説明

ブタサーコウイルス2型ワクチン

本発明はブタサーコウイルス2型(PCV2)のORF3遺伝子に基づく、及びそのアポトーシスへの役割の検証に基づく。本発明はPCV2に対する弱毒化生ワクチンの開発を導く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、本発明は新規のブタサーコウイルス2型(PCV2)ウイルスの作成、及び同ウイルスに対するワクチンの準備に関する。
本明細書本文で引用されている全ての文献("本明細書では、以下引用した文献")、及び本明細書に引用した文献内で引用又は参照した全ての文献は、全ての目的について参考のため本明細書に組み込まれる。
本明細書本文で引用したいずれの文献も本発明に関しては従来技術であるという承認はない。
【背景技術】
【0002】
離乳後多臓器消耗症候群(Postweaning Multisystemic Wasting Syndrome:PMWS)
PMWSは養ブタ場及び離乳後のブタに影響を与える新しい疾病である。いまや多くの養ブタ生産国で風土病となっており、世界中の養ブタ産業において、潜在的に経済的影響を引き起こしうる。PMWSは4〜20週齢のブタに発症するとされているが(42)、主に5〜18週齢のブタが感染する。PMWSの臨床症状としては、進行性体重減少、呼吸困難、頻呼吸、貧血、下痢、及び黄疸がある。死亡率は1〜2%から合併症が起こった場合は最大30%まで変わるかも知れない。
ブタサーコウイルス(Porcine circovirus:PCV)は当初ブタの腎細胞培養(PK15 ATCC CCL-33)の汚染物質として同定された(47)。このPCVビリオン(ウイルス粒子)は正二十面体のエンベロープを欠いた直径17nmの粒子で、1.76kbの単鎖の環状DNAを持つ。PCVはオウム科の嘴羽毛病ウイルス、ガチョウサーコウイルス、カナリアサーコウイルス、ハトサーコウイルスのような他の動物サーコウイルスが属する、サーコウイルス科(Circoviridae)サーコウイルス属(Circovirus)に分類されている(35,38,50,51,52)。PCVには二つの遺伝子型があることが分かっている。PK15細胞由来のPCVは、ブタに対し非病原性であるとみなされ(3,48)、PCV1型(PCV1)と命名された。血清調査によると、PCV1はブタに広く存在していることが示されたが、PCV1が関連する動物の疾病は認められていない。一方、PCV2型(PCV2)は、いまや離乳後多臓器消耗症候群(Postweaning Multisystemic Wasting Syndrome:PMWS)に関係する主要な感染因子として認められている(2、6、20)。PMWSは新たに出現したブタの疾病であり、1991年にカナダで発生して以来、世界中に広まった(1,8)。
【0003】
PCV2とその作用形態
アポトーシスは、特有の形態変化や生化学変化を伴って細胞が自壊するという能動的な生理学的過程である(39)。多くのウイルスは、自然界のライフサイクルの一環としてアポトーシスを誘発する(39)。一方でアポトーシスは、ウイルス因子に応答する炎症又は免疫反応を最小限に押さえることによって、宿主細胞が産生した子孫ビリオンの放出と散布に重要なメカニズムを果たしているかも知れない。またその反面、ウイルスが誘発したアポトーシスを、感染した細胞を意図的に破壊するという多細胞宿主生物の防衛戦略としてみなすことが可能である。アポトーシス細胞死の原因となるウイルスの大部分は、プログラム死の実行過程としてのカスパーゼカスケードの活性化を誘発する。アポトーシスは、PMWSに自然感染したブタにおけるB細胞枯渇の原因となるメカニズムとして提議された(43)が、リンパ球アポトーシスがPMWSリンパ球枯渇病変の発生における一般的な現象ではない、という矛盾する結果が近年報告されている(24、37)。
PCV1又はPCV2分離株夫々の株内の全体としてのDNA配列相同性は90%を超える。一方PCV1とPCV2分離株間の配列相同性は68〜76%である。2種の主要なオープンリーディングフレーム(読み取り枠:ORFs)が識別されている。そのうち、rep遺伝子として知られている、PCV−ORF1はウイルス複製に関わる35.7kDaのタンパク質をコードする(26)、またORF2;すなわちcap遺伝子は、主要免疫原性がある27.8kDaのカプシドタンパク質をコードする(9,30,31)。レプリカーゼORF1とカプシドタンパク質ORF2に加えて、コンピューター調査では5kDaより大きいタンパク質をコードする潜在性ORFを他に5種含むと予測される(27)。これらの潜在性ORFが発現するかどうか、発現されたタンパク質がウイルス複製に必要であるかどうかは今後の説明が待たれる。
【0004】
PCV2について、前記5種のORFsのうち最大のORFは、本明細書でORF3と命名された、長さ315bpの断片である。ORF3は既知のいずれのタンパク質とも類似性がない。対照的にPCV1のその対応領域に位置するORF断片は長さ612bpであり、PCV2のORF3より長い。さらにPCV2のORF3とPCV1の対応領域間のアミノ酸同一性は61.5%にすぎない。この差異がPCV2病原性に関連があるかどうかについてはまだ決定されていない。
PMWSに感染したブタからの組織病理学的所見と疾病の特徴は、いくつかの条件下では、PCV2がブタにおける2次的免疫不全の原因となる可能性を示唆している。顕微鏡病変では、PMWSに感染したブタのリンパ系組織のマクロファージ侵入と共に、濾胞性と内濾胞領域のリンパ球枯渇が特徴的である。さらにPCV2と共に他の感染因子による共同感染が、疾病の発生と重篤度を増大させる(2,3)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
いくつかの農場においては死亡率が無視できないので、PMWSは現在なお世界中の養ブタ産業において主要な問題である。PCV2に対するDNAワクチン又はサブユニットワクチンの開発情報がいくつかあるが、特定の病原体への弱毒化ワクチンの有効性及び予防効果は依然として重要な検討材料である。この疾病の広がりを予防する効果的な弱毒化生ワクチンはまだ知られていない。
現在のところ、二種類の有効な既知のワクチンがある:ORF2組換え型サブユニットワクチンとDNAワクチンである。両ワクチンともPCV2複製を完全に抑制するには有効であるが、有利な特性に欠くため、PCV2に対する効果的なワクチンとしての商品価値は低い。DNAワクチンはブタの液性応答と細胞性応答を誘発可能であるが、ワクチンの適正投与を可能にする適切な輸送システムを欠いている。このワクチンの影響により、感染後3週間にのみ現れるPCV2感染を有効に減らすことが出来るはずである(5)。サブユニットワクチンは、PCV2に対しより効果的に働くが、液性免疫を刺激するのみである。バキュロウイルスシステム、を用いて得たタンパク質濃度が低いので、PCV2に対して動物を免役するためには複数回の投与が必要となり、従って効率が減少する。また、PCV2感染後3〜4週間の間、実験動物の深刻な成長遅延が依然として顕著である。さらに両ワクチンに対するプライム・ブーストプロトコールはまだ決められていない。
その結果、PMWSに効く改善されたワクチンの必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ウイルスにおけるORF3遺伝子の検出、及びアポトーシスにおける役割の検証に基づく。本発見はPCV2に対する弱毒化生ワクチンの開発を導く。
本発明の第1態様は、少なくとも部分的に異常ORF3発現により弱毒化された免疫原性弱毒化PCV2ウイルスを提供する。
本発明の第2態様は上記本発明の第1態様のウイルスの免疫学的有効量を含むワクチンを提供する。
本発明の第3態様は、上記本発明の第2態様のワクチンを患畜(subject)に投与することから成る、PCV2に対する免疫応答を誘発する方法である。
本発明の第4態様は、医薬への使用の為に本発明の第1態様のウイルスを提供する。
本発明の第5態様は、患畜におけるPCV2に対する液性及び細胞性免疫応答を誘発するウイルスを提供する。
本発明の第6態様は、患畜においてPCV2に対する免疫応答を誘発する医薬品の製造における、本発明の第1態様に基づくウイルスの使用を提供する。
本発明の第7態様は、本発明の第1態様に基づくウイルス産生のための宿主細胞を提供する。
本発明の第8態様は、本発明の第1態様に基づくウイルスを用いた治療の方法の提供であり、該方法は、該患畜に対して、免疫的有効量のウイルスを投与することを含む。
本発明の第9態様は、本発明の第1態様に基づくウイルス産生の方法の提供であり、該方法は、ウイルス産生を可能にする手順の適切な条件下で、本発明の第7態様の宿主細胞を培養することを含む。
【0007】
本発明の第10態様は、アポトーシス誘発が可能なタンパク質を提供する。1実施態様において、該タンパク質は配列番号1に記載のアミノ酸配列MVTIPPLVSRWFPVCGFRVCKISSPFAFTTTRWPHNDVYIRLPITLLHFPAHFQKFSQPAEISDKRYRVLLCNGHQTPALQQGTHSSRQVTPLSLRSRSSTFYQを含む。
本発明の第11態様は、本発明の第10態様のタンパク質をコードする核酸分子を提供する。1実施態様において、該核酸分子は配列番号2に記載の配列ATGGTAACCATCCCACCACTTGTTTCTAGGTGGTTTCCAGTATGTGGTTTCCGGGTCTGCAAAATTAGCAGCCCATTTGCTTTTACCACAACCAGGTGGCCCCACAATGACGTGTACATTCGTCTTCCAATCACGCTTCTGCATTTTCCCGCTCACTTTCAAAAGTTCAGCCAGCCCGCGGAAATTTCTGACAAACGTTACAGGGTGCTGCTCTGCAACGGTCACCAGACTCCCGCTCTCCAACAAGGTACTCACAGCAGTAGACAGGTCACTCCGTTGTCCTTGAGATCTAGGAGCTCCACATTCTATCAGTAAを含む。
本発明の第12態様は、第11態様に基づく核酸分子の突然変異型を含む核酸分子を提供する。該核酸分子は、核酸分子によってコード化されたタンパク質が異常発現する突然変異である。
本発明の第13態様は、本発明の第12態様に基づく核酸分子によってコード化されたタンパク質を提供する。
本発明の第14態様は、本発明の第11態様又は12態様に基づく核酸分子を含むベクター、ウイルス又は宿主細胞を提供する。
本発明の第15態様は、本発明の第10又は13態様のタンパク質と結合可能な抗体を提供する。
本発明の第16態様は、本発明10又は13態様のタンパク質と結合可能な抗体を産生する方法を提供する。
【0008】
本発明の第17態様は、本発明の核酸分子、タンパク質、抗体、拮抗剤、作用剤、ウイルス、ベクター、又は宿主細胞を含む医薬組成物を提供する。
本発明の第18態様は、本発明の第10態様のタンパク質の作用剤又は拮抗剤を検証する方法を提供する。
該方法は以下:
(i)本発明の第10態様のタンパク質を試験化合物と接触させ、その試験化合物が該タンパク質のアポトーシス誘発能を強めるか、減少させるかどうかを吟味すること;又は
(ii)細胞内で本発明の第10態様のタンパク質を発現させ、該細胞を試験化合物に暴露し、その試験化合物が該タンパク質のアポトーシス誘発能を強めるか、減少させるかどうかを吟味すること、
を含んでもよい。
本発明の第19態様は、本発明の第18態様によって検証された作用剤又は拮抗剤を提供する。
本発明の第20態様は、離乳後多臓器消耗症候群の誘発能のある、少なくとも1つの候補分子をスクリーニングする方法を提供する。その方法は以下:
(i)生体サンプルと少なくとも1つの候補分子を接触させること;及び
(ii)少なくとも1つの候補分子によって生体サンプルに誘発されたアポトーシスのレベルを検定すること。アポトーシスの該レベルは、少なくとも1つの候補分子による離乳後多臓器消耗症候群誘発能を表示する、
を含んでもよい。
ある実施態様において、該方法は、さらに候補分子がタンパク質のアポトーシス誘発能を強めるか減少させるかどうかを測定する段階を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本節では、以下に記載した用語の解釈と熟語の指針(及び、その適切な文法上の変化)の提供を意図する。
本明細書において使用する際、単数形「a」「an」そして「the」は本文に明確に特記のない限り、複数の言及を含む。例えば、用語「一つの因子(an agent)」はその混合物を含む複数の因子を含む。
本明細書で使用する際、用語「からなる(comprising)」は「含む(including)」という意味である。本明細書の文脈において、用語「からなる」は、"主に含むこと"であり、必ずしも"唯一である"意味ではない。「comprise」や「comprises」のような「comprising」という用語のバリエーションは、同様に様々な意味を持つ。
本明細書で使用する際、用語「ワクチン(vaccine)」は、動物の免疫システムを刺激するために使用してもよい因子を含む。このように、免疫予防を、免疫システムによって自己抗原と認識されていない、抗原に対して提供してもよい。
用語「免疫化(immunization)」は、患畜へ免疫原を運搬するプロセスを含む。例えば、免疫化は、継続する高レベルの抗体、及び/又は細胞応答を可能にし、そこではTリンパ球が、免疫処置した動物体内で病原体を殺す又は抑制することが出来て、また、過去にその動物が暴露を受けた病原体や抗原に対して向けられる。
【0010】
用語「タンパク質(protein)」は、ペプチド結合で連結したアミノ酸で構成されたポリマーを意味する。本発明の目的上、「ポリペプチド」は、機能的又は活性を有するその断片などとして、全長タンパク質の一部を構成してもよいが、用語「タンパク質」及び「ポリペプチド」は、本明細書では交互に使用されている。あるいは用語「タンパク質」は、機能的な変異体を構成してもよい。
本明細書で用いる際、用語「ポリヌクレオチド」は、デオキシリボヌクレオチドとリボヌクレオチド塩基、又は既知の類似体、又は天然ヌクレオチド、又はそれらの混合物からなる単鎖又は2重鎖ポリマーを示す。
本開示全体に渡って、本発明の様々な態様を、レンジフォーマットに示すことができる。レンジフォーマットにおける記述は、単に便宜上と簡潔さのためであり、本発明の範囲を柔軟性無く制限するものとして解釈されるべきではないことを理解すべきである。したがって、記述の範囲は、その範囲内にある個々の数値のみならず、すべての可能性がある部分的な範囲を特別に開示したとみなすべきである。例えば、1〜6のような範囲の説明は、対象範囲内の個々の数、例えば1,2,3,4,5,6のみならず、1〜3、1〜4、1〜5、2〜4、2〜6、3〜6などの、特定の開示した部分範囲とみなすべきである。これはその範囲の幅に関わらず適用される。
特記のない限り、本明細書内の全ての専門用語と科学用語は、本発明が属する当業者に通常理解されているのと同じ意味である。
【0011】
弱毒化ウイルス
本発明は免疫原性のPCV2弱毒化ウイルスを提供するものであり、その弱毒化は少なくとも部分的に、異常ORF3の発現に起因する。
本発明の弱毒化ウイルスは免疫原性がある;すなわちこのウイルスは免疫応答を誘発することができる。弱毒化ウイルスを、ワクチン組成物に用いてもよい。何故ならば以下で説明するように、その後の野生型PCV2ウイルスによる攻撃に対する防御的免疫応答を誘発するためである。
本発明のウイルスは免疫応答を誘発することができ、また感染性を有するが、免疫化された宿主内において許容できないPMWS症状(又はPCV2によって生じる可能性のある他の疾病)を引き起こさないように、ウイルスは十分に弱毒化されている。ある実施態様において、ウイルスは十分に弱毒化されているため、ほとんどの免疫化された個体において感染症状は生じない。
その弱毒化は、異常ORF3発現に少なくとも部分的に起因する。それ故、本発明のウイルスのアポトーシス誘発能は、減少又は欠如している。ある実施態様において、その弱毒化は、異常ORF3発現に完全に起因する。
疑義の回避のために、本明細書で使用する用語「減少(reduced)」は、文脈上明らかに特記ない限り、用語「欠如」を含む。
【0012】
ある実施態様において、異常ORF3発現は定性的である。従って、ORF3から発現したタンパク質は、例えば、野生型ORF3タンパク質と比較すると、機能が減少又は欠如している。
「機能の減少又は欠如」によって、1又は2の突然変異を持ち、その結果、野生型ORF3タンパク質と比較してアポトーシスを誘発能が減少又は欠如する、コード化されたタンパク質が作られるORF3タンパク質を含む。
ある実施態様において、異常ORF3発現は定量的である。従って、野性型で病原性のPCV2と比較するとORF3由来タンパク質の発現が減少又は欠如してもよい。
ある実施態様において、異常ORF3発現は、定性的、及び定量的であってもよく;すなわち、野生型ORF3タンパク質と比較して、ORF3タンパク質の機能が減少又は欠如し、及びそのORF3タンパク質発現量が、野性型PCV2ウイルス由来のORF3タンパク質の発現量より少ない。
ある実施態様において、ORF3配列内に突然変異が存在する。
ある実施態様において、ORF3配列内に2重突然変異が存在する。
一実施携帯において、ORF3配列内に3重突然変異が存在する。
ある実施態様において、そのウイルスのORF3発現に影響を与える他の領域(すなわちORF3以外の領域)内に、突然変異が存在する。
本発明のウイルスにおける突然変異(複数)は、ウイルス複製が引き続き生じるようにすべきである。
【0013】
ある実施態様において、突然変異は機能的ORF1が引き続き産生されるようなものであり;すなわち、ORF1によってコードされたタンパク質は、その複製時の役割を果たすことを引き続き可能にする。そのようなある実施態様において、ORF3配列における突然変異は、ORF1によってコードされたタンパク質にいかなる変化も生じさせない突然変異である。
ある実施態様において、ORF3の開始コドンが非機能性になるように変異する。ORF3の開始コドンATGが、例えば、AがGに置き換わるといった突然変異である;すなわち、開始コドンATGはGTGへと変異する。そのような突然変異は、遺伝子コードの縮重に基づいて、ORF1によってコードされたタンパク質にいずれの変化も生じさせないという利点を有する。
ある実施態様において、終止コドンは、ORF3において非機能性短縮型26アミノ酸ORF3タンパク質の産生を引き起こすアラニンに置換される。
ある実施態様において、ORF3のアミノ酸配列の置換によって、タンパク質のアルファ領域で選択されたアミノ酸の電荷が逆になるか、又は中性になり、それによって、生じるタンパク質が、折り畳まれなくなり、非機能的になる。1つの突然変異体においては、アミノ酸61のGlutamine−がLysine+に変化する。
【0014】
以下の実施例のセクションで説明するように、そのような突然変異体を、QuikChange Site-Directed Mutagenesis Kit(部位特異的突然変異誘発法キット、Stratagene)を使用し、PCV2クローンのゲノムに特異的な突然変異を導入することによって作成する。製造業者の説明書に基づき、突然変異プラミスドを、突然変異誘発プライマー(前方プライマー、5´−GGGATGGTTACCACGGTGAAGTGGTTGTTA−3´、逆方向プライマー、TAACAACCACTTCTTCACCGTGGTAACCATCCC−3´)のセットで作成する。突然変異体[図1Bにおいて太字で示した(nt671)(ヌクレオチド番号671)]は、その位置におけるORF1タンパク質のアミノ酸配列を変更していないが、ORF3タンパク質の発現を抑制するであろう。
本発明において用いてもよい突然変異の実施例は:終止コドンの導入;組み換え;置換変異(すなわち、ミスセンス突然変異やナンセンス突然変異);欠失型突然変異(1又はそれ以上のヌクレオチドの欠失、又は1又はそれ以上のコドンの欠失);フレームシフト突然変異;挿入(1又はそれ以上のヌクレオチドの挿入、又は1又はそれ以上のコドンの挿入)を含む。突然変異導入方法は、当技術分野でよく知られており、当業者により容易に行われることが可能である。例えば、部位特異的突然変異は、1又はそれ以上のヌクレオチドを添加するか、欠失するか、又は変えることが可能である。
【0015】
突然変異のORF3の機能/発現への効果は、例えば、以下の材料と方法セクションで説明するアポトーシス測定法を用いて評価されるであろう。
ある実施態様において、ORF1タンパク質に関して、突然変異はサイレント突然変異(すなわち、ORF1機能上、重大な悪影響をもたない突然変異であり、ある実施態様において、ORF1機能にまったく影響を与えない突然変異)である。
異常ORF3機能の原因となる突然変異がウイルス内に1又はそれ以上存在することに加えて、ウイルス内に1つ又はさらに多くの突然変異が任意に生じてもよい。その突然変異は、例えば、前記に記載された欠失型突然変異のような、いずれのタイプの突然変異であってもよい。
ある実施態様において、ウイルスは、PCV2に対する免疫応答誘発能を阻害するいかなる変化もゲノム上に持たない。
ある実施態様において、ウイルスは、コードされたORF2タンパク質の変化の原因となるいかなる変化もORF2配列上に持たない。
【0016】
本発明のある実施態様において、異常ORF3発現を引き起こすウイルスの1又はそれ以上の突然変異導入を除き、PCV2ウイルスは、野性型(病原性)PCV2ウイルスと差異、又は実質的な差異はない。
本発明のPCV2ウイルスは、ある実施態様において、単離した形態で提供される。単離されたということにより、野性型ウイルスの自然環境以外に存在するPCV2を示すことを意味する。例えば、ウイルスは、制御された環境で増殖し、特徴づけられ得る細胞培養又は他の人工的培地の成分;細胞培養上清の成分;医薬組成物の成分;又はその自然環境から部分的、又は完全に精製された成分であってもよい。
前記の検討は本発明の弱毒化ウイルスに関係する一方、前記の特定部分はまた、本発明の核酸分子のように、適時、本発明の他の態様に関係する(下記を参照されたい。)。
【0017】
ワクチン
本発明は本発明のウイルスからなるワクチンを提供する。そのような構成物は、獣医学や医薬品業界で周知の標準的技術に従って製造される。
本発明のワクチンは免疫学的有効量のウイルスからなる。本明細書に記載されたように産生された免疫原性として有効量のPCV2を用いたワクチン接種の結果として、患畜は少なくとも部分的に、又は完全にPCV2感染に対し免疫性となり、又は、中程度又は重症のPCV2感染への進行に対し耐性を示す。本発明のウイルスは液性応答、細胞性応答を誘発するために使用されてもよい。
好ましくは、患畜は、PMWSの有害な生理的症状、又は有害な影響のうち、1つから全てまでが顕著に減少し、改善し、又は完全に予防される程度に保護される。
実際には、免疫学的有効量に必要となる正確な量は患畜の年齢、全身状態、調合物の性質、投与様式その他のような要因が関与するため、患畜により様々である。従って、正確な「有効量」を規定するのは不可能である。しかしながら、いずれの所定の症例に対しても、適切な「有効量」は日常的実験に限り使用する当業者によって決定されてもよい。
【0018】
例として、ブタの体重、抗原と他の典型的な因子の濃度に基づいて最小有効量を見つけるために、活性抗原性試薬の適切な投与量を決定、又は滴定するための方法は、当技術分野において周知である。適切な免疫応答を誘導する、組成物(複数)の投与量、組成物中の構成成分の濃度、及び組成物(複数)を投与する時期の決定は、例えばELISA及び/又は血清中和検定分析のような、血清の抗体滴定、及び/又はブタにおけるワクチン投与評価のような方法で行うことが出来る。
本発明のワクチンは医薬的に許容しうる担体を含んでもよい。語句「医薬的に許容しうる担体」は、患畜に投与したとき、生理的に許容されうる、及び通常アレルギー、又は例えば急性胃蠕動、目まいの類などの、同様の有害な反応を起こさない化合物及び組成物を示す。有用な担体としては、当技術分野で周知であり、例えば、水、緩衝水、0.4%生理食塩水、0.3%グリシン、ヒアルロン酸等々がある。
【0019】
本発明のある実施態様において、そのワクチンはアジュバントから成る。そのアジュバントは、ワクチンに対する患畜(例えば、ブタ)の免疫応答を増大させる物質である。適切なアジュバントは、水酸化アルミニウム(ミョウバン)、免疫刺激複合体(ISCOMS)、非イオン性ブロックポリマー又はコポリマー、サイトカイン(IL−1、IL−2、IL−7、IFN−α、IFN−β、IFN−γなどのような)、サポニン、モノホスホリルリピドA(MLA)、ムラミルジペプチド(MDP)等々が含まれるが、これらに限定されるものではない。他の適切なアジュバントは、例えば、硫酸アルミニウムカリウム、Escherichia coli(大腸菌)から単離された易熱性又は熱安定性エンテロトキシン、コレラトキシン又はコレラトキシンBサブユニット、ジフテリアトキシン、テタヌストキシン(破傷風毒素)、百日咳毒素、フロイント不完全アジュバント又は完全アジュバントなどが含まれる。ジフテリアトキシン、テタヌストキシン、百日咳毒素などのトキシンをベースとしたアジュバントは、例えばホルムアルデヒドで処理することにより、使用前に不活性化してもよい。
【0020】
ある実施態様において、例えばブタ繁殖呼吸器障害症候群(Porcine Reproductive and Respiratory Syndrome:PRRS)、Mycoplasma hyopneumoniae、Actinobacillus pleuropneumoniae、E. coli,Bordetella bronchiseptica(気管支敗血症菌)Pasteurella multocida、Erysipelothrix rhusiopathiae(フ゛タ丹毒菌)、仮性狂犬病、フ゛タコレラ、フ゛タインフルエンサ゛、フ゛タハ゜ルホ゛ウイルス(Porcine Parvovirus)などの、少なくとも1種の追加的ブタ病原体由来の、少なくとも1種の免疫抗原を付加的に含むワクチンが提供される。追加病原体由来の免疫抗原は、本発明のウイルスゲノムに含まれても、又は本発明のワクチン組成物内の別個の成分として存在してもよい。
本発明に従って産生されたPCV2は、他のPCV2株等のウイルスと組み合わせることも可能である。あるいは、複数タイプの防御エピトープ(抗原基)を1種のウイルス内に作成してもよい。そのような技術は当技術分野で周知であり、当業者によって容易に達成されうる。
本発明のワクチンは、便宜上、鼻腔内に、経皮的に(すなわち、全身性吸収のため皮膚表面上又は皮膚表面へ塗布される)、非経口、その他、で投与することができる。非経口投与経路には筋肉内、静脈内、腹腔内、皮内(すなわち、皮下注入又は別のやり方で皮下へ置く)投与経路、等々で投与されるが、これらに限定されるものではない。
【0021】
本発明のワクチンを前記投与経路のいずれか1つの投与に適合できる。
液体で投与する場合、本発明ワクチンを水溶性液体、シロップ剤、エリキシル剤、チンキ剤などの形態で製造してもよい。そのような処方物は、当技術分野では周知であり、通常、抗原と他の一般的な添加物を、適当な担体又は溶媒系に溶解することで製造される。医薬的に許容しうる担体、賦形剤、又は希釈剤の例は、脱塩又は蒸留した水;生理食塩水;ピーナッツ油、サフラワー油、オリーブ油、綿実油、トウモロコシ油、ゴマ油、アラキス油又はココナツ油などの植物ベースの油;メチルポリシロキサン、フェニルポリシロキサン、メチルフェニルポリソルポキサンなどのポリシロキサン類を含むシリコン油;揮発性のシリコン剤;流動パラフィン、ソフトパラフィン又はスクワランなどの鉱物油;メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム又はヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロース誘導体;例えばエタノールやイソプロパノールなどの低級アルカノール類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール1,3−ブチレングリコール又はグリセリンのような低級ポリアルキレングリコール類又は低級アルキレングリコール類;イソプロピルパルミチン酸塩、イソプロピルミリスチン酸塩又はエチルオレイン酸塩などの脂肪酸エステル;ポリビニルピリドン;寒天;カラゲナン;トラガカントガム又はアカシアゴム、及び石油ゼリーなどである。一般的に、担体又は担体類は、組成物の10重量%から99.9重量%を形成し、及びリン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素カリウム、リン酸二水素カリウム、これらの混合物などの、当技術分野では周知の試薬を用いる従来の方法で緩衝化されてもよい。
【0022】
液体処方物はまた、他の標準的共処方物と組み合わせて、懸濁剤又は乳化剤を含む、懸濁液及び乳液を含んでもよい。これらのタイプの液体処方物は従来の方法で製造されてもよい。懸濁剤は、例えば、コロイドミルを用いて製造してもよい。乳化剤は、例えば、ホモジナイザーを用いて製造してもよい。
一般的に、本発明のワクチンは、ウイルス及び安定剤の懸濁剤を含む。
本発明のワクチンを、単回投薬又は反復投薬として投与することが可能である。
本発明のワクチンは、単独で投与する、又は1又は2種以上の構成成分(例えば、他のブタ免疫原性又はワクチン組成物)と同時に投与する(すなわち、一緒に)、又は順次に投与する(すなわち、異なる時期に)ことが可能である。前記組成物を異なる時期(すなわち順次に)に投与する場合には、お互いに別々に、又は時間的に重ねて投与を行うことが可能である。
本発明のある実施態様において、患畜に本発明のウイルスによる単回投与を用いて免疫化した。
【0023】
ある実施態様において、本発明のPCV2を含むワクチン組成物はPCVに感染しやすい、又はPCV2感染の危険性がある患畜の自己免疫応答能を亢進するために患畜へ投与される。
ワクチン投与の患畜は、ある実施態様において、ブタである。しかしながら、患畜は体内でウイルスに対する免疫応答を誘導させることが望まれるいずれの動物(例えば哺乳類)であってもよい。動物は、PCV又は近縁のウイルスによる感染に感受性があってもよい。
患畜がブタであると通常予想されるけれども、他の動物種に本発明のワクチンを投与することが望まれる。例えば、「試験」動物には、ブタに対する最終的な使用又はワクチン開発を視野に入れて、そのワクチンの性能を評価するために、本発明のワクチンを投与してもよい。
望ましくは、ワクチンはPCV2ウイルスにまだ暴露されていない患畜に投与される。
ある実施態様において、患畜は離乳後多臓器消耗症候群(PMWS)に対するワクチン接種を必要とするブタである。
ワクチンは成体ブタへの投与だけではなく、若年ブタ又は妊娠した雌ブタへの投与においても有益であると予想される。後者のワクチン接種は新生児へ受動免疫(母親由来の抗体)を生じさせる可能性がある。ある実施態様において、ブタは7,6,5,4,3,2、又は1週齢に満たない。
ある実施態様において、ブタは1〜6週齢;2〜5週齢;又は3〜4週齢である。
【0024】
ウイルスの産生
本発明の一態様は、本発明の弱毒化PCV2産生のための宿主細胞を提供する。
多種多様な宿主細胞が本発明のウイルス産生に有用であってもよく、例えばブタの腎細胞、例えばPK15細胞、などブタの細胞を含んでもよい。
本発明はまた、本発明の弱毒化PCV2の産生方法;すなわち弱毒化PCV2産生を許容する様態を用いて適切な条件下で本発明の宿主細胞を培養することからなる、方法を提供する。その方法は培地から弱毒化PCV2を単離すること、及び任意に弱毒化PCV2を処理することをさらに含んでいてもよい。
宿主細胞の適切な培養条件は当技術分野の業者には周知であり、又は当技術分野の業者が容易に決定することが可能で、そして、とりわけ適切な栄養条件の選択を含む。ある実施態様において、少なくとも水、塩類、栄養物類、必須アミノ酸類、ビタミン類、抗生物質類からなる培地で、さらに1又は2種以上の成長因子類を含んでいてもよい。
【0025】
アポトーシスを誘発できるタンパク質
本発明の第10態様では、アポトーシスを誘発できるタンパク質を提供する。
ある実施態様において、そのタンパク質は配列番号1に記載されたアミノ酸配列:MVTIPPLVSRWFPVCGFRVCKISSPFAFTTTRWPHNDVYIRLPITLLHFPAHFQKFSQPAEISDKRYRVLLCNGHQTPALQQGTHSSRQVTPLSLRSRSSTFYQからなる。
ある実施態様において、配列番号1に記載されたアミノ酸配列からなるタンパク質が提供される。
本発明のタンパク質は、配列番号1に記載されたアミノ酸配列からなる、又は同配列のみからなる、これらのタンパク質の機能的等価物、突然変異体、活性断片、融合タンパク質を含む。疑義の回避のため、下記の事項が本発明の範囲内に含まれる:すなわち活性断片及び融合タンパク質の機能的等価物;機能的等価物及び融合タンパク質の活性断片;及び機能的等価物又は活性断片からなる融合タンパク質である。
【0026】
用語「断片」は、全長のタンパク質の構成成分をコードする核酸、又は同タンパク質の構成成分であるポリペプチド配列を示す。ポリペプチドに関して、断片は全長のタンパク質と同様の定性的生化学活性を有している。本発明に従って用いられた生物学的活性断片は、全長タンパク質に相当する活性の一般的には少なくとも約50%、より一般的には少なくともその活性の約60%、さらに一般的には少なくともその活性の約70%、より一般的にはその活性の少なくとも約80%、より一般的には少なくともその活性の約90%、及び、より一般的には少なくともその活性の約95%を有している。
本明細書における用語「突然変異体」は、実質的に類似分子を示す。通常、核酸配列突然変異体は共通の定性的生化学活性を有するポリペプチドをコードする。通常、ポリペプチド配列突然変異体もまた、共通の定性的生化学活性を有する。さらに、これらのポリペプチド配列突然変異体は、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、82%、85%、90%、95%、96%,97%,98%又は99%の配列同一性を共有する。
【0027】
本発明の第8態様における機能的等価物、活性断片、融合タンパク質は、野性型ORF3タンパク質(配列番号1)のアポトーシスを誘発能を保持する。アポトーシス活性は、例えば、以下の材料と方法セクションで説明するアポトーシス測定法を用いて検定出来る。当業者は、しかしながら、アポトーシス活性を検定する代替又は追加的な、測定法又は手段を考案することができる。
本発明のある実施態様において、例えば、単一又は多重のアミノ酸置換(複数)、付加(複数)、挿入(複数)、及び/又は欠失(複数)、及び/又は化学修飾されたアミノ酸置換を含む、配列番号1の機能性等価物を提供する。しかしながら、前記のように、そのような機能性等価物はアポトーシス誘発能を保持する。
本発明のこの態様に従って、機能的等価タンパク質は、配列番号1に記載されたアミノ酸配列に対し少なくとも65%の配列同一性があるタンパク質を含む。
【0028】
タンパク質配列同一性を測定する方法は、当技術分野で周知であり、本明細書の文脈において、配列同一性はアミノ酸同一性(時に、「ハードホモロジー(硬相同性)」と呼ばれる)に基づいて計算されることは、当業者により理解される。例えばUWGCGソフトウェアは配列同一性を計算する(例えば、そのデフォルト設定を使用して)ために用いることが出来るBESTFITプログラムを提供する(Devereux et al(1984)Nucleic Acids Research 12 p387-395)。PILEUP及びBLASTアルゴリズムは、配列同一性を計算する、又は配列を並べる(一般的に、デフォルト設定上で)ために用いることが出来て、例えばAltschul S.F.(1993)J Mol Evol 36、290-300、又はAltschul S.F.他(1990)J Mol Biol 215、403で説明しているように、BLAST解析を行うソフトウェアは、インターネットの、例えば「www.ncbi.nlm.nih.gov/」を介してワールドワイドウェブ上の国立バイオテクノロジー情報センターを通じて公に利用可能である。このアルゴリズムは、データベース配列の同じ長さのワード(文字列)と位置あわせを行う際、正値の閾値スコアTを一致又は満足させる、問い合わせ配列の短いワード長Wを同定することにより、高スコア配列ペア(HSPs)を最初に同定する。Tは近傍ワードスコア閾値と呼ばれる(Altschul他、上記)。これらの初期近傍ワードヒットは、それらを含むHSPsの検索開始シードとして機能する。ワードヒットは累積アラインメントスコアが上昇出来る範囲で各配列に沿って両方向に拡張される。拡張は両鎖で行う。BLASTアルゴリズムは、2配列間の類似性の統計学的解析を行う。例えばKarlin and Altschul(1993)Proc.Nat.Acad.Sci.USA 90、5873を参照されたい。BLASTアルゴリズムで提供された類似性の尺度は、最小総和確率(smallest sum probability)(P(N))であり、互いに置換された2個のヌクレオチド又はアミノ酸配列間の一致による確率の指標となる。
【0029】
ある実施態様において、本発明のこの態様に従って、機能性等価タンパク質は、配列番号1に記載されたタンパク質、又はその断片と65%より大きな、配列同一性を示す。そのタンパク質は、少なくとも70%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、又は99%程度の配列同一性を有してもよい。
本発明に従って、機能性等価タンパク質はそれ故、突然変異体(アミノ酸置換、挿入又は欠失を含む突然変異体など)を含むことを意図する。そのような突然変異体は、1又はそれ以上のアミノ酸残基が保存又は非保存アミノ酸残基(好ましくは、保存アミノ酸残基)で置換されているタンパク質を含んでもよく、そのような置換されたアミノ酸残基は遺伝子コードによりコード化されたものであってもよいし、そうでなくてもよい。典型的なそのような置換は、Ala、Val、Leu、Ile間;SerとThr間;酸性残基のAspとGlu間;AsnとGln間;塩基性残基のLysとArg;芳香族残基のPheとTyr間である。
特に好ましいのは、数個:すなわち5〜10個、1〜5個、1〜3個、1〜2個、又は単に1個、のアミノ酸がいずれかの組み合わせで置換、欠失、又は付加されたタンパク質である。またとりわけ好ましいのは、タンパク質の特性や活性を変化させないサイレント置換、付加及び欠失である。またこの点において、とりわけ好ましいのは保存的置換である。「突然変異体」タンパク質はまた、1又はそれ以上のアミノ酸残基が置換基を含むタンパク質を含む。
【0030】
また本発明の範囲内に含まれるものは、活性断片であり、この「活性断片」は、野生型ORF3タンパク質(配列番号1)のアポトーシス誘発能を保持する短縮型タンパク質を示す。
本発明の活性断片は、少なくとも本発明のタンパク質由来(例えば、配列番号1又はその機能性等価物由来)のn個の連続アミノ酸からなることが望ましい。nは一般的に50、75、85、90、95又は100又はそれ以上である。
ある実施態様において、活性断片は少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、99%の配列番号1又は機能性等価物の配列からなる。
そのような断片は「独立している」状態であってもよく;すなわち他のアミノ酸やタンパク質の一部でなく、又はそれらに融合していなくてもよく、あるいは、部分又は領域を形成するより大きなタンパク質に含まれていてもよい。より大きなタンパク質に含まれる場合、本発明の断片は、ある実施態様において、単一の連続した領域を形成する。さらに、いくつかの断片が単一のより大きなタンパク質に含まれていてもよい。
本発明のある実施態様において、本発明のタンパク質が、例えば、生理活性、放射性、酵素又は蛍光性、又は抗体でもよい標識の様な、ペプチドや他のタンパク質と融合した、融合タンパク質を提供する。
例えば、分泌性又はリーダー配列;プロ配列;精製に役立つ配列;又は例えば組み替え体産生中により高度なタンパク質安定性を与える配列を含む、1又はそれ以上の追加アミノ酸配列を取り入れることはしばしば有利である。代わりに、又は追加的に、成熟型タンパク質は他の化合物、例えばタンパク質の半減期を増大させる化合物(例えば、ポリエチレングリコール)などと融合してもよい。
【0031】
本発明第10態様のタンパク質をコードする核酸分子
本発明の第11態様は、本発明第10態様のタンパク質をコードする核酸分子を提供する。
ある実施態様において、核酸分子は、配列番号2に記載された配列からなる。
ある実施態様において、核酸分子は、配列番号2に記載された配列のみからなる。
遺伝子コード縮重の結果として、本発明第8態様のタンパク質をコードする多数の核酸分子中には配列番号2と最小配列同一性を持つものが製造されてもよいということは、当技術分野の業者には容易に理解されうる。従って、本発明は、可能なコドン選択に基づいた組み合わせを選択して作ることが出来るポリヌクレオチド配列の各々及び、全ての可能な突然変異物を意図している。
本発明のある実施態様において、配列番号2の縮重型を含む核酸分子を提供する;すなわちその核酸分子は、配列番号2の1又はそれ以上のコドンが、配列番号2の本来のコドンと同じアミノ酸をコードする縮重コドンに置換されている核酸配列からなる。
【0032】
本発明の核酸分子は、例えば、mRNAなどのRNAの形態、又は例えばクローニング又は合成的に作成されるcDNA及びゲノムDNAを含むDNAの形態であってもよい。DNAは2重鎖又は単鎖であってもよい。単鎖DNA又はRNAは、センス鎖とも呼ばれるコード鎖であってもよいし、又はアンチセンス鎖と呼ばれる非コード鎖であってもよい。
用語「核酸分子」(及び「核酸」「核酸配列」などという類似表現)は、修飾された骨格を含むものなどの、DNA及びRNA類似体も含む。
概して、本発明の核酸分子はまた、核酸配列の機能性等価物又は断片も本発明の範囲内に含むが、該機能性等価物又は断片は、野生型ORF3のアポトーシス誘発能を保持するタンパク質をコードする。必要以上の試験や実験をすることなく、そのような機能性等価物及び断片を、分子生物学における標準的な技術を用いて見つけ出し、及び単離出来る。
機能性等価物は、(i)配列番号2に相同性があってもよい、又は(ii)アポトーシス誘発能を保持するタンパク質を依然としてコードしながら遺伝子コードの縮重内で配列番号2に対応する配列と相同性があってもよい。本発明のある実施態様において、核酸分子は、(i)配列番号2に従う核酸配列、又は(ii)依然としてアポトーシス誘発能保持するタンパク質をコードしながら遺伝子コードの縮重内でそれに対応する配列に対し、少なくとも70%,80%,85%,90%,92%,95%,97%,98%、又は99%の相同性を有する配列からなる。
【0033】
2個の核酸配列間の相同性度は、当技術分野で周知のコンピュータープログラム、例えばGCGプログラムパッケージに提供されるGAP(Program Manual for the Wisconsin Package,第8版,August 1996,Genetics Computer Group,575 Science Drive,Madison,Wisconsin,USA,53711)(Needleman,S.B.及びWunsch,C.D.,(1970),Journal of Molecular Biology,48,443-453)などを用いて決定してもよい。DNA配列比較のため以下の設定:5.0のGAP生成ペナルティ及び0.3のGAP伸長ペナルティで、GAPを使用する。
核酸分子は、GCGプログラムパッケージの一部として利用可能な、Pileup配列ソフトウェアを用いて、例えば、5.0のギャップ生成ペナルティ及び0.3のギャップ幅ペナルティのデフォルト設定を用いて、互いに配列してもよい。
本発明の核酸分子はまた、低ストリンジェントな、さらに好ましくは中ストリンジェントな、なおさら好ましくは高ストリンジェントな条件下で、
(i)配列番号2に定義された核酸配列;又は(ii)遺伝子コードの縮重内で配列番号2に対応する配列と、ハイブリダイズ可能な機能性等価物をまた本発明の範囲内に含んでもよい。低ストリンジェントなハイブリダイズの条件は、2×SSC中50℃で行ったハイブリッド形成と対応してもよい。
【0034】
サムブルックらの著書(1989;Molecular Cloning、A Laboratory Manual第2版,Cold Spring Harbour, New York)に記載されているハイブリダイズの方法に基づき、所定の核酸分子が特定の核酸へハイブリダイズするかどうかを決定する適切な実験条件は、調べたい当該核酸サンプルを含むフィルターを5×SSCに10分間予備浸漬し、次ぎに5×SSC、5×デンハルト(Denhardt’s)溶液、0.5%SDS及び変性した超音波処理サケ精子DNA100μg/mlの溶液中でフィルターのプレハイブリダイズを行い、その後、約45℃で12時間、10ng/ml濃度の32P−dCTP標識プローブの濃度溶液中でハイブリダイズを行ってもよい。
その後、フィルターを、少なくとも55℃(低ストリンジェンシー)、少なくとも60℃(中ストリンジェンシー)、少なくとも65℃(中/高ストリンジェンシー)、少なくとも70℃(高ストリンジェンシー)又は少なくとも75℃(超高ストリンジェンシー)で、2×SSC、0.5%SDS中で30分間で2回洗浄する。ハイブリダイズは、フィルターをx線フィルムへ暴露することによって検出できる。
【0035】
さらに、当技術分野の業者によく知られている、ハイブリダイズのストリンジェンシーを変更するために使われる無数の条件及び因子がある。例えば、特定の核酸へハイブリッドする核酸の長さ及び性質(DNA、RNA、塩基組成);塩類及び他の成分の濃度:すなわちホルムアミド、デキストラン硫酸、ポリエチレングリコールなどの有無;及びハイブリダイズ及び/又は洗浄段階の温度変更などである。
さらに、2個の所定の核酸配列が、ある特定の条件下でハイブリダイズするかどうか理論的に予測することも可能である。従って、前述の経験法の代替として、突然変異核酸配列が、配列番号2で定義された核酸分子、又は遺伝子コードの縮重内で配列番号2の核酸分子の対応する配列とハイブリダイズするかどうかの決定は、例えば塩分濃度及び温度などの特定の条件下で、2個の非相同性核酸配列が既知の配列とハイブリダイズするTm(融解温度)の理論計算に基づくことが可能である。
【0036】
非相同性核酸配列の融解温度(Tm(ヘテロ))の決定において、最初に相同性核酸配列の融解温度(Tm(ホモ))を決定することが必要である。2本の完全相補的核酸鎖(ホモ二本鎖形成)間の融解温度(Tm(ホモ))については、Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley and Sons,1995に従い、次の公式に従って決定してもよい。
Tm(ホモ)=81.5%+16.6(log M)+0.41(%GC)-0.61(%ホルム)-500/L
M=一価カチオンのモル濃度を示す
%GC=配列における全塩基数のグアニン(G)及びシトシン(C)%
%ホルム=ハイブリダイズ緩衝液中のホルムアミド%、及び
L=核酸配列の長さ
前記の式によって決定されたTmは2本の完全相補的核酸配列間のホモ2本鎖形成のTm(Tm(ホモ))である。2本の非相同性核酸配列のTmに対するTm数値に適合するために、2本の完全非相同性配列間のヌクレオチド配列における1%の差異はTmにおける1℃減少に相当すると仮定する。従って、ヘテロ2本鎖形成のTm(ヘテロ)は、問題とする類似配列と前記のTm(ホモ)由来のヌクレオチドプローブ間の相同性%の差異を差し引くことで得られる。
【0037】
突然変異核酸分子
本発明の第12態様は、本発明の第11態様に基づく突然変異型核酸分子、及び、本発明第9態様の核酸分子によってコードされたタンパク質の異常発現である突然変異型核酸分子、からなる核酸分子を提供する。
本発明のこの態様に関しては、「弱毒化ウイルス」と題された前述のセクションの関連部分を参照されたい。しかしながら、本発明第12態様の核酸分子は、ウイルス形態で提供されるだけではなく、他の形態、例えば、核酸分子自体、ベクター等で提供されてもよいこと、及び「弱毒化ウイルス」と題されたセクションの関連部分は、従って、ウイルス以外の形態における本発明第12態様の核酸分子の提供を必要に応じて修正して(mutatis mutandis)適用することを強調する。
【0038】
「本発明第9態様の核酸分子によってコードされたタンパク質の異常発現」によって:(i)(本発明第11態様の核酸分子と比較し)減少又は欠失タンパク質が突然変異型核酸分子から発現され;及び(ii)突然変異型核酸分子によって発現したタンパク質はアポトーシス機能を(本発明第11態様の核酸分子によってコードされたタンパク質と比較し)減少又は欠失している、という2点を含むことを理解するべきである。
ある実施態様において、ORF3は、ORF3タンパク質の減少又は欠失発現を生じさせる突然変異(例えば、ORF3開始コドンにおける点突然変異による);又は、結果的に減少又は欠失機能をもつORF3タンパク質;すなわちアポトーシス誘発能が減少した(及びある実施態様において、アポトーシス誘発ができない)タンパク質をコードする突然変異であってもよい。
【0039】
本発明の第12態様のある実施態様において、配列番号3:
GTGGTAACCATCCCACCACTTGTTTCTAGGTGGTTTCCAGTATGTGGTTTCCGGGTCTGCAAAATTAGCAGCCCATTTGCTTTTACCACAACCAGGTGGCCCCACAATGACGTGTACATTCGTCTTCCAATCACGCTTCTGCATTTTCCCGCTCACTTTCAAAAGTTCAGCCAGCCCGCGGAAATTTCTGACAAACGTTACAGGGTGCTGCTCTGCAACGGTCACCAGACTCCCGCTCTCCAACAAGGTACTCACAGCAGTAGACAGGTCACTCCGTTGTCCTTGAGATCTAGGAGCTCCACATTCTATCAGTAA、からなる、又は、のみからなる核酸配列;又はその縮重型が提供される。この配列は、開始コドンにおける点突然変異をもつORF3突然変異配列を示し、その結果ORF3タンパク質は発現しない。
【0040】
本発明の第12態様のもう1つの実施態様において、配列番号19:
ATGGTAACCATCCCACCACTTGTTTCTAGGTGGTTTCCAGTATGTGGTTTCCGGGTCTGCAAAATTAGCAGCCCATTTtgaTTTACCACAACCAGGTGGCCCCACAATGACGTGTACATTCGTCTTCCAATCACGCTTCTGCATTTTCCCGCTCACTTTCAAAAGTTCAGCCAGCCCGCGGAAATTTCTGACAAACGTTACAGGGTGCTGCTCTGCAACGGTCACCAGACTCCCGCTCTCCAACAAGGTACTCACAGCAGTAGACAGGTCACTCCGTTGTCCTTGAGATCTAGGAGCTCCACATTCTATCAGTAA、を含む、又は、のみからなる核酸配列;又はその縮重型が提供される。アミノ酸配列第27位の終止コドンに挿入される点突然変異をもつ配列はORF3突然変異配列を示し、その結果ORF3タンパク質は短縮型で発現する。
【0041】
本発明第12態様のもう1つの実施態様において、配列番号21:
ATGGTAACCATCCCACCACTTGTTTCTAGGTGGTTTCCAGTATGTGGTTTCCGGGTCTGCAAAATTAGCAGCCCATTTGCTTTTACCACAACCAGGTGGCCCCACAATGACGTGTACATTCGTCTTCCAATCACGCTTCTGCATTTTCCCGCTCACTTTCAAAAGTTCAGCCAGCCCGCGaAAATTTCTGACAAACGTTACAGGGTGCTGCTCTGCAACGGTCACCAGACTCCCGCTCTCCAACAAGGTACTCACAGCAGTAGACAGGTCACTCCGTTGTCCTTGAGATCTAGGAGCTCCACATTCTATCAGTAA、を含む、又は、のみからなる核酸配列、又はその縮重型が提供される。この配列は、アミノ酸のGlu−がLys+に変化した点突然変異をもつORF3変異配列を示し、その結果ORF3タンパク質の2次構造の配座に影響する。
【0042】
本発明の突然変異核酸分子によってコードされたタンパク質
上述から、いくつかの事例において、本発明の第12態様の核酸分子によってタンパク質はコードされないことが理解される。しかしながら、あるタンパク質が本発明第12態様の核酸分子によってコードされる場合、コードされないタンパク質は本発明のさらなる態様として提供される。そのようなタンパク質は野性型核酸配列(配列番号2)によりコードされたタンパク質より低いレベルで発現してもよいし、又は野性型タンパク質(配列番号1)に対し(アポトーシス誘発能に関して)減少又は欠失機能をもつタンパク質であることも可能である。
【0043】
様々な形態の核酸分子の提供
本発明の核酸分子は、様々な形態で提供される。核酸分子を、核酸分子自体(「裸の」核酸分子);ベクター;ウイルス又は宿主細胞他の形態で提供してもよい。
ベクターは、本発明の核酸分子を含む発現ベクターを含む。本発明のベクターは、例えば、転写プロモーター、及び転写ターミネーター(転写終結区)を含んでもよい。そのプロモーターは、作動可能になるように核酸分子と連結され、及びその核酸分子は、作動可能になるように転写ターミネーターと連結される。
本発明の第11又は12態様に基づいて、核酸分子で形質転換された宿主細胞が提供される。宿主細胞の適切な実施例は、当技術分野の業者に周知であり、又は当技術分野の業者により容易に選択可能である。宿主細胞は、例えば、真核及び原核細胞を含んでもよい。真核細胞の実施例は、哺乳類(例えば、ブタ)、真菌(例えば、酵母サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae))、昆虫及び植物細胞を含む。原核細胞は例えば、大腸菌(E.coli.)を含む。
本発明の核酸分子(例えばベクターやウイルス、宿主細胞などを含んでもよい様々な部分を含んでいる)を、本発明のタンパク質産生に利用してもよい。従って、例えば、本発明は、本発明のタンパク質産生方法、本発明のタンパク質発現のため適切な条件下で本発明の宿主細胞を培養することを含む方法を提供する。
代替の実施態様において、本発明のタンパク質を、タンパク質の化学合成によって産生してもよい。化学合成を、例えば、固相ペプチド合成により達成しもよい。そのような技術は当技術分野で周知であり、当業者により容易に実施可能である。
本発明のタンパク質産生は、タンパク質の精製後行ってもよい。タンパク質精製の方法は当技術分野で周知であり、当業者により容易に実施されうる。
【0044】
抗体と抗体の産生方法
本発明の第15態様は、本発明第10又は13態様のタンパク質と結合可能な抗体を提供する。
本発明第16態様は、本発明第10又は13態様のタンパク質と結合可能な抗体の産生方法を提供する。その方法は本発明第10又は13態様のタンパク質を用いて、動物(例えば、ウサギ、モルモット、齧歯動物など)を免疫化すること、又は免疫化よって産生された抗体を採取することを含んでもよい。
本発明第15及び16態様のある実施態様において、抗体は配列番号1に記載された配列内に含まれたアミノ酸配列と結合可能である。
本発明の抗体は、ポリクローナル又はモノクローナル抗体調製物、単一特異性抗血清、ヒト抗体であってもよく、又は、例えばヒト化抗体、変性抗体である(Fab‘)2断片、F(ab)断片、Fv断片、単独ドメイン抗体、2量体又は3量体抗体断片又は構築物、ミニボディ(minibodies)、又は問題となる抗原と結合する抗体の機能性断片などの、ハイブリッド又はキメラ抗体であってもよい。
【0045】
抗体は当技術分野で周知の技術、及び、例えば米国特許第4,011,308号、第4,722,890号、第4,016,043号、第3,876,504号、第3,770,380号、及び第4,372,745号に開示された技術を用いて産生してもよい。またAntibodies-A Laboratory Manual,Harlow and Lane,編.,Cold Spring Harbor Laboratory,N.Y.(1988)も参照されたい。例えば、ポリクローナル抗体は、関心のある抗原を用いて、適切な動物、例えばマウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、又はヤギを免疫化することによって生成する。免疫原性を強化するため、抗原は免疫化に先立ち担体に結合可能である。そのような担体は当業者には周知である。免疫化は、通常生理的食塩水、好ましくはフロイント完全アジュバントなどのアジュバントに抗原を混合又は乳化し、非経口で(通常皮下又は筋肉内に)混合物又は乳濁物を注射することにより行われる。動物には、通常2−6週間後に生理的食塩水、好ましくはフロイント不完全アジュバントを用いた抗原注射で1又は2回以上追加免疫する。抗体を、当技術分野で知られている方法を用いて、インビトロ(in vitro、試験管内)の免疫化により生成してもよい。次いで、ポリクローナル抗血清を免疫化された動物から得る。
【0046】
モノクローナル抗体は通常、Kohler及びMilstein(1975)Nature 256:495-497の方法、又はその修正方法を用いて調製する。一般的に、上述したマウス又はラットが免疫化される。ウサギもまた用いられる。しかしながら、動物から採血して血清を抽出するよりもむしろ、その脾臓(及び任意にいくつかの大きなリンパ節)を取り出し、単一の細胞に解離する。(非特異性付着細胞の除去後)細胞懸濁物を抗原でコーティングしたプレート又はウェルに加えるによって、脾臓細胞をスクリーニングしもよい。抗原に対して特異的な膜結合性免疫グロブリンを発現するB細胞は、プレートに結合し、残りの懸濁液とともに洗い流されない。次いで、結果得られたB細胞、又は全ての解離した脾臓細胞を、ハイブリドーマを形成のためにミエローマ細胞と融合させ、選択培地(例えば、ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン培地「HAT」)で培養する。結果得られたハイブリドーマは、限界希釈でプレートに置かれ、免疫抗原に特異的に結合する(及び関係のない抗原に結合しない)抗体産生について測定する。次いで、選択されたモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを、インビトロ(例えば、組織培養ビン又は中空繊維反応器)又はインビボ(in vivo、生体内)(例えば、マウス内の腹水)で培養する。
【0047】
ヒト化及びキメラ抗体もまた本発明において有益である。ハイブリッド(キメラ)抗体分子は通常Winter他(1991)Nature 349:293-299、及び米国特許第4,816,567号で説明されている。ヒト化抗体分子は通常Riechmann他(1988)Nature 332:323-327、Verhoeyan他(1988)Science 239:1534-1536、及び英国特許公開番号GB2,276,169号、1994年9月21日公開)を参照されたい。
抗体へ分子を結合するため、それによって分子と特異的に反応することが可能な場合、抗体は分子を「結合可能」であると言う。
ある実施態様において、抗体又はその断片は約105M−1より大きい、さらに好ましくは約106M−1より大きい、さらに好ましくはやはり約107M−1より大きい、及び最も好ましくは約108M−1又は109M−1より大きい結合親和性又は結合活性を持つ。抗体の結合親和性は、例えばスキャッチャード解析(Scatchard,Ann.NY Acad.Sci.51:660(1949))によって、当業者により容易に測定されうる。
【0048】
本発明の分子部分の単離された形態での提供
本発明のタンパク質、核酸分子及び抗体は「単離された」状態でもよい。本明細書で用いられるように、用語単離されたは自然の状態から「人の手によって」変更されたことを意味する;すなわち、自然に起こった場合、その自然宿主又は環境から変化している、又は取り除かれるということである。関連した不純物を減らし、又は除去してもよい。
本発明の様々な分子部分は、例えばワクチン処方物などの医薬組成物の形態で提供されてもよい。従って、本発明の一態様において、本発明の核酸分子、タンパク質、抗体、拮抗剤、作用剤、ウイルス、ベクター、又は宿主細胞を含む医薬組成物が提供される。
医薬組成物及びワクチンに関しては、読者は前記の関連部分を参照されたい。
【0049】
作用剤又は拮抗剤のスクリーニング
本発明は、本発明のタンパク質の作用剤又は拮抗剤のスクリーニングのための方法を提供する。そのような作用剤及び拮抗剤は様々な有用性を持つ。例えば、ORF3タンパク質の拮抗剤は、PMWSの治療に有用性があってもよい。そのような拮抗剤は、ORF3タンパク質のアポトーシス誘発能を減少させ、それ故、PCV2の病原性や症状を減少させることが可能である。
本発明のタンパク質は、様々な薬剤スクリーニング技術の何れかを、化合物ライブラリーのスクリーニングのために使用することが可能である。そのような化合物は、本発明のタンパク質(例えば、本発明の第10又は第13態様に基づくタンパク質)の活性を調節(作用又は拮抗)してもよい。
ある実施態様において、その方法は、本発明のタンパク質と試験化合物を接触させること、及びその試験化合物が本発明のタンパク質に結合するかどうかを測定することを含む。さらに、その方法は、その試験化合物が本発明のタンパク質の活性(例えば、アポトーシス誘発能)を高める、又は減少させるかどうかの測定含んでもよい。
試験化合物が本発明のタンパク質の活性を高める又は減少させるかどうかの測定方法については、当技術分野の業者は周知であり、例えば、実験/ソフトウェア又はX線結晶解析を結びつけることを含む。
本発明のスクリーニング方法において使用される本発明のタンパク質は、溶液中に遊離してもよく、固体担体に固定してもよく、細胞表面に在ってもよく、又は細胞内に位置してもよい。
【0050】
試験化合物(すなわち、潜在的作用剤又は拮抗剤化合物)は、天然の、又は修飾された基質;酵素;レセプター;例えば最大2000Da、好ましくは800Da又はより小さい、小さな天然の、又は合成の有機分子のような小さな有機分子;ペプチド擬似体;無機分子;ペプチド;タンパク質;抗体;上述の構造的又は機能的な模倣物を含む様々な形態で提供しもよい。
ORF3タンパク質の拮抗剤又は作用剤を同定するためのさらなる方法は、アポトーシス誘発能がある本発明第10態様のタンパク質を細胞内で発現させ、試験化合物に細胞を暴露し、その試験化合物が該タンパク質のアポトーシス誘発能に影響を与えるかどうかを測定し、それによって試験化合物が拮抗的、又は作用的な活性を持つかどうか測定することを含んでいてもよい。
試験化合物を、例えば、細胞、無細胞標品、化合物ライブラリー又は天然生成混合物から単離してもよい。これらの作用剤、又は拮抗剤は、天然の又は修飾された基質、リガンド、酵素、レセプター又は、構造的又は機能的な模倣物であってもよい。そのようなスクリーニング技術の適切な総説に関しては、Coligan他、Current Protocols in Immunology1(2):5章(1991)を参照されたい。
【0051】
最もよい拮抗剤又は作用剤となり得る化合物は、本発明のタンパク質に結合する分子である(結合時にタンパク質の生物学的効果を誘発することがない拮抗剤の場合)。
拮抗剤は、あるいは、本発明のタンパク質に対するレセプターとの競合的結合に基づいて機能してもよい。
作用剤は、あるいは、本発明のタンパク質に対するレセプターに結合し、本発明のレセプターとタンパク質間を結合する親和性を増大させるように機能してもよい。
潜在的拮抗剤としては、小さな有機分子、ペプチド、タンパク質及び抗体があり、これらは本発明のタンパク質に結合し、それによってタンパク質の活性を抑制又は消去する。このような方法で、該タンパク質の正常な細胞内結合分子への結合が抑制され、そのようにして該タンパク質の本来の生物学的活性が抑制されるかもしれない。
上述された所定の実施態様において、簡単な結合測定法が用いられ、1つの測定法では、試験化合物に直接又は間接的に結合した標識を用いて、表面に付着するタンパク質に結合する試験化合物を検出し、又は別な測定法では、標識した競合物質との競合を用いる。
用いられてもよいもう1つの薬剤スクリーニング技術は、タンパク質に対して適切な結合親和性を持つ化合物の高処理量スクリーニングの提供である(W084/03564を参照されたい。)。この方法において、多数の異なる小さな試験化合物を固体基質上で合成し、次にタンパク質と反応させ、洗浄する。タンパク質を固定する1つの方法は、非中和抗体を使用することである。結合したタンパク質は次に、当技術分野で周知である方法を用いて検出できる。精製されたタンパク質を前述の薬剤スクリーニング技術を用いてプレート上に直接塗布することも可能である。
【0052】
インシリコ(コンピューター内)方法も作用剤及び拮抗剤を同定するために用いることが可能である。作用剤及び拮抗剤部分の活性は次に、必要な場合には、実験で確認してもよい。
本発明のさらなる態様において、本発明のスクリーニング方法によって同定した作用剤又は拮抗剤が提供される。
本発明をある箇所において、本発明の特定の態様に関して説明する場合、精通した読者は、そのコメントは本発明の他の態様において同じく適用できて、説明は適宜に解釈するべきであることを理解する。
本発明に従って、従来の分子生物学、微生物学、免疫学、当技術分野内の遺伝子組み換えDNA技術を用いることが可能である。
そのような技術は文献に詳細に説明されている。例えばSambrook他「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」(第3版、2001);「Current Protocols in Molecular Biology」I-III巻[Ausubel,R.M.編(1999及び隔月更新);「Cell Biology:A Laboratory Handbook」第I-III巻[J.E.Celis編(1994)];「Current Protocols in Immunology」第I-IV巻[Coligan,J.E.編(1999 及び隔月更新)];「Oligonucleotide Synthesis」(M.J.Gait編 1984);「Nucleic Acid Hybridization」[B.D.Hames及びS.J.Higgins編(1985)];「Transcription And Translation」[B.D.Hames及びS.J.Higgins編(1984));「Culture of Animal Cells 第4版」[R.I.Freshney編(2000));「Immobilized Cells And Enzymes」[IRL Press(1986));B.Perbal,「A Practical Guide To Molecular Cloning」(1988);Using Antibodies:A Laboratory Manual:Portable Protocol No.I,Harlow,Ed及びLane,David(Cold Spring Harbor Press,1998);Using Antibodies:A Laboratory Manual,Harlow,Ed及びLane,David(Cold Spring Harbor Press,1999).を参照されたい。
【実施例】
【0053】
以下、実施例にて本発明を例証するが本発明を限定することを意図するものではない。
本発明者は、PK15細胞におけるPCV2の増殖感染中に、新種のウイルス遺伝子、ORF3、を発見した。部位特異的突然変異誘発法によるORF3欠失PCV2での感染結果により、該タンパク質はウイルス複製に必須ではないことが分かった。
細胞にORF3単独のトランスフェクトにより、ウイルス感染領域での説明と類似の経路によりアポトーシスが誘発される。このことはさらにORF3発現を欠いた感染細胞のアポトーシス活性が明らかに減少することで確認出来て、該タンパク質がウイルス誘発性アポトーシス誘導において主要な役割を果たすこと、及び該タンパク質がウイルス性病因に関わっている可能性があることが示唆される。
野性型PCV2を感染させたマウスと比較すると、ORF3遺伝子発現を欠く突然変異体PCV2をBalb/Cマウスに感染後これらマウスに病理変化は認められなかった。従って、突然変異体PCV2が、PMWSを誘発するPCV2に対する弱毒化生ワクチンになる可能性を持つことが示唆される。
【0054】
本発明において、ORF3に対する特異的抗体を用いて、ORF3タンパク質が、PCV2感染細胞で実際に発現すること、及び該タンパク質が培養細胞におけるPCV2複製に必須ではないことが示された。さらに、ORF3タンパク質は、ウイルス感染の文脈で説明したのと類似の経路を用いて、PCV2誘発性アポトーシスにおいて主要な役割を果たすことが示された。ORF3発現を欠く感染細胞のアポトーシス活性の明らかな減少により、このことはさらに確認される。
本発明において、陰性対照としての健康マウス、及び陽性対照としてのPCV2感染マウスを用い、突然変異体PCV2接種原を8週齢の実験用マウス群に投与した。105TCID50(50%組織培養感染量)の単回投与を各実験用マウスに行った。実験セットは一方で、顕著に、より軽度な顕微鏡的病変、及び軽度な身体的効果を示したが、他方陽性対照のように、多量のPCV2抗原に対する細胞質標識を示した。
【0055】
材料と方法
ウイルスと細胞
PCVを含まないPK15永久細胞株を、5%濃度CO加湿インキュベーターにおいて、37℃で、5%熱不活性化ウシ胎児血清(FBS)、5%L−グルタミン、100U/mlのペニシリンG、及び100μl/mlのストレプトマイシンを添加した最小必須培地(MEM、Gibco)で維持した。一過性発現アッセイで用いるCos−7細胞を、10%のFBSを添加したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM、Gibco)で維持した。実験に用いるBJW株PCV2ウイルスは、最初中国北部地域で自然に発生したPMWS感染ブタ腎組織サンプルから単離されたものである。腎組織を処理し、PK15細胞に接種した。またそのゲノム配列を、GenBankに寄託した(アクセス番号:AY847748)。
【0056】
ORF3に対する抗体の産生
図1Aに示すように、ORF3と同様、ORF1とORF2遺伝子を、BJW株PCV2の遺伝子地図に表示する。ORF3全長をコードするDNAを、PQE30中にクローニングし、大腸菌(Escherichia coli)BL21細胞に導入し形質転換した。これらの細胞を、IPTG(イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド)を用いてORF3の発現を誘導し、37℃で4時間増殖させた。His−tag融合タンパク質を精製し、その調合液をポリクローナル抗体産生のためにマウスへ投与した。4回の投与後、マウスを採血し、ORF3に対する血清の反応性について検定した。該抗体は、PCV2ウイルスに感染した、又はORF3発現構築物を導入した、PK15細胞内で発現したORF3に対して特異的反応性を示した。
【0057】
PCV2突然変異体及びプラスミドの構築
一対のPCRプライマー:前方プライマー、F−PCVPST(5′−TGCACTGCAGTAAAGAAGGCAACTTAC−3′)及び逆方向プライマー、R−PCVPST(5′−TGCACTGCAGTATTCTTTATTCTGCTG−3′)を、BJW分離株PCV2配列に基づいて設計した。この一対のプライマーは唯一のPst1制限酵素部位を含む重複領域を持つPCV2完全ゲノムを増幅する(図1A及びC)。要約すると、QIAampDNA Minikit(Qiagen)を用いて、自然発生PMWS感染ブタ腎組織サンプルから、DNAを抽出した。抽出したDNAをPCR(Perkin-Elmer)により下記の条件で増幅した:94℃、5分間の初期酵素活性化段階、それに続く94℃、1分間の変性段階、48℃、1分間のアニーリング段階、72℃、2分間の伸長段階を35サイクル、及び72℃、10分間の最終伸長段階。予定サイズのPCR産物をゲル電気泳動法で分離して、PCR精製キット(Qiagen)を用いて精製した。
PCV2ゲノムを含むDNAクローン分子を構築するために、PCR産物をpBlueScript SK(pSK)ベクターにクローニングした。該クローンを、PCV2ゲノムの特異的プライマーと同じく、M13前方及び逆方向ユニバーサルプライマー;及びABI Prism Dye terminator cycle sequencing kit(PE Biosystems)を用いて、両鎖の配列を決定した。
【0058】
QuickChange Site-Directed Mutagenesis Kit(Stratagene)を用いて、クローン化したPCV2ゲノムに、特異的な突然変異を導入した。製造業者の説明書に基づき、一組の突然変異誘発性プライマー(前方プライマー、5´−GGGATGGTTACCACGGTGAAGTGGTTGTTA−3´、逆方向プライマー、TAACAACCACTTCTTCACCGTGGTAACCATCCC−3´)を用いて突然変異プラスミドを産生する。突然変異(nt671)をイタリック体太文字で示し(図1B)、その部位でORF1タンパク質のアミノ酸配列の変更はできない。PCV2ゲノムをpSKプラスミドから切り出し、連結反応により環状化した後、連結したDNA混合物を60〜80%程度の集密状態のPK15細胞内へトランスフェクトした。
【0059】
組み換え真核細胞発現プラスミドを作成するため、ORF1、ORF2及びORF3遺伝子のコード配列をPCV2ゲノムから増幅した。下記のプライマー:GFP−ORFl(5):5´−CCGCTCGAGCTATGCCCAGCAAGAAGAATGG−3´及びGFP−ORFl(3):5´−CGGGGTACCTCAGTAATTTATTTCATATG−3´、GFP−ORF2(5):5´−CCCAAGCTTCGATGACGTACCCAAGGAGGCG−3´及びGFP−ORF2(3):5´−CGGGGTACCTTATGGTTTAAGTGGGGGGTC−3´、GFP−ORF3(5):5´−CCCAAGCTTCGATGGTAACCATCCCACCACTTG−3´及びGFP−ORF3(3):5´−CGGGGTACCTTACTTATCGAGTGTGGAGCTC−3´、を各々、これらの3つの遺伝子を増幅するのに用いた。GFP−ORF1、GFP―ORF2、及びGFP−ORF3を得るために、XhoI/KpnI断片ORF1、及びHindIII/KpnI断片ORF2及びORF3を、夫々真核細胞発現ベクターpEGFP−C1(Clontech)の対応部位に、ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)プロモーターの下流方向にクローニングした。これらをPCR増幅の結果として、エラーが生じていないことを確認するために配列決定した。
【0060】
トランスフェクト及び感染
PstI消化PCV2、又はORF3欠失PCV2は、夫々組み換え体PCV2(rPCV2)又は突然変異体PCV2(rPCV2ORF3△)を産生するために作成したものであるが、ゲノムトランスフェクトのため、これらを対応するクローンゲノムから単離し、ゲル精製し、トランスフェクトする前に、T4DNAリガーゼ(BioLab)の存在下16℃で一晩再環化した。先に記載したトランスフェクト後(49)、細胞をさらに300mM D−グルコサミンで24時間処理した。ゲノムをトランスフェクトした細胞を、感染検査のため3回連続の凍結・融解サイクルへかけた。全溶解物を集め、PCV汚染のないPK15細胞を感染させるために使用した。次にそれらを上述したグルコサミン処理し、感染後IFAで解析を行った。
GFP−ORF1、―ORF2、−ORF3構築物のインビトロ発現を、PK15細胞を用いた一過性発現実験で検査した。25×25mmフラスコで培養された細胞に、製造業者のプロトコルに記載されたようにLipofectaminePlus(GIBCO/BRL、USA)を用いて、GFPベクターのみ、GFP−ORF1、GFP―ORF2、又はGFP−ORF3(フラスコ当たり2μgプラスミド)をトランスフェクトした。トランスフェクト24時間後、ORF1、ORF2及びORF3の発現を、マウス抗ORF1、ORF2(Liu及びKwang、個人データ)、又はORF3ポリクローナル抗体を用いた免疫ブロッティング解析により証明した。
【0061】
RT−PCR
ORF3遺伝子の逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)のために、全細胞RNAを、ウイルス感染したPK15細胞からTrizolRNA抽出試薬(Invitrogen)を用いて調製した。該RNAサンプルを、DNaseIで37℃、60分間インキュベートし、全ての汚染ウイルスDNAを除去した。センスプライマーとアンチセンスプライマーは、それぞれR671:5´−ATGGTAACCATCCCACCACTTG−3´及びF357:5´−TTACTGATAGAATGTGGAGC−3´であった。オリゴヌクレオチドの接尾辞(F又はR)は、プライマーの方向性を示す。Fはnt0から1767への前方向を表示し、一方Rはnt1767から0への逆方向を表示する。RT−PCRを、AMV Reverse Taranscriptase kit(Roche)及びExpand High Fidelity PCR kit(Roche)を用いて行い、PCR産物を1.2%アガロースゲルで電気泳動し、撮影した。
【0062】
In situ ハイブリダイゼーション(ISH)
ISHを以下のように行った。簡単に説明すると、80%の集密度になるまでチャンバースライド(IWAKI)で培養されたPK15細胞に、1MOIのTCID50(50%組織培養感染量)で野生型PCV2又は突然変異PCV2を感染させた。感染24、48、72及び96時間後のスライドをPBSで洗浄し、PBS中4%パラホルムアルデヒド溶液で30分間室温(RT)で固定し、乾燥させた。0.1Mトリエタノールアミン、0.2N HCl及び0.5%無水酢酸でアセチル化した後、スライドをハイブリダイズ溶液(50%ホルムアミド;5×SSC;50μgサケ精子DNA/ml)中に60℃で2時間プレハイブリダイズし、その後1μg/ml濃度のジゴキシゲニン(DIG)標識RNAプローブで60℃で一晩ハイブリダイズした。スライドを洗浄後、Anti−fluorescence−AP(Roche)(緩衝液[10%ウシ胎児血清;100mM Tris−HCl;150mM NaCl、pH7.5]で1:5000に希釈した150μl)と共に4℃で一晩インキュベートした。
スライドを洗浄し、NBT−BCIP混合物とインキュベートし、検定のため顕微鏡下に取り付けた。
KpnIで線状化したORF3のcDNAを含むpSKプラスミドから、T7RNAポリメラーゼ用いたインビトロ転写によって、センスリボプローブを合成した。アンチセンスリボプローブについては、ORF3断片を一組のプライマー(前方プライマー:5´−ATGGTAACCATCCCACCATTGTTTCTAGGTGGTTTCCAG−3´、逆方向プライマー:5´−TAATACGACTCACTATAGGTCAGAAATTTCCGCGGGCTGG−3´、T7プロモーターは下線を付した)を用いて増幅し、T7RNAポリメラーゼで転写した。NTP-DIG label mix(Roche)を用いて、両RNAプローブを標識した。
【0063】
PCV2複製検定法
PCV2の増殖特性を解析するため、集密状態のPK15細胞に野性型、組み換え型、又は突然変異PCV2ウイルス株(PK15細胞で3継代後生成した)を1MOI TCID50(50%組織培養感染量)で感染させた。感染した培養細胞を、3サイクルの凍結融解により、様々な時間間隔で細胞から採取し、上清を得た。培養細胞内に存在する感染ウイルス価を、先に記載したPK15細胞上のIFA(14)によって測定した。
【0064】
アポトーシス検定法
感染後24、48、72及び96時間チャンバースライド(IWAKI)で培養したPK15細胞を、PBS中4%パラホルムアルデヒド(PFA)で固定し、ブタ抗PCV2血清及びFITC−結合抗体で染色した。GFP−ORF1、GFP―ORF2、又はGFP−ORF3プラスミドをトランスフェクトしたPK15又はCos−7細胞を、それぞれトランスフェクト24及び48時間後に4%PFAで固定した。次にそのスライドを1μg/ml濃度のDAPI(2,4−ジアミジノ−2−フェニルインドール)と37℃、30分間インキュベートし、Plan−Novofluar63×/1.4油浸レンズを用いてLSM 510 META共焦点レーザー走査顕微鏡(Zeiss、Germany)下で検査した。
感染したPK15細胞(2〜3×106)を感染後様々な間隔で採取し、4℃、10分間1000×gで遠心分離した。沈殿物をPBS中で洗浄し、2.5%グルタールアルデヒドで固定した。次ぎに、細胞を1%S2O4で後固定し、EPON−812に包埋した。超薄切片を切りとり、日立H−700電子顕微鏡で検査した。
【0065】
75×75mmフラスコで培養したPK15細胞に、野生型PCV2を感染させた。処理後、浮遊及びトリプシン分離細胞をプールし、氷冷PBSで2回洗浄し、70%の冷エタノールで固定し、その後PBSで2回洗浄した。遠心分離後、細胞沈殿物をPBSヨウ化プロピジウム(50μg/ml)で染色し、RNaseA(100μg/ml)で45分間処理した。PK15細胞のDNA含量を蛍光励起細胞分取装置(FACSort、Becton Dickinson)で解析した。少なくとも10000個の事象を解析し、sub−G1期集団内の細胞の割合を計算した。ヒストグラムの基点で細胞残屑の凝集をsub−G1細胞解析から除外した。各実験において、擬似感染PK15細胞を対照として使用し、PCV2に感染した細胞と比較した。
野性型PCV2で感染した細胞、又はGFP−ORF1、GFP―ORF2、又はGFP−ORF3プラスミドをトランスフェクトした細胞から、付着及び非付着細胞を別々に収集し、10分間200×gで沈殿させ、氷冷PBSで洗浄し、4%PFAで固定し、1μg/mlのDAPIで染色し、蛍光顕微鏡で検査した。最低限300細胞/サンプルをアポトーシス変化(核が多数の小片に断片化)のために計数した。
【0066】
間接蛍光法(IFA)
チャンバースライド(IWAKI)で増殖したPK15細胞に、1MOI TCID50(50%組織培養感染量)量の、野生型、組み換え体、又は突然変異体PCV2を、感染のため、37℃、60分間インキュベートし、培養のためMEMを添加した。37℃での培養し、感染24、48、72及び96時間後、細胞をPBSで洗浄し、PBS中4%のPFAで室温で30分間固定した。固定後、細胞を3%BSAを含むPBS−T中で、室温で一時間ブロッキングした。一次抗体、マウス抗ORF3ポリクローナル抗体、又はブタ抗PCV2抗体を1%のBSAを含むPBS―T中で希釈し、37℃、1時間、細胞とインキュベートした。PBSで洗浄後、細胞を1%のBSAを含むPBS−Tで希釈したラビット抗マウス又は抗ブタFITC結合抗体(Sigma)で、37℃、1時間インキュベートした。細胞を3回PBSで洗浄し、dH2O内ですすぎ、乾かし、蛍光封入媒体でマウントし、蛍光顕微鏡を用いて検査した。
【0067】
ウエスタンブロット解析
野性型PCV2に感染したPK15細胞由来の全細胞溶解物を15%SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)で分離し、セミドライトランスファー装置(Bio-Rad Trans-Blot SD)を用いてニトロセルロース(NC)膜(Stratagene)に転写した。膜への非特異的結合を防ぐために、膜を、5%の脱脂粉乳を含むブロッキング緩衝液TBST(20mM Tris−HCl[pH7.4]、150mM NaCl、0.1%Tween−20)中、室温で2時間ブロックし、次にマウス抗ORF3抗体と室温で2時間インキュベートした。次に、膜を3回TBSTで洗浄し、ブロッキング緩衝液で希釈(1:2,000)した西洋ワサビペルオキシダーゼ結合抗マウス2次抗体(DAKO)を用いて室温で1時間インキュベートした。洗浄後、膜を3,3´―ジアミノベンジジンテトラハイドロクロライド(Pierce、Rockford、III.USA)基質(20ml0.1M pH7.4 Tris−HCl;20mg DAB、及び6.8μl H2O2)で反応させ、次にその反応を蒸留水で止めた。
【0068】
免疫化及び生ワクチン用量
本研究において、TCID50弱毒化突然変異PCV2細胞を、実験用Balb/c白色マウスの鼻腔内経路と腹腔内経路両方で各群に投与した。
【0069】
病理学及び免疫組織化学研究
選択した器官の剖検を、全ての動物について行った。肺、肝臓、リンパ節のサンプルを収集し、4%DEPC処理リン酸緩衝のパラホルムアルデヒドに浸して固定した。固定したサンプルを脱水し、パラフィン蝋に埋め込み、6μmの厚さに切り、次にヘマトキシリン及びエオシン(HE)によって染色した。全てのサンプルについて、物理的損傷、又は顕微鏡的病変のいずれの徴候についても吟味した。リンパ球様細胞の欠乏、組織球細胞、及び/又は多核細胞の存在による浸潤についても、またリンパ系器官を吟味した。
アビジン−ビオチン−ペルオキシダーゼ技術を免疫組織化学研究に用いた。5μmの厚さに切った組織を、シランコートしたスライド上に置いた。1%Tritonを含むリン酸緩衝生理食塩水中3%のH2O2に10分間、スライドを浸して、内因性ペルオキシダーゼ活性を阻害した。ブロッキングに5%の正常マウス血清を用い、室温で1時間行った。次いで、ブタから産生した精製PCV2一次抗体のPBS−Tritonによる100分の1希釈液を用いて、切断片を室温で、一晩インキュベートし、ビオチン化抗ブタ抗体、及びペルオキシダーゼ結合アビジンを200分の1の稀釈率で、室温で一時間スライドに塗布した。次にジアミノベンジジン(DAB)―過酸化水素溶液中で切断片を5分間インキュベートし、1%のメチルグリーンで対比染色し、脱水し、Permount(Fisher Scientific Inc.)でマウントし、顕微鏡検査を行った。
【0070】
実施例1:PCV2感染細胞内の新しいウイルスタンパク質ORF3の同定
感染又は擬似感染したPK15細胞の全細胞核酸を、逆転写(RT)―PCRにより解析した。増幅産物をアガロースゲル電気泳動で分離した(図1D)。315bp断片であるORF3遺伝子を、指定した時刻にPCV2感染細胞から単離したRNAを用いて増幅したが、このことは、PCV2感染細胞において、ORF3遺伝子は、転写レベルで発現出来ることを示す。さらにORF3mRNAの相対分布を測定するために、PCV2感染PK15細胞の解析を行った。図1E(パネルa〜d)で示すように、アンチセンスリボプローブを用いて、ORF3mRNAのシグナルが、指定した時刻にPCV2感染細胞内で検出でき、また感染細胞の核内に主に位置することが分かった。興味深いことに、センスORF3リボプローブを用いても、mRNAシグナルが感染細胞内で検出された(図1E パネルe)。このことは、PCV2全ゲノム内の反対方向で、全ORF3遺伝子が完全にORF1遺伝子と重複しており(図1C)、従ってORF1mRNAシグナルを検出したと説明可能である。さらに、PCV2に非感染の対照細胞内ではシグナルが検出されなかった(図1E、パネルf)。この結果は、PCV2感染細胞内でORF3mRNAを検出することが出来て、核内に位置することをさらに示した。
【0071】
ORF3遺伝子をE.coliベクターPQE30内でクローニングし、発現させた(データ省略)。さらに、この組み換えタンパク質を、抗ヒスチジンモノクローナル抗体を用いてウエスタンブロッティング法により確認し(データ省略)、以下の実験で使用したタンパク質ORF3に対する単一特異性抗体の産生のために調製した。
PCV2感染PK15細胞内でORF3タンパク質が発現したかどうかを測定するため、材料と方法に記載されたPCV2(BJW株)を細胞に感染させた。PCV2感染PK15細胞内のORF3の発現と分布(位置)を測定するため、抗ORF3マウスポリクローナル抗体を直接免疫蛍光法実験において使用した。感染24,48,72及び96時間後にPCV2感染した細胞内でORF3を発現する細胞集団を検出した(図2A、パネルb〜d、データ省略)。ORF3タンパク質は、主に感染した細胞の核内に局在し、細胞質内には少なかった。図2A(パネルc)で示すように、ORF3タンパク質は感染48時間後に感染細胞内で最も強く発現した。擬似感染細胞ではORF3に対するマウス抗体の特性を示す顕著な染色は観察されず(図2Aパネルa)、マウス抗体がORF3に対して特異的であることを示した。さらに感染後指示された時間に、全タンパク質をPK15細胞から採取し、ウエスタンブロッティング法にかけた(図2B)。マウス抗ORF3抗体を用いることにより、感染24時間後にPCV2感染細胞内に、淡いが、明らかに認識出来るタンパク質のシグナルを検出した。バンドの強度はその後大幅に増大したが、感染72時間後に減少した。擬似感染細胞ではシグナルを検出しなかった(図2B)。同時に、これらの結果から、PCV2感染細胞において、転写及び翻訳レベル両方で発現するという理由から、ORF3は新規のウイルス性タンパク質であると考えられる。
【0072】
2個の主要な読み取り枠(ORF)をPCVのゲノム内に同定した。ウイルスのカプシドをコードするcap遺伝子ORF2は、主要な構造タンパク質である。他方の遺伝子はrep遺伝子(ORF1)であり、2個のRepイソ型、Rep及びRep´の合成を導き、これらイソ型はウイルス複製に必須である(9、25)。さらに、ブタ腎細胞内で増殖感染中に、PCV2のさらに6種のRNA(3種のRep関連RNAであるRep3a、Rep3b、Rep3c、及び3種のNS関連RNAであるNS515、NS672、NS0)を検出した(9、10)が、これらの転写単位は、ウイルスタンパク質合成又はDNA複製へ影響を持たないと示唆される。NS515、NS672、及びNS0はRepプロモーターの下流のORF1内部で3種の異なるプロモーターから転写されたと考えられ(9)、他のタンパク質又は機能性タンパク質をコードしていないようである。同定された9種のPCV2特異的RNAのうち、ORF2RNAのみが相補的なDNA鎖から転写され、ウイルスのカプシドタンパク質ORF2をコードする。本研究において、PCV2感染PK15細胞内の相補的DNA鎖ゲノムから転写された新規ウイルスRNAを検出し、さらにPCVが培養細胞内でPCV2誘発性アポトーシスに関与する新規ウイルス性タンパク質(本明細書でORF3と命名された)をコードすることを実証した。
【0073】
この新規転写物ORF3RNAを、PCV2感染細胞内においてRT―PCRにより容易に検出し(図1D)、さらにISH測定法を用いて感染細胞の核内部において検出した(図1E)。さらに、ORF3抗原に対する特異的抗体を用いて、タンパク質は、PCV2に感染したPK15細胞内で発現し(図2A)、感染細胞の核内に主に局在し、細胞質内には少ない(図2A)ことを免疫蛍光法によって示した。また感染細胞のタンパク質発現を、ウエスタンブロット解析により検出することが可能であった(図2B)。地理学的に異なる20種以上のPCV2分離株の配列解析(GenBankデータベースから入手した)によると、ORF3タンパク質は研究されたPCV2株内において高度に保存されており、アミノ酸のレベルで94.5%を超える同一性があることが示唆された(データ省略)。しかしながら、PCV1株の対応領域では異なっているようであり、61.5%のアミノ酸配列同一性しか示さない。PCV1ウイルスは自然界に非病原菌で存在し、またブタのいかなる病理学的損傷の原因にもならないので(3,48)、これらの残渣が、ウイルスの病原性発現に関与しているかもしれない。
【0074】
実施例2:ORF3はウイルス複製に必須ではない
前述のように、点突然変異によりORF3遺伝子の開始コドンATGがGTGへ変わり、ORF3遺伝子を欠くPCV2突然変異体を作成した(図1B)。ウイルス複製におけるORF3タンパク質機能の研究のため、PK15細胞を野生型PCV2又は突然変異体PCV2の感染性クローンDNAでトランスフェクトした。野性型PCV2のDNAは予想通り組み換え体PCV2(rPCV2)を生成したが、突然変異体PCV2のDNAでトランスフェクトしたPK15細胞も成育可能な突然変異体ウイルス(rPCV2ORF3Δ)を生成した。ウイルス力価を上昇させるため、その突然変異体ウイルスをPK15細胞内で3回継代した。その後、感染又は擬似感染の全細胞核酸をRT−PCRによって解析した。反応生成物をアガロースゲル電気泳動により分離した(データ省略)。野性型PCV2感染細胞にみられるように、突然変異PCV2感染細胞から単離されたRNAを用いて315bp断片を増幅したが、このことはORF3遺伝子の開始コドンで生じる点変異はその転写に作用しないことが示され、さらにORF3転写の開始部位は上流に位置するかもしれないことが示唆された。擬似感染PK15細胞を用いた場合、PCR生成物は得られなかった。RT−PCR生成物の配列解析の結果、生成したPCV2突然変異体において予期した変化の存在を確認した(データ省略)。さらに、アンチセンスORF3リボプローブを用いることにより、ORF3遺伝子のmRNAシグナルを突然変異PCV2感染細胞の核内に検出した(データ省略)。
【0075】
ORF3タンパク質の発現を検出するため、PK15細胞を回収ウイルスで感染させ、ORF3特異的抗血清を用いてIFAで解析した。図3は組み換え体又は突然変異体PCV2感染細胞の免疫蛍光染色の結果を示している。rPCV2ウイルスに感染した細胞はORF3タンパク質を発現し、陽性の免疫蛍光シグナルを示した(図3A)。しかしながら、突然変異体rPCV2ORF3Δウィルスに感染した細胞は、12継代後でさえ何らの蛍光シグナルも示さず(図3D)、このことは、ORF3タンパク質発現の欠如を示している(データ省略)。対照的に、抗PCV2ブタ血清は突然変異体PCV2感染細胞と同様、組み換え体PCV2感染細胞の核内のウイルス性抗原を容易に検出した(図3B及びE)。抗ORF3マウス血清(図3C)又は抗PCV2ブタ血清を用いて、擬似感染細胞においては蛍光性が検出されなかった(図3F)。
野性型、組み換え体、及びORF3欠失PCV2の複製動特性を測定するため、PK15細胞に各種ウイルスを感染させ、IFA測定法により、そのウイルス力価を感染5日後に測定した。図4Aは感染後異なる時点での各ウイルスの増殖曲線を示している(TCID50/ミリリットルで示す)。感染後種々の時点でのTCID50によると、突然変異体ウイルス(ORF3タンパク質発現を欠いている)は、親株ウイルスPCV2又は回収組み換え体PCV2(rPCV2)ウイルスより、ややより遅く複製されたことを示した。感染36時間後に、ORF3欠失PCV2ウイルスは親株ウイルスPCV2又は回収rPCV2ウイルス力価より、それぞれおよそ33倍又は31倍低い力価を示した。しかしながら、感染72時間後では、ORF3欠失PCV2ウイルスは105.5TCID50/mlの力価に到達し、親株ウイルスPCV2(105.8TCID50/ml)及び回収rPCV2ウイルス(105.6TCID50/ml)の力価と差がなくなった。これらの結果はORF3タンパク質が細胞培養における複製に必須ではないことを示している。
【0076】
ORF3を欠く場合、PCV2のインビトロ複製は遅延した(図4)。しかしながら、最大力価は野性型ウイルス複製後に検出した値と同様に高かった。複製における遅延はインビボでの弱毒化に飜訳され、ワクチンの可能性をもつウイルス株に通じることが考えられる。PCV2に対し、ORF2タンパク質は主要な免疫原性カプシドタンパク質(9、30、31)とみなされ、またバキュロウイルス発現の組み換え体ORF2を接種した(5)又はORF2由来のDNAワクチンを注射したブタにおいて防御応答を促進出来る。非病原性PCV1ゲノムのバックボーン内にクローニングしたPCV2のORF2遺伝子を持つキメラPCV1〜2ウイルスも、PCV2が弱い病原性である場合、それに対して強い免疫応答を誘導することが可能であり(5)、このことはPCV2のORF2タンパク質が良い宿主防御免疫原であることを示唆している。ORF2タンパク質の免疫優勢エピトープが、タンパク質のアミノ酸残基47から84、165から200、及び最後の4個のアミノ酸におそらく位置することが報告されている(22)。これらはORF3タンパク質によって誘発される抗体は、宿主に対する防御免疫応答に関与していないであろうを示す。また、ORF3タンパク質を欠くPCV2突然変異体は、動物において対応する抗体を誘発しないという結果になるであろうし、野性型PCV2のような、適切な免疫応答を誘導することが期待される。
【0077】
実施例3:PCV2感染は培養細胞におけるアポトーシスを誘発する
感染後期において、PK15細胞におけるPCV2複製の結果、例えば円形化や、培養フラスコからの感染細胞の分離のような細胞変性効果(CPE)、及び細胞溶解や死がもたらされた。PCV2感染細胞の死を導くメカニズムは、まだ十分に分かっていない。PCV2感染が培養細胞においてアポトーシスを誘発するかどうかを決定するため、1MOIのTCID50で野生型PCV2をPK15細胞に接種し、感染後、異なった、指示された時点で、IFAによって、PCV2ウイルス性抗原発現を解析し、及びDAPI染色によって、アポトーシスの解析を行った。無傷の核は均一に染色されるが、アポトーシス核はしばしば断片化し、DNA凝縮及び断片化に起因する不規則又は弱いDNA染色を示す(45)。図5Aは、クロマチンの凝縮及び断片化が感染後の48時間(上部パネル)、及び72時間(下部パネル)のPCV2感染細胞内に見えることを示す。対照的に、感染後の擬似感染細胞内には明白な核の形態学的変化は観察されなかった(データ省略)。
【0078】
感染した、及び擬似感染したPK15細胞を、超微細構造特性について解析した。感染48時間後、PCV2感染細胞は、クロマチンの密度及び分布の変化のようなプログラムされた細胞死の典型的な特徴を示し、クロマチンは例えば三日月型の塊内の周囲に凝集し、及び核嚢の膨張が観測された(図5B、パネルb)。感染後72時間で、細胞は、例えばアポトーシス小体形成に関与する核の断片化及び細胞質攪乱などのアポトーシス細胞死の典型的なマーカーを示した(図5B、パネルc)。96時間で、細胞は、さらにアポトーシス小体の広範な散布につながる核の断片化を示した(データ省略)。対照的に擬似感染細胞は超微細構造のレベルで検出可能な変化を示さなかった(図5B、パネルa)。
PCV2感染アポトーシスを、ヨウ化プロピジウム(PI)染色し、固定したPK15細胞をフローサイトメトリーすることにより、低二倍体細胞の割合を決定することで検定した。アポトーシス細胞は、正常細胞より低いDNA含有量を持ち、その存在は低蛍光での低二倍体ピーク値の発現により識別された。PI染色細胞の蛍光励起細胞分取分析の結果、擬似感染細胞には、〜1%の細胞が低二倍体で存在した。(図6A)。低二倍体細胞は、感染後72時間で顕著に増加し、その後減少した(図6A及びデータ省略)。PCV2によるアポトーシス誘発を、材料と方法で説明したように、DAPI染色により核形態学解析により検定した。染色細胞の実験により、フローサイトメトリー解析で説明したように、感染後アポトーシス細胞が同様の様態を示すことを実証した(図6B)。図6Cで示したように、擬似接種した細胞より、接種した細胞において、より多くの細胞が培養フラスコから離脱し、基盤の一部になった。
【0079】
ウイルス誘発細胞死は、ウイルス感染の病原性において、重要な役割を果たす。アポトーシスは宿主免疫系を逃れて、近隣の細胞に後代のウイルスを拡散する上で重要な段階を示すかも知れない、またDNA損傷によって作成された異常細胞、又はウイルス性病原体によって感染した細胞を除去する機能を示しているかもしれない(39)。ウイルスの多くが、その複製周期中に直接的又は間接的のいずれかでアポトーシスを発現又は抑制することが実証されている(39)。サーコウイルス(Circoviridae)科においては、ニワトリ貧血ウイルス(CAV)は感染後、胸腺細胞及び細胞株でアポトーシスを誘発し(18)、VP3タンパク質、CAVによってコードされたアポプチン(apoptin)は、様々な培養形質転換細胞株においてアポトーシスを誘発する(34)。PCV2については、感染したブタのBリンパ球においてアポトーシス、続いてBリンパ球の選択的な枯渇を誘発すること(43)、及びPCV2感染マウスモデルのリンパ系組織にある組織球細胞においてもアポトーシスを誘発することが示されている(21)。しかし、正常な対照と比較して、自然感染のブタにおいて、リンパ球アポトーシスが顕著に誘発されず、及びカスパーゼ3活性が顕著に刺激されない(24,37)という矛盾した結果が最近報告されており、リンパ系組織の枯渇は、リンパ系組織における増殖活性の減少に主として関わることが示唆された。しかしながら、本明細書において、DAPI染色、電子顕微鏡観察、及びフローサイトメトリー解析を用いて、PCV2が培養PK15細胞内でアポトーシスを誘発することを実証した。DAPI染色では、DNAの凝縮及び断片化に起因する不規則又は弱いDNA染色を示したが(図5A)(45)、これは大量のクロマチン凝縮とアポトーシス小体の出現を示す電子顕微鏡観察下での形態学的変化と一致している(図5B)。
PCV2感染後、擬似感染対照と比較すると、DAPI染色の検定で観測されたアポトーシス細胞(図6B)、及びフローサイトメトリーで解析された低二倍体細胞(図6A)は顕著に増加した。PCV2感染後40%の細胞が離脱し、基盤へ浮遊したが、擬似感染対照の浮遊細胞は5%未満であった(図6C)。培養細胞株において個々のウイルスタンパク質の発現させることで、ORF3遺伝子によってコードされた新規のウイルスタンパク質が、PCV2感染中のアポトーシス誘発の一因になるという更なる証拠を提供した。
【0080】
実施例4:ORF3タンパク質は単独でアポトーシスを誘発する
PCV2感染が、PCV2感染に対する許容細胞株である、PK15細胞においてアポトーシスを誘発することの確認後、アポトーシス誘発の原因になる可能性のあるPCV2にコードされたタンパク質(ウイルスがコードしたアポトーシス促進タンパク質)に対するスクリーニングを試みた。ORF1、ORF2及びORF3遺伝子をヒトサイトメガロウイルスプロモーターの制御下、哺乳類発現ベクター、pEGFP−C1内にクローニングした。PK15及びCos−7細胞をこれらのプラスミドによりトランスフェクトし、各タンパク質の発現を蛍光顕微鏡下で直接検査し、さらにマウスの抗ORF1、ORF2及びORF3抗体を用いて、免疫ブロッティング解析により確認した(データ省略)。タンパク質ORF1、ORF2及びORF3は感染した細胞で見られたと同様に、トランスフェクトした細胞の核領域に局在した(データ省略)。個々の構築物で細胞をトランスフェクトした後、その細胞を感染24時間後及び48時間後にDAPIで染色した。図7Aに示したように、感染24時間後の核DAPI染色により、アポトーシスの典型的な特徴であるクロマチンの凝縮及び断片化がORF3発現PK15細胞(上部パネル)及びCos−7細胞(下部パネル)内で見られた。対照的に、ORF1又はORF2をトランスフェクトした細胞内では明らかな核の形態学的変化は観察されなかった(データ省略)。さらに、全GFP陽性細胞及びGFP陽性細胞間で断片化及び凝縮した核を持つ細胞数を計測し、死細胞の割合を計算した。図7Bで示したように、トランスフェクトしたPK15細胞内におけるGFP融合構築物としてのORF3タンパク質の発現により、感染後24時間及び48時間目でそれぞれ10%及び25%の死細胞を誘発した。Cos−7細胞内にトランスフェクトされた場合は、ORF3タンパク質は、夫々の時点で12%及び28%の細胞死をもたらした(データ省略)。このスクリーニングにおいて、ORF1及びORF2タンパク質の発現により、トランスフェクトしたPK15(図7B)又はCos−7細胞(データ省略)に関わらず対照よりも顕著な細胞死に至らなかった。対照的にGFP単独では、PK15及びCos−7細胞にトランスフェクトした場合、感染後の夫々の時点で、4%未満の細胞死を誘発した(図7B及びデータ省略)。さらに、ORF3をトランスフェクトしたPK15(図7C)及びCos−7細胞(データ省略)においては、ORF1又はORF2をトランスフェクトした細胞(図7C及びデータ省略)及びGFP単独トランスフェクト対照よりも、多くの細胞が培養フラスコから離脱し、基盤の一部になった。
【0081】
PK15細胞において、rPCV2ORF3Δのアポトーシス効果を測定するため、1MOIのTCID50で細胞にこの突然変異体ウイルスを感染させ、様々な時間間隔で採取し、カスパーゼ3活性によって解析した。感染後、突然変異体ウイルスによって誘発されたアポトーシス活性は、野性型PCV2ウイルスによって誘発されたものより顕著に低かった(図9C)。擬似感染細胞においては、検知できるレベルのアポトーシスは検出されなかった(図9C)。結果はORF3タンパク質発現の欠如によって、PCV2感染細胞死が顕著に減少することを示す。
ブタがPCV2に感染すると、リンパ系組織のマクロファージの浸潤を伴い、濾胞及び濾胞間細胞部位のリンパ球枯渇がもたらされ、その後免疫抑制という結果になる(42)。ORF2はPCV2の主要なカプシドタンパク質と考えられており、バキュロウイルス発現システムにより、発現後ウイルス様粒子を形成することが出来て(31)、PCV2の他のウイルスタンパク質は、ビリオン集合に必要でない非構造タンパク質であってもよいと予想されてきた。さらに、PCV2をVIDO R1細胞へ接種した場合、ORF2タンパク質は感染後期に高レベルで発現することが示された(23)。本発明者等により実証されたように、ORF2タンパク質発現はPCV2感染PK15細胞内において感染72〜96時間後でピークになった(データ省略)。本研究において、ORF3はPCV2感染細胞内において感染48時間後に転写及び翻訳レベル両方で、より高い発現を示し(図1及び2)、ORF3もまたPCV2の非構造タンパク質であってもよいことを示唆した。動物ウイルスの非構造タンパク質はウイルス複製及び/又は病原性に重要な役割を果たしていてもよい。免疫抑制ウイルスについて、CAVの非構造タンパク質VP3はリンパ芽球T細胞においてアポトーシスを引き起こし、病原性に関与していることが示された(34);ニワトリ伝染性ファブリキウス嚢病ウイルスの非構造タンパク質VP5はウイルス複製に必須ではないが(29)、そのアポトーシス活性があるためにウイルス病原体に含まれることが発見された(53)。発明者等の研究において、PCV2のORF3タンパク質はインビトロのウイルス複製に必要ではなく、PCV2感染アポトーシス活性はORF3タンパク質発現の欠如によって顕著に減少することを示した。発明者等のデータによると、ORF3タンパク質単独発現が、PCV2感染細胞の時と同様に、イニシエーターカスパーゼ8を活性させ、その後カスパーゼ3エフェクター経路を活性化することによって、トランスフェクトした細胞のアポトーシスを誘発することを示唆する。同時に、ORF3タンパク質はそのアポトーシス活性によってウイルス病原性における役割を果たすであろう。免疫系細胞のアポトーシス誘発は、ウイルス誘発免疫抑制の必要条件の一つであろう(12)、このことはPCV2感染に対する潜在的生ワクチン株としてORF3欠失突然変異体の使用を促進してもよい。しかしながら、そのようなORF3タンパク質欠失ウイルスの使用がブタの免疫抑制を引き起こす可能性があるかどうかについては依然として決定されていない。
【0082】
実施例5: 病原学及び免疫組織化学の研究
本実験セットにおいて、8週齢のBalb/Cマウス群にORF3欠失PCV2突然変異体(mPCV2)を感染させ、一方別の群には野性型PCV2を感染させた。本実験において、健常マウスを陰性対照として使用した。感染7日後及び14日後にマウスの剖検を実施した。リンパ節のサンプルを4%リン酸緩衝パラホルムアルデヒドで固定した。組織病理学検査のため、その組織を乾燥し、ヘマトキシリン及びエオシン(HE)で染色した。次にタンパク質発現について、連続切片をPCV2免疫組織化学技術により染色した。
感染7日後及び14日後に陰性対照マウスと突然変異体PCV2感染マウス全てに身体的な劣化の徴候は見られないか、又はわずかに見られた。しかしながら、感染14日後に鼠径リンパ節は僅かに肥大していた。野性型PCV2感染マウスについては、感染7日後に、肝臓にかすかな変色及び鼠径リンパ節のわずかな肥大が観察された。感染14日後に、肝臓及び非虚脱肺の顕著な変色、及び腸間膜及び鼠径リンパ節の顕著な肥大が、ほとんどの野性型感染マウスの観察された。図8Aにおいて、3実験群の鼠径リンパ節の組織病理学検査による感染7日後及び14日後の、陰性対照とmPCV2群の胚中心の正常及び密集したリンパ球を示した。野性型PCV2では、感染7日後でリンパ球減少のかすかな徴候を示したが、感染14日後に異なる野性型PCV2感染マウスにおいて、様々な程度のリンパ球減少及び顕著な多数のアポトーシス細胞もまた観察された(矢印)。
【0083】
突然変異体PCV2感染マウスと野性型感染マウス両方に、PCV2抗原を検出した。検査された全ての組織において、PCV2抗原の免疫標識がリンパ球とマクロファージの細胞質内で最も豊富に見られた。しかしながら、突然変異体PCV2感染マウスと比較すると感染14日後の野性型PCV2感染マウスにおける免疫標識は顕著に弱かった(図8Bに示されるように)。
顕微鏡的病変及び身体的劣化の欠如は、低水準のリンパ球減少及び高水準のPCV2抗原の蓄積に加えて、突然変異体PCV2株の予防効果及び複製能を示した。本事実は、この突然変異体の持つ、PCV2誘発性PMWSに対する有効なワクチンの産生に対する適切な候補物質としての潜在能力を明らかにした。
本弱毒化生ワクチンmPCV2は、実験用マウスにおいて液性及び細胞性応答両者を誘発することが出来る。毒性が減少されただけではなく、そのウイルス複製に影響を与えない;すなわちPCV2に対し持続的な予防効果を提供し、ワクチン商品化に対する第一候補であろう。
【0084】
実施例6:アポトーシス欠失PCV2突然変異体の生成
アポトーシス欠失ウイルスを生成する際のORF3開始コドンにおける点変異の機能については上述した。本実施例において、本発明者は開始コドン突然変異以外のORF3の機能性易変部位を同定した。
ORF3はORF1内に反対の方向に位置している。ORF1はウイルス複製に必須なレプリカーゼをコードするので、ORF1のタンパク質転写機能を保存することが必須である。従って、ORF1内の縮重コドンをORF3突然変異体生成のために選択した。
異常ORF3発現を作り出すために、本発明者らは得られるタンパク質の2次構造に影響を与えるため、アミノ酸配列における電荷のパターンを変化させる手法を選択した。例えば、本発明者は電荷を逆にし、又は配列の特定位置で特定のアミノ酸において電荷を中性にした。この様にして、タンパク質の機能は無効になることがある。本研究において、部位特異的突然変異誘発法を用いて、ウイルスゲノムに上述突然変異を導入した。
5つの突然変異体を設計し、突然変異アミノ酸番号により命名した。突然変異体27は配列番号19に示されるように、アラニンが終止コドンに変化した。その結果として、この突然変異体は短縮型26アミノ酸ORF3タンパク質を発現する。
【0085】
他の突然変異は上述したようにタンパク質の配座を変えることにより、ORF3タンパク質の機能を変化させた。タンパク質の配座を変えるために、タンパク質内の荷電アミノ酸が突然変異の対象になった。多数の荷電アミノ酸があるので、ORF3タンパク質のアルファヘリックス領域が適切である。突然変異体52及び61において、アミノ酸電荷は逆となり、タンパク質の2重構造が変わり、タンパク質のアルファ領域のタンパク質がほどかれた。突然変異体52において、配列番号20に示すようにヌクレオチド配列が変化した影響により、アミノ酸His+はAsp−へ変わった。突然変異体61において、配列番号21に示すようにヌクレオチド配列が変化した影響により、アミノ酸Glu−がLys+へ変わった。突然変異体85において、配列番号22に示すようにヌクレオチド配列が変化した影響により、His+がTyrに変わったことにより、正電荷が中性電荷へと変わった。以上のことから、突然変異体85の2次構造は、タンパク質の1つのコイル領域が開くように変わった。
欠失50〜62突然変異体はアミノ酸50からアミノ酸62が欠失し、対照の役割を果たす。上述のように、生成した突然変異体は、ORF1のアミノ酸配列に作用せず、従って、突然変異部位がORF1の縮重コドンにあるので、レプリカーゼの転写への影響を持たない。図10を参照されたい。
【0086】
突然変異ウイルスゲノムをPK15細胞にトランスフェクトし、5日間培養した。5日後、細胞を採取し、3回の凍結融解法で溶解した。次に全細胞溶解物を新しいPK15細胞感染のために用いる。細胞を5継代培養すると、突然変異体52及び85は野性型PCV2と同様に細胞死を示し始めた。約70〜90%の細胞死が野性型PCV2、突然変異体52又は突然変異体85感染PK15細胞で観察された。対照的に、突然変異体61、突然変異体27又はORF3のATG開始コドンの欠失型突然変異に由来する突然変異体は、全て細胞死の顕著な減少(約10%)を示した。図11を参照されたい。
低アポトーシス率を持つこれらの突然変異体は、生弱毒化ワクチンの製造に適切である。従って本発明者らは、核酸レベルで特定のアミノ酸の配座を変えることは、ワクチン製造のための生弱毒化ウイルスの産生に適している突然変異体の作成を可能にすることを発見した。
上記の突然変異体さらに2重又は3重の突然変異として組み合わせることにより、ウイルスが野生型である毒性型へ戻る可能性を減少させること出来る。例えば、配列番号23で示されるようにATG突然変異と突然変異体27、又は配列番号24で示されるようにATG突然変異と突然変異体61を組み合わせることが出来る。前記の突然変異体は、配列番号25に示すようにATG突然変異体、突然変異体27、突然変異体61のみからなる3重突然変異に一体化することが出来る。
以上の開示の読後、当技術分野の業者にとって、本発明の様々な修正及び変更が、本発明の精神と範囲から離れていないことは自明であり、また全てのそのような修正及び変更は添付されている請求項の範囲内に属することを意図する。
【0087】
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【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】(A)感染性PCV2分子のDNAクローンの構造。完全なPCV2遺伝子を増幅するために使用したプライマー対の相対的位置を(逆方向(リバース)プライマー、R−PCVPST1;前方(フォワード)プライマー、F−PCVPST1)矢印によって示す。PCRによって増幅したPCV2のゲノムDNAを、PstI制限酵素で消化し、精製した。分子PCV2DNAクローンを作成するために、精製し、消化したゲノムDNAを、PstI酵素で前消化したpSKベクター内に連結した。そのDNAクローンを、さらに消化し、PCV2の自己連結反応のためゲル状に精製し、その後、環状PCV2DNAを、PK15細胞内にトランスフェクト(形質導入)した。(B)ORF3遺伝子を欠くPCV2突然変異体の構造の説明図。(C)BJW株のPCV2の遺伝子地図(GenBankアクセス番号AY847748)。3種のオープンリーディングフレームのコード配列は、それぞれの遺伝子のヌクレオチド部位を示すnt座標に注釈をつける。ORF2及びORF3遺伝子は左方向へ転写され、ORF1は右方向へ転写される。またPstI制限酵素部位も示す。(D)RT−PCRによるPCV2感染細胞におけるORF3遺伝子の解析。RNAをPCV2又は擬似感染細胞から単離し、cDNA内に逆転写した。そのcDNAを一対のORF3プライマーを用いて増幅した。PCR反応を用いて陽性断片をPCV2ゲノムから増幅した。(E)PCV2感染PK15細胞由来のISHによるORF3RNAの検出。アンチセンスORF3DIG標識リボプローブを用いて感染24(a)、48(b)、72(c)、96(d)時間後に、ORF3mRNA発現が感染細胞核内に検出された。センスORF3DIG標識リボプローブを用いて、ORF1mRNA発現もまた、感染48時間後に感染細胞において検出された(e)。アンチセンスORF3リボプローブを用いたところ、擬似感染細胞においては何も検出されなかった(f)。バーの長さは10μm。
【図2】PCV2感染細胞内のORF3タンパク質の発現。(A)PCV2感染PK15細胞をPCV2のORF3タンパク質に対する抗血清でプローブした。BJW株PCV2感染24(b)、48(c)、72(d)時間後のPK15細胞のIFA染色。(a)は擬似感染PK15細胞をIFAで染色し、陰性対照として使用した。蛍光顕微鏡を用いて細胞を視覚化し、撮影した。ORF3抗原は、主に感染細胞の核内、及び少量が細胞質内に位置した。バーの長さは10μm。(B)BJW株PCV2に感染したPK15細胞からの全細胞溶解物を15%のSDS−PAGEで電気泳動し、ニトロセルロース膜に転写し、ORF3抗体に対する抗血清で検出した。ORF3タンパク質は感染後、PCV2に感染した細胞内に発現した。
【図3】ORF3タンパク質発現を検出するために使用したORF3欠如PCV2感染細胞のIFA染色。PK15細胞を、組換えPCV2ウイルス株(A及びB)、又は5継代目のORF3欠如PCV2ウイルス株(D及びE)に、MOI(感染多重度)1で感染させた。擬似感染PK15細胞を陰性対照として使用した(C及びF)。感染48時間後、細胞を固定し、マウス抗ORF3血清(A,D,F)又はブタ抗PCV2血清(B,C,E)で免疫蛍光染色により解析した。バーの長さは10μm。
【図4】組換えPCV2と野生型PCV2、及びORF3欠如PCV2の複製動特性。PK15細胞をMOI1で指示されたウイルスに感染させ、指示された時点で採取し、IFAにより、1mLあたりのTCID50(50%組織培養感染量)で感染力価を測定した。
【図5】PCV2は培養されたPK15細胞内でアポトーシスを誘発する。(A)PCV2感染PK15細胞は、DAPI染色によってヌクレオソームDNA断片化を示した。BJW株PCV2に感染48(aとb)、72(dとe)時間後の細胞を各々PCV2に対するブタ血清を用いてIFAにより検出し、DAPI染色を行った。重ね撮り画像をc及びfに示す。バーの長さは10μm。(B)PCV2によって誘発されたアポトーシスを電子顕微鏡で観察した。擬似感染した細胞(a)、完全核(N)は大きな独特の電子密度の高い核小体(n)を示した。感染48(b)及び72(c)時間後の細胞は、各々三日月形の塊(短矢印)内の周辺部に凝縮している染色質、及びアポトーシス体を形成する核の断片化などのアポトーシスにおける典型的なマーカーを示した。バーの長さは2μm。
【図6】PCV2誘発のアポトーシス細胞を定量的に測定した。(A)ヨウ化プロピジウム染色によるアポトーシスの測定、及びBJW株PCV2感染PK15細胞のフローサイトメトリーの代表的な図。各パネルは、低2倍体(アポトーシスを起こした)DNAを含有するPK15細胞の割合を示す(M1)。BはAで示されたアポトーシスの3実験の平均割合を示す。Cは指示された時間における分離細胞の3実験の平均割合を示す。
【図7】ORF3タンパク質は単独でトランスフェクト(形質導入)した細胞にアポトーシスを誘発する。(A)GFP−ORF3プラスミドをトランスフェクトしたPK15、及びCos−7細胞は、24時間で各々DAPI染色によるORF3発現(a及びd)、及びヌクレオソームDNA断片化(b及びe)を示した。重ね撮り画像をc及びfに示す。バーの長さは10mm。(B)ORF3タンパク質により誘発されたアポトーシスの定量解析。アポトーシス化した細胞の3実験の平均割合をDAPI染色による核形態学的解析によって記録した。(C)Bで示された分離細胞の3実験の平均割合を示す。
【図8】(A)感染7日と14日後の陰性対照、及びmPCV2群の胚中心にある正常で密集したリンパ球を示す3実験群の鼠径リンパ節の組織病理学検査。野生型PCV2は、感染7日後、リンパ球枯渇を伴った組織球炎症性浸潤の徴候を示したが、感染14日後、多量のアポトーシス細胞を示した(矢印)。HE、バーの長さは200μm。(B)陰性対照の鼠径リンパ節は、PCV2抗原の欠如を示したが、他方、突然変異型PCV2と野生型PCV2は、感染14日後、リンパ球の細胞質内で大量のPCV2抗原(暗褐色に染色されている)の存在を示した。免疫組織化学的方法を用い、メチルグリーン対比染色を用いた。バーの長さは200μm。
【図9】PCV2ウイルスゲノムの塩基配列情報。
【図10】ORF3の突然変異の位置。突然変異体27は、Alaを終止コドンへ変化させ、短縮型26アミノ酸ORF3タンパク質が発現した。突然変異体52、及び61は、夫々His+からAsp−、及びGlu−からLys+への変化させ、アミノ酸の荷電が逆になった。突然変異体85は、His+からTyrへの変化させ、正の荷電を失った。突然変異したウイルスゲノムをPK15細胞内にトランスフェクトし、5日間培養する。5日後、細胞を採取し、3X凍結融解で溶解した。次に、全細胞溶解物を新鮮PK15細胞へ感染させるために使用した。
【図11】細胞培養5継代後、4日目に突然変異体及びPCV2を導入した細胞のアポトーシスによる細胞死。突然変異体27,61、及びORF3の開始コドンATGの欠失及び突然変異で引き起こされた突然変異体は、10%の細胞死を引き起こした。対照的に、突然変異体52,85及びPCV2は、70から90%の細胞死を引き起こした。
【図12】ORF3突然変異体27のDNA配列。突然変異点は小文字で示す。
【図13】ORF3突然変異体52のDNA配列。突然変異点は小文字で示す。
【図14】ORF3突然変異体61のDNA配列。突然変異点は小文字で示す。
【図15】ORF3 突然変異体85のDNA配列。突然変異点は小文字で示す。
【図16】ORF3 2重突然変異体ATG及び27のDNA配列。突然変異点は小文字で示す。
【図17】ORF3 2重突然変異体ATG及び61のDNA配列。突然変異点は小文字で示す。
【図18】ORF3 3重突然変異体ATG、27、61のDNA配列。突然変異点は小文字で示す。
【図1A】

【図1B】

【図1C−E】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも部分的に異常ORF3発現により弱毒化された免疫原性弱毒化PCV2ウイルス。
【請求項2】
ORF3から発現するタンパク質が減少又は欠如した請求項1に記載のウイルス。
【請求項3】
ORF3タンパク質の発現が減少又は欠如した請求項1に記載のウイルス。
【請求項4】
少なくとも一つの突然変異がウイルスのORF3に存在し、且つORF3における突然変異がORF1によってコードされたタンパク質にいかなる変化ももたらさない突然変異である請求項1又は2に記載のウイルス。
【請求項5】
ORF3の開始コドンが突然変異し、該開始コドンが非機能的であり、且つORF1によってコードされたタンパク質に変化がない請求項4に記載のウイルス。
【請求項6】
前記突然変異がORF3内に挿入された終止コドンを含む請求項4に記載のウイルス。
【請求項7】
ORF3内に挿入された前記終止コドンが配列番号19に記載されている請求項6に記載のウイルス。
【請求項8】
前記突然変異が配列番号21に記載のORF3のアルファ−ヘリックス領域の突然変異からなる請求項4に記載のウイルス。
【請求項9】
ORF3内に2以上の突然変異を含む請求項4に記載のウイルス。
【請求項10】
前記2以上の突然変異が、開始コドン、Ala27終止、及びGlu61Lysの突然変異から成る群から選択される請求項9に記載のウイルス。
【請求項11】
2つの突然変異を含み、この突然変異が停止コドンの突然変異、及び配列番号19に記載の停止コドンの挿入又は配列番号21に記載のアルファ−ヘリックス領域の突然変異から選択される第2の突然変異から成る請求項4に記載のウイルス。
【請求項12】
前記ORF3が、配列番号23又は24に記載のヌクレオチド配列からなる請求項11に記載のウイルス。
【請求項13】
開始コドンの突然変異、配列番号19に記載の終止コドンの挿入、及び配列番号21に記載のアルファ−ヘリックス領域の突然変異を含む請求項4に記載のウイルス。
【請求項14】
前記ORF3が配列番号25に記載のヌクレオチド配列を含む請求項13に記載のウイルス。
【請求項15】
請求項1〜10のいずれか一項に記載のウイルスの免疫学的有効量を含むワクチン。
【請求項16】
請求項1〜1のいずれか一項に記載のウイルスの免疫学的有効量を含み、更に医薬的に許容しうる担体、賦形剤、アジュバント又は希釈剤を含む医薬組成物。
【請求項17】
請求項15のワクチンを患畜に投与することから成る、PCV2に対する免疫応答を誘発する方法。
【請求項18】
患畜にPCV2に対する免疫応答を誘発するために、医薬に使用するための請求項1〜14のいずれか一項に記載のウイルス。
【請求項19】
患畜にPCV2に対する免疫応答を誘発させるための医薬の製造における請求項1〜14いずれか一項に記載のウイルスの使用方法。
【請求項20】
前記患畜がブタである請求項17に記載の方法、請求項18に記載のウイルス、又は請求項19に記載の使用方法。
【請求項21】
請求項1〜14いずれか一項に記載のウイルスを産生ずるための宿主細胞。
【請求項22】
請求項1〜14に記載のウイルスの免疫学的有効量を動物に投与することから成る、動物における疾病の治療又は予防のための方法。
【請求項23】
前記動物がブタである請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記疾病が離乳後多臓器消耗症候群である請求項22に記載の方法。
【請求項25】
請求項1〜14のいずれか一項に記載のウイルスを産生する方法であって、ウイルス産生方法が可能である適切な条件下で請求項21に記載の宿主細胞を培養することから成るウイルスの産生方法。
【請求項26】
更に培地からウイルスを単離することを含む請求項22に記載の方法。
【請求項27】
配列番号1に記載のアミノ酸配列から成る、アポトーシス誘発能を持つタンパク質。
【請求項28】
配列番号1に記載のアミノ酸配列と少なくとも65%、80%、又は90%の相同性をもつ、アポトーシス誘発能を持つタンパク質。
【請求項29】
請求項27又は28に記載のタンパク質の活性断片である、アポトーシス誘発能を持つタンパク質。
【請求項30】
融合タンパク質の形で提供される請求項27〜29のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項31】
請求項27〜30のいずれか一項に記載のタンパク質をコードする核酸分子。
【請求項32】
前記核酸分子が、配列番号2に記載の配列、又は遺伝子コードの縮重の範囲内で配列番号2に対応する配列から成る請求項31に記載の核酸分子。
【請求項33】
前記核酸分子が、配列番号2に記載のヌクレオチド配列と少なくとも70%、80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、又は99%の相同性をもつ配列、又は遺伝子コードの縮重の範囲内で該配列に対応する配列から成る請求項31に記載の核酸分子。
【請求項34】
配列番号2に定義された核酸配列、又は遺伝子コードの縮重範囲内で該配列に対応する配列に、高ストリンジェントな条件下でハイブリダイズ可能な請求項31に記載の核酸分子。
【請求項35】
請求項32〜34いずれか一項に記載の核酸分子の突然変異型から成り、請求項32〜34のいずれか一項に記載の核酸分子によってコードされるタンパク質が異常発現するように突然変異した核酸分子。
【請求項36】
配列番号3に記載の核酸分子配列、又はその縮重バージョンからなる請求項35に記載の核酸分子。
【請求項37】
請求項36に記載の核酸分子によってコード化されるタンパク質。
【請求項38】
請求項33〜36のいずれか一項に記載の核酸分子を含むベクター、ウイルス又は宿主細胞。
【請求項39】
請求項27〜30、又は37のいずれか一項に記載のタンパク質に結合可能な抗体。
【請求項40】
請求項27〜30、又は37のいずれか一項に記載のタンパク質を動物に投与し、該動物から抗体を採取することから成る、請求項39に記載の抗体を生成する方法。
【請求項41】
アポトーシス誘発能を高める、又は減少させるかどうかを測定することから成る、請求項27〜30、又は37のいずれか一項に記載のタンパク質の作用剤又は拮抗剤を同定する方法。
【請求項42】
(a)少なくとも1つの候補分子を生体サンプルに接触させる段階、及び(b)前記少なくとも1つの候補分子による生体サンプルに誘発されたアポトーシスのレベルを検定する段階から成る、離乳後多臓器消耗症候群誘発能を有する少なくとも1つの候補分子をスクリーニングする方法であって、該アポトーシスのレベルが、少なくとも1個の候補分子の離乳後多臓器消耗症候群誘発能を表示するスクリーニング方法。
【請求項43】
更に、候補分子がアポトーシス誘発能を高める又は減少させるかどうかを測定することを含む請求項42に記載のスクリーニング方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公表番号】特表2008−541780(P2008−541780A)
【公表日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−515665(P2008−515665)
【出願日】平成18年6月6日(2006.6.6)
【国際出願番号】PCT/SG2006/000144
【国際公開番号】WO2006/132605
【国際公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(505381426)テマセク・ライフ・サイエンシーズ・ラボラトリー・リミテッド (4)
【氏名又は名称原語表記】Temasek Life Sciences Laboratory Limited
【Fターム(参考)】