウイルス等のブタヘルペスウイルス、ポックスウイルス、特にワクシニアウイルス、トリポックスウイルス、カナリアポックスウイルス、ブタポックスウイルス等を用いることができる。DNAベクターをベクターとして用いることもできる(国際特許第WO-A-90-11092号、WO-A-93-19813号、WO-A-94-21797号、WO-A-95-20660号)。
【0027】
従って、本発明の他の対象は、このようにして調製されたベクターと、組み換え生タイプまたはDNA(ポリヌクレオチド)タイプの免疫抗原性組成物またはワクチンにある。これらの調製および使用、免疫抗原性組成物およびワクチンは獣医学上許容される媒体または希釈液を含むことができる。
DNA免疫抗原性組成物またはワクチンは、その定義上、抗原ポリペプチドをコード化するヌクレオチド配列を組み込み且つインビボで発現する、円形のワクチンプラスミド、スーパーコイル等または線状のDNA分子であるDNAベクターを含む。
組換えタイプおよびDNAタイプの免疫抗原性組成物およびワクチンはアジュバントを含むことができる。
【0028】
免疫化またはワクチン接種の組合せプログラムでは、上記のブタサーコウイルスおよびブタパルボウイルスに対する免疫化またはワクチン接種をブタの他の病原体、特にPMSW症候群に関連する病原体に対する免疫化またはワクチン接種と組合せることができる。本発明の免疫抗原性組成物またはワクチンはブタの他の病原体に対応する他のワクチン価を含むことができる。これらのブタの他の病原体はPRRS(Porcine Reproductory and Respiratory Syndrome:ブタ生殖器および呼吸器症候群)および/またはMycoplasma hyopneumonia、E. coli、および/または萎縮鼻炎(Atrophic Rhinitis)、および/または仮性狂犬病(アウジェスキー病)ウイルスおよび/またはブタインフルエンザおよび/またはアクチノバシラス胸膜肺炎菌および/またはブタコレラ、およびこれらの組合せの中から選択される。本発明の免疫化またはワクチン接種のプログラムおよびワクチンはサーコウイルスおよびパルボウイルスに対する免疫化またはワクチン接種と、PRRS(国際特許第WO-A-93-07898号、WO-A-94-18311号、フランス国特許第2,709,966号;C. Chareyre 他、第15回IPVS Congress,Birmingham, England, 5-9 July 1998, p. 139の議事録を参照)および/またはMycoplasma hyopneumonia(欧州特許第597,852号、第550,477号、第571,648号および前記の第15回IPVS CongressのO. Martinon 達、p. 157, 284, 285およびG. Reynaud達、p. 150を参照)および/またはブタインフルエンザとを組合せるのが好ましい。すなわち、任意の適当な免疫抗原性組成物またはワクチン、特に任意の市販のワクチンを用い、それと上記のブタサーコウイルスおよびブタパルボウイルスに対する免疫抗原性組成物またはワクチンとを組合せることができる。
【0029】
従って、本発明のさらに他の対象は免疫抗原性多価組成物および多価ワクチンと、多価ワクチンキットと、免疫化またはワクチン接種の組合せプログラムで使用可能な免疫化またはワクチン接種法にある。
以下、図面を参照して本発明の実施例をさらに詳細に説明する。しかし、本発明が下記実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0030】
実施例1
ブタサーコウイルス(circovirus)株の培養および分離
組織標本はフランス、カナダおよび米国で子豚の肺およびリンパ節から集めた。これらの子豚は離乳後多機能萎縮症候群に典型的な臨床的徴候を示したものである。ウイルスを単離するため組織標本は死体解剖直後に−70℃で冷凍した。
ウイルス単離のために無菌の乳鉢と乳棒を用いて無菌の砂で組織を粉砕し、イール(Earl)塩 (EMEM, BioWhittaker UK Ltd., Workingham, UK)、ペニシリン(100IU/ml)およびストレプトマイシン(100μm/ml)を含む最小培地(MEM−SA培地)中に約15%の組織標本を含む懸濁液を調製した。粉砕物をMEM−SAに溶解し、+4℃、3000gで30分間、遠心分離にかけて上澄みを回収した。
【0031】
細胞培地の接種前に、100μlのクロロホルムを2mlの各上澄みに添加し、室温で10分間混合した。この混合物を超遠心分離管に移し、10分間3000gで遠心分離して上澄みを回収した。次いで、この上澄みをウイルス分離実験で種菌として用いた。
全てのウイルス単離研究はブタサーコウイルス(PCV)、ペスチウイルス、ブタアデノウイルスおよびブタパルヴォウイルスに感染していないことが分かっているPK/15細胞培地で実施した(Allan G. et al., Pathogenesis of porcine circovirus experimental infections of colostrum-deprived piglets and examination of pig foetal material. Vet. Microbiol. 1995, 44, 49-64)。
【0032】
ブタサーコウイルスの単離は下記方法によって実施した:
PK/15細胞の単一層をトリプシン処理(トリプシン−versene混合物)によって集密的な培養から解離し、最終濃度が約400,000細胞/1mlであるペスチウイルス(=MEM−G培地)に感染していない15%のウシ胎児血清を含むMEM−SA培地に溶解した。次に、この細胞懸濁液の10mlの部分標本を2mlの前記接種材料の部分標本と混合し、最終混合物を2つの25cm2ファルコンフラスコに6mlの容積に分取した。+37℃で18時間、10%のCO2を含む雰囲気下で培養した。
【0033】
培養後、半集密的な単一層を300mMのD−グルコサミン(Cat # G48175、
Sigma-Aldrich株式会社、Poole, UK)で処理し(Tischr I. et al., Arch. Virol., 1987 96 39-57)、さらに37℃で48〜72時間培養を続けた。この最終培養に続いて、2つのファルコンの1方を3回凍結/融解サイクルにかけた。残りのファルコンのPK/15細胞はトリプシン−versene溶液で処理し、20mlのMEM−G培地中に再懸濁し、400,000細胞/ml濃度で75cm2ファルコン中に接種した。新しく接種されたフラスコは凍結/融解サイクル後に得られた対応する可溶化液5mlを添加して「超感染」させた。
【0034】
実施例2
免疫抗体法または切片上ハイブリッド形成法によるブタサーコウイルスを検出するためのするための細胞培地標本の調製
5mlの容積の「超感染」した懸濁液を回収し、無菌で脱脂したカバーガラスを含む直径55mmのペトリ皿中に接種した。フラスコ中およびカバーガラス上で+37℃で培養し、実施例1に記載のグルコサミンで処理した。カバーガラス上での培養はグルコサミン処理後24〜48時間で回収し、室温で10分間アセトンを用いて、または4時間緩衝剤処理した10%のホルムアルデヒドを用いて固定した。この固定後、全てのカバーガラスをシリカゲル上で−70℃で貯蔵してから、ハイブリッド形成の研究および細胞免疫の研究に使用した。
【0035】
実施例3
ハイブリッド形成法(in situ)によるPCV配列の検出法
ハイブリッド形成法(in situ)は病気のブタから集めた組織に対して実施し、
ホルムアルデヒドで固定し、ウイルス単離(実施例2参照)用に接種した細胞培地の調整で用い、カバーガラスに固定した。
PK/15ブタサーコウイルス(PCV)および感染性ニワトリ貧血症ウイルス(CAV)に対応する完全なゲノムプローブを用いた。1.7キロの塩基ペア(kbp)の挿入断片の形にクローン化されたPCVゲノムの複製型を含むプラスミドpPCVI(Meehan B. et al. Sequence of porcine circovirus DNA: affinities with plant circovirus, J. Gen. Virol. 1997, 78, 221-227)をPCV固有DNA源として用いた。2.3kbpの鳥サーコウイルスCAVの複製型を含む鳥プラスミドpCAAIを負対照として用いた。2つのプラスミドのグリセロール源をアルカリ法(Sambrook J. et al. Molecular cloning: A Laboratory Manual. 2nd Edition, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, New York, 1988)によってプラスミドの製造および精製で用い、これらはプローブ調製用のテンプレートとして用いた。PCVおよびCAVの完全なゲノムを表すサーコウイルスプローブはメーカー推薦の方法で市販の非放射性ラベリングキット("DIG DNA Labelling Kit"、Boehringer Mannheim, Lewis, UK)を用いて上記精製プラスミド(各プローブに1μg)およびヘキサヌクレオチドプライマーから製造した。
【0036】
ハイブリッド形成法(in situ)で使用する前に、プローブをジゴキシジェニンで標識化し、容積50〜100μlの純水に溶解した。
パラフィンに包み、ホルムアルデヒドで固定した病気のブタの組織標本と、ホルムアルデヒドで固定した感染細胞培地の製剤を下記方法でPCV核酸検出のために調製した:
5μm厚の切片をパラフィンに包まれた組織塊から切り出し、濃度を次第に薄くしたアルコール溶液中で再水和した。ホルムアルデヒドで固定した組織切片および細胞培地を15分間および5分間それぞれ5mMのEDTAを含む0.05MのTris−HCL緩衝剤(pH7.6)を用いた0.5%のプロテナーゼK溶液中で+37℃で培養した。次に、スライドガラスを加圧滅菌した蒸留水中の1%グリシン溶液中に30秒配置し、0.01MのPBS緩衝剤(燐酸緩衝食塩水)(pH7.2)で2度洗浄し、最後に無菌蒸留水で5分間洗浄した。スライドガラスを最後に外気で乾燥し、プローブと接触させた。
【0037】
各組織/プローブ製剤を清潔な脱脂カバーガラスで被覆し、+90℃の炉内に10分間配置した後、氷塊と1分間接触させ、最後に+37℃で18時間培養した。次に、調整物を2Xクエン酸ナトリウム塩(SSC)緩衝剤(pH7.0)に短時間含浸した後、2XのSSC緩衝剤中で5分間、2回洗浄し、最後にPBS緩衝剤中で5分間、2回洗浄した。
洗浄後、調整物を0.1Mのマレイン酸、0.15MのNaCL(pH7.5)(マレイン緩衝剤)の溶液中に10分間含浸し、マレイン緩衝剤中の遮断試薬の1%溶液(Cat # 1096176, Boehringer Mannheim UK, Lewis, East Sussex, UK)中で+37℃で20分間培養した。
【0038】
次に、調整物を遮断緩衝剤で希釈された抗ジゴキシジェニンモノクローナル性抗体(Boehringer Mannheim)の1/250溶液中で+37℃で1時間培養し、PBS中で洗浄し、最後に抗ネズミ免疫グロブリン抗体を用いて+37℃で30分間培養した。調整物をPBSで洗浄し、内因性ペルオキシダーゼ作用を室温で20分間、PBS中の0.5%水酸化ペルオキシド溶液で処理して遮断した。調整物を再度PBS中で洗浄し、使用直前に調製した3−アミノ−9−ジエチルカルバゾル(AEC)基質(Cambridge Bioscience, Cambridge, UK)で処理した。
最後に水道水で洗浄した後、調整物をヘマトキシリンで逆染色し、水道水で"青色化"して固定液(GVA Mount, Cambridge Bioscience, Cambridge, UK)で顕微鏡のカバーガラスに固定した。対照実験には無関係な負プローブ(CAV)と正プローブ(PCV)を病気のブタおよび病気ではないブタから得られた標本で使用することが含まれる。
【0039】
実施例4
免疫蛍光抗体法によるPCVの検出法
アセトンを用いて固定した全ての細胞倍地の最初のスクリーニングを貯蔵した大人のブタ血清の1/100希釈を用いた間接免疫蛍光抗体法(IIF)で実施した。この貯蔵血清は北アイルランドの25匹の大人の雌ブタからの血清を含み、PCV:ブタパルボウイルス、ブタアデノウイルスおよびPRRウイルスを含む広範囲のブタのウイルスに対する抗体を含むことで知られている。血清(PBSで希釈)を細胞培地と+37℃で1時間接触させた後、PBS中で2回洗浄してIIFを実施した。細胞培地をイソチオシアン酸フルオレセインに結合したPBSで1/80に希釈したウサギの抗ブタ免疫グロブリン抗体を用いて1時間染色し、PBSで洗浄し、グリセロール緩衝剤に固定し、紫外線下で顕微鏡観察した。
【0040】
実施例5
病気のブタの組織における切片上ハイブリッド形成結果
フランス、カナダおよびカリフォルニアの多機能性萎縮病変を有する子豚から集めた組織から調製したPCVゲノムプローブを用いた切片上ハイブリッド形成法から、研究された複数の病変部に病変部に関連するPCV核酸の存在が示された。これに対してPCVゲノムプローブを病気でないブタから集めた組織に用い時またはCAVプローブを病気のブタの組織に用いた時には何の徴候も見られなかった。PCV核酸の存在はサイトプラズムおよびカリフォルニアの子豚の肺の病変部を浸潤する多数の単核細胞の核に認められた。PCV核酸の存在は肺細胞、気管支および細気管支の上皮細胞および細動脈、細静脈およびリンパ管の内皮細胞にも見られた。
【0041】
病気のフランスのブタではPCV核酸の存在は多数の濾胞性リンパ細胞のサイトプラズマおよびリンパ節の同様な毛細血管内の単核細胞に検出された。また、PCV核酸は一次的合胞体にも検出された。これらの検出結果から、カリフォルニアのブタの肺、フランスのブタの腸間膜リンパ節およびカナダのブタの器官の標本を新規なブタサーコウイルス株の単離用に選択した。
【0042】
実施例6
新規なブタサーコウイルス株の細胞培養結果と、免疫蛍光抗体法による検出
多機能性萎縮症候群の臨床的徴候を示すフランスの子豚(Imp. 1008株)、カリフォルニアの子豚(Imp. 999株)およびカナダの子豚(Imp. 1010株)から集めた標本を培養した細胞培地には細胞変性作用(CPE)は全く見られなかった。しかし、アセトンを用いて固定した後、貯蔵されたブタのポリクローン化した血清を用いて培養した細胞培地から得られた製剤を免疫標識化することによって、カリフォルニアの子豚(Imp. 999株)の肺、フランスの子豚(Imp. 1008株)の縦隔リンパ節およびカナダの子豚(Imp. 1010株)の器官を用いて培養した培地中の多数の細胞に核蛍光が現れた。
【0043】
実施例7
ブタサーコウイルスのゲノムDNAの抽出
ブタサーコウイルス(PCV)の新規な株の複製型を72〜76時間の培養後に回収した感染したPK/15細胞培地(実施例1参照)(75cm2ファルコン10個)を用いて調製し、CAVの複製型のクローン化で記載したグルコサミンで処理した(Todd. D. et al., Dot blot hybridization assay for chicken anaemia agent using a cloned DNA probe. J. Clin. Microbiol. 1991, 29, 933-939)。この複製型の2本鎖DNAはHirt法(Hirt B. Selective extraction of polyoma virus DNA from infected cell cultures, J. Mol. Biol. 1967, 36, 365-369)の変形法で抽出した(Molitor T. W. et al. Porcine parvovirus DNA: characterization of the genomic and replicative form DNA of two virus isolates, Virology, 1984, 137, 241-254)に記載)。
【0044】
実施例8
ブタサーコウイルス Imp.999株のゲノムの複製型の制限地図
Hirt法で抽出されたDNA(1〜5μg)をメーカの推薦する方法に従ってS1ヌクレアーゼ(Amersham)で処理し、各種制限酵素(Boehringer Mannheim UK, Lewis, East Sussex, UK)で消化し、消化物をTodd達が記載の方法(Purification and biochemical characterization of chicken anemia agent. J. Gen. Virol. 1990, 71, 819-823)で、臭化エチジウムの存在下、1.5%のアガロースゲル上で電気泳動で分離した。Imp.999株の培地から抽出したDNAは独特のEcoRI部位、2つのSacI部位を有し、PstI部位は全く持たない。従って、この制限プロフィールは、逆にPstI部位を有し、EcoRI部位を全く持たないPCVのPK/15株(Meehan B. et al. Sequence of porcine circovirus) DNA: affinities with plant circovirus, 1997, 78, 221-227)が示す制限プロフィールとは異なっている。
【0045】
実施例9
ブタサーコウイルス Imp.999株のゲノムのクローン化
制限酵素EcoRIを有するPCV Imp.999株の2本鎖複製型の消化で生じた約1.8kbpの制限断片を市販のQiagen kit(QIAEXII Gel Extraction Kit, Cat # 20021, QIAGEN Ltd., Crawley, West Sussex, UK)を用いて1.5%アガロースゲル(実施例3参照)上で電気泳動で分離した。次に、このEcoRI−EcoRI制限断片を標準クローン化法(Sambrook J. et al. Molecular cloning: A Laboratory Manual. 2nd Edition, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, New York, 1988)によって予め同じ制限酵素を用いて消化し、脱リン酸したベクターpGEM-7(Promega, Medical Supply Company, Dublin, Ireland)と結合した。得られたプラスミドを標準的方法によってEscherichia coli JM109宿主株(Stratagene, La Jolla, USA)に変換した。同じく、PCV Imp.999株のEcoRI−EcoRI制限断片をベクターpBlueScript SK+(Stratagene, La Jolla, USA)のEcoRI部位にクローン化した。各宿主株に対して得られたクローンの中から所望の大きさの断片を有する少なくとも2つのクローンを選択した。次に、得られたクローンを培養し、Imp.999株の完全なゲノムを含むプラスミドを標準的なプラスミド調製および精製法によって少容量(2ml)または大容量(250ml)に精製した。
【0046】
実施例10
PCV Imp.999株のゲノムDNAの配列(2本鎖複製型)
2つのEcoRI Imp.999のクローン配列(クローンpGEM-7/2およびpGEM-7/8)をメーカー推薦の方法で配列キット"AmpliTaq DNA polymerase FS"(Cat # 402079 PE Applied Biosystems, Warrington, UK)および"Applied BioSystems AB1373A automatic sequencing apparatus"を用いてSangerのジデオキシヌクレオチド法で決定した。最初の配列反応はM13「前方」および「後方」自在プライマーを用いて実施した。続く配列反応は「DNA歩行」法によって実施した。その後の配列に必要なオリゴヌクレオチドはLife Technology(Inchinnan Business Park, Paisley, UK)によって合成された。
【0047】
得られた配列を集め、MacDNASIS version 3.2のソフトウェア(Cat # 22020101, Appligene, Durham, UK)を用いて分析した。各種のオープンリーディングフレームを"National Center for Biotechnology Information"(NCBI, Bethesda, MD, USA)サーバーで入手可能なBLAST algorithmを用いて解析した。
完全な配列(EcoRI-EcoRI)は配列ID番号3(図9〜図12)に表してある。この配列はこの株の配列を全て表しており、EcoRI部位の始めすなわち最初のヌクレオチドとしてGから任意に始まる。
【0048】
同様の方法で本発明の他の3つの分離株の配列を得た(配列ID番号1、2、
4および図1〜図4、図5〜図8、図13〜図16参照)。これら4つの株のゲノムの大きさは下記の通りである:
Imp.1011−48121 1767個のヌクレオチド
Imp.1011−48285 1767個のヌクレオチド
Imp.999 1768個のヌクレオチド
Imp.1010 1768個のヌクレオチド
【0049】
実施例11
PCV Imp.999株の配列の分析
Imp.999株から得られた配列をGenBankのデータバンクに収容された配列との相同性テストで用いた結果、検出された有意な相同性はPK/15株の配列(寄託番号Y09921)(図17〜26参照)と約76%の相同性があった。
データバンク(NABIサーバーのBLAST X algorithm)を用いた6つのフェーズでの配列の翻訳の相同性テストでは、アミノ酸レベルで、GenBank U49186配列でコードされるプラント(GenBank番号1841515)のサーコウイルスに類似のBBTBウイルスの理論的レプリカーゼに対応するオープンリーディングフレームと94%の相同性を示すということが分かった。
PCV Imp.999株から得られた配列と有意な相同性を示すものはデータバンクに収容された他の配列にはなかった。
多機能萎縮症候群の臨床的徴候を示すカリフォルニアの子豚から得られた病変部を用いて培養されたImp.999株から得られた配列のには解析から、この単分離ウイルスが新規なブタサーコウイルス株であることが明らかになった。
【0050】
実施例12
配列の比較分析
新規な4つのPCV株のヌクレオチド配列とPCVのPK/15株の配列(図17〜26)とを整列比較した。新規な4つの株と公知のPK/15株とに関する相同性マトリクスを作成した。結果は下記の通りである:
1:Imp.1011−48121
2:Imp.1011−48285
3:Imp.999
4:Imp.1010
5:PK/15
【0051】
【表1】
【0052】
2つのフランス株Imp. 1011-48121とImp. 1011-48285の相同性は99%以上(0.9977)である。2つの北米株Imp. 999とImp. 1010の相同性も99%以上(0.9949)以上である。フランス株と北米株との相同性はわずかに96%以上である。
これら全ての株とPK/15株との相同性は75〜76%の値に落ちる。
このことから、本発明の株はPK/15株に代表される種類とは異なる新規なブタサーコウイルスの代表であると言える。PK/15がタイプIを表すのに対し、PMWS症候群を示すブタから単離されたこの新規な株をタイプIIのブタサーコウイルスとよぶことにする。このタイプIIに属する株は実際には非常に離れた地理的領域から単離されたにもかかわらず、驚くべきヌクレオチド配列の相同性を示す。
【0053】
実施例13
新規なPCV株のゲノムによってコードされる蛋白の分析
Imp.1010単離株のヌクレオチド配列は多機能性萎縮症候群に関する他のサーコウイルス株を代表するものと考えられる。この配列をBLASTX algorithm(Altschl et al. J. Mol. Biol. 1990. 215. 403-410)と、ソフトウェアMacVector 6.0(Oxford Molecular Group, Oxford OX4 4GA, UK)のプログラムとを組み合わせを用いて詳細に分析した。この配列(環状ゲノム)上には20個のアミノ酸より大きいサイズのオープンリーディングフレーム(またはORF)が13個検出できた。この13個のORFは下記の通りである:
【0054】
【表2】
【0055】
各ORFの開始位置および終了位置は株1010のゲノムの図13〜図16に表された配列(配列ID番号4)を参照する。ORF1〜13の端部は株999と同一である。これらは下記ORF3と13を除き、株1011−48121および1011−48285とも同一である:
ORF3 1432−1539、センス、108nt、35aa
ORF3 314−1377、アンチセンス、705nt、234aa
これら13のORFの内で4つがクローン化ウイルスPCV PK/15のゲノム上に位置する類似のORFと有意な相同性を有する。多機能性萎縮症候群に関連するサーコウイルス単離株全てのゲノム上に存在するオープンリーディングフレームをそれぞれ分析した。これら4つのORFは下記の通り:
【0056】
【表3】
【0057】
各ORFの始めと終わりの位置は図13〜図16に表された配列(配列ID番号4)を参照する。ORFの大きさ(ヌクレオチド=ntで)は終止コドンを含む。
PCV Imp. 1010とPCV PK−15の単離株のゲノム機構の比較から、
2つのウイルスのゲノムに保存された4つのORFが同定できた。下記の表は観察された相同性の程度を表す:
【0058】
【表4】
【0059】
最大の相同性はORF4 Imp. 1010とORF1 PK−15との間に見られた(86%相同性)。このプロテインはおそらくウイルスのDNA複製に含まれ、ウイルスの複製に必須であるため、このことは予想されることである(Meehan et al., Gen. Virol. 1997,78; 221-227;Mankertz et al. J. Gen. Virol. 1998. 79. 381-384)。
ORF13 Imp. 1010とORF2 PK−15との間の配列同一性は余り強くない(66.4%の同一性)が、この2つのORFはそれぞれ、鳥サーコウイルスCAV(Meehan et al., Arch. Virol. 1992, 124. 301-319)の主構造プロテインのN−末端領域と同一な良く保存されたN−末端基本領域を有している。さらに、ORF7 Imp. 1010とORF3 PK−15との間と、ORF10 Imp. 1010とORF4 PK−15との間に大きな違いが見られた。PCV PK−15のORF3とORF4と比較すると、それぞれにImp. 1010分離株のORF7とORF10のC−末端領域に欠失がある。最大の配列相同性はORF7/ORF3(重複部分の水準において61.5%の相同性)とORF10/ORF4(重複部分の水準において83%の相同性)のN−末端領域の水準において見られる。
【0060】
ブタサーコウイルスのゲノム構造はゲノムが極端に高密度であるため非常に複雑であるように見える。主構造プロテインはおそらくブタサーコウイルスゲノムの同じ鎖上に位置する複数のオープンリーディングフレーム間のスプライシングに由来するものである。従って、上記の表に記載の全てのオープンリーディングフレーム(ORF1〜ORF13)でタイプIIのブタサーコウイルスにコードされた抗原プロテインの全てまたは一部を表すことができ、これらは特有の病気および/またはワクチン接種に使用可能な抗原である。本発明はこれらのORFを少なくとも1つ含む全てのプロテインに関するものである。本発明は主としてORF4、ORF7、ORF10またはORF13で構成されるプロテインに関するものである。
【0061】
実施例14
新規な株からクローンされたPCVゲノムの感染特性
Imp. 999単離株の完全なゲノム(複製型)を含むプラスミドpGEM-7/8をMeehan B. 達に記載の方法によってPK/15細胞に形質移入した(Characterization of viral DNAs from cells infected with chicken anemia agent: sequence analysis of the cloned replicative form and transfection capabilities of cloned genome gragments. Arch. Virol. 1992, 124. 301-319)。未感染のPK/15細胞に形質移入した後の最初の継代に対して実施された免疫抗体法の分析(実施例4参照)から、クローンpGEM-7/8のプラスミドは感染性PCVウイルスを誘導することが示された。感染性PCVの遺伝物質を含むクローンが利用可能になったことによってウイルス性ゲノムに任意の有用な処置をして無毒化ワクチンまたは組み換えワクチンを製造し、或いは診断キット用抗原を製造することができ、変成PCVウイルス(ブタで無毒化または欠失)を製造することができるようになった。
【0062】
実施例15
インビトロ培養によるPCV抗原の製造
感染していないPK/15細胞の培養およびウイルス処置を実施例1と同じ方法で実施した。感染細胞を37℃で4日間培養後、トリプシン処理し、回収し、命名した。次の継代は1mlにつき400,000個の感染細胞を接種した。
【0063】
実施例16
ウイルス性抗原の不活化
ウイルス培養の最後に、感染した細胞を回収し、超音波(Branson Sonifier)またはロータースタータータイプのコロイドミル(UltraTurrax, IKA)を用いて溶解した。次に、懸濁液を3700gで30分間、遠心分離した。このウイルス懸濁液を+37℃で18時間、0.1%エチレンイミンで、或いは、+28℃で24時間、竈−プロピオラクトンで不活化した。ウイルス価が不十分な場合にはウイルス懸濁液を300kDaのメンブレン(Millipore PTMK300)を用いた限外濾過で濃縮した。不活化ウイルス懸濁液は+5℃で貯蔵した。
【0064】
実施例17
有機油をベースにしたワクチン乳剤の製造
下記処方でワクチンを調製した:
不活化ブタサーコウイルス懸濁液 : 250ml
Mondanide(商標登録)ISA 70(SEPPIC) : 750ml
水相および油相は濾過によって別々に滅菌した。この乳剤はシルバーソンμタービン乳化機を用いて各成分を混合し、均質化して調製した。
一回のワクチン投与量は約107.5のTCID50を含む。皮膚経路の一回のワクチン投与容量は0.5ml、筋肉経路の投与量は2mlである。
このワクチンはParvovax(登録商標)ワクチンと組合せて多機能性萎縮症候群を防ぐためのワクチン接種プログラムで用いられる。
【0065】
実施例18
代謝可能な油ベースのワクチン乳剤の製造
下記処方でワクチンを調製した:
不活化ブタサーコウイルス懸濁液: 200ml
Dehymuls HRE 7(Henkel) : 60ml
Radia 7204(Oleofina) : 740ml
水相および油相は濾過によって別々に滅菌した。この乳剤はシルバーソンμタービン乳化機を用いて各成分を混合し、均質化して調製した。
一回のワクチン投与量は約107.5のTCID50を含む。皮膚経路の一回のワクチン投与容量は0.5ml、筋肉内経路の投与量は2mlである。
このワクチンはParvovax(登録商標)ワクチンと組合せて多機能性萎縮症候群を防ぐためのワクチン接種プログラムで用いられる。
【0066】
実施例19
過免疫血清(PCV−T)、PK/15から調製されたモノクローナル抗体F99およびカナダ株から調製された過免疫血清(PCV−C)で汚染されたアメリカおよびフランスのPCVウイルス株およびPK/15の間接免疫抗体法の結果
【0067】
【表5】
* 間接的免疫抗体法で正の反応を示した血清またはモノクローナル抗体の最後の希釈液の逆数。
【0068】
実施例20
ブタ多機能性萎縮症候群の実験的産生−プロトコル1
帝王切開で生まれ、隔離飼育器に入れた生後3日の純粋隔離群の子豚にPCVウイルス溶液を接種した。タイプIIのPCVには病気のブタから得られたリンパ節ホモジネートから得られたImp.1010単離株およびウイルスを用いた。5つの群を作った。〔表6〕の1.5mlのウイルス溶液を生後3日の全ての子豚に口鼻経路で接種した。
【0069】
【表6】
【0070】
抗原投与実験の結果
5週間の観察期間中に、B群の1匹の子豚に有意な消耗が見られたほかは臨床的徴候が見られなかった。死体解剖ではA群、B群、C群の子豚にリンパ節、特に顎下、気管支、腸間膜、腸骨および大腿の神経節の過形成(D群、E群の子豚の2〜10倍のサイズ)が見られた。この過形成は単球およびマクロファージの浸潤によって皮質領がかなり拡大することに関係がある。
A群、B群、C群の子豚には気管支リンパ組織の過形成も見られる。
各A群、B群、C群の1匹の子豚に肺炎が認められる。
有意な消耗が見られるB群の子豚、およびA群の1匹の子豚には胃潰瘍が認められる。
【0071】
さらに、A群、B群、C群の全ての子豚には胃腸の筋層に筋肉炎が認められる。
A群、B群、C群の大部分の子豚には心筋炎、リンパ球の多巣性肝炎、マクロファージおよび好酸球の浸潤、ならびに皮質および延髄の間質性腎炎が認められる。
C群の1匹の子豚は肝臓の表面に明らかな播種性の病巣があり、通常よりもサイズが大きい。
D群およびE群の子豚に病変は認められなかった。
A群、B群、C群の子豚の器官からサーコウイルスを単離した。
【0072】
実施例21
ブタ多機能萎縮症候群の実験的再産生−プロトコル2、3
出生後に母親から隔離した通常飼育の子豚にタイプIIのPCVウイルス、ブタパルボウイルスまたはこれら2つのウイルスの混合物ウイルス溶液を接種した。
タイプIIのPCVウイルスにはImp.1010およびImp.1011単離株(株48121)を用いた。
PPVウイルスにはカナダの単離株Imp.1005を用いる。このウイルスは周知な他のブタパルボウイルス株(PPV株NADL−2およびKresse株)の配列と同一の1つの配列(配列決定されたゲノムの1/3)を有する。
2つの実験的プロトコルを実施した。
【0073】
プロトコル2
生後3日の子豚からなる3つの群を作成した。全ての子豚に〔表7〕の1mlのウイルス溶液を口鼻経路で接種した。
【0074】
【表7】
【0075】
抗原投与実験の結果
A群:接種の21日後に2匹の子豚が死んだ。24日後に1匹の子豚を無痛屠殺した。
B群:接種の23日後に1匹の子豚が死んだ。24日後に1匹の子豚を無痛屠殺した。
感染後に死んだ子豚の死体解剖では有意な巨視的病変の存在が示された:胸膜腔中の体液の存在、肺浮腫、腎臓の出血、腎臓上のピン頭形の淡い色の病変、肝臓の壊死がみられた。これらの病変はフィールドでみられる病変と同一である。
屠殺した子豚の死亡解剖では巨視的病変はみられなかった。
【0076】
感染後に死んだA群およびB群の子豚およびこれら2つの群の屠殺した子豚から取り出した器官に対して行った組織学試験ではフィールドの子豚で見られるブタ多機能萎縮症候群の病変の典型的かつ完全なパターンがみられた:肝臓の壊死、リンパ節の壊死、膵臓の壊死、腎臓の焦点壊死および激しい出血、肺中の合胞体の存在、核封入体の存在を伴う肝細胞の激しい壊死。
これら全ての病変(死んだブタまたは犠牲のブタ)で大量のPCV抗原が発見されたが、これらの同じ病変にPPV抗原の存在を示すことができなかったことは注目すべきである。
C群の対照子豚からは病変を検出できなかった。
【0077】
プロトコル3
生後4週間の子豚からなる4つの群を作成した。全ての子豚に〔表8〕の1mlのウイルス溶液を口鼻経路で接種した。
【0078】
【表8】
【0079】
抗原投与実験の結果
各実験群(B群、C群、D群)の1匹の「対照」ブタおよび2匹のブタを接種の2週間後に無痛屠殺し、死体解剖した。D群(PCV+PPV同時感染)の2匹の子豚に有意な免疫組織学的病変が認められた。これらの病変にブタパルボウイルスの存在を示すことはできなかったが、D群の全ての子豚にブタパルボウイルスに関連するセロコンバージョンが認められたことは注目すべきである。
対照子豚および他の群の子豚には巨視的または組織学的病変を検出することはできなかった。
【0080】
従って、PCV+PPVの組合せによってブタ多機能萎縮症候群の典型的な組織学的病変を再生することができるように思われる。
これら2つの実験的プロトコルから、PCV+PPV混合物としてPCVのみを接種することによってブタ多機能萎縮症候群を多かれ少なかれ大量に再生できるが、病変からはブタサーコウイルスしか検出できないことが理解できる。逆に、PPVのみに実験的に感染させることによって(プロトコル3のB群)、巨視的および組織学的病変を誘発させることはできない。しかし、PVCの存在下では、生後4週間の子豚に病変の出現が認められた(プロトコル3のD群)。
【0081】
[配列表]
配列ID番号1 = Imp.1011−48121株のゲノムのDNA配列
配列ID番号2 = Imp.1011−48285株のゲノムのDNA配列
配列ID番号3 = Imp.999株のゲノムのDNA配列
配列ID番号4 = Imp.1010株のゲノムのDNA配列
配列ID番号5 = PK/15株のゲノムのDNA配列
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブタサーコウイルス抗原とブタパルボウイルス抗原とを含む、PMWS症候群に対する抗原性製剤。
【請求項2】
タイプIIのブタサーコウイルス抗原を含む請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
タイプIIのブタサーコウイルス抗原がECACCに下記寄託番号で寄託された調整品の中から成る群の中から選択される抗原である請求項2に記載の製剤:
寄託番号第V97100219号
寄託番号第V97100218号
寄託番号第V97100217号
寄託番号第V98011608号
寄託番号第V98011609号。
【請求項4】
ブタサーコウイルス抗原およびブタパルボウイルス抗原が、互いに独立して、無毒化した生の全抗原、不活性化した生の全抗原、サブユニット抗原、組み換え生ベクターおよびDNAベクターから成る群の中から選択される請求項1〜3のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項5】
ブタの他の病原体に対応する他のワクチン価をさらに含む請求項1〜4のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項6】
他のワクチン価がPRRS、Mycoplasma hyopneumonia、アクチノバシラス胸膜肺炎菌、大腸菌、ブタ萎縮鼻炎、仮性狂犬病、ブタコレラ、ブタインフルエンザおよびこれらの組合せから成る群の中から選択される請求項5に記載の製剤。
【請求項7】
他のワクチン価がPRRSである請求項5に記載の製剤。
【請求項8】
有効量の請求項1〜7のいずれか一項に記載の抗原性製剤と、獣医学上許容されるビヒクルまたは賦形剤とからなるPMWS症候群に対するワクチン。
【請求項9】
獣医学上許容されるアジュバントを含む請求項8に記載のワクチン。
【請求項10】
複数のブタサーコウイルス抗原を含む請求項8または9に記載のワクチン。
【請求項11】
ORF1〜13から成る群の中から選択されるサーコウイルスのオープンリーディングフレームでコード化されたサーコウイルス抗原を含む請求項8〜10のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項12】
ORF4,7,10および13から成る群の中から選択されるサーコウイルスのオープンリーディングフレームでコード化されたサーコウイルス抗原を含む請求項11に記載のワクチン。
【請求項13】
ブタに対して病原性がなく且つブタ内で増殖可能な生ウイルスおよびDNAベクターの中から選択される発現ベクターを含み、この発現ベクターがORFを含み且つORFを発現する請求項8〜12のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項14】
ウイルス性ベクターがブタヘルペスウイルス、ブタアデノウイルス、ブタポックスウイルスから成る群の中から選択されるウイルスである請求項13に記載のワクチン。
【請求項15】
ウイルス性ベクターがアウジェスキー病(Aujesky's disease)ウイルス、ワクシニアウイルス、トリポックスウイルス、カナリアポックスウイルス、ブタポックスウイルスから成る群の中から選択されるウイルスである請求項14に記載のワクチン。
【請求項16】
請求項8〜15のいずれか一項に記載のブタサーコウイルスに対するワクチンとブタパルボウイルスに対するワクチンと個別包装したワクチン接種キット。
【請求項1】
ブタサーコウイルス抗原とブタパルボウイルス抗原とを含む、PMWS症候群に対する抗原性製剤。
【請求項2】
タイプIIのブタサーコウイルス抗原を含む請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
タイプIIのブタサーコウイルス抗原がECACCに下記寄託番号で寄託された調整品の中から成る群の中から選択される抗原である請求項2に記載の製剤:
寄託番号第V97100219号
寄託番号第V97100218号
寄託番号第V97100217号
寄託番号第V98011608号
寄託番号第V98011609号。
【請求項4】
ブタサーコウイルス抗原およびブタパルボウイルス抗原が、互いに独立して、無毒化した生の全抗原、不活性化した生の全抗原、サブユニット抗原、組み換え生ベクターおよびDNAベクターから成る群の中から選択される請求項1〜3のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項5】
ブタの他の病原体に対応する他のワクチン価をさらに含む請求項1〜4のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項6】
他のワクチン価がPRRS、Mycoplasma hyopneumonia、アクチノバシラス胸膜肺炎菌、大腸菌、ブタ萎縮鼻炎、仮性狂犬病、ブタコレラ、ブタインフルエンザおよびこれらの組合せから成る群の中から選択される請求項5に記載の製剤。
【請求項7】
他のワクチン価がPRRSである請求項5に記載の製剤。
【請求項8】
有効量の請求項1〜7のいずれか一項に記載の抗原性製剤と、獣医学上許容されるビヒクルまたは賦形剤とからなるPMWS症候群に対するワクチン。
【請求項9】
獣医学上許容されるアジュバントを含む請求項8に記載のワクチン。
【請求項10】
複数のブタサーコウイルス抗原を含む請求項8または9に記載のワクチン。
【請求項11】
ORF1〜13から成る群の中から選択されるサーコウイルスのオープンリーディングフレームでコード化されたサーコウイルス抗原を含む請求項8〜10のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項12】
ORF4,7,10および13から成る群の中から選択されるサーコウイルスのオープンリーディングフレームでコード化されたサーコウイルス抗原を含む請求項11に記載のワクチン。
【請求項13】
ブタに対して病原性がなく且つブタ内で増殖可能な生ウイルスおよびDNAベクターの中から選択される発現ベクターを含み、この発現ベクターがORFを含み且つORFを発現する請求項8〜12のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項14】
ウイルス性ベクターがブタヘルペスウイルス、ブタアデノウイルス、ブタポックスウイルスから成る群の中から選択されるウイルスである請求項13に記載のワクチン。
【請求項15】
ウイルス性ベクターがアウジェスキー病(Aujesky's disease)ウイルス、ワクシニアウイルス、トリポックスウイルス、カナリアポックスウイルス、ブタポックスウイルスから成る群の中から選択されるウイルスである請求項14に記載のワクチン。
【請求項16】
請求項8〜15のいずれか一項に記載のブタサーコウイルスに対するワクチンとブタパルボウイルスに対するワクチンと個別包装したワクチン接種キット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
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【図10】
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【図16】
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【図19】
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【図23】
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【図25】
【図26】
【公開番号】特開2010−222359(P2010−222359A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−100018(P2010−100018)
【出願日】平成22年4月23日(2010.4.23)
【分割の表示】特願2000−557855(P2000−557855)の分割
【原出願日】平成11年6月28日(1999.6.28)
【出願人】(503365659)
【出願人】(500155350)クィーンズ ユニバーシティ オブ ベルファスト (5)
【出願人】(500155361)ユニバーシティ オブ サスカチュワン (5)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月23日(2010.4.23)
【分割の表示】特願2000−557855(P2000−557855)の分割
【原出願日】平成11年6月28日(1999.6.28)
【出願人】(503365659)
【出願人】(500155350)クィーンズ ユニバーシティ オブ ベルファスト (5)
【出願人】(500155361)ユニバーシティ オブ サスカチュワン (5)
【Fターム(参考)】
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