説明

ブラシシール

【課題】回転装置(100)用のブラシシール(90)及びブラシシールセグメント(30A)を提供する。
【解決手段】本発明の一実施形態に係るブラシシール(90)は、複数のブラシシールセグメント(30A)を含み、各セグメント(30A)は、弓形フェンス(40A)と、弓形フェンス(40A)とほぼ円周方向に同延でありかつ第1の端部(52A)及び第2の端部(54A)を備えた弓形バックプレート(50A)と、弓形バックプレート(50A)及び弓形フェンス(40A)間に配置されかつ該弓形バックプレート(50A)の半径方向軸線(R)並びに該弓形バックプレート(50A)の第1の端部(52A)及び第2の端部(54A)の少なくとも1つに対して傾斜している複数のブラシシールブリストル(70A)と、複数のブラシシールセグメント(30A)の少なくとも1つが固定された静止部材(20)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、総括的にはブラシシールに関し、より具体的には、バックプレートの端部に対して傾斜した複数のブラシブリストルを有するセグメントブラシシールに関する。そのような構成は、ブラシブリストルに対する圧力バランス及びバックプレート支持を改善し、それによってブラシシールセグメントの端部に隣接するブラシブリストルへの損傷を防止又は低減する。そのような構成はまた、セグメントギャップを通しての漏洩を減少させて、ブラシシールの性能を向上させる。
【背景技術】
【0002】
公知のセグメントブラシシールは、半径方向に配向した又は傾斜したブラシブリストルを有するセグメントを含むことができる。そのようなセグメントのバックプレートは一般的に、ブラシブリストルに平行な端部を有する。一般的に、運転中にセグメントが弓形拘束されるのを回避するために、セグメント端部が当接し合う箇所にギャップが設けられており、大きなブラシシール半径方向間隙を生じることになる。その結果、ブラシシールセグメント間のギャップを通して直接漏洩通路が存在して、より多くの漏洩を生じかつシール性能の低下を引き起こすことになる。加えて、セグメント端部に隣接するブラシブリストルがギャップ内に落ち込みかつ支持の不足及び圧力バランス作用の低下により並びに/或いはロータ運動により損傷を受け、この両方のことにより、漏洩が増大しかつ直ぐ近くのブラシブリストルの不安定性が生じて、ブラシシールの効率をさらに低下させかつ甚大なブリストル損傷を生じさせる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第7255352号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
回転装置で使用するブラシシール及びブラシシールセグメントを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
1つの実施形態では、本発明はブラシシールを提供し、本ブラシシールは、複数のブラシシールセグメントを含み、各セグメントは、弓形フェンスと、弓形フェンスとほぼ円周方向に同延でありかつ第1の端部及び第2の端部を備えた弓形バックプレートと、弓形バックプレート及び弓形フェンス間に配置されかつ該弓形バックプレートの半径方向軸線並びに該弓形バックプレートの第1の端部及び第2の端部の少なくとも1つに対して傾斜している複数のブラシシールブリストルと、複数のブラシシールセグメントの少なくとも1つが固定された静止部材とを含む。
【0006】
別の実施形態では、本発明はブラシシールセグメントを提供し、本ブラシシールセグメントは、弓形フェンスと、弓形フェンスとほぼ円周方向に同延でありかつ第1の端部及び第2の端部を備えた弓形バックプレートと、弓形バックプレート及び弓形フェンス間に配置されかつ該弓形バックプレートの半径方向軸線並びに該弓形バックプレートの第1の端部及び第2の端部の少なくとも1つに対して傾斜している複数のブラシシールブリストルとを含む。
【0007】
本発明のこれらの及びその他の特徴は、本発明の様々な実施形態を示す添付図面と関連させてなした本開示の様々な態様の以下の詳細な説明から一層容易に理解されるようになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】ブラシシール及びロータを有する回転装置の断面図。
【図2】本発明の実施形態によるブラシシールセグメントの部分を示す図。
【図3】本発明の実施形態によるブラシシールセグメントを示す図。
【図4】本発明の実施形態によるブラシシールの部分を示す図。
【図5】本発明の別の実施形態によるブラシシールの部分を示す図。
【図6】本発明のさらに別の実施形態によるブラシシールの部分を示す図。
【図7】本発明のさらに別の実施形態によるブラシシールセグメントを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の図面は正確な縮尺でないことに留意されたい。図面は、本発明の典型的な態様のみを示すことを意図しており、従って本発明の技術的範囲を限定するものとして考えるべきではない。図面では、同じ参照符号付けが、図面間で同様の要素を表している。
【0010】
次に図面を参照すると、図1は、回転装置100(例えば、ガスタービン、蒸気タービン、発電機など)の断面図を示しており、回転装置100は、ほぼ円形の静止部材20によって囲まれたロータ10と、それらの間のブラシシール90とを含む。ブラシシール90は、複数のセグメント30A、30B、30C、30D、30E、30Fを含み、それらの1つ又はそれ以上は、静止部材20に固定することができる。そのようなブラシシールは、あらゆる数のセグメント、一般的には2〜12個のセグメントを含むことができる。簡潔にするために、セグメントは、セグメント30Aに関してのみさらに説明することにする。
【0011】
各セグメント30Aは、弓形フェンス40Aと、弓形バックプレート50A(後続の図に示しておりかつ以下にさらに詳細に説明する)と、複数のブラシブリストル70Aとを含む。複数のブラシブリストル70Aは、フェンス40A及びバックプレート間に配置されかつフェンス40Aの内側弓形端縁部46Aを越えて延びて、ブラシブリストル70Aは、ロータ10が経路Aに沿って回転する時に該ロータに対してシールすることができるようになる。
【0012】
図1で分かるように、ブラシブリストル70Aは、ロータ10、セグメント30A及び静止部材20の半径方向軸線Rに対して角度αで傾斜している。同様に、フェンス40Aの第1の端部42A及び第2の端部44Aが、半径方向軸線Rに対してそれぞれ角度β及び角度γで傾斜している。必ずしも必要ではないが、β及びγは一般的に同一であるが、それらは、ブリストル角度αとは異なるものとすることができる。そのような角度は一般的に、例えば半径方向軸線Rに対して約1°〜約60°の範囲にある。言うまでもなく、当業者には分かるように、ブラシシール90の隣り合うセグメントが正しく整列しかつ機能的シールを行なうようにするためには、第1のフェンス(例えば、40A)の第1の端部(例えば、42A)は、隣接する第2のフェンス(例えば、40F)の第2の端部(例えば、44F)の角度とほぼ同一である角度を有しなければならない。
【0013】
図2は、本発明の1つの実施形態による、フェンス40A、ブラシブリストル70A及び弓形バックプレート50Aを示している。弓形バックプレート50Aは、フェンス40Aと円周方向に同延である(同じ広がりを有する)ものとして図示している。ブラシブリストル70A、第1の端部42A及び第2の端部44Aは、半径方向軸線R1及びR2に対してそれぞれ角度α、β及びγである。ブリストル70Aの第1の端部72A及び第2の端部74Aは、ほぼ同一の角度αで傾斜している。図2に示すように、角度β及びγは、ほぼ同一である。バックプレート50Aは、第1の端部52A及び第2の端部54Aを備え、それらの各々は、それぞれ半径方向軸線R1、R2にほぼ平行である。
【0014】
図3は、フェンス40A及びブラシブリストル70Aの背後に配置されてセグメント30Aを形成したバックプレート50Aを示している。図2で分かるように、バックプレート50Aの部分51Aは、ブリストルパックの第2の端部74Aを越えて延びる。部分51Aは、隣接するセグメントのブラシブリストルの部分を支持する働きをする。そのような構成は、図4に示しており、図4では、セグメント30A及び30Bが所定の位置に配置されると、ブラシブリストル70Bの延長部分71Bがバックプレート50Aの部分51Aの前に配置される。この段付きギャップ設計は、ブラシブリストル70Aの傾斜端部72A、74Aをバックプレート50Aのほぼ半径方向端部52A、54Aと組合せることによって実施可能になる。
【0015】
言うまでもなく、段付きギャップ設計を組入れたその他の実施形態も実施可能である。例えば、図5は、図2〜図4に示す実施形態のケースであるとして、バックプレート150Aの部分151Aが、第2の端部144Aではなくて弓形フェンス140Aの第1の端部142Aを越えて延びている本発明の実施形態を示している。
【0016】
図6に示す実施形態のような本発明の別の実施形態では、バックプレート250Aの第1の端部252A、第2の端部254A又はその両方が、それぞれ半径方向軸線R1、R2に対して角度δで傾斜している。一般的に、角度δは、半径方向軸線の角度αの側と反対の側に対するものとなる。つまり、角度αは一般的に、「正」(ロータ回転の方向に定義して)となり、また角度δは「負」(ロータ回転の逆方向に)となって、「負」の角度δは、ブリストル270Aの第1の端部272Aを越えて延びるバックプレート250Aの部分251Aを増大させるようになる。本明細書で使用する場合に、「正方向に(前向きに)」及び「負方向に(後向きに)」というのは、半径方向軸線に対する角度の何らかの値ではなくてそのような軸線の両反対の側を単に示すことを意図している。角度δは、角度αの値と同様な値、つまり約1°〜約60°を有することができ、一方、β及びγは、ブリストル角度α又はバックプレート端部角度δのいずれかと同一にすることができる。製造上の理由により、フェンスは、ブリストルと同一の角度を有しかつセグメント端部に沿ってブリストルパックと整列させることができる。
【0017】
図7は、本発明の別の実施形態によるブラシシールセグメント330Aを示しており、この実施形態では、フェンス340Aの第1の端部342A及び第2の端部344Aが、バックプレート(図示せず)の端部の場合と同様に、それぞれ半径方向軸線R1及びR2にほぼ平行である。つまり、ブラシブリストル370Aのみが、半径方向軸線R1及びR2に対して角度αで傾斜している。そのような構成は、フェンス340A及びバックプレート間に一対の空隙362A、364Aを形成し、ブラシシールの組立て時に、隣接するセグメントからのブラシブリストルをこれらの空隙内に挿入させることができる。
【0018】
本明細書で使用する用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とするものであり、本開示を限定することを意図するものではない。本明細書で使用する場合に、数詞を付していない表現は、文脈がそうでないことを明確に示していない限り、複数の形態もまた含むことを意図している。さらに、本明細書で使用する場合の「含む」及び/又は「含んでいる」という用語は、記述した特徴、回数、ステップ、操作、要素及び/又は構成部品の存在を特定するが、1つ又はそれ以上のその他の特徴、回数、ステップ、操作、要素、構成部品及び/或いはそれらの群の存在又は付加を排除するものではないことを理解されたい。
【0019】
本明細書は最良の形態を含む実施例を使用して、本発明を開示し、また当業者が、あらゆる装置又はシステムを製作しかつ使用しまたあらゆる関連又は組込み方法を実行することを含む本発明の実施を行なうことを可能にもする。本発明の特許性がある技術的範囲は、特許請求の範囲により定めており、また当業者が想到するその他の実施例を含むことができる。そのようなその他の実施例は、それらが特許請求の範囲の文言と相違しない構造的要素を有するか又はそれらが特許請求の範囲の文言と本質的でない相違を有する均等な構造的要素を含む場合には、特許請求の範囲の技術的範囲内に属することになることを意図している。
【符号の説明】
【0020】
R、R1、R2 半径方向軸線
β、γ 角度
α ブラシシールブリストル角度
100 回転装置
10 ロータ
20 静止部材
90 ブラシシール
30A、30B、30C、30D、30E、30F、330A ブラシシールセグメント
40A、40F、140A、240A、340A フェンス
46A 内側弓形端縁部
42A、142A、342A 第1の端部
44A、44F、144A、344A 第2の端部
70A、70B、170A、270A、370A ブラシシールブリストル
71B 延長部分
72A 第1の端部
74A 第2の端部
50A、150A、250A バックプレート
51A、151A、251A 部分
52A、252A 第1の端部
54A、254A 第2の端部
362A、364A 空隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のブラシシールセグメント(30A)を備えるブラシシール(90)であって、各セグメント(30A)が、
弓形フェンス(40A)と、
前記弓形フェンス(40A)とほぼ円周方向に同延でありかつ第1の端部(52A)及び第2の端部(54A)を備えた弓形バックプレート(50A)と、
前記弓形バックプレート(50A)及び弓形フェンス(40A)間に配置されかつ該弓形バックプレート(50A)の半径方向軸線(R)並びに該弓形バックプレート(50A)の第1の端部(52A)及び第2の端部(54A)の少なくとも1つに対して傾斜している複数のブラシシールブリストル(70A)と、
前記複数のブラシシールセグメント(30A)の少なくとも1つが固定された静止部材(20)と
を備えている、ブラシシール(90)。
【請求項2】
前記弓形バックプレート(50A)の第1の端部(52A)及び第2の端部(54A)の少なくとも1つが該弓形バックプレート(50A)の半径方向軸線(R)にほぼ平行である、請求項1記載のブラシシール(90)。
【請求項3】
前記弓形バックプレート(50A)の第1の端部(52A)及び第2の端部(54A)の両方が該弓形バックプレート(50A)の半径方向軸線(R)にほぼ平行である、請求項2記載のブラシシール(90)。
【請求項4】
前記複数のブラシシールブリストル(70A)が前記弓形バックプレート(50A)の半径方向軸線(R)に対して前向きに傾斜している、請求項1記載のブラシシール(90)。
【請求項5】
前記弓形フェンス(40A)の第1の端部(42A)及び第2の端部(44A)の少なくとも1つが前記ブラシシールブリストル(70A)にほぼ平行である、請求項4記載のブラシシール(90)。
【請求項6】
前記弓形バックプレート(50A)の第1の端部(52A)及び第2の端部(54A)の少なくとも1つが該弓形バックプレート(50A)の半径方向軸線(R)に対して後向きに傾斜している、請求項4記載のブラシシール(90)。
【請求項7】
前記弓形バックプレート(50A)の第1の端部(52A)及び第2の端部(54A)の少なくとも1つが該弓形バックプレート(50A)の半径方向軸線(R)に対して約1°〜約60°後向きに傾斜している、請求項6記載のブラシシール(90)。
【請求項8】
前記複数のブラシシールブリストル(70A)が前記弓形バックプレート(50A)の半径方向軸線(R)に対して約1°〜約60°前向きに傾斜している、請求項1記載のブラシシール(90)。
【請求項9】
前記弓形バックプレート(50A)の第1の端部(52A)及び第2の端部(54A)の少なくとも1つが該弓形バックプレート(50A)の半径方向軸線(R)に対して約1°〜約60°後向きに傾斜している、請求項8記載のブラシシール(90)。
【請求項10】
前記弓形フェンス(40A)の第1の端部(42A)及び第2の端部(44A)の少なくとも1つが前記半径方向軸線(R)にほぼ平行である、請求項1記載のブラシシール(90)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−82957(P2012−82957A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−219689(P2011−219689)
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】