説明

ブテニル−スピノシン殺虫剤生産のための生合成遺伝子

【課題】 ブテニル−スピノシンの効果的な生産方法の提供
【解決手段】 ブテニル−スピノシン生合成遺伝子、生合成遺伝子で形質転換したスピノシンを生産する微生物、ブテニル−スピノシン殺虫性マクロライドの生産を上げるための生合成遺伝子の使用、およびスピノシンを生産する微生物による生産される産物を変化させるために遺伝子またはそれらのフラグメントの使用が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規ブテニル−スピノシン生合成遺伝子(butenyl−spinosyn
biosynthetic gene)、生合成遺伝子を包含するベクター、生合成遺伝子で形質転換したサッカロポリスポラ(Saccharopolyspora)株、スピノシン−様殺虫マクロライドの生産を上げるためのこれらの遺伝子の使用法、およびサッカロポリスポラ種(Saccharopolyspora spp)のスピノシン−生産株による作られた代謝産物を変化させるための遺伝子またはそれらのフラグメントの使用法を提供する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
自然に生産されるスピノシン化合物は、12−員の大環系ラクトン、中性糖(ラムノース)およびアミノ糖(ホロサミン(forosamine))に縮合した5,6,5−三環式環系からなる(非特許文献1)。アミノ糖が存在しない場合、化合物はシュードアグリコン(pseudoaglycone)と呼ばれ、そして中性糖が存在しなければ化合物は逆シュードアグリコン(reverse pseudoaglycone)と呼ばれて来た。
【0003】
A83543スピノシンはサッカロポリスポラ スピノサ(Saccharopolyspora spinosa)NRRL18395株およびそれらの誘導体により生産される。A83543スピノシンファミリーの知られている員およびそれらを生産する株は、特許文献1;2;3;4および5に開示された。化合物は文字命名により確認される:スピノシンA、B等(非特許文献1)。A83543スピノシンAの構造は後の表1に与える。A83543スピノシン化合物は蛛形類、線虫類および昆虫、特に鱗翅目(Lepidoptera)および双翅目(Diptera)種の防除に有用であり、そしてそれらは好ましい環境的および毒物学的プロフィールを有する。
【0004】
A83543スピノシンの生合成を支配する酵素をコードする遺伝子のDNA配列は特許文献6に開示されている。クローン化された遺伝子およびオープンリーディングフレイムは、spnAspnBspnCspnDspnEspnFspnGspnHspnIspnJspnKspnLspnMspnNspnOspnPspnQspnRspnSS.spinosa gttS.spinosa gdhS.spinosa epiおよびS.spinosa kreと命名されている。
【0005】
ラムノース生合成を除くスピノシン生合成遺伝子、特に遺伝子spnAspnBspnCspnDspnEspnFspnGspnHspnIspnJspnKspnLspnMspnNspnOspnPspnQspnRおよびspnSは、S.スピノサ(spinosa)染色体の約74kb領域上に連続して位置している。spnAspnBspnCspnDおよびspnE遺伝子はポリケチド生合成の原因である遺伝子に類似することが示され、そしてspnAspnDまたはspnEの破壊はすべてのスピノシン生産を排除した。A83543スピノシン生合成はまたラクトン核の橋架け、マクロライド生産体には稀な活性にも関与し;spnFspnJspnLおよびspnM遺伝子はこの生合成段階に関与すると考えられた。spnGspnHspnI、およびspnK遺伝子はラムノースの付加および修飾に関与し、そしてspnNspnOspnPspnQspnRおよびspnS遺伝子はホロサミン糖の生合成および付加に関与すると報告された。ラムノース生合成に必要な遺伝
子は、A83543スピノシン生合成遺伝子の残りに連続して配置されていなかった。S.spinosa gttおよびS.spinosa kreは1つの異なるフラグメント上にクローン化され、そしてS.spinosa gdhおよびS.spinosa epiは他の異なるフラグメント上にクローン化された。
【0006】
最近、新規生物、サッカロポリスポラ種(Saccharopolyspora sp.)LW107129(NRRL30141)またはそれらの誘導体により生産される第2クラスのスピノシンであるブテニル−スピノシンが特許文献7および8に対応する特許文献9に開示された。この化学的ファミリーの40以上もの員が前記出願で定められた。サッカロポリスポラ種(Saccharopolyspora sp.)LW107129(NRRL30141)により生産されるブテニル−スピノシン化合物は、A83543スピノシン系の化合物とは異なる。この2種類のスピノシン間の主な差異は、C−21で大環式環に結合した炭素尾(carbon tail)の置換である。天然のブテニルスピノシンはC−21で3〜4炭素鎖、好ましくはブテニルに置換され、一方、天然のA83543スピノシンはC−21で1〜2炭素鎖、好ましくはエチルに置換されている。
【0007】
ブテニル−スピノシン化合物は、2001年3月21日に出願された「21−ブテニルおよび関連スピノシンの合成誘導体(Synthetic Derivatives of 21−Butenyl and Related Spinosyns)」で特許文献10に開示されているように合成的に修飾されたスピノソイド化合物の生産における反応物として有用である。より好ましくはブテニル−スピノシン化合物およびそれらの合成誘導体は、蛛形類、線虫類および昆虫、特に鱗翅目(Lepidoptera)および双翅目(Diptera)の防除に有用である。
【0008】
C−21のブテニル基に加えて、ブテニル−スピノシンはA83543スピノシン系とは異なる数々の他の差異を現す。ブテニル−スピノシン化合物のサブセットおよびA83543スピノシンに比べて多様性を示す因子を表1にまとめた。ブテニルスピノシンは表1に名前を挙げ、そして今後、構造的頭字語「for−rhamI」、「for−rhamII」、「for−rhamIII」およびそれらの誘導体で称する。これらの場合で、I、IIおよびIIIは正しく置換されたマクロライド構造(I:R=R=H;II:R=CH、R=HまたはOH;III:R=H、R=OH)、「for」はC−17の糖(for=ホロサミン)を表し、そして「rham」はC−9の糖(rham=トリ−O−メチルラムノース)を表す。NRRL30141株により生産される、14−員のマクロライド環を有する一般式(2)を持つ第2型のマクロライド構造は今後、IVと呼び、そして完全にグリコシル化された化合物を「for−rham−IV」と呼ぶ。式(1)および(2)のブテニル−スピノシン化合物は、蛛形類、線虫類および昆虫、特に鱗翅目(Lepidoptera)および双翅目(Diptera)の防除に有用であり、そしてそれらは環境に優しく、しかも魅力的な毒物学的プロフィールを有する。
【0009】
これらの差異にはC−21位での徹底的な修飾、C−8位でのヒドロキシル化およびC−17のホロサミンの中性糖を含む別の糖への置換を含む。さらにそれぞれC−17およびC−9に結合したホロサミンおよびラムノースを含む14員のマクロ−環式環に縮合した5,6,5−三環式環系を有する化合物は、前記出願で以前に開示された。
【0010】
【表1】

【0011】
【表2】

【0012】
【表3】

【0013】
表1の化合物1−21はサッカロポリスポラ種(Saccharopolyspora
sp.)LW107129(NRRL30141)により生産され、そして特許文献7に対応する特許文献9に開示されている。化合物32および23は2001年3月21日に出願された特許文献8「殺虫性マクロライド(Pesticidal Macrolides)」に開示されている。
【0014】
ブテニル−スピノシンとA83543スピノシンとの間の構造の差異にもかかわらず、生合成遺伝子の幾つかは類似すると推定することができる。しかし上記のように、サッカロポリスポラ種(Saccharopolyspora sp.)LW107129(NRRL30141)は広い範囲の独自なブテニル−スピノシン因子および化合物を生産し、これはA83543スピノシンで観察された。したがってこの微生物は新規な生合成酵素も保有するはずであり、これはS.スピノサ(spinosa)のA83543スピノシン生合成酵素とは異なる。具体的にはA83543スピノシンに対して、サッカロポリスポラ種(Saccharopolyspora sp.)LW107129(NRRL30141)ブテニル−スピノシン生合成酵素は2炭素までポリケチド鎖を延長することができなければならない(C−21でエチルではなくブテニルを生じる)。それらはまたC−17で別のアミノおよび中性糖を、そしてC−8およびC−24でヒドロキシレートを合成し、そして結合できなければならない。さらにラムノースメチル化はS.スピノサ(spinosa)に対してサッカロポリスポラ種(Saccharopolyspora sp.)LW107129(NRRL30141)中で異ならなければならない。A83543スピノシンに関してラムノースの改変されたメチル化を現すS.スピノサ(spinosa)のブロック突然変異体(特許文献2および3に開示されている)は、典型的にはA83543スピノシンのモノ−デスメチル化ラムノース誘導体を生産した。A83543スピノシンのジ−デスメチルラムノース誘導体は、メチラーゼインヒビター様シネフンジンの存在下でのみ検出された。改変したラムノースのメチル化を含むサッカロポリスポラ種(Saccharopolyspora sp.)LW107129(NRRL30141)の突然変異体は、メチラーゼインヒビターの不存在下でブテニル−スピノシンのジ−およびトリ−デスメチルラムノース誘導体を大量に生産した。
【0015】
ブテニル−スピノシン化合物を生産する試みは、大変少量のブテニル−スピノシンを生産するために大変大規模な発酵容量が必要であるという事実が生じる。ブテニル−スピノシン生合成酵素の1または複数の遺伝子を含むDNAのクローン化したフラグメントは、収量を上げるために遺伝子の複写(duplication)を可能とする。この種類の収量の増加は、マクロシン(macrocin)をタイロシン(tylosin)に転換する律速のメチルトランスフェラーゼをコードする遺伝子を複写することによりストレプトミセス フラジエ(Streptomyces fradiae)の発酵により(非特許文献2)、およびgttおよびgdh遺伝子を複写することによりS.スピノサ(spinosa)で達成された(非特許文献3)。
【0016】
クローン化したブテニル−スピノシン生合成遺伝子も、異なる殺虫活性のスペクトルを有するブテニル−スピノシンの新たな誘導体を生産する方法を提供する。特別な中間体(またはそれらの自然な誘導体)は、ブテニル−スピノシン生合成のための酵素をコードする特定の遺伝子が組換えDNA法を使用して破壊されたサッカロポリスポラ種(Saccharopolyspora sp.)LW107129(NRRL30141)の突然変異株により合成することができる。そのような方法を効果的に使用して、新規6−デオキシエリスロマイシン誘導体を生産するサッカロポリスポラ エリスレア(Saccharopolyspora erythraea)株を作成した(非特許文献4)。またブテニル−スピノシン生合成遺伝子は類似の化合物を生産するS.スピノサ(spinosa)のような他の生物中で発現することもできる。自然なブテニル−スピノシンプロモーターまたはヘテロロガスなプロモーターから発現した時、これらの遺伝子はスピノシンおよびブテニル−スピノシンの両方の幾つかの独特な構造的特徴を持つ新規ハイブリッド分子を生産する。
【0017】
新規中間体は、ブテニル−スピノシン生合成に関する酵素をコードする特定の遺伝子の部分がインビトロで特別に突然変異した同じ遺伝子の部分に、または他の生物に由来する遺伝子の対応する部分に置き換えられたサッカロポリスポラ種(Saccharopolyspora sp.)LW107129(NRRL30141)またはS.スピノサ(spinosa)の突然変異株によっても合成することができる。ハイブリッド遺伝子は新規な酵素的変換の活性を欠くか、または行う改変した機能を持つタンパク質を生産する。新規化学物質は突然変異株の発酵で蓄積する。そのような方法を使用して、新規アンヒドロエリスロマイシン誘導体を生産するサッカロポリスポラ エリトレア(Saccharopolyspora erythraea)株を作成した(非特許文献5)。
【0018】
ブテニル−スピノシンの生合成は2−および3−炭素カルボン酸前駆体の段階的縮合および修飾を介して進行し、環化そして架橋して四環式アグリコンを生成する直鎖状ポリケチド(図1A)を生じる(図1B)。シュードアグリコン(トリ−O−メチル化ラムノースを含む)が次いで形成され、ジ−N−メチル化ホロサミンまたは別の糖が付加されて生合成が完了する(図1B)。抗生物質エリスロマイシン、抗寄生虫剤アベルメクチンおよび免疫抑制剤ラパマイシンのような他のマクロライドは同様な様式で合成される。これらの化合物を生産する細菌では、抗生物質生合成はI型ポリケチドシンターゼ(PKS)の幾つかの大変大きな多機能性タンパク質により触媒される(非特許文献6;7;8)。ポリペプチドと一緒に、各々が成長しているポリケチド鎖に特異的なアシル−CaA前駆体を付加し、そして特異的な様式でβ−ケト基を修飾するイニシエーターモジュール(initiator module)および幾つかのエクステンダーモジュール(extender module)からなる複合体を形成する(図1A)。したがってポリケチドの
構造はPKS中のモジュールの組成および順序により決定される。モジュールは幾つかのドメインを含んでなり、その各々が特別な機能を行う。イニシエーターモジュールは前駆体からアシルキャリアータンパク質(ACP)ドメインへアシル基を付加するためのアシルトランスフェラーゼ(AT)ドメインからなる。またイニシエーターモジュールはKSQドメインも含み、これはβ−ケトシンターゼ(KS)ドメインに高度に類似するが、必須の活性部位シテインがグルタミンに置き換えられたので(非特許文献9)、KSQはもはや縮合活性をもたない。KSQドメインはデカルボキシラーゼ活性を保持し、そしてイニシエーターモジュールの前駆体特異性を決定する。エクステンダーモジュールはATおよびACPドメインを、脱カルボキシル的縮合により既存のポリケチド鎖を新たなアシル−ACPに付加する完全なβ−ケトシンターゼ(KS)ドメインと一緒に含む。さらなるドメインも各エクステンダーモジュール中に存在して特異的なβ−ケト修飾を行うことができる:β−ケト基をヒドロキシル基に還元するβ−ケトレダクターゼ(KR)ドメイン、ヒドロキシル基を除去し、そして二重結合を残すデヒドラターゼ(DH)ドメイン、および二重結合を還元し、そして飽和炭素を残すエノイルレダクターゼ(ER)ドメイン。最後のエクステンダーモジュールは、大環式ラクトンの形でPKS酵素からポリケチドを遊離するチオエステラーゼ(TE)ドメインで終結する。ポリケチド合成酵素は一般に、3−7の大きなオープンリーディングフレイムによりコードされる(非特許文献6;7;8)。機能的ポリケチドシンターゼの集成にはこれらタンパク質間の特異的なタンパク質−タンパク質相互作用が必要である。
【0019】
活性なマクロライド抗生物質は、メチル化のようなさらなる修飾、そして還元状態の変化、および普通ではない糖の付加により大環式ラクトンから誘導される。これらの修飾、および糖の合成および付加に必要な遺伝子のほとんどがPKS遺伝子の周りに集まっている。デオキシ糖生合成酵素をコードする遺伝子は、エリスロマイシンおよびタイロシンのようなマクロライド抗生物質の生産体中(非特許文献5;10)、およびサルモネラ(Salmonella)およびエリシニア(Yersinia)のO−抗原のような細胞外多糖の生産体中の遺伝子に類似する(非特許文献11;12)。すべてのこれらの合成には二リン酸ヌクレオチドの付加によるグルコースの活性化、続いて脱水、還元および/またはエピ化が関与する。生成したデオキシ−糖は脱酸素化、アミノ基転移およびメチル化のような1以上のさらなる修飾を受けることができた。糖は特異的なグリコシルトランスフェラーゼの作用によりマクロライド中に包含される。糖の合成および付加に関与する遺伝子は強固に集まるか−たとえ1つのオペロンとして転写されても−、またはそれらは分散さていてもよい(非特許文献7;13;14)。
【0020】
本明細書では以下の用語を以下に定義するように使用する:
a.a.−アミノ酸。
【0021】
AmR−アプラマイシン耐性−付与遺伝子。
【0022】
ACP−アシルキャリアータンパク質ドメイン。
【0023】
AT−アシルトランスフェラーゼドメイン。
【0024】
ブロック(blocked)突然変異体−前駆体または分岐(shunt)産物が生産されるように、生合成経路の特異的酵素の機能を遮断する突然変異を有する突然変異株。
【0025】
bp−塩基対。
【0026】
bus−ブテニル−スピノシン生合成遺伝子
【0027】
ブテニル−スピノシン−特許文献9および8に開示されたA83543スピノシン(表
1)とは構造的に異なる発酵産物、またはブテニル−スピノシン遺伝子のすべてまたはほとんどを利用する微生物により生産される類似の大環式ラクトン発酵産物。
【0028】
ブテニル−スピノシン遺伝子−ブテニル−スピノシン生合成に必要な産物をコードするDNA配列、より具体的にはこれから記載する遺伝子busAbusBbusCbusDbusEbusFbusG、busHbusIbusJ、busKbusL、busMbusNbusObusPbusQbusRおよびbusSまたはそれらの機能的均等物。
【0029】
クローニング−DNAのセグメントを組換えDNAクローニングベクターに包含し、そして組換えDNAを含む細胞で宿主細胞を形質転換するプロセス。
【0030】
コドン偏向(bias)−アミノ酸を特定するために特定のコドンを使用する傾向。サッカロポリスポラ種(Saccharopolyspora sp.)LW107129(NRRL30141)の場合には、この傾向は第3塩基としてシトシンまたはグアニンを有するコドンを使用することである。
【0031】
相補−クローン化した遺伝子により突然変異株をその正常な表現型へ回復すること。
【0032】
接合−遺伝材料が1つの細菌細胞から別の細胞へ移るプロセス。
【0033】
cos−バクテリオファージラムダの付着末端配列。
【0034】
コスミド−プラスミドと同じ様式で宿主細胞中で複製できるだけでなく、ファージの頭にパッケージングされることもできる組換えDNAクローニングベクター。
【0035】
DH−デヒドラターゼドメイン。
【0036】
ER−エノイルレダクターゼドメイン。
【0037】
遺伝子−ポリペプチドをコードするDNA配列。
【0038】
ゲノムライブラリー−特定の生物中の実質的にすべてのDNA配列を表すDNAのセグメントがクローン化された1組の組換えDNAクローニングベクター。
【0039】
相同性−配列間の類似性の程度。
【0040】
ハイブリダイゼーション−2つの一本鎖DNA分子をアニーリングして二本鎖DNA分子を形成するプロセス、この二本鎖DNA分子は完全に塩基対を形成してもしなくてもよい。
【0041】
インビトロパッケージング−感染によりDNAを宿主細胞に導入することができるウイルス様粒子を生産するための、コートタンパク質中のDNAのインビトロカプセル化。
【0042】
kb−キロ塩基対。
【0043】
KR−β−ケトレダクターゼドメイン。
【0044】
KS−ケトシンターゼドメイン。
【0045】
突然変異誘発−DNA配列中の変化の作成。それらは不規則であるか、または標的化することができ、インビボまたはインビトロで作成することができる。突然変異はサイレントであるか、またはタンパク質の特性を改変させ、そして突然変異の表現型を生じる翻訳産物のアミノ酸配列に変化をもたらすことができる。
【0046】
ORF−オープンリーディングフレイム。
【0047】
ori−複製(oriR)または転移(oriT)のプラスミド起点
【0048】
%同一性−2つの配列を比較した時、BLASTプログラムにより与えられる同一性の%値。
【0049】
%類似性−2つの配列を比較した時、BLASTプログラムにより与えられる類似性の%値。
【0050】
PCR−ポリメラーゼ連鎖反応−DNAの領域を特異的に増幅する方法。
【0051】
PKS−ポリケチドシンターゼ。
【0052】
プロモーター−転写の開始を支配するDNA配列。
【0053】
組換えDNAクローニングベクター−任意の自律複製または組込み作用物質(agent)、限定するわけではないが1以上のさらなるDNA分子を加えることができる、または加えたDNA分子を含んでなるプラスミドを含む。
【0054】
組換えDNA法−組換えDNAベクターにクローン化されるDNAセグメントの作成、特性決定および修飾に使用する技術。
【0055】
制限フラグメント−1以上の制限酵素の作用により作成される任意の直線状DNA分子
【0056】
スピノシン−A83543としても知られる発酵産物、典型的にはC−21に1−2炭素鎖を含む12−員の大環式ラクトン、中性糖(ラムノース)およびアミノ糖(ホロサミン)に縮合した5,6,5−三環式環系、あるいはA83543スピノシン遺伝子の全部またはほとんどを利用して微生物により生産された類似の大環式ラクトン発酵産物。
【0057】
スピノシン遺伝子−A83543スピノシン生合成に必要な産物をコードするDNA配列、より具体的には今後記載するような遺伝子spnAspnBspnCspnDspnEspnFspnGspnHspnIspnJspnKspnLspnMspnNspnOspnPspnQspnRspnSS.spinosa gttS.spinosa gdhS.spinosa epiおよびS.spinosa kreまたはそれらの機能的均等物。
【0058】
spn−A83543スピノシン生合成遺伝子。
【0059】
サブクローン−等しいサイズまたはより大きい別のDNAに由来する挿入DNAを含むクローニングベクター。
【0060】
TE−チオエステラーゼドメイン。
【0061】
接合完了体−接合交配に由来する組換え株。
【0062】
【特許文献1】米国特許第5,362,634号明細書
【特許文献2】米国特許第5,202,242号明細書
【特許文献3】米国特許第5,840,861号明細書
【特許文献4】米国特許第5,539,089号明細書
【特許文献5】米国特許第5,767,253号明細書
【特許文献6】米国特許第6,143,526号明細書
【特許文献7】国際公開01/19840第号パンフレット
【特許文献8】米国特許出願第60/277,601号明細書
【特許文献9】米国特許出願第09/661,065号明細書
【特許文献10】米国特許仮出願第60/277,546号明細書
【非特許文献1】Kirst,H.A.,K.H.Michel,J.W.Martin,L.C.Creemer,E.H.Chino,R.C.Yao,W.M.Nakatsukasa,L.D.Boeck,J.L.Occolowitz,J.W.Paschal,J.B.Deeter,N.D.Jones and G.D.Thompson.(1991)Tetrahedron Lett.32:4839−4842.
【非特許文献2】Baltz,et al.,1997
【非特許文献3】Baltz,R.H.,M.C.Broughton,K.P.Crawford,K.Madduri,D.J.Merlo,P.J.Treadway,J.R.Turner and C.Waldron(2000)米国特許第6,143,526号明細書
【非特許文献4】Weber,J.M.& J.B.McAlpine(1992)米国特許第5,141,926号明細書
【非特許文献5】Donadio,S.,J.B.McAlpine,P.S.Sheldon,M.Jackson & L.Katz(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA.90:7119−7123
【非特許文献6】Donadio,S.,M.J.Staver,J.B.McAlpine,S.J.Swanson & L.Katz(1991)Science 252:675−679
【非特許文献7】Ikeda,H.,T.Nomoniya,M.Usami,T.Ohta and S.Omura(1999)Proc.Nat.Acad.Sci.USA.96:9509−9514.
【非特許文献8】Schwecke,T.,J.F.Aparicio,L Molnar,A.Konig,L.E.Khaw,S.F.Haydock,.M.Oliynyk,P.Caffrey,J.Cortes,J.B.Lester,G.A.Bohm,J.Staunton and P.F.Leadlay(1995)Proc.Nat.Acad.Sci.USA 92:7839−7843
【非特許文献9】Bisang,C.,P.F.Long,J.Cortes,J.Westcott,J.Crosby,A−L.Matharu,R.J.Cox,T.J.Simpson,J.Staunton and P.F.Leadlay(1999)Nature 401:502−502−505
【非特許文献10】Merson−Davies,L.A.and E.Cundeliffe(1994)Mol Microbiol.13:349−355
【非特許文献11】Jiang,X.M.,B.Neal,F.Santiago,S.J.Lee,L.K.Romana & P.R.Reeves(1991)Mol.Microbiol.5:695−713
【非特許文献12】Trefzer,A.,J.A.Salas and A.Bechthold(1999)Nat.Prod.Rep.16:283−299
【非特許文献13】Shen,B.,W.Liu,S.D.Christianson and S.Standage(2000)国際公開第00/40596号パンフレット
【非特許文献14】Aguirrezabalaga et al.,1998.
【発明の開示】
【0063】
ブテニル−スピノシン生合成遺伝子および関連するORFはクローン化され、そして各々のDNA配列が決定された。クローン化された遺伝子およびORFは今後、busAbusBbusCbusDbusEbusFbusG、busHbusIbusJbusKbusL、busM、busNbusObusPbusQbusRbusS、ORF LI、ORF LII、ORF LIII、ORF LIV、ORF LVI、ORF LVII、ORF LVIII、ORF LIX、ORF
RI、ORF RIIおよびORFRIIIと命名する。スピノシン生合成においてクローン化された遺伝子の提案された機能を図1で確認し、そしてこれから検討する。
【0064】
本発明の1つの観点では、ブテニル−スピノシン生合成酵素をコードするDNA配列を含んでなる単離されたDNA分子を提供し、ここで該酵素は配列番号3−7および8−29からなる群から選択されるアミノ酸配列により定められるか、あるいは該酵素はコードされる酵素の機能的特性に実質的に影響を及ぼさなかった1以上のアミノ酸置換がなされた該アミノ酸配列の1つにより定められる。好適な態様では、DNA配列はbusAbusBbusCbusDbusE、ORF RI、ORF RII、ORF RIII、busFbusG、busHbusIbusJ、busKbusL、busM、busNbusObusPbusQbusRbusS、ORF LI、ORF LII、ORF LIII、ORF LIV、ORF LVI、ORF LVII、ORF LVIIIおよびORF LIXからなる遺伝子群から選択され、該遺伝子がそれぞれ配列番号1の塩基1−13032、13059−19505、19553−29053、29092−43890、43945−60636、62090−63937、65229−66602および68762−69676、ならび配に列番号2の114−938、1389−2558、2601−3350、3362−4546、4684−6300、6317−7507、7555−8403、8640−9569、9671−10666、10678−12135、12867−14177、14627−15967、16008−17141、17168−17914、18523−19932、19982−20488、20539−21033、21179−21922、22674−23453、23690−24886、26180−26923および27646−28473により記載される。
【0065】
本発明の別の観点では、KSi、ATi、ACPi、KSb、ATb、KRb、DHb、ACPb、KS1、AT1、KR1およびACP1から選択されるブテニル−スピノシンPKSドメインをコードするDNA配列を含んでなる単離されたDNA分子を提供し、該ドメインはそれぞれ配列番号3のアミノ酸7−423、528−853、895−977、998−1413、1495−1836、1846−2028、2306−2518、2621−2710、2735−3160、3241−3604、3907−4086および4181−4262により記載される。好適な態様では、DNA配列は配列番号1の16−1269、1582−2559、2683−2931、2992−4239、4483−5508、5538−6084、6916−7554、7861−8130、8203−9480、9721−10812、11719−12258および12541−12786からなる群から選択される。
【0066】
本発明の別の観点では、KS2、AT2、DH2、ER2、KR2およびACP2から選択されるスピノシンPKSドメインをコードするDNA配列を含んでなる単離されたDNA分子を提供し、該ドメインはそれぞれ配列番号4のアミノ酸1−421、534−964、990−1075、1336−1681、1685−1864および1953−2031により記載される。好適な態様ではDNA配列は配列番号1の塩基13059−14321、14658−15900、16026−16283、17064−18100、18111−18650および18915−19151からなる群から選択される。
【0067】
本発明の別の観点では、KS3、AT3、KR3、ACP3、KS4、AT4、KR4およびACP4から選択されるスピノシンPKSドメインをコードするDNA配列を含んでなる単離されたDNA分子を提供し、該ドメインはそれぞれ配列番号5のアミノ酸1−421、528−814、1157−1335、1422−1503、1526−1949、2063−2393、2697−2877および2969−3049により記載される。好適な態様ではDNA配列は配列番号1の塩基19553−20815、21143−22000、23021−23557、23816−24061、24128−25399、25739−26731、27641−28183および28457−28699からなる群から選択される。
【0068】
本発明の別の観点では、KS5、AT5、DH5、KR5、ACP5、KS6、AT6、KR6、ACP6、KS7、AT7、KR7およびACP7から選択されるスピノシンPKSドメインをコードするDNA配列を含んでなる単離されたDNA分子提供し、該ドメインはそれぞれ配列番号6のアミノ酸1−422、537−864、891−1076、1382−1563、1643−1724、1746−2170、2281−2611、2914−3093、3186−3267、3289−3711、3823−4151、4342−4636および4723−4804により記載される。好適な態様ではDNA配列は配列番号1の塩基29092−30357、30700−31683、31762−32319、33235−33780、34018−34263、34327−35601、35932−36924、37831−38370、38647−38892、38956−40224、40560−41544、42115−42999および43258−43503からなる群から選択される。
【0069】
本発明の別の観点では、KS8、AT8、DH8、KR8、ACP8、KS9、AT9、DH9、KR9、ACP9、KS10、AT10、DH10、KR10、ACP10およびTE10から選択されるスピノシンPKSドメインをコードするDNA配列を含んでなる単離されたDNA分子を提供し、該ドメインがそれぞれ配列番号7のアミノ酸1−424、530−848、885−1072、1371−1554、1650−1728、1751−2175、2289−2616、2642−2775、3131−3315、3396−3474、3508−3921、4036−4366、4389−4569、4876−5054、5148−5229および5278−5531により記載される。好適な態様ではDNA配列は配列番号1の塩基43945−45216、45532−46488、46597−47160、48055−48606、48892−49083、49195−50469、50809−51792、51868−52269、53335−53889、54130−54366、54466−55707、56050−57042、57109−57651、58570−59106、59386−59631および59776−60537からなる群から選択される。
【0070】
本発明の別の観点では、配列番号3のアミノ酸6−977、配列番号3の998−2710、配列番号3の2735−4262、配列番号4の1−2031、配列番号5の1−1503、配列番号5の1526−3049、配列番号6の1−1724、配列番号6の1746−3267、配列番号6の3289−4804、配列番号7の1−1728、配列番号7の1751−3474および配列番号7の3508−5531からなる群から選択されるスピノシンPKSモジュールをコードするDNA配列を含んでなる単離されたDNA分子を提供する。好適な態様ではDNA配列は配列番号1の塩基16−2931、2992−8130、8203−12786、13059−19151、19553−24061、24128−28699、29092−34263、34327−38892、38956−43503、43945−49083、49195−54366および54466−60537からなる群から選択される。
【0071】
本発明の別の観点では、上記の本発明のDNA配列を含んでなる組換えDNAベクターを提供する。
【0072】
本発明の別の観点では、上記の本発明の組換えベクターで形質転換した宿主細胞を提供する。
【0073】
本発明の別の観点では、
1)組換えDNAベクターまたはそれらの部分で、生合成経路によりブテニルスピノシンまたはブテニル−スピノシン前駆体を生産する微生物を形質転換し、該ベクターまたはそれらの部分は該経路の律速である活性の発現をコードする上記のような本発明のDNA配列を含んでなり、そして
2)該ベクターで形質転換した該微生物を、細胞の成長および分裂、該DNA配列の発現およびスピノシンの生産に適する条件下で培養する、
工程を含んでなるスピノシン−生産微生物のスピノシン−生産能を上げる方法を提供する。
【0074】
本発明の別の観点では、作動性のブテニル−スピノシン生合成遺伝子を有するスピノシン生産微生物を提供し、ここで少なくとも1つのブテニル−スピノシン生合成遺伝子busAbusBbusCbusDbusEbusFbusG、busHbusIbusJ、busKbusLbusMbusNbusObusPbusQbusRおよびbusSが複写されている(duplicated)。
【0075】
本発明の別の観点ではゲノムにブテニル−スピノシン生合成遺伝子を有するブテニル−スピノシン生産微生物を提供し、該遺伝子の少なくとも1つが不活性化され、該遺伝子の残りは破壊された遺伝子が作動できるならば生産されるブテニル−スピノシン以外のブテニル−スピノシンを生産するように作動できる。好ましくは微生物はサッカロポリスポラ種(Saccharopolyspora sp.)LW107129(NRRL30141)またはS.スピノサ(spinosa)の突然変異体である。より好ましくは微生物はサッカロポリスポラ種(Saccharopolyspora sp.)LW107129(NRRL30141)の突然変異体である。
【0076】
また本発明は通常はブテニル−スピノシンを生産しない生物中のブテニル−スピノシン生合成遺伝子の発現も提供する。遺伝子は自然なbus遺伝子プロモーターの下、または受容体株と適合性があるヘテロロガスなプロモーターに由来するプロモーターの下で発現され得る。好ましくは生物はスピノシン−様化合物を生産することができる。より好ましくは微生物はS.スピノサ(spinosa)またはそれらの誘導体である。
【0077】
本発明はゲノムに作動できるブテニル−スピノシン生合成遺伝子を有するブテニル−スピノシン生産微生物も提供し、ここで該遺伝子a)は配列番号1に存在するより多い、または少なくとも1つ少ない、少なくとも1つの作動性PKSモジュールを含むか;あるいはb)KR、DHまたはERドメインの削除、不活性化または付加により、あるいはATドメインの置換により配列番号1に記載された対応するモジュールとは異なるPKSモジュールを含む。好ましくは微生物はサッカロポリスポラ種(Saccharopolyspora sp.)LW107129(NRRL30141)の突然変異体である。
【0078】
本発明は本発明の新規微生物の培養により生産されるブテニル−スピノシンも提供する。
【0079】
本発明の別の観点では、ブテニル−スピノシン生産微生物のゲノムライブラリーを作成
し、そしてハイブリダイゼーションプローブとして少なくとも20塩基長である配列番号1または配列番号2の標識フラグメントを使用することを含んでなる、ブテニル−スピノシン生合成遺伝子の単離法を提供する。
【0080】
当業者はタンパク質の機能性を実質的に変化させることなく特許請求するアミノ酸配列に置換を作成することができると理解するだろう。本発明はそのような変異体アミノ酸配列および変異体をコードするDNA配列を包含する。好適なアミノ酸配列は、天然のアミノ酸配列と実質的に同じ機能性を有し、そして少なくとも98%同一である配列である。
【0081】
<発明の詳細な説明>
ブテニル−スピノシン遺伝子の特性決定および利用の先行条件として、この昆虫防除剤の生合成に関与する酵素をコードする遺伝子を単離し、そして特性決定することが必要である。以下の実施例1に記載するこの取り組には、ゲノムコスミドライブラリーの構築、そして続いてDNA−ハイブリダイゼーションを介したスクリーニングが含まれる。
【実施例1】
【0082】
a.サッカロポリスポラ種(Saccharopolyspora sp.)LW107129(NRRL30141)に由来する全細胞DNAの単離
サッカロポリスポラ種(Saccharopolyspora sp.)LW107129(NRRL30141)は、500−mLのエルレンマイヤーフラスコ中の100mLの栄養培地(9.0g/L デキストロース、30g/L トリプチカーゼソイブロス(trypticase soy broth)、3.0g/L 酵母エキス、2.0g/L 硫酸マグネシウム7HO)に接種し、そして150rpmで振盪しながら30℃で72時間インキューベーションした。この培養物を10分間、3,000rpm/4℃で遠心して細胞をペレットにした。上清の流体を取り出し、そして細胞ペレットを20mLのTEバッファー(10mM Tris/HCl pH8.0;1mM EDTA pH8.0)で洗浄した。細胞を再度3,000rpmで遠心し、そしてペレットは全細胞DNAを単離するために解凍するまで−20℃に凍結した。
【0083】
全細胞DNAはゲノムDNA精製キット(キアジェン社(Qiagen Inc.)、バレンシア、カリフォルニア州)を使用してサッカロポリスポラ種(Saccharopolyspora sp.)LW107129(NRRL30141)から単離した。100mLのカルチャーからの凍結した細菌細胞ペレットは、11μlのキアジェンRnase A溶液(100mg/ml)を含む11mlのバッファーB1(50mM Tris/HCl、pH8.0;50mM EDTA,pH8.0;0.5% Tween20、0.5% TritonX−100)にボルテックス混合することにより再懸濁した。この懸濁液に300μlのリゾザイム(100mg/ml;シグマケミカル社(Sigma Chemical Co.)、セントルイス、ミズーリ州)保存溶液および500μlのプロティナーゼK(50mg/ml;シグマケミカル社)保存溶液を加えた。懸濁液をボルテックス処理することにより混合し、そして37℃で30分間インキューベーションした。4mlのバッファーB2(3MグアニジンHCl;20%Tween20)を細菌溶解物に加え、そして溶液は管をゆるやかに逆さにすることにより混合した。細菌溶解物は50℃で30分間インキューベーションした。全細胞DNAはキアジェンGenomic−tip500/Gチップを製造元の使用説明に従い使用して細菌溶解物から単離した。生じた精製DNAを5mLのTEバッファーに溶解し、そして4℃で保存した。
【0084】
b.ゲノムコスミドライブラリーの構築
サッカロポリスポラ種(Saccharopolyspora sp.)LW107129(NRRL30141)から単離した全細胞DNAは、Ausubel,et al.の第3.1.3章(分子生物学の現在の手法(Current Protocols in Molecular Biology)、ジョンウィリー アンド サンズ社(John Wiley and Sons Inc.)ニューヨーク、ニューヨーク州)に基づきSau3AIで部分消化した。小規模(80μlの反応容量中の40μgの全細胞DNA)反応を行って、25〜50Kbサイズの範囲の部分消化したDNAフラグメントの最大濃度をもたらす全細胞DNAに対して正しい酵素の比率を決定した。反応物は65℃で15分間加熱してSau3AI酵素を不活性化し、そして反応のアリコートを0.3%アガロースゲルでの電気泳動で分析して所望するサイズの範囲中の部分消化DNAフラグメントの相対的量(abundance)を決定した。いったん全細胞DNAに対して最適な酵素の比が観察されたら、コスミドライブラリーの構築に挿入DNAとして使用するために反応容量を増して十分な量の部分消化した全細胞DNAを得た。典型的な規模の反応は、9単位のSau3AI(ギブコ(Gibco)BRL、ゲチスバーグ、メリーランド州)と37℃で15分間、800μlの全容量の1×React4バッファー(10×で製造元より供給される)中でインキューベーションした400μgのサッカロポリスポラ種(Saccharopolyspora sp.)LW107129(NRRL30141)全細胞DNAであった。反応物を65℃で20分間加熱して酵素を不活性化した。部分消化したゲノムDNAを等容量の平衡化フェノール−クロロホルム(50:50;容量/容量)溶液と混合し、そしてゆるやかに逆さにすることにより混合した。14,000×gで15分間遠心した後、水性相を取り出し、そして等容量のクロロホルム−イソアミルアルコール(24:1;容量/容量)溶液と混合した。ゆるやかに逆さにすることにより2つの相を混合した後、溶液を14,000×gで15分間遠心した。水性相を新しい試験管に取り出し、そして0.1容量の3M酢酸ナトリウム(pH5.2)を加えた。2容量の氷冷100%エタノールを加え、そして溶液は逆さにすることにより混合した。DNAを沈殿させるために、サンプルを−70℃に一晩置いた。沈殿したDNAを14,000×gで20分間遠心することによりペレットとした。DNAペレットを50μlの二重蒸留水に再懸濁し、そして−20℃で保存した。
【0085】
コスミドライブラリーの構築に使用するベクターは、選択のためにアプラマイシン耐性遺伝子を含むpOJ436(図3)であった。コスミドベクターDNAの自身への再連結を最少とするために、BamHIで消化したpOJ436DNAは、消化したDNAを20単位のエビのアルカリホスファターゼ(ロッシュ/ベーリンガーマンハイム(Roche/Boehringer Mannheim)、インディアナポリス、インディアナ州)と、37℃で2時間、全容量1.2mlの1×SAPバッファー(製造元により10×で供給される)中でインキューベーションすることにより脱リン酸化した。Sau3AI消化ゲノムDNAは、脱リン酸化したpOJ436のBamHI部位に連結し、そして5:1の比率の部分消化した挿入物を使用してベクターDNAに連結した。この反応のために、挿入物およびベクターDNAを20単位のT4DNAリガーゼ(ニューイングランドバイオラボズ社(New England BioLabs Inc.)、ビバリー、マサチューセッツ州)と、16℃で1×T4 DNAリガーゼバッファー(10×として製造元から供給される)中で一晩インキューベーションした。連結混合物をGigapackIII Gold Packaging Extract(ストラタジーン(Stratagene)、ラジョラ、カリフォルニア州)を使用してパッケージングし、そして組換えファージは大腸菌(Escherichia coli)DH5α−MRC細胞株(ギブコBRL)を使用して製造元の使用説明に記載されているように滴定した。アリコート(20〜40μl)の組換えファージおよび宿主細胞培養物を、アプラマイシン(100mg/l、シグマケミカル社)を含むLB寒天上(10g/l Bacto−トリプトン、10g/l NaCl、5g/l Bacto−酵母エキス、15g/l Bacto−寒天;ディフコラボラトリーズ(Difco Laboratories)にまき、そして37℃で一晩インキューベーションした。冷凍庫で保存するためのコスミドライブラリーのマスタープレートを構築するために、1つのコロニーを滅菌した楊枝で取り上げ、そして250μlのテリフィックブロス(Terrific Broth)(TB培地:12g/l Bacto−トリプトン、24g/l Bacto−酵母エキス、0.4容量/容量%グリセロール、17mM KHPO、72mM KHPO)を含み、100mg/lアプラマイシンを補充した滅菌96−ウェルマイクロウェルプレートの個々のウェルに接種し、そして振盪せずに一晩、37℃でインキューベーションした。マスタープレートからコピープレートを作成するために、96−ウェルマイクロプレートのレプリケーター(V&Pサイエンティフィック社(Scientific,Inc.)、サンディエゴ、カリフォルニア州)を使用して、100mg/lのアプラマイシンを含有する250μlのTB培地を含む滅菌96−ウェルマイクロウェルプレートに接種した。コピープレートは振盪せずに一晩、37℃でインキューベーションした。
【0086】
マスターおよびコピープレートの両方について、7(容量/容量)%のジメチルスルフォキシド溶液をプレートに加え、そして培養物をマルチチャンネルピペットを使用して混合した。プレートは保存のために−70℃に置いた。
【0087】
選択した組換えコスミドの平均挿入サイズは、NucleoSpin核酸精製キット(クローンテック ラボラトリーズ社(CLONETECH Laboratories,Inc.)、パロアルト、カリフォルニア州)を使用してコスミドDNAを単離し、そして回収したDNAを20単位の制限酵素EcoRI(ニューイングランド バイオラボス)を用いて37℃で1時間消化することにより評価した。制限処理DNAは1.0%アガロースゲル中での電気泳動により分析した。DNAフラグメントは0.5%エチジウムブロミド(シグマケミカル社)染色後にUV光を用いて視覚化し、そしてフラグメントの相対的サイズを1kb DNAラダー(ギブコBRL)との比較により推定した。構築されたコスミドライブラリーの挿入サイズは20Kb−40Kbの範囲であった。
【0088】
c.コスミドライブラリーのスクリーニングおよびブテニル−スピノシン生合成遺伝子を含むコスミドの同定
代表的な各大腸菌(E.coli)コスミドクローンは、96−ウェルマイクロプレートレプリケーター(V&Pサイエンティフィック社)を使用して、HybondN+(アマーシャム ファルマシア バイオテック(Amersham Pharmacia Biotech)、ピスカタウェイ、ニュージャージー州)核酸結合膜上に二重に接種した。膜は100mg/Lのアプラマイシンを補充したLB寒天プレート上で支持し、そして37℃で一晩インキューベーションした。膜を製造元のプロトコールに従い処理した。接種した膜はコロニー側を上にして0.5N NaOHで1分間飽和させた3MM−フィルターペーパー(ワットマン(Whatman)、クリフトン、ニュージャージー州)に置いた。フィルターは1M Tris−HCl、pH7.6で1分間飽和させた3MM−フィルターペーパーに移してDNAを変性させた。膜は1M Tris−HCl、pH7.6/1.5M NaClで1分間飽和させた3MM−フィルターペーパーに移すことにより中和した。最後の洗浄は1M Tris−HCl、pH7.6/1.5M NaClの溶液中で行い、ここで残りのコロニー屑を膜から除去した。DNAはUVStratalinker1800(ストラタジーン)を使用して1200マイクロジュールで膜に架橋結合させた。
【0089】
このように調製した組換え細菌のライブラリーは、S.スピノサ(spinosa)に由来するspn遺伝子に基づく3つの放射能標識したDNAプローブに対して相同性をスクリーニングした(Baltz et al.,2000;表2)。オリゴヌクレオチド対を使用してポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を通してspn生合成遺伝子クラスターに特異的なヌクレオチド領域を増幅した。オリゴヌクレオチドプライマーは394DNA/RNA合成器(アプライドバイオシステムズ/パーキンエルマー(Applied Biosystems/PerkinElmer)、フォスターシティ、カリフォルニア州)を使用して合成し、そして表2に掲げる。PCR反応はAmpliTaq(商標)DNA
ポリメラーゼキット(パーキンエルマー/ロッシュ、ブランチバーグ、ニュージャージー州)を使用して製造元のプルトコールに従い行った。DNAフラグメントは48−サンプルDNA熱循環器(パーキンエルマーシータス(Perkin Elmer Cetus))中で以下の循環条件下で増幅した:1)94℃、1分;55℃、2分;72℃、3分;25循環 2)72℃、10分;1循環。増幅した産物は0.1%アガロースゲル電気泳動を使用して分析し、そして適切なサイズに対応するバンドをキアジェンIIゲル抽出キット(キアジェン社)を利用して製造元の指示に従いゲル−抽出した。
【0090】
【表4】

【0091】
膜は放射能標識プローブを加える前に65℃で3時間、6×SSC(52.59g/L
NaCl、24.66g/L クエン酸ナトリウム、10N NaOHでpHを7.0に調整)、0.1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、10×デンハーツ溶液(50mg/L Ficoll[400型、ファルマシア]、5.0mg/L ポリビニルピロリドン、5.0mg/L ウシ胎児血清アルブミン)、100μg/mlの変性サケ精子からなる300mlのプレ−ハイブリダイゼーション溶液中でインキューベーションした。
【0092】
DNAフラグメントの濃度は、すべてのプローブについて25ngに調整し、沸騰水浴中で10分間変性させ、そして4μlのHigh Prime反応混合物(ベーリンガーマンハイム)を製造元のプロトコールに従い使用して、50μCi[α32]dCTP、3000Ci/mMOlでランダム−プライム標識した。放射能標識したDNAプローブから非包含ヌクレオチドの分離は、NucTrap Pushカラム(ストラジーン)を使用して行い、そして沸騰水浴中で10分間変性させた後、プレ−ハイブリダイゼーション膜に添加した。すべてのDNAハイブリダイゼーションのために約2.0×10cpmを膜に加えた。すべてのプローブに関するハイブリダイゼーション条件は、65℃の振盪水浴中で16時間であった。
【0093】
放射能標識したプローブspnFspnSおよびspnE(TE)を含むハイブリダイゼーション溶液をデカントし、そして各組の膜を中程度のストリンジェンシー条件下で洗浄した:1)15分、室温で300mlの3×SSC/0.5%SDS中;2)30分、65℃にて300mlの新たな3×SSC/0.5%SDS中で振盪;3)30分、室温で300mlの1×SSC/0.5%SDS。サッカロポリスポラ種(Saccharopolyspora sp.)LW107129(NRRL30141)コスミド9D3配列に由来する放射能標識プローブでスクリーニングした膜を、ストリンジェントな条件下で洗浄した:1)30分、65℃で300mlの新たな1×SSC/0.5%SDS中で振盪;2)30分、65℃にて300mlの新たな0.33×SSC/0.5%SDS中で振盪;3)30分、65℃にて300mlの新たな0.1×SSC/0.5%SDS中で振盪。フィルターは手で持つGeiger−Muellerカウンターを使用してモニタリングして、バックグラウンドの同位体検出が最少であるかどうかを測定した。膜を3MMフィルターペーパー上にのせ、そしてプラスチックラップで覆い、そしてx−線フィルムに暴露した。膜はフィルムに−70℃で24〜72時間暴露した後、現像した。
【0094】
推定上の陽性コスミドクローンは、さらに制限エンドヌクレアーゼ消化分析およびコスミドベクターからエンド−シークエンシングを介して特性決定した。コスミドDNAはNucleoSpin核酸精製キット(クローンテックラボラトリーズ社、パロアルト、カリフォルニア州)を使用して単離し、そして20単位の制限酵素EcoRI(ニューイングランドバイオラボズ)で37℃にて1時間消化した。制限処理したDNAを1.0%アガロースゲルで電気泳動した。DNAフラグメントは0.5%エチジウムブロミド染色後にUV光で視覚化し、そしてフラグメントの相対的サイズを1KbのDNAラダーと比較することにより推定した。さらにコスミド/ベクター連結部から、Burgett and Rosteck(1994)の方法に従い蛍光サイクルシークエンシングによりサッカロポリスポラ種(Saccharopolyspora sp.)LW107129(NRRL30141)ヌクレオチド配列を得た。シークエンシング反応は377ABIPrim(商標)シークエンサー(アプライドバイオシステムズ社)を用いた96℃、30秒;50℃ 15秒;60℃、4分;を25循環の熱循環条件下で、3μl(2μgの精製コスミドDNA)鋳型、1μlのユニバーサルプライマー(4pmole)または逆プライマー(4pmole)、8μlBig Dye(商標)反応混合物、1μlDMSO、7mlHOからなった。
【0095】
8つのコスミドクローンがS.スピノサ(spinosa)プローブspnSspnFおよびspnE(TE)に陽性にハイブリダイズすると同定された。コスミド8H3はspnSおよびspnFプローブの両方にハイブリダイズした2つのクローンのうちの1つであった。コスミド9D3はspnFプローブにのみハイブリダイズした3つのクローンの1つであった。コスミド10C1はspnE(TE)プローブのみにハイブリダイズした3つのクローンのうちの1つであった。コスミド9F4は、コスミド9D3(配列番号1の塩基297477−30163)からコスミド/ベクター末端のヌクレオチドシークエンシングを介して解明された、サッカロポリスポラ種(Saccharopolyspora sp.)LW107129(NRRL30141)に直接由来する放射能標識PCR−フラグメントへのハイブリダイゼーションによりゲノムライブラリーから同定された。コスミド9D3 DNA配列に基づき2つのプライマーを合成した(配列番号30および配列番号40)。416bpのDNAフラグメントをサッカロポリスポラ種(Saccharopolyspora sp.)LW107129(NRRL30141)ゲノムDNAから、上に詳細に記載し、そしてハイブリダイゼーションに使用したこれらのプライマーを使用して増幅した。
【0096】
コスミド8H3、9D3、9F4および10C1の完全な配列は、ファージM13(シークライト(SeqWright)、ヒューストン、テキサス州)中にクローン化したランダムDNAフラグメントの蛍光サイクルシークエンシング法により決定した。コスミド8H3および9D3中の挿入物は重複し、コスミド9D3および9F4中の挿入物は重複し、そして9F4および10C1中の挿入物は重複した。図2を参照にされたい。一緒にすると4種のコスミド挿入物は約111kbの独自な配列(配列番号1および2)に広がった。配列番号1はbusAの開始コドンおよびすべてのDNAのその3’までを含む(図2を参照)。配列番号2はbusAの開始コドンの前の塩基から始まり、そしてすべてのDNAをその塩基の5’側まで含む。以下の表3では4種の各挿入物に含まれる配列番号1および配列番号2の部分を確認する。
【0097】
【表5】

【0098】
図2は110kbの配列に対する4種の挿入物の関係のグラフ表示を与える。
【0099】
PKS遺伝子
配列番号1は既知のマクロライド生産体であるポリケチドシンセターゼをコードするDNAに目立った相同性を持つ約60kbの中央領域を含む(Donadio et al.,1991;McDaniel & Katz,2001;Dehoff et al.,1997)。ブテニル−スピノシンPKS DNA領域は、ACPドメインの末端にフレイム内終結コドンを含む5個のORFからなり、他のマクロライド生産細菌中のPKS ORFに類似する。5個のブテニル−スピノシンPKS遺伝子は頭から尾に配列され(図2を参照にされたい)、エリスロマイシンPKS遺伝子AIとAIIとの間に見いだされる挿入要素のような介入非−PKS機能は無い(Donadio et al.,1993)。このPKS遺伝子はbusAbusBbusCbusDおよびbusEと命名する。5個のスピノシンPKS遺伝子の各々に関するヌクレオチド配列および対応するポリペプチドは、以下の表4で確認する:
【0100】
【表6】

【0101】
busAはイニシエーターモジュール(配列番号1、塩基1−2931)、エクステンダーモジュールb(配列番号1、塩基2992−8130)およびエクステンダーモジュール1(配列番号1、塩基8205−13032)をコードする。イニシエーターモジュールおよびエクステンダーモジュールbおよび1内の各機能的ドメインに関するヌクレオチド配列および対応するアミノ酸配列は、以下の表5で確認する:
【0102】
【表7】

【0103】
busBはエクステンダーモジュール2(配列番号1、塩基13059−19505)をコードする。エクステンダーモジュール2内の各機能的ドメインに関するヌクレオチド配列および対応するアミノ酸配列は、以下の表6で確認する:
【0104】
【表8】

【0105】
busCはエクステンダーモジュール3(配列番号1、塩基19553−24061)およびエクステンダーモジュール4(配列番号1、塩基24128−29053)をコードする。エクステンダーモジュール3および4内の各機能的ドメインに関するヌクレオチド配列および対応するアミノ酸配列は、以下の表7で確認する:
【0106】
【表9】

【0107】
busDはエクステンダーモジュール5(配列番号1、塩基29092−34263)、エクステンダーモジュール6(配列番号1、塩基34327−38892)およびエクステンダーモジュール7(配列番号1、塩基38956−43503)をコードする。エクステンダーモジュール5、6および7内の各機能的ドメインに関するヌクレオチド配列および対応するアミノ酸配列は、以下の表8で確認する:
【0108】
【表10】

【0109】
spnEはエクステンダーモジュール8(配列番号1、塩基43945−49083)、エクステンダーモジュール9(配列番号1、塩基49195−54366)およびエクステンダーモジュール10(配列番号1、塩基54466−60707)をコードする。エクステンダーモジュール8、9および10内の各機能的ドメインに関するヌクレオチド配列および対応するアミノ酸配列は、以下の表9で確認する:
【0110】
【表11】

【0111】
前述の表7〜11で確認した55ドメインの境界および機能は、他のポリケチドシンターゼ、特にエリスロマイシンポリケチドシンターゼ中のドメインの保存されたアミノ酸配列に対する類似性に基づき予想する(Donadio et al.,1992)。A83543スピノシンPKSと同様に、busPKSはKSQドメインをイニシエーターモジュールのアミノ末端に有する。このKSQドメインはβ−ケトシンターゼ活性に必要なシステインの代わりにアミノ酸172にグルタミン残基を含むので、β−ケトシンターゼとして機能することはできない(Siggard−Andersen,1993)。KSQドメインはマロニル−ACPをデカルボキシレートするように機能し、そして連鎖開始因子であることが報告された(Bisang,et al.,1999)。他のブテニル−スピノシンPKSドメインは機能的である。それらのいずれもエリスロマイシンおよびラパマイシンPKS遺伝子中に見いだされる不活性ドメインの配列特徴をもたない(Donadio et al.,1991;Aparicio et al.,1996)。
【0112】
busBはサイズがspnBに匹敵するが、busAspnAよりも5,244bp長い。busAの最初の4245bpおよび最後の3,486bpはspnAに対する高度な類似性を有する。しかし塩基4246−9548はspnA遺伝子中の対部分をもたない。この5kb領域は5個の機能的ドメイン:KSb、ATb、DHb、KRbおよびACPbを持つさらなるモジュールをコードする。これらの機能は先行する開始ドメインと一緒にブテニル側鎖の生合成の原因であり、A83543スピノシンに対してブテニル−スピノシンの特徴である。クローン化busPKS遺伝子、busBbusCbusDおよびbusEは、同族のA83543スピノシンPKS遺伝子spnBspnCspnDおよびspnEに類似することが示された(表10)(Baltz et al.,2000)。
【0113】
【表12】

【0114】
スピノシンの生合成で同様の反応を行うタンパク質は87−93%のアミノ酸同一性を共有し、そして遺伝子は93−94%のDNA配列同一性の範囲である。spnPKS酵
素SpnB−Eおよび類似のbusPKS酵素B−Eは、酵素により行われる反応は同一であるが、基質ポリケチドが異なるので、異なる基質特異性を維持しなければならないことに注目すべきである。さらにPKS酵素の機能的PKSへの凝集には、特異的なタンパク質−タンパク質相互作用が必要である。このサブユニット分子間認識に関与する残基は未知であり、そしてS.スピノサ(spinosa)とサッカロポリスポラ種(Saccharopolyspora sp.)LW107129(NRRL30141)との間で保存されないかもしれない。
【0115】
さらなる修飾の原因であるPKSに隣接する遺伝子
PKS遺伝子(コスミド8H3にクローン化された)の上流のDNAでは、22個のオープンリーディングフレイム(ORF)があり、各々が少なくともATGまたはGTGで始まり、そしてTAA、TAGまたはTGAで終わる100コドンからなり、そしてDNAが高い割合のグアニンおよびシトシン残基を含む生物中で予想されるタンパク質−コード領域のコドンの偏りを有する(Bibb et al.,1984)。これら22個のORFは図2にグラフで表す。これから検討する証拠に基づき、ORFの14個がブテニル−スピノシン生合成遺伝子と命名された、すなわち:busFbusG、busHbusIbusJ、busKbusL、busM、busNbusObusPbusQbusRおよびbusS(図2の標識FからS)。以下の表11では、DNA配列および対応するポリペプチドのアミノ酸配列がこれら各遺伝子について、ならびにspnSの直ぐ下流で見いだされるORF(コスミド8H3中のORF LI、ORF LII、ORF LIII、ORF LIV、ORF LVI、ORF LVII、ORF
LVIIIおよびORF LIX)について確認されている。また表11で確認されるのは、PKS遺伝子(コスミド2C10)の下流のORF RI、ORF RIIおよびORF RIIに関するヌクレオチド配列およびそれらに対応するアミノ酸配列である。
【0116】
【表13】

【0117】
表11で確認されるポリペプチドに機能を割り振るために、4つの証拠筋(line)を利用した:既知の機能の配列に対する類似性、A83543スピノシン生合成遺伝子に対する類似性、標的遺伝子破壊実験の結果および生物転換(bioconversion)実験の結果。
【0118】
予想されるポリペプチドのアミノ酸配列は、ナショナル センター フォ バイオテクノロジー インフォメーション(National Center for Biotechnology Information:NCBI、ワシントン、DC)のデータベースに寄託されている配列と、BLASTアルゴリズムを使用して比較して、それらがどれくらいよく既知のタンパク質に関連しているかを決定した。NCBIデータベースのBLAST調査も周期的に繰り返して、さらなる相同性から新たな洞察を得た。表12は2001年2月18日付けの基本的BLAST調査から重要な対合を与える。
【0119】
【表14】

【0120】
busオープンリーディングフレイムはA83543スピノシン生合成遺伝子の配列(寄託番号AY007564)と直接比較した。DNAおよびタンパク質配列の両方でより高い類似性の程度は、遺伝子がスピノシンの生合成で類似の機能を行ったことを示した。表13はbusspn遺伝子との間の類似性の比較を与える。
【0121】
【表15】

【0122】
幾つかのbusおよびspn遺伝子間の高度なDNAおよびアミノ酸類似性にもかかわらず、幾つかのbus遺伝子産物はA83543スピノシンに比べて、ブテニル−スピノシンの生合成において顕著に異なる反応を触媒することに注目するべきである。これらの差異はサッカロポリスポラ種(Saccharopolyspora sp.)LW107129(NRRL30141)から単離された異なるブテニル−スピノシン化合物に現れる。開示されているすべての天然A83543スピノシンは、C−17でホロサミンまたは特異的なホロサミン異性体に置換されている(Kirst et al.,1992)。一方ブテニル−スピノシンは、C−17でより広い範囲のホロサミン異性体、ならびに天然糖様アミセトース(amicetose)、O−メチル−グルコースおよびO−メチルオレアンドロース(methyloleandrose)でも置換される。A83543スピノシンに対してこのC−17グリコシル化の多様性には、生合成酵素が糖およびグリコシルトランスフェラーゼをこれらのグリコシル化を触媒できようにする必要がある。これらの糖はbus遺伝子付近に、または染色体のいずれかに位置する特別なシンターゼ遺伝子により合成されるか、あるいはそれらは掲げたブテニル−スピノシン生合成遺伝子の別の基質特異性により合成されるのかもしれない。アミセトースはbus遺伝子クラスターの外側の遺伝子により生産されることができるか、またはホロサミンの生合成の中間体かもしれない(図4)。メチルオレアンドロースはホロサミン生合成およびラムノースO−メチルトランスフェラーゼの副産物として生産されることができた(busHbusIおよびbusK)。NDP−4−ケト−2,6−デオキシ−D−グルコースから合成することができたこの糖は、ホロサミンの生合成の中間体である。したがってこの前駆体の開示された遺伝子および他のサッカロポリスポラ種(Saccharopolyspora sp.)LW107129(NRRL30141)遺伝子によるケト還元およびO−メチル化は、メチルオレアンドロースを含むスピノシン誘導体の生合成を導くことができた(図4)。
【0123】
さらに表13に掲げた9種の遺伝子が、ブテニル−スピノシンアグリコンまたはPSAと直接相互作用する(busFbusG、busHbusIbusJbusKbusL、busMおよびbusP)。これらの遺伝子に関するアグリコンおよびPSA基質は、A83543スピノシンアグリコンおよびPSAとは異なる。したがってこれら
の遺伝子は表13に掲げたそれらのspn対に対して異なる基質特異性を有する。
【0124】
サッカロポリスポラ種(Saccharopolyspora sp.)LW107129(NRRL30141)により生産される数種のブテニル−スピノシン同族体は、C−8またはC−24でヒドロキシル化されている(表2)。マクロライドはエリスロマイシン生合成においてC−6でのヒドロキシル化のようにP−450モノオキシゲナーゼにより合成後にヒドロキシル化されることができる(Weber&McAlpine,1992)。ORF LVIIはP−450モノオキシゲナーゼに高度に類似し、そしてサッカロポリスポラ種(Saccharopolyspora sp.)LW107129(NRRL30141)染色体上のいたるところにコードされているORF LVIIまたはモノオキシゲナーゼは、ブテニル−スピノシンのC−8またはC−24でのヒドロキシル化の原因である。あるいはグリコレートまたはグリセロールのようなヒドロキシル化前駆体は、ロイコマイシン(leucomycin)のようにポリケチド合成中に取り込まれ得る(Omura et al.,1983)。ニッダマイシン(niddamycin)生産体(nidAT6)でのグリコレートの付加に特異的なATドメインは、エリスロマイシン(erythromycin)およびラパマイシン(rapamycin)PKS遺伝子のメチル−マロニル−CoA特異的ATドメインに類似していることが報告された(Katz et al.,2000)。PKSモジュール7はブテニル−スピノシンポリケチドの炭素8および9の付加の原因であるが、busAT7ドメインはnidAT6と同じメチル−マロニル−CoA特異的配列を持たない。これらはグリコレート特異性の原因である他のATドメインおよびnidAT6に対してbusAT7中にある独自な配列である。これらの修飾の原因であるブテニル−スピノシン生合成遺伝子は、そのようなヒドロキシル化スピノシンがS.スピノサ(spinosa)により生産されないので、A83543に比べて独自である。
【0125】
さらにラムノースメチル化の特異性は、S.スピノサ(spinosa)に比べてサッカロポリスポラ種(Saccharopolyspora sp.)LW107129(NRRL30141)で改変されている。米国特許第5,202,242号および同第5,840,861号明細書に開示されているようなA83543スピノシンについてラムノースの改変されたメチル化を現すS.スピノサ(spinosa)の突然変異体は、典型的にはA83543スピノシンのモノ−デスメチル化ラムノース誘導体を生産した。A83543スピノシンのジ−デスメチルラムノース誘導体は、メチルトランスフェラーゼインヒビター様シネフンジンの存在下でのみ検出された。ラムノースの改変されたメチル化を有するサッカロポリスポラ種(Saccharopolyspora sp.)LW107129(NRRL30141)の突然変異体は(Hahn et al.,2001)、メチルトランスフェラーゼインヒビターの不存在下でブテニル−スピノシンのジ−およびトリ−デスメチルラムノース誘導体を高量で生産した。
【0126】
相補的な実験については、サッカロポリスポラ種(Saccharopolyspora sp.)LW107129(NRRL30141)busDNAを含むコスミドは、ブテニル−スピノシン合成が改変したサッカロポリスポラ種(Saccharopolyspora sp.)LW107129(NRRL30141)突然変異体株に接合させた。(詳細は以下の実施例4に与える)次に接合完了体を、それらがブロック突然変異体の生産物を他のスピノシンに転換する能力について試験した。使用した突然変異体は、3’−O−デスメチルラムノース−ブテニル−スピノシン(3−ODM)および関連する因子を生産する30141.8であった。この30141.8/8H3接合完了体は3−ODMの代わりにブテニル−スピノシンを生産したので、ラムノースの3’のメチル化の原因である遺伝子はコスミド8H3に存在するはずである。
【0127】
標的遺伝子破壊では、内部フラグメントをコスミドDNAからPCR増幅により生成し
、そしてプラスミドにクローン化した。次いで生成したプラスミドをサッカロポリスポラ種(Saccharopolyspora sp.)LW107129(NRRL30141)に接合させ、そしてアプラマイシン−耐性接合完了体を単離し、そして発酵した。破壊実験の基本は、内部遺伝子フラグメントを持つプラスミドを破壊する時、生合成遺伝子の2つの不完全なコピーが生じ、これにより酵素機能を排除する。発酵産物を分析してどのブテニル−スピノシンが蓄積するかを決定する。busO遺伝子の破壊はブテニル−スピノシンPSAの蓄積を導き、busOがホロサミンの合成または付加に必要であることを示す(実施例5を参照にされたい)。ホロサミン生合成遺伝子を使用して合成されないC−17に糖を含む化合物もbusO突然変異体中に蓄積できる。
【0128】
BLAST調査、遺伝子破壊実験および生物変換実験から導かれる結論を、遺伝子基準で遺伝子についてこれからより詳細に検討する。
【0129】
PKSの上流の14個の遺伝子は、それらのS.スピノサ(spinosa)のspnF−S遺伝子に対する高い類似性により(表13)、およびBLAST調査がこれらの遺伝子はブテニル−スピノシンの生合成に必要な機能をコードすることが知られている酵素に対して目立った類似性を有することを示すので、ブテニル−スピノシン生合成に関与すると決定した。
【0130】
busF、busJ、busL、busM
遺伝子busFbusJbusLおよびbusMspnFspnJspnLおよびspnMに対して高い類似性を示す。これらA83543スピノシン遺伝子は、PKS遺伝子の推定上の単環式ラクトン産物からアグリコンの生成に関与すると報告された。busF遺伝子産物はspnFに対して91%のアミノ酸同一性を有し、同様にbusL遺伝子はspnLに対して94%のアミノ酸同一性を有する。両spnFおよびspnL遺伝子産物はメチルトランスフェラーゼであると報告され、そしてすべての4種のタンパク質は炭素−炭素結合形成に関与することが知られているストレプトミセス(Streptomyces)に由来する酵素に対して高い類似性を有する。busJタンパク質はオキシドレダクターゼであると報告されているspnJに対して83%のアミノ酸同一性を有した。両busJおよびspnJはダウノルビシンの生合成においてC−C結合形成に関与することが知られているdnrWに高度に類似する。busM遺伝子産物はspnMに対して96%同一である。両busMおよびspnMの遺伝子産物は、カンジタ アルビカンス(Candida albicans)から分泌される新たなクラスのリパーゼに高度に類似している。メチルトランスフェラーゼとしてのbusFおよびbusL、オキシダーゼとしてのbusJ、そしてリパーゼとしてのbusMの役割は、炭素−炭素架橋の形成におけるspnFspnLspnJおよびspnM遺伝子の報告されている役割と一致する。
【0131】
busG、busH、busI、busK
busGbusHbusIおよびbusKは、S.スピノサ(spinosa)のspnGspnHspnIおよびspnK遺伝子に高い類似性を有した。これらの遺伝子はA83543スピノシンアグリコンへのラムノース付加、そして続いてメチル化に関与することが報告された。busG遺伝子はspnGに対して90%の類似性を有し、そしてポリケチドから誘導される抗生物質への糖付加に関与する幾つかの遺伝子に高度に類似していた(表11)。busHbusIおよびbusK遺伝子産物は、スピノシン生合成においてラムノースのメチル化に関与することが報告されているそれぞれspnH(97%)、spnI(92%)およびspnK(88%)遺伝子に対して高いアミノ酸類似性を示した。すべての3つの遺伝子はストレプトミセス フラジエ(Streptomyces fradiae)に由来する、実験的にマカロシン−O−メチルトランスフェラーゼであることが示された(Bate & Cundiffe,1999)tylE
busIおよびbusK)およびtylFbusH)遺伝子に対して高いアミノ酸類似性を有した。
【0132】
busN、busO、busP、busQ、busR、busS
spnNspnObusPbusQbusRおよびbusSは、S.スピノサ(spinosa)のspnOspnPspnQspnRおよびspnS遺伝子と高い類似性を有した(表12)。これらの遺伝子はホロサミン糖の生合成または付加に関与すると報告された。busPの他のグリコシルトランスフェラーゼに対する類似性は(表11)、これがブテニル−スピノシンホロサミルトランスフェラーゼをコードすることを示す。busOurdS2,3デヒドラターゼとの間の高度な類似性は(表11;Hoffmeister et al.,2000)、これがホロサミン合成の2’−脱酸素工程に関与することを示す。busQ遺伝子産物とurdQ3,4−デヒドラターゼとの間の類似性は(S.フラジエ(fradiae);Hoffmeister et al.,2000)、これがホロサミン合成の3’−デヒドレーションに関与することを示す。busRはデオキシ糖トランスアミナーゼとして機能することが提案されたタンパク質群に最高40%の同一性を有し(Thorson et al.,1993)、busRがホロサミン合成の4’−アミノ化工程に関与することを示す。最後にbusSはアミノメチラーゼ群に高度に類似しており、busSがホロサミンの4’アミノ基のメチル化に関与することを示す。したがってbusNbusObusPbusQbusRおよびbusSはブテニル−スピノシンのホロサミン部分の生成に関与する。
【0133】
このようにサッカロポリスポラ種(Saccharopolyspora sp.)LW107129(NRRL30141)に由来する19個の遺伝子は、ブテニル−スピノシン生合成に役割を割り当てることができる:大環式ラクトンを生成するための5PKS遺伝子、これをアグリコンに修飾するための4遺伝子、ラムノースを加え、そしてメチル化する4遺伝子およびホロサミンを合成し、そして付加する6遺伝子。仮定の生合成経路を図1Aおよび1Bにまとめる。
【0134】
用途
クローン化されたサッカロポリスポラ種(Saccharopolyspora sp.)のブテニル−スピノシンDNAに関して多くの用途がある。クローン化された遺伝子はブテニル−スピノシンの収量を改善するために、そして新規ブテニル−スピノシンを生産するために使用することができる。改善された収量は特定のブテニル−スピノシン生産株のゲノムに、1以上のブテニル−スピノシン生合成遺伝子の複写コピーを組み込むことにより得られる。特定の突然変異体株において必要な酵素が欠損していることにより生合成経路が遮断された極端な場合では、所望するスピノシンの生産は必要な遺伝子のコピーを組み込むことにより回復することができる。
【0135】
新規化合物は、ブテニル−スピノシンの生合成における工程を破壊するためにクローン化したDNAのフラグメントを使用して生産することができる。そのような破壊は前駆体または「分岐」産物(前駆体の自然に処理された誘導体)の蓄積を導くことができる。破壊された遺伝子により生産される修飾スピノシンは、それら自体で昆虫防除剤となることができ、あるいはさらなる化学修飾の基質として役立ち、独特な特性および活性スペクトルを持つ新規な半−合成スピノシンを作成することができる。busO遺伝子の破壊はブテニル−スピノシンPSAの蓄積をもたらす。ブテニル−スピノシンPSAはC−17に新規な基を含むスピノシン同族体の合成に出発材料として有用である。
【0136】
新規ブテニル−スピノシンは1以上のクローン化bus遺伝子またはそれらの部分をヘテロロガスな宿主へ転移することにより生産することもできる。これらの遺伝子は受容体宿主には存在しない酵素的機能を提供することができる。そのような遺伝子は別の糖を提
供し、既存の糖またはアグリコン炭素を修飾し、アグリコンに別の糖を付加させ、あるいはアグリコン自体の基礎構造を改変させることができる。クローン化bus遺伝子のヘテロロガスな宿主への転移により生産される化合物は、それら自体で昆虫防除剤となることができ、あるいはさらなる化学修飾の基質として役立ち、独特な特性および活性スペクトルを持つ新規な半−合成スピノシンを作成することができる。コスミド8H3および9D3に由来するサッカロポリスポラ種(Saccharopolyspora sp.)LW107129(NRRL30141)DNAは、A83543スピノシンの生産体であるS.スピノサ(spinosa)に転移させることができ、そして接合完了体が新規スピノシンを生産する。
【0137】
新規ブテニル−スピノシンはクローン化された遺伝子の突然変異誘発、そして突然変異した遺伝子をブテニル−スピノシン生産生物中の非突然変異対と置換することにより生産することができる。突然変異誘発には例えば:1)1以上のKR、DHまたはERドメインの機能が遮断され、そして株がスピノシンAの核には存在しない二重結合、ヒドロキシル基またはケト基を含むラクトン核を有するスピノシンを生産するように、KR、DHまたはERドメインの削除または不活性化(Donadio et al.,1993を参照にされたい);2)ラクトン核に異なるカルボン酸が包含されるようなATドメインの置き換え(Ruan et al.,1997を参照にされたい);3)スピノシンAの核には存在しない飽和結合、ヒドロキシル基または二重結合を含むラクトン核を有するスピノシンを生産するように、既存のPKSモジュールにKR、DHまたはERドメインの付加(MacDaniel & Katz,2001);または4)環式ラクトン核がより多い、または少ない数の炭素原子を有するように、完全なPKSモジュールの付加または削除が関与し得る。
【0138】
ブテニル−スピノシン遺伝子クラスター領域に由来するDNAは、相同的配列を同定するためのハイブリダイゼーションプローブとして使用することができる。すなわちここでクローン化されたDNAは、ここで記載する領域に重複するがサッカロポリスポラ種(Saccharopolyspora sp.)LW107129(NRRL30141)のゲノム中の隣接領域に由来するこれまでにクローン化されていないDNAも含むサッカロポリスポラ種(Saccharopolyspora sp.)LW107129(NRRL30141)遺伝子ライブラリーに由来するさらなるプラスミドを配置するために使用することができる。またサッカロポリスポラ種(Saccharopolyspora sp.)LW107129(NRRL30141)bus遺伝子とS.スピノサ(spinosaspn遺伝子との比較により、エリスロマイシン、ラパマイシン、タイロシンおよびその他に関する生合成遺伝子のような非−スピノシン生産生合成遺伝子とは異なる保存された配列の同定を導く。これらのスピノシン−特異的遺伝子プローブならびにここでクローン化された領域に由来するすべてのDNAは、他の生物中の非同一であるが類似配列を同定するために使用することができる。ハイブリダイゼーションプローブは通常、少なくとも約20塩基長であり、そして標識して検出を可能とする。
【0139】
本発明により提供される修飾株は、2001年3月21日に出願された「殺虫性マクロライド(Pesticidal Macrolides)」に関する米国特許第5,362,634号明細書または米国特許仮出願第60/277,601号明細書に開示されているような通常のプロトコールを使用して培養してスピノシンを提供することができる。上記実施例は非限定的であり、本発明を限定すると解釈するべきではない。
【実施例2】
【0140】
ブテニル−スピノシン代謝産物に関する発酵ブロスを分析するためのLC/MS法
以下の方法は、式(I)および他の成分の生産について発酵を監視するためにエレクトロスプレー(ESI)マススペクトロメトリーを用いたHPLC分離を利用する。そのよ
うな系を利用してエレクトロスプレー付加イオンから推定することにより、精製した因子の分子量も決定した。これらのデータは表15にまとめる。
【0141】
発酵ブロスと等容量の変性エタノールを加える。混合物を1時間振盪し、次いで遠心し、そして濾過して(0.22μmの孔サイズ)、嵩のある細胞屑を除去した。1−mLのアリコートをミクロ遠心し、次いで清澄化した抽出物をLC−MSシステムに従い分析する:
HPLCシステム:カラムの固定相:250×4.6mmカラム、塩基−不活性化シリカゲル、5μmC8(Hypersil−C8−BDS)。移動相:以下にまとめる10mM 酢酸アンモニウム−メタノール−アセトニトリル直線勾配:
【0142】
【表16】

【0143】
ここで溶媒Aは10mM 酢酸アンモニウムであり、そして溶媒Bはメタノール−アセトニトリル(1:1)である;
流速:1mL/分;MS:ウエスト(waste)比が約5:95になるように、UV検出器後にスプリット(split);
検出:低および高コーン(cone)電圧モードで獲得した陽性ESI
特徴的なLC保持時間およびマススペクトロメトリーイオンは表15にまとめる。
【0144】
【表17】

【実施例3】
【0145】
発酵を介したブテニル−スプレー代謝産物の調製
式(I)の代謝産物は、NNR30141、NRRL30421株またはそれらの誘導体の1つから選択されたサッカロポリスポラ(Saccharopolyspora)の所望する株を、以下に記載する発酵培地中で培養することにより生産する。1.8mLの凍結栄養カルチャーを解凍し、125mLのエルレンマイヤー羽根付きフラスコ中の25mLを栄養培地に接種し、そして30℃にて150rpmで振盪しながら72〜96時間成長させた。
【0146】
【表18】

【0147】
振盪フラスコ培養
12ミリリットルの成熟した第1段階の種を使用して、500mLの羽根付きエルレンマイヤー発酵フラスコ中の50mLの発酵培地に接種した。
【0148】
【表19】

【0149】
発酵は30℃、200rpm(50mmストローク)で7〜12日間維持した。成熟発酵ビール(beer)を適当な溶媒を用いて抽出し、そして代謝産物は実施例1に開示したようにクロマトグラフィー分離により回収することができる。
【実施例4】
【0150】
NRRL30421株中のラロノースメチル化欠損のコスミド8H3による相補
NRRL30421株はブテニル−スピノシン上のラムノースを完全にメチル化することができないサッカロポリスポラ種(Saccharopolyspora sp.)NRRL30141の突然変異体である。NRRL30421株は化合物4およびラムノースの3’位でO−メチル化を欠く(3’−ODM)他のブテニル−スピノシンを蓄積する。このメチル化欠損は、busHbusIまたはbusK遺伝子によりコードされるO−メチルトランスフェラーゼの1つの突然変異の結果であると推定される。これらすべての遺伝子はコスミド8H3に存在する(図2)。
【0151】
コスミド8H3(図3)は大腸菌(Escherichia coli)ATCC47055からNRRL30421株に接合型転移(conjugal transfer)により移された(Matsushima et al.,(1994))。コスミド8H3を用いて形質転換させた2つの独立した単離物を実施例2のように発酵させ、そして化合物1および化合物4の生産について実施例1で例示したように分析した。
【0152】
【表20】

【0153】
NRRL30421は主に化合物4を生産するが、コスミド8H3を含むNRRL30
421はほとんど化合物1を生産した[表18]。コスミド8H3を含むNRRL30421中の化合物1および4の生産は、非突然変異体カルチャーNRRL30141に類似する(表18)。したがってコスミド8H3での形質転換は、NRRL30421株でのメチル化欠損を克服し、化合物1の強化された生産を回復することができる。
【実施例5】
【0154】
busOの破壊により引き起こされるブテニル−スピノシン前駆体および分岐産物の蓄積
busO遺伝子はbusO遺伝子のクローン化内部フラグメントの組込みにより不活性化した。1対のオリゴヌクレオチド(第1は配列番号2の塩基11882−11861に対応し、そして第2は配列番号2の塩基10970−10993に対応する)を使用して、配列番号2の塩基10970−11882に対応する1,457bpのbusO遺伝子に対する912bpの領域内部を増幅した。このフラグメントを含むプラスミドを用いたサッカロポリスポラ種(Saccharopolyspora sp.)LW107129(NRRL30141)の形質転換により、busO遺伝子の部分的な重複が生じ、プラスミドと抗生物質耐性遺伝子を挟む遺伝子の2つの短縮化コピーが生じた。
【0155】
912bpの内部busOPCRフラグメントは、FailSafe(商標)PCR(エピセンター:Epicenter)を使用してプライマー配列番号33および34を用いて作成し、そして製造元(インビトロゲン)の使用説明に従いpCRIIにクローン化した。生成したプラスミドをEcoRIで消化し、そしてbusOフラグメントをpOJ260のEcoRI部位にクローン化した(図3)。生成したプラスミドは大腸菌(Escherichia coli)ATCC47055からサッカロポリスポラ種(Saccharopolyspora sp.)NRRL30121の誘導体に接合型転移により接合させた(Matsushima et al.,(1994))。6つの独立したアプラマイシン耐性エキソ接合体(exoconjugant)を実施例2のように発酵させ、そして化合物1および他のスピノシン誘導体の生産について実施例1のように分析した。
【0156】
元の株NRRL30141は高レベルの化合物1および低レベルのシュードアグリコン(PSA:化合物13)を生産した。少量の化合物9も生産した[表19]。化合物1は6つのbusO突然変異体のいずれからも検出できず、busOが完全なブテニル−スピノシン生合成に必要であることを示した。さらにPSAのレベルは、ホロサミン供給の欠失から推定されるようにすべての6つのbusO突然変異体で上昇した。C17にホロサミン以外の糖を有する化合物9のレベルもbusO突然変異体で上昇した。
【0157】
【表21】

【0158】
【表22】

【0159】
【表23】

【0160】
【表24】

【0161】
【表25】

【0162】
【表26】

【0163】
本発明の主たる特徴または態様は次のとおりである。
1. ブテニル−スピノシン生合成酵素をコードするDNA配列を含んでなる単離されたDNA分子であって、該酵素が配列番号3−7および8−29からなる群から選択される1つの配列に少なくとも98%同一のアミノ酸配列からなり、ただし配列が選択された配列に100%未満で同一である場合、その差はコードされる酵素の機能的特性に実質的に影響を及ぼさない上記の単離されたDNA分子。
2. DNA配列がbusAbusBbusCbusDbusE、ORF RI、ORF RII、ORF RIII、busFbusG、busHbusIbusJbusKbusL、busM、busNbusObusPbusQbusRbusS、ORF LI、ORF LII、ORF LIII、ORF LIV、ORF LVI、ORF LVII、ORF LVIIIおよびORF LIXからなる遺伝子群から選択され、該遺伝子がそれぞれ配列番号1の塩基1−13032、13059−19505、19553−29053、29092−43890、43945−60636、62090−63937、65229−66602および68762−69676、ならびに配列番号2の114−938、1389−2558、2601−3350、3362−4546、4684−6300、6317−7507、7555−8403、8640−9569、9671−10666、10678−12135、12867−14177、14627−15967、16008−17141、17168−17914、18523−19932、19982−20488、20539−21033、21179−21922、22674−23453、23690−24886、26180−26923および27646−28473により記載される態様1に記載の単離されたDNA分子。
3. KSi、ATi、ACPi、KSb、ATb、KRb、DHb、ACPb、KS1
、AT1、KR1およびACP1から選択されるブテニル−スピノシンPKSドメインをコードするDNA配列を含んでなり、該ドメインがそれぞれ配列番号3のアミノ酸7−423、528−853、895−977、998−1413、1495−1836、1846−2028、2306−2518、2621−2710、2735−3160、3241−3604、3907−4086および4181−4262により記載される単離されたDNA分子。
4. DNA配列が配列番号1の塩基16−1269、1582−2559、2683−2931、2992−4239、4483−5508、5538−6084、6916−7554、7861−8130、8203−9480、9721−10812、11719−12258および12541−12786からなる群から選択される、態様3に記載の単離されたDNA分子。
5. KS2、AT2、DH2、ER2、KR2およびACP2から選択されるスピノシンPKSドメインをコードするDNA配列を含んでなり、該ドメインがそれぞれ配列番号4のアミノ酸1−421、534−964、990−1075、1336−1681、1685−1864および1953−2031により記載される単離されたDNA分子。
6. DNA配列が配列番号1の塩基13059−14321、14658−15900、16026−16283、17064−18100、18111−18650および18915−19151からなる群から選択される、態様5に記載の単離されたDNA分子。
7. KS3、AT3、KR3、ACP3、KS4、AT4、KR4およびACP4から選択されるスピノシンPKSドメインをコードするDNA配列を含んでなり、該ドメインがそれぞれ配列番号5のアミノ酸1−421、528−814、1157−1335、1422−1503、1526−1949、2063−2393、2697−2875および2969−3049により記載される単離されたDNA分子。
8. DNA配列が配列番号1の塩基19553−20815、21143−22000、23021−23557、23816−24061、24128−25399、25739−26731、27641−28183および28457−28699からなる群から選択される、態様7に記載の単離されたDNA分子。
9. KS5、AT5、DH5、KR5、ACP5、KS6、AT6、KR6、ACP6、KS7、AT7、KR7およびACP7から選択されるスピノシンPKSドメインをコードするDNA配列を含んでなり、該ドメインがそれぞれ配列番号6のアミノ酸1−422、537−864、891−1076、1382−1563、1643−1724、1746−2170、2281−2611、2914−3093、3186−3267、3289−3711、3823−4151、4342−4636におよび4723−4804により記載される単離されたDNA分子。
10. DNA配列が配列番号1の塩基29092−30357、30700−31683、31762−32319、33235−33780、34018−34263、34327−35601、35932−36924、37831−38370、38647−38892、38956−40224、40560−41544、42115−42999および43258−43503からなる群から選択される、態様9に記載の単離されたDNA分子。
11. KS8、AT8、DH8、KR8、ACP8、KS9、AT9、DH9、KR9、ACP9、KS10、AT10、DH10、KR10、ACP10およびTE10から選択されるスピノシンPKSドメインをコードするDNA配列を含んでなり、該ドメインがそれぞれ配列番号7のアミノ酸1−424、530−848、885−1072、1371−1554、1650−1728、1751−2175、2289−2616、2642−2775、3131−3315、3396−3474、3508−3921、4036−4366、4389−4569、4876−5054、5148−5229および5278−5531により記載される単離されたDNA分子。
12. DNA配列が配列番号1の塩基43945−45216、45532−4648
8、46597−47160、48055−48606、48892−49083、49195−50469、50809−51792、51868−52269、53335−53889、54130−54366、54466−55707、56050−57042、57109−57651、58570−59106、59386−59631および59776−60537からなる群から選択される、態様11記載の単離されたDNA分子。
13. スピノシンPKSモジュールをコードするDNA配列を含んでなり、該モジュールが配列番号3のアミノ酸6−977、配列番号3の998−2710、配列番号3の2735−4262、配列番号4の1−2031、配列番号5の1−1503、配列番号5の1526−3049、配列番号6の1−1724、配列番号6の1746−3267、配列番号6の3289−4804、配列番号7の1−1728、配列番号7の1751−3474および配列番号7の3508−5531からなる群から選択される、単離されたDNA分子。
14. DNA配列が配列番号1の塩基16−2931、2992−8130、8203−12786、13059−19151、19553−24061、24128−28699、29092−34263、34327−38892、38956−43503、43945−49083、49195−54366および54466−60537からなる群から選択される、態様13記載の単離されたDNA分子。
15. 態様1ないし14のいずれか1項に記載のDNA配列を含んでなる組換えDNAベクター。
16. 態様15に記載の組換えベクターで形質転換した宿主細胞。
17. 1)組換えDNAベクターまたはそれらの部分で、生合成経路によりブテニルスピノシンまたはブテニル−スピノシン前駆体を生産する微生物を形質転換し、該ベクターまたはそれらの部分は該経路で律速である活性の発現をコードする上記のような本発明のDNA配列を含んでなり、そして
2)該ベクターで形質転換した該微生物を、細胞の成長および分裂、該DNA配列の発現およびスピノシンの生産に適する条件下で培養する、
工程を含んでなるスピノシン−生産微生物のスピノシン−生産能を上げる方法。
18. ゲノムに作動性のブテニル−スピノシン生合成遺伝子を有する微生物を培養することを含んでなるブテニル−スピノシンの調製法であって、ただし微生物のゲノムが少なくとも1つのブテニル−スピノシン合成遺伝子busAbusBbusCbusDbusEbusFbusG、busHbusIbusJ、busKbusL、busM、busNbusObusPbusQbusRおよびbusSの重複コピーが存在するように修飾されている上記調製法。
19. ゲノムにブテニル−スピノシン生合成遺伝子を有する微生物を培養することを含んでなるブテニル−スピノシンの調製法であって、ただし該遺伝子の少なくとも1つが不活性化され、該遺伝子の残りは破壊された遺伝子が作動できる場合に生産されるブテニル−スピノシン以外のブテニル−スピノシンを生産するように作動できる上記調製法。
20. ゲノムに作動性のブテニルスピノシン生合成遺伝子を含むように形質転換されたヘテロロガスな微生物を培養することを含んでなる、ブテニルスピノシンの調製法。
21. ゲノムに作動性のブテニルスピノシン生合成遺伝子を有する微生物を培養することを含んでなるブテニルスピノシンの調製法であって、該遺伝子がa)配列番号1に存在するより多い、または少なくとも1以上である、少なくとも1つの作動性のPKSモジュールを含み;またはb)KR、DHまたはERドメインの削除、不活性化または付加により、あるいはATドメインの置換により配列番号1に記載された対応するモジュールとは異なるPKSモジュールを含む、上記調製法。
22. ブテニル−スピノシン生産微生物のゲノムライブラリーを作成し、そしてハイブリダイゼーションプローブとして少なくとも20塩基長である配列番号1または配列番号2の標識フラグメントを使用することを含んでなるブテニル−スピノシン生合成遺伝子の単離法
【図面の簡単な説明】
【0164】
【図1A】ブテニル−スピノシン生合成経路を具体的に説明する図である。
【図1B】ブテニル−スピノシン生合成経路を具体的に説明する図である。
【図2】サッカロポリスポラ種(Saccharopolyspora sp.)LW107129(NRRL30141)DNAのクローン化された領域中のHindIII、EcoRVおよびScaIフラグメントおよびオープンリーゲィンクイフレイムの配列およびクローン化されたDNA中のブテニル−スピノシン遺伝子の位置を具体的に説明する地図である。
【図3】コスミドpOJ436の制限部位および機能的地図である。
【図4】17−(4”−O−メチルオレアンドロース)−ブテニル−スピノシン[表1:化合物(11)]の生合成経路を具体的に説明する図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブテニル−スピノシン生合成酵素をコードするDNA配列を含んでなる単離されたDNA分子であって、該酵素が配列番号3−7および8−29からなる群から選択される1つの配列に少なくとも98%同一のアミノ酸配列からなり、ただし配列が選択された配列に100%未満で同一である場合、その差はコードされる酵素の機能的特性に実質的に影響を及ぼさない上記の単離されたDNA分子。
【請求項2】
DNA配列がbusAbusBbusCbusDbusE、ORF RI、ORF RII、ORF RIII、busFbusG、busHbusIbusJbusKbusL、busM、busNbusObusPbusQbusRbusS、ORF LI、ORF LII、ORF LIII、ORF LIV、ORF LVI、ORF LVII、ORF LVIIIおよびORF LIXからなる遺伝子群から選択され、該遺伝子がそれぞれ配列番号1の塩基1−13032、13059−19505、19553−29053、29092−43890、43945−60636、62090−63937、65229−66602および68762−69676、ならびに配列番号2の114−938、1389−2558、2601−3350、3362−4546、4684−6300、6317−7507、7555−8403、8640−9569、9671−10666、10678−12135、12867−14177、14627−15967、16008−17141、17168−17914、18523−19932、19982−20488、20539−21033、21179−21922、22674−23453、23690−24886、26180−26923および27646−28473により記載される請求項1に記載の単離されたDNA分子。
【請求項3】
KSi、ATi、ACPi、KSb、ATb、KRb、DHb、ACPb、KS1、AT1、KR1およびACP1から選択されるブテニル−スピノシンPKSドメインをコードするDNA配列を含んでなり、該ドメインがそれぞれ配列番号3のアミノ酸7−423、528−853、895−977、998−1413、1495−1836、1846−2028、2306−2518、2621−2710、2735−3160、3241−3604、3907−4086および4181−4262により記載される単離されたDNA分子。
【請求項4】
DNA配列が配列番号1の塩基16−1269、1582−2559、2683−2931、2992−4239、4483−5508、5538−6084、6916−7554、7861−8130、8203−9480、9721−10812、11719−12258および12541−12786からなる群から選択される、請求項3に記載の単離されたDNA分子。
【請求項5】
KS2、AT2、DH2、ER2、KR2およびACP2から選択されるスピノシンPKSドメインをコードするDNA配列を含んでなり、該ドメインがそれぞれ配列番号4のアミノ酸1−421、534−964、990−1075、1336−1681、1685−1864および1953−2031により記載される単離されたDNA分子。
【請求項6】
DNA配列が配列番号1の塩基13059−14321、14658−15900、16026−16283、17064−18100、18111−18650および18915−19151からなる群から選択される、請求項5に記載の単離されたDNA分子。
【請求項7】
KS3、AT3、KR3、ACP3、KS4、AT4、KR4およびACP4から選択されるスピノシンPKSドメインをコードするDNA配列を含んでなり、該ドメインがそ
れぞれ配列番号5のアミノ酸1−421、528−814、1157−1335、1422−1503、1526−1949、2063−2393、2697−2875および2969−3049により記載される単離されたDNA分子。
【請求項8】
DNA配列が配列番号1の塩基19553−20815、21143−22000、23021−23557、23816−24061、24128−25399、25739−26731、27641−28183および28457−28699からなる群から選択される、請求項7に記載の単離されたDNA分子。
【請求項9】
KS5、AT5、DH5、KR5、ACP5、KS6、AT6、KR6、ACP6、KS7、AT7、KR7およびACP7から選択されるスピノシンPKSドメインをコードするDNA配列を含んでなり、該ドメインがそれぞれ配列番号6のアミノ酸1−422、537−864、891−1076、1382−1563、1643−1724、1746−2170、2281−2611、2914−3093、3186−3267、3289−3711、3823−4151、4342−4636におよび4723−4804により記載される単離されたDNA分子。
【請求項10】
DNA配列が配列番号1の塩基29092−30357、30700−31683、31762−32319、33235−33780、34018−34263、34327−35601、35932−36924、37831−38370、38647−38892、38956−40224、40560−41544、42115−42999および43258−43503からなる群から選択される、請求項9に記載の単離されたDNA分子。
【請求項11】
KS8、AT8、DH8、KR8、ACP8、KS9、AT9、DH9、KR9、ACP9、KS10、AT10、DH10、KR10、ACP10およびTE10から選択されるスピノシンPKSドメインをコードするDNA配列を含んでなり、該ドメインがそれぞれ配列番号7のアミノ酸1−424、530−848、885−1072、1371−1554、1650−1728、1751−2175、2289−2616、2642−2775、3131−3315、3396−3474、3508−3921、4036−4366、4389−4569、4876−5054、5148−5229および5278−5531により記載される単離されたDNA分子。
【請求項12】
DNA配列が配列番号1の塩基43945−45216、45532−46488、46597−47160、48055−48606、48892−49083、49195−50469、50809−51792、51868−52269、53335−53889、54130−54366、54466−55707、56050−57042、57109−57651、58570−59106、59386−59631および59776−60537からなる群から選択される、請求項11記載の単離されたDNA分子。
【請求項13】
スピノシンPKSモジュールをコードするDNA配列を含んでなり、該モジュールが配列番号3のアミノ酸6−977、配列番号3の998−2710、配列番号3の2735−4262、配列番号4の1−2031、配列番号5の1−1503、配列番号5の1526−3049、配列番号6の1−1724、配列番号6の1746−3267、配列番号6の3289−4804、配列番号7の1−1728、配列番号7の1751−3474および配列番号7の3508−5531からなる群から選択される、単離されたDNA分子。
【請求項14】
DNA配列が配列番号1の塩基16−2931、2992−8130、8203−12786、13059−19151、19553−24061、24128−28699、
29092−34263、34327−38892、38956−43503、43945−49083、49195−54366および54466−60537からなる群から選択される、請求項13記載の単離されたDNA分子。
【請求項15】
請求項1ないし14のいずれか1項に記載のDNA配列を含んでなる組換えDNAベクター。
【請求項16】
請求項15に記載の組換えベクターで形質転換した宿主細胞。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−278895(P2008−278895A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−178171(P2008−178171)
【出願日】平成20年7月8日(2008.7.8)
【分割の表示】特願2002−578479(P2002−578479)の分割
【原出願日】平成14年3月28日(2002.3.28)
【出願人】(390039192)ダウ・アグロサイエンス・エル・エル・シー (20)
【氏名又は名称原語表記】Dow AgroSciences LLC
【Fターム(参考)】