説明

ブラシモータ及び電動パワーステアリング装置、並びにブラシの配置方法

【課題】作動音及び振動を低減しかつ整流子の回転軸方向におけるブラシモータの長さを短縮すること。
【解決手段】整流子とコアとを含む回転子と、長手方向が前記整流子の回転軸と平行な方向と交差するとともに、前記整流子の半径方向と直交するように、かつ前記整流子の周方向に向かって配置されている複数のブラシと、前記複数のブラシをそれぞれ保持する複数のブラシ保持手段と、前記複数のブラシにそれぞれ接続される導線と、を含むことを特徴とするブラシモータによって解決できる。前記導線は、前記長手方向側の前記ブラシの側面に接続されていることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラシモータの構造、特に、ブラシモータのブラシの配置に関する。さらに、ブラシモータが搭載された電動パワーステアリング装置、ブラシモータのブラシの配置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ブラシモータは、整流子にブラシを当接させてコイルに通電し、電磁力により回転子を回転させるものである。一般に、ブラシは角柱状であり、ブラシの長手方向が、整流子の回転軸方向と平行に配置されている(特許文献1、特許文献2)。このブラシの配置は、電機子コイルに多くの電流を流すのに有利なためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−70211号公報(図9)
【特許文献2】特開平5−184104号公報(図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、通電により、及び整流子との摩擦によりブラシは発熱する。このため、ブラシケースは、ブラシの発熱による膨張を考慮して寸法が設定されている。そして、ブラシケースは、ブラシとブラシケースとの間に大きな隙間を有している。そのため、回転子が回転を始めるとき、又は回転子の回転方向が変化するときに、ブラシと整流子との間の摩擦力でブラシケースの内部でブラシが移動し、ブラシがブラシケースを叩くために作動音(叩き音)及び振動が発生する。この作動音及び振動は、静粛性が求められる場所においては低減されることが望まれる。また、近年ブラシモータはパワーステアリング装置に適用され、パワーステアリング装置を小型化するために、回転軸方向におけるブラシモータの長さをより短縮する必要がある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、作動音及び振動が低減され、かつ回転軸方向の長さが短縮されたブラシモータを提供することと、作動音及び振動が低減され、かつ小型化された電動パワーステアリング装置を提供することと、作動音及び振動を低減し、かつブラシモータの回転軸方向の長さを短縮することができるブラシの配置方法を提供することと、の少なくとも一つを達成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明に係るブラシモータは、整流子とコアとを含む回転子と、長手方向が前記整流子の回転軸と平行な方向と交差するとともに、前記整流子の半径方向と直交するように、かつ前記整流子の周方向に向かって配置されている複数のブラシと、前記複数のブラシをそれぞれ保持する複数のブラシ保持手段と、前記複数のブラシにそれぞれ接続される導線と、を含むことを特徴とする。長手方向が整流子の回転軸と平行な方向と交差するようにブラシが配置されていることで、整流子の回転軸方向におけるブラシの長さを、長手方向が整流子の回転軸と平行となるように配置されているブラシよりも短くすることができる。これに伴って、整流子の回転軸方向におけるブラシモータの長さを短くすることができる。さらに、長手方向が前記整流子の回転軸と平行な方向と交差するとともに、長手方向が、整流子の半径方向と直交するように配置されていることで、ブラシがブラシケースを叩いた場合に発生する音(叩き音)が低減され、その結果、ブラシモータの作動音、及び振動が低減される。
【0007】
本発明の望ましい態様として、前記長手方向が、前記整流子の前記回転軸と直交する平面上にあることが好ましい。長手方向が整流子の回転軸と直交する平面上にあるように配置することで、整流子の回転軸方向におけるブラシの長さをより短くすることができる。
【0008】
本発明の望ましい態様として、前記導線が、前記長手方向側の前記ブラシの側面に接続されていること好ましい。導線が、ブラシの長手方向側のブラシの側面に接続することで、導線が整流子の軸方向と平行な方向ではなく、整流子の周方向と平行な方向に近い方向へ引き出されることとなり、整流子の回転軸方向におけるブラシモータの長さをより短くすることができる。
【0009】
本発明の望ましい態様として、前記ブラシが、四角柱状の形状であって、前記整流子と対向する前記ブラシの面に含まれる前記ブラシの4つの頂点のうち、前記コア側にある2つの頂点のいずれかが突出している形状であることが好ましい。整流子と対向するブラシの面に含まれるブラシの4つの頂点のうち、コア側にある2つの頂点のいずれかが突出していることで、ブラシが整流子とこの突出している頂点において接触し、ブラシと整流子とが接触する位置が明確となる。その結果、ブラシの摩耗状態を予測することが容易になる。
【0010】
本発明の望ましい態様として、前記回転子を収納し、一端に開口部を有するハウジングと、前記ハウジングの前記開口部を閉塞するフランジと、を備え、前記ブラシ保持手段の少なくとも一部が、前記フランジと一体として形成されていることが好ましい。この特徴により、ブラシ保持手段及びフランジを整流子の回転軸方向において薄くすることができる。その結果、整流子の回転軸方向におけるブラシモータの長さを短くすることができる。
【0011】
本発明の望ましい態様として、前記フランジと一体として形成されている前記ブラシ保持手段の前記少なくとも一部が、制振樹脂であることが好ましい。これにより、ブラシの振動が抑制され、ブラシモータの振動及び作動音が低減される。
【0012】
本発明に係る電動パワーステアリング装置は、前記ブラシモータにより補助操舵トルクを得ることを特徴とする。これにより、振動及び作動音が低減された、小型化された電動パワーステアリング装置が提供される。
【0013】
本発明に係るブラシの配置方法は、ブラシモータのブラシを、長手方向が整流子の回転軸と平行な方向と交差するとともに、前記整流子の半径方向と直交するように、かつ前記整流子の周方向に向かって配置することを特徴とする。これにより、モータの作動音及び振動が低減され、整流子の回転軸方向におけるブラシモータの長さが短縮される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、作動音及び振動が低減され、かつ回転軸方向の長さが短縮されたブラシモータを提供することと、作動音及び振動が低減され、かつ小型化された電動パワーステアリング装置を提供することと、作動音及び振動を低減し、かつブラシモータの回転軸方向の長さを短縮することができるブラシの配置方法を提供することと、の少なくとも一つを達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、実施形態1に係るブラシモータを備える電動パワーステアリングの構成図である。
【図2】図2は、実施形態1に係る電動パワーステアリング装置が備える減速装置の一例を説明する正面図である。
【図3】図3は、実施形態1に係るモータの側面図である。
【図4】図4は、図3のA−A断面の矢視図である。
【図5−1】図5−1は、実施形態1に係るモータのブラシの配置を説明する概略図である。
【図5−2】図5−2は、実施形態1に係るモータのブラシの配置を説明する概略図である。
【図6】図6は、実施形態1に係るモータのブラシの配置を示す概略図である。
【図7】図7は、ブラシの形状及び配置の変形例を示す概略図である。
【図8】図8は、実施形態2に係るモータの側面図である。
【図9】図9は、図8のB−B断面の矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この発明を実施するための形態(以下、実施形態という)によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。本実施形態では、本発明に係るブラシモータを電動パワーステアリング装置(EPS:Electric Power Steering)に適用した例を説明するが、本発明の適用対象は電動パワーステアリング装置に限定されるものではない。また、本発明を電動パワーステアリング装置に適用する場合でも、その方式は問わない。
【0017】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係るブラシモータを備える電動パワーステアリングの構成図である。まず、図1を用いて、本実施形態に係るブラシモータを備える電動パワーステアリング装置の概要を説明する。図1に示すように、電動パワーステアリング装置100は、ステアリングホイール101の操作によりステアリングシャフト102に発生する操舵トルクをトルク検出手段であるトルクセンサ110で検出し、その検出信号に基づいて、ECU(Electric Control Unit)50がブラシモータ(以下、必要に応じてモータという)1を駆動制御して補助操舵トルクを発生させて、ステアリングホイール101の操舵力を補助する。
【0018】
本実施形態に係るブラシモータ1を備える電動パワーステアリング装置100は、ブラシモータ1とECU50とが直接接続されて一体となっている、機電一体型の装置である。しかし、本実施形態に係るブラシモータ1は、ブラシモータとECUとが別体であり機電一体型ではない電動パワーステアリング装置にも適用することができる。
【0019】
ステアリングホイール101に連結されたステアリングシャフト102は、運転者の操舵力が入力される入力軸102aと、入力された操舵力を出力する出力軸102bとを有する。本実施形態において、入力軸102a及び出力軸102bは、鉄等の磁性材料から形成されている。入力軸102aと出力軸102bとの間には、トルクセンサ110及び減速装置111が設けられる。
【0020】
ステアリングシャフト102の出力軸102bに伝達された運転者の操舵力は、操舵機構に伝達される。具体的には、出力軸102bに伝達された運転者の操舵力は、ユニバーサルジョイント104を介してロアシャフト105に伝達され、さらにユニバーサルジョイント106を介してピニオンシャフト107に伝達される。ピニオンシャフト107に伝達された前記操舵力は、ステアリングギヤ108を介してタイロッド109に伝達され、操舵輪を転舵させる。
【0021】
ステアリングギヤ108は、ピニオンシャフト107に連結されたピニオン108aと、ピニオン108aに噛み合うラック108bとを有するラックアンドピニオン形式として構成される。このようなステアリングギヤ108によって、ピニオン108aに伝達された回転運動をラック108bで直進運動に変換している。
【0022】
ステアリングシャフト102の出力軸102bには、補助操舵トルクを出力軸102bに伝達する補助操舵機構103が連結されている。補助操舵機構103は、出力軸102bに連結された減速装置111と、減速装置111に連結されかつ補助操舵トルクを発生させるモータ1とを有している。なお、ステアリングシャフト102及びトルクセンサ110及び減速装置111によりステアリングコラムが構成されており、モータ1は、前記ステアリングコラムの出力軸102bに補助操舵トルクを与える。すなわち、本実施形態における電動パワーステアリング装置100は、コラムアシスト方式となっている。
【0023】
トルクセンサ110は、ステアリングホイール101を介して入力軸102aに伝達された運転者の操舵力を操舵トルクとして検出するものである。モータ1の駆動を制御するECU50には、電源(例えば車載のバッテリ)115から電力が供給される。
【0024】
図2は、本実施形態に係る電動パワーステアリング装置が備える減速装置の一例を説明する正面図である。図2は、一部を断面として示してある。減速装置111はウォーム減速装置である。モータ1の軸12にスプライン結合したウォーム121は、玉軸受122と、ホルダ125に保持された玉軸受123とで回転自在に減速装置ハウジング120に保持されている。ウォーム121の一部に形成されたウォーム歯121aは、減速装置ハウジング120に回転自在に保持されたウォームホイール124に形成されているウォームホイール歯124aに噛み合っている。モータ1の回転力は、ウォーム121を介してウォームホイール124に伝達され、ウォームホイール124を回転させる。ウォーム121及びウォームホイール124によって、モータ1のトルクが増加され、図1に示すステアリングコラムの出力軸102bに補助操舵トルクが与えられる。次に、モータ1の構成を説明する。
【0025】
図3は、本実施形態に係るモータの側面図である。図4は、図3のA−A断面の矢視図である。図4に示すように、モータ1は、整流子3とコア13とを含む回転子2と、複数のブラシ4と、複数のブラシ4をそれぞれ保持する複数のブラシ保持手段5と、複数のブラシ4にそれぞれ接続されるピグテイル6(導線)と、を有している。回転子2とブラシ4とは、磁性材料で形成された略円筒形のハウジング7内に収められている。なお、回転子2は、整流子3と、コア13と、コイル14とを備えている。ハウジング7の一端には、この端部を閉塞するようにハウジング7と一体に底部7aが設けられている。底部7aに対して反対側の一端には、開口部が設けられている。この開口部は、フランジ8により閉塞される。なお、回転子2を形成する磁性材料としては、例えばSPCC(Steel Plate Cold Commercial)等の一般的な鋼材や、電磁軟鉄等が適用できる。
【0026】
ハウジング7の内側面には、ハウジング7の内部に収納された回転子2のコア13に対向するように、2個のマグネット9が互いに極性を逆にして配置され、マグネットホルダ10により固定されている。2個のマグネット9の表面にはマグネット飛散防止カバー11が取り付けられる。マグネット飛散防止カバー11は、2個のマグネット9を押さえることにより、2個のマグネット9の万一の飛散を防止する。
【0027】
回転子2は、軸12によって中心を貫かれている。回転子2は、軸12と固定されている。回転子2のコア13部分は、複数のスロット(溝)を有する。コイル14は、前記スロットに巻き回されている。コア13は、磁性材料を用いて形成される。コア13は、例えば、磁性材料としてケイ素鋼板を用い、これを積層して形成される。整流子3は、絶縁体で形成された円柱状の絶縁部の側面に、導電体で形成された複数の導電部15が等間隔で平行に配置されているものである。コイル14の一端は、一つの導電部15に接続されており、他端は別の導電部15に接続されている。整流子3も、軸12によって中心を貫かれている。
【0028】
ハウジング7の内側であって、フランジ8の略中央部分には軸受16が、底部7aの略中央部分には軸受17が、それぞれ設けられている。軸受16は、ハウジング7の内側に配置された軸12の一端を回転可能に支持し、軸受17は、軸12の他端を回転可能に支持している。軸12の回転軸は、図4に示すZrであり、軸12の中心軸に相当する。以下、軸12の回転軸及び中心軸をZrで表す。なお、軸12は、軸受16、17に支持されるので、軸受16、17の回転軸もZrとなる。また、軸12によって中心を貫かれている回転子2及び整流子3の回転軸もZrとなる。軸12には、ジョイント21が取り付けられ、ジョイント21に減速装置111のウォーム121がスプライン結合される。なお、軸12とウォーム121は弾性カップリングであってもよい。
【0029】
ブラシ4は略角柱、好ましくは四角柱状の形状である。より好ましくは、整流子3と対向するブラシ4の面に含まれるブラシ4の4つの頂点のうち、ハウジング7を閉塞するフランジ8側ではなく、コア13側にある2つ頂点のいずれかが突出している形状である。ブラシ4は、この突出している頂点において整流子3と接する。ブラシ4が、コア13側にある2つの頂点のいずれかが突出していることで、ブラシ4は、整流子3とこの突出している頂点において接触する。このような構造により、ブラシ4と整流子3とが接触する位置が明確となる。その結果、ブラシ4から整流子3へ、安定して電力を供給することができ、また、ブラシ4の摩耗状態も容易に予測できる。
【0030】
略角柱、好ましくは四角柱状の形状であるブラシ4の側面のうちコア13を向く面(ハウジング7の底部7aを向く面)が、整流子3の半径の大きさよりも大きい半径を有する円の孤である辺を持ち、円弧の中心は、整流子3の回転中心からずれていることが好ましい。このような構成とすると、円弧である辺は整流子3に接触しない。すなわち、上述の、整流子3と対向するブラシ4の面に含まれる四角柱の4つの頂点のうち、突出している頂点においてのみブラシ4と整流子3とが接触する。その結果、ブラシ4と整流子3との接触部分が小さくなり、整流子3の回転に伴う振動が小さくなる。
【0031】
ブラシ4は、接触抵抗が小さく機械的衝撃に耐えられる材料により構成される。例えば、ブラシ4は、黒鉛により構成される。ブラシ4は、底部を有する角筒状のブラシケース18の内部に▲しゅう▼動可能に収められている。ブラシケース18は、絶縁体で形成された基板19に固定されている。ブラシ保持手段5は、ブラシケース18と、基板19とを含んで構成されている。ブラシ4は、ブラシケース18の底部に設置されたバネ20によって整流子3へ向かう力、すなわち、ブラシケース18からブラシ4が出る方向の力が付勢され、整流子3に押し付けられる。バネ20として、つるまきバネを図示しているが、バネ20は板バネやその他の弾性体であってもよい。ブラシ4とブラシケース18とは、固定されておらず、ブラシ4がブラシケース18との間で摺動できるようにブラシ4とブラシケース18との間には間隔が設けられている。基板19は、フランジ8に固定され、軸12と直交するようにハウジング7内に収納される。したがって、基板19に固定されたブラシケース18に収められたブラシ4は、基板19と平行な面が軸12と直交する。
【0032】
ブラシ4には、ピグテイル6(導線)が電気的に接続されており、ピグテイル6は、さらに基板19に埋設されたバスバーを経由して、電力供給部材22と電気的に接続される。なお、電力供給部材22は、ECU50の端子と接続され、ECU50により制御された電流値の電力をECU50から直接供給される。ブラシ4とピグテイル6(導線)との接続の形態については後で詳しく説明する。
【0033】
ブラシ4にピグテイル6を通じてECU50から供給された電流は、ブラシ4と接触する整流子3の導電部15を通ってコイル14を流れ、整流子3の別の導電部15に至り、別のブラシ4に流入する。コイル14を電流が流れることによって磁界が発生し、この磁界と、マグネット9の磁界との相互作用により回転子2が回転する。
【0034】
次に、ブラシ4の配置について図5−1及び図5−2を用いて詳しく述べる。図5−1および図5−2は、実施形態1に係るモータ1のブラシ4の配置を説明する概略図である。
本実施形態のブラシ4は4個であるが、図5−1及び図5−2には、3個を省略してそのうちの1個のみを記載している。また、図5−1ではブラシケース18を省いた状態のモータ1を、図5−2ではブラシ4とブラシケース18が分解された状態のモータ1を記載してある。ブラシ4の個数は4個に限定されるものではない。ブラシ4は、長手方向Lが整流子3の回転軸Zrと平行な方向と交差するとともに、整流子3の半径方向Rと直交するように配置されている。
【0035】
ここで、ブラシ4の長手方向Lとは、略角柱、好ましくは四角柱状の形状であるブラシ4の辺のうち、整流子3に対向するブラシ4の面に含まれる辺を除いた辺の中で最も長い辺の方向に平行な方向である。したがって、ブラシ4の辺のうち、整流子3に対向するブラシ4の面に含まれる辺を除いた辺のうち、整流子3の回転軸Zrと平行な方向と交差し、かつ整流子3の半径方向Rと直交する辺が、最も長い辺となるようにブラシ4が配置される。整流子3の半径方向Rとは、整流子3の回転中心を通り、かつ前記回転中心と直交する方向である。この例において、半径方向Rは、整流子3の回転中心を通り、かつ整流子3に対向するブラシ4の面に含まれる辺を除いた辺の中で最も長いブラシ4の辺の中点Mを貫く方向となる。
【0036】
ブラシ4は、長手方向Lが整流子3の回転軸Zrと平行な方向と交差するように配置されていることで、ブラシ4と整流子3とを接触させた状態においては、整流子3の回転軸Zr方向におけるブラシ4の長さを短くすることができる。これに伴って、回転軸Zr方向における整流子3の長さを短くすることができる。すなわち、回転軸Zr方向におけるモータ1の長さを短くすることができる。その結果、モータ1を電動パワーステアリング装置100に適用した場合に、電動パワーステアリング装置100を小型にすることができ、かつ、電動パワーステアリング装置100を軽量化することができる。
【0037】
ブラシ4が略角柱、好ましくは四角柱状の形状である場合は、ブラシ4は次のように配置されることが好ましい。すなわち、ブラシ4を半径方向Rに直交する平面に投影したときに現れる四角形の対角線と、整流子3の回転軸Zrをこの平面に投影したとき現れる直線との角度をθとし、この対角線の長さをDとすると、L>Dcosθという関係が成り立つことが好ましい(この関係式のLはブラシ4の長手方向の寸法を表す)。これによって、同じ長手方向Lの寸法が同じ大きさのブラシ4を用いる場合、長手方向Lが整流子3の回転軸Zrと平行な方向と交差するようにブラシ4を配置することで、整流子3の回転軸Zr方向におけるブラシ4の長さをより短くすることができる。
【0038】
本実施形態においては、特に、長手方向Lが、整流子3の回転軸Zrと直交する平面上にあるようにブラシ4が配置されていることが好ましい。長手方向Lが、整流子3の回転軸Zrと直交する平面上にあるようにブラシ4が配置されていると、長手方向Lが整流子3の回転軸Zrと平行な方向と交差するようなブラシ4の配列の中で、整流子3の回転軸Zr方向におけるブラシ4の長さが最も短くなる。したがって、整流子3の回転軸Zr方向におけるモータ1の長さを最も短くすることができる。
【0039】
さらに、長手方向Lが整流子3の回転軸Zrと平行な方向と交差するとともに、長手方向Lが、整流子3の半径方向Rと直交するように配置されていることで、ブラシ4の短手方向を含む側面が、整流子3の回転方向(半径方向Rと直交する方向)側のブラシケース18の面に接する。ブラシ4の短手方向を含む側面は、ブラシ4の長手方向Lを含む側面と比較すると面積が小さい。そのため、長手方向Lを含むブラシ4の側面のみが、整流子3の回転方向側のブラシケース18の面に接する場合よりも、接する際に発生する音を低減することができる。なお、本実施形態におけるブラシ4の配置とは異なり、ブラシ4の長手方向Lが整流子3の回転軸Zrと平行になるようにブラシ4が配置されている場合、長手方向Lを含むブラシ4の側面のみが整流子3の回転方向側のブラシケース18の面に接することになる。
【0040】
ブラシ4に接触している整流子3を回転させた場合に、ブラシ4の慣性力、及びブラシ4と整流子3との間の摩擦力により、ブラシ4と整流子3との接触部分を中心としてブラシ4を回転させようとする力がブラシ4に働く。本実施形態では、長手方向Lが整流子3の回転軸Zrと平行な方向と交差するとともに、かつ長手方向Lが、整流子3の半径方向Rと直交するように配置されている。このような配置により、ブラシ4と整流子3との接触部分から、ブラシ4の側面のうち、コア13とは反対側の面(フランジ8寄りの面)までの距離は、長手方向Lが整流子3の回転軸Zrと平行になるようにブラシ4が配置されている場合と比較して短くなる。
【0041】
その結果、同じ力が加わった場合のモーメントは、長手方向Lが整流子3の回転軸Zrと平行になるようにブラシ4が配置されている場合と比較して、長手方向Lが整流子3の回転軸Zrと平行な方向と交差するとともに、長手方向Lが、整流子3の半径方向Rと直交するように配置されている場合の方が小さい。したがって、整流子3の回転によりブラシケース18内でブラシ4が回転し、ブラシ4がブラシケース18を叩いた場合に発生する作動音(叩き音)は、長手方向Lが整流子3の回転軸Zrと平行になるようにブラシ4が配置されている場合と比較して、長手方向Lが整流子3の回転軸Zrと交差するとともに、かつ長手方向Lが、整流子3の半径方向Rと直交するように配置されている場合のほうが低減され、その結果、モータ1の作動音、振動が低減される。
【0042】
モータ1の作動音、振動が低減されるので、運転者が搭乗する車室内にあって静粛性が求められる電動パワーステアリング装置100にモータ1を適用する場合、静粛性が確保できる。その結果、モータ1を電動パワーステアリング装置100に適用した場合には、車室内における作動音の低減が実現できる。ハンドル操作は、車両の方向を変更する場合のほか、路面状態に応じて車両の方向を一定にする場合にも行われる。したがって、電動パワーステアリング装置100にモータ1を適用した場合におけるモータ1の反転回数は多い。このため、叩き音が低減されることによって、電動パワーステアリング装置100の静粛性は大きく向上する。
【0043】
また、長手方向Lが整流子3の回転軸Zrと平行になるようにブラシ4が配置されている場合と比較して、長手方向Lが整流子3の回転軸Zrと交差するとともに、長手方向Lが、整流子3の半径方向Rと直交するように配置されている場合のほうが、ブラシ4の回転が容易ではないので、整流子3と接触しているブラシ4の摩耗の度合いがブラシ4と整流子3とが接触している場所によって偏ることを抑制できる。
【0044】
図6は、実施形態1に係るモータのブラシの配置を示す概略図であり、整流子3側から見たモータ1の部分図である。ブラシケース18は点線で示してある。ブラシ4は、整流子3の周方向に向かって配置されており、対向するブラシ4同士は、中心Cを対称点とした点対称となるように形成され、配置されている。ここで、中心Cとは、整流子3の回転軸Zrがブラシ保持手段5を構成する基板19の板面のうちブラシケース18を据え付ける面と交わる点を指す。隣り合うブラシ4同士は、中心Cを中心として中心角π/2radの間隔で配置されている。
【0045】
次に、ピグテイル6(導線)とブラシ4との接続形態について説明する。ピグテイル6は、長手方向L側のブラシ4の側面に接続されている。ピグテイル6が、ブラシ4の長手方向L側のブラシ4の側面に接続されていることで、ピグテイル6が整流子3の回転軸Zr方向と平行な方向ではなく、整流子3の周方向と平行な方向へ近い方向へ引き出されることとなり、整流子3の回転軸Zr方向におけるモータ1の長さをより短くすることができる。なお、ブラシ4の長手方向Lが、整流子3の回転軸Zrと直交する平面上にある場合に、ピグテイル6は整流子3の周方向と平行な方向へ引き出されることになり、整流子3の回転軸Zr方向におけるモータ1の長さをさらに短くすることができる。
【0046】
(ブラシの形状・配置の変形例)
図7は、ブラシの形状及び配置の変形例を示す概略図であり、整流子3側から見たモータ1aの部分図である。ブラシケース18は点線で示してある。対向するブラシ4a同士は、中心Cを通る線を対称軸L1、L2とした線対称となるように形成され、配置されている。中心Cの位置は、図6における位置と同じである。このようにブラシ4aが形成され、配置されていることで、モータ1aが反転する際に、ブラシ4aと整流子3とが滑らかに接触し、その結果モータ1a反転時のノイズを低減することができる。他の構成についてはモータ1と同様であるために説明を省略する。
【0047】
なお、本実施形態では、4個のブラシ4、4aを備えたモータ1、1aを示してブラシ4、4aの配置を説明したが、2個のブラシを備えたモータ、4個より多いブラシを備えたモータにも本実施形態のブラシ4、4aの配置を適用することができる。
【0048】
また、本実施形態のモータ1、1aについての説明から、モータ1、1aのブラシ4、4aを、長手方向Lが整流子3の回転軸Zrと平行な方向と交差するとともに、整流子3の半径方向Rと直交するように、かつ整流子3の周方向に向かって配置するブラシの配置方法が把握される。
【0049】
(実施形態2)
図8は、実施形態2に係るモータの側面図である。図9は、図8のB−B断面の矢視図である。モータ1bにおいては、フランジ8aと基板19aとが一体として形成されてブラシ保持手段5a(フランジ8aでもある)を構成している。ブラシ保持手段5aは、樹脂に軸受ホルダ23、カラー24やバスバーその他の別部材を埋め込んで成形する、インサートモールディングによって成形されている。このようにフランジ8aと、ブラシ保持手段5aの一部である基板19aとを一体として形成することで、ブラシ保持手段5a及びフランジ8aを整流子3の回転軸Zr方向において薄くすることができる。その結果、整流子3の回転軸Zr方向におけるモータ1bの長さを、フランジ8と基板19とが別々に形成されているモータ1よりもさらに短くすることができる。
【0050】
ブラシ保持手段5aの材料として、各種樹脂を用いることができるが、特に制振機能のある制振樹脂を用いることが好ましい。制振機能のある樹脂として、例えばポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリフェニレンサルファイド(PPS)などであって制振性に優れたものが挙げられる。また、これらの樹脂の配合物や、これらの樹脂に無機物又は有機物のフィラーを添加した組成物を用いることもできる。フィラーは、強度向上を目的として、例えば樹脂に対して10質量%以上60質量%以下が添加される。ブラシ保持手段5aが制振樹脂であることによって、ブラシ保持手段5aの振動がさらに抑制される。その結果、フランジ8aの振動が抑制されるとともに、ブラシ保持手段5aからハウジング7への振動の伝達が抑制され、モータ1bの振動及び作動音がさらに低減される。
【産業上の利用可能性】
【0051】
以上のように、本発明に係るブラシモータ及び電動パワーステアリング装置、並びにブラシの配置方法は、作動音及び振動を低減しかつ整流子の回転軸方向におけるブラシモータの長さを短縮することに有用である。
【符号の説明】
【0052】
1、1a、1b モータ(ブラシモータ)
2 回転子
3 整流子
4、4a ブラシ
5、5a ブラシ保持手段
6 ピグテイル(導線)
7 ハウジング
8、8a フランジ
9 マグネット
10 マグネットホルダ
11 マグネット飛散防止カバー
12 軸
13 コア
14 コイル
15 導電部
16、17 軸受
18 ブラシケース
19、19a 基板
20 バネ
21 ジョイント
22 電力供給部材
23 軸受ホルダ
24 カラー
50 ECU
100 電動パワーステアリング装置
103 補助操舵機構
111 減速装置
Zr 回転軸
L 長手方向
R 半径方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
整流子とコアとを含む回転子と、
長手方向が前記整流子の回転軸と平行な方向と交差するとともに、前記整流子の半径方向と直交するように、かつ前記整流子の周方向に向かって配置されている複数のブラシと、
前記複数のブラシをそれぞれ保持する複数のブラシ保持手段と、
前記複数のブラシにそれぞれ接続される導線と、
を含むことを特徴とするブラシモータ。
【請求項2】
前記長手方向は、前記整流子の前記回転軸と直交する平面上にあることを特徴とする請求項1に記載のブラシモータ。
【請求項3】
前記導線は、前記長手方向側の前記ブラシの側面に接続されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のブラシモータ。
【請求項4】
前記ブラシは、四角柱状の形状であって、前記整流子と対向する前記ブラシの面に含まれる前記ブラシの4つの頂点のうち、前記コア側にある2つの頂点のいずれかが突出している形状であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のブラシモータ。
【請求項5】
前記回転子を収納し、一端に開口部を有するハウジングと、
前記ハウジングの前記開口部を閉塞するフランジと、を備え、
前記ブラシ保持手段の少なくとも一部が、前記フランジと一体として形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のブラシモータ。
【請求項6】
前記フランジと一体として形成されている前記ブラシ保持手段の前記少なくとも一部は、制振樹脂であることを特徴とする請求項5に記載のブラシモータ。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載されたブラシモータにより補助操舵トルクを得ることを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項8】
ブラシモータのブラシを、長手方向が整流子の回転軸と平行な方向と交差するとともに、前記整流子の半径方向と直交するように、かつ前記整流子の周方向に向かって配置することを特徴とするブラシの配置方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5−1】
image rotate

【図5−2】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−223771(P2011−223771A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−91289(P2010−91289)
【出願日】平成22年4月12日(2010.4.12)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】