説明

ブックカバー

【課題】 ブックカバーの上に掛けられる帯を廃し、ブックカバー自体に帯としての機能を持たせ、帯の破損をなくし、かつブックカバーの強度を高めることを課題とする。
【解決手段】 本2の表紙3、背表紙4、裏表紙5にわたりかつ両端部を表紙および裏表紙の側端部の内側へ折り込み得る長さを有するブックカバーにおいて、このカバーの下部に該カバーの表面側または裏面側へ折り返し得る所要の上下幅Lを有する折り返し部6を連設し、この折り返し部の折り返し面に所要の帯用記載内容8を印刷表示して帯用折り返し部とされ、この折り返し部が本の帯として機能するようにするとともに、この折り返し部をカバーの裏側へ折り返すことにより帯無しのカバーとなるようにしたことにある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は本の外面を覆うブックカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
表紙および裏表紙が厚紙で構成される本にあっては、その表紙から背表紙を経て裏表紙にわたって覆い、端部を表紙および裏表紙の側端部に折り込んで本と一体化するブックカバーが装着されている。さらにこのブックカバーには、その本の内容を象徴的に示しかつ人目を引く絵柄(写真、絵画、抽象パターン、文字等)が印刷されている。
【0003】
一方、前記ブックカバーの上に、その本のキャッチフレーズ、セールスポイント、賞を獲得したものである場合はその賞の内容、その他必要事項が印刷された所要上下幅のベルト状のシート(これを「帯」と称する)が掛けられる。
【0004】
また前記ブックカバーの裏表紙側には、販売時のデータ保存および流通の省力化・合理化の用途からバーコードによる表示が施される。このバーコードは、流通コードセンターの規定により、原則として白地に黒色で表示するよう指示されている。
【0005】
しかして前記の「帯」は、ブックカバーの上から該カバーと同様に表紙、背表紙、裏表紙にわたりかつ端部を表紙、裏表紙の側端部に折り込んで装着されるので、書店における本の取り扱い時や、客が書棚から取り出して中味を見たのち再びその場所へ戻す際に外れたりずれ動きやすく、場合によっては破れてしまうことが起き、本の体裁を損ってしまうことが多い。
【0006】
また返品時には、その帯を新規なものと付け替えることが必要となり、そのため多くの手数を要し、コストアップに繋がることになる。
【0007】
一方、バーコードを表示するため、ブックカバーの一部に白抜きのスペースを作り、そこにバーコードを印刷することになるため、本としての外観上違和感を与え、人によってはこれを嫌う場合があり、その対応に苦慮している。
【0008】
そのためバーコードを印刷した粘着テープをブックカバーの一部に貼り、購入後これを剥せるようにしている本もあるが、これによるとバーコードを印刷したテープを別途用意し、かつこれを1枚ずつ所定の位置に貼付する手数を要することになって、勢いコストアップになることは避けられず、好ましくない。
【特許文献1】特開2000−15956号公報
【特許文献2】特開平10−44641号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、従来から用いられている形態の帯を廃し、これと同効の帯機能をブックカバー自体に持たせ、これにより帯の外れやずれ動くことを皆無とし、また帯が不要な人はこれを反対側へ折り返すことにより帯無しのブックカバーとして本を保護する機能を発揮させ、かつブックカバー自体の補強の効果をもたらすことができるブックカバーを低コストで得ることを課題とする。
【0010】
またバーコードの表示部分を外部からは見えない形態に変態させることが簡単にでき、バーコードの存在を嫌う人においても違和感のないブックカバーを提供することにある。
【0011】
さらにはブックカバーを本から取り外して独立したポスター状とし、部屋の壁面等に飾って楽しむ用途にも対応することができ、本を保護するだけのブックカバーを超えた実益を持たせることを可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決する手段として本発明は、本の表紙、背表紙、および裏表紙にわたりかつ両端部を表紙および裏表紙の側端部の内側へ折り込み得る長さを有するブックカバーにおいて、このカバーの下部に該カバーの表面側または裏面側へ折り返し得る所要の上下幅を有する折り返し部を連設し、この折り返し部の折り返し面に所要の帯用記載内容を印刷表示して帯用折り返し部とされ、この折り返し部が本の帯として機能するようにするとともに、この折り返し部をカバーの裏面側へ折り返すことにより帯無しのカバーとなるようにしたことにある。
【0013】
請求項2は、上記構成に加え、前記カバーの上部に該カバーの表面側または裏面側へ折り返し得る所要の上下幅を有するバーコード等の表示用折り返し部を連設し、前記帯用折り返し部および表示用折り返し部をカバーの表面側へ折り返すことにより本の帯および表示面を構成し、裏面側へ折り返すことにより帯無しおよび表示無しのカバーとなるようにしたものである。
【0014】
なお上記表示用折り返し部が有色であるときは、その適所に白抜きのスペースが設けられ、この白抜き部分にバーコードが黒色印刷される。
【0015】
請求項3は、前記帯用折り返し部を平板状に展開したときカバーの表面に表示されている絵柄と前記帯用折り返し部に表示された絵柄とが一連の絵柄となってポスターとして使用し得るようにしたものであり、請求項4は、カバーの上部に連設された表示用折り返し部をも平板状に展開したときカバーの表面、帯用折り返し部、表示用折り返し部に印刷されているすべての絵柄が一連の絵柄を構成するようにしたことにある。
【0016】
請求項5は、前記カバーの裏面に、該カバーを裏返して本に装着したとき本の表紙を飾る絵柄を印刷表示し、カバーをリバーシブルとしたことにある。
【発明の効果】
【0017】
請求項1記載の発明によれば、ブックカバーの下部に連設された帯用折り返し部をブックカバーの表側に折り返すことにより「帯」が形成されるので、従来のように別途印刷して用意した帯を掛ける必要がなく、装丁の手数を大幅に削減することができるとともに、本の取り扱い中あるいは客が書棚に出し入れしても帯が外れたりずれ動いてしまうことがなく、常に同じ箇所に位置して本の外観を損うことがない。
【0018】
また破れることも少ないので、返品時等に新たな帯に掛け替える必要がなく、コスト面できわめて有利となる。加えて帯用表示内容をカバーの印刷と一緒に行えるので、印刷工程が少くてすみ、従来の帯を別に印刷するものに比して印刷コストを低減させることができる。
【0019】
さらに帯用折り返し部が折り返えされることにより、ブックカバーの最も破れやすい下端が補強されるので、長期にわたり本の体裁を損うことなく保存することができ、特に貴重な本の場合などでは有効に作用する。
【0020】
一方、帯が不要とされる人は、この帯用折り返し部をカバーの裏面側へ折り返えせば、本の表紙と対応する領域が現われるので、そこに印刷されている絵柄をすべて見えるようにすることができる。
【0021】
請求項2によれば、カバーの上部に表示用折り返し部を連設し、この表示用折り返し部の折り返し面に白抜き部分を設けてバーコードを黒色印刷するようにしたので、ブックカバーの主要部分にバーコードを印刷する必要がなく、またバーコードの存在を嫌う人においては、この表示用折り返し部をカバーの裏面側へ折り返すことによりバーコードを隠すことができると同時に本の表紙に対応する裏面の絵柄を現わすことができる。
【0022】
請求項3、4によれば、各折り返し部を平板状に展開したときカバーの表面に印刷された絵柄と一連となる絵柄を印刷しておくことにより、ブックカバーを本から外してポスターとして室内の壁面等に貼って楽しむことができ、ブックカバーの利用範囲を拡大することができる。
【0023】
請求項5によれば、ブックカバーを裏返して本に掛ければ、販売時における外装とは異るイメージの本の外装にすることができ、本の内容のイメージ表現を著しく増大することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図1は本発明の基本的実施形態におけるブックカバーを本に装着した状態を斜視図で示し、図2は上記ブックカバーのみの装着前の形態を斜視図で示している。
【0025】
前記ブックカバー1Aは、本2の表紙3、背表紙4、裏表紙5にわたりかつ両端の折り込み部1a、1aを表紙3および裏表紙5の側端部の内側へ折り込み得る横方向長さを有し、このブックカバー1Aの下部に該カバー1Aの表面側または裏面側へ折り返し得る所要の上下幅Lを有する帯用折り返し部6が折線7を介して一体に連設されている。したがってブックカバー1Aの上端から前記折線7までの幅Lが本2の上下方向の幅と略同一寸法となっている。
【0026】
前記帯用折り返し部6のこれを折り返したとき表面となる折り返し面には、その本2のキャッチフレーズ、セールスポイント、芥川賞や直木賞等の賞を受けた小説の場合はその賞の内容等、所定の帯用記載内容8が印刷されている。
【0027】
図1においては、帯用折り返し部6をブックカバー1Aの表面上に折り返して「帯」とした状態を示しており、この帯用折り返し部6を表面側へ折り返した状態時に帯用折り返し部6を除くブックカバー1Aの表紙面にはその本2の内容をイメージする絵柄9が印刷されている。
【0028】
なお、本2の購入者が帯を不要とするときは、帯用折り返し部6を図3のようにブックカバー1Aの裏面側へ折り返すことにより帯無しのカバーとすることができ、その際に帯用折り返し部6の表面側への折り返しにより隠れる部分にも前記絵柄9と一連となる絵柄を印刷しておくことにより、前記の帯無しカバーの形態とした場合においても違和感のないブックカバーとすることができる。
【0029】
図4は、本発明の他の実施形態におけるブックカバーを本に装着した状態を斜視図で示し、図6は上記ブックカバーのみの装着前の形態を斜視図で示している。
【0030】
この実施形態におけるブックカバー1Bは、前記帯用折り込み部6とは別にブックカバー1Bの上部に該カバー1Bの表面側または裏面側へ折り返し得る所要の上下幅Lの表示用折り返し部10が折線11を介して一体に連設されたもので、この表示用折り返し部10をブックカバー1Bの表面側へ折り返したとき表面となる折り返し面に白抜き領域12が設けられ、この白抜き領域12内にバーコード13が黒色印刷により表示されている。白抜き領域12及びバーコード13は、本の裏側に位置する表示用折り返し部10の表面に設けられている。またこの折り返し面には、必要によりバーコード13以外の所要の事項14(例えば本の価格表示14aや本の著者名14b等)が印刷される。
【0031】
図4においては、表示用折り返し部10をブックカバー1Bの表面上に折り返して表示内容を表示するようにした状態を示しており、この表示用折り返し部10と前記帯用折り返し部6との間のブックカバー1Bの表紙面にその本2の内容をイメージする絵柄9が印刷表示されている。
【0032】
なお、本2の購入者がバーコード13の存在を嫌うような場合には、図6に示すようにこの表示用折り返し部10をブックカバー1Bの裏面側へ折り返して本2に装着すれば、表示用折り返し部10が隠れるのでバーコード13の存在を隠すことができる。
【0033】
そしてこの表示用折り返し部10をブックカバー1Bの裏側へ折り返したときその折り返し部10により隠れていた領域にも前記絵柄9と一連となる関連した絵柄を印刷しておくことにより表示用折り返し部10が表面に存在していなくともブックカバー1Bの表紙面を一つの絵として飾ることができる。
【0034】
さらに表示用折り返し部10と帯用折り返し部6との双方をブックカバー1Bの裏側へ折り返せば、前記図3と同じ外観のブックカバーとすることができる。
【0035】
また各折り返し部6、10を上・下にそれぞれ展開したとき前記表紙面の絵柄9と一連(または関連)の絵柄や文字を印刷しておけば、ブックカバー1Bを本2から外して1枚のポスターとしての機能をもたせることができ、室内の壁面等に貼って楽しむことができる。
【0036】
加えて前記絵柄9のほか、図8に例示するようにブックカバー1A、1Bの裏面に別の絵柄を印刷しておき、前記各折り返し部6、10をブックカバー1A、1Bの表面側へ折り返したのちこれらを内側として本に装着するようにすれば、別の絵柄で表紙を飾ることができ、1枚のブックカバーで2様の表現を与えるようにすることができる。
【0037】
図9(A)〜(D)は上記ブックカバー1Bの変態形態を模式的に示しており、(A)は帯用折り返し部6および表示用折り返し部10を共にブックカバー1Bの表面側へ折り返して本に装着する形態、(B)は帯用折り返し部6はそのままで、表示用折り返し部10をブックカバー1Bの裏側へ折り返して表示用折り返し部10を隠した形態、(C)は双方の折り返し部6、10を共にブックカバー1Bの裏側へ折り返して隠した形態、(D)はブックカバー1Bを裏返しにして本に装着するようにした形態をそれぞれ示している。なおこの図9(D)は図9(C)と同じ図となっているが、実際はブックカバー1Bの表裏が反転している点が異っているのである。
【0038】
いずれの形態においても、ブックカバー1Bの上下部は折り返し部6、10の連設部分(折線部分)が存在するので、ブックカバー1Bの剛性が増し、本に装着した形態が崩れることがなく、かつ本の上下端にブックカバー1Bの木口(切断面)が現れないので破れを防ぎ、永年にわたって綺麗なカバーとして使用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明によるブックカバーの一実施形態を本に装着した状態として示す斜視図。
【図2】同、本に装着する前の形態を示す斜視図。
【図3】同、帯無し形態とした状態を示す斜視図。
【図4】本発明によるブックカバーの他の実施形態を本に装着した形態を示す斜視図。
【図5】同、本に装着する前の形態を示す斜視図。
【図6】同、表示用折り返し部を内側に折り返した状態を示す斜視図。
【図7】同、展開平面図。
【図8】ブックカバーの裏面にさらに別の絵柄を印刷した例を示す図。
【図9】(A)〜(D)は形態例を模式的に示す説明図。
【符号の説明】
【0040】
1A、1B ブックカバー
2 本
3 本の表紙
4 同、背表紙
5 同、裏表紙
6 帯用折り返し部
7、11 折線
9 絵柄
10 表示用折り返し部
12 白抜き領域
13 バーコード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本の表紙、背表紙、および裏表紙にわたりかつ両端部を表紙および裏表紙の側端部の内側へ折り込み得る長さを有するブックカバーにおいて、このカバーの下部に該カバーの表面側または裏面側へ折り返し得る所要の上下幅を有する折り返し部を連設し、この折り返し部の折り返し面に所要の帯用記載内容を印刷表示として帯用折り返し部とされ、この折り返し部が本の帯として機能するようにするとともに、この折り返し部をカバーの裏面側へ折り返すことにより帯無しのカバーとなるようにしたことを特徴とするブックカバー。
【請求項2】
本の表紙、背表紙、および裏表紙にわたりかつ両端部を表紙および裏表紙の側端部の内側へ折り込み得る長さを有するブックカバーにおいて、このカバーの下部に該カバーの表面側または裏面側へ折り返し得る折り返し部を連設し、この折り返し部の折り返し面に所要の帯用記載内容を印刷表示して帯用折り返し部とされ、前記カバーの上部に該カバーの表面側または裏面側へ折り返し得る所要の上下幅を有するバーコード等の表示用折り返し部を連設し、前記帯用折り返し部および表示用折り返し部をカバーの表面側へ折り返すことにより本の帯および表示面を構成し、裏面側へ折り返すことにより帯無しおよび表示無しのカバーとなるようにしたことを特徴とするブックカバー。
【請求項3】
前記帯用折り返し部を平板状に展開したときカバーの表面に表示されている絵柄と前記帯用折り返し部に表示された絵柄とが一連の絵柄となってポスターとして使用し得るようになされている請求項1記載のブックカバー。
【請求項4】
前記帯用折り返し部および表示用折り返し部を平板状に展開したときカバーの表面に表示されている絵柄と前記各折り返し部に表示されている絵柄とが一連の絵柄となってポスター状として使用し得るようになされている請求項2記載のブックカバー。
【請求項5】
前記カバーの裏面に、該カバーを裏返して本に装着したとき本の表紙を飾る絵柄が印刷表示されている請求項1〜4のいずれか1項記載のブックカバー。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2006−26978(P2006−26978A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−206144(P2004−206144)
【出願日】平成16年7月13日(2004.7.13)
【出願人】(000010021)株式会社小学館 (7)