説明

ブチルフタリド静脈内エマルジョン及びその適用

【課題】臨床応用に好適なブチルフタリドの新しい送達方式を提供すること。
【解決手段】上記課題は、エマルジョン総重量に基づいて0.01〜50質量%のブチルフタリド又はその誘導体を活性成分として、及び50〜99.99質量%の賦形剤を含んでなるブチルフタリド静脈内エマルジョンにより解決する。前記ブチルフタリド又はその誘導体は、ブチルフタリドのラセミ体若しくはその誘導体、又はl−ブチルフタリド若しくはその誘導体であることが好ましい。ブチルフタリド静脈内エマルジョンは、静脈注射又は点滴を介して投与されることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はブチルフタリド製剤、具体的に、ブチルフタリド静脈内エマルジョン及びその適用に関する。
【背景技術】
【0002】
ブチルフタリドとも呼ばれるdl−3−n−ブチルフタリド(NBP)は、dl−3−ブチルイソベンゾフラン(3H)−オンであり、それはラセミ体である。l−3−n−ブチルフタリドは、セロリの種から抽出される。NBPは、脳虚血処置の複数の段階、たとえば、局所性脳虚血後の梗塞領域を減らすこと、虚血領域の脳血流を増やし、脳虚血領域における微細循環を改善すること、ミトコンドリア機能を保護すること、神経機能への損傷を軽減すること、及び全体的な脳虚血後の脳のエネルギー代謝を改善することにおいて作用する。中国特許第98125618.X号、同第03137457.3号、同第200310100222.2号及び同第200410001748.X号はそれぞれ、血栓防止剤及び血小板凝集防止剤におけるブチルフタリドの適用、痴呆、脳梗塞の予防及び治療並びに脳虚血の治療用薬物の製造における1−n−ブチルフタリドの適用を開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
市場で現在利用可能なブチルフタリド製剤は、軟質カプセル剤のみである。ブチルフタリドは油性液体形態なので、油相に溶解し、又は直接処理してエマルジョンを形成することができ、その後、硬質カプセル若しくは軟質カプセルに包装することができ、又はそのまま経口投与することができる。しかしながら、ブチルフタリドは、相対的に明らかな初回通過効果を有し、それは相対的に低い生体利用効率をもたらす。さらに、脳虚血患者は普通、嚥下障害又は昏睡を併発しているので、カプセル剤はこれらの患者にとっての臨床的要件を満たすことができない。脳虚血患者にとって、時間は命である。従って、臨床応用に好適な新しい送達方式を開発することは死活的である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
ブチルフタリドは油性の液体で水に難溶なので、本発明では特定の製造技術を採用して静脈投与用のエマルジョンにブチルフタリドを加工する。本発明のブチルフタリド静脈内エマルジョンは以下の利点を有する:薬剤が全身の循環に直接入るので結果として迅速に作用し、ブチルフタリドの溶解性が改善されて結果として投与量が低下し、及び/又はブチルフタリドの脳組織へのターゲティングが改善されているので毒性の副作用を低減する。
【0005】
本発明のエマルジョンは、10〜2000nmの間の粒度を有し、迅速な作用及び脳へのターゲティング効果を達成するために静脈注射又は点滴を介して投与されてもよい。
【0006】
本発明のブチルフタリド静脈内エマルジョンは、エマルジョンの総重量に対して0.01〜50質量%、好ましくは0.01〜20質量%、さらに好ましくは0.01〜10質量%の量で有効成分としてのブチルフタリド又はその誘導体及び50〜99.99質量%、好ましくは80〜99.9質量%、さらに好ましくは90〜99.5質量%の量で賦形剤を含む。賦形剤は、油相、水性相、乳化剤、安定剤及び/又は浸透圧調節剤を含む。ブチルフタリド若しくはその誘導体は、ブチルフタリドのラセミ体若しくはその誘導体、又はl−ブチルフタリド若しくはその誘導体のいずれかであってもよい。
【0007】
賦形剤は、全賦形剤の総重量に対して0〜50質量%、好ましくは0.1〜40質量%の量での油相、50〜98質量%、好ましくは60〜97質量%の量での水性相、0.01〜50質量%、好ましくは0.5〜10質量%の量での乳化剤、0〜50質量%、好ましくは0〜15質量%の量での安定剤、及び0〜10質量%の量での浸透圧調節剤を含んでもよい。
【0008】
本発明のブチルフタリド静脈内エマルジョンの製造方法は、たとえば、一次エマルジョンを調製する、均質化する、滅菌する、及び品質管理する工程を含む。一次エマルジョンを調製する工程は、超音波法又は高速剪断法(FA25モデル、高速剪断乳化機、FLUKOエクイップメント上海社)を利用することによって実行される。均質化する工程は、二段階高圧乳化均質化法(Niro−Soavi NS1001Lモデル高圧ホモゲナイザー及びアベスチンEmulsiFlex−C5高圧ホモゲナイザー)又は微量流動化技術を利用することによって実行される。滅菌する工程は、回転下で高圧滅菌を用いて実行される。品質管理する工程は粒度を測定することによって主として実行される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<(1)油相の選択>
本発明のエマルジョンでは、油相は一般に0〜50%(w/v)の質量での量を有する。本発明では、治療上有効な量の薬剤を相対的に少量の油相に溶解するべきであり、超低温保存条件下で薬剤の沈殿がなく、又は層分離がなく、その間、乳化剤の存在下で水性相と共に安定なエマルジョンを形成できることが必要とされる。本発明で使用されるような油相は、長鎖脂肪酸エステル基を持つ天然の植物油又は構造変性及び加水分解の対象となる植物油若しくは脂肪酸エステルであってもよい。これらの例は、大豆油(特に注射等級)、ヒマシ油、茶種油、ピーナッツ油、綿実油、ゴマ油、菜種油、ベニバナ油、オリーブ油、ココナッツ油、ヤシ油及びカカオ油の1つ又は混合物であってもよく、たとえば、Arlacel 80、Arlacel 86、Capmul MCM、Captex 200(油)、Captex 355(油)、Miglyol 812(油)、Myvacet(油)、Myverol 18−92、しかし、これらに限定されないC6〜C12の鎖長の脂肪酸を伴ったグリセリド、オレイン酸グリセリド、リノール酸グリセリド、ラウリン酸マクロゴールグリセリル、オレイン酸エチル、リノール酸エチル、カプリロカプロイルトリグリセリド及びこれらの混合物であってもよく、又は上記の長鎖脂肪酸エステルと中鎖脂肪酸エステルの混合物であってもよい。
【0010】
注射用エマルジョンの製造中、好ましい油相は、相対的にほとんど溶血効果を有さず、精製される。一般に使用される植物油のほかに、本発明では以下の油も使用されてもよい。Arlacel80(HLB=4.3)モノオレイン酸ソルビタンArlacel86(HLB=2.8)オレイン酸グリセリド:プロピレングリコール(90:10)CapmulMCM(HLB=5.5〜6.0)ココナッツ油C8/C10 モノグリセリド又はジグリセリドCaptex200(油)ココナッツ油C8/C10 プロピレングリコールジエステルCaptex355(油)ココナッツ油C8/C10 トリグリセリドMiglyol812(油)ココナッツ油C8/C10 トリグリセリドMyvacet 精製した且つアセチル化したモノグリセリドMyverol18−92(HLB−3〜7)精製したベニバナ油モノグリセリド(90%のリノール酸グリセリドを含有する)Peceol(HLB=3)オレイン酸グリセリドMaisine(HLB=3)リノール酸グリセリドGelucire44/14(HLB=14)ラウリン酸マクロゴールグリセリル
【0011】
<(2)乳化剤の選択>
本発明で使用されるような乳化剤は、非イオン性界面活性剤及びアニオン界面活性剤の1つ又は混合物であってもよい。好ましい乳化剤は、大豆レシチン又は修飾された大豆レシチン(天然又は合成)、卵白レシチン又は修飾された卵白レシチン(天然又は合成)、Ophase31、ポロキサマー108、ポロキサマー188、ポロキサマー407、ポリオキシエチレン(水素添加)ヒマシ油、水溶性VE(TPGS)、Solutol HS−15、PEG−400モノステアレート、PEG−1750モノステアレート、ツイーン80、ツイーン20及びSpan20の1つ又は混合物であってもよいが、これらに限定されない。これら乳化剤の混合物を使用することが好ましい。注射用エマルジョンの製造中、好ましい乳化剤は、相対的にほとんど溶血効果を有さず、精製される。上記の乳化剤のほかに、本発明のブチルフタリドエマルジョンでは以下も使用してもよい。Ophase31(HLB=4)液体レシチン大豆レシチン(HLB=4/7/9)大豆レシチンCremophor EL(HLB=13.5)ポリオキシエチレンヒマシ油ポロキサマー108(HLB=30.5)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテルF−38ポロキサマー188(HLB=29)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテルF−68ポロキサマー407(HLB=21.5)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテルF−127ツイーン80(HLB=15)ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートツイーン200(HLB=16.7)ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートSpan 20(HLB=8.6)ソルビタンモノラウレート
【0012】
<(3)安定剤の選択>
本発明で使用されるような好適な安定剤は、オレイン酸、オレイン酸ナトリウム、カプリル酸ナトリウム、コレステロール、コール酸、デオキシコール酸及びそのナトリウム塩、ビタミンA、ビタミンC及びビタミンEの1つ又は混合物であってもよいが、これらに限定されない。
【0013】
<(4)浸透圧調節剤の選択>
本発明で使用されるような好適な浸透圧調節剤は、塩化ナトリウム、グルコース、ソルビトール、キシリトール、マンニトール及びグリセロールの1つ又は混合物であってもよいが、これらに限定されない。
【0014】
<(5)ブチルフタリド静脈内エマルジョンの基本処方>
本発明のブチルフタリド静脈内エマルジョンでは、ブチルフタリド:油相:水性相:安定剤:浸透圧調節剤の比は、0.001〜50質量%:0〜50質量%:0.01〜50質量%:50〜98質量%:0〜50質量%:0〜10質量%の範囲内での任意の比(重量)である。
【0015】
実施態様の1つでは、本発明のブチルフタリド静脈内エマルジョンは以下の組成を有する。
ブチルフタリド 10g
油相 100g
乳化剤 50g
安定剤 50g
水性相を加えて1000mLとする。
【実施例】
【0016】
<実施例1:ブチルフタリド静脈内エマルジョンの調製>
処方箋組成(数値の単位はg、以下同様)
ブチルフタリド 10
大豆レシチン 12
大豆油 100
ビタミンE 1
ソルビトール 25
注射用水を加えて1000mLにする。
【0017】
調製方法は、ブチルフタリド、ビタミンE及び大豆油を秤量して混合し、油相を形成する工程を含み、油相は60℃の水槽で予備加熱した。大豆レシチン及びソルビトールを秤量し、水に分散して水性相を形成し、水性相は、60℃の水槽で予備加熱した。油相をゆっくり水性相に注ぎ、高速剪断乳化機を用いて10,000rpmにて5分間、混合物を分散した。次いで、高圧ホモゲナイザーにて混合物を5回循環させ、その際、第1段階の圧力を100MPaとし、第2段階の圧力を10MPaとする。次いで、pH8を有するようにエマルジョンを調節し、ろ過し、補助包装し、121℃にて15分間滅菌した。全工程中、保護のために窒素ガスを供給する。
【0018】
<実施例2:ブチルフタリド静脈内エマルジョンの調製>
処方箋の組成(g)
ブチルフタリド 15
ヒマシ油 100
大豆レシチン 12
ポロキサマー188 6
グリセロール 25
オレイン酸 10
注射用水を加えて1000mLにする。
【0019】
調製方法は、ブチルフタリド、大豆レシチン、オレイン酸及びヒマシ油を秤量して混合し、油相を形成する工程を含み、油相は60℃の水槽で予備加熱した。ポロキサマー188及びグリセロールを秤量し、水に分散して水性相を形成し、水性相は、60℃の水槽で予備加熱した。油相をゆっくり水性相に注ぎ、高速剪断乳化機を用いて10,000rpmにて5分間、混合物を分散した。次いで、高圧ホモゲナイザーにて混合物を5回循環させ、その際、第1段階の圧力を100MPaとし、第2段階の圧力を10MPaとする。次いで、pH8を有するようにエマルジョンを調節し、ろ過し、補助包装し、121℃にて15分間滅菌した。全工程中、保護のために窒素ガスを供給する。
【0020】
<実施例3:ブチルフタリド静脈内エマルジョンの調製>
処方箋の組成(g)
ブチルフタリド 20
大豆レシチン 12
オリーブ油 100
コール酸 1
マンニトール 20
注射用水を加えて1000mLにする。
【0021】
調製方法は、ブチルフタリド、コール酸及びオリーブ油を秤量して混合し、油相を形成する工程を含み、油相は60℃の水槽で予備加熱した。大豆レシチン及びマンニトールを秤量し、水に分散して水性相を形成し、水性相は、60℃の水槽で予備加熱した。油相をゆっくり水性相に注ぎ、超音波で10分間(各時間につき10秒、出力:400W)混合物を処理した。次いで、高圧ホモゲナイザーにて混合物を5回循環させ、その際、第1段階の圧力を100MPaとし、第2段階の圧力を10MPaとする。次いで、pH8を有するようにエマルジョンを調節し、ろ過し、補助包装し、121℃にて15分間滅菌した。全工程中、保護のために窒素ガスを供給する。
【0022】
<実施例4:ブチルフタリド静脈内エマルジョンの調製>
処方箋の組成(g)
ブチルフタリド 25
綿実油 100
卵白レシチン 12
ポロキサマー188 20
グリセロール 25
オレイン酸ナトリウム 10
注射用水を加えて1000mLにする。
【0023】
調製方法は、ブチルフタリド、卵白レシチン、オレイン酸ナトリウム及び綿実油を秤量して混合し、油相を形成する工程を含み、油相は60℃の水槽で予備加熱した。ポロキサマー188及びグリセロールを秤量し、水に分散して水性相を形成し、水性相は、60℃の水槽で予備加熱した。油相をゆっくり水性相に注ぎ、高速剪断乳化機を用いて10,000rpmにて5分間、混合物を分散した。次いで、高圧ホモゲナイザーにて混合物を5回循環させ、その際、第1段階の圧力を100MPaとし、第2段階の圧力を10MPaとする。次いで、pH8を有するようにエマルジョンを調節し、ろ過し、補助包装し、121℃にて15分間滅菌した。全工程中、保護のために窒素ガスを供給する。
【0024】
<実施例5:ブチルフタリド静脈内エマルジョンの調製>
処方箋の組成(g)
ブチルフタリド 30
大豆レシチン 12
大豆油 200
ツイーン80 6
ビタミンE 8
キシリトール 100
注射用水を加えて1000mLにする。
【0025】
調製方法は、ブチルフタリド、ツイーン80、ビタミンE及び大豆油を秤量して混合し、油相を形成する工程を含み、油相は60℃の水槽で予備加熱した。大豆レシチン及びキシリトールを秤量し、水に分散して水性相を形成し、水性相は、60℃の水槽で予備加熱した。油相をゆっくり水性相に注ぎ、高速剪断乳化機を用いて10,000rpmにて5分間、混合物を分散した。次いで、高圧ホモゲナイザーにて混合物を5回循環させ、その際、第1段階の圧力を100MPaとし、第2段階の圧力を10MPaとする。次いで、pH8を有するようにエマルジョンを調節し、ろ過し、補助包装し、121℃にて15分間滅菌した。全工程中、保護のために窒素ガスを供給する。
【0026】
<実施例6:ブチルフタリド静脈内エマルジョンの調製>
処方箋の組成(g)
ブチルフタリド 40
カプリロカプロイルトリグリセリド 200
大豆レシチン 12
ポロキサマー188 20
グリセロール 25
オレイン酸 10
注射用水を加えて1000mLにする。
【0027】
調製方法は、ブチルフタリド、大豆レシチン、オレイン酸及びカプリロカプロイルトリグリセリドを秤量して混合し、油相を形成する工程を含み、油相は60℃の水槽で予備加熱した。ポロキサマー188及びグリセロールを秤量し、水に分散して水性相を形成し、水性相は、60℃の水槽で予備加熱した。油相をゆっくり水性相に注ぎ、高速剪断乳化機を用いて10,000rpmにて5分間、混合物を分散した。次いで、高圧ホモゲナイザーにて混合物を5回循環させ、その際、第1段階の圧力を100MPaとし、第2段階の圧力を10MPaとする。次いで、pH8を有するようにエマルジョンを調節し、ろ過し、補助包装し、121℃にて15分間滅菌した。全工程中、保護のために窒素ガスを供給する。
【0028】
<実施例7:ブチルフタリド静脈内エマルジョンの調製>
処方箋の組成(g)
ブチルフタリド 50
大豆レシチン 15
ゴマ油 100
ビタミンE 8
グリセロール 22.5
注射用水を加えて1000mLにする。
【0029】
調製方法は、ブチルフタリド、ビタミンE及びゴマ油を秤量して混合し、油相を形成する工程を含み、油相は60℃の水槽で予備加熱した。大豆レシチン及びグリセロールを秤量し、水に分散して水性相を形成し、水性相は、60℃の水槽で予備加熱した。油相をゆっくり水性相に注ぎ、高速剪断乳化機を用いて10,000rpmにて5分間、混合物を分散した。次いで、高圧ホモゲナイザーにて混合物を5回循環させ、その際、第1段階の圧力を100MPaとし、第2段階の圧力を10MPaとする。次いで、pH8を有するようにエマルジョンを調節し、ろ過し、補助包装し、121℃にて15分間滅菌した。全工程中、保護のために窒素ガスを供給する。
【0030】
<実施例8:ブチルフタリド静脈内エマルジョンの調製>
処方箋の組成(g)
ブチルフタリド 20
大豆油 100
卵白レシチン 12
ポロキサマー188 20
グリセロール 25
オレイン酸ナトリウム 10
注射用水を加えて1000mLにする。
【0031】
調製方法は、ブチルフタリド、卵白レシチン、オレイン酸ナトリウム及び大豆油を秤量して混合し、油相を形成する工程を含み、油相は60℃の水槽で予備加熱した。ポロキサマー188及びグリセロールを秤量し、水に分散して水性相を形成し、水性相は、60℃の水槽で予備加熱した。油相をゆっくり水性相に注ぎ、高速剪断乳化機を用いて10,000rpmにて5分間、混合物を分散した。次いで、高圧ホモゲナイザーにて混合物を5回循環させ、その際、第1段階の圧力を100MPaとし、第2段階の圧力を10MPaとする。次いで、pH8を有するようにエマルジョンを調節し、ろ過し、補助包装し、121℃にて15分間滅菌した。全工程中、保護のために窒素ガスを供給する。
【0032】
<実施例9:ブチルフタリド静脈内エマルジョンの調製>
処方箋の組成(g)
ブチルフタリド 100
卵白レシチン 20
ポロキサマー188 20
グリセロール 25
オレイン酸ナトリウム 30
注射用水を加えて1000mLにする。
【0033】
調製方法は、ブチルフタリド、卵白レシチン及びオレイン酸ナトリウムを秤量して混合し、油相を形成する工程を含み、油相は60℃の水槽で予備加熱した。ポロキサマー188及びグリセロールを秤量し、水に分散して水性相を形成し、水性相は、60℃の水槽で予備加熱した。油相をゆっくり水性相に注ぎ、高速剪断乳化機を用いて10,000rpmにて5分間、混合物を分散した。次いで、高圧ホモゲナイザーにて混合物を5回循環させ、その際、第1段階の圧力を100MPaとし、第2段階の圧力を10MPaとする。次いで、pH8を有するようにエマルジョンを調節し、ろ過し、補助包装し、121℃にて15分間滅菌した。全工程中、保護のために窒素ガスを供給する。
【0034】
<実施例10:ブチルフタリド静脈内エマルジョンの調製>
処方箋の組成(g)
ブチルフタリド 0.1
大豆油 100
卵白レシチン 19
ポロキサマー188 25
グリセロール 25
注射用水を加えて1000mLにする。
【0035】
調製方法は、ブチルフタリド、卵白レシチン及び大豆油を秤量して混合し、油相を形成する工程を含み、油相は60℃の水槽で予備加熱した。ポロキサマー188及びグリセロールを秤量し、水に分散して水性相を形成し、水性相は、60℃の水槽で予備加熱した。油相をゆっくり水性相に注ぎ、高速剪断乳化機を用いて10,000rpmにて5分間、混合物を分散した。次いで、高圧ホモゲナイザーにて混合物を5回循環させ、その際、第1段階の圧力を100MPaとし、第2段階の圧力を10MPaとする。次いで、pH8を有するようにエマルジョンを調節し、ろ過し、補助包装し、121℃にて15分間滅菌した。全工程中、保護のために窒素ガスを供給する。
【0036】
<実施例11:ブチルフタリド静脈内エマルジョンの調製>
処方箋の組成(g)
ブチルフタリド 5
大豆油 100
卵白レシチン 12
ポロキサマー188 20
オレイン酸ナトリウム 3
注射用水を加えて1000mLにする。
【0037】
調製方法は、ブチルフタリド、卵白レシチン、オレイン酸ナトリウム及び大豆油を秤量して混合し、油相を形成する工程を含み、油相は60℃の水槽で予備加熱した。ポロキサマー188を秤量し、水に分散して水性相を形成し、水性相は、60℃の水槽で予備加熱した。油相をゆっくり水性相に注ぎ、高速剪断乳化機を用いて10,000rpmにて5分間、混合物を分散した。次いで、高圧ホモゲナイザーにて混合物を5回循環させ、その際、第1段階の圧力を100MPaとし、第2段階の圧力を10MPaとする。次いで、pH8を有するようにエマルジョンを調節し、ろ過し、補助包装し、121℃にて15分間滅菌した。全工程中、保護のために窒素ガスを供給する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エマルジョン総重量に基づいて0.01〜50質量%のブチルフタリドを活性成分として、及び50〜99.99質量%の賦形剤を含んでなり、
前記賦形剤は、賦形剤の総重量に対して0〜50質量%の量の油相、50〜98質量%の水性相、0.01〜50質量%の乳化剤、0〜50質量%の安定剤、及び0〜10質量%の量の浸透圧調節剤を含むブチルフタリド静脈内エマルジョン。
【請求項2】
前記ブチルフタリドは、ブチルフタリドのラセミ体、又はl−ブチルフタリドである、請求項1に記載のブチルフタリド静脈内エマルジョン。
【請求項3】
前記油相は、天然又は修飾された植物油若しくは脂肪酸エステル、C〜C12の鎖長の脂肪酸のグリセリド、又はこれらの混合物を含む、請求項1又は2に記載のブチルフタリド静脈内エマルジョン。
【請求項4】
前記油相は、大豆油、ヒマシ油、茶種油、ピーナッツ油、綿実油、ゴマ油、菜種油、ベニバナ油、オリーブ油、ココナッツ油、ヤシ油、カカオ油、モノオレイン酸ソルビタン、オレイン酸グリセリド:プロピレングリコール(90:10)、ココナッツ油C8/C10 モノグリセリド又はジグリセリド、ココナッツ油C8/C10 プロピレングリコールジエステル、ココナッツ油C8/C10 トリグリセリド、精製し且つアセチル化したモノグリセリド、精製したベニバナ油モノグリセリド、オレイン酸グリセリド、リノール酸グリセリド、ラウリン酸マクロゴールグリセリル、オレイン酸エチル、リノール酸エチル及びカプリロカプロイルトリグリセリドの1つ又は混合物である、請求項3に記載のブチルフタリド静脈内エマルジョン。
【請求項5】
乳化剤は、非イオン性界面活性剤及びアニオン界面活性剤の1つ又は混合物を含む、請求項1又は2に記載のブチルフタリド静脈内エマルジョン。
【請求項6】
前記乳化剤は、大豆レシチン又は修飾された大豆レシチン、卵白レシチン又は修飾された卵白レシチン、液体レシチン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテルF−38、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテルF−68、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテルF−127、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン水素添加ヒマシ油、水溶性VE、PEG−660−12−ヒドロキシステアレート、PEG−400モノステアレート、PEG−1750モノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート及びソルビタンモノラウレートの1つ又は混合物である、請求項5に記載のブチルフタリド静脈内エマルジョン。
【請求項7】
安定剤は、オレイン酸、オレイン酸ナトリウム、カプリル酸ナトリウム、コレステロール、コール酸、デオキシコール酸及びそのナトリウム塩、ビタミンA、ビタミンC及びビタミンEの1つ又は混合物である、請求項1又は2に記載のブチルフタリド静脈内エマルジョン。
【請求項8】
浸透圧調節剤は、塩化ナトリウム、グルコース、ソルビトール、キシリトール、マンニトール及びグリセロールの1つ又は混合物である、請求項1又は2に記載のブチルフタリド静脈内エマルジョン。
【請求項9】
静脈注射又は点滴を介して投与される、請求項1に記載のブチルフタリド静脈内エマルジョン。

【公開番号】特開2012−193206(P2012−193206A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−156784(P2012−156784)
【出願日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【分割の表示】特願2008−544744(P2008−544744)の分割
【原出願日】平成18年12月15日(2006.12.15)
【出願人】(508180954)シーチャチョワン ファーマ グループ エヌビーピー ファーマシューティカル カンパニー リミテッド (2)
【Fターム(参考)】