説明

ブチリルコリンエステラーゼ選択的阻害剤

本発明は、中間にリンカーを介在させてヘテロ環式部分と4‐ピペリジン部分との間にリンカーを介在させた、式(I)のブチリルコリンエステラーゼ阻害剤を提供する。本化合物は、BuChEに対して非常に高い活性および選択性を示すため、認知障害および/または神経変性障害の治療および/または予防に対して有効である。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、ブチリルコリンエステラーゼ(BuChE)酵素に対して選択的薬理活性を有するインドリルピペリジン化合物、その化合物の製造方法、その化合物を含有した医薬組成物、ならびに、とりわけ認知障害や神経変性疾患等のBuChEが関与する疾患の処置および/または予防治療におけるその化合物の使用に関する。
【発明の背景】
【0002】
アルツハイマー病(AD)は、記憶および高度認知機能の喪失を伴う一般的な進行性痴呆である。この疾患は、罹患者の脳にアミロイド蓄積物が存在することに特徴を有する。この蓄積物は、細胞外(アミロイド斑)および細胞内(神経原線維もつれ)の双方でみられる。アミロイド斑の主成分は、アミロイドタンパク質前駆体(APP)のタンパク質分解開裂により産生されるアミロイドタンパク質(Aβ)である。神経原線維もつれの主成分は細胞骨格タンパク質タウである。
【0003】
アセチルコリンエステラーゼ(EC3.1.1.7;AChE)およびブチリルコリンエステラーゼ(EC3.1.1.8;BuChE)は、二種のよく似た同種タンパク質である。双方とも全脊椎動物に存在し、双方とも神経伝達物質アセチルコリン(ACh)を加水分解できる。ヒトにおいて、機能的に相違する二種のコリンエステラーゼAChEおよびBuChEは、高度のアミノ酸配列相同性(>50%)を有しているが、二種の別々の遺伝子AChEおよびBChEにより各々コードされている。この二種の遺伝子は、類似したエクソン‐イントロン構造を有するものの、根本的に異なるヌクレオチド組成を有しており、AChEは、G、Cに富み、一方BChEは、A、Tに富んでいる。この区別される二種のChE遺伝子の存在は、これまでに研究された全脊椎動物において両タンパク質産物が生物学的に必要とされるものの、おそらくそれらは別個の役割を有していることを示している。
【0004】
ADの進行の初期に観察されるものと並行して、抗コリン作動薬が健常個体の記憶を損なうことが示されている。したがって、主要な現AD療法アプローチ、および短期的に最も有望なものは、コリン作動系を刺激することである。アルツハイマー病(AD)の“コリン作動仮説”が確立されたため、この障害におけるコリン作動性メカニズムの理解が進んできた。コリンエステラーゼ(ChE)阻害剤は、現在主要な薬理学的治療アプローチであり、合理的な証拠に基づく症状管理アプローチを提供している(Giacobini E.,Neurochem.Res.,2003 Apr 28(3-4):515-22,”Cholinesterases:new roles in brain function and in Alzheimer’s Disease”)。しかしながら、抗ChE剤フィゾスチグミンは、認知機能において、わずかな短期陽性効果しか有さないことが示された。前駆体を、コリンまたはホスファチジルコリンとともに添加しても有効ではない。
【0005】
当初は、選択的アセチルコリンエステラーゼ(AChE)阻害剤の研究にも焦点があてられていた。長年にわたり見過ごされてきたが、ブチリルコリンエステラーゼ(BuChE)もアセチルコリン(ACh)を加水分解でき、ADの病態生理学および症候学において重要な役割を果たしているのかもしれない(Greig NH,Lahiri DK,Sambamurti K,Int.Psychogeriatr.,2002,14:77-91,”Butyrylcholinesterase:an important new target in Alzheimer’s Desease therapy”)。
【0006】
BuChEが、拡散良性型から病理学的疾患と関連した緻密な神経毒性型へ成熟した時点で、BuChEが斑と関連するようになるという報告は、BuChEがこのプロセスで活発な役割を果たしているのかもしれないという考えに行き着く(Saez-Valero Jら,J.Neurosci.Res.,2003,72(4):520-6,”Glycosylation of acetylcholinesterase and butyrylcholinesterase changes as a function of the duration of Alzheimer’s Desease”)。
【0007】
脳内におけるBuChEの含有量は年齢と共に増加し、その一方、AChEの場合は反対の傾向を示す。したがって、BuChEの触媒活性は、老化脳のACh加水分解においてより重要な役割を果たし、BuChEの阻害が老人のコリン作動性神経伝達物質に大きな影響与えうることを示唆している。ADのアミロイド斑および神経原線維もつれ中にBuChEが存在することは、今や多くの研究者により確認されている。この酵素はグリア産物であり、斑およびもつれ中にこの酵素が存在することは、AD関連の炎症プロセス全体に起因している、と仮定することが合理的なようである。この酵素の(触媒または非触媒)活性を妨げることは、ADにおける神経病理学的プロセスの過程に影響を与えうる有望な治療戦略となる(Greig NH,Utsuki T,Yu Q,Zhu X,Holloway HW,Perry T,Lee B,Ingram DK,Lahiri DK.,Curr.Med.Res.Opin.,2001,17(3):159-65,”A new therapeutic target in Alzheimer’s Desease treatment:attention to butyrylcholinesterase”;Giacobini E.,Drugs Aging.,2001,18(12):891-8,”Selective inhibitors of butyrylcholinesterase:a valid alternative for therapy of Alzheimer’s Desease?”)。
【0008】
ピペリジン誘導体は、製薬業界で関心の寄せられる化合物であり、このクラスに属する多くのファミリーは、AChEまたはヒドロキシトリプタミン(HT)レセプター阻害等の、CNSに関連した種々の生物活性を与えている。
【0009】
欧州特許EP229391号公報には、選択的抗AChE活性を有するピペリジン誘導体が開示されている。それらは芳香族部分を有し、芳香族部分として、特にインドールが開示されている。欧州特許EP1300395号公報には、AChE阻害作用を有する4‐置換ピペリジン化合物が記載されている。
【0010】
中国特許CN1345724号公報には、アルツハイマー病治療用のインドリルピペリジン類が開示されているが、開示されている化合物はAChE阻害活性を有するものの、BuChEに選択性を有しない(中国特許CN1345724号公報、表1を参照)。
【0011】
BuChE遮断薬として治療に応用できるにもかかわらず、エトプロパジン(塩酸10‐(2‐ジエチルアミノプロピル)フェノチアジン)、ダンシルアルギニン N‐(3‐エチル‐1,5‐ペンタンジイル)アミド(DAPA)、フェネチルノルシムセリン、および国際公開WO9902154号または欧州特許EP1251131号に開示された化合物のような、選択的BuChE阻害活性を有する化合物は、これまで非常にわずかしか報告されていない。BuChEに対して薬理活性を有し、高い有効性と選択性とを有し、BuChEとAChEとを識別しうる化合物を発見する必要性があることは明かである。
【発明の概要】
【0012】
本発明者らは、今般、非常に選択性の高いBuChE阻害剤である化合物の、構造的に区別されるクラスのファミリーを見出し、それら化合物の一部は、ナノモル範囲以下においても活性を示すことを見出した。さらに、本発明の化合物は低毒性を有する。
【0013】
本発明の化合物の構造的に重要な特徴は、ヘテロ環式部分と、Nにアラルキル置換基を有するピペリジン部分と、これら二つの部分の間にリンカーが存在することであり、このリンカーはアミドのような官能基を含有するものである。本発明者らは、選択性および活性が、リンカーの性質および長さと、上記した部分の性質および置換基とによって調整されうることを見出した。ヘテロ環が、カルボニルまたはヘテロ原子を介してリンカーに結合されていないことが、選択性にとって重要である。
【0014】
一実施態様において、本発明は、下記式Iの化合物、またはその製薬上許容される塩、そのプロドラッグ、若しくはその溶媒和物:
【化1】

(式中、
A、Bは、独立して、CまたはNから選択されるものであり、
Dは、C、O、S、Nから選択されるものであるが、
但し、A、B、およびDのうち少なくとも1つは、ヘテロ原子であり、
Xは、‐CR‐、‐O‐、‐S‐、‐NR‐から選択されるものであり、
Yは、O、S、NRから選択されるものであり、
およびZは、独立して、水素、置換若しくは非置換アルキル、置換若しくは非置換シクロアルキル、置換若しくは非置換アルケニル、置換若しくは非置換アリール、置換若しくは非置換複素環、‐COR、‐C(O)OR、‐C(O)NR、‐C=NR、‐CN、‐OR、‐OC(O)R、‐S(O)‐R、‐NR、‐NRC(O)R、‐NO、‐N=CR、またはハロゲンから選択されるものであり、
およびZは、AおよびBと一緒になって、若しくはBおよびDと一緒になって、またはそれらとRまたはRと一緒になって、縮合環系を形成でき、
〜R16は、独立して、水素、置換若しくは非置換アルキル、置換若しくは非置換シクロアルキル、置換若しくは非置換アルケニル、置換若しくは非置換アリール、置換若しくは非置換複素環、‐COR、‐C(O)OR、‐C(O)NR、‐C=NR、‐CN、‐OR、‐OC(O)R、‐S(O)‐R、‐NR、‐NRC(O)R、‐NO、‐N=CR、またはハロゲンから選択されるものであり(ここで、RおよびRは、それぞれ独立して、水素、置換若しくは非置換アルキル、置換若しくは非置換シクロアルキル、置換若しくは非置換アルケニル、置換若しくは非置換アリール、置換若しくは非置換複素環、置換若しくは非置換アルコキシ、置換若しくは非置換アリールオキシ、またはハロゲンから選択されるものである。)、
nは、1〜6であり、
mは、0または1であり、
kは、1〜8であり、
ただし、この化合物は、(aR)1H‐インドール‐3‐プロパンアミド,N‐〔〔1‐〔(4‐クロロフェニル)メチル〕‐4‐ピペリジニル〕メチル〕‐a‐〔(3‐エトキシベンゾイル)アミノ〕ではない。)に関する。
【0015】
上記の化合物(aR)1H‐インドール‐3‐プロパンアミド,N‐〔〔1‐〔(4‐クロロフェニル)メチル〕‐4‐ピペリジニル〕メチル〕‐a‐〔(3‐エトキシベンゾイル)アミノ〕は、国際公開WO9925686号に開示されている。
【0016】
他の態様において、本発明は、式(I)の化合物、またはその製薬上許容される塩、そのプロドラッグ、若しくはその溶媒和物と、製薬上許容されるキャリア、アジュバント、またはビヒクルとを含んでなる医薬組成物に関する。好ましい態様において、処方剤は経口である。
【0017】
本発明は、上記化合物の、薬剤の製造における使用にも関し、薬剤として、好ましくは、老人性痴呆、脳血管性痴呆、軽度認知欠陥、注意不足障害のような認知障害、および/または、特にアルツハイマー疾患若しくは症状、またはCreutzfeld-Jakob病若しくはGerstmann-Straussler-Scheinker病等のプリオン病のような、異常タンパク質の凝集を伴う神経変性痴呆症の治療用の薬剤である。
【0018】
他の態様において、本発明は、上記化合物の、生物学的アッセイ用の反応剤としての使用に関する。
【0019】
他の態様において、本発明は、ヘテロ環部分を含有する試薬を、4‐置換ピペリジン部分を含有するアミンを用いてアミド化することにより、上記式Iの化合物を製造する方法に関する。
【発明の詳細な説明】
【0020】
本発明の特有の化合物は、実施例で示されているように、AChEの阻害において数桁異なる明らかな差異をもって、ブチリルコリンエステラーゼを選択的に阻害する。
【0021】
上記した式(I)の化合物の定義においける下記の用語の意味は、以下の通りである。
【0022】
“アルキル”とは、炭素および水素原子からなる、直鎖または分岐の炭化水素鎖であって、不飽和であってもよい、1〜8の炭素原子を有し、かつ、単結合によって他の分子に結合されているものを意味し、例えば、メチル、エチル、n‐プロピル、i‐プロピル、n‐ブチル、t‐ブチル、n‐ペンチル等である。アルキル基は、所望により、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、シアノ、カルボニル、アシル、アルコキシカルボニル、アミノ、ニトロ、メルカプトおよびアルキルチオ等の1以上の置換基によって置換されていてもよい。
【0023】
“アミノ”とは、式‐NH、‐NHR、‐NR(ここで、RおよびRは、上記した定義と同義である。)の基を意味する。
【0024】
“アリール”とは、フェニル、ナフチル、フェナントリル、またはアントラシル基を意味する。アリール基は、所望により、1以上の置換基、例えば本明細書に規定した、ヒドロキシ、メルカプト、ハロ、アルキル、フェニル、アルコキシ、ハロアルキル、ニトロ、シアノ、ジアルキルアミノ、アミノアルキル、アシル、およびアルコキシカルボニル等によって置換されていてもよい。
【0025】
“アラルキル”とは、アルキル基に結合したアリール基を意味する。好ましい例として、ベンジルおよびフェネチルが挙げられる。
【0026】
“アシル”とは、アセチル、プロピオニル、ベンゾイルのような、式‐C(O)R‐および‐C(O)R‐(ここで、Rは上記した定義と同義のアルキル基であり、Rは上記した定義と同義のアリール基である。)の基を意味する。
【0027】
“シクロアルキル”とは、飽和または一部飽和の、もっぱら炭素と水素原子とからなる、安定な3〜10員の単環式または二環式基を意味する。明細書中において特にことわらない限り、“シクロアルキル”の用語は、所望により、アルキル、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、シアノ、ニトロ、アルコキシ、カルボキシ、およびアルコキシカルボニル等の1以上の置換基により置換されたシクロアルキル基を含む意味である。
【0028】
“縮合アリール”とは、他の環と縮合したアリール基、とりわけ、フェニルまたはヘテロアリール基を意味する。
【0029】
“アルコキシ”とは、式‐ORa(式中、Raは前記したアルキル基である。)の基を意味し、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ等である。
【0030】
“ハロ”とは、ブロモ、クロロ、ヨード、またはフルオロを意味する。
【0031】
“複素環”とは、ヘテロ環式基、即ち、炭素原子と、窒素、酸素、およびイオウからなる群より選択される1〜5のヘテロ原子とからなる安定な3〜15員環、好ましくは1以上のヘテロ原子を有する4〜8員環、より好ましくは1以上のヘテロ原子を有する5または6員環を意味する。本発明の目的においては、複素環は、縮合環系を含んでいてもよい、単環式、二環式または三環式の環系であり、複素環基の窒素、炭素、またはイオウ原子は、所望により、酸化されていてもよく、窒素原子は、所望により、四級化されていてもよく、さらに、複素環基は、一部または完全が飽和もしくは芳香族であってよい。このような複素環の例としては、アゼピン類、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾール、フラン、イソチアゾール、イミダゾール、インドール、ピペリジン、ピペラジン、プリン、キノリン、チアジアゾール、テトラヒドロフランが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0032】
本明細書において、本発明の化合物の置換基に言及しているときは、1以上の適切な基、例えば、フルオロ、クロロ、ブロモ、およびヨード等のハロゲン、シアノ、ヒドロキシル、ニトロ、アジド、アシル等のC1‐6アルカノイル基等のアルカノイル、カルボキサミド、1〜約12の炭素原子または1〜約6の炭素原子、より好ましくは1〜3の炭素原子を有する基を含むアルキル基、1以上の不飽和結合を有し2〜約12の炭素または2〜約6の炭素原子を有する基を含むアルケニルおよびアルキニル基、1以上の酸素結合を有し1〜約12の炭素原子または1〜約6の炭素原子を有するアルコキシ基、フェノキシ等のアリールオキシ、1以上のチオエーテル結合を有し1〜約12の炭素原子または1〜約6の炭素原子を有する部分を含むアルキルチオ基、1以上のスルフィニル結合を有し1〜約12の炭素原子または1〜約6の炭素原子を有する部分を含むアルキルスルフィニル基、1以上のスルホニル結合を有し1〜約12の炭素原子または1〜約6の炭素原子を有する部分を含むアルキルスルホニル基、1以上のN原子と1〜約12の炭素原子または1〜約6の炭素原子を有するアミノアルキル基、6以上の炭素を有する炭素環式アリール、とりわけフェニルまたはナフチル、ならびに、ベンジル等のアラルキルにより、1以上の利用可能な部位が置換されていてもよい特定の部分を意味する。特にことわりのない限り、所望により置換された基は、その基の置換可能な各部位で置換基を有してもよく、各置換は他と独立している。
【0033】
式Iの化合物において、リンカーは、下記式IIの化合物のように、各部分の間にアルキレン単位を含有しているのが好ましい。
【化2】

(式中、A、B、D、Z、Z、X、Y、n、m、k、およびR〜R16は、上記した定義と同義である。)
【0034】
他の態様において、式Iの化合物のリンカーは、アミド官能基を含有しているのが好ましい。
【0035】
別の態様において、ヘテロ環式部分は、下記式IIIで表わされる化合物のように、インドールにようなヘテロ環である。
【化3】

(式中、A、B、Z、Z、X、n、m、k、およびR〜R16は、上記した定義と同義である。)
ヘテロ環のNは、例えば、アルキル、アラルキル等で、さらに置換されていてもよい。
【0036】
他の態様において、ピペリジンは、ベンジル基で置換されたNである。この場合、本発明の化合物は、好ましくは下記式IVで表わされる。
【化4】

(式中、Z、Z、X、n、m、k、およびR〜Rは、上記の定義と同義である。)
この場合、インドールヘテロ環は、好ましくは3位でリンカーに結合している。とりわけ良好な選択性および活性を示す好ましい態様においては、mは0であり、nは2である。
【0037】
別の態様において、Xは、好ましくは‐CH‐または‐O‐である。
【0038】
他の態様において、kは好ましくは2である。
【0039】
実施例において示された、本発明の一部の化合物のうち、化合物5が、その良い活性および選択性のために好ましい。
【0040】
特にことわりのない限り、本発明の化合物は、1以上の同位体濃縮原子が存在することにおいてのみ異なる化合物も含まれることを意味する。例えば、重水素または三重水素による水素の置換、または、13C‐もしくは14C‐濃縮炭素、または15N‐濃縮窒素による炭素の置換を除く本構造を有する化合物も、本発明の範囲内に属する。
【0041】
“製薬上許容される塩、誘導体、溶媒和物、プロドラッグ”との用語は、レシピエントへの投与時に、本明細書に記載されているような化合物を(直接的または間接的に)提供し得る、いずれかの製薬上許容される塩、エステル、溶媒和物、または他の化合物を意味する。しかしながら、薬学上許容されない塩も、それらが製薬上許容される塩の製造に有用であれば、本発明の範囲内に属することは明らかであろう。塩、プロドラッグ、および誘導体は、周知の方法により製造することができる。
【0042】
例えば、本明細書中に挙げられた化合物の製薬上許容される塩は、塩基性部分または酸性部分を含有した親化合物から化学的常法により合成される。通常、このような塩は、例えば、水、有機溶媒、または二種の混合液中において、遊離酸または塩基の形態にある化合物を、化学量論量の適切な塩基または酸と反応させることにより調製できる。通常、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、またはアセトニトリルのような非水性媒体が好ましい。酸付加塩の例としては、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の鉱酸付加塩や、例えば、酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩、およびp‐トルエンスルホン酸塩等の有機酸付加塩があげられる。アルカリ付加塩の例としては、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム、マグネシウム、アルミニウム、およびリチウム塩等の無機塩や、例えば、エチレンジアミン、エタノールアミン、N,N‐ジアルキレンエタノールアミン、トリエタノールアミン、グルカミン、および塩基性アミノ酸塩等の有機アルカリ塩が挙げられる。
【0043】
特に好ましい誘導体またはプロドラッグは、本発明の化合物を患者に投与した場合に、化合物の生物学的利用能を向上させる(例えば、経口投与化合物をより容易に血中へ吸収させることにより)か、または親種と比較して生物学的区画(例えば、脳またはリンパ系)への親化合物の送達を高めるものである。
【0044】
式(I)の化合物のプロドラッグであるいかなる化合物も、本発明の範囲内に属する。“プロドラッグ”の用語は、最広義に用いられ、本発明の化合物へインビボで変換される誘導体を包含する。このような誘導体は、当業者であれば容易に想起でき、分子中に存在する官能基に応じて、エステル、アミノ酸エステル、リン酸エステル、金属塩、スルホン酸エステル、カルバメート、およびアミド等の誘導体を含むが、それらに限定されるものではない。
【0045】
本発明の化合物は、遊離化合物または溶媒和物として結晶の形態で存在してもよく、いずれの形態も本発明の範囲内に属することを意図している。溶媒和の方法は当業界で一般的に知られている。適切な溶媒和物は、製薬上許容される溶媒和物である。具体的な態様において、溶媒和物は水和物である。
【0046】
式(I)の化合物、またはそれらの塩、若しくは溶媒和物は、製薬上許容される形態または実質的に純粋な形態にあるのが好ましい。製薬上許容される形態とは、希釈物やキャリアのような標準製薬添加物を除いて、とりわけ、製薬上許容されるレベルの純度を有し、かつ標準投薬レベルで毒性があると考えられる物質を含有していないことを意味する。薬物質の純度レベルは、好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上、最も好ましくは90%以上である。好ましい態様においては、95%以上の式(I)の化合物、またはその塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグであることが好ましい。
【0047】
上記式(I)で表わされる本発明の化合物には、キラル中心の存在によるエナンチオマー、または多重結合(例えば、Z、E)の存在による異性体も含まれる。単一異性体、エナンチオマーまたはジアステレオマー、およびそれらの混合物も、本発明の範囲内に属する。
【0048】
上記式(I)の化合物は、下記のように、ヘテロ環部分を含有するフラグメントおよびピペリジン部分を含有するフラグメントと、それらを結合させて両フラグメント間で所望のリンカーを形成するものとから、利用可能な合成操作により得られる。
【化5】

(式中、置換基は上記した定義と同義であり、Wは脱離基である。)
【0049】
上記化合物は、例えば、Padwa.A.ら,Synthesis,9,1994,993-1004に記載されているように、アミノピペリジン化合物でインドールカルボン酸誘導体をアミド化することにより製造される。カルバメート類の合成に関する一般的方法は、例えばBruce,A.,Spangle,L.A.,Kaldor,S.W.,Tetrahedron Letters,1996,7,937-940に記載されている。
【0050】
反応産物は、所望により、結晶化またはクロマトグラフィー等の常法により精製される。上記した製法により本発明の化合物を製造して、立体異性体の混合物が得られた場合、これらの異性体は、プレパラティブクロマトグラフィー等の慣用技術により分離してもよい。キラル中心が存在する場合、化合物をラセミ形で製造してもよく、また、エナンチオ特異的合成若しくは分離のいずれかによって、個別のエナンチオマーを製造してもよい。
【0051】
製薬上許容される好ましい一形態は、結晶形態であり、医薬組成物中にはこのような形態が含まれる。塩および溶媒和物の場合、付加イオンおよび溶媒部分も無毒性でなければならない。本発明の化合物は、異なる多形態で存在してもよく、本発明には、すべてのこのような形態を包含することを意図している。
【0052】
本発明の上記式(I)で表わされる化合物、その塩、溶媒和物、またはそれらのプロドラッグは、優れたブチリルコリンエステラーゼ阻害作用を示す。したがって、本発明の他の態様においては、BuChE関連疾患または症状を、治療、改善、または予防する方法に関し、本発明の方法は、このような治療の必要な患者に治療有効量の式(I)の化合物またはその医薬組成物を投与することからなる。治療しうる疾患の中には、老人性痴呆、脳血管性痴呆、軽度認知欠陥、注意不足障害のような認知障害、および/または、特にアルツハイマー疾患若しくは症状、またはCreutzfeld-Jakob病若しくはGerstmann-Straussler-Scheinker病等のプリオン病のような、異常タンパク質の凝集を伴う神経変性痴呆症がある。
【0053】
本発明は、患者への投与用に、本発明の化合物、またはその製薬上許容される塩、誘導体、プロドラッグ、若しくはその立体異性体を、製薬上許容されるキャリア、アジュバントまたはビヒクルと一緒に含んでなる医薬組成物を、さらに提供する。
【0054】
医薬組成物の例としては、経口、局所、または非経口投与用の固体(錠剤、丸薬、カプセル、顆粒など)若しくは液体(溶液、懸濁液または乳濁液)組成物が挙げられる。
【0055】
好ましい態様において、医薬組成物は固体または液体の経口形である。経口投与に適した剤形には、錠剤、カプセル、シロップ、または溶液があり、それらは、シロップ、アラビアゴム、ゼラチン、ソルビトール、トラガカントまたはポリビニルピロリドン等の結合剤、ラクトース、糖、メイズデンプン、リン酸カルシウム、ソルビトールまたはグリシン等のフィラー、ステアリン酸マグネシウム等の打錠用滑沢剤、デンプン、ポリビニルピロリドン、デンプングリコール酸ナトリウムまたは微結晶セルロース等の崩壊剤、またはラウリル硫酸ナトリウム等の製薬上許容される湿潤剤のような、当業界で知られる常用賦形剤を含有してもよい。
【0056】
固体の経口組成物は、混和、充填、または打錠の常法により製造される。組成物全体に活性剤を分配するために、多量のフィラーを用いる反復混和操作も用いてよい。このような操作は当業界において慣用されている。錠剤は、例えば湿式または乾式造粒により製造し、所望により、標準調剤行為において周知の方法に従って、特に腸溶性コーティングで被覆してもよい。
【0057】
医薬組成物は、適切な単位投薬量にある、無菌溶液、懸濁液、または凍結乾燥した製品のような非経口投与向けでもよい。増量剤、緩衝剤、または界面活性剤のような適切な賦形剤を用いることもできる。
【0058】
上記の処方剤は、スペインおよび米国薬局方、ならびに類似の参考文献に記載または言及されているような標準法を用いて、調製される。
【0059】
本発明の化合物または組成物の投与は、静脈内注入、経口調合、ならびに腹腔内および静脈内投与のように、いかなる適切な方法によるものであってもよい。患者の便宜および治療される疾患の長期的特徴のためには、経口投与が好ましい。
【0060】
通常、本発明の化合物の有効投与量は、選択される化合物の相対的効力、治療される障害の程度、および罹患者の体重に依存する。しかしながら、活性化合物は、0.1〜1000mg/kg/日の範囲にある一般的な総1日量で、一般的には、1日1回または数回、例えば毎日1、2、3、または4回、投与される。
【0061】
本発明の化合物および組成物は、組合せ療法を行なうために、他の薬剤と併用してもよい。他の薬剤は、同一組成物の一部として形成されていてもよく、また、同時間または異時間に、別個の投与用組成物として投与されてもよい。
【実施例】
【0062】
下記の例は、本発明を例示するためのものであり、特許請求の範囲に記載された発明の開示を制限するものとして解釈されるべきではない。
【0063】
例1:化合物の調製
化合物1〜6を、スキーム1に記載のようにして調製した。
【化6】

インドール−カルボン酸誘導体のTHF溶液に、1,1′‐カルボニルジイミダゾールをN下で加え、混合液を室温で4時間攪拌し、次いでアミンを加え、得られた溶液を20時間攪拌し、次いで、溶媒を減圧下で蒸発させ、個々のケースで示された各割合の溶媒混合液を溶離液として用いて、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。
【0064】
(1)N‐〔2‐(1‐ベンジルピペリジン‐4‐イル)エチル〕‐2‐(1H‐インドール‐3‐イル)アセトアミド
試薬:インドール‐3‐酢酸(152.4mg,0.87mmol)、THF3ml、1,1′‐カルボニルジイミダゾール(149.2mg,0.92mmol)および2‐(1‐ベンジルピペリジン‐4‐イル)エチルアミン(200mg,0.92mmol).
条件:室温、一夜.精製:AcOEt/MeOH(2:1)を用いるシリカゲルカラムクロマトグラフィー.収量:110mg(35%).H‐NMR(CDCl,400MHz,δppm):(8.53,br,1H),(7.50,d,1H,J=7.6Hz),(7.35,d,1H,J=7.6Hz),(7.26‐7.17,m,6H),(7.11‐7.08,m,2H),(5.65,m,1H,NHCO),(3.70,s,2H),(3.43,s,2H),(3.16,c,2H,J=6.8Hz),(2.77‐2.74,m,2H),(1.81‐1.75,m,2H),(1.48‐1.45,m,2H),(1.25‐1.20,m,2H),(1.31‐1.06,m,3H).
13C‐NMR(CDCl):171.4,138.0,136.4,129.3,128.1,127.0,126.39,123.7,122.6,120.0,118.7,111.4,109.0,63.3,53.5,37.2,36.0,33.4,33.2,32.0.
ESI‐MS〔M+H375.23
【0065】
(2)N‐〔2‐(1‐ベンジルピペリジン‐4‐イル)エチル〕‐2‐(1‐メチル‐1H‐インドール‐3‐イル)アセトアミド
試薬:1‐メチルインドール‐3‐カルボン酸(165mg,0.87mmol)、THF3ml、1,1′‐カルボニルジイミダゾール(149.2mg,0.92mmol)および2‐(1‐ベンジルピペリジン‐4‐イル)エチルアミン(200mg,0.92mmol).
条件:室温、一夜.精製:AcOEt/MeOH(3:1)を用いるシリカゲルカラムクロマトグラフィー.収量:40mg(12%).H‐NMR(CDCl,400MHz,δppm):(7.42,d,1H,J=7.6Hz),(7.25‐7.13,m,7H),(7.11‐7.08,m,1H),(6.70,s,1H),(5.48,m,1H,NHCO),(3.70,s,3H),(3.60,s,2H),(3.37,s,2H),(3.16,m,2H),(2.75‐2.68,m,2H),(1.70‐1.80,m,2H),(1.40‐1.48,m,2H),(1.43‐1.10,m,2H),(1.10‐1.01,m,3H).
13C‐NMR(CDCl):171.4,137.0,129.3,129.2,128.3,128.1,127.35,126.9,122.1,119.5,118.8,109.4,107.4,63.3,53.5,37.1,36.0,33.2,32.3,32.0.
ESI‐MS〔M+H389.25
【0066】
(3)N‐〔2‐(1‐ベンジルピペリジン‐4‐イル)エチル〕‐2‐(2‐メチル‐1H‐インドール‐3‐イル)アセトアミド
試薬:2‐メチルインドール‐3‐カルボン酸(165mg,0.87mmol)、THF3ml、1,1′‐カルボニルジイミダゾール(149.2mg,0.92mmol)および2‐(1‐ベンジルピペリジン‐4‐イル)エチルアミン(200mg,0.92mmol).
条件:室温、一夜.精製:AcOEt/MeOH(5:.02)を用いるシリカゲルカラムクロマトグラフィー.収量:153mg(46%).H‐NMR(CDCl,400MHz,δppm):(8.53,br,1H),(7.42,d,1H,J=7.6Hz),(7.25‐7.20,m,5H),(7.18‐7.01,m,3H),(5.62,m,1H,NHCO),(3.62,s,2H),(3.42,s,2H),(3.20‐3.10,m,2H),(2.80‐2.72,m,2H),(2.32,s,3H),(1.82‐1.75,m,2H),(1.5‐1.44,m,2H),(1.15‐1.10,m,2H),(1.20‐1.05,m,3H).
13C‐NMR(CDCl):171.5,137.2,129.2,128.0,126.9,122.4,119.7,117.6,110.5,104.3,63.3,53.5,37.0,35.8,33.2,32.1,31.9,11.4.
ESI‐MS〔M+H389.25
【0067】
(4)N‐〔2‐(1‐ベンジルピペリジン‐4‐イル)エチル〕‐2‐(5‐ブロモ‐1H‐インドール‐3‐イル)アセトアミド
試薬:5‐ブロモインドール‐3‐酢酸(221mg,0.87mmol)、THF3ml、1,1′‐カルボニルジイミダゾール(149.2mg,0.92mmol)および2‐(1‐ベンジルピペリジン‐4‐イル)エチルアミン(200mg,0.92mmol).
条件:室温、一夜.精製:AcOEt/MeOH(5:0.1)を用いるシリカゲルカラムクロマトグラフィー.収量:60mg(15%).H‐NMR(CDCl,400MHz,δppm):(9.3,bs,1H),(7.65,s,1H),(7.29‐7.20,m,7H),(7.10,s,1H),(5.71,m,1H,NHCO),(3.65,s,2H),(3.46,s,2H),(3.25‐3.17,m,2H),(2.85‐2.76,m,2H),(1.88‐1.80,m,2H),(1.56‐1.48,m,2H),(1.32‐1.48,m,2H),(1.10‐1.01,m,3H).
13C‐NMR(CDCl):170.6,137.8,134.7,129.0,128.4,127.8,126.6,125.1,124.6,121.0,112.9,112.6,108.3,63.1,53.2,37.0,35.6,33.0,32.9,32.6.
ESI‐MS〔M+H453.14
【0068】
(5)N‐〔2‐(1‐ベンジルピペリジン‐4‐イル)エチル〕‐3‐(1H‐インドール‐3‐イル)プロピオンアミド
試薬:3‐インドールプロピオン酸(156mg,0.82mmol)、THF3ml、1,1′‐カルボニルジイミダゾール(141mg,0.87mmol)および2‐(1‐ベンジルピペリジン‐4‐イル)エチルアミン(188mg,0.87mmol).
条件:室温、一夜.精製:AcOEt/MeOH(1:0.1)を用いるシリカゲルカラムクロマトグラフィー.収量:134.4mg(42%).H‐NMR(CDCl,400MHz,δppm):(8.85,s,1H),(7.52,d,1H,J=8Hz),(7.25‐7.20,m,6H),(7.13‐7.10,m,1H),(7.06‐7.02,s,1H),(6.84,s,1H),(5.67,m,1H,NHCO),(3.45,s,2H),(3.14‐3.04,m,4H),(2.81‐2.78,m,2H),(2.51‐2.47,m,2H),(1.87‐1.81,m,2H),(1.50‐1.47,m,2H),(1.25‐1.09,m,5H).
13C‐NMR(CDCl):172.3,137.9,136.4,129.4,128.2,127.0,121.9,121.8,119.0,118.6,114.5,111.4,63.4,53.6,37.5,37.3,36.2,33.4,32.0,21.7.
ESI‐MS〔M+H389.25
【0069】
(6)N‐〔2‐(1‐ベンジルピペリジン‐4‐イル)エチル〕‐4‐(1H‐インドール‐3‐イル)ブチルアミド
試薬:3‐インドール酪酸(175.1mg,0.86mmol)、THF3ml、1,1′‐カルボニルジイミダゾール(146.0mg,0.90mmol)および2‐(1‐ベンジルピペリジン‐4‐イル)エチルアミン(200mg,0.92mmol).
条件:室温、一夜.精製:AcOEt/MeOH(1:1)を用いるシリカゲルカラムクロマトグラフィー.収量:95mg(30%).H‐NMR(CDCl,400MHz,δppm):(8.65,s,1H),(7.53,d,1H,J=7.6Hz),(7.28‐7.21,m,6H),(7.14‐7.10,m,1H),(7.06‐7.10,m,1H),(6.70,m,1H),(5.58,m,1H,NHCO),(3.44,s,3H),(3.18‐3.13,m,2H),(2.84‐2.81,s,2H),(2.76‐2.72,m,2H),(2.16‐2.13,m,2H),(2.01‐1.97,m,2H),(1.90‐1.85,m,2H),(1.59‐1.56,m,2H),(1.34‐1.18,m,4H).
13C‐NMR(CDCl):173.1,137.8,136.3,129.2,129.1,128.0,127.33,126.9,121.6,118.8,118.6,115.1,111.2,63.2,53.5,37.1,36.1,33.2,32.0,26.0,24.4.
ESI‐MS〔M+H403.26
【0070】
化合物(7)は、スキーム2に記載のようにして調製する。
【化7】

【0071】
(7)〔2‐(1‐ベンジルピペリジン‐4‐イル)エチル〕カルバミン酸2‐(1H‐インドール‐3‐イル)エチルエステル
2‐(1H‐インドール‐3‐イル)エタノール(500mg,3.10mmol)のN‐メチルモルホリン(627mg,62mmol)溶液に、p‐ニトロフェニルクロロホルメート(1250nmg,6.2mmol)を加え、混合液を室温で24時間攪拌した後、残渣を水洗し、ジクロロメタンで抽出して、次いで、DCM/Hx(3:1)の混合液を溶離液として用いて、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。2‐(1‐ベンジルピペリジン‐4‐イル)エチルアミン(700mg,3.21mmol)をDMFに溶解し、次いでDMAP(40mg,3.21mmol)の存在下で活性化カーボネート(522mg,1.60mmol)とカップリングさせ、混合液を室温で24時間攪拌し、次いで溶媒を減圧下で蒸発させた。その後、残渣を水洗し、ジクロロメタンで抽出し、次いで、DCM/MeOH(4:0.5)の混合液を溶離液として用いて、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、化合物7を得た。
収量:286mg(44%).H‐NMR(CDCl,400MHz,δppm):(8.26,bs,1H),(7.59,m,1H),(7.31‐7.21,m,5H),(7.18‐7.10,m,1H),(7.09‐7.02,m,1H),(6.80,m,1H),(4.46,m,1H,NHCO),(3.48,s,2H),(3.12‐3.10,m,2H),(3.08‐3.0,m,2H),(2.90‐2.84,m,4H),(1.99‐1.80,m,2H),(1.52‐1.5,m,2H),(1.49‐1.20,m,5H).13C‐NMR(CDCl):157.0,136.5,129.6,128.4,127.2,122.3,122.2,119.5,119.0,112.4,111.4,65.1,63.5,53.8,38.9,36.8,33.4,32.2,25.5.
ESI‐MS〔M+H405.24
【0072】
例2:生物学的アッセイ
ブチリルコリンエステラーゼ(BuChE)阻害(ヒト血清から)
BuChE阻害活性をEllman〔Ellman,G.L.,Courtney,K.D.,Andres,B.,Featherstone,R.M.,Biochem.Pharmacol.,1961,7,88-95〕により報告された比色法により30℃で評価した。アッセイ溶液は、0.1単位/mlヒト血清BuChE、0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液pH8、0.3mM5,5′‐ジチオビス(2‐ニトロ安息香酸)(DTNB,エルマン試薬)、および酵素反応の基質として0.5mMブチリルチオコリンヨージドからなるものであった。酵素活性は、マイクロプレートリーダーDigiscan 340Tにより、405nmで5分間にわたり吸光度を測定することにより調べた。試験化合物を30℃で10分間酵素とプレインキュベートした。反応速度を少なくとも3回の測定で計算した。IC50は、阻害剤なしと比較して酵素活性を50%減少させる各化合物の濃度として規定される。結果は表1に示されている通りである。
【0073】
アセチルコリンエステラーゼ(AChE)阻害(ウシ赤血球から)
AChE阻害活性をEllman〔Ellman,G.L.,Courtney,K.D.,Andres,B.,Featherstone,R.M.,Biochem.Pharmacol.,1961,7,88-95〕により報告された比色法により30℃で評価した。アッセイ溶液は、0.1Mリン酸緩衝液pH8、0.3mM5,5′‐ジチオビス(2‐ニトロ安息香酸)(DTNB,エルマン試薬)、0.2単位/ml AChE(Sigma Chemical Co.,ウシ赤血球から)、および酵素反応の基質として0.5mMアセチルチオコリンヨージドからなるものであった。試験化合物をアッセイ溶液に加え、30℃で5分間酵素とプレインキュベートした。次いで基質を加えた。405nmの吸光度変化をマイクロプレートリーダーDigiscan 340Tで5分間記録し、反応速度を比較し、試験化合物の存在による阻害率を計算した。反応速度を少なくとも3回の測定で計算し、試験化合物が存在する阻害率を、化合物が存在しない標準試料と比較して計算した。50%のAChE阻害を生じる化合物濃度(IC50)を調べた。結果は表1に示される通りである。
【0074】
毒性測定
分子の細胞毒性効果を、ヒトニューロブラストーマ細胞系SH‐SY5Yにおいて試験した。これらの細胞を、10%ウシ胎児血清および1%ペニシリン/ストレプトマイシンで補充されたHam‘s F12栄養素ならびに必須培地(MEM)の1:1混合液中の96ウェルプレートで培養し、5%CO加湿インキュベーター中37℃で増殖させた。
毒性測定の少なくとも48時間前に、各ウェル当たり10細胞で細胞を播種した。細胞を、異なる濃度(10−5〜10−9)の化合物に24時間さらし、細胞死の定量評価を細胞内酵素乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)の測定により行なった(細胞毒性検出キット,Roche)。LDHの量を測定し、マイクロプレートリーダーAnthos 2010により、492および620nmで評価した。対照試料は100%生存率とみなした。結果は表1に示される通りである。
【0075】
プロピジウム競合
プロピジウムは、AChE末端部位と結合すると蛍光が増加するため、酵素と結合する競合リガンド用の有効なプローブとなる。
蛍光をFluostar optimaプレートリーダー(BMG)で測定した。測定は、100μL溶液容量中の96ウェルプレートで行なった。用いた緩衝液は1mMトリス/HCl,pH8.0であった。5μM AChEを異なる濃度で分子と一緒に、少なくとも6時間インキュベートした。蛍光測定の10分前に、20μMのヨウ化プロピジウムを加えた。励起波長は485nmであり、発光波長は620nmであった。結果は表1に示され通りである。
【0076】
【表1】

【0077】
非常に高いBuChE阻害活性が得られたことは、結果から明らかである。AChEに対する選択性は、少なくとも2桁異なる大きさであり、化合物5の場合、選択制は5桁異なる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式Iの化合物、またはその製薬上許容される塩、そのプロドラッグ、若しくはその溶媒和物:
【化1】

(式中、
A、Bは、独立して、CまたはNから選択されるものであり、
Dは、C、O、S、Nから選択されるものであるが、
但し、A、B、およびDのうち少なくとも1つは、ヘテロ原子であり、
Xは、‐CR‐、‐O‐、‐S‐、‐NR‐から選択されるものであり、
Yは、O、S、NRから選択されるものであり、
およびZは、独立して、水素、置換若しくは非置換アルキル、置換若しくは非置換シクロアルキル、置換若しくは非置換アルケニル、置換若しくは非置換アリール、置換若しくは非置換複素環、‐COR、‐C(O)OR、‐C(O)NR、‐C=NR、‐CN、‐OR、‐OC(O)R、‐S(O)‐R、‐NR、‐NRC(O)R、‐NO、‐N=CR、またはハロゲンから選択されるものであり、
およびZは、AおよびBと一緒になって、若しくはBおよびDと一緒になって、またはそれらとRまたはRと一緒になって、縮合環系を形成でき、
〜R16は、独立して、水素、置換若しくは非置換アルキル、置換若しくは非置換シクロアルキル、置換若しくは非置換アルケニル、置換若しくは非置換アリール、置換若しくは非置換複素環、‐COR、‐C(O)OR、‐C(O)NR、‐C=NR、‐CN、‐OR、‐OC(O)R、‐S(O)‐R、‐NR、‐NRC(O)R、‐NO、‐N=CR、またはハロゲンから選択されるものであり(ここで、RおよびRは、それぞれ独立して、水素、置換若しくは非置換アルキル、置換若しくは非置換シクロアルキル、置換若しくは非置換アルケニル、置換若しくは非置換アリール、置換若しくは非置換複素環、置換若しくは非置換アルコキシ、置換若しくは非置換アリールオキシ、またはハロゲンから選択されるものである。)、
nは、1〜6であり、
mは、0または1であり、
kは、1〜8であり、
ただし、この化合物は、(aR)1H‐インドール‐3‐プロパンアミド,N‐〔〔1‐〔(4‐クロロフェニル)メチル〕‐4‐ピペリジニル〕メチル〕‐a‐〔(3‐エトキシベンゾイル)アミノ〕ではない)。
【請求項2】
下記式IIを有する請求項1に記載の化合物、またはその製薬上許容される塩、そのプロドラッグ、若しくはその溶媒和物:
【化2】

(式中、A、B、D、Z、Z、X、Y、n、m、k、およびR〜R16は、請求項1における定義と同義である。)。
【請求項3】
下記式IIIを有する請求項1に記載の化合物、またはその製薬上許容される塩、そのプロドラッグ、若しくはその溶媒和物:
【化3】

(式中、A、B、Z、Z、X、n、m、k、およびR〜R16は、請求項1における定義と同義である。)。
【請求項4】
下記式IVを有する請求項1に記載の化合物、またはその製薬上許容される塩、そのプロドラッグ、若しくはその溶媒和物:
【化4】

(式中、Z、Z、X、n、m、k、およびR〜Rは、請求項1における定義と同義である。)。
【請求項5】
mが1であり、Xが‐CH‐または‐O‐である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物、またはその製薬上許容される塩、そのプロドラッグ、若しくはその溶媒和物。
【請求項6】
kが2である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物、またはその製薬上許容される塩、そのプロドラッグ、若しくはその溶媒和物。
【請求項7】
mが0であり、nが2である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物、またははその製薬上許容される塩、そのプロドラッグ、若しくはその溶媒和物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の式(I)の化合物、またはその製薬上許容される塩、そのプロドラッグ、若しくはその溶媒和物と、製薬上許容されるキャリア、アジュバントまたはビヒクルとを含んでなる、医薬組成物。
【請求項9】
経口投与用である、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
薬剤の製造における、請求項1〜7のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項11】
前記薬剤が、老人性痴呆、脳血管性痴呆、軽度認知欠陥、注意不足障害のような認知障害、および/または、特にアルツハイマー疾患若しくは症状、またはCreutzfeld-Jakob病若しくはGerstmann-Straussler-Scheinker病等のプリオン病のような、異常タンパク質の凝集を伴う神経変性痴呆症の治療用である、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
薬剤が、アルツハイマー疾患または症状の治療用である、請求項10に記載の使用。
【請求項13】
生物学的アッセイ用の反応剤としての、請求項1〜7のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項14】
下記の二種の化合物の反応を含んでなる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の化合物の製造方法:
【化5】

(式中、A、B、D、Z、Z、X、Y、n、m、k、およびR〜R16は、請求項1における定義と同義であり、Wは脱離基である。)。

【公表番号】特表2008−500985(P2008−500985A)
【公表日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−513831(P2007−513831)
【出願日】平成17年5月27日(2005.5.27)
【国際出願番号】PCT/EP2005/005816
【国際公開番号】WO2005/118570
【国際公開日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(505132389)ニューロファルマ・ソシエダード・アノニマ (12)
【Fターム(参考)】