説明

ブラキュリポリペプチドおよび使用方法

ブラキュリはヒト腫瘍、具体的には小腸、胃、腎臓、膀胱、子宮、卵巣、および精巣の腫瘍において、ならびに肺癌、結腸癌、および前立腺癌において発現されることを本明細書において開示する。免疫原性ブラキュリポリペプチドを、本明細書において開示する。これらのポリペプチドは、ブラキュリ発現に関する診断的アッセイ法において、ならびにブラキュリに対する免疫応答を誘導するために使用することができる。免疫原性ブラキュリポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、これらのポリヌクレオチドを含むベクター、これらのベクターで形質転換された宿主細胞、ならびにこれらのポリペプチド、ポリヌクレオチド、ベクター、および宿主細胞を使用する方法を提供する。ブラキュリを発現する癌を診断する方法もまた、提供する。例示的な癌には、小腸癌、肺癌、結腸癌、腸癌、胃癌、腎臓癌、膀胱癌、子宮癌、卵巣癌、ならびに精巣癌および前立腺癌が含まれる。癌を治療する方法もまた、開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権主張
本出願は、参照により本明細書に組み入れられる、2007年2月28日に出願された米国特許仮出願第60/904,236号の恩典を主張する。
【0002】
分野
本出願は、癌治療物質の分野、具体的には、癌治療のための免疫原性ペプチドおよび阻害性核酸などの分子に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
ブラキュリ(Brachyury)(「T」としても公知)は、劣性致死でもある(ホモ接合型のT/T胎仔は、後部中胚葉形成の失敗が原因で妊娠中期に死亡する)優性短尾変異としてマウスにおいて同定された(Chesley, J. Exp. Zool., 70: 429-459, 1935(非特許文献1))。マウスのブラキュリ遺伝子は、ヒトのような他の種におけるホモログと同様に、クローン化されている(Herrmann et al., Nature (Lond.), 343: 617-622, 1990(非特許文献2))。マウスブラキュリのヒトホモログの発現は、妊娠14〜15週目のヒト流産児の脊索遺残である髄核においてRT-PCRによって検出された(Edwards et al., Genome Res., 6: 226-233, 1996(非特許文献3))。
【0004】
ブラキュリは、一般に、中胚葉分化を認識するための有益なマーカーであることが判明した(Herrmann et al., Trends Genet., 10: 280-286, 1994(非特許文献4))。例えば、胎仔それら自体における発現のほかに、ブラキュリは、インビトロで中胚葉系統に沿って分化するある種のマウスEC細胞株およびES細胞株の分化中に活性化されることが報告されている(例えば、Bain et al., Biochem. Biophys. Res. Commun., 223: 691-694, 1996(非特許文献5)を参照されたい)。ヒトにおいて、ブラキュリは、奇形癌(Gokhele et al., Cell Growth and Differentiation 11:157-62, 2000(非特許文献6))、脊索腫(Vujovic et al., J. Pathol. 2: 157-65, 2006(非特許文献7))、および血管芽細胞腫(hemagioblastoma)(Glasker et al., Cancer Res. 66: 4167-4172, 2006(非特許文献8))において発現されることが示された。
【0005】
免疫療法は、標的抗原の産生に基づいて癌細胞に対する免疫応答を誘起することを含む。細胞性免疫応答に基づいた免疫療法は、特定の抗原決定基を産生する細胞に対する細胞性応答を生じさせることを含むのに対し、体液性免疫応答に基づいた免疫療法は、特定の抗原決定基を産生する細胞に対する特異的抗体を生じさせることを含む。
【0006】
MHCクラスI分子内に腫瘍関連抗原由来のペプチドを提示する腫瘍細胞をCD8+ CTLが認識し、かつ死滅させるという知見により、癌患者の免疫療法が劇的に改善され得ることが、最近の研究によって示されている。臨床試験において、エフェクターCD8+ T細胞が腫瘍退縮において主要な役割を果たすことが見出されている。例えば、前立腺癌モデルにおいていくつかの腫瘍抗原が同定され、それらの前立腺癌関連抗原由来のHLAアレル特異的ペプチドが、CD8+ T細胞エピトープとして同定された。例えば、前立腺特異抗原(PSA)(Correale et al., J Immunol 161:3186, 1998(非特許文献9))、前立腺特異的膜抗原(PSMA)(Tjoa et al., Prostate 28:65, 1996(非特許文献10))、前立腺幹細胞抗原(PSCA)(Kiessling et al., Int J Cancer 102:390, 2002(非特許文献11))、および前立腺酸性ホスファターゼ(Peshwa et al., Prostate 36:129, 1998(非特許文献12))に由来するHLA-A2.1結合ペプチドが説明された。PSAに関しては、様々なワクチン戦略を用いた臨床試験が進行中である。しかしながら、異なる器官の癌の診断に役立つその他の抗原を同定すること、および他のタイプの癌の免疫療法のために使用できるペプチドを作製することが必要とされているのは明らかである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Chesley, J. Exp. Zool., 70: 429-459, 1935
【非特許文献2】Herrmann et al., Nature (Lond.), 343: 617-622, 1990
【非特許文献3】Edwards et al., Genome Res., 6: 226-233, 1996
【非特許文献4】Herrmann et al., Trends Genet., 10: 280-286, 1994
【非特許文献5】Bain et al., Biochem. Biophys. Res. Commun., 223: 691-694, 1996
【非特許文献6】Gokhele et al., Cell Growth and Differentiation 11:157-62, 2000
【非特許文献7】Vujovic et al., J. Pathol. 2: 157-65, 2006
【非特許文献8】Glasker et al., Cancer Res. 66: 4167-4172, 2006
【非特許文献9】Correale et al., J Immunol 161:3186, 1998
【非特許文献10】Tjoa et al., Prostate 28:65, 1996
【非特許文献11】Kiessling et al., Int J Cancer 102:390, 2002
【非特許文献12】Peshwa et al., Prostate 36:129, 1998
【発明の概要】
【0008】
概要
ブラキュリが、ヒト腫瘍において、具体的には、小腸、胃、腎臓、膀胱、子宮、卵巣、および精巣(testes)の腫瘍、ならびに肺癌、結腸癌、および前立腺癌において発現されることが本明細書において開示される。免疫原性ブラキュリポリペプチドが、本明細書において開示される。これらのブラキュリポリペプチドは、ブラキュリに対する免疫応答を誘導するために、ならびにブラキュリ発現に関する診断的アッセイ法において使用することができる。1つの例において、ポリペプチドの長さは、多くても12個の連続したアミノ酸であり、単離されるポリペプチドは、WLLPGTSTX1(SEQ ID NO: 3)(X1はロイシン(L)またはバリン(V)である)として示すアミノ酸配列を含む。
【0009】
免疫原性ブラキュリポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、これらのポリペプチドを含むベクター、これらのベクターで形質転換された宿主細胞、ならびにこれらのポリペプチド、ポリヌクレオチド、ベクター、および宿主細胞を使用する方法が、本明細書において提供される。1つの態様において、免疫原性ブラキュリポリペプチドをコードする核酸をウイルスゲノムまたはその感染可能な一部分に組み入れた第1の組換えウイルスならびにB7-1、B7-2、またはB7-1およびB7-2をコードする1つまたは複数の遺伝子またはDNA配列をウイルスゲノムまたはその感染可能な一部分に組み入れた第2の組換えウイルスを含む組成物であって、宿主細胞を同時感染させて、ポリペプチドならびにB7-1、B7-2、またはB7-1およびB7-2をコードする遺伝子またはDNA配列の同時発現をもたらすことができる組成物が開示される。
【0010】
また、ブラキュリを発現する癌を診断する方法も提供され、これらの方法は、開示される免疫原性ブラキュリポリペプチド、これらのポリペプチドをコードする核酸、またはこれらのポリペプチドに特異的に結合する抗体の使用を含む。例示的な癌には、肺癌、結腸癌、小腸癌、胃癌、腎臓癌、膀胱癌、子宮癌、卵巣癌、ならびに精巣癌および前立腺癌が含まれる。
【0011】
ブラキュリに対する免疫応答を誘導する方法もまた、開示される。これらの方法は、単独で、またはB7-1、B7-2、および/もしくはサイトカインなどの他の作用物質ならびに/または手術、放射線療法、および/もしくは化学療法などの伝統的な癌療法と併用した、本明細書において開示される免疫原性ブラキュリポリペプチド、これらのポリペプチドをコードする核酸、および/または免疫原性ブラキュリポリペプチドをコードするウイルスベクターの使用を含む。腫瘍、例えば、限定されるわけではないが、小腸、胃、腎臓、膀胱、子宮、卵巣、精巣、肺、結腸、または前立腺の腫瘍に罹患している対象を治療するための方法が開示される。また、乳房腫瘍、気管支腫瘍、慢性リンパ性白血病(CLL)、および他のB細胞性(B cell-based)悪性腫瘍に罹患している対象を治療するための方法も開示される。これらの方法は、ブラキュリに対する免疫応答を誘導する段階、および/またはsiRNAもしくはアンチセンス分子などの阻害性核酸を用いて、腫瘍を治療するためにブラキュリ発現を減少させる段階を含む。
【0012】
前述および他の特徴および利点は、添付図面に関連して続く、いくつかの態様の以下の詳細な説明からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1A〜1Cは、ヒトの正常組織および腫瘍組織におけるブラキュリ発現のRT-PCR解析のデジタル画像のセットである。図1Aは、ヒトの多様な組織のcDNAパネルIおよびIIから得られたRT-PCR結果のデジタル画像である。図1Bは、様々なヒト血液画分のcDNAから得られたRT-PCR結果のデジタル画像である。図1Cは、ブラキュリ(上側のパネル)およびGAPDH(下側のパネル)の発現に関して増幅した、腫瘍組織(個々の癌患者に由来する各組織)由来のcDNAのRT-PCRから得られた結果のデジタル画像である。ヒトDNAをPCR反応の陽性対照として使用した。陰性対照のラベルを付けたチューブには水を添加した。
【図2】図2A〜2Bは、予測されたペプチドのHLA-A0201分子への結合を示すグラフである。図2Aは、T2細胞への結合に関して25μMのペプチドを解析した結果の棒グラフである;陽性対照(CAP1-6D)およびHLA-A3結合ペプチド(陰性対照)を同じ濃度で使用した。MFIは、平均蛍光強度を示す。図2Bは、材料および方法の箇所で説明するようにして実施したペプチド-MHC複合体の半減期の解析を示す結果の線グラフである。各ペプチドおよび陽性対照CAP1-6Dについて、半減期を分で示す。
【図3】図3A〜3Cは、3種のブラキュリ由来ペプチドに特異的なCTLのサイトカイン産生および細胞障害活性を示すグラフである。図3Aは、健常ドナーのPBMCからペプチドT-p2、T-p3、およびT-p4に対して生じさせたCD8+T細胞を、ブラキュリ(T)特異的ペプチドまたは無関係なペプチドをパルスした自己DCの存在下で24時間刺激した場合に得られた結果を示す棒グラフである。上清中のIFN-γをELISAによって評価した。図3Bは、ペプチドパルスしたC1R-A2標的に対してペプチドT-p2およびT-p3を用いて生じさせたCTLの細胞障害活性(6時間のアッセイ法)を示す線グラフである。図に示したように、2つのエフェクター対標的比(E:T)を使用した。C1R-A2細胞に以下をパルスした:25μMのT-p2ペプチド(黒い円)、T-p3ペプチド(白い円)、無関係なCAP1-6Dペプチド(黒い三角形)、およびペプチドパルス無し(白い三角形)。図3Cは、図に示したように様々な濃度のT-p2ペプチドをT2細胞にパルスし、(12.5:1に等しいエフェクター対標的比で)T-p2 CTLと共に標的として使用した場合に得られた結果の線グラフである。
【図4】図4A〜4Fは、腫瘍標的に対するブラキュリ特異的CTLの細胞障害活性を示すグラフである。図4Aは、図に示したように、正常ドナー由来のT-p2 CTLを様々な腫瘍標的に対するエフェクターとして111In 16時間放出アッセイ法において使用した場合に得られた結果の線グラフである。図4Bは、T-p2 T細胞の添加前に1時間、25μg/mlの対照IgG、抗HLAクラスI MAb、または抗HLAクラスII MAbと共に、111Inで標識したH441腫瘍細胞をインキュベートした場合に得られた結果の棒グラフである。E:T比は20:1であった。図4Cは、結腸直腸癌患者(患者1)および(図4Dでは)卵巣癌患者(患者2)の血液から確立させたCTLを、H441腫瘍細胞およびAsPC-1腫瘍細胞の細胞障害性死滅のために3回のIVS後に使用した場合に得られた結果の線グラフである。図4Eは、患者1由来のT-p2 T細胞によるLNCAP腫瘍細胞の細胞障害性死滅を示す棒グラフである。T-p2 T細胞の添加前に1時間、25μg/mlの対照IgGまたは抗HLA-A2,28 MAbと共に、111Inで標識したLNCAP腫瘍細胞をインキュベートした。図4Fは、図に示したように、患者2に由来するT細胞を様々な腫瘍標的に対するエフェクターとして使用した場合に得られた結果の棒グラフおよびデジタル画像である。RT-PCRによる各腫瘍細胞株のブラキュリmRNAおよびβ-アクチンmRNAの発現をデジタル画像で示す。
【図5】図5A〜5Bは、ブラキュリ発現の安定なノックダウンが、NCI-H460肺癌癌細胞において間葉系から上皮への移行を誘導することを示すデジタル画像である。図5Aは、対照shRNAまたはブラキュリ特異的なshRNA構築物(Br.shRNAクローン1および2)を安定にトランスフェクトされたNCI-H460肺癌細胞におけるブラキュリmRNAおよびβ-アクチンmRNAの発現のRT-PCR解析のデジタル画像である。図5Bは、ヒトフィブロネクチン、ビメンチン、γ-カテニン、およびβ-アクチンの発現に関してウェスタンブロットによって同じ細胞株を解析した場合に得られた結果のデジタル画像である。
【図6】図6A〜6Bは、ブラキュリの減少により、インビトロでのNCI-H460肺癌細胞の移動特性および浸潤特性に障害が生じることを示すジタル画像および棒グラフである。対照shRNAまたはブラキュリ特異的なshRNA構築物(Br.shRNAクローン2)を安定にトランスフェクトされたNCI-H460肺癌細胞における(図6A)細胞移動および(図6B)細胞浸潤のインビトロアッセイ法。実施例のセクションで説明するように、各細胞株あたり3個ずつの試料を用いて実験(n=3)を実施した。グラフは、1つの代表的な実験の結果を示す。各棒は、個々の反復アッセイ法の結果±SEMを表す。また、各細胞株のフィルター底面を倍率10倍で観察した代表的な画像も示す。スチューデントのt検定による統計学的解析を実施した。
【発明を実施するための形態】
【0014】
詳細な説明
ブラキュリが、ヒト腫瘍において、具体的には、小腸、胃、腎臓、膀胱、子宮、卵巣、および精巣の腫瘍、ならびに肺癌、結腸癌、および前立腺癌において発現されることが本明細書において開示される。ブラキュリはまた、慢性リンパ性白血病および他のB細胞悪性腫瘍においても発現される。免疫原性ブラキュリポリペプチドが、本明細書において開示される。これらのポリペプチドをコードする核酸、これらの核酸を含むベクター、およびこれらのベクターで形質転換された宿主細胞もまた、開示される。ブラキュリを発現する腫瘍を検出するための方法が開示されるように、ブラキュリを発現する腫瘍細胞に対する免疫応答を誘導するための方法もまた、開示される。また、ブラキュリを発現する腫瘍を治療するための治療方法も本明細書において開示され、この方法は、阻害性核酸を投与する段階を含む。
【0015】
用語
別段の注記の無い限り、技術用語は、従来の用法に従って使用される。分子生物学における一般的用語の定義は、Benjamin Lewin, Genes V、Oxford University Press出版、1994 (ISBN 0-19-854287-9); Kendrew et al.(編)、The Encyclopedia of Molecular Biology、Blackwell Science Ltd.出版、1994 (ISBN 0-632-02182-9);およびRobert A.Meyers(編)、Molecular Biology and Biotechnology: a Comprehensive Desk Reference、VCH Publishers, Inc.出版、1995 (ISBN 1-56081-569-8)において見出すことができる。
【0016】
本開示の様々な態様の再検討を容易にするために、特定の用語に関する以下の説明を具体的な例と共に提供する。
【0017】
アジュバント:抗原性を高めるために使用されるビヒクル。アジュバントには、抗原が吸着される鉱物の懸濁液(ミョウバン、水酸化アルミニウム、もしくはリン酸アルミニウム);または抗原溶液が鉱油中に乳化された油中水型エマルジョン(フロイントの不完全アジュバント)、時折、抗原性をさらに高める(抗原の分解を阻害し、かつ/またはマクロファージの流入を引き起こす)ために、死滅させたマイコバクテリアを含む油中水型乳濁液(フロイントの完全アジュバント)が含まれる。(CpGモチーフを含むもののような)免疫賦活性オリゴヌクレオチドもまた、アジュバントとして使用され得る(例えば、米国特許第6,194,388号;米国特許第6,207,646号;米国特許第6,214,806号;米国特許第6,218,371号;米国特許第6,239,116号;米国特許第6,339,068号;米国特許第6,406,705号;および米国特許第6,429,199号を参照されたい)。アジュバントには、共刺激分子のような生物学的分子(「生物学的アジュバント」)も含まれる。例示的なアジュバントには、IL-2、RANTES、GM-CSF、TNF-α、IFN-γ、G-CSF、LFA-3、CD72、B7-1、B7-2、OX-40L、および41BBLが含まれる。
【0018】
抗原:動物中に注射または吸収される組成物を含む、動物における抗体の産生またはT細胞応答を刺激し得る化合物、組成物、または物質。抗原は、異種免疫原によって誘導されるものを含む、特異的な体液性免疫または細胞性免疫の産生物と反応する。「抗原」という用語は、関連する抗原エピトープすべてを含む。「エピトープ」または「抗原決定基」とは、B細胞および/またはT細胞が応答する、抗原上のある部位を意味する。1つの態様において、T細胞は、エピトープがMHC分子と共に提示された場合にエピトープに応答する。エピトープは、連続したアミノ酸またはタンパク質の三次フォールディングによって並置される不連続なアミノ酸の両方から形成され得る。連続したアミノ酸から形成されたエピトープは、変性溶媒に曝露された際に典型的には保持されるのに対し、三次フォールディングによって形成されたエピトープは、変性溶媒を用いて処理すると、典型的には破壊される。エピトープは、典型的には、独特な空間的配置の少なくとも3個、およびより一般的には、少なくとも5個、約9個、または約8〜10個のアミノ酸を含む。エピトープの空間的配置を決定する方法には、例えば、X線結晶構造解析および二次元核磁気共鳴が含まれる。
【0019】
抗原は、組織特異的抗原または疾患特異的抗原であり得る。組織特異的抗原はまた、疾患特異的抗原でもあり得るため、これらの用語は排他的ではない。組織特異的抗原は、限られた数の組織、例えば単一の組織において発現される。組織特異的抗原の非限定的な具体例は、前立腺特異抗原、子宮特異抗原、および/または精巣特異抗原である。組織特異的抗原は、複数の組織によって発現され得、例えば、限定されるわけではないが、複数の生殖組織において、例えば前立腺組織および子宮組織の両方において発現される抗原がある。疾患特異的抗原は、疾患プロセスと同時発生的に発現される。疾患特異的抗原の非限定的な具体例は、その発現が前立腺癌および/または子宮癌および/または精巣癌などの腫瘍形成と相関しているか、または前兆となる抗原である。疾患特異的抗原は、T細胞またはB細胞によって認識される抗原でよい。
【0020】
増幅:核酸分子(例えば、DNAまたはRNA分子)に関して、標本中の核酸分子のコピー数を増加させる技術の使用を意味する。増幅の例は、試料中の核酸鋳型へのプライマーのハイブリダイゼーションを可能にさせる条件下で、対象から採取した生物試料を一対のオリゴヌクレオチドプライマーと接触させるポリメラーゼ連鎖反応法である。プライマーを適切な条件下で伸長させ、鋳型から解離させ、次いで再アニールし、伸張させ、かつ解離させて、核酸のコピー数を増幅させる。増幅産物は、電気泳動、制限エンドヌクレアーゼ切断パターン、オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションもしくはライゲーション、および/または標準技術を用いた核酸配列決定によって特徴付けることができる。増幅の他の例には、米国特許第5,744,311号で開示されている鎖置換増幅法;米国特許第6,033,881号で開示されている転写フリー等温増幅法;WO 90/01069で開示されている修復連鎖反応増幅法;EP-A-320 308で開示されているリガーゼ連鎖反応増幅法;米国特許第5,427,930号で開示されているギャップ充填リガーゼ連鎖反応増幅法;および米国特許第6,025,134号で開示されているNASBA(商標)RNA転写フリー増幅法が含まれる。
【0021】
抗体:免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、すなわち抗原に特異的に結合する(免疫反応する)抗原結合部位を含む分子。
【0022】
天然に存在する抗体(例えば、IgG、IgM、IgD)は、4つのポリペプチド鎖、すなわちジスルフィド結合によって相互に連結された2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖を含む。しかしながら、抗体の抗原結合機能は、天然に存在する抗体の断片によって果たされ得ることが示されている。したがって、これらの抗原結合断片もまた、「抗体」という用語で呼ばれるものとする。抗体という用語に包含される結合断片の非限定的な具体例には、(i)VLドメイン、VHドメイン、CLドメイン、およびCH1ドメインからなるFab断片;(ii)VHドメインおよびCH1ドメインからなるFd断片;(iii)抗体の1つのアームのVLドメインおよびVHドメインからなるFv断片;(iv)VHドメインからなるdAb断片(Ward et al., Nature 341:544-546, 1989);(v)単離された相補性決定領域(CDR);ならびに(vi)F(ab')2断片、すなわちヒンジ領域のジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価の断片が含まれる。
【0023】
免疫グロブリンおよびそれらのいくつかの変種が公知であり、多くが組換え細胞培養によって調製された(例えば、米国特許第4,745,055号;米国特許第4,444,487号;WO88/03565; EP256,654; EP120,694; EP125,023; Faoulkner et al., Nature 298:286, 1982; Morrison, J. Immunol. 123:793, 1979; Morrison et al., Ann Rev. Immunol 2:239, 1984を参照されたい)。ヒト化抗体および完全ヒト抗体もまた、当技術分野において公知である。
【0024】
動物:生きている多細胞性脊椎動物生物。例えば哺乳動物およびトリを含む部類。哺乳動物という用語は、ヒトおよび非ヒト哺乳動物の両方を含む。同様に、「対象」という用語は、ヒト対象および獣医学的対象の両方を含む。
【0025】
アンチセンス、センス、およびアンチジーン:二本鎖DNA(dsDNA)は、2つの鎖、すなわちプラス鎖と呼ばれる5'→3'鎖、およびマイナス鎖と呼ばれる3'→5'鎖(逆相補鎖)を有する。RNAポリメラーゼは、5'→3'の方向に核酸を付加するため、DNAのマイナス鎖は、転写の進行中に、RNAに対する鋳型として役立つ。したがって、形成されたRNAは、マイナス鎖と相補的であり、かつプラス鎖と同一である(UがTの代わりに用いられることを除く)配列を有すると考えられる。
【0026】
アンチセンス分子は、RNAまたはDNAのプラス鎖のいずれかに特異的にハイブリダイズ可能であるか、または特異的に相補的である分子である。センス分子は、DNAのマイナス鎖に特異的にハイブリダイズ可能であるか、または特異的に相補的である分子である。アンチジーン分子は、dsDNA標的を対象とするアンチセンス分子またはセンス分子のいずれかである。
【0027】
ブラキュリ:ブラキュリ遺伝子は、原腸形成の進行中の中胚葉発生のために重要であることが公知である。ブラキュリは、保存されたDNA結合ドメインを特徴とする、Tボックス転写因子と呼ばれる転写因子ファミリーの初めのメンバーであり(PapaioannouおよびSilver, Bioessays 20(1):9-19, 1998)、脊椎動物における中胚葉の形成および組織化において不可欠な役割を有する(例えば、KispertおよびHerrmann, Embo J 12(8):3211-20, 1993を参照されたい)。例えば、アフリカツメガエル(Xenopus)において、ブラキュリは、アクチビンまたはTGF-βなどの中胚葉誘導因子の初期即時応答遺伝子であり、胚へのブラキュリmRNAの注射は、異所性の中胚葉発生を誘導するのに十分である(Smith et al., Cell 67(1):79-87, 1991)。発生プロセスの制御におけるTボックスタンパク質の基本的な役割に加えて、このファミリーのいくつかのメンバーは、癌において調節解除されていると思われる。ヒトTbx2遺伝子は、膵臓癌細胞株において増幅されており(Mahlamaki et al., Genes Chromosomes Cancer 35(4):353-8, 2002)、BRCA-1が変異した乳房腫瘍およびBRCA-2が変異した乳房腫瘍において過剰発現されている(Sinclair et al., Cancer Res 62(13):3587-9, 2002)ことが報告されている。ブラキュリ発現は、ヒト奇形癌株(胚細胞腫瘍の部分集団、奇形癌は、中胚葉に分化する能力を有する胚性癌細胞である)において(Fan et al., Cancer Res 64(15):5132-9, 2004)、ならびに脊索腫において(Vujovic et al, J Pathol 209(2):157-65, 2006)、以前に報告されている。例示的なヒトブラキュリのアミノ酸配列および核酸配列は、2007年2月23日に利用可能となり、参照により本明細書に組み入れられる、GENBANK(登録商標)アクセッション番号NP_003172およびGENBANK(登録商標)アクセッション番号NM_003181において説明されている。
【0028】
癌または腫瘍:分化の喪失、増殖速度の上昇、周辺組織の浸潤を伴う特徴的な退形成を経、かつ転移することができる悪性新生物。例えば、前立腺癌は、前立腺組織中で、または前立腺組織から生じる悪性新生物であり、卵巣癌は、卵巣組織中で、または卵巣組織から生じる悪性新生物であり、結腸癌は、結腸組織中で、または結腸組織から生じる悪性新生物であり、肺癌は、肺中で生じる悪性新生物である。残存癌は、癌を軽減または根絶するために対象に施される任意の形態の治療後に対象中に残存している癌である。転移癌は、転移癌が由来する元の(原発性)癌の発生部位以外の体内の1つまたは複数の部位にある癌である。癌には肉腫および癌腫が含まれるがそれらに限定されるわけではない。前立腺癌は、一般に腺に由来する、前立腺の悪性腫瘍である。前立腺癌には腺癌および小細胞癌が含まれる。
【0029】
cDNA(相補的DNA):内部の非コードセグメント(イントロン)および転写を決定する調節配列を欠くDNAの小片。cDNAは、細胞から抽出されたメッセンジャーRNAからの逆転写によって実験室において合成される。
【0030】
保存的変種:「保存的」アミノ酸置換とは、ブラキュリの抗原性エピトープの活性または抗原性に実質的に影響を及ぼすことも、それらを減少させることもしない置換である。保存的置換の非限定的な具体例には以下の例が含まれる:
【0031】

【0032】
保存的変種(variation)という用語はまた、置換されたポリペプチドに対して産生させた抗体が置換されていないポリペプチドとも免疫反応することを条件として、置換されていない親アミノ酸の代わりに置換されたアミノ酸を使用することを含む。非保存的置換とは、活性または抗原性を低減させる置換である。
【0033】
CD4:分化因子クラスター4。MHCクラスII分子との相互作用を媒介するT細胞表面タンパク質。CD4はまた、HIV感染の間、T細胞上でのHIVに対する主要な受容体部位として働く。CD4を発現する細胞は、しばしばヘルパーT細胞である。
【0034】
CD8:分化因子クラスター8。MHCクラスI分子との相互作用を媒介するT細胞表面タンパク質。CD8を発現する細胞は、しばしば細胞障害性T細胞である。
【0035】
化学療法;化学療法剤:異常な細胞増殖を特徴とする疾患の治療において治療的有用性を有する任意の化学薬剤。このような疾患には、腫瘍、新生物、および癌、ならびに乾癬のような過形成性増殖を特徴とする疾患が含まれる。1つの態様において、化学療法剤は、固形腫瘍のような新生物を治療する際に有用な薬剤である。1つの態様において、化学療法剤は放射性分子である。当業者は、有用な化学療法剤を容易に同定することができる(例えば、SlapakおよびKufe、Principles of Cancer Therapy, Harrison's Principles of Internal Medicineの86章、第14版; Perry et al., Chemotherapy, Abeloff, Clinical Oncology第2版の17章、(著作権)2000 Churchill Livingstone, Inc; Baltzer L, Berkery R (編): Oncology Pocket Guide to Chemotherapy、第2版 St. Louis, Mosby-Year Book, 1995; Fischer DS, Knobf MF, Durivage HJ (編): The Cancer Chemotherapy Handbook、第4版 St. Louis, Mosby-Year Book, 1993を参照されたい)。本明細書において開示される免疫原性ブラキュリポリペプチドは、その他の化学療法剤と併用され得る。
【0036】
〜から本質的になる/〜からなる:ポリペプチドに関し、いかなる付加的なアミノ酸残基も含まない場合、指定されたアミノ酸配列から本質的になるポリペプチド。しかしながら、ポリペプチドは、標識(例えば、蛍光性標識、放射性標識、もしくは固体粒子標識)、糖、または脂質などの付加的な非ペプチド構成要素を含んでよい。ポリペプチドに関して、指定されたアミノ酸配列からなるポリペプチドは、いかなる付加的なアミノ酸残基も含まず、脂質、糖、または標識などの付加的な非ペプチド構成要素も含まない。
【0037】
共刺激分子:TCRとペプチド-MHCとの結合により1つのシグナルがT細胞に送達されるが、このシグナル単独では、T細胞を活性化するのに不十分な場合がある。共刺激分子は、それらのリガンドに結合された場合に、T細胞が活性化されるようにするのに必要とされる第2のシグナルを送達する分子である。T細胞上の最も周知である共刺激分子はCD28であり、B7-1(CD80とも呼ばれる)またはB7-2(CD86としても公知)のいずれかに結合する。その他の共刺激分子はB7-3である。同様にT細胞の活性化のための第2のシグナルを提供するアクセサリー分子には、細胞内接着分子(ICAM-1およびICAM-2)、白血球機能関連抗原(LFA-1、LFA-2、およびLFA-3)が含まれる。インテグリンおよび腫瘍壊死因子(TNF)スーパーファミリーメンバーもまた、共刺激分子として働き得る。
【0038】
縮重変種:遺伝コードが原因で縮重している配列を含むブラキュリのエピトープをコードするポリヌクレオチド。天然アミノ酸は20個あり、その大半は、複数のコドンによって指定されている。したがって、縮重ヌクレオチド配列はすべて、そのヌクレオチド配列にコードされるブラキュリポリペプチドのアミノ酸配列が不変である限り、本開示に含まれる。
【0039】
樹状細胞(DC):樹状細胞は、一次免疫応答に関与している主要な抗原提示細胞(APC)である。樹状細胞には、形質細胞様樹状細胞および骨髄系樹状細胞が含まれる。それらの主要な機能は、組織中の抗原を獲得し、リンパ系器官に移動し、T細胞を活性化するために抗原を提示することである。未熟な樹状細胞は骨髄中で生じ、未熟細胞として末梢中に存在する。
【0040】
診断:病理学的状態、例えば、限定されるわけではないが、小腸癌、胃癌、腎臓癌、膀胱癌、子宮癌、卵巣癌、精巣癌、肺癌、結腸癌、または前立腺癌などの癌の存在または性質を特定すること。診断方法は、感度および特異度が異なる。診断アッセイ法の「感度」は、試験の結果が陽性である罹病個体の百分率(真の陽性のパーセント)である。診断アッセイ法の「特異度」は、1-偽陽性率であり、偽陽性率は、疾患に罹患していないが試験の結果が陽性である者の比率と定義される。特定の診断方法が、ある状態の決定的診断を提供しない場合があるが、診断を助ける陽性の指標をその方法が提供するならば、十分である。「予後」とは、前立腺癌のような病理学的状態の発達(例えば、重症度)または転移の確率を予測することを意味する。
【0041】
上皮間葉移行:上皮は、血管の内壁および生物学的セメント物質によって連結されている細胞からなる他の小腔を含む、身体の内表面および外表面の被覆物である。一般に、完全に分化した上皮細胞は、インスリンのような分化した表現型に特徴的なタンパク質を発現し、増殖能力は限定されている。間葉は、中胚葉中の緩くまとめられた胚性結合組織の網目構造であり、これから、血管およびリンパ管と共に、身体の結合組織が形成される。ビメンチンは、間葉細胞の1つのマーカーである。間葉細胞は一般に、インビトロで増殖する能力が上皮細胞よりも高く、完全に分化していない。「上皮間葉」移行は、細胞または細胞集団が、上皮表現型から分化の程度が低い間葉表現型に転換する生物学的プロセスである。「間葉上皮」移行は、細胞または細胞集団が、分化の程度が低い間葉表現型から分化の程度が高い上皮表現型に転換する生物学的プロセスである。
【0042】
エピトープ:抗原決定基。これらは、抗原性である(特異的免疫応答を誘発する)、分子上の特定の化学基またはペプチド配列である。抗体は、ポリペプチド上の特定の抗原エピトープに特異的に結合する。エピトープは、連続したアミノ酸またはタンパク質の三次フォールディングによって並置される非連続的なアミノ酸の両方から形成され得る。連続したアミノ酸から形成されたエピトープは、変性溶媒に曝露された際に典型的には保持されるのに対し、三次フォールディングによって形成されたエピトープは、変性溶媒を用いて処理すると、典型的には破壊される。エピトープは、典型的には、独特な空間的配置の少なくとも3個、およびより一般的には、少なくとも5個、約9個、または8〜10個のアミノ酸を含む。エピトープの空間的配置を決定する方法には、例えば、X線結晶構造解析および二次元核磁気共鳴が含まれる。例えば、「Epitope Mapping Protocols」、Methods in Molecular Biology、第66巻、Glenn E. Morris編(1996)を参照されたい。1つの態様において、エピトープは、HLA分子またはDR分子などのMHC分子に結合する。これらの分子は、約8個〜約10個のアミノ酸、例えば9個のアミノ酸によって隔てられた正確なアンカーアミノ酸を有するポリペプチドに結合する。
【0043】
発現制御配列:それが機能的に連結されている異種核酸配列の発現を調節する核酸配列。発現制御配列は、ある核酸配列の転写、および必要に応じて翻訳をその発現制御配列が制御および調節する場合、その核酸配列に機能的に連結されている。したがって、発現制御配列は、適切なプロモーター、エンハンサー、転写ターミネーター、タンパク質をコードする遺伝子の前の開始コドン(すなわちATG)、イントロンに対するスプライシングシグナル、mRNAの適切な翻訳を可能にするためのその遺伝子の正確なリーディングフレームの維持、および停止コドンを含んでよい。「制御配列」という用語は、その存在が発現に影響し得る構成要素を最低でも含むと意図され、かつ、その存在が有利である付加的な構成要素、例えば、リーダー配列および融合パートナー配列も含み得る。発現制御配列は、プロモーターを含んでよい。
【0044】
プロモーターは、転写を指示するのに十分な最小限の配列である。また、プロモーター依存性の遺伝子発現を細胞型特異的、組織特異的に制御可能にするか、または外部のシグナルもしくは作用物質によって誘導可能にするのに十分であるプロモーターエレメントも含まれ、これらのエレメントは、遺伝子の5'領域または3'領域に位置してよい。構成的プロモーターおよび誘導性プロモーターの両方が含まれる(例えば、Bitter et al., Methods in Enzymology 153:516-544, 1987を参照されたい)。例えば、細菌系にクローニングする場合、バクテリオファージλのpL、plac、ptrp、およびptac(ptrp-lacハイブリッドプロモーター)などの誘導性プロモーターが使用され得る。1つの態様において、哺乳動物細胞系にクローニングする場合、哺乳動物細胞のゲノムに由来するプロモーター(例えば、メタロチオネインプロモーター)または哺乳動物ウイルスに由来するプロモーター(例えば、レトロウイルス長末端反復;アデノウイルス後期プロモーター;ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター)が使用され得る。組換えDNAまたは合成技術によって作製されるプロモーターもまた、核酸配列の転写を提供するために使用され得る。
【0045】
異種:異なる遺伝的供給源または種に由来すること。ブラキュリに対して異種であるポリペプチドは、ブラキュリをコードしない核酸に由来する。1つの非限定的な具体例において、ブラキュリに由来する9個の連続したアミノ酸またはブラキュリに由来する多くても12個の連続したアミノ酸および異種アミノ酸配列を含むポリペプチドは、β-ガラクトシダーゼ、マルトース結合タンパク質、およびアルブミン、B型肝炎表面抗原、または免疫グロブリンアミノ酸配列を含む。一般に、関心対象のタンパク質に特異的に結合する抗体は、異種タンパク質に特異的に結合しない。
【0046】
宿主細胞:その中でベクターを繁殖させ、そのDNAを発現させることができる細胞。細胞は原核性または真核性でよい。細胞はヒト細胞のような哺乳動物のものでよい。また、この用語は、対象宿主細胞の任意の子孫も含む。複製の進行中に起こる変異が存在し得るため、すべての子孫が親細胞と同一とは限らない可能性があることが理解されよう。しかしながら、「宿主細胞」という用語が使用される場合、このような子孫は含まれる。
【0047】
免疫応答:B細胞、T細胞、または単球などの免疫系細胞の刺激に対する応答。1つの態様において、応答は、特定の抗原に対して特異的である(「抗原特異的応答」)。1つの態様において、免疫応答は、CD4+応答またはCD8+応答などのT細胞応答である。別の態様において、応答はB細胞応答であり、特異的抗体の産生をもたらす。
【0048】
免疫原性ペプチド:ペプチドがMHC分子に結合し、免疫原性ペプチドが由来する抗原に対する細胞障害性Tリンパ球(「CTL」)応答またはB細胞応答(例えば、抗体産生)を誘導するように、アレル特異的モチーフまたは他の配列を含むペプチド。
【0049】
1つの態様において、免疫原性ペプチドは、配列モチーフまたはニューラルネット判定もしくは多項式判定など当技術分野において公知の他の方法を用いて同定される。典型的には、アルゴリズムは、ペプチドの「結合閾値」を決定して、特定の親和力で結合する高い確率をそれらに与え、免疫原性であると考えられるスコアを有するものを選択するために使用される。アルゴリズムは、特定の位置における特定のアミノ酸のMHC結合に対する影響、特定の位置における特定のアミノ酸の抗体結合に対する影響、またはモチーフを含むペプチドにおける特定の置換物の結合に対する影響のいずれかに基づいている。免疫原性ペプチドの文脈において、「保存残基」とは、あるペプチドの特定の位置に、ランダムな分布によって予想されるよりも有意に高い頻度で出現するものである。1つの態様において、保存残基は、MHC構造体が免疫原性ペプチドとの接触点を提供し得る残基である。
【0050】
また、免疫原性ペプチドは、特異的なMHCタンパク質(例えば、HLA-A02.01)へのそれらの結合を測定することにより、ならびにMHCタンパク質において提示された場合にCD4および/またはCD8を刺激するそれらの能力に基づいて同定することができる。免疫原性ポリペプチドの特徴は、例えば、参照により本明細書に組み入れられるPCT公報WO 00/12706において開示されている。
【0051】
1つの例において、免疫原性「ブラキュリペプチド」は、ブラキュリタンパク質に由来し、一般に7〜20の間のアミノ酸長、例えば、長さが約8〜11個の残基である一続きの連続的なアミノ酸残基である。アミノ酸残基9個もしくは10個の長さ、または多くても12アミノ酸長である具体的な免疫原性ブラキュリポリペプチドが、本明細書において開示される。一般に、免疫原性ブラキュリポリペプチドは、B細胞応答またはT細胞応答などの免疫応答を対象において誘導するために使用され得る。1つの例において、免疫原性ブラキュリポリペプチドは、主要組織適合遺伝子複合体クラスI分子に結合された場合、野生型ブラキュリタンパク質を発現する細胞に対する細胞障害性Tリンパ球(CTL)を活性化する。合成ペプチドを用いたCTLの誘導および当技術分野において公知のCTL細胞障害アッセイ法については、参照により本明細書に組み入れられる米国特許第5,662,907号を参照されたい。1つの例において、免疫原性ペプチドは、ペプチドがMHC分子に結合し、免疫原性ペプチドが由来する抗原に対する細胞障害性Tリンパ球(「CTL」)応答を誘導するように、アレル特異的モチーフまたは他の配列を含む。
【0052】
免疫原性組成物:免疫原性ブラキュリポリペプチドまたは免疫原性ブラキュリポリペプチドをコードする核酸を含み、ブラキュリポリペプチドを発現する細胞に対して測定可能なCTL応答を誘導するか、またはブラキュリポリペプチドに対して測定可能なB細胞応答(例えば、ブラキュリに特異的に結合する抗体の産生)を誘導する組成物。インビトロで使用する場合、免疫原性組成物は、単離された核酸、その核酸を含むベクター、および/または免疫原性ペプチドからなってよい。インビボで使用する場合、免疫原性組成物は、典型的には、薬学的に許容される担体中の核酸、その核酸を含むベクター、および/もしくは免疫原性ポリペプチド、ならびに/または他の作用物質を含む。免疫原性組成物は、任意で、アジュバント、共刺激分子、または共刺激分子をコードする核酸を含んでよい。ブラキュリポリペプチドまたはこのポリペプチドをコードする核酸がCTLを誘導する能力は、当技術分野において認識されているアッセイ法によって容易に試験することができる。
【0053】
疾患の抑制または治療:腫瘍増殖のような疾患の抑制とは、疾患の完全な発達を阻害することを意味する。いくつかの例において、疾患の抑制とは、癌に罹患していることが公知である人物において腫瘍随伴症候群の発症を予防すること、または腫瘍の徴候もしくは症状を緩和するか、または腫瘍体積を減少させることなど、腫瘍の症状を緩和することを意味する。「治療」とは、疾患または疾患に関連した病理学的状態の徴候もしくは症状、例えば腫瘍を改善する治療的介入を意味する。
【0054】
単離された:「単離された」生物学的構成要素(核酸もしくはタンパク質または細胞小器官など)は、その構成要素が天然に存在する場である生物の細胞中の他の生物学的構成要素、すなわち、他の染色体DNAおよびRNAならびに染色体外DNAおよびRNA、タンパク質、ならびに細胞小器官から実質的に分離されているか、または精製されてそれらを含まない。「単離された」核酸およびタンパク質には、標準的な精製方法によって精製された核酸およびタンパク質が含まれる。この用語はまた、宿主細胞における組換え発現によって調製された核酸およびタンパク質、ならびに化学的に合成された核酸も包含する。
【0055】
標識:別の分子の検出を容易にするために、その分子に直接的または間接的に結合される検出可能な化合物または組成物。標識の非限定的な具体例には、蛍光性タグ、酵素的結合、および放射性同位元素が含まれる。
【0056】
リンカー配列:リンカー配列は、2つのポリペプチドドメインを共有結合的に連結するアミノ酸配列である。リンカー配列は、本明細書において開示されるブラキュリエピトープの間に含まれて、連結されたポリペプチドドメインに回転の自由を与え、それによって、適切なドメインフォールディングおよびMHCへの提示を促進することができる。例えば、2つのブラキュリドメインを含む組換えポリペプチドにおいて、ブラキュリポリペプチド-リンカー-ブラキュリポリペプチドを含むポリペプチドのように、リンカー配列をそれらの間に提供することができる。リンカー配列は、一般に、2〜25の間のアミノ酸長であり、当技術分野において周知であり、Chaudhary et al., Nature 339:394-397, 1989に記載されているグリシン(4)-セリンスペーサー(GGGGS×3)が含まれるがそれに限定されるわけではない。
【0057】
リンパ球:身体の免疫防御に関与している、あるタイプの白血球。リンパ球には2つの主要なタイプ、すなわちB細胞およびT細胞がある。
【0058】
主要組織適合遺伝子複合体(MHC):ヒト白血球抗原(「HLA」)を含む、様々な種において説明されている組織適合抗原系を含むことが意図される総称。
【0059】
哺乳動物:この用語は、ヒトおよび非ヒト哺乳動物の両方を含む。同様に、「対象」という用語は、ヒト対象および獣医学的対象の両方を含む。
【0060】
新生物:良性腫瘍および悪性腫瘍、ならびに他の増殖性障害を含む、異常な細胞増殖。
【0061】
オリゴヌクレオチド:ヌクレオチド塩基約100個までの長さの直線状ポリヌクレオチド配列。
【0062】
オープンリーディングフレーム(ORF):いかなる内部の終止コドンも含まない、アミノ酸をコードするひと続きのヌクレオチドトリプレット(コドン)。通常、これらの配列はペプチドに翻訳可能である。
【0063】
機能的に連結される:第1の核酸配列が第2の核酸配列と機能的な関係で配置されている場合、第1の核酸配列は、第2の核酸配列に機能的に連結されている。例えば、プロモーターが、ブラキュリポリペプチドをコードする配列のようなコード配列の転写または発現に影響を及ぼす場合、そのプロモーターはコード配列に機能的に連結されている。一般に、機能的に連結されたDNA配列は連続的であり、2つのタンパク質コード領域を連結することが必要な場合は、同じリーディングフレーム中にある。
【0064】
ペプチド改変:ブラキュリエピトープには、本明細書において説明するペプチドの合成態様が含まれる。さらに、これらのタンパク質の類似体(非ペプチド性有機分子)、誘導体(開示されるペプチド配列から出発して得られる、化学的に官能化したペプチド分子)、および変種(ホモログ)が、本明細書において説明する方法において利用され得る。本開示の各ポリペプチドは、L-アミノ酸および/またはD-アミノ酸のいずれかでよく、天然またはその反対でよい、アミノ酸の配列からなる。
【0065】
様々な化学技術によってペプチドを改変して、未改変のペプチドと本質的に同じ活性を有し、かつ、他の望ましい特性を任意で有する誘導体を作製することができる。例えば、タンパク質のカルボン酸基は、カルボキシル末端であろうと側鎖であろうと、薬学的に許容される陽イオンの塩の形態で提供するか、もしくはエステル化してC1〜C16エステルを形成させるか、または式NR1R2(R1およびR2はそれぞれ独立にHもしくはC1〜C16アルキルである)のアミドに変換するか、もしくは組み合わせて複素環、例えば5員環もしくは6員環を形成させることができる。ペプチドのアミノ基は、アミノ末端であろうと側鎖であろうと、HCl塩、HBr塩、酢酸塩、安息香酸塩、トルエンスルホン酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、および他の有機塩など薬学的に許容される酸付加塩の形態でよく、またはC1〜C16のアルキルアミノもしくはジアルキルアミノに改変するか、もしくはアミドにさらに変換することができる。
【0066】
ペプチド側鎖のヒドロキシル基は、十分に認識された技術を用いて、C1〜C16アルコキシまたはC1〜C16エステルに変換することができる。ペプチド側鎖のフェニル環およびフェノール環は、フッ素、塩素、臭素、もしくはヨウ素など1つもしくは複数のハロゲン原子で、または、C1〜C16アルキル、C1〜C16アルコキシ、カルボン酸およびそのエステル、もしくはそのようなカルボン酸のアミドで置換されてよい。ペプチド側鎖のメチレン基を伸長して、同族列のC2〜C4アルキレンにしてよい。チオールは、アセトアミド基のようないくつかの十分に認識された保護基のいずれか1つで保護することができる。当業者はまた、安定性の向上をもたらす構造体への立体構造的制約を選択し、提供するために、本発明のペプチドに環状構造を導入するための方法も認識するであろう。
【0067】
ペプチド模倣体および有機模倣体(organomimetic)の態様が想定される。この態様では、そのようなペプチド模倣体および有機模倣体の化学的構成成分の三次元配置が、ペプチド主鎖および構成要素のアミノ酸側鎖の三次元配置を模倣し、その結果、免疫応答を生じさせる能力が測定可能であるか、または強化された、免疫原性ブラキュリポリペプチドのこのようなペプチド模倣体および有機模倣体が得られる。コンピューターモデリングを適用する場合、ファルマコフォアは、生物活性に対する構造要件の理想的な三次元定義である。ペプチド模倣体およ有機模倣体は、現在のコンピューターモデリングソフトウェアを用いて(コンピューター支援ドラッグデザインまたはCADDを用いて)、各ファルマコフォアにぴったり合うように設計することができる。CADDにおいて使用される技術の説明に関しては、Walters、「Computer-Assisted Modeling of Drugs」、Klegerman およびGroves編、1993, Pharmaceutical Biotechnology, Interpharm Press: Buffalo Grove, IL, 165〜174頁、ならびに Principles of Pharmacology, Munson (編)1995、102章を参照されたい。このような技術を用いて調製した模倣体も同様に含まれる。
【0068】
薬学的に許容される担体:有用な薬学的に許容される担体は、慣例的である。Remington 's Pharmaceutical Sciences、E. W. Martin著、Mack Publishing Co., Easton, PA, 第15版(1975)では、本明細書において開示される融合タンパク質の薬学的送達に適した組成物および製剤を記述している。
【0069】
一般に、担体の性質は、使用される個々の投与様式に依存すると考えられる。例えば、非経口製剤は、水、生理食塩水、平衡塩類溶液、デキストロース水溶液、またはグリセロールなどの薬学的かつ生理学的に許容される液体をビヒクルとして含む注射用液剤を通常含む。固形組成物(例えば、散剤、丸剤、錠剤、またはカプセル剤の形態)の場合、従来の非毒性固形担体には、例えば、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、またはステアリン酸マグネシウムが含まれ得る。生物学的に中性な担体の他に、投与される薬学的組成物は、少量の非毒性補助物質、例えば、湿潤剤または乳化剤、保存剤、およびpH緩衝剤など、例えば、酢酸ナトリウムまたはソルビタンモノラウラートも含んでよい。
【0070】
「治療的有効量」は、治療される対象において所望の効果を実現するための組成物または細胞の量である。例えば、これは、免疫応答を誘導するため、腫瘍増殖を阻害するため、腫瘍体積を減少させるため、または腫瘍の外面的な症状を測定可能な程度に変更させるために必要な量であり得る。対象に投与される場合、インビトロで効果を実現することが示されている標的組織濃度(例えば、リンパ球中)を実現する投与量が一般に使用される。
【0071】
ポリヌクレオチド:ポリヌクレオチドまたは核酸配列という用語は、少なくとも10塩基長であるポリマー型のヌクレオチドである。組換えポリヌクレオチドは、由来元である生物の天然ゲノムにおいては、そのすぐ横に連続しているコード配列の両方(5'末端に1つおよび3'末端に1つ)のすぐ横に連続していないポリヌクレオチドを含む。したがって、この用語は、例えば、ベクター;自律複製型のプラスミドもしくはウイルス;または原核生物もしくは真核生物のゲノムDNA中に組み込まれるか、または、他の配列から独立した単独の分子(例えばcDNA)として存在する組換えDNAを含む。ヌクレオチドは、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、またはいずれかのヌクレオチドの改変型でよい。この用語は、一本鎖型および二本鎖型のDNAを含む。
【0072】
ポリペプチド:長さも翻訳後修飾(例えば、グリコシル化またはリン酸化)も問わない、任意のアミノ酸鎖。1つの態様において、ポリペプチドはブラキュリポリペプチドである。ポリペプチドは、3〜30の間のアミノ酸長でよい。1つの態様において、ポリペプチドは、約7〜約25アミノ酸長である。さらに別の態様において、ポリペプチドは、約8〜約12アミノ酸長である。さらに別の態様において、ペプチドは、約9アミノ酸長である。ポリペプチドに関して、「約」という単語は、整数の量を示す。したがって、1つの例において、「約」9アミノ酸長のポリペプチドは、8〜10アミノ酸長である。
【0073】
プローブおよびプライマー:プローブは、検出可能な標識またはレポーター分子に結合された、単離された核酸を含む。プライマーは、約15またはそれ以上のヌクレオチド長の短い核酸、好ましくはDNAオリゴヌクレオチドである。プライマーは、核酸ハイブリダイゼーションによって相補的な標的DNA鎖にアニールさせて、プライマーと標的DNA鎖の間にハイブリッドを形成させ、次いで、DNAポリメラーゼ酵素により、標的DNA鎖に沿って伸長させることができる。プライマー対は、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)または当技術分野において公知である他の核酸増幅方法による核酸配列の増幅のために使用することができる。当業者は、個々のプローブまたはプライマーの特異性が、その長さと共に増大することを理解するであろう。したがって、例えば、20個の連続したヌクレオチドを含むプライマーは、わずか15個のヌクレオチドからなる対応するプライマーよりも高い特異性で標的にアニールする。したがって、より高い特異性を得るために、約20個、25個、30個、35個、40個、50個またはそれ以上の連続したヌクレオチドを含むプローブおよびプライマーを選択することができる。
【0074】
精製された:本明細書において開示されるブラキュリのエピトープは、当技術分野において公知の手段のいずれかによって精製(および/または合成)することができる(例えば、Guide to Protein Purification、Deutscher編、Meth. Enzymol. 185, Academic Press, San Diego, 1990;およびScopes, Protein Purification: Principles and Practice, Springer Verlag, New York, 1982を参照されたい)。実質的な精製は、他のタンパク質または細胞構成要素からの精製を意味する。実質的に精製されたタンパク質は、少なくとも約60%、70%、80%、90%、95%、98%、または99%純粋である。したがって、1つの非限定的な具体例において、実質的に精製されたタンパク質は90%で、他のタンパク質も細胞構成要素も含まない。
【0075】
したがって、精製されたという用語は、絶対的な純度を要求しない。もっと正確に言えば、相対的な用語として意図される。例えば、精製された核酸とは、その核酸が、細胞内部の天然環境中の核酸よりも濃縮されているものである。さらなる態様において、核酸または細胞の調製物は、核酸または細胞が、それぞれ調製物の核酸または細胞の総含有量の少なくとも約60%(例えば、非限定的に、70%、80%、90%、95%、98%、または99%)に相当するように精製される。
【0076】
組換え:組換え核酸は、天然には存在しない配列を有するか、または別の状況では分離されている配列の2つのセグメントを人工的に組み合わせることによって作製される配列を有するものである。この人工的組合せは、しばしば、化学合成によって、またはより一般には、例えば遺伝子工学技術によって、核酸の単離されたセグメントを人工的に操作することにより、達成される。
【0077】
選択的にハイブリダイズする:無関係のヌクレオチド配列を排除する中度または高度にストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーション。
【0078】
核酸ハイブリダイゼーション反応において、特定のレベルのストリンジェンシーを実現するために使用される条件は、ハイブリダイズされる核酸の性質に応じて変化すると考えられる。例えば、核酸のハイブリダイズする領域の長さ、相補性の程度、ヌクレオチド配列の組成(例えば、GC対ATの含有量)、および核酸のタイプ(例えば、RNA対DNA)を、ハイブリダイゼーション条件を選択する際に考慮することができる。その他の考慮すべき事柄は、核酸のうち1つが、例えばフィルター上に固定化されているかどうかである。
【0079】
徐々に高度になるストリンジェンシー条件の具体例は次のとおりである:2×SSC/0.1%SDS、ほぼ室温(ハイブリダイゼーション条件);0.2×SSC/0.1%SDS、ほぼ室温(低ストリンジェンシー条件);0.2×SSC/0.1%SDS、約42℃(中ストリンジェンシー条件);および0.1×SSC、約68℃(高ストリンジェンシー条件)。当業者は、これらの条件の変形例を容易に決定することができる(例えば、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第2版、第1〜3巻、Sambrook et al.,編、Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989)。洗浄は、これらの条件のうち1つのみ、例えば高ストリンジェンシー条件を用いて実施することができるか、または、各条件を使用することができ、例えば、それぞれ10〜15分間、上記に挙げた順序で、列挙した段階のいずれかまたはすべてを繰り返してよい。しかしながら、前述したように、最適な条件は、関与する具体的なハイブリダイゼーション反応に応じて変動すると考えられ、実験的に決定することができる。
【0080】
配列同一性:アミノ酸配列間の類似性は、配列間の類似性によって表現され、別の方法では配列同一性と呼ばれる。配列同一性は、同一性(または類似性もしくは相同性)百分率によってしばしば測定され、百分率が高いほど、2つの配列の類似性は高い。ブラキュリポリペプチドのホモログまたは変種は、標準的な方法を用いて整列させた場合に比較的高度な配列同一性を有する。
【0081】
比較のために配列をアライメントする方法は、当技術分野において周知である。様々なプログラムおよびアライメントアルゴリズムが、SmithおよびWaterman、Adv. Appl. Math. 2:482, 1981; NeedlemanおよびWunsch、J. Mol. Biol. 48:443, 1970; HigginsおよびSharp、Gene 73:237, 1988; HigginsおよびSharp、CABIOS 5:151, 1989; Corpet et al., Nucleic Acids Research 16:10881, 1988;ならびにPearsonおよびLipman, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:2444, 1988に記載されている。Altschul et al., Nature Genet. 6:119, 1994では、配列アラインメント方法および相同性計算の詳細な考察が示されている。
【0082】
NCBI Basic Local Alignment Search Tool (BLAST) (Altschul et al., J. Mol. Biol. 215:403, 1990)は、国立バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information)(NCBI, Bethesda, MD)およびインターネット上を含むいくつかの情報源から入手可能であり、配列解析プログラムblastp、blastn、blastx、tblastn、およびtblastxと共に使用される。このプログラムを用いて配列同一性を決定する方法の説明は、インターネット上のNCBIウェブサイトにおいて入手可能である。
【0083】
ブラキュリポリペプチドのホモログおよび変種は、典型的には、初期設定パラメーターに設定されたNCBI Blast2.0、ギャップ有りblastpを用いてブラキュリのアミノ酸配列との全長アライメントに渡って算出される配列同一性が、少なくとも75%、例えば少なくとも80%であることを特徴とする。約30個より多いアミノ酸のアミノ酸配列を比較するために、初期設定パラメーターに設定された初期設定BLOSUM62マトリックスを用いて、Blast 2配列機能が使用される(ギャップ存在コスト11、および1残基当りのギャップコスト1)。短いペプチド(30個前後のアミノ酸より少ない)を整列させる場合、アライメントは、Blast 2配列機能を用い、初期設定パラメーターに設定されたPAM30マトリックスを使用して(オープンギャップ9、伸長ギャップ1のペナルティ)実施すべきである。参照配列に対する類似性がさらに大きなタンパク質は、この方法によって評価した場合に、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性など漸増する同一性百分率を示すと考えられる。全体よりも小さな配列が配列同一性に関して比較される場合、ホモログおよび変種は、典型的には、10〜20個のアミノ酸の短いウインドウに渡って少なくとも80%の配列同一性を有すると考えられ、参照配列に対する類似性によって、少なくとも85%または少なくとも90%もしくは95%の配列同一性を有し得る。このような短いウインドウにおける配列同一性を決定するための方法は、インターネット上のNCBIウェブサイトにおいて利用可能である。当業者は、これらの配列同一性範囲が、手引きのためにのみ提供されることを理解するであろう。提供された範囲から外れるが極めて重要なホモログが獲得され得ることは、まったくもって可能である。
【0084】
低分子干渉RNA:無脊椎動物種および脊椎動物種において発現の遺伝子特異的阻害を誘導することができる、合成または天然に産生された小さな二本鎖RNA(dsRNA)が提供される。これらのRNAは、標的遺伝子の発現の干渉または阻害に適しており、各鎖上に0〜約5ヌクレオチド長の3'オーバーハングおよび/または5'オーバーハングを含む、ヌクレオチド約15個〜約40個の二本鎖RNAを含み、二本鎖RNAの配列は、発現の干渉または阻害が望まれる標的遺伝子のコード領域のある部分に本質的に同一である。二本鎖RNAは、相補的ssRNAから、もしくはヘアピンを形成する一本鎖RNAから、またはDNAベクターからの発現から形成され得る。
【0085】
特異的結合物質:所定の標的にのみ実質的に結合する作用物質。したがって、ブラキュリ特異的結合物質は、ブラキュリポリペプチドに実質的に結合する作用物質である。1つの態様において、特異的結合物質は、ブラキュリに特異的に結合するモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体である。
【0086】
T細胞:免疫応答に不可欠な白血球。T細胞にはCD4+ T細胞およびCD8+ T細胞が含まれるが、それらに限定されるわけではない。CD4+ Tリンパ球は、「分化クラスター4」(CD4)として公知であるマーカーを表面に保有する免疫細胞である。これらの細胞は、ヘルパーT細胞としても公知であり、抗体応答を含む免疫応答、ならびにキラーT細胞応答を調整するのに寄与する。CD8+ T細胞は、「分化クラスター8」(CD8)マーカーを保有する。1つの態様において、CD8 T細胞は細胞障害性Tリンパ球である。別の態様において、CD8細胞は、サプレッサーT細胞である。
【0087】
治療的に活性なポリペプチド:臨床応答(例えば、免疫細胞集団の増加、ブラキュリを発現する細胞に対する細胞溶解活性の増大、または腫瘍量の測定可能な減少)に基づいて測定した際に、免疫応答の誘導を引き起こすブラキュリのエピトープのような作用物質。また、治療的に活性な分子は、核酸から作製することもできる。核酸ベースの治療的に活性な分子の例は、ブラキュリエピトープをコードし、プロモーターのような制御エレメントに機能的に連結されている核酸配列である。治療的に活性な分子の別の例は、ブラキュリに対するアンチセンス分子またはsiRNAである。
【0088】
1つの態様において、ブラキュリポリペプチドのような組成物の治療的有効量は、免疫応答を生じさせるためか、または対象の癌を治療するために使用される量である。いくつかの例において、「治療」とは、癌の徴候もしくは症状を改善する治療的介入、または腫瘍量の減少を意味する。
【0089】
形質導入された:形質導入された細胞とは、分子生物学技術によって核酸分子をその中に導入された細胞である。本明細書において使用される場合、形質導入という用語は、ウイルスベクターによるトランスフェクション、プラスミドベクターによる形質転換、ならびにエレクトロポレーション、リポフェクション、およびパーティクルガン加速による裸DNAの導入を含む、そのような細胞中に核酸分子を導入し得る技術すべてを包含する。
【0090】
ベクター:宿主細胞中に導入され、それによって形質転換された宿主細胞をもたらす核酸分子。ベクターは、宿主細胞中でそれが複製することを可能にする核酸配列、例えば複製起点を含んでよい。また、ベクターは、1つまたは複数の選択マーカー遺伝子および当技術分野において公知である他の遺伝子エレメントも含んでよい。ベクターには、グラム陰性細菌細胞およびグラム陽性細菌細胞において発現させるためのプラスミドを含む、プラスミドベクターが含まれる。例示的なベクターには、大腸菌(E. coli)およびサルモネラ菌(Salmonella)において発現させるためのものが含まれる。また、ベクターには、限定されるわけではないが、レトロウイルスベクター、オルソポックスベクター、アビポックスベクター、鶏痘ベクター、カプリポックスベクター、スイポックスベクター、アデノウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、αウイルスベクター、バキュロウイルスベクター、シンドビスウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、およびポリオウイルスベクターなどのウイルスベクターも含まれる。また、ベクターには、酵母細胞において発現させるためのベクターも含まれる。
【0091】
他に説明が無い限り、本明細書において使用される技術用語および科学用語はすべて、本開示が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。単数形の用語「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈において特に指示がない限り、複数の指示対象を含む。同様に、「または」という単語は、文脈において特に指示がない限り、「および」を含むと意図される。核酸またはポリペプチドに関して与えられるすべての塩基サイズまたはアミノ酸サイズ、およびすべての分子量または分子質量の値は概算であり、説明のために提供されることをさらに理解すべきである。本明細書において説明するものと同様または等価な方法および材料は、本開示の実践または試験において使用され得るが、適切な方法および材料を後述する。「含む(comprises)」という用語は、「含む(includes)」を意味する。本明細書において言及される刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献はすべて、その全体が参照により組み入れられる。矛盾する場合には、用語の説明を含む本明細書が優先される。さらに、材料、方法、および実施例は、例示にすぎず、限定することを意図しない。
【0092】
免疫原性ブラキュリペプチド
ブラキュリ(「Tタンパク質」としても公知)は、中胚葉中で転写されるポリペプチドである。1つの態様において、このポリペプチドは、以下に示す配列を有する:

(参照により本明細書に組み入れられる、2007年2月23日に利用可能であるGENBANK(登録商標)アクセッション番号NP_003172およびGENBANK(登録商標)アクセッション番号NM_003181も参照されたい)。
【0093】
他の態様において、ブラキュリは、SEQ ID NO: 1と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有し、例えば、SEQ ID NO: 1に対して少なくとも約91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するポリペプチドである。
【0094】
この遺伝コードを用いて、当業者は、ブラキュリをコードする核酸配列を容易に作製することができる。1つの例において、ブラキュリは、以下に示す配列を有する核酸にコードされる:

【0095】
ブラキュリの免疫原性断片(およびブラキュリそれ自体)は、標準的な方法によって化学的に合成することができる。望ましいならば、新技術によってポリペプチドを化学的に合成することもできる。1つのこのようなプロセスは、W. Lu et al., Federation of European Biochemical Societies Letters. 429:31-35, 1998に記載されている。また、ポリペプチドは、分子遺伝学的技術を用いて、例えば、ブラキュリまたはそのエピトープをコードする核酸を発現ベクター中に挿入し、宿主細胞中にその発現ベクターを導入し、かつそのポリペプチドを単離することによって作製することもできる(下記を参照されたい)。
【0096】
免疫応答を誘導するために使用できる(免疫原性である)ブラキュリポリペプチドが、本明細書において開示される。これらのペプチドは、ブラキュリポリペプチドの多くても12個のアミノ酸、例えば、11個、10個のアミノ酸、または9個の連続したアミノ酸を含む。
【0097】
ブラキュリに由来する多くても12個の連続したアミノ酸を含み、WLLPGTSTX1(SEQ ID NO: 3)(X1はロイシン(L)またはバリン(V)である)として示すアミノ酸配列を含む、単離されたポリペプチドが開示される。いくつかの態様において、アミノ酸1(X1)はロイシンである。さらなる態様において、アミノ酸1(X1)はバリンである。1つの例において、ポリペプチドは、SEQ ID NO: 3に示すアミノ酸配列から本質的になる。したがって、1つの例において、ポリペプチドは、アミノ酸X1がバリン(V)であるSEQ ID NO: 3から本質的になり、別の例において、ポリペプチドは、アミノ酸X1がロイシンであるSEQ ID NO: 3から本質的になる。さらなる例において、ポリペプチドは、11アミノ酸長または10アミノ酸長である。さらなる例において、単離されたポリペプチドは、SEQ ID NO: 3に示すアミノ酸配列からなる。
【0098】
さらなる態様において、単離されたブラキュリポリペプチドは、9〜12アミノ酸長であり、SQYPSLWSV(SEQ ID NO: 14)、WLLPGTSTL(SEQ ID NO: 15)、RLIASWTPV(SEQ ID NO: 16)、またはAMYSFLLDFV(SEQ ID NO: 17)として示すアミノ酸配列を含む。いくつかの例において、単離されたブラキュリポリペプチドは、9または10アミノ酸長であり、SEQ ID NO: 14〜17として示すアミノ酸配列のうち1つを含む。さらなる例において、単離されたブラキュリポリペプチドは、SEQ ID NO: 14〜17のうち1つとして示すアミノ酸配列からなる。
【0099】
さらなる態様において、ブラキュリポリペプチドは、9〜12アミノ酸長であり、アミノ酸配列SX2YX3SLX4SX5(SEQ ID NO: 18)(X2およびX5はバリンまたはロイシンのいずれかであり、X3はプロリン(P)、セリン(S)、トレオニン(T)、ロイシン(L)、またはバリン(V)であり、X4はトリプトファン(W)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、セリン(S)、またはトレオニン(threorine)(T)である)を含む。さらなる例において、ブラキュリポリペプチドは、9、10、または11アミノ酸長であり、SEQ ID NO: 18(X5はバリンまたはロイシンのうち1つである)として示すアミノ酸配列を含む。さらなる例において、ブラキュリポリペプチドは、SEQ ID NO: 18(X5はバリンまたはロイシンである)として示すアミノ酸配列からなる。下記の例示的なブラキュリポリペプチドが、本開示によって包含される:
T-p1a: SLYPSLWSV(SEQ ID NO: 18、X2はLであり、X3はPであり、X4はWであり、X5はVである)
T-p1b: SLYPSLWSL(SEQ ID NO: 18、X2はLであり、X3はPであり、X4はWであり、X5はLである)
T-p1c: SX2YSSLWSV(SEQ ID NO: 18、X2はQまたはLであり、X3はYであり、X4はWであり、X5はVである)
T-p1d: SX2YTSLWSV(SEQ ID NO: 18、X2はQまたはLであり、X3はTであり、X4はWであり、X5はVである)
T-p1e: SX2YLSLWSV(SEQ ID NO: 18、X2はQまたはLであり、X3はLであり、X4はWであり、X5はVである)
T-p1f: SX2YVSLWSV(SEQ ID NO: 18、X2はQまたはLであり、X3はVであり、X4はWであり、X5はVである)
T-p1g: SX2YPSLVSV(SEQ ID NO: 18、X2はQまたはLであり、X3はPであり、X4はVであり、X5はVである)
T-p1h: SX2YPSLLSV(SEQ ID NO: 18、X2はQまたはLであり、X3はPであり、X4はLであり、X5はVである)
T-p1i: SX2YPSLISV(SEQ ID NO: 18、X2はQまたはLであり、X3はPであり、X4はIであり、X5はVである)
T-p1j: SX2YPSLSSV(SEQ ID NO: 18、X2はQまたはLであり、X3はPであり、X4はSであり、X5はVである)
T-p1k: SX2YPSLTSV(SEQ ID NO: 18、X2はQまたはLであり、X3はPであり、X4はTであり、X5はVである)
【0100】
さらなる態様において、ブラキュリポリペプチドは、9〜12アミノ酸長であり、アミノ酸配列WLLX6GTSTX7(SEQ ID NO: 19)(X6はセリン(S)、トレオニン(T)、イソロイシン(I)、バリン(V)であり、X7はロイシン(L)またはバリンである)を含む。さらなる例において、ブラキュリポリペプチドは、9または10アミノ酸長であり、SEQ ID NO: 19(X7はバリンまたはロイシンのうち1つである)として示すアミノ酸配列を含む。さらなる例において、ブラキュリポリペプチドは、SEQ ID NO: 19(X5〜7はバリンまたはロイシンである)として示すアミノ酸配列からなる。下記の例示的なポリペプチドが、本開示によって包含される:
Tp2b: WLLSGTSTX7(SEQ ID NO: 19、X6はSであり、X7はLまたはVである)
Tp2c: WLLTGTSTX7(SEQ ID NO: 19、X6はTであり、X7はLまたはVである)
Tp2d: WLLIGTSTX7(SEQ ID NO: 19、X6はIであり、X7はLまたはVである)
Tp2e: WLLVGTSTX7(SEQ ID NO: 19、X6はVであり、X7はLまたはVである)
【0101】
さらなる態様において、ブラキュリポリペプチドは、9〜12アミノ酸長であり、アミノ酸配列X8LIASTTPV(SEQ ID NO: 20)(X8はチロシン(Y)またはトリプトファン(W)である)を含む。ブラキュリポリペプチドは、9または10アミノ酸長でよく、X8LIASTTPV(SEQ ID NO: 20、X8はチロシン(Y)またはトリプトファン(W)のうち1つである)として示すアミノ酸配列を含む。さらなる例において、ブラキュリポリペプチドは、SEQ ID NO: 20(X8はトリプトファンまたはチロシンである)として示すアミノ酸配列からなる。したがって、下記のポリペプチドが、本開示によって包含される:
T-p3a:YLIASWTPV(SEQ ID NO: 20、X8はYである)
T-p3b:WLIASWTPV(SEQ ID NO: 20、X8はWである)
【0102】
別の一組の態様において、単離されたブラキュリポリペプチドは、9〜12アミノ酸長であり、アミノ酸配列X9LIASX10TPV(SEQ ID NO: 21)(X9はアルギニン(R)、チロシン(Y)、またはトリプトファン(W)であり、X10はバリン(V)、リジン(L)、イソロイシン(I)、セリン(S)、またはトレオニン(T)である)を含む。いくつかの例において、単離されたブラキュリポリペプチドは、9または10アミノ酸長であり、X9LIASTTPV(SEQ ID NO: 21、X9はアルギニン、チロシン、またはトリプトファンであり、X10はバリン、リジン、イソロイシン、セリン、またはトレオニンである)として示すアミノ酸配列を含む。さらなる例において、ブラキュリポリペプチドは、SEQ ID NO: 21(X9はアルギニン、チロシン、またはトリプトファンであり、X10はバリン、セリン、イソロイシン、またはトレオニンである)として示すアミノ酸配列からなる。したがって、下記のポリペプチドが、本開示によって包含される:
Tp3c: X9LIASVTPV(SEQ ID NO: 21、X9はR、Y、またはWであり、X10はVである)
Tp3d: X9LIASLTPV(SEQ ID NO: 21、X9はR、Y、またはWであり、X10はVである)
Tp3e: X9LIASITPV(SEQ ID NO: 21、X9はR、Y、またはWであり、X10はVである)
Tp3f: X9LIASSTPV(SEQ ID NO: 21、X9はR、Y、またはWであり、X10はVである)
Tp3g: X9LIASTTPV(SEQ ID NO: 21、X9はR、Y、またはWであり、X10はVである)
【0103】
さらなる態様において、単離されたブラキュリポリペプチドは、10〜12アミノ酸長であり、アミノ酸配列ALYSFLLDFV(SEQ ID NO:22、T-p4a)を含む。いくつかの例において、単離されたブラキュリポリペプチドは、10または11アミノ酸長であり、ALYSFLLDFV(SEQ ID NO:22)を含む。さらなる例において、単離されたブラキュリポリペプチドは、ALYSFLLDFV(SEQ ID NO: 22)からなる。
【0104】
いくつかの態様において、単離されたブラキュリポリペプチドは、融合タンパク質中に含まれる。したがって、融合タンパク質は、ブラキュリポリペプチド(上記を参照されたい)、およびブラキュリポリペプチドに共有結合的に連結されたmycタンパク質、酵素、または担体(肝炎担体タンパク質もしくはウシ血清アルブミンなど)など第2の異種部分を含んでよい。さらなる態様において、タンパク質は、ブラキュリポリペプチドからなる。したがって、第2の異種部分は、ブラキュリポリペプチドに非共有結合的に連結されている。例えば、ポリペプチドは、9または10アミノ酸長でよく、SEQ ID NO: 3、SEQ ID NO: 14、SEQ ID NO: 15、SEQ ID NO: 16、SEQ ID NO: 17、SEQ ID NO: 18、SEQ ID NO: 19、SEQ ID NO: 20、SEQ ID NO: 21、SEQ ID NO: 22のうち1つとして示す配列からなる。
【0105】
前述のこれらのブラキュリポリペプチドは免疫原性であり、したがって、対象において免疫応答を誘導するために使用することができる。本明細書において開示されるブラキュリポリペプチドは、SEQ ID NO: 1のその他の連続的なアミノ酸すべてを含むとは限らない。1つの態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO: 1のアミノ酸1〜15を含まない。
【0106】
理論に拘泥するものではないが、MHCクラスI分子によるペプチドの提示は、ペプチドのアンカー残基を介したMHCクラスI分子中のくぼみへの結合および細胞表面での最終的な提示を含むと考えられている。個々のアンカー残基によって、とりわけ、ある種のペプチドは、他のペプチドよりも緊密に特定のHLA分子に結合することができる。よく結合するペプチドは、通常、「ドミナント」エピトープであるのに対し、それほどよく結合しないものは、しばしば「サブドミナント」または「潜在性」エピトープである。自己タンパク質または外来タンパク質のいずれかのドミナントエピトープは、強い免疫寛容または免疫応答を誘起する。サブドミナントエピトープまたは潜在性エピトープは、弱い応答を生じさせるか、または応答をまったく生じさせない。理論に拘泥するものではないが、ドミナントエピトープがHLA分子により緊密に結合することにより、それらは細胞表面でより高密度に提示され、免疫細胞と反応する機会が増え、免疫応答または免疫寛容を誘発する見込みが高くなる。MHCクラスI分子は、CTL細胞に提示するために内因性タンパク質由来のエピトープを提示する。HLA A分子、HLA B分子、およびHLA C分子は、特定のアンカリング残基を有する約8〜10アミノ酸長(例えば9アミノ酸長)のペプチドに結合する。HLAクラスI分子によって認識されるアンカリング残基は、HLA分子の個々の対立遺伝子形態に依存する。CD8+ T細胞は、細胞上の特定のHLA分子によって提示された場合に特異的なエピトープを認識するT細胞受容体を有する。細胞障害性Tリンパ球になるように抗原提示細胞によって刺激されたCTL前駆体が、そのようなHLA-ペプチド複合体を有する細胞と接触すると、CTLはその細胞との結合体を形成し、それを破壊する。本明細書において提示するいくつかの例において、開示されるポリペプチドはHLA-A2.1に結合し、それによって提示される。
【0107】
いくつかの例において、ブラキュリポリペプチドは連続して繰り返されてよく、その結果、ポリペプチドは免疫原性ブラキュリポリペプチドのいくつかのコピーを含む。しかしながら、ブラキュリポリペプチドのただ1つのコピーだけが免疫原性分子中に含まれてもよい。いくつかの例において、ブラキュリポリペプチドの2つ、3つ、4つ、5つのコピーが免疫原性分子中に含まれる。ブラキュリポリペプチドのコピーは、ペプチドリンカーによって隔てられてよい。
【0108】
さらなる例において、ポリペプチドは融合タンパク質でよく、ブラキュリに対して異種の配列(例えば、SEQ ID NO: 1に含まれない少なくとも9アミノ酸長のアミノ酸配列)も含んでよい。したがって、いくつかの非限定的な具体例において、免疫原性ペプチドは融合ポリペプチドであり、例えば、ポリペプチドは、6つの連続したヒスチジン残基、β-ガラクトシダーゼアミノ酸配列、または免疫グロブリンアミノ酸配列を含む。ポリペプチドはまた、担体に共有結合的に連結されてもよい。適切な担体にはB型肝炎小型エンベロープタンパク質HBsAgが含まれるがそれに限定されるわけではない。このタンパク質は、自己組織化して集合体となる能力を有し、ウイルス様粒子を形成することができる。HBsAgの調製は十分に文書で記録されており、例えば、欧州特許出願公開EP-A-0 226 846、欧州特許出願公開EP-A-0 299 108、およびPCT公報WO 01/117554、ならびに、例えばTiollais et al., Nature, 317: 489, 1985、ならびに欧州特許公報EP-A-0 278 940、およびPCT公報WO 91/14703において開示されているアミノ酸配列を参照されたい。これらの文献はすべて参照により本明細書に組み入れられる。
【0109】
上記のように、融合ポリペプチドは、本明細書において開示される1種または複数種のブラキュリポリペプチドの繰り返しを任意で含んでよい。1つの非限定的な具体例において、ポリペプチドは、ブラキュリポリペプチドの1種の2個、3個、4個、5個、または最高10個の繰り返しを含む。リンカー配列は、ブラキュリポリペプチド間に任意で含まれてよい。これらの例のすべてにおいて、ポリペプチドは、SEQ ID NO: 1として示すアミノ酸配列のような完全長ブラキュリアミノ酸配列を含まない。
【0110】
本明細書において開示されるブラキュリポリペプチドは、標準的な方法によって化学的に合成することができるか、または組換えによって作製することができる。ポリペプチド作製のための例示的なプロセスは、Lu et al., Federation of European Biochemical Societies Letters. 429:31-35, 1998に記載されている。これらはまた、分取クロマトグラフィーおよび免疫学的分離を含む方法によって単離することもできる。
【0111】
ブラキュリポリペプチドは、抗原分子が結合され得る免疫原性高分子である担体に共有結合的に連結されてよい。担体に結合される場合、結合されたポリペプチドの免疫原性は強くなる。結合された分子の免疫原性を増大させるか、かつ/または診断的、分析的、かつ/もしくは治療的に有益である、担体に対するより高力価の抗体を誘発する担体が選択される。ある分子を担体に共有結合的に連結することにより、高い免疫原性およびT細胞依存性を与えることができる(Pozsgay et al., PNAS 96:5194-97, 1999; Lee et al., J. Immunol. 116:1711-18, 1976; Dintzis et al., PNAS 73:3671-75, 1976を参照されたい)。有用な担体には、天然でよいポリマー担体(例えば、細菌またはウイルスに由来する多糖、ポリペプチド、またはタンパク質)、反応物部分が結合され得る1つまたは複数の官能基を含む半合成材料または合成材料が含まれる。キーホールリンペットヘモシアニン、カブトガニヘモシアニン、エデスチン、哺乳動物血清アルブミン、および哺乳動物免疫グロブリンなど高等生物由来のタンパク質だけでなく、細菌産生物およびウイルスタンパク質(B型肝炎の表面抗原およびコア抗原など)もまた、担体として使用することができる。担体として使用するためのその他の細菌産生物には、細菌壁タンパク質および他の産生物(例えば、連鎖球菌またはブドウ球菌の細胞壁およびリポ多糖(LPS))が含まれる。
【0112】
本明細書において開示されるブラキュリポリペプチドをコードするポリヌクレオチドもまた、提供される。これらのポリヌクレオチドには、関心対象のポリペプチドをコードするDNA配列、cDNA配列、およびRNA配列が含まれる。コード配列中のサイレント変異は、複数のコドンが同じアミノ酸残基をコードし得る遺伝コードの縮重(すなわち重複性)に起因する。したがって、例えば、ロイシンは、CTT、CTC、CTA、CTG、TTA、またはTTGにコードされ得;セリンは、TCT、TCC、TCA、TCG、AGT、またはAGCにコードされ得;アスパラギンは、AATまたはAACにコードされ得;アスパラギン酸は、GATまたはGACにコードされ得;システインは、TGTまたはTGCにコードされ得;アラニンは、GCT、GCC、GCA、またはGCGにコードされ得;グルタミンは、CAAまたはCAGにコードされ得;チロシンは、TATまたはTACにコードされ得;イソロイシンは、ATT、ATC、またはATAにコードされ得る。標準的な遺伝コードを示す表は、様々な情報源において見出すことができる(例えば、L. Stryer, 1988, Biochemistry, 第3版、W.H. 5 Freeman and Co., NY)。
【0113】
ブラキュリポリペプチドをコードする核酸は、インビトロの方法、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)、リガーゼ連鎖反応法(LCR)、転写に基づいた増幅系(TAS)、自己持続配列複製系(3SR)、およびQβレプリカーゼ増幅系(QΒ)によってクローン化または増幅することができる。例えば、タンパク質をコードするポリヌクレオチドを、分子のDNA配列に基づくプライマーを用いたcDNAのポリメラーゼ連鎖反応法によって単離することができる。多種多様のクローン化方法論およびインビトロ増幅方法論が、当業者に周知である。PCR法は、例えば、米国特許第4,683,195号;Mullis et al., Cold Spring Harbor Symp. Quant. Biol. 51:263, 1987;およびErlich編、PCR Technology, (Stockton Press, NY, 1989)に記載されている。ポリヌクレオチドはまた、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、所望のポリヌクレオチドの配列から選択されたプローブを用いてゲノムライブラリーまたはcDNAライブラリーをスクリーニングすることによっても単離することができる。
【0114】
ブラキュリポリペプチドをコードするポリヌクレオチドには、自律複製プラスミドまたはウイルス中のベクターに、または原核生物もしくは真核生物のゲノムDNAに組み入れられるか、または他の配列から独立した単独の分子(例えばcDNA)として存在する組換えDNAが含まれる。本発明のヌクレオチドは、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、またはいずれかのヌクレオチドの改変型でよい。この用語は、一本型のDNAおよび二本型のDNAを含む。
【0115】
1つの態様において、ベクターは、S.セレビシエ(S. cerevisiae)またはクルイベロミセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)などの酵母において発現させるために使用される。形質膜H+-ATPアーゼ(PMA1)の構成的プロモーター、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GPD)の構成的プロモーター、ホスホグリセリン酸キナーゼ-1(PGK1)の構成的プロモーター、アルコールデヒドロゲナーゼ-1(ADH1)の構成的プロモーター、および多面的(pleiotropic)薬物耐性ポンプ(PDR5)の構成的プロモーターなどいくつかのプロモーターが、酵母発現系において有用であることが公知である。さらに、GAL1-10(ガラクトースによって誘導される)、PHO5(低濃度の細胞外無機リン酸によって誘導される)、およびタンデム型の熱ショックHSEエレメント(37℃への温度上昇によって誘導される)など多くの誘導性プロモーターも有用である。滴定可能な誘導因子に応答して多様な発現を指示するプロモーターには、メチオニン応答性のMET3プロモーターおよびMET25プロモーターならびに銅依存性のCUP1プロモーターが含まれる。これらのプロモーターのいずれかを多コピー(2μ)プラスミドまたは単一コピー(CEN)プラスミド中にクローニングして、発現レベルに付加的なレベルの制御を与えることができる。これらのプラスミドは、酵母において選択するための栄養マーカー(例えば、URA3、ADE3、およびHIS1など)ならびに細菌中で繁殖させるための抗生物質耐性(AMP)を含んでよい。K.ラクティス(lactis)において発現させるためのpKLAC1のようなプラスミドは公知である。したがって、1つの例において、細菌において増幅させた後、細菌形質転換に類似した方法によって、対応する酵母栄養要求株中にプラスミドを導入することができる。
【0116】
ブラキュリペプチドは、様々な酵母株において発現され得る。例えば、7種の多面的薬物耐性輸送体、YOR1、SNQ2、PDR5、YCF1、PDR10、PDR11、およびPDR15が、それらの転写活性化因子であるPDR1およびPDR3と共に酵母宿主細胞中で同時に欠失すると、結果として生じる株は薬物に感受性になる。エルゴステロール生合成に欠陥があるerg6変異体のような形質膜の脂質組成が変化した酵母株もまた、利用され得る。タンパク分解に対して高感受性であるタンパク質は、他の液胞内加水分解酵素の活性化を制御する支配的な液胞エンドペプチダーゼPep4を欠いている酵母において発現され得る。遺伝子の温度感受性(ts)対立遺伝子を有する株における異種発現は、対応するヌル変異体が生存不能である場合に使用され得る。
【0117】
本明細書において開示されるブラキュリポリペプチドをコードするウイルスベクターもまた、調製することができる。いくつかのウイルスベクターが構築されており、ポリオーマ、SV40(Madzak et al., 1992, J. Gen. Virol., 73:15331536)、アデノウイルス(Berkner, 1992, Cur. Top. Microbiol. Immunol., 158:39-6; Berliner et al., 1988, Bio Techniques, 6:616-629; Gorziglia et al., 1992, J. Virol., 66:4407-4412; Quantin et al., 1992, Proc. Nad. Acad. Sci. USA, 89:2581-2584; Rosenfeld et al., 1992, Cell, 68:143-155; Wilkinson et al., 1992, Nucl. Acids Res., 20:2233-2239; Stratford-Perricaudet et al., 1990, Hum. Gene Ther., 1:241-256)、ワクシニアウイルス (Mackett et al., 1992, Biotechnology, 24:495-499)、アデノ随伴 ウイルス(Muzyczka, 1992, Curr. Top. Microbiol. Immunol., 158:91-123; On et al., 1990, Gene, 89:279-282)、HSVおよびEBVを含むヘルペスウイルス (Margolskee, 1992, Curr. Top. Microbiol. Immunol., 158:67-90; Johnson et al., 1992, J. Virol., 66:29522965; Fink et al., 1992, Hum. Gene Ther. 3:11-19; Breakfield et al., 1987, Mol. Neurobiol., 1:337-371; Fresse et al., 1990, Biochem. Pharmacol., 40:2189-2199)、シンドビス(Sindbis)ウイルス(H. Herweijer et al., 1995, Human Gene Therapy 6:1161-1167; 米国特許第5,091,309号および同第5,2217,879号)、アルファウイルス(S. Schlesinger, 1993, Trends Biotechnol. 11:18-22; I. Frolov et al., 1996, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:11371-11377)、ならびにトリ由来レトロウイルス(Brandyopadhyay et al., 1984, Mol. Cell Biol., 4:749-754; Petropouplos et al., 1992, J. Virol., 66:3391-3397)、マウス由来レトロウイルス(Miller, 1992, Curr. Top. Microbiol. Immunol., 158:1-24; Miller et al., 1985, Mol. Cell Biol., 5:431-437; Sorge et al., 1984, Mol. Cell Biol., 4:1730-1737; Mann et al., 1985, J. Virol., 54:401-407)、およびヒト由来レトロウイルス(Page et al., 1990, J. Virol., 64:5370-5276; Buchschalcher et al., 1992, J. Virol., 66:2731-2739)が含まれる。バキュロウイルス(オートグラファカリフォルニカ(Autographa californica)多核多角体病ウイルス;AcMNPV)ベクターもまた、当技術分野において公知であり、商業的供給業者(PharMingen, San Diego, Calif.; Protein Sciences Corp., Meriden, Conn.; Stratagene, La Jolla, Calif.など)から入手することができる。
【0118】
したがって、1つの態様において、ブラキュリポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが、ウイルスベクター中に含まれる。適切なベクターには、レトロウイルスベクター、オルソポックスベクター、アビポックスベクター、鶏痘ベクター、カプリポックスベクター、スイポックスベクター、アデノウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、αウイルスベクター、バキュロウイルスベクター、シンドビスウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、およびポリオウイルスベクターが含まれる。具体的な例示的ベクターは、ワクシニアウイルス、鶏痘ウイルス、および高度弱毒化ワクシニアウイルス(MVA)などのポックスウイルスベクター、アデノウイルス、ならびにバキュロウイルスなどである。
【0119】
本発明を実践する際に有用なポックスウイルスには、オルソポックスウイルス、スイポックスウイルス、アビポックスウイルス、およびカプリポックスウイルスが含まれる。オルソポックスには、ワクシニア、エクトロメリア、およびアライグマポックスが含まれる。有用なオルソポックスの1つの例はワクシニアである。アビポックスには、鶏痘、カナリア痘、および鳩痘が含まれる。カプリポックスにはヤギ痘および羊痘が含まれる。1つの例において、スイポックスは豚痘である。発現用のポックスウイルスベクターの例は、例えば、参照により本明細書に組み入れられる米国特許第6,165,460号に記載されている。使用され得る他のウイルスベクターには、ヘルペスウイルスおよびアデノウイルスなど他のDNAウイルス、ならびにレトロウイルスおよびポリオなどのRNAウイルスが含まれる。
【0120】
場合によっては、ワクシニアウイルスベクターは、強い抗体応答を誘発し得る。したがって、ワクシニアベクターを用いた多数回の追加免疫が可能であるが、その反復使用は、いくつかの場合においては有用ではない可能性がある。しかしながら、この感受性の問題は、追加免疫のために様々な属に由来するポックスを用いることによって最小限に抑えることができる。1つの例において、第1または最初のポックスウイルスベクターがワクシニアである場合、第2および後続のポックスウイルスベクターは、ワクシニアとは免疫原的に異なるスイポックス、アビポックス、カプリポックス、またはオルソポックスなどの異なる属に由来するポックスウイルスから選択される。
【0121】
ワクシニアウイルスゲノムは、当技術分野において公知である。これは、HIND F13L領域、TK領域、およびHA領域から構成されている。組換えワクシニアウイルスは、外因性遺伝子を組み入れて外因性遺伝子産物を発現させるために使用されている(例えば、Perkus et al. Science 229:981-984, 1985; Kaufman et al. Int. J. Cancer 48:900-907, 1991; Moss Science 252:1662, 1991を参照されたい)。免疫原性ブラキュリポリペプチドのような関心対象の抗原をコードする遺伝子を、HIND F13L領域中に組み入れるか、あるいは組換えワクシニアウイルスベクターのTK領域(またはワクシニアウイルスゲノムの他の必須ではない領域)中に組み入れることができる。Baxby およびPaoletti(Vaccine 10:8-9, 1992)は、カナリア痘ウイルス、鶏痘ウイルス、および他のトリ類の種を含む非複製ポックスウイルスの構築およびベクターとしての使用を開示する。SutterおよびMoss (Proc. Nat'l. Acad. Sci U.S.A. 89:10847-10851, 1992)ならびにSutter et al. (Virology 1994)は、構築およびベクターとしての使用、ベクターの構築および使用における非複製組換えアンカラ(Ankara)ウイルス(MVA、modified vaccinia Ankara)を開示する。
【0122】
適切なベクターは、例えば、参照により本明細書に組み入れられる米国特許第6,998,252号において開示されている。1つの例において、組換えワクシニアウイルスのような組換えポックスウイルスは、ワクシニアの調節配列または機能的にそれと等価なDNA配列および隣接するDNA配列(隣接するワクシニア調節DNA配列と天然には連続しておらず、ブラキュリポリペプチドをコードする)を含むキメラ遺伝子の挿入によって合成的に改変される。このようなキメラ遺伝子を含む組換えウイルスは、ブラキュリポリペプチドを発現するのに効果的である。1つの例において、ワクチンウイルスベクターは、(A)(i)ブラキュリポリペプチドをコードする第1のDNA配列および(ii)ブラキュリポリペプチドをコードするDNA配列に隣接し、かつそれに対して転写制御を行うポックスウイルスプロモーターからなるセグメント;ならびに該セグメントに隣接して、(B)ポックスウイルスゲノムの必須ではない領域に由来するDNAを含む。ウイルスベクターは、選択マーカーをコードしてよい。1つの例において、ポックスウイルスは、例えば、チミジンキナーゼ遺伝子(参照により本明細書に組み入れられる米国特許第6,998,252号を参照されたい)を含む。
【0123】
ブラキュリポリペプチドをコードするポックスウイルスベクターは、ブラキュリポリペプチドをコードする核酸配列に作働可能に(operationally)連結されている少なくとも1つの発現制御エレメントを含む。発現制御エレメントは、核酸配列の発現を制御および調節するために、ポックスウイルスベクター中に挿入される。これらのベクターにおいて有用な発現制御エレメントの例には、lac系、ファージλのオペレーターおよびプロモーター領域、酵母プロモーター、ならびにポリオーマ、アデノウイルス、レトロウイルス、またはSV40由来のプロモーターが含まれるがそれらに限定されるわけではない。その他の作働可能なエレメントには、リーダー配列、終止コドン、ポリアデニル化シグナル、宿主系におけるブラキュリポリペプチドをコードする核酸配列の適切な転写およびそれに続く翻訳に必要な他の任意の配列が含まれるが、それらに限定されるわけではない。発現ベクターは、宿主系における核酸配列を含む発現ベクターの導入およびそれに続く複製に必要なその他のエレメントを含んでよい。このようなエレメントの例には、複製起点および選択マーカーが含まれるがそれらに限定されるわけではない。さらに、このようなベクターは従来の方法(Ausubel et al., (1987)、「Current Protocols in Molecular Biology」John Wiley and Sons, New York, N.Y.)を用いて容易に構築され、市販されていることが当業者によって理解されるであろう。
【0124】
ブラキュリポリペプチをコードする異種DNA配列を含む組換えDNAウイルスを調製するための基本的技術は、当技術分野において公知である。このような技術は、例えば、ドナープラスミド中のDNA配列に隣接するウイルスDNA配列と親ウイルス中に存在する相同配列との相同組換えを含む(Mackett et al., 1982, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79:7415-7419)。特に、ポックスウイルスベクターのような組換えウイルスベクターを、遺伝子を送達する際に使用することができる。このベクターは、例えば、参照により本明細書に組み入れられる米国特許第5,093,258号に記載されている鶏痘ウイルスの合成組換え体を作製するための方法に類似した段階のような当技術分野において公知の段階によって構築することができる。他の技術には、親ウイルスベクター中に天然に存在するか、または人工的に挿入された独特の制限エンドヌクレアーゼ部位を用いて、異種DNAを挿入する段階が含まれる。
【0125】
一般に、DNAドナーベクターは、以下のエレメントを含む:(i)ベクターが原核生物宿主において増幅され得るようにする、原核生物の複製起点;(ii)ベクターを含む原核生物宿主細胞の選択を可能にするマーカーをコードする遺伝子(例えば、抗生物質耐性をコードする遺伝子);(iii)配列の発現を指示できる転写プロモーターに隣接して位置する、ブラキュリポリペプチドをコードする少なくとも1つのDNA配列;および(iv)外来遺伝子が挿入される親ウイルスゲノムの領域に相同であり、エレメント(iii)の構築物に隣接しているDNA配列。複数の外来遺伝子をポックスウイルス中に導入するためのドナープラスミドを構築するための方法は、参照により本明細書に組み入れられるWO91/19803に記載されている。
【0126】
一般に、転写プロモーターを含む断片および外来DNA配列の挿入先である親ウイルスゲノムの領域に相同な配列を含む断片を含む、ドナーベクターを構築するためのDNA断片は、ゲノムDNAまたはクローン化されたDNA断片から得ることができる。ドナープラスミドは、1価、2価、または多価でよい(すなわち、1つまたは複数の挿入された外来DNA配列を含んでよい)。ドナーベクターは、挿入された外来DNAを含む組換えウイルスの同定を可能にするマーカーをコードする付加的な遺伝子を含んでよい。いくつかのタイプのマーカー遺伝子が、組換えウイルスの同定および単離を可能にするために使用され得る。これらには、抗生物質耐性および耐化学性をコードする遺伝子(例えば、Spyropoulos et al., 1988, J. Virol. 62:1046; FalknerおよびMoss、1988, J. Virol. 62:1849; Franke et al., 1985, Mol. Cell. Biol. 5:1918を参照されたい)、ならびに比色アッセイ法による組換えウイルスプラークの同定を可能にする、大腸菌lacZ遺伝子のような遺伝子(Panicali et al., 1986, Gene 47:193-199)が含まれる。
【0127】
ウイルスに挿入しようとするDNA遺伝子配列は、大腸菌またはサルモネラプラスミド構築物などのドナープラスミド(DNAが挿入される予定であるポックスウイルスの挿入部位のもののようなDNAのある部分に相同なDNAがその中に挿入されている)中に入れることができる。別途、挿入しようとするDNA遺伝子配列は、プロモーターに連結される。このプロモーター-遺伝子連結物は、所望の挿入領域であるポックスDNAの領域に隣接しているDNA配列に相同なDNAにプロモーター-遺伝子連結物の両端が隣接するように、プラスミド構築物中に配置される。親ポックスウイルスベクターと共に、ポックスプロモーターが使用される。次いで、結果として生じるプラスミド構築物は、大腸菌内での増殖によって増幅され、単離される。次に、挿入しようとするDNA遺伝子配列を含む単離されたプラスミドは、親ウイルス、例えばポックスウイルスと共に、細胞培養物、例えばニワトリ胚線維芽細胞中にトランスフェクトされる。プラスミド中の相同なポックスDNAとウイルスゲノムとの組換えにより、それぞれ、そのゲノム中のウイルスの生存能力に影響を及ぼさない部位にプロモーター-遺伝子構築物が存在することによって改変された組換えポックスウイルスが得られる。
【0128】
上記のように、DNA配列は、結果として得られる組換えウイルスのウイルス生存能力に影響を及ぼさない、ウイルスのある領域(挿入領域)中に挿入される。当業者は、例えば、組換え体のウイルス生存能力に重大な影響を及ぼさずに組換え体形成を可能にさせる領域を探してウイルスDNAのセグメントをランダムに試験することによって、ウイルス中のそのような領域を容易に同定することができる。容易に使用することができ、かつ多くのウイルス中に存在する1つの領域は、チミジンキナーゼ(TK)遺伝子である。TK遺伝子は、レポリポックスウイルス(Upton et al., 1986, J. Virology 60:920);ショープ線維腫ウイルス;カプリポックスウイルス(Gershon et al., 1989, J. Gen. Virol. 70:525)ケニア羊-1;オルソポックスウイルス(Weir et al., 1983, J. Virol. 46:530) ワクシニア(Esposito et al., 1984, Virology 135:561);サル痘ウイルスおよび痘瘡ウイルス(Hruby et al., 1983, PNAS 80:3411)ワクシニア(Kilpatrick et al., 1985, Virology 143:399);ヤバサル腫瘍ウイルス;アビポックスウイルス(Binns et al., 1988, J. Gen. Virol. 69:1275);鶏痘;(Boyle et al., 1987, Virology 156:355); 鶏痘(Schnitzlein et al., 1988, J. Virological Methods 20:341);鶏痘、ウズラ痘;昆虫ポックス(Lytvyn et al., 1992, J. Gen. Virol. 73:3235-3240)を含む、検査されたポックスウイルスゲノムすべてにおいて発見されている。ワクシニアでは、TK領域のほかに、他の挿入領域には、例えばHindlll M断片が含まれる。鶏痘では、TK領域のほかに、他の挿入領域には、例えば、BamHI J断片(Jenkins et al., 1991, AIDS Research and Human Retroviruses 7:991-998)、欧州特許出願番号第0 308220 A1号に記載されているECORI-Hindlll断片、EcoRV-Hindlll断片、BamHI断片、およびHindlll断片が含まれる(Calvert et al., 1993, J. Virol. 67:3069-3076; Taylor et al., 1988, Vaccine 6:497-503; Spehner et al., 1990; Boursnell et al., 1990, J. Gen. Virol. 71:621-628も参照されたい)。
【0129】
豚痘では、挿入部位には、チミジンキナーゼ遺伝子領域が含まれる。遺伝子が挿入領域に挿入されるという条件に加えて、改変ポックスウイルスによる挿入された遺伝子の成功裡な発現には、所望の遺伝子に機能的に連結されたプロモーターの存在が必要とされる。一般に、プロモーターは、発現されるべき遺伝子の上流に位置するように配置される。プロモーターは当技術分野において周知であり、標的にしたい宿主および細胞型に応じて容易に選択することができる。1つの例において、ポックスウイルスでは、ワクシニア7.5K、40K、またはFPV C1Aのような鶏痘プロモーターなどのポックスウイルスプロモーターが使用される。エンハンサーエレメントもまた、発現のレベルを上昇させるために組み合わせて使用することができる。さらに、誘導性プロモーターも利用することができる。
【0130】
感染細胞におけるドナープラスミドDNAとウイルスDNAの相同組換えにより、所望のエレメントを組み入れた組換えウイルスが形成され得る。インビボでの組換えに適切な宿主細胞は、一般に、ウイルスに感染され、プラスミドベクターによってトランスフェクトされ得る真核細胞である。ポックスウイルスと共に使用するの適したこのような細胞の例は、ニワトリ胚線維芽細胞、HuTK143(ヒト)細胞、ならびにCV-1細胞およびBSC-40細胞(両方ともサル腎臓細胞)である。ポックスウイルスによる細胞の感染およびプラスミドベクターによるこれらの細胞のトランスフェクションは、当技術分野において標準的な技術によって達成される(米国特許第4,603,112号およびPCT公報WO 89/03429を参照されたい)。
【0131】
インビボでの組換え後、組換えウイルスの子孫は、いくつかの技術のうち1つによって同定することができる。例えば、DNAドナーベクターが、親ウイルスのチミジンキナーゼ(TK)遺伝子中に外来遺伝子を挿入するように設計される場合、組み込まれたDNAを含むウイルスはTK陰性であり、これに基づいて選択することができる(Mackett et al., 1982, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79:7415)。あるいは、前述したようなマーカーをコードする遺伝子または指標遺伝子と関心対象の外来遺伝子との同時組込みを用いて、組換え体の子孫を同定することもできる。指標遺伝子の1つの非限定的な具体例は、大腸菌のlacZ遺伝子である。β-ガラクトシダーゼを発現する組換えウイルスは、酵素に対する発色基質を用いて選択することができる(Panicali et al., 1986, Gene 47:193)。一度組換えウイルスが同定されると、様々な周知の方法を用いて、挿入されたDNA断片にコードされるブラキュリ配列の発現を分析することができる。これらの方法には、ブラックプラークアッセイ法(ウイルスプラーク上で実施されるインサイチューの酵素イムノアッセイ法)、ウェスタンブロット解析、放射性免疫沈降法(RIPA)、および酵素イムノアッセイ法(EIA)が含まれる。
【0132】
本開示は、多価ワクチンを得るために関心対象の複数の抗原を含む組換えウイルスを包含する。例えば、組換えウイルスは、ウイルスゲノムまたはその一部分、ブラキュリポリペプチドをコードする核酸配列、およびB型肝炎表面抗原をコードする核酸配列を含んでよい。
【0133】
1つの態様において、ワクシニアウイルスゲノムまたはその一部分を含む組換えウイルス、ブラキュリポリペプチドをコードする核酸配列、および免疫賦活性分子B 7.1をコードする核酸配列を含む組換えウイルスを、単独でまたは免疫賦活性分子B 7-2をコードする核酸配列もしくは腫瘍抗原および免疫賦活性分子に対する遺伝子両方を含む組換えウイルスと共に含む組成物が提供される。本開示はまた、ウイルスゲノムまたはその一部分および1つもしくは複数のB7分子をコードする1つもしくは複数の核酸配列を含む第2の組換えウイルス、例えばB7-1および/またはB7-2を発現する組換えワクシニアウイルスと共に投与される、ブラキュリポリペプチドを含む組換えウイルスを包含する。腫瘍細胞がこれらの組換えウイルスに急速に感染することから、ワクシニアがこれらのタンパク質を確実に発現できること、およびそれらが機能的分子であることが実証されることが、米国特許第893,869号(参照により本明細書に組み入れられる)において開示されている。これらの核酸の導入後、これらの組換え分子を発現する免疫原性の弱い同系腫瘍は、免疫適格性宿主によって拒絶される。
【0134】
したがって、1つの例において、B7-1を含む組換えワクシニアウイルスおよびB7-2を含む組換えワクシニアウイルス(それぞれrV-B7-1およびrV-B7-2と呼ばれる)である組換えウイルスが開示される。組成物は、免疫原性ブラキュリポリペプチドと組み合わせて、rV-B7-1および/またはrV-B7-2を含んでよい。
【0135】
B7分子にはB7-1、B7-2およびその類似体が含まれるがそれらに限定されるわけではない。B7遺伝子は、哺乳動物組織、ゲノムライブラリーまたはcDNAライブラリー、例えばマウス供給源またはヒト供給源に由来するものを非限定的に含む、哺乳動物供給源からクローン化することができる。理論に拘泥するものではないが、B7ファミリーの共刺激分子(すなわちB7-1、B7-2、およびおそらくはB7.3)は、免疫グロブリン遺伝子スーパーファミリーのメンバーであると考えられている。これらの分子は、マクロファージ、樹状細胞、単球(抗原提示細胞(APC))上に存在する。所与の抗原に対する免疫応答の著しい増幅は、一般に、共刺激が無い場合には起こらない(June et al. (Immunology Today 15:321-331, 1994); Chen et al. (Immunology Today 14:483-486); Townsend et al. (Science 259:368-370))。Freeman et al. (J. Immunol. 143:2714-2722, 1989)は、B7-1 遺伝子のクローン化および配列決定を報告している。Azuma et al. (Nature 366:76-79, 1993)は、B7-2遺伝子のクローン化および配列決定を報告している。したがって、1つの態様において、B7-1遺伝子またはB7-2遺伝子は、ブラキュリポリペプチドと共に投与される。B7-1およびB7-2をコードする核酸のワクシニアウイルス中への挿入は、開示されている(例えば、参照により本明細書に組み入れられる米国特許第6,893,869号を参照されたい。この米国特許はまた、ワクシニアウイルスにおけるIL-2をコードする核酸の使用も開示している)。IL-2、B7-1、およびB7-2を含むいくつかのベクターが、ブダペスト条約の規定に従って、1994年10月3日にAmerican Type Culture Collection(米国微生物株保存機関)(ATCC)に寄託されている(例えば、rV-CEA/nIL-2(ATCC番号VR2480)、rV-mB7-2(ATCC番号VR 2482)、およびrV-mB7-1(ATCC番号VR 2483))。
【0136】
ブラキュリポリペプチドをコードするDNA配列は、適切な宿主細胞中へのDNA導入によってインビトロで発現させることができる。細胞は、原核性または真核性でよい。この用語はまた、対象宿主細胞の任意の子孫も含む。複製の進行中に起こる変異が存在し得るため、すべての子孫が親細胞に同一であるとは限らない可能性があることが理解されよう。安定な導入、すなわち外来DNAが宿主中で継続的に維持されるようにする方法は、当技術分野において公知である。
【0137】
上記のように、ブラキュリポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列は、発現制御配列に機能的に連結されてよい。コード配列に機能的に連結される発現制御配列は、コード配列の発現が、発現制御配列に適合する条件下で実現されるように連結される。発現制御配列には、適切なプロモーター、エンハンサー、転写ターミネーター、タンパク質をコードする遺伝子の前の開始コドン(すなわちATG)、イントロンに対するスプライシングシグナル、mRNAの適切な翻訳を可能にするためのその遺伝子の正確なリーディングフレームの維持、および停止コドンが含まれるがそれらに限定されるわけではない。
【0138】
宿主細胞には、微生物、酵母、昆虫、および哺乳動物の宿主細胞が含まれ得る。原核生物において、真核生物配列またはウイルス配列を有するDNA配列を発現させる方法は、当技術分野において周知である。適切な宿主細胞の非限定的な例には、細菌細胞、古細菌細胞、昆虫細胞、真菌(例えば酵母)細胞、植物細胞、および動物細胞(例えば、ヒトのような哺乳動物の細胞)が含まれる。有用な例示的な細胞には、大腸菌(Escherichia coli)、枯草菌(Bacillus subtilis)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、SF9細胞、C129細胞、293細胞、アカパンカビ(Neurospora)、ならびに不死化させた哺乳動物骨髄様細胞株およびリンパ系細胞株が含まれる。培養で哺乳動物細胞を増殖させるための技術は周知である(JakobyおよびPastan (編)、1979, Cell Culture. Methods in Enzymology、第58巻、Academic Press, Inc., Harcourt Brace Jovanovich, N.Y.を参照されたい)。一般に使用される哺乳動物宿主細胞株の例は、VERO細胞およびHeLa細胞、CHO細胞、ならびにWI38細胞株、BHK細胞株、およびCOS細胞株であるが、望ましいグリコシル化パターンまたは他の特徴をより高発現するように設計された細胞のような細胞株も使用され得る。上述したように、ポリエチレングリコール形質転換、プロトプラスト形質転換、および遺伝子銃など酵母細胞を形質転換するための技術もまた、当技術分野において公知である(GietzおよびWoods Methods in Enzymology 350: 87-96, 2002を参照されたい)。
【0139】
組換えDNAを用いた宿主細胞の形質転換は、当業者に周知である従来の技術によって実施することができる。宿主が、限定されるわけではないが大腸菌のような原核生物である場合、DNAを取り込むことができるコンピテント細胞は、指数増殖期後に回収した細胞から調製し、続いて、当技術分野において周知の手順を用いたCaCl2法によって処理することができる。あるいは、MgCl2またはRbClを使用することもできる。また、形質転換は、所望の場合は、宿主細胞のプロトプラストを形成した後に、またはエレクトロポレーションによって実施することもできる。
【0140】
宿主が真核生物である場合、リン酸カルシウム共沈殿のようなDNAのトランスフェクション法、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、リポソーム中に閉じ込めたプラスミドの挿入など従来の機械的手順、またはウイルスベクターを使用することができる。真核細胞はまた、ブラキュリポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列、および選択可能な表現型をコードする、単純ヘルペスチミジンキナーゼ遺伝子のような第2の外来DNA分子で同時形質転換することもできる。別の方法は、サルウイルス40(SV40)またはウシ乳頭腫ウイルスなどの真核生物ウイルスベクターを使用して、真核細胞を一過性に感染または形質転換させ、タンパク質を発現させるものである(例えば、Eukaryotic Viral Vectors, Cold Spring Harbor Laboratory, Gluzman編、1982を参照されたい)。
【0141】
治療方法および薬学的組成物
本明細書において開示されるブラキュリポリペプチドまたはブラキュリポリペプチドをコードする核酸は、対象において免疫応答を生じさせるために使用され得る。いくつかの例において、対象は、ブラキュリを発現する腫瘍を有する。したがって、いくつかの態様において、これらの方法は、免疫応答を生じさせるために、本明細書において開示される1種または複数種のブラキュリポリペプチドの治療的有効量を癌患者に投与する段階を含む。
【0142】
これらの方法は、ブラキュリを発現する腫瘍を有する対象のような治療を必要とする対象を選択する段階を含み得る。いくつかの例において、これらの方法は、小腸、胃、腎臓、膀胱、子宮、卵巣、精巣、肺、結腸、または前立腺の腫瘍を有する対象を選択する段階を含む。さらなる例において、この方法は、慢性リンパ性白血病(CLL)、B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、またはホジキンリンパ腫などB細胞由来の腫瘍を有する対象を選択する段階を含む。
【0143】
例示的な応用において、組成物は、癌(例えば、小腸癌、胃癌、腎臓癌、膀胱癌、子宮癌、卵巣癌、精巣癌、肺癌、結腸癌、または前立腺癌)などの疾患に罹患している対象に、ブラキュリ発現細胞に対する免疫応答を生じさせるのに十分な量で投与される。投与により、このような細胞の増殖を減速させるか、もしくはそれらの増殖を阻害するか、または腫瘍の徴候もしくは症状を軽減させるのに十分な免疫応答が誘導される。この用途のために有効な量は、疾患の重症度、患者の健康の全般的状態、および患者の免疫系の強さに依存すると考えられる。1つの例において、化合物の治療的有効量は、症状の自覚的軽減または臨床医もしくは他の適任の観察者によって確認した際に客観的に確認可能な改善のいずれかを提供する量である。
【0144】
ブラキュリポリペプチドは、当業者に公知である任意の手段により(Banga, A., 「Parenteral Controlled Delivery of Therapeutic Peptides and Proteins」、Therapeutic Peptides and Proteins, Technomic Publishing Co., Inc., Lancaster, PA, 1995を参照されたい)、筋肉内注射、皮下注射、腹腔内注射、または静脈注射などによって、局所的または全身的に投与することができるが、経口投与、経鼻投与、経皮投与、または肛門投与さえも企図される。1つの態様において、投与は、皮下注射または筋肉内注射によって行われる。ペプチドまたはタンパク質が応答を刺激するために利用可能である時間を延長するために、ペプチドまたはタンパク質は、埋め込み剤、油性注射剤、または粒子系として提供することができる。粒子系は、微小粒子、マイクロカプセル、マイクロスフェア、ナノカプセル、または同様の粒子でよい。(例えば、Banga、前記を参照されたい)。合成ポリマーをベースとする粒子状担体は、制御放出を提供するほかに、免疫応答を増強するアジュバントとして作用することも示されている。アルミニウム塩もまた、免疫応答を生じさせるためのアジュバントとして使用され得る。
【0145】
1つの非限定的な具体例において、ブラキュリポリペプチドは、体液性(抗体)応答ではなく、細胞性応答(すなわち、細胞障害性Tリンパ球(CTL)応答)に対する免疫応答を指示するように投与される。
【0146】
任意で、IL-2、IL-6、IL-12、RANTES、GM-CSF、TNF-α、もしくはIFN-γなど1種もしくは複数種のサイトカイン、GM-CSFもしくはG-CSFなど1種もしくは複数種の増殖因子、ICAM-1、LFA-3、CD72、B7-1、B7-2、もしくは他のB7関連分子など1種もしくは複数種の共刺激分子;OX-40Lもしくは41BBLなど1種もしくは複数種の分子、またはこれらの分子の組合せを生物学的アジュバントとして使用してもよい(例えば、Salgaller et al., 1998, J. Surg. Oncol. 68(2):122-38; Lotze et al., 2000, Cancer J Sci. Am. 6(補遺1):S61-6; Cao et al., 1998, Stem Cells 16(補遺1):251-60; Kuiper et al., 2000, Adv. Exp. Med. Biol. 465:381-90を参照されたい)。これらの分子は、全身的に(または局所的に)宿主に投与することができる。いくつかの例において、IL-2、RANTES、GM-CSF、TNF-α、IFN-γ、G-CSF、LFA-3、CD72、B7-1、B7-2、B7-1 B7-2、OX-40L、41 BBL、およびICAM-1が投与される。
【0147】
細胞応答を誘導するためのインビトロおよびインビボ両方のいくつかの手段が公知である。脂質は、様々な抗原に対してインビボでCTLを刺激するのを補助できる作用物質であると同定された。例えば、米国特許第5,662,907号に記載されているように、パルミチン酸残基をリジン残基のα-アミノ基およびε-アミノ基に結合させ、次いで、(例えば、グリシン、グリシン-グリシン、セリン、またはセリン-セリンなどの1つもしくは複数の連結残基を介して)、免疫原性ペプチドに連結させることができる。次いで、脂質付加したペプチドを、ミセル形態で直接注射するか、リポソーム中に組み入れるか、またはアジュバント中に乳化することができる。別の例として、トリパルミトイル-S-グリセリルシステイニルセリル-セリンのような大腸菌リポタンパク質が、適切なペプチドに共有結合された場合、腫瘍特異的CTLを刺激するために使用され得る(Deres et al., Nature 342:561, 1989を参照されたい)。さらに、中和抗体の誘導もまた、適切なエピトープを提示するペプチドに結合された同じ分子を用いて刺激することができるため、体液性応答および細胞性応答の両方を誘発することが望ましいと考えられる場合、そのために2つの組成物を組み合わせることができる。
【0148】
さらに別の態様において、免疫原性ブラキュリポリペプチドに対するCTL応答を誘導するために、MHCクラスII拘束性Tヘルパーエピトープを免疫原性ブラキュリポリペプチドに添加して、Tヘルパー細胞が微小環境中でサイトカインを分泌するように誘導して、CTL前駆細胞を活性化する。この技術は、構築物を注射部位で数日間保持するための短い脂質分子を添加して、注射部位に抗原を局在化させ、ある期間に渡って樹状細胞または他の「プロフェッショナルな」抗原提示細胞との近接性を高める段階をさらに含む(Chesnut et al., 「Design and Testing of Peptide-Based Cytotoxic T-Cell-Mediated Immunotherapeutics to Treat Infectious Diseases and Cancer」、Powell et al.,編、Vaccine Design, the Subunit and Adjuvant Approach, Plenum Press, New York, 1995を参照されたい)。
【0149】
このようにして、ブラキュリポリペプチを含む薬学的組成物が提供される。これらの組成物は、例えば免疫療法のための免疫応答を生じさせるために使用される。1つの態様において、ブラキュリポリペプチドは、安定化界面活性剤、ミセル形成剤、および油のうち2種またはそれ以上を含むアジュバントと混合される。適切な安定化界面活性剤、ミセル形成剤、油は、米国特許第5,585,103号、米国特許第5,709,860号、米国特許第5,270,202号、および米国特許第5,695,770号で詳述されており、これらはすべて参照により組み入れられる。安定化界面活性剤は、エマルジョンの成分が安定なエマルジョンとしてとどまることを可能にする任意の界面活性剤である。このような界面活性剤には、ポリソルベート80(TWEEN)(ソルビタン-モノ-9-オクタデセノアート-ポリ(オキシ-1,2-エタンジイル;ICI Americas(Wilmington,DE)製造)、TWEEN40(商標)、TWEEN20(商標)、TWEEN60(商標)、Zwittergent(商標)3-12、TEEPOL HB7(商標)、およびSPAN85(商標)が含まれる。これらの界面活性剤は、通常、約0.05〜0.5%、例えば約0.2%の量で提供される。ミセル形成剤は、ミセル様構造体が形成されるように、他の成分と共に形成されたエマルジョンを安定化することができる作用物質である。このような作用物質は一般に、マクロファージを動員して細胞応答を増強するために、注射部位に何らかの刺激を引き起こす。このような作用物質の例には、BASF Wyandotte刊行物、例えば、Schmolka, J. Am. Oil. Chem. Soc. 54:110, 1977およびHunter et al., J. Immunol 129:1244, 1981に記載されているポリマー表面活性剤、PLURONIC(商標)L62LF、L101、およびL64、PEG1000、ならびにTETRONIC(商標)1501、150R1、701、901、1301、および130R1が含まれる。このような作用物質の化学構造は、当技術分野において周知である。1つの態様において、HunterおよびBennett、J. Immun. 133:3167, 1984によって規定されているように、親水親油バランス(HLB)が0〜2の間である作用物質が選択される。作用物質は、有効量で、例えば0.5〜10%の間、または1.25〜5%の間の量で提供することができる。
【0150】
組成物中に含まれる油は、水中油型エマルジョン中での抗原の保持を促進するように、例えば、所望の抗原に対するビヒクルを提供するように選択され、好ましくは、室温(約20℃〜25℃)またはエマルジョンの温度が室温まで低下した後のいずれかにエマルジョンが形成されるように、65℃より低い融解温度を有する。このような油の例には、スクアレン、スクアラン、EICOSANE(商標)、テトラテトラコンタン、グリセロール、およびピーナッツ油、または他の植物油が含まれる。1つの非限定的な具体例において、油は、1〜10%の間、または2.5〜5%の間の量で提供される。身体が時間とともに油を分解することができるように、かつ肉芽腫のような悪影響が油の使用時に明らかにならないように、油は生分解性であり生体適合性でなければならない。
【0151】
1つの態様において、アジュバントは、安定化界面活性剤、ミセル形成剤、およびPROVAX(登録商標)(IDEC Pharmaceuticals, San Diego, CA)という名称で入手可能な油の混合物である。また、アジュバントは、CpGモチーフを含む核酸のような免疫賦活性核酸、または生物学的アジュバントでもよい(上記を参照されたい)。
【0152】
制御放出非経口製剤は、埋め込み剤、油性注射剤として、または粒子系として作製することができる。タンパク質送達系に関する概観に関しては、Banga, Therapeutic Peptides and Proteins: Formulation, Processing, and Delivery Systems, Technomic Publishing Company, Inc., Lancaster, PA, 1995を参照されたい。粒子系には、マイクロスフェア、微粒子、マイクロカプセル、ナノカプセル、ナノスフェア、およびナノ粒子が含まれる。マイクロカプセルは、中心のコアとして治療的タンパク質を含む。マイクロスフェアでは、治療物質は粒子の全体に分散している。約1μmより小さい粒子、マイクロスフェア、およびマイクロカプセルは一般に、ナノ粒子、ナノスフェア、およびナノカプセルとそれぞれ呼ばれる。毛細血管の直径は約5μmであるため、ナノ粒子のみが静脈内に投与される。微粒子の直径は典型的には約100μmであり、皮下または筋肉内に投与される(Kreuter, Colloidal Drug Delivery Systems, J. Kreuter編、Marcel Dekker, Inc., New York, NY, 219〜342頁、1994; TiceおよびTabibi、Treatise on Controlled Drug Delivery, A. Kydonieus編、Marcel Dekker, Inc. New York, NY, 315〜339頁、1992を参照されたい)。
【0153】
ポリマーは、イオン制御放出のために使用され得る。制御された薬物送達において使用するための様々な分解性ポリマーマトリックスおよび非分解性ポリマーマトリックスが、当技術分野において公知である(Langer, Accounts Chem. Res. 26:537, 1993)。例えば、ブロック共重合体であるpolaxamer 407は、粘性であるが可動性の液体として低温では存在するが、体温では半固体ゲルを形成する。これは、組換えインターロイキン-2およびウレアーゼの製剤化および持続送達のために有効なビヒクルであることが示された(Johnston et al., Pharm. Res. 9:425, 1992;およびPec, J. Parent. Sci. Tech. 44(2):58, 1990)。あるいは、ヒドロキシアパタイトが、タンパク質の制御放出用のマイクロキャリアとして使用されている(Ijntema et al., Int. J. Pharm. 112:215, 1994)。さらに別の局面において、リポソームが、脂質でカプセル化した薬物の制御放出ならびに薬物ターゲティングのために使用される(Betageri et al., Liposome Drug Delivery Systems, Technomic Publishing Co., Inc., Lancaster, PA, 1993)。治療用タンパク質を制御送達するための多数のその他の系が公知である(例えば、米国特許第5,055,303号;米国特許第5,188,837号;米国特許第4,235,871号;米国特許第4,501,728号;米国特許第4,837,028号;米国特許第4,957,735号;ならびに米国特許第5,019,369号;米国特許第5,055,303号;米国特許第5,514,670号;米国特許第5,413,797号;米国特許第5,268,164号;米国特許第5,004,697号;米国特許第4,902,505号;米国特許第5,506,206号;米国特許第5,271,961号;米国特許第5,254,342号;および米国特許第5,534,496号)。
【0154】
別の態様において、薬学的組成物は、ブラキュリポリペプチドをコードする核酸を含む。治療的有効量のブラキュリポリヌクレオチドは、免疫応答を生じさせるために対象に投与することができる。1つの非限定的な具体例において、治療的有効量のブラキュリポリヌクレオチドは、前立腺癌または乳癌を治療するために対象に投与される。
【0155】
任意で、IL-2、IL-6、IL-12、RANTES、GM-CSF、TNF-α、もしくはIFN-γなど1種もしくは複数種のサイトカイン、GM-CSFもしくはG-CSFなど1種もしくは複数種の増殖因子、ICAM-1、LFA-3、CD72、B7-1、B7-2、もしくは他のB7関連分子など1種もしくは複数種の共刺激分子;OX-40Lもしくは41BBLなど1種もしくは複数種の分子、またはこれらの分子の組合せを生物学的アジュバントとして使用してもよい(例えば、Salgaller et al., 1998, J. Surg. Oncol. 68(2):122-38; Lotze et al., 2000, Cancer J Sci. Am. 6(補遺1):S61-6; Cao et al., 1998, Stem Cells 16(補遺1):251-60; Kuiper et al., 2000, Adv. Exp. Med. Biol. 465:381-90を参照されたい)。これらの分子は、全身的に宿主に投与することができる。ベクター、例えば組換えポックスベクター中にこれらの分子をコードする核酸を挿入することによってこれらの分子を同時投与できることに留意すべきである(例えば、米国特許第6,045,802号を参照されたい)。様々な態様において、ブラキュリポリペプチドのコード配列と同じベクター中に、生物学的アジュバントをコードする核酸をクローニングすることができるか、または同時投与用の1つもしくは複数の別のベクター中に、この核酸をクローニングすることができる。さらに、カルメット・ゲラン杆菌(Bacillus Cahnette-Guerin)(BCG)およびレバミソールなどの非特異的免疫調節因子も同時投与することができる。
【0156】
核酸の投与への1つのアプローチは、プラスミドDNA、例えば哺乳動物発現プラスミドを用いた直接的免疫化である。前述したように、ブラキュリポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、この分子の発現を増大させるプロモーターの制御下に置くことができる。
【0157】
核酸構築物による免疫化は当技術分野において周知であり、例えば、米国特許第5,643,578号(所望の抗原をコードするDNAを導入して、細胞性応答または体液性応答を誘発することによって脊椎動物を免疫化する方法を記述している)、ならびに米国特許第5,593,972号および米国特許第5,817,637号(発現を可能にする調節配列への抗原をコードする核酸配列の機能的連結を記述している)において教示されている。米国特許第5,880,103号では、免疫原性ペプチドまたは他の抗原をコードする核酸を生物に送達するいくつかの方法を記述している。これらの方法には、核酸(もしくは合成ペプチドそれら自体)のリポソーム送達、ならびに免疫刺激構築物、またはコレステロールおよびQuil A(商標)(サポニン)を混合すると自然発生的に形成されるサイズが30〜40nmの負電荷を持ったケージ様構造体であるISCOMS(商標)が含まれる。防御免疫が、ISCOMS(商標)を抗原の送達ビヒクルとして用いて、トキソプラズマ症およびエプスタイン・バー(Epstein-Barr)ウイルスに誘導された腫瘍を含む様々な実験的感染モデルにおいて生じさせられた(MowatおよびDonachie, Immunol. Today 12:383, 1991)。ISCOMS(商標)中に封入された1μgという小用量の抗原が、クラスIを介したCTL応答をもたらすことが見出されている(Takahashi et al., Nature 344:873, 1990)。
【0158】
免疫化のための核酸使用への別のアプローチにおいて、ブラキュリポリペプチドはまた、弱毒化したウイルスの宿主もしくはベクターまたは細菌ベクターによって発現させることもできる。組換えワクシニアウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、ヘルペスウイルス、レトロウイルス、または他のウイルスベクターを用いて、ペプチドまたはタンパク質を発現させ、それによってCTL応答を誘発することができる。例えば、免疫化プロトコールにおいて有用なワクシニアベクターおよび方法は、米国特許第4,722,848号に記載されている。BCG (Bacillus Calmette Guerin)は、これらのペプチドを発現するための別のベクターを提供する(Stover, Nature 351:456-460, 1991を参照されたい)。
【0159】
ブラキュリ免疫原性ポリペプチドをコードするポックスウイルス(例えば、ワクチンウイルス)のような第1の組換えウイルスは、B7-1、B7-2、またはB7-1およびB7-2をコードする1つまたは複数の遺伝子またはDNA配列をウイルスゲノムまたはその感染可能な一部分に組み入れた第2の組換えウイルスと併用することができ、この組成物は、宿主細胞に同時感染させて、このポリペプチドならびにB7-1、B7-2、またはB7-1およびB7-2をコードする遺伝子またはDNA配列を同時発現させることができる(参照により本明細書に組み入れられる米国特許第6,893,869号および米国特許第6,045,908号を参照されたい)。B7遺伝子ファミリーの発現は、マウスおよびヒトの両方において抗腫瘍応答の重要なメカニズムであることが示されている。
【0160】
ウイルスベクターが利用される場合、組成物中の各組換えウイルスが約105〜約1010のプラーク形成単位/mg哺乳動物の範囲である投与量でレシピエントに提供することが望ましいが、より少ない用量またはより多い用量を投与してもよい。組換えウイルスベクターの組成物は、癌の任意のエビデンスが得られる前か、または癌に罹患した哺乳動物において疾患の軽減を実現するために、哺乳動物に導入してよい。組成物を哺乳動物に投与するための方法の例には、組換えウイルスへのエクスビボでの細胞曝露、または罹患組織中への組成物の注射、またはウイルスの静脈内投与、皮下投与、皮内投与、もしくは筋肉内投与が含まれるがそれらに限定されるわけではない。あるいは、組換えウイルスベクターまたは組換えウイルスベクターの組合せを薬学的に許容される担体中に入れて癌病変中に直接注射することにより、局所的に投与することもできる。一般に、投与しようとする1種または複数種のブラキュリポリペプチドの核酸配列を有する組換えウイルスベクターの量は、ウイルス粒子の力価に基づく。投与しようとする免疫原の例示的な範囲は、ヒトのような哺乳動物当たり105〜1010個のウイルス粒子である。
【0161】
1種または複数種のブラキュリポリペプチドの核酸配列を有する第1の組換えウイルスベクターと1種または複数種の免疫賦活性分子の核酸配列を有する第2の組換えウイルスベクターとの組合せが使用される態様において、様々な比率で第1の組換えウイルスベクターおよび第2の組換えウイルスベクターを用いて、哺乳動物を免疫化することができる。1つの態様において、第1のベクターと第2のベクターの比率は、約1:1、または約1:3、または約1:5である。第1のベクターと第2のベクターの最適な比率は当技術分野において公知の方法を用いて容易に決定することができる(例えば、参照により本明細書に組み入れられる米国特許第6,893,869号を参照されたい)。
【0162】
1つの態様において、組換えウイルスは、サイトカイン(TNF-α、IL-6、GM-CSF、およびIL-2など)、ならびに共刺激分子およびアクセサリー分子(B7-1、B7-2)を単独および様々な組合せで発現するように構築される。免疫賦活性分子およびブラキュリポリペプチドが同時に産生されると、特定のエフェクターの生成が促進される。理論に拘泥するものではないが、個々の免疫賦活性分子に応じて、様々なメカニズムが免疫原性の増強、すなわちヘルプシグナルの増大(IL-2)、プロフェッショナルAPCの動員(GM-CSF)、CTL頻度の増加(IL-2)、ならびに抗原プロセシング経路およびMHC発現に対する作用(IFNγ及びTNFα)などを司っている可能性がある。例えば、IL-2、IL-6、インターフェロン、腫瘍壊死因子、またはこれらの分子をコードする核酸は、ブラキュリ免疫原性ポリペプチドまたはブラキュリポリペプチドをコードする核酸と共に投与することができる。ブラキュリポリペプチドと少なくとも1種の免疫賦活性分子の同時発現は、動物モデルにおいて抗腫瘍効果を示すのに有効な場合がある。
【0163】
1つの態様において、ブラキュリポリペプチドをコードする核酸は、細胞中に直接導入される。例えば、標準的な方法によって金微粒子上に核酸を載せ、Bio-Rad社製のHelios(商標)Gene Gunのような装置を用いて皮膚中に導入することができる。核酸は、「裸」で、強力なプロモーターの制御下にあるプラスミドからなってよい。典型的には、DNAは筋肉中に注射されるが、転移物に近接した組織を含む他の部位に直接注射することもできる。注射用の投与量は、通常、約0.5μg/kg〜約50mg/kgであり、典型的には、約0.005mg/kg〜約5mg/kgである(例えば、米国特許第5,589,466号を参照されたい)。
【0164】
1つの非限定的な具体例において、静脈内投与用の薬学的組成物は、患者1名当たり1日当たり約0.1μg〜10mgの免疫原性ブラキュリポリペプチドを含む。特に、体腔または器官の管腔中などの孤立した部位に作用物質が投与され、循環系にもリンパ系にも投与されない場合には、患者1名当たり1日当たり0.1〜最大約100mgの投与量を使用することができる。投与可能な組成物を調製するための実際の方法は、当業者には公知であるか、または明らかであり、Remingtons Pharmaceutical Sciences、第19版、Mack Publishing Company, Easton, Pennsylvania, 1995のような刊行物により詳細に記載されている。
【0165】
組成物の単回投与または複数回投与は、対象が必要とし、かつ許容する投与量および頻度に応じて施される。1つの態様において、投与量は、ボーラスとして一回で投与されるが、別の態様において、治療の結果が得られるまで定期的に適用してもよい。一般に、用量は、対象が許容できない毒性を生じることなく、疾患の症状または徴候を治療または改善するのに十分である。全身投与または局所投与が利用され得る。
【0166】
別の方法において、樹状細胞のような抗原提示細胞(APC)はインビトロで、ブラキュリポリペプチドを含むペプチドでパルスされるか、またはそれらと同時インキュベートされる。1つの非限定的な具体例において、抗原提示細胞は、自己細胞でよい。次いで、治療的有効量の抗原提示細胞を対象に投与することができる。
【0167】
ブラキュリポリペプチドは、抗原で樹状細胞を直接パルスすること、または幅広い種類の抗原送達ビヒクル、例えば、リポソーム、もしくは細胞に抗原を送達することが公知の他のベクターなどを利用することを非限定的に含む、当技術分野において公知である任意の方法によって、樹状細胞または樹状細胞前駆体に送達することができる。1つの非限定的な具体例において、抗原製剤は、約0.1μg〜約1,000μg、または約1〜約100μgの選択されたブラキュリポリペプチドを含む。ブラキュリポリペプチドはまた、樹状細胞の成熟を促進する作用物質と共に投与してもよい。有用な作用物質の非限定的な具体例は、インターロイキン-4(IL-4)および顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、またはflt-3リガンド(flt-3L)である。調製物はまた、他の成分に混ざって、緩衝剤、賦形剤、および保存剤も含んでよい。
【0168】
1つの態様において、成熟した抗原提示細胞を生じさせて、免疫原性ブラキュリポリペプチドを提示する。次いで、これらの樹状細胞を、ブラキュリを発現する腫瘍、例えば、小腸癌、胃癌、腎臓癌、膀胱癌、子宮癌、卵巣癌、精巣癌、肺癌、結腸癌、および/または前立腺癌に罹患した対象に単独(または別の作用物質と組み合わせて)投与する。また、これらの樹状細胞は、慢性リンパ性白血病(CLL)、B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、またはホジキンリンパ腫などB細胞由来の腫瘍を有する対象に投与してもよい。
【0169】
別の態様において、成熟した樹状細胞は、化学療法剤と共に投与される。
【0170】
あるいは、APCは、腫瘍に由来する腫瘍浸潤リンパ球(TIL)または末梢血リンパ球(PBL)などのCD8細胞を感作するために使用される。TILまたはPBLは、治療しようとする同じ対象に由来してよい(自己由来)。あるいは、TILまたはPBLは異種でよい。しかしながら、これらは、少なくとも、対象が所有するHLA型に対してMHCクラスI拘束性であるべきである。次いで、有効量の感作された細胞が対象に投与される。
【0171】
末梢血単核細胞(PBMC)は、CTL前駆体の応答細胞供給源として使用することができる。適切な抗原提示細胞をペプチドと共にインキュベートした後、次いで、ペプチドを負荷した抗原提示細胞を、応答細胞集団と共に最適化した培養条件下でインキュベートする。陽性のCTL活性化は、放射能で標識した標的細胞(ペプチドパルスした特定の標的ならびにブラキュリ(例えばSEQ ID NO: 1)のようなペプチド配列の由来元である抗原のプロセシングされた形態を内因的に発現する標的細胞の両方)を死滅させるCTLの存在に関して培養物を分析することによって決定することができる。
【0172】
これらの細胞を対象に投与して、ブラキュリを発現する腫瘍の細胞増殖を阻害することができる。これらの応用において、治療的有効量の活性化された抗原提示細胞または活性化されたリンパ球が、ブラキュリを発現する細胞に対する免疫応答を生じさせるのに十分な量で、疾患に罹患した対象に投与される。結果として生じる免疫応答は、このような細胞の増殖を減速させるか、もしくはそれらの増殖を阻害するか、または腫瘍の徴候もしくは症状を軽減させるのに十分である。
【0173】
補足的な方法において、これらの免疫療法のいずれかが、インターロイキン(IL)-2、IL-3、IL-6、IL-10、IL-12、IL-15、GM-CSF、またはインターフェロンなどのサイトカインを投与することによって増強される。
【0174】
別の方法において、これらの免疫療法のいずれかが、付加的な化学療法剤を投与することによって増強される。1つの例において、この投与は逐次的である。このような作用物質の例は、アルキル化剤、代謝拮抗剤、天然産物、またはホルモン、およびそれらの拮抗物質である。アルキル化剤の例には、ナイトロジェンマスタード(メクロレタミン、シクロホスファミド、メルファラン、ウラシルマスタード、またはクロラムブシルなど)、アルキルスルホナート(ブスルファンなど)、ニトロソ尿素(カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、ストレプトゾシン、またはダカルバジンなど)が含まれる。代謝拮抗剤の例には、葉酸類似体(メトトレキサートなど)、ピリミジン類似体(5-FUまたはシタラビンなど)、およびメルカプトプリンまたはチオグアニンなどのプリン類似体が含まれる。天然産物の例には、ビンカアルカロイド(ビンブラスチン、ビンクリスチン、またはビンデシンなど)、エピポドフィロトキシン(エトポシドまたはテニポシドなど)、抗生物質(ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、プリカマイシン、またはマイトマイシン(mitocycin)Cなど)、および酵素(L-アスパラギナーゼなど)が含まれる。種々の作用物質の例には、白金配位複合体(シスプラチンとしても公知のシス-ジアミン-ジクロロ白金IIなど)、置換尿素(ヒドロキシ尿素など)、メチルヒドラジン誘導体(プロカルバジンなど)、および副腎皮質抑制薬(ミトタンおよびアミノグルテチミドなど)が含まれる。ホルモンおよび拮抗物質の例には、副腎皮質ステロイド(プレドニゾンなど)、プロゲスチン(カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、酢酸メドロキシプロゲステロン、および酢酸メゲストロール(magestrol)など)、エストロゲン(ジエチルスチルベストロールおよびエチニルエストラジオールなど)、抗エストロゲン(タモキシフェンなど)、ならびにアンドロゲン(プロピオン酸テストステロン(testosterone proprionate)およびフルオキシメステロンなど)が含まれる。開示された免疫療法と同時に投与され得る、最も一般に使用される化学療法薬物の例には、Adriamycin、Alkeran、Ara-C、BiCNU、Busulfan、CCNU、Carboplatinum、Cisplatinum、Cytoxan、Daunorubicin、DTIC、5-FU、Fludarabine、Hydrea、Idarubicin、Ifosfamide、Methotrexate、Mithramycin、Mitomycin、Mitoxantrone、Nitrogen Mustard、Taxol(または他のタキサン、例えばドセタキセル)、Velban、Vincristine、VP-16が含まれるが、いくつかのより新しい薬物には、Gemcitabine(Gemzar)、Herceptin、Irinotecan (Camptosar, CPT-11)、Leustatin、Navelbine、Rituxan STI-571、Taxotere、Topotecan(Hycamtin)、Xeloda (Capecitabine)、Zevelin、およびカルシトリオールが含まれる。使用され得る免疫調節薬の非限定的な例には、AS-101 (Wyeth-Ayerst Labs.)、ブロピリミン(Upjohn)、γインターフェロン(Genentech)、GM-CSF(granulocyte macrophage colony stimulating factor; Genetics Institute)、IL-2(CetusまたはHoffman-LaRoche)、ヒト免疫グロブリン(Cutter Biological)、IMREG(New Orleans, La.のImreg社製)、SK&F 106528、およびTNF(tumor necrosis factor; Genentech)が含まれる。
【0175】
特異的結合物質を用いた治療方法
ブラキュリの発現は、腫瘍細胞の移動および浸潤に関連している。ブラキュリは、小腸、胃、腎臓、膀胱、子宮、卵巣、精巣、肺、結腸、および前立腺の腫瘍において発現されるが、大半の正常組織においては発現されない。さらに、ブラキュリの発現は、上皮間葉移行にも関連している。さらに、ブラキュリは、慢性リンパ性白血病(CLL)、エプスタイン・バーウイルスによって形質転換されたB細胞、バーキットリンパ腫、およびホジキンリンパ腫などB細胞由来の腫瘍においても発現される。ブラキュリの発現を低減させることができる反応物もまた、ブラキュリを発現する腫瘍を治療するために使用することができる。これらの反応物は、単独で使用することができるか、または本明細書において開示される免疫原性ブラキュリポリペプチドと組み合わせて使用することができる。
【0176】
これらの方法は、ブラキュリを発現する腫瘍を有する対象のような治療を必要とする対象を選択する段階を含み得る。いくつかの例において、これらの方法は、小腸、胃、腎臓、膀胱、子宮、卵巣、精巣、肺、結腸、または前立腺の腫瘍を有する対象を選択する段階を含む。さらなる例において、この方法は、慢性リンパ性白血病(CLL)、B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、またはホジキンリンパ腫などB細胞由来の腫瘍を有する対象を選択する段階を含む。
【0177】
1つの例において、この方法は、ブラキュリに優先的に結合する治療的有効量の特異的結合物質を投与する段階を含む。特異的結合物質は、ブラキュリmRNA(例えば、SEQ ID NO: 1をコードするmRNA)に特異的に結合するsiRNAまたはアンチセンス分子などの阻害物質でよい。ブラキュリの阻害は、100%の阻害を要求しないが、特定の病理学的状態に関連した細胞増殖または分化を完全に阻害しないとしても、少なくとも低減を含み得る。ブラキュリ発現を低減させることによる腫瘍治療は、腫瘍が転移する能力を改変することによって、対象において腫瘍の発達を遅延させる(例えば、腫瘍の転移を予防する)段階を含み得る。また、腫瘍の治療は、転移の数を減少させることにより、(例えば、腫瘍のサイズもしくは体積またはその転移を減少させることによって)、このような腫瘍の存在に関連した徴候または症状を軽減させる段階も含む。いくつかの例において、腫瘍転移の減少もしくは減速、または腫瘍のサイズもしくは体積の減少は、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも50%、または少なくとも75の変化である。いくつかの例において、本明細書において開示される方法を用いた治療は、対象の生存期間を延長する。また、治療は、間葉系マーカー(フィブロネクチン、ビメンチン、および/またはN-カドヘリンなど)の下方調節ならびに上皮マーカー(E-カドヘリンまたはg-カテニンなど)の上方調節ももたらし得る。
【0178】
特異的結合物質とは、他の分子に対してよりも、ブラキュリに対してより高い親和力で結合する作用物質である。例えば、特異的結合物質は、ブラキュリに高い親和力で結合するが、別の遺伝子にも遺伝子産物にも実質的に結合しないものでよい。例えば、特異的結合物質は、例えば、ブラキュリmRNAに干渉し、タンパク質への翻訳を阻止することによって、遺伝子発現(転写、プロセシング、翻訳、翻訳後修飾)を妨げる。
【0179】
標的細胞におけるブラキュリタンパク質発現の低減は、ブラキュリコード配列に基づいたアンチセンス構築物または他の抑制性構築物を細胞中に導入することによって実現することができる。アンチセンス抑制の場合、ブラキュリコード配列に由来するヌクレオチド配列、例えば、ブラキュリcDNAまたは遺伝子のすべてまたは一部分が、形質転換ベクター中のプロモーター配列に対して逆の向きに配列される。
【0180】
導入される配列は、完全長ブラキュリ遺伝子である必要はなく、形質転換される細胞型中に存在する等価な配列と厳密に相同である必要もない。したがって、ブラキュリをコードする核酸(SEQ ID NO: 2)の一部分または断片もまた、発現をノックアウトまたは抑制するために使用され得る。しかしながら、一般に、導入される配列の長さが短いほど、天然のブラキュリ配列に対するより高度な同一性が、有効なアンチセンス抑制のために必要とされると考えられる。ベクター中に導入されるアンチセンス配列は、少なくとも15ヌクレオチド長でよく、典型的には、アンチセンス配列の長さが長くなるにつれ、より優れたアンチセンス抑制が観察される。ベクター中のアンチセンス配列の長さは、有利には100ヌクレオチドより長く、ブラキュリcDNAまたは遺伝子のほぼ完全長の長さを上限としてよい。ブラキュリ遺伝子それ自体を抑制する場合、アンチセンス構築物の転写により、細胞中の内因性ブラキュリ遺伝子から転写されるmRNA分子の逆相補体であるRNA分子が産生される。
【0181】
アンチセンスRNA分子が遺伝子発現を妨げる正確なメカニズムは解明されていないが、アンチセンスRNA分子が内因性mRNA分子に結合し、それによって内因性mRNAの翻訳を阻害すると考えられている。ブラキュリの発現はまた、阻害性低分子RNAを用いて、例えば、以前に説明されているものに類似した技術を用いて低減させることもできる(例えば、Tuschl et al., Genes Dev 13, 3191-3197, 1999; Caplen et al., Proc. Nat'l Acad. Sci. U. S. A. 98, 9742-9747, 2001;およびElbashir et al., Nature 411, 494-498, 2001を参照されたい)。臨床的に使用できる siRNA を作製する方法は、当技術分野において公知である。例示的なsiRNAは、Sigma AldrichおよびDharmaconなどいくつかの供給業者から市販されており、治療的siRNAは、当技術分野において公知の方法を用いて容易に作製することができる。
【0182】
また、内因性ブラキュリ発現の抑制は、リボザイムを用いて実現することもできる。リボザイムは、高度に特異的なエンドリボヌクレアーゼ活性を有する合成RNA分子である。リボザイムの製造および使用は、Cechによる米国特許第4,987,071号およびHaselhoffによる米国特許第5,543,508号において開示されている。リボザイム配列をアンチセンスRNA内に含めることは、アンチセンスRNAにRNA切断活性を与えるために使用することができ、その結果、アンチセンスRNAに結合する内因性mRNA分子が切断され、その結果として、内因性遺伝子発現のアンチセンス阻害が強化される。
【0183】
いくつかの例において、発現ベクターが、アンチセンス分子、リボザイム分子、またはsiRNA分子などの阻害物質核酸を発現させるために使用される(ベクターおよび発現系に関する付加的な情報に関しては上記を参照されたい)。例えば、発現ベクターは、アンチセンス分子、リボザイム分子、またはsiRNA分子をコードする核酸配列を含んでよい。特定の例において、ベクターは、二重鎖を含むsiRNA分子の両方の鎖をコードする配列を含む。別の例において、ベクターはまた、自己相補的であり、したがってsiRNA分子を形成する単一の核酸分子をコードする配列を含む。このような発現ベクターの非限定的な例は、Paul et al., Nature Biotechnology 19:505, 2002; MiyagishiおよびTaira、Nature Biotechnology 19:497, 2002; Lee et al., Nature Biotechnology 19:500, 2002;ならびにNovina et al., Nature Medicine, オンライン出版2003年6月3日に記載されており、その他のベクターは前述した。
【0184】
他の例において、siRNA分子のような阻害性核酸は、とりわけてリポソームを含む、対象に投与するための送達ビヒクル、担体および希釈剤ならびにそれらの塩を含み、薬学的組成物中に存在してよい。核酸分子は、限定されるわけではないが、リポソームへの封入、イオン導入によるもの、もしくは他の送達ビヒクル、例えば、ヒドロゲル、シクロデキストリン、生分解性ナノカプセル、および生体接着性マイクロスフェア中への組入れによるもの、またはタンパク質性ベクターによるものを含む、当業者に公知の様々な方法によって細胞に投与することができる(例えば、O'HareおよびNormand、国際出願PCT公報WO 00/53722を参照されたい。また、前述のその他の方法も参照されたい)。
【0185】
あるいは、核酸/ビヒクルの組合せを、直接注射によるか、または輸液ポンプを用いて、腫瘍中などに局所的に送達することもできる。本開示の核酸分子の直接注射は、皮下であれ筋肉内であれ皮内であれ、標準的な針およびシリンジ方法論を用いて、またはBarry et al., 国際出願PCT公報WO 99/31262に記載されているもののような無針技術によって、実施することができる。他の送達経路には、経口送達(錠剤または丸剤の形態など)、くも膜下腔内送達、または腹腔内送達が含まれるがそれらに限定されるわけではない(下記を参照されたい)。例えば、腹腔内送達は、分子を腫瘍部位に直接送達するために、対象の腹膜腔に治療薬を注射することによって実施することができる。核酸の送達および投与に関するより詳細な説明は、Sullivan et al., PCT WO 94/02595、Draper et al., PCT公報WO93/23569、Beigelman et al., PCT WO99/05094、およびKlimuk et al., PCT公報WO 99/04819において提供されており、これらの文献はすべて参照により本明細書に組み入れられる。
【0186】
あるいは、ある種のsiRNA分子は、細胞内で真核生物プロモーターから発現させることもできる。当業者は、適切なDNA/RNAベクター(上記を参照されたい)を用いて、任意の核酸を真核細胞において発現させ得ることを認識するであろう。このような核酸の活性は、酵素的核酸によって一次転写物からそれらを遊離させることによって増強することができる(Draper et al., PCT公報WO 93/23569およびSullivan et al., PCT公報WO 94/02595)。
【0187】
他の例において、siRNA分子は、DNAベクターまたはRNAベクター中に挿入された転写単位(例えば、Couture et al., 1996, TIG 12:510を参照されたい)から発現させることができる。組換えベクターは、DNAプラスミドまたはウイルスベクターでよい。siRNAを発現するウイルスベクターは、例えば、限定されるわけではないが、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、レンチウイルス、またはアルファウイルスをベースとして構築することができる。別の例において、pol IIIベースの構築物が、本発明の核酸分子を発現させるために使用される(例えば、Thompson, 米国特許第5,902,880号および同第6,146,886号、ならびに前述の他の文献を参照されたい)。
【0188】
siRNA分子を発現することができる組換えベクターは、前述したようにして送達することができ、かつ標的細胞中で存続することができる。あるいは、核酸分子の一過性発現を提供するウイルスベクターを使用することもできる。このようなベクターは、必要に応じて繰り返し投与することができる。一度発現されると、siRNA分子は、標的mRNAと相互に作用し、RNAi応答を生じさせる。siRNA分子を発現するベクターの送達は全身的でよく、例えば、静脈内投与もしくは筋肉内投与によるか、対象から外植した標的細胞への投与とそれに続く対象中への再導入によるか、または所望の標的細胞中への導入を可能にする他の任意の手段による。
【0189】
診断方法
生物試料中のブラキュリを検出するための方法もまた、本明細書において提供される。この方法は、ブラキュリに特異的に結合して抗体-ブラキュリ複合体を形成する1種または複数種の抗体と試料を接触させる段階を含む。複合体の存在または不在が検出される。これらの方法は、組織診断の信頼性を改善するため、例えば、診断を裏付けるために、または腫瘍の起源を決定するために有用である。したがって、本明細書において開示される方法を用いて、小腸、胃、腎臓、膀胱、子宮、卵巣、精巣、肺、結腸、および前立腺の腫瘍の診断を裏付けることができる。本明細書において開示される方法を用いて、慢性リンパ性白血病(CLL)、エプスタイン・バーウイルスによって形質転換されたB細胞、バーキットリンパ腫、およびホジキンリンパ腫などのB細胞腫瘍の診断を裏付けることができる。また、本明細書において開示される方法を用いて、腫瘍の起源を判定することができ、例えば、ある転移癌が小腸、胃、腎臓、膀胱、子宮、卵巣、精巣、肺、結腸、前立腺、またはB細胞に由来するかを判定することができる。
【0190】
さらに、ブラキュリの発現は、上皮間葉移行にも関連している。したがって、本明細書において開示される方法を用いて、腫瘍細胞の移動および浸潤の可能性を決定することができる。
【0191】
これらの方法は、腫瘍を有する対象のような診断を必要とする対象を選択する段階、およびこの対象から試料を得る段階を含み得る。いくつかの例において、これらの方法は、小腸、胃、腎臓、膀胱、子宮、卵巣、精巣、肺、結腸、または前立腺の腫瘍を有する対象を選択する段階、およびこの対象から試料を得る段階を含む。さらなる例において、この方法は、慢性リンパ性白血病(CLL)、B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、またはホジキンリンパ腫などB細胞由来の腫瘍を有する対象を選択する段階、およびこの対象から試料を得る段階を含む。
【0192】
試料は任意の試料でよく、生検材料、剖検、および病理標本に由来する組織が含まれるがそれらに限定されるわけではない。生物試料にはまた、組織学的目的で採取された凍結切片のような組織切片も含まれる。生物試料には、血液、血清、脊髄液、または尿などの体液もさらに含まれる。生物試料は、典型的には、ラット、マウス、雌ウシ、イヌ、モルモット、ウサギ、または霊長類などの哺乳動物から得られる。1つの態様において、霊長類は、マカク、チンパンジー、またはヒトである。いくつかの態様において、組織学的切片が利用され、免疫組織化学的アッセイ法が実施される。
【0193】
ブラキュリに特異的に結合する抗体は、当技術分野において公知である。抗体には、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体が含まれる。いくつかの態様において、Fv断片のような抗体断片が利用される。さらなる態様において、抗体は、(蛍光性標識、放射性標識、または酵素標識などで)標識される。さらなる例において、これらの抗体は、非限定的に、酵素、磁性ビーズ、コロイド状磁性ビーズ、ハプテン、蛍光色素、金属化合物、または放射性化合物を含む化合物に結合されてよい。
【0194】
タンパク質の存在または不在を判定する方法は、当技術分野において周知である。有用なアッセイ法には、ラジオイムノアッセイ法(RIA)、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、または免疫組織化学的アッセイ法が含まれるがそれらに限定されるわけではない。生物試料中のブラキュリを検出するための方法は、一般に、免疫学的に反応性の条件下で、生物試料をブラキュリに特異的に反応する抗体と接触させる段階を含む。免疫学的に反応性の条件下で抗体を特異的に結合させて免疫複合体を形成させ、免疫複合体(結合された抗体)の存在を直接的または間接的に検出する。同じ組織型の形質転換されていない細胞または切片などの対照細胞を対照として含めてよい。
【0195】
ブラキュリに特異的に結合するCD8 (CD8+)細胞を発現する細胞を検出するための反応物
ブラキュリに特異的に結合するCD8発現細胞を検出するための反応物が本明細書において提供される。これらの反応物は、四量体のMHCクラスI/免疫原性ブラキュリポリペプチド複合体である。これらの四量体複合体は、多くても12個の連続したアミノ酸を含む免疫原性ブラキュリポリペプチドを含み、その際、単離されたポリペプチドは、WLLPGTSTX1(SEQ ID NO: 3)(X1はロイシン(L)またはバリン(V)である)として示すアミノ酸配列を含む。10アミノ酸長である免疫原性ブラキュリポリペプチドの具体的な例は、上記に開示される。本明細書において開示される四量体複合体は、ブラキュリ(SEQ ID NO: 1)のその他の連続したアミノ酸を含まず、その結果、ポリペプチドは、完全長のブラキュリアミノ酸配列を含まない。
【0196】
四量体MHCクラスI/ペプチド複合体は、当技術分野において周知の方法を用いて合成することができる(参照により本明細書に組み入れられるAltmann et al., Science 274:94, 1996)。1つの非限定的な具体例において、精製したHLA重鎖およびβ2-ミクログロブリン(β2m)は、原核生物発現系を用いて合成することができる。有用な発現系の1つの非限定的な具体例は、pET系(R&D Systems, Minneapolis, MN)である。重鎖は、膜を貫通するサイトゾル側末端の欠失およびビオチンタンパク質リガーゼ(Bir-A)による酵素学的ビオチン標識部位を含む配列のCOOH末端への付加によって改変される。次いで、重鎖、β2m、およびペプチドがリフォールディングされる。リフォールディングされた産生物は、当技術分野において公知である任意の手段によって単離することができ、次いでBir-Aによってビオチン標識することができる。次いで、ビオチン標識した産生物をストレプトアビジン(strepavidin)と接触させることによって、四量体を作製する。
【0197】
1つの態様において、ストレプアビジンは標識される。適切な標識には、酵素、磁性ビーズ、コロイド状磁性ビーズ、ハプテン、蛍光色素、金属化合物、放射性化合物、または薬物が含まれるがそれらに限定されるわけではない。ストレプアビジンに結合され得る酵素には、アルカリホスファターゼ、ペルオキシダーゼ、ウレアーゼ、およびβ-ガラクトシダーゼが含まれるが、それらに限定されるわけではない。ストレプアビジンに結合され得る蛍光色素には、フルオレセインイソチオシアナート、テトラメチルローダミンイソチオシアナート、フィコエリトリン、アロフィコシアニン、およびTexas Redが含まれるが、それらに限定されるわけではない。ストレプアビジンに結合され得るその他の蛍光色素に関しては、Haugland, R. P., Molecular Probes: Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals (1992-1994)を参照されたい。ストレプアビジンに結合され得る金属化合物には、フェリチン、コロイド金、および特にコロイド状超常磁性ビーズが含まれるが、それらに限定されるわけではない。ストレプアビジンに結合され得るハプテンには、ビオチン、ジゴキシゲニン、オキサザロン(oxazalone)、およびニトロフェノールが含まれるが、それらに限定されるわけではない。ストレプアビジンに結合され得る放射性化合物は当技術分野において公知であり、テクネチウム99m(99Tc)、125I、ならびに14C、3H、および35Sを非限定的に含む任意の放射性核種を含むアミノ酸が含まれるがそれらに限定されるわけではない。一般に、蛍光色素で標識されたストレプアビジンが、本明細書において開示される方法において使用される。
【0198】
1つの態様において、ブラキュリを特異的に認識するT細胞を含む細胞懸濁液を作製し、これらの細胞を懸濁液中で四量体と反応させる。1つの態様において、これらの反応物を用いて細胞を標識し、次いで、蛍光活性化細胞選別(FACS)によってそれらの細胞を分析する。FACS用の機械は、様々なより高度なレベルの検出の中でも特に、複数のカラーチャネル、低角および鈍角の光散乱検出チャネル、ならびにインピーダンスチャネルを用いて、細胞を分離または選別する。所望の細胞の検出にとって有害ではない限り、任意のFACS技術が使用され得る。(FACSの例示的な方法に関しては、米国特許第5,061,620号を参照されたい)。
【0199】
本開示は、以下の非限定的な実施例によって例示される。
【0200】
実施例
実施例1
材料および方法
コンピューターによるディファレンシャルディスプレイ(CDD)解析。以前に説明されているようにしてHSAnalystプログラムを用いて(Baronova et al., FEBS Lett 508(1):143-8, 2001)、ヒトUnigene Built 171(インターネットで閲覧可能なNCBI Unigeneウェブサイトを参照されたい)上のすべてのESTクラスターの比較を実施した。Unigene EST クラスターHs.389457は、アクセッション番号NM_003181に対応する。
【0201】
cDNA供給源。数名の個体から集めた正常組織に由来する標準化cDNAのセットを含む多組織cDNA(MTC)パネル(Clontech, Mountain View, CA)を用いて、正常組織における発現を研究した。次のパネルを使用した:ヒトMTCパネルI、パネルII、および血液画分パネル。様々な組織型の様々な個体から調製された、市販されている腫瘍組織由来cDNAを、BioChain Institute Inc. (Hayward, CA)から入手した。RNAeasy抽出キット(Qiagen Inc., Valencia, CA)を用いて、ヒト癌細胞株および単離された正常なCD19+B細胞に由来する全RNAを調製した。
【0202】
PCR解析。cDNAパネルのPCR増幅は、NM_003181に特異的な次のプライマーを用いて実施した:

G3PDH特異的プライマーは次のとおりであった:

【0203】
次の条件を使用した:95℃で1分;95℃で30秒、58℃で30秒、および72℃で1分からなるサイクルを35回;ならびに72℃で5分間の伸長。ブラキュリ産物およびG3PDH産物の予想されるサイズは、それぞれ172bpおよび983bpであった。製造業者の取扱い説明書に従ってTITANIUM One-Step RT-PCRキット(Clontech)を用いて、ヒト癌細胞株および単離された正常なCD19+B細胞に由来する全RNAを増幅した。プライマー配列は、次のとおりであった:

PCR産物の予想されるサイズは、それぞれ568bpおよび356bpであった。
【0204】
NCI-H460細胞からのRT-PCR増幅:製造業者の推奨に従ってRNeasy抽出キット(Qiagen Inc., Valencia, CA)を用いることによって、対照のshRNAプラスミドまたはブラキュリに特異的なshRNA構築物(Br. shRNAクローン1および2)を含む安定にトランスフェクトされたNCI-H460細胞から全RNAを調製した。製造業者の取扱い説明書に従ってTITANIUM One-Step RT-PCRキット(Clontech, Mountain View, CA)を用いることによって、5ngの全RNAを増幅した。プライマー配列は、次のとおりであった:

PCR産物の予想されるサイズは、それぞれ568bpおよび356bpであった。
【0205】
細胞培養物。10%ウシ胎児血清、2mMグルタミン、および抗生物質/抗真菌剤の1×溶液(Invitrogen)を添加したRPMI1640培地(Invitrogen, Carlsbad, CA)中で、マイコプラズマ(Mycoplasma)を含まないようにヒト癌細胞株を維持した。この研究で使用したその他の細胞株はC1R-A2細胞株(HLA-A2表面抗原を発現するようにトランスフェクトされたヒトリンパ芽球様B細胞株(Shimojo et al., J Immunol 143(9):2939-47, 1989)である)およびT2 (HLA-A2+)輸送欠失変異細胞株(Salter et al., Embo J 5(5):943-9, 1986)であった。
【0206】
ペプチド。Parker et al.によって開発されたBioinformatics and Molecular Analysis Section of NIH (BIMAS)のコンピューターアルゴリズムを用いた(参照により本明細書に組み入れられるParker et al., J Immunol 152(1):163-75, 1994)。90%を上回る純度の9量体ペプチドおよび10量体ペプチドのパネル(下記の表2を参照されたい)を合成した(Biosynthesis, Lewisville, TX)。CEAペプチドCAP1-6D(YLSGADLNL、SEQ ID NO: 12)、HIVペプチド(ILKEPVHGV、SEQ ID NO: 13)、およびHLA-A3に特異的なCEAペプチドを対照として使用した。
【0207】
HLA-A2結合アッセイ法。T2細胞におけるHLA-A02の表面発現をフローサイトメトリーで解析することによって、HLA-A0201分子へのブラキュリ特異的ペプチドT-p1、T-p2、T-p3、およびT-p4(SEQ ID NO: 1〜4)の結合を評価した。無血清イスコフ改変ダルベッコ培地中のT2細胞(1×106個)を、37℃、5%CO2、様々な濃度の各ペプチドの存在下にて、24ウェル培養プレート中でインキュベートした。18時間培養した後、T2細胞を回収し、1×リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)(Invitrogen)で洗浄し、FITCを結合させた抗HLA-A02特異的モノクローナル抗体(MAb) (One Lambda, Inc., Canoga Park, CA)20μlで染色した。FITCを結合させたIgG2a MAb (BD Biosciences, San Jose, CA)をアイソタイプ対照として使用した。データの取得および解析は、CELLQuest(商標)ソフトウェアを用いたFACSCalibur(商標)システム(BD Biosciences)において実施した。結果は、対数目盛り上に集めた平均蛍光強度(MFI)として表した。主要組織適合遺伝子複合体(MHC)-ペプチド複合体の半減期を測定するために、25μMの各ペプチドの存在下でT2細胞を18時間インキュベートし、続いて未結合のペプチドを洗い流して除き、10μg/mlのBrefeldin Aの存在下で様々な時点までインキュベートした。前述したようにしてフローサイトメトリーを実施した。一次速度式であると仮定して、log2(MFI/MFI0)(MFIは、各時点の蛍光であり、MFI0は、時点0での最初の蛍光である)を時間(分)に対してプロットした。各曲線に関して線形回帰の勾配として崩壊速度定数を算出し、この比率の逆数、すなわち1/崩壊速度定数として、各ペプチド-MHC複合体の半減期を算出した。
【0208】
末梢血単核細胞(PBMC)からのDCの培養。この研究で使用した末梢血は、健常なドナーおよび癌患者から採取した。Ficoll密度勾配(LSMリンパ球分離用溶液、ICN Biochemicals Inc., Aurora, OH)を用いた遠心分離によって、白血球搬出試料から末梢血単核細胞(PBMC) を単離した。樹状細胞(DC)を調製するために、PBMCをAIM-V培地(Invitrogen)中に再懸濁し、T-150フラスコ(Corning Costar Corp., Cambridge, MA)の表面に接着させた。37℃で2時間経過後、非接着細胞の画分を除去し、100ng/mlの組換えヒトGM-CSF(rhGM-CSF)および20ng/mlの組換えヒトIL-4(rhIL-4)を含むAIM-V培地中で接着細胞を7日間培養した。
【0209】
T細胞株の作製。ブラキュリに特異的な細胞障害性T細胞(CTL)を作製するために、ペプチドをパルスし放射線照射した(30 Gy)DCを抗原提示細胞(APC)として使用し、自己由来の非接着細胞をエフェクター細胞として使用した。エフェクター対APCの比率は10:1とした。10%ヒトAB血清を含む培地中で最初の3日間、および20U/mlの組換えヒトIL-2を添加した同じ倍中でさらに4日間、培養物を維持した。7日間の培養期間後(インビトロ刺激(IVS)サイクルと名付けた)、前述のようにして細胞を再度刺激した。
【0210】
サイトカインの検出。3回のIVSサイクル後、CD8+単離キット(Miltenyi Biotec, Auburn, CA)を用いて陰性として単離されたCD8+ T細胞を、ペプチドパルスした自己DCの存在下で24時間刺激した。酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)キット(Biosource International Inc., Camarillo, CA)を用いて、IFN-γの存在に関して培養上清を解析した。結果はpg/mlで表した。
【0211】
細胞障害性アッセイ法。室温で15分間、50μCiの111インジウム標識オキシキノリン(Amersham Health, Silver Spring, MD)で標的細胞を標識した。10%ヒトAB血清を含む培地中の標的細胞を、細胞3×103個/ウェルの濃度で96ウェル丸底培養プレートに播種した。標識したC1R-A2細胞またはT2細胞を5%CO2中、37℃で60分間、指定の濃度のペプチドと共にインキュベートした後に、エフェクター細胞を添加した。癌細胞またはCD19+B細胞を標的として使用する場合は、ペプチドを添加しなかった。T細胞培養物から陰性として単離されたCD8+T細胞を、様々なエフェクター対標的(E:T)細胞比率で、エフェクター細胞として使用した。標的細胞がC1R-A2またはT2である場合、以前に説明されているようにして(Tsang et al., Clin Cancer Res 11(4):1597-607, 2005)、5%CO2雰囲気中、37℃で6時間、共培養物をインキュベートした;癌細胞株を標的として使用する場合、同じ条件で16時間の間、以前に説明されているようにして(Tsang et al., 前記)、共培養物をインキュベートした。16時間のインキュベーション期間後に高レベルの自発的放出が観察されたため、正常なドナーCD19+ B細胞を標的として使用する細胞障害性アッセイ法は、以前に説明されているようにして(Palena et al., Blood 106(10):3515-23, 2005)、5時間実施した。上清を回収し、放出された111Inをγ計数によって測定した。標的細胞を培地のみとインキュベートすることによって自発的放出を決定し、標的細胞を2.5% Triton X-100とインキュベートすることによって完全な溶解を決定した。決定はすべてトリプリケートで実施し、標準偏差を算出した。特異的溶解を次のように算出した:特異的溶解(%)=[(観察された放出−自発的放出)/(完全な放出−自発的放出)]×100。
【0212】
安定にトランスフェクトされたNCI-H460細胞の作製:肺の大細胞癌に罹患した患者に由来するNCI-H460細胞株をAmerican Type Culture Collection(ATCC, Manassas, VA)から入手し、抗生物質/抗真菌剤の1×溶液(Invitrogen, Carlsbad, CA)および10%ウシ胎児血清(FBS, Gemini Bio-Products West Sacramento, CA)を添加したRPMI-1640培地中で維持した。製造業者の推奨に従って、ヌクレオフェクター(nucleofector)装置および技術(Amaxa Biosystems, Gaithersburg, MD)を用いて、非ターゲティングshRNA構築物(対照shRNAと名付けた)または2つのブラキュリ特異的ターゲティングshRNA構築物(Br.shRNAクローン1および2と名付けた)をコードする精製された直鎖状DNAプラスミド1μgを細胞(1×106個)にトランスフェクトした。48時間培養した後、10%FBSおよび1μg/mlピューロマイシン(Sigma Aldrich, St.Louis, MO)を含むRPMI-1640培地中で、安定にトランスフェクトされた細胞を選択した。
【0213】
間葉系マーカーおよび上皮マーカーのウェスタンブロット解析:製造業者の取扱い説明書に従ってRipa Lysis Bufferキット(Santa Cruz Biotech, Santa Cruz, CA)を用いて、対照shRNAおよびブラキュリ特異的shRNA(クローン2)を安定にトランスフェクトされたNCI-H460細胞からタンパク質抽出物を調製した。BCA Protein Assayキット(Thermo Scientifics, Rockford, IL)を用いてンパク質濃度を決定した。
【0214】
各試料からのタンパク質10マイクログラム(mg)を4〜12%ポリアクリルアミド勾配のプレキャストゲル上で分離し、続いて、ニトロセルロース膜(Invitrogen)に移した。室温で1時間、新しく作製したPBS中0.5%カゼインでブロットをブロックした。続いて、4℃で一晩、0.5%カゼイン溶液中の一次抗体の1:500〜1:1000希釈物でブロットをプローブした。抗体は抗ヒトフィブロネクチン、抗ヒトビメンチン、抗ヒトg-カテニン、および抗ヒトb-アクチン(BD Biosciences, San Jose, CA)であった。PBSでブロットを3回洗浄し、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)を結合させた抗マウスIgG二次抗体(Invitrogen)の1:5000希釈物と共に室温で1時間インキュベートした。PBS/Tween20でブロットを5回洗浄し、Western Lighting化学発光検出試薬(PerkinElmer, Boston MA)を用いて顕色させ、かつオートラジオグラフを得た。
【0215】
移動アッセイ法および浸潤アッセイ法:ポアサイズがマイクロメートルレベルのポリカーボネートフィルター12個を備えたBlind Well Chambers (Neuroprobe, Gaithersburg, MD)を用いて、対照shRNAまたはブラキュリ特異的shRNA(Br.shRNAクローン2)を安定にトランスフェクトされたNCI-H460細胞の移動能力をインビトロで検査した。手短に言えば、10%ウシ胎児血清(FBS)を含むRPMI-1640培地を下側のチャンバーに添加し、細胞(細胞1×105個、無血清RPMI培地中の300μl)を上側のチャンバーに添加した。浸潤アッセイ法のために、Matrigel (BD Biosciences)と無血清RPMI-1640培地の1:1希釈物でポリカーボネートフィルターをプレコートした。各細胞株あたり3個ずつの試料を用いて実験を実施した。37℃で48時間インキュベーションした後、フィルターの上側を麺棒で広範囲にわたって清掃し、フィルターをチャンバーから取り外し、固定し、Diff-Quik染色(Dade Behring Inc., Newark, DE)で染色した。100倍対物レンズの視野をランダムに5つ直接計数することによって、膜の下側に結合している細胞の数を評価した。各棒は、各反復実験アッセイ法の結果±SEMに相当する。
【0216】
実施例2
コンピューターに基づいた予測
ヒトUnigene Built 171における遺伝子発現のインシリコプロファイリングを、HSANALYST(商標)ソフトウェアツールを用いて、以前に説明されているようにして(Baranova et al., FEBS Lett 508(1):143-8, 2001)実施した。このプログラムによって実行されるアルゴリズムにより、10個超のESTを含む候補ESTクラスターのリストが得られ、これらのESTの90%超は腫瘍ライブラリーに由来した。それらのうちで、クラスターHs.389457は、ヒトブラキュリ遺伝子(マウスブラキュリのホモログ)をコードするmRNA配列全体を含んでいた。このクラスターに含まれていた合計55個のESTのうち、50個のESTは、肺癌細胞株、胚細胞腫瘍、慢性リンパ性白血病B細胞、および乳癌から構築された腫瘍由来ライブラリーに対応していた。クラスターHs.389457中に存在した2つの正常組織由来ESTは、胎児肺、精巣、および正常なB細胞から集めたRNAから構築されたライブラリーに属していた。クラスター中の他の3つのESTは、組織の起源の説明を欠いていたため、「未決定」と呼んだ。
【0217】
実施例3
発現の確認
次いで、ブラキュリmRNAの発現に関するコンピューターに基づいた予測を、一連の正常ヒト組織および悪性ヒト組織におけるブラキュリ発現のRT-PCR解析によって検証した。正常組織に由来する大半のcDNA試料は、アルゴリズムによって予測されたように、ブラキュリmRNA発現を示さなかった(図1Aおよび1B)。しかしながら、非常に弱いシグナルが、正常な精巣、脾臓に由来するcDNA(図1A)、および休止中のCD19+精製細胞(図1B)において観察された。これらの結果はまた、クラスター中のEST 55個のうち2個が、集められた精巣、胎児肺、および正常なBリンパ球から調製したライブラリーに属しているというソフトウェアによる予測とも一致していた。
【0218】
正常B細胞におけるブラキュリの発現を、様々な健常ドナーから単離したCD19+試料においてさらに評価した;1μgの全RNAおよび35サイクルのPCR増幅を用いた場合、解析した試料9個のうち4個で弱い増幅が観察された。
【0219】
一方、腫瘍組織に由来するcDNA試料のRT-PCR増幅では、食道、胃、小腸、腎臓、膀胱、子宮、卵巣、および 精巣の癌において比較的高レベルのブラキュリmRNA発現が示され(図1C)、肺癌由来の試料において弱いシグナルが示された。これらの反応のうち2回に由来するPCR産物を続いて配列決定して遺伝子を確認し、非特異的増幅の可能性を除外した。30種のヒト癌細胞株に由来する全RNAに関して、ブラキュリの発現をさらに解析した(表1)。
【0220】
(表1)ヒト腫瘍細胞株におけるヒトブラキュリのRT-PCR発現

1ブラキュリmRNAの発現は、β-アクチンの発現と比べて陰性(-)、陽性(+)、または強い陽性(++)として示される。(a)この細胞株が結腸に由来する可能性があるという矛盾する証拠がある。Furlong et al., J Natl Cancer Inst 91(15):1327-8, 1999を参照されたい。
【0221】
ブラキュリmRNAの発現は、肺癌由来、結腸癌由来、および前立腺癌由来の腫瘍細胞株の大半において観察された(表1)。したがって、これらの結果により、RT-PCRによるCDD予測が検証され、ブラキュリ発現がいくつかの腫瘍で確認されたが、正常組織では確認されなかった。
【0222】
逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応法(RT-PCR)解析により、小腸、胃、腎臓、膀胱、子宮、卵巣、および精巣の腫瘍ならびに肺癌、結腸癌、および前立腺癌に由来する細胞株におけるブラキュリ発現が実証されたが、試験した正常組織の圧倒的多数では実証されなかった。また、慢性リンパ性白血病(CLL)細胞、エプスタイン・バーウイルス(EBV)に形質転換されたB-細胞株、バーキットリンパ腫細胞株、およびホジキンリンパ腫細胞株を含む、検査したB細胞悪性腫瘍の大半においてもブラキュリmRNA発現の増大が検出された。定量的リアルタイムPCR解析により、CLL患者25名中13名から単離されたCD19+細胞におけるブラキュリmRNAの発現が、健常ドナーの末梢血から単離されたBリンパ球または正常ヒト組織のパネルにおける、たとえあるとしても非常に低レベルの発現と比べて増大していることが示された。EBVによる正常Bリンパ球への感染の経時変化から、ブラキュリmRNA発現が感染後早ければ48時間で誘導され、形質転換されたB細胞株の長期間培養物中で維持されることが示された。EBVはリンパ球向性ヒトヘルペスウイルスであり、免疫無防備状態の個体におけるリンパ腫および移植後のリンパ球増殖障害など血液学的起源のヒト新生物ならびに上咽頭癌および胃腺癌など上皮由来のものを含む様々な臨床的障害に関係している。これらの結果から、ブラキュリが、B細胞由来の血液学的悪性腫瘍、および特に、EBVに関連した悪性腫瘍の潜在的な腫瘍標的であることが示唆される。また、これらの結果から、(同じ組織型の対照細胞と比べて)増大したブラキュリ発現が、これらの型の腫瘍の診断を裏付けるためのマーカーとして役立つことが実証される。癌の組織診断を下す際の信頼性を改善することに加えて、転移性病変でのブラキュリ過剰発現を検出することは、原発腫瘍の潜在的部位を同定するのに役立ち、その結果、これらの潜在的部位のさらなる診断検査をより高いコスト効率で実施し、療法(例えば、原発腫瘍の外科的切除)をより迅速に実行することができる。したがって、ブラキュリの検出は、ブラキュリ発現を特徴とする癌を診断および治療する方法において使用され得る。
【0223】
実施例4
MHCに結合するブラキュリ免疫原性ペプチドの作製
次いで、BIMASのコンピューターアルゴリズムを用いて、ブラキュリタンパク質のアミノ酸配列をHLA-A0201ペプチドの結合予測に関して解析した。3つの9量体および1つの10量体(アミノ酸配列およびアルゴリズムスコアを表2に提示する)を含む、このプログラムによって得られたトップクラスの候補ペプチドを、さらに研究するために選択した。
【0224】
(表2)BIMASソフトウェアを用いたHLA-A0201ペプチドモチーフ探索

*開始位置は、タンパク質配列中のアミノ酸位置に対応する。
†この部分配列を含む分子の解離半減期の推定。
【0225】
次いで、インシリコで予測されたエピトープを、細胞ベースのアッセイ法においてMHC分子への結合に関して評価した。TAP欠損T2(HLA-A2+)細胞を25μMの各ペプチドの存在下でインキュベートし、続いて、結合されたペプチドによる細胞表面MHCの安定化に関して試験した。HLA-A02のフローサイトメトリー染色により(図2A)、アルゴリズムによって予測された4つの候補ペプチドすべてが、陽性対照および陰性対照のペプチドと比べた場合、効率的にHLA-A02分子に結合することが実証された。T2細胞に最も良く結合したペプチド(T-p2、T-p3、およびT-p4)をさらに研究するために選択した。各ペプチド-MHC複合体の半減期を決定した;25μMの各ペプチドの存在下でT2細胞を一晩インキュベートした後にブレフェルディンAを添加し、続いて、様々な時点にHLA-A02の細胞表面染色を評価した。Tp-2を含むMHC-ペプチド複合体の半減期は514分であり、陽性対照ペプチド(CAP1-6D)の半減期と類似している。一方、T-p3およびT-p4を含むMHC-ペプチド複合体の半減期はより短く、それぞれ225分および312分であった(図2B)。
【0226】
実施例5
免疫原性
予測されたペプチドがHLA-A02分子に結合する能力が示された後で、それらが特異的CTLをインビトロで誘導する能力を評価することによって、ペプチドT-p2、T-p3、およびT-p4の免疫原性を調査した。25μMの各ペプチドをパルスした放射線照射済DCを用いて、健常なドナーのPBMCに由来する自己T細胞を刺激した。3回のインビトロ刺激(IVS)後、続いて、単離したCD8+T細胞を、自己DCのみまたは各「誘導因子」ペプチド(T-p2、T-p3、もしくはT-p4)もしくは無関係なHIV-ペプチドをパルスしたDCの存在下で24時間刺激した。試験した3種のペプチドのうち、T-p2およびT-p3は、特異的ペプチドで刺激した際にIFN-γを放出することができる抗原特異的CTLを誘導した(図3A)。次いで、ペプチドパルスしたHLA-A0201+標的に対する細胞障害活性に関して、両方のCTL株を試験した。図3Bに示したように、T-p2ペプチドを用いて生じさせたT細胞のみが、ペプチドパルスした標的細胞を特異的に溶解することができ、これは、T-p3およびT-p4と比べて安定なMHC複合体をこのペプチドが形成できることと一致していた。T-p2 CTLの細胞障害活性の測定では、1nMという低いペプチド濃度で細胞障害性応答が示された(図3C)。また、様々な健常なドナーから単離されたCD19+細胞においてブラキュリの低発現が検出可能であったため、正常なBリンパ球の細胞障害性溶解も解析した。5名の異なる健常ドナー由来の解析した正常B細胞のいずれにおいても溶解は観察されなかった。
【0227】
次いで、T-p2特異的CTLの細胞溶解活性をいくつかの腫瘍標的に対して試験した。標的として使用される腫瘍細胞株には、肺癌細胞H441(HLA-A0201+/T抗原+)およびNCI-H460(HLA-A24、68+/T抗原+)、結腸直腸癌株SW1463(HLA-A0201+/T抗原-)、および膵臓癌細胞AsPC-1(HLA-A02-)が含まれた。T-p2エピトープを用いて誘導したCTLは、H441腫瘍細胞を死滅させる際に著しく効率的であったが、他の細胞株に対する溶解は観察されなかった。ブラキュリに関しては強い陽性であるが、HLA-A0201陰性であるH460腫瘍細胞株がTp-2 CTLによって死滅させられなかったという観察結果により、MHC拘束が示された(図4A)。逆に、腫瘍細胞株SW1463は、ブラキュリの発現に関しては陰性であるがHLA-A0201の発現に関しては陽性であるため、抗原特異的な対照としての機能を果たした。同様に、対照AsPC-1(HLA-A0201-)細胞もまた、ブラキュリ特異的T細胞によって死滅させられなかった。これらの結果から、T-p2ペプチドの存在下、インビトロで増殖させたT細胞が、正確なMHC-クラスIの状況において、ブラキュリを発現する腫瘍細胞を特異的に溶解できることが示される。図4Bに示すように、T-p2 CTLを媒介としたH441腫瘍細胞の死滅化は、MHC-クラスI分子を対象とするがMHC-クラスII分子を対象としない抗体によって阻止されたことから、観察された溶解のMHC-クラスI拘束がさらに裏付けられた。
【0228】
次いで、別の健常ドナー4名のPBMCに由来するブラキュリ特異的T細胞のインビトロでの増殖に関して、Tp-2 ペプチドを試験した。試験した健常ドナー5名のうち2名から、Tp-2特異的CTLが誘導された。
【0229】
また、癌患者2名のPBMCからのT-p2特異的CTLの作製も実施することに成功した。結腸直腸癌患者(患者1と呼ぶ)および卵巣癌患者(患者2と呼ぶ)のPBMCから単離したT細胞を、実施例1で説明したようにして、T-p2でパルスした放射線照射済み自己DCの存在下、インビトロで3サイクル刺激した。これらの培養物から陰性として単離されたCD8+T細胞を、腫瘍細胞に対する細胞障害活性に関して分析した。図4Cおよび4Dに示すように、3回のIVS後、両方のCTL株ともH441腫瘍細胞を溶解することができた。5回のIVS後、両方の患者に由来するCTLを、ブラキュリの発現に関して陽性であるその他の腫瘍細胞株を溶解する能力に関して試験した。図4Eに示すように、患者1に由来するT-p2特異的CTLは、抗HLA-A02の存在下では細胞障害性死滅化が阻止されたが対照IgGの存在下では阻止されなかったことによって示されたように、HLA-A02に拘束された様式でLNCAP細胞(HLA-A2+/ブラキュリ+)を溶解することができた。図4Fは、患者2の血液から増殖させたT-p2細胞が、H441腫瘍細胞、SW620腫瘍細胞、およびSW480腫瘍細胞(すべてブラキュリ+およびHLA-A2+である)を溶解できたことを示す。その一方で、HLA-A2+であるがブラキュリmRNAの発現レベルがより低いSW403細胞の溶解は(図4E)、最小限にすぎなかった。全体的に見て、健常な個体および癌患者に由来するTp-2細胞は、ブラキュリ陽性腫瘍5つのうち4つを溶解することができたが、(a)HLA-A2-/ブラキュリ+である対照腫瘍細胞(NCI-H460)に対しても(b) HLA-A2+/ブラキュリ-である対照腫瘍細胞(SW1463)に対しても溶解は観察されなかった。
【0230】
結論として、これらの結果から、健常な個体および癌患者の両方から作製されたT-p2特異的T細胞が、ブラキュリタンパク質を内因的に発現する腫瘍細胞を認識し、それらの細胞障害性溶解を媒介できることが実証された。
【0231】
本明細書において示されるように、腫瘍対正常組織におけるハイスループットな遺伝子発現解析は、治療用の癌標的を同定するための比較的新しいアプローチとなる。ESTの膨大なコレクションから公的に入手可能な情報を使用する、ESTデータベースのマイニングのためのコンピュータープログラムが登場しつつある(Scheurle et al., Cancer Res 2000, 60(15):4037-4043)。cDNAライブラリーにおけるESTの出現頻度は、ライブラリーが調製された元の組織中の関連転写物の存在量に比例していると思われるため(AudicおよびClaverie、Genome Res 1997; 7:986-995)、EST発現に関するデータは、組織に関連または疾患に関連した遺伝子発現シグニチャーと相関関係があり得る。本発明の研究において、データマイニング用のソフトウェアツール(HSANALYST(商標))を首尾よく用いて、ヒト遺伝子ブラキュリに対応するUnigene ESTクラスターHs.389457を腫瘍抗原であると同定し、かつ、正常組織および腫瘍組織ならびに癌細胞株のセットにおけるRT-PCRによるインシリコの予測を検証した。ブラキュリの発現は、小腸、胃、腎臓、膀胱、子宮、卵巣、および精巣の腫瘍において、ならびに肺癌、結腸癌、および前立腺癌に由来する細胞株の大多数において増大していることが示された。Tボックスファミリーのメンバー間では高度な保存があるため、プライマー配列のBLAST解析を実施して、Tボックスファミリーの他のメンバーに由来する任意の起こり得る配列増幅を除き、増幅されたバンドの厳密さをDNA配列決定によって確認した。腫瘍におけるブラキュリの高レベルの発現は、精巣、脾臓、およびCD19+(休止中の)リンパ球において観察された低レベルを別として大半の正常成人組織においてその発現が無いことと対照的であった。理論に拘泥するものではないが、脾臓中の弱いシグナルは、CD19+細胞の存在に起因し得る。
【0232】
HLA-A0201に対して高い親和力で結合するブラキュリペプチドを同定するために、本明細書において提示する研究においてBIMASの親和性予測法を適用した。トップクラスのペプチド4種はすべてHLA-A0201分子に有効に結合したが、ペプチド-MHC複合体の崩壊速度の差を示した。しかしながら、Tp-2は、ペプチド特異的な刺激に応答してIFN-γを放出し、ペプチドパルスした標的を高い効率で溶解できるCTLをインビトロで増殖させることができる唯一のペプチドであった。また、このペプチドは、免疫原性の増加をもたらし得る、HLA-A0201への最大限の結合安定性を示した。
【0233】
肺癌細胞株H441は、エフェクターT細胞対標的の比率が低い場合でさえ、抗原特異的かつMHC拘束的に、ブラキュリ特異的CTLの存在下で効果的に溶解された。さらに、ブラキュリ-T-p2特異的CTLを結腸直腸癌患者および卵巣癌患者のPBMCからインビトロで増殖できることが実証されたことから、ブラキュリが癌ワクチン治療プログラムの治療標的として有用であることが示された。したがって、(a)Tボックス転写因子および(b)中胚葉発生に関係がある分子(例えば、上皮間葉移行、EMT)が、ヒトT細胞を介した癌免疫療法の潜在的な標的であり得ることが実証された。
【0234】
実施例6
ブラキュリ発現の安定なノックダウンにより、NCI-H460肺癌癌細胞における間葉上皮移行が誘導される
上皮間葉(EMT)プログラムを調整する際にブラキュリが役割を果たしているかどうかを評価するために、通常は高レベルのブラキュリmRNAを発現するNCI-H460肺癌細胞においてブラキュリ発現を安定に停止させた。RT-PCR解析により、非ターゲティングshRNA対照構築物をトランスフェクトした細胞と比べた、ブラキュリ特異的shRNAクローン1およびクローン2をトランスフェクトした細胞におけるブラキュリ発現のサイレンシングを確認した(図5A)。クローン2は、ブラキュリ発現のより高いレベルのサイレンシングを示した。
【0235】
様々な上皮マーカーおよび間葉系マーカーの発現のウェスタンブロット解析により、ブラキュリ発現のサイレンシングによって、フィブロネクチンおよびビメンチン(両方とも間葉系表現型のマーカー)の発現が著しく減少することが示された。その一方で、上皮マーカーであるγ-カテニンの発現は、ブラキュリサイレンシングの結果、増強された。したがって、生化学的レベルで、NCI-H460細胞におけるブラキュリ発現のサイレンシングは、間葉系マーカーの発現を抑制し、同時に上皮マーカーの発現を誘発し、変化は典型的には間葉上皮(MET)移行の間に観察された。
【0236】
実施例7
ブラキュリの減少により、インビトロでのNCI-H460肺癌細胞の移動特性および浸潤特性に障害が生じる
また、NCI-H460細胞におけるブラキュリ発現がこれらの細胞の移動特徴および浸潤特徴を調整するかどうかを決定するために、ボイデンチャンバートランスウェルアッセイ法も実施した。図6に示すように、ブラキュリ発現を安定に停止された(Br. shRNAクローン2)NCI-H460細胞は、移動能力の有意な低下(図6A)ならびに細胞外基質を分解および浸潤する能力の著しい低下(図6A)を示した。これらの結果により、Tボックス転写因子ブラキュリが腫瘍細胞の間葉系表現型の調節因子として働くことができ、転移に関連した細胞特性をプログラムし得るという結論が裏付けられる。
【0237】
実施例8
造血器悪性腫瘍におけるブラキュリの発現
慢性リンパ性白血病(CLL)ならびに他の造血器悪性腫瘍(ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫)におけるブラキュリの発現を研究した。CLL患者からCD19+細胞を単離した。ヒトブラキュリおよびGAPDHに対するプライマーを用いた定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)によって、CD19+ B細胞におけるブラキュリの相対的発現を評価した。CLL患者から単離したCD19+細胞におけるブラキュリの発現は、0.318+/-0.752であったのに対し、健常ドナーにおけるブラキュリの発現は、0.019+/-0.023であった。ブラキュリがCD5+CD19+白血病細胞において発現されることも実証された。逆転写酵素PCR(RT-PCR)を用いて、EBVで形質転換したB細胞株(B-EBV 701、B-EBV 1383、C1R)、ならびにバーキットリンパ腫(DAUDIおよびRAJI)細胞株およびホジキンリンパ腫(RPMI6666)細胞株においてブラキュリを検出した。
【0238】
健常ドナーに由来するBリンパ球をインビトロでEBV上清に感染させた。RNAを経時的に単離し、(RT-PCRによって)ブラキュリ発現に関して解析した。ブラキュリは、EBV感染後72時間目および96時間目に発現された。試験した対象3(tree)名において、EBV感染後6日目にもブラキュリ発現を検出することができた。
【0239】
したがって、健常ドナーに由来するCD19+細胞と比べて、CLL患者に由来するCD19+細胞においてブラキュリmRNA発現の増大が検出された。CLL患者25名中13名が、正常B細胞と比べて高いブラキュリレベルを示した。ブラキュリ発現レベルと白血球数またはRai病期との間に相関は見出されなかった。また、ブラキュリの発現は、LCL(EBVで形質転換されたB細胞)株、バーキットリンパ腫細胞株、およびホジキンリンパ腫株RPMI16666においても増大していた。正常なBリンパ球がEBVに感染すると、ブラキュリmRNAが発現された。ブラキュリ発現は、感染後早ければ48時間で検出され得、ブラキュリ発現のピークは感染後72時間目であった。
【0240】
実施例9
特異的結合物質を用いた、腫瘍の増殖または転移の阻害
本実施例では、上皮由来、例えば、小腸、腎臓、膀胱、子宮、卵巣、もしくは精巣の腫瘍を有する対象において、または肺癌、結腸癌、および前立腺癌などの癌において、またはB細胞由来の腫瘍、例えば、慢性リンパ性白血病、バーキットリンパ腫、もしくはホジキンリンパ腫において腫瘍の増殖または転移を有意に減少させるために使用できる方法を説明する。
【0241】
本明細書において開示される教示に基づいて、ブラキュリに対する特異的結合物質を含む組成物の治療的有効量を投与し、それによって対象における腫瘍の増殖または転移を減少または阻害することによって、腫瘍の増殖または転移を減少または阻害することができる。
【0242】
一例において、腫瘍を有すると診断された対象を特定し、治療のために選択する。対象の選択後、特異的結合物質を含む治療的有効用量の組成物を対象に投与する。例えば、ブラキュリに対する特異的結合物質の治療的有効用量を対象に投与して、腫瘍の増殖および/または転移を阻害する。一例において、特異的結合物質はsiRNAである。別の例において、特異的結合物質はアンチセンス分子である。腫瘍を予防、軽減、抑制、および/または治療するために投与される組成物の量は、治療される対象、障害の重症度、および治療的組成物の投与様式に依存する。理想的には、治療的有効量の作用物質は、対象において実質的な細胞障害作用を引き起こさずに、対象において腫瘍を予防、軽減、および/もしくは抑制、ならびに/または治療するのに十分な量である。
【0243】
1つの具体的な例において、両方ともその全体が参照により本明細書に組み入れられるSoutschek et al. (Nature 第432巻: 173-178, 2004)またはKarpilow et al. (Pharma Genomics 32-40, 2004)の教示に従ってsiRNAが投与される。他の例において、少なくとも30日、例えば、少なくとも2ヶ月、少なくとも4ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも12ヶ月、少なくとも24ヶ月、または少なくとも36ヶ月の期間、対象は治療的組成物を毎日投与される。
【0244】
当業者に公知の方法によって対象をモニターして、siRNAまたはアンチセンスに対する腫瘍の応答性を決定する。抗新生物剤のようなその他の作用物質を組み合わせて投与できることも企図される。
【0245】
実施例10
レトロスペクティブな研究
ブラキュリ発現と腫瘍の予後の相関を決定するために、前述したように、特に肺、結腸、乳房、および前立腺の癌組織の試料をリアルタイムPCRによって解析して、ブラキュリmRNAの発現を決定する。個々の腫瘍試料から調製されたcDNAを含む市販されているcDNAパネル(TissueScan Real-Time Disease qPCR Arrays, Origene Technologies, Rockville, MD)をブラキュリ特異的PCRプライマーおよびGAPDH特異的PCRプライマーを用いて試験して、各試料におけるブラキュリmRNAの定量的発現を得る。各cDNAパネルは、腫瘍のグレードおよび病期に関する情報を含む(例えば、病期1A〜IVの肺癌、病期I〜IVの前立腺癌、病期I〜IVの結腸癌、および病期0〜IVの乳癌に由来する試料が試験される)。ブラキュリmRNAは、より早期の病期であると診断された患者に由来する腫瘍の試料においてよりも、より後期の病期であると診断された患者に由来する腫瘍の試料において優先的に発現されている。
【0246】
説明される方法または組成物の厳密な細部は、説明する本発明の精神から逸脱することなく変更または修正され得ることは明らかである。本発明者らは、下記の特許請求の範囲の範囲および精神に含まれるこのような修正および変形すべてを主張する。
【配列表フリーテキスト】
【0247】
配列リスト
添付の配列リストに挙げた核酸配列およびアミノ酸配列は、37C.F.R.1.822において定義されているように、ヌクレオチド塩基の標準的な文字略語およびアミノ酸の3文字コードを用いて示す。各核酸配列の1つの鎖のみを示すが、相補鎖は、提示される鎖を任意に参照することにより含まれると理解される。添付の配列リストにおいて:
SEQ ID NO: 1は、ブラキュリタンパク質の例示的なアミノ酸配列である。
SEQ ID NO: 2は、ブラキュリポリペプチドをコードする例示的な核酸配列である。
SEQ ID NO: 3は、免疫原性ブラキュリポリペプチドのアミノ酸配列である。
SEQ ID NO: 4〜11は、プライマーの核酸配列である。
SEQ ID NO: 12は、癌胎児性抗原(CEA)ポリペプチドのアミノ酸配列である。
SEQ ID NO: 13は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)ポリペプチドのアミノ酸配列である。
SEQ ID NO: 14〜22は、例示的なブラキュリポリペプチドのアミノ酸配列である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多くても12個の連続したアミノ酸を含み、以下のうちの1つとして示すアミノ酸配列を含む、単離されたポリペプチド:
(a)X1はロイシン(L)もしくはバリン(V)である、WLLPGTSTX1(SEQ ID NO: 3);
(b)X2およびX5はバリンもしくはロイシンのいずれかであり、X3はプロリン(P)、セリン(S)、トレオニン(T)、ロイシン(L)、もしくはバリン(V)であり、X4はトリプトファン(W)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、セリン(S)、もしくはトレオニン(threorine)(T)である、SX2YX3SLX4SX5(SEQ ID NO: 18);
(c)X6はセリン(S)、トレオニン(T)、イソロイシン(I)、バリン(V)であり、X7はロイシン(L)もしくはバリンである、WLLX6GTSTX7(SEQ ID NO: 19)、;
(d)X8はチロシン(Y)もしくはトリプトファン(W)のうち1つである、X8LIASTTPV(SEQ ID NO: 20);
(e)X9はアルギニン(R)、チロシン(Y)、もしくはトリプトファン(W)であり、X10はバリン(V)、リジン(L)、イソロイシン(I)、セリン(S)、もしくはトレオニン(T)である、X9LIASX10TPV(SEQ ID NO: 21);または
(f)ALYSFLLDFV(SEQ ID NO: 22)。
【請求項2】
X2およびX5はバリンまたはロイシンのいずれかであり、X3はプロリン(P)、セリン(S)、トレオニン(T)、ロイシン(L)、またはバリン(V)であり、X4はトリプトファン(W)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、セリン(S)、またはトレオニン(T)である、SX2YX3SLX4SX5(SEQ ID NO: 18)として示すアミノ酸配列を含む、請求項1記載の単離されたポリペプチド。
【請求項3】
X2およびX5はバリンまたはロイシンのいずれかであり、X3はプロリン(P)、セリン(S)、トレオニン(T)、ロイシン(L)、またはバリン(V)であり、X4はトリプトファン(W)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、セリン(S)、またはトレオニン(T)である、SX2YX3SLX4SX5(SEQ ID NO: 18)として示すアミノ酸配列を含む、請求項1記載の単離されたポリペプチド。
【請求項4】
X6はセリン(S)、トレオニン(T)、イソロイシン(I)、バリン(V)であり、X7はロイシン(L)またはバリン(V)である、WLLX6GTSTX7(SEQ ID NO: 19)として示すアミノ酸配列を含む、請求項1記載の単離されたポリペプチド。
【請求項5】
X8はチロシン(Y)またはトリプトファン(W)のうち1つである、X8LIASTTPV(SEQ ID NO: 20)として示すアミノ酸配列を含む、請求項1記載の単離されたポリペプチド。
【請求項6】
X9はアルギニン(R)、チロシン(Y)、またはトリプトファン(W)であり、X10はバリン(V)、リジン(L)、イソロイシン(I)、セリン(S)、またはトレオニン(T)である、X9LIASX10TPV(SEQ ID NO: 21)として示すアミノ酸配列を含む、請求項1記載の単離されたポリペプチド。
【請求項7】
ALYSFLLDFV(SEQ ID NO: 22)として示すアミノ酸配列を含む、請求項1記載の単離されたポリペプチド。
【請求項8】
WLLPGTSTX1(SEQ ID NO: 3)として示すアミノ酸配列を含み、アミノ酸1(X1)がロイシンである、請求項1記載の単離されたポリペプチド。
【請求項9】
WLLPGTSTX1(SEQ ID NO: 3)として示すアミノ酸配列を含み、アミノ酸1(X1)がバリンである、請求項1記載の単離されたポリペプチド。
【請求項10】
以下のうちの1つとして示すアミノ酸配列から本質的になる、請求項1記載の単離されたポリペプチド:
(a)X1はロイシン(L)またはバリン(V)である、WLLPGTSTX1(SEQ ID NO: 3);
(b)X2およびX5はバリンまたはロイシンのいずれかであり、X3はプロリン(P)、セリン(S)、トレオニン(T)、ロイシン(L)、またはバリン(V)であり、X4はトリプトファン(W)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、セリン(S)、またはトレオニン(T)である、SX2YX3SLX4SX5(SEQ ID NO: 18);
(c)X6はセリン(S)、トレオニン(T)、イソロイシン(I)、バリン(V)であり、X7はロイシン(L)またはバリンである、WLLX6GTSTX7(SEQ ID NO: 19);
(d)X8はチロシン(Y)またはトリプトファン(W)のうちの1つである、X8LIASTTPV(SEQ ID NO: 20);
(e)X9はアルギニン(R)、チロシン(Y)、またはトリプトファン(W)であり、X10はバリン(V)、リジン(L)、イソロイシン(I)、セリン(S)、またはトレオニン(T)である、X9LIASX10TPV(SEQ ID NO: 21);および
(f)ALYSFLLDFV(SEQ ID NO: 22)。
【請求項11】
SEQ ID NO: 3として示すアミノ酸配列からなり、アミノ酸X1がバリン(V)である、請求項4記載の単離されたポリペプチド。
【請求項12】
SEQ ID NO: 3として示すアミノ酸配列からなり、アミノ酸X1がロイシンである、請求項4記載の単離されたポリペプチド。
【請求項13】
11アミノ酸長である、請求項1記載の単離されたポリペプチド。
【請求項14】
9または10アミノ酸長である、請求項1記載の単離されたポリペプチド。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか一項記載のポリペプチドをコードする核酸配列をコードする、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項16】
プロモーターに機能的に連結された、請求項15記載のポリヌクレオチド。
【請求項17】
請求項16記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項18】
プラスミドベクターである、請求項17記載のベクター。
【請求項19】
プラスミドベクターがサルモネラ菌(Salmonella)において発現される、請求項18記載のベクター。
【請求項20】
プラスミドベクターが酵母において発現される、請求項18記載のベクター。
【請求項21】
ウイルスベクターである、請求項17記載のベクター。
【請求項22】
レトロウイルスベクター、オルソポックスベクター、アビポックスベクター、鶏痘ベクター、カプリポックスベクター、スイポックスベクター、アデノウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、αウイルスベクター、バキュロウイルスベクター、シンドビスウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、およびポリオウイルスベクターである、請求項21記載のベクター。
【請求項23】
請求項18記載のベクターを含む、単離された宿主細胞。
【請求項24】
酵母細胞である、請求項23記載の単離された宿主細胞。
【請求項25】
請求項1〜14のいずれか一項記載の単離されたポリペプチドをコードする核酸をウイルスゲノムまたはその感染可能な一部分に組み入れた第1の組換えウイルスと、共刺激分子をコードする1つまたは複数の遺伝子またはDNA配列をウイルスゲノムまたはその感染可能な一部分に組み入れた第2の組換えウイルスとを含む組成物であって、宿主細胞を同時感染させることができ、その結果、該ポリペプチドおよび該共刺激分子をコードする該コード遺伝子またはDNA配列の同時発現をもたらす組成物。
【請求項26】
共刺激分子が、B7-1、B7-2、LFA、またはICAM-1のうち1種または複数種である、請求項25記載の組成物。
【請求項27】
哺乳動物において疾患を改善するのに有効な量の第1のウイルスおよび第2のウイルスを含む、請求項25記載の組成物。
【請求項28】
第1の組換えウイルス、第2の組換えウイルス、または第1の組換えウイルスおよび第2の組換えウイルスが、レトロウイルスベクター、オルソポックスベクター、アビポックスベクター、鶏痘ベクター、カプリポックスベクター、スイポックスベクター、アデノウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、αウイルスベクター、バキュロウイルスベクター、シンドビスウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、およびポリオウイルスベクターからなる群より選択される、請求項25記載の組成物。
【請求項29】
第2の組換えウイルスが、1種または複数種の免疫賦活性分子をコードする1つまたは複数の外因性DNA配列をさらに含み、該免疫賦活性分子が、IL-2、ICAM-1、LFA-3、CD72、GM-CSF、TNF-α、IFN-γ、IL-12、およびIL-6からなる群より選択される、請求項25記載の組成物。
【請求項30】
IL-2、GM-CSF、TNF-α、IL-12、およびIL-6からなる群より選択される、免疫を調節するのに有効な量の少なくとも1種の外因性免疫賦活性分子をさらに含む、請求項25記載の組成物。
【請求項31】
第1の組換えウイルス、第2の組換えウイルス、または第1の組換えウイルスおよび第2の組換えウイルスがワクシニアウイルスである、請求項25記載の組成物。
【請求項32】
請求項25〜31のいずれか一項記載の組成物および薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物。
【請求項33】
請求項23記載の宿主細胞の治療的有効量を薬学的に許容される担体中に含む薬学的組成物。
【請求項34】
請求項1〜14のいずれか一項記載のポリペプチドの治療的有効量を薬学的に許容される担体中に含む薬学的組成物。
【請求項35】
請求項15記載のポリヌクレオチドの治療的有効量を薬学的に許容される担体中に含む薬学的組成物。
【請求項36】
対象において免疫応答を誘発するための方法であって、請求項1〜14のいずれか一項記載のポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの治療的有効量を対象に投与し、それによって該対象において免疫応答を生じさせる段階を含む方法。
【請求項37】
アジュバントを対象に投与する段階をさらに含む、請求項36記載の方法。
【請求項38】
治療的有効量のIL-2、RANTES、GM-CSF、TNF-α、IFN-γ、G-CSF、またはそれらの組合せを対象に投与する段階をさらに含む、請求項36記載の方法。
【請求項39】
IL-2、RANTES、GM-CSF、TNF-α、IFN-γ、G-CSF、LFA-3、CD72、B7-1、B7-2、OX-40L、41 BBL、およびICAM-1のうち1種または複数種をコードする核酸を対象に投与する段階をさらに含む、請求項36記載の方法。
【請求項40】
以下の段階を含む、ブラキュリを発現する細胞に対する免疫応答を哺乳動物において増強する方法:
請求項20〜26のいずれか一項記載の組成物の治療的有効量でインビトロで細胞を感染させて、免疫原性ブラキュリポリペプチドを発現する感染細胞を生じさせる段階、および
治療的有効量の感染細胞を哺乳動物に投与し、それによって免疫応答を増強する段階であって、該哺乳動物が、小腸癌、胃癌、腎臓癌、膀胱癌、子宮癌、卵巣癌、精巣癌、肺癌、乳癌、気管支癌、結腸癌、前立腺癌、慢性リンパ性白血病(CLL)、またはB細胞腫瘍に罹患している段階。
【請求項41】
細胞が樹状細胞または腫瘍細胞である、請求項40記載の方法。
【請求項42】
対象において免疫応答を誘発するための方法であって、請求項15記載のポリヌクレオチドの治療的有効量を対象に投与し、それによって、該対象において免疫応答を生じさせる段階を含む方法。
【請求項43】
アジュバントを対象に投与する段階をさらに含む、請求項42記載の方法。
【請求項44】
治療的有効量のIL-2、RANTES、GM-CSF、TNF-α、IFN-γ、G-CSF、またはそれらの組合せを対象に投与する段階をさらに含む、請求項42記載の方法。
【請求項45】
IL-2、RANTES、GM-CSF、TNF-α、IFN-γ、G-CSF、LFA-3、CD72、B7-1、B7-2、OX-40L、41 BBL、およびICAM-1のうち1種または複数種をコードする核酸を対象に投与する段階をさらに含む、請求項42記載の方法。
【請求項46】
癌に罹患している対象を治療するための方法であって、請求項17記載のベクターの治療的有効量を該対象に投与し、それによって該対象を治療する段階を含む方法。
【請求項47】
ベクターが組換えウイルスベクターである、請求項46記載の方法。
【請求項48】
組換えウイルスベクターが、レトロウイルスベクター、オルソポックスベクター、アビポックスベクター、鶏痘ベクター、カプリポックスベクター、スイポックスベクター、アデノウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、αウイルスベクター、バキュロウイルスベクター、シンドビスウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、またはポリオウイルスベクターである、請求項47記載の方法。
【請求項49】
治療的有効量のIL-2、RANTES、GM-CSF、TNF-α、IFN-γ、G-CSF、またはそれらの組合せを対象に投与する段階をさらに含む、請求項47記載の方法。
【請求項50】
IL-2、RANTES、GM-CSF、TNF-α、IFN-γ、G-CSF、LFA-3、CD72、B7-1、B7-2、OX-40L、41 BBL、およびICAM-1のうち1種または複数種をコードする核酸を対象に投与する段階をさらに含む、請求項47記載の方法。
【請求項51】
組換えウイルスベクターが、共刺激分子をコードする核酸をさらに含む、請求項47記載の方法。
【請求項52】
共刺激分子が、B7-1、B7-2、B7-1 B7-2、LFA、およびICAM-1である、請求項51記載の方法。
【請求項53】
B7-1、B7-2、またはB7-1およびB7-2をコードする1つまたは複数の遺伝子またはDNA配列をウイルス核酸に組み入れた第2の組換えウイルスベクターの治療的有効量を対象に投与する段階をさらに含む方法であって、組成物が、宿主細胞を同時感染させることができ、その結果該ポリペプチドならびにB7-1、B7-2、B7-1 B7-2、LFA、およびICAM-1をコードする遺伝子またはDNA配列の同時発現をもたらすことができる、請求項47記載の方法。
【請求項54】
第1の組換えウイルスベクター、第2の組換えウイルスベクター、または第1の組換えウイルスベクターおよび第2の組換えウイルスベクターが、レトロウイルスベクター、オルソポックスベクター、アビポックスベクター、鶏痘ベクター、カプリポックスベクター、スイポックスベクター、アデノウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、αウイルスベクター、バキュロウイルスベクター、シンドビスウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、およびポリオウイルスベクターからなる群より選択される、請求項53記載の方法。
【請求項55】
免疫応答がT細胞応答を含む、請求項36〜54のいずれか一項記載の方法。
【請求項56】
免疫応答が、ブラキュリ(SEQ ID NO: 14)を発現する細胞の溶解を誘導する細胞障害性T細胞を誘導することを含む、請求項36〜54のいずれか一項記載の方法。
【請求項57】
対象が癌に罹患している、請求項36〜56のいずれか一項記載の方法。
【請求項58】
対象が、小腸癌、胃癌、腎臓癌、膀胱癌、子宮癌、卵巣癌、精巣癌、肺癌、乳癌、気管支癌、結腸癌、前立腺癌、慢性リンパ性白血病(CLL)、またはB細胞腫瘍に罹患している、請求項57記載の方法。
【請求項59】
免疫応答が癌の増殖を減少させる、請求項58記載の方法。
【請求項60】
以下の段階を含む、癌細胞の増殖を阻害するための方法:
(i)乳癌または前立腺癌の細胞を認識する活性化CTLまたはCTL前駆体から成熟させたCTLを生じさせるために、請求項1〜14のいずれか一項記載のポリペプチドおよび抗原提示細胞と共に細胞障害性Tリンパ球(CTL)またはCTL前駆細胞を培養する段階、および
(ii)乳癌または前立腺癌の細胞を該活性化CTLまたはCTL前駆体から成熟させたCTLと接触させ、それによって、該癌細胞の増殖を阻害する段階。
【請求項61】
癌細胞が対象中に存在し、該対象に細胞障害性Tリンパ球を投与する段階を含む、請求項60記載の方法。
【請求項62】
治療的有効量の化学療法剤を対象に投与する段階をさらに含む、請求項57〜61のいずれか一項記載の方法。
【請求項63】
以下の段階を含む、対象において癌細胞の増殖を阻害するための方法:
樹状細胞を請求項1記載のポリペプチドと接触させるか、または請求項1記載のポリペプチドをコードする核酸を樹状細胞において発現させ、それによって特異的抗原提示細胞を調製する段階、および
該抗原提示細胞を対象に投与し、それによって免疫応答を誘導し、癌細胞の増殖を阻害する段階。
【請求項64】
癌細胞が、小腸癌、胃癌、腎臓癌、膀胱癌、子宮癌、卵巣癌、精巣癌、肺癌、乳癌、気管支癌、結腸癌、前立腺癌、慢性リンパ性白血病(CLL)、またはB細胞腫瘍に由来する、請求項63記載の方法。
【請求項65】
以下の段階を含む、対象において癌細胞の増殖を阻害するための方法:
樹状細胞を請求項1記載のポリペプチドと接触させるか、または請求項1記載のポリペプチドをコードする核酸を樹状細胞において発現させ、それによって特異的抗原提示細胞を調製する段階、
該抗原提示細胞を細胞障害性T細胞の集団と接触させ、それによって活性化細胞障害性T細胞を生じさせる段階;および
該活性化細胞障害性T細胞を対象に投与する段階。
【請求項66】
癌が、小腸癌、胃癌、腎臓癌、膀胱癌、子宮癌、卵巣癌、精巣癌、肺癌、乳癌、気管支癌、結腸癌、前立腺癌、慢性リンパ性白血病(CLL)、またはB細胞腫瘍である、請求項65記載の方法。
【請求項67】
以下の段階を含む、対象においてSEQ ID NO: 1を特異的に認識する、CD8を発現するT細胞を検出する方法:
対象から単離された末梢血単核細胞を請求項1記載のポリペプチドを含む反応物と接触させる段階;
該末梢血単核細胞に結合された反応物の存在を検出し、それによって、SEQ ID NO: 1に特異的に結合する、CD8を発現するT細胞を検出する段階。
【請求項68】
以下の段階を含む、対象において腫瘍の増殖または転移を阻害する方法:
腫瘍を有する対象を選択する段階;および
腫瘍を有する該対象に、SEQ ID NO: 1をコードするヌクレオチド配列に特異的に結合するアンチセンス分子またはsiRNAの治療的有効量を投与し、それによって該対象における該腫瘍の増殖または転移を阻害する段階。
【請求項69】
癌細胞が、小腸癌、胃癌、腎臓癌、膀胱癌、子宮癌、卵巣癌、精巣癌、肺癌、乳癌、気管支癌、結腸癌、前立腺癌、慢性リンパ性白血病(CLL)、またはB細胞腫瘍に由来する、請求項68記載の方法。
【請求項70】
治療的有効量のsiRNAを対象に投与する段階を含む、請求項68記載の方法。
【請求項71】
請求項1記載の単離されたポリペプチドの治療的有効量を対象に投与する段階をさらに含む、請求項68記載の方法。
【請求項72】
腫瘍の診断を確認する方法であって、
小腸、胃、腎臓、膀胱、子宮、卵巣、精巣、肺、結腸、もしくは前立腺の腫瘍を有するか、またはB細胞腫瘍を有する対象を選択する段階;
該対象から試料を得る段階;
該試料をSEQ ID NO: 2に特異的に結合する抗体と接触させる段階;および
該試料への該抗体の結合を検出する段階を含み、
該試料に結合される抗体の存在により、該対象が小腸、胃、腎臓、膀胱、子宮、卵巣、精巣、肺、結腸、もしくは前立腺の腫瘍を有するか、またはB細胞腫瘍を有することが裏付けられる方法。
【請求項73】
対象がB細胞腫瘍を有する、請求項72記載の方法。
【請求項74】
B細胞腫瘍がバーキットリンパ腫またはホジキンリンパ腫である、請求項73記載の方法。
【請求項75】
試料が生検試料である、請求項72記載の方法。
【請求項76】
腫瘍を有する対象の予後を決定するための方法であって、
腫瘍を有する対象を選択する段階;および
SEQ ID NO: 1として示すアミノ酸配列を含むポリペプチドの発現を該腫瘍において検出する段階を含み、
SEQ ID NO: 1として示すアミノ酸配列を含む該ポリペプチドの発現により、該対象の予後不良が示唆される方法。
【請求項77】
腫瘍が、小腸、胃、腎臓、膀胱、子宮、卵巣、精巣、肺、結腸、もしくは前立腺、またはB細胞のものである、請求項76記載の方法。
【請求項78】
SEQ ID NO: 1として示すアミノ酸配列を含むポリペプチドの発現を検出する段階が、
腫瘍から生物試料を得る段階;
該生物試料をSEQ ID NO: 1として示すアミノ酸配列に特異的に結合する抗体と接触させる段階;および
該抗体とSEQ ID NO: 1として示すアミノ酸配列を含む該ポリペプチドとの免疫複合体の存在を検出する段階を含む、請求項76記載の方法。
【請求項79】
SEQ ID NO: 1として示すアミノ酸配列を含むポリペプチドの発現を検出する段階が、
腫瘍から生物試料を得る段階;および
SEQ ID NO: 1として示すアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするmRNAの存在を検出する段階を含む、請求項76記載の方法。
【請求項80】
ポリメラーゼ連鎖反応法の使用を含む、請求項79記載の方法。
【請求項81】
予後を決定する段階が、腫瘍が転移する可能性を決定することを含み、SEQ ID NO: 1として示すアミノ酸配列を含むポリペプチドの発現により、腫瘍が転移することが示唆される、請求項76記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−519904(P2010−519904A)
【公表日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−551830(P2009−551830)
【出願日】平成20年2月27日(2008.2.27)
【国際出願番号】PCT/US2008/055185
【国際公開番号】WO2008/106551
【国際公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(505088710)アメリカ合衆国 (8)
【Fターム(参考)】