説明

ブラシロール及び洗浄装置

【課題】被洗浄面に洗浄残りが発生することがない優れた洗浄性能、及び効率よく確実に異物等の対象物を排除する高い除去性能を有するブラシロール、及びそのブラシロールを搭載し、被洗浄面の品質の向上を図る洗浄装置を提供する。
【解決手段】ブラシロール1は、略棒状又は円筒状の回転軸3と、回転軸3の外周に螺旋状に巻き付けられたブラシ部2a、2bを有し、ブラシ部2a、2bは断面略U字状の帯状体6と、帯状体6で芯線7と共に挟持されるブラシ毛材8とで構成されたチャンネルブラシ5からなるブラシ体4a、4bが、回転軸3の外周に螺旋状に巻き回されて形成されてあり、ブラシ体4a、4bは回転軸3の軸心C.L.方向の一部に設定した対称軸10を中心に、巻き付け時の傾斜角θが対称になるよう回転軸3に巻き回されてあると共に、左右それぞれに複数本並列に設けられ、回転軸3の外周に固定手段11にて固定して形成されてあるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼板、非鉄金属板、樹脂板、ガラス板 あるいはフィルム状樹脂組成物等からなる被洗浄面の洗浄、清掃、研磨、表面処理等を行うブラシロール、及びそのブラシロールを搭載した洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種のブラシロール、及びそのブラシロールを搭載した洗浄装置として、ブラシ材の基部をチャンネルに保持させて成るチャンネルブラシを密着螺旋巻きしてコイルブラシを形成し、該コイルブラシをロールに外挿して成るロールブラシにおいて、上記コイルブラシの外側面と対向する制動フランジを備え、該制動フランジに上記コイルブラシを形成するチャンネルブラシの巻端のチャンネル端面と係合して上記コイルブラシの制動を図る係止部を設けたことを特徴とするロールブラシ(特許文献1)がある。
【0003】
特許文献1のロールブラシは、チャンネルブラシをコイルブラシに形成する際、1本のチャンネルブラシによりコイルブラシが形成され、前記コイルブラシがロールに密着螺旋巻きにより外挿して製作される。その為、コイルブラシはロールの軸心方向にたいして略直角に配置されるので、ロールの軸心の垂線にたいするコイルブラシの傾斜角度は極めて小さく、ロールブラシの回転に伴い、ブラシ材の先端は被洗浄面にたいして略直角に点接触する為、ブラシ材の間には被洗浄面に当接しない隙間部分が生じ、被洗浄面にブラシマークが発生する。前記ブラシマークは、被洗浄面にたいする洗浄残りであることから、ロールブラシは被洗浄面を均一に洗浄することができず、洗浄性能が悪いという問題があった。
【0004】
また、チャンネルブラシは密着螺旋巻きによりコイルブラシが形成され、隣り合うコイルブラシの間に隙間が形成されていないので、被洗浄面から除去された異物等の対象物がブラシ材に捕捉された場合、ロールブラシの回転に伴い、対象物はコイルブラシのピッチ間に形成された隙間を介して、ロールブラシの外部に放出されることがないので、ブラシ材に捕捉されたままとなる。そして、ロールブラシが回転し、ブラシ材が被洗浄面に当接することにより、ブラシ材に捕捉された対象物は、被洗浄面に脱落し、異物等を被洗浄面に再付着させることになり、ロールブラシは異物等の対象物の除去性能が劣るという問題もあった。
【0005】
上記に示した問題を解決する為、入口側に洗浄ノズルを有し、ロール本体の外周面に所定幅のブラシを、ロール本体の全長の中央に設定した対称軸に対して対称に所定ピッチで且つ、前記対称軸からロール本体の端へ向かって対象物を送ることができる螺旋方向に巻き付けたことを特徴とする鋼板洗浄機のブラシロール(特許文献2)が考案されている。
【0006】
図10、及び図11を用いて、特許文献2のブラシロールについて詳述する。図10(a)は、従来例におけるブラシロールの部分正面図、図10(b)は、従来例におけるブラシロールの部分断面図、図11は、従来例のブラシロールが搭載された洗浄装置の斜視図である。
【0007】
図10(a)、及び図10(b)において、従来のブラシロール71は、直径Dの中空状のロール本体73と、ロール本体73の外周に螺旋状に巻き付け固定されたブラシ74から構成されている。ブラシ74は、断面略U字状のベース材76と概丸形断面を有する芯線77に線材78が挟持された長尺状で、ロール本体73の軸心C.L.方向の略中央部に設定された対称軸70にたいして対称に、且つ、対称軸70からロール本体73のそれぞれの端部に向かって1本づつ螺旋状に、ピッチPをもって巻き回されて設けられている。Sは、ブラシ74をロール本体73に巻き付ける際の始点である。また、ブラシ74のピッチPは、ブラシ74を構成するベース材76の幅Wと、隣り合うブラシ74の隙間Gとの和として表わされる。すなわち、ピッチP=W+Gとなる。
【0008】
次に、図11を用いて、上記ブラシロール71によるブランク材87の洗浄について説明する。ブラシロール71は、鋼板用洗浄機80に設置されてあり、ブランク材87は、プレス加工前の鋼板など洗浄を必要とするもので、前記ブランク材87の表面にブラシ74の先端が摺接するようにブラシロール71の位置を設定する。ブランク材87の素地88の表面には、樹脂、鉄粉、塵埃等からなる異物等の対象物89が付着している。
【0009】
そして、ブランク材87を白抜き矢印の方向に図示しない移動手段で送りながら、駆動手段84で、ブラシロール71を実線矢印で示すように反時計方向に、且つ、ブラシ74の先端の周速度がブランク材87の移動速度より大きくなるような回転数で回転させ、同時に洗浄ノズル85より洗浄液をブラシロール71の回転入口側に吹き付けるようにする。
【0010】
このようにすることにより、ブラシ74が当接した部分におけるブランク材87の素地88の表面に付着した対象物89は洗浄液と共に、ブラシロール71の軸心C.L.方向の略中央部に設定された対称軸70から左右の端部に向かって、ブラシロール71の回転に伴い発生する分力C.F.により移動し、除去される。また、ブラシロール71は、隣り合うブラシ74の間に隙間Gを有するので、線材78に捕捉された対象物89は、ロール本体73の回転に伴い、隙間Gを介して、ブラシロール71の両方の端部から外部に放出される。その為、ブラシロール71は、異物等の対象物89の優れた除去性能を有する。
【特許文献1】特開2001−346629号公報
【特許文献2】特開2004−137573号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記従来のブラシロール71の構成では、図10(a)、図10(b)、及び図11の如く、ブラシ74がロール本体73の略中央部に設定された対称軸70より、左右の端部に向けてそれぞれ1本のみ螺旋状に配されている為、ブラシ74のロール本体73の軸心C.L.の垂線P.L.にたいする傾斜角θは小さく、特許文献1に示したロールブラシと同様、ブランク材87に線材78の先端が点接触し、線材78の間にブランク材87に当接しない隙間部分が生じ、ブランク材87にブラシマークが発生する。前記ブラシマークは、図11のブラシロール71の下流側において、ブランク材87の素地88にたいする筋状の対象物89の洗浄残りとなる。また、線材78は、ブランク材87に点接触することから、線材78のブランク材87にたいする当接力は弱く、ブラシロール71はブランク材87を均一に洗浄することができず、洗浄性能が劣るという課題を有していた。
【0012】
この問題を解決する為に、隣り合うブラシ74の隙間Gを広くし、ピッチPを大きくして、ロール本体73の軸心C.L.の垂線P.L.にたいする傾斜角θを大きく設定し、線材78がブランク材87にたいする接触面積を広く確保して線接触する方法も考えられるが、そうすると、ブラシロール71は、ブラシ74がロール本体73の略中央部に設定された対称軸70より、左右の端部に向けてそれぞれ1本のみ螺旋状に配されていることから、隣り合うブラシ74の隙間Gが大きくなるということは、線材78がブランク材87に当接しない部分が生じることになり、やはりブランク材87にブラシマークが発生する。従って、従来のブラシロール71の如く、ブラシ74がロール本体73の略中央部に設定された対称軸70より、左右の端部に向けてそれぞれ1本のみ螺旋状に配されている構造においては、隣り合うブラシ74の隙間Gを広くし、ピッチPを大きくして、ロール本体73の軸心C.L.の垂線P.L.にたいする傾斜角θを大きく設定しても、洗浄性能の向上にはつながらないのである。
【0013】
また、ブランク材87は、洗浄後、金型等によりプレスされ、自動車の車体を構成するパネル部品として成形されるが、上記の如く、ブラシマークとしてブランク材87の表面に残った異物等の対象物89は、ブランク材87が金型等でプレスされることにより、パネル部品にプレス痕を発生させる。すなわち、対象物89が残っていたブランク材87の表面は、金型等でプレスされることにより凹み、ブランク材87の裏面は凸状となり、プレス痕となるのである。前記の如く、プレス痕の発生したパネル部品は、品質不良であり、次工程の溶接工程、塗装工程に送ることができず、廃棄処分される。従って、鋼板用洗浄機80は、ブランク材87の品質向上を図ることができないという課題を有していた。
【0014】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、被洗浄面にブラシマークの如くの洗浄残りが発生することがない優れた洗浄性能、及び効率よく確実に異物等の対象物を排除する高い除去性能を有するブラシロール、及びそのブラシロールを搭載し、被洗浄面の品質の向上を図る洗浄装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記従来の課題を解決するために、請求項1のブラシロールは、鋼板、非鉄金属板、樹脂板、あるいはフィルム状樹脂組成物等からなる被洗浄面の洗浄、清掃、研磨、表面処理等を行うブラシロールにおいて、前記ブラシロールは、略棒状又は円筒状の回転軸と、前記回転軸の外周に螺旋状に巻き付けられたブラシ部を有し、前記ブラシ部は断面略U字状の帯状体と、前記帯状体で芯線と共に挟持されるブラシ毛材とで構成されたチャンネルブラシからなるブラシ体が、前記回転軸の外周に螺旋状に巻き回されて形成されてあり、前記ブラシ体は前記回転軸の軸心方向の一部に設定した対称軸を中心に、巻き付け時の傾斜角が対称になるよう前記回転軸に巻き回されてあると共に、左右それぞれに複数本並列に設けられ、前記回転軸の外周に固定手段にて固定して形成されてあるもので、ブラシロールは対称軸を中心に、回転軸の左右の端部に向け、それぞれ1本のブラシ体が回転軸の外周に螺旋状に巻き回されると共に、隣り合うブラシ体のピッチの間に、他の1本以上のブラシ体が配列されている。従って、ブラシロールは、対称軸を中心に、回転軸の左右の端部に向け、それぞれ1本のブラシ体のみが回転軸の外周に螺旋状に巻き回されて形成されてある場合に比べ、各ブラシ体の回転軸の軸心の垂線にたいする傾斜角を、大きく設定することができる。その為、ブラシロールの回転に伴い、ブラシ毛材は被洗浄面にたいして接触面積を広く確保して線接触にて当接するので、被洗浄面にブラシ毛材が当接しない隙間部分がなくなり、ブラシマークの発生が抑えられる。また、ブラシ毛材は、被洗浄面に線接触にて当接することから、ブラシ毛材の被洗浄面にたいする当接力は強く、被洗浄面に洗浄残りが生じることがなく、ブラシロールは被洗浄面を均一に洗浄する。
【0016】
また、ブラシロールは、対称軸を中心に、左右それぞれにブラシ体を1本のみ設けた場合と比較し、ブラシ体の傾斜角を大きくしてブラシ体を回転軸の軸心方向に広げられるので、ダム効果により、洗浄液を効果的に堰き止めながら、被洗浄面に付着、堆積した異物等の対象物を、回転軸の回転に伴い、対称軸から回転軸の両端部に向け発生する分力により、洗浄液と共に被洗浄面の外部に洗い流し、除去する。
【0017】
請求項2のブラシロールは、特に、請求項1のブラシロールにおいて、対称軸を回転軸の軸心方向の略中央部に設定したもので、左右それぞれのブラシ部で、回転軸の略中央部から端部に向けて、分力により掻き寄せられる対象物の移動距離が等しくなるので、洗浄効果にムラが生じることがない。その為、洗浄性能が大幅に向上する。
【0018】
請求項3のブラシロールは、特に、請求項1から2のブラシロールにおいて、ブラシ部は少なくとも1本以上のブラシ体が、他のブラシ体と異なるブラシ毛材にて構成されてあるもので、ブラシ毛材の毛腰に強弱の変化を付与することができ、被洗浄面にたいして異なる接触力、押付力にてブラシ毛材を当接させることができる。被洗浄面には、例えば、塗料ミスト、ペンキ、搬送ベルトから剥離したウレタン等の合成樹脂からなる有機物、鉄粉、石等の無機物、繊維クズ等からなる塵埃等、さまざまな対象物が付着、堆積している。被洗浄面にたいする付着状態も、合成樹脂からなる有機物の如く、強固に圧着している対象物から、無機物、塵埃等の如く、表面に添付しているだけの対象物までさまざまである。また、硬さも、鉄粉、石等の無機物の如く、硬い対象物から、塵埃等の如く、柔らかい対象物までさまざまである。その為、ブラシ体を異なるブラシ毛材にて構成することにより、前記の如くのさまざまな性状を有する対象物を、的確に、被洗浄面から除去することができる。
【0019】
異なるブラシ毛材とは、例えば、ブラシ毛材の材質、ブラシ毛材の線径、ブラシ毛材の形状、ブラシ毛材の毛丈等のことである。
【0020】
異なるブラシ毛材の材質とは、例えば、天然繊維、再生繊維、半合成繊維、合成繊維、金属繊維等のことであり、天然繊維、再生繊維、半合成繊維等は毛腰が柔軟で、被洗浄面にたいする追従性が向上する。また、合成繊維、金属繊維等は毛腰が剛直で、被洗浄面にたいする押付力が向上する。従って、毛腰が柔軟である天然繊維、再生繊維、半合成繊維等のブラシ毛材により、無機物、塵埃等の対象物が確実に除去され、毛腰が剛直である合成繊維、金属繊維等のブラシ毛材により、合成樹脂からなる有機物等の対象物が効率よく除去される。
【0021】
なお、本発明のブラシロールにおける異なるブラシ毛材の材質としては、上記に示した天然繊維、再生繊維、半合成繊維、合成繊維等の有機物系繊維と、金属繊維等の無機物系繊維とによる区分のみならず、例えば、合成繊維を用いる場合においても、ナイロン、ポリエステル、アクリル、ビニロン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ビニリデン、ポリウレタン等の異なる合成樹脂からなる繊維を、それぞれのブラシ体を構成するブラシ毛材として用いるならば、異なる材質のブラシ毛材である。前記のブラシ毛材の内、アクリル、ウレタン等は、特に、弾力性が高く、ポリプロピレン等は、特に、剛性が高い。
【0022】
さらに、例えば、ポリエステルを用いる場合においても、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリシクロヘキサンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等の異なる構造式からなるポリエステルを、それぞれのブラシ体を構成するブラシ毛材として用いるならば、異なる材質のブラシ毛材として認められる。前記のブラシ毛材の内、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等は、特に、弾力性が高く、ポリエチレンテレフタレート等は、特に、剛性が高い。なお、異なる構造式とは、例えば、ポリプロピレンにおけるアイソタクチック、シンジオタクチック、アタクチック等の分子の配列の違い等も含むものである。さらに、合成樹脂に熱可塑性エラストマー等をブレンドして、ポリマーアロイにより得られたブラシ毛材を用いる場合も、本発明のブラシロールにおける異なる材質のブラシ毛材の範疇に含まれるものである。
【0023】
また、それぞれのブラシ体を構成するブラシ毛材の線径を変えることにより、ブラシ毛材の毛腰に強弱の変化を付与することができ、被洗浄面にたいして異なる接触力、押付力にてブラシ毛材を当接させることができる。すなわち、線径の細いブラシ毛材は毛腰が柔軟で、被洗浄面にたいする追従性が向上する。また、線径の太いブラシ毛材は毛腰が剛直で、被洗浄面にたいする押付力が向上する。前記の如く、ブラシ体を構成するブラシ毛材の線径を変えることにより、ブラシ毛材の毛腰に強弱の変化が付与され、被洗浄面に付着、堆積しているさまざまな性状を有する異物等の対象物が、的確に、除去される。
【0024】
また、異なるブラシ毛材の形状とは、例えば、ブラシ毛材の長手方向における形状、ブラシ毛材の断面形状等のことである。それぞれのブラシ体を構成するブラシ毛材の形状を変えることにより、ブラシ毛材の毛腰に強弱の変化を付与することができ、被洗浄面にたいして異なる接触力、押付力にてブラシ毛材を当接させることができる。
【0025】
ブラシ毛材の長手方向における形状としては、複数本の単糸を撚り合わせた撚り糸は毛腰が柔軟であり、長手方向に湾曲部を有する波形状の単糸繊維は毛腰に弾力性があり、繊維の表面に酸化アルミニウム、炭化ケイ素、ダイアモンド等の砥粒が付着した砥粒入り繊維は毛腰が剛直である。
【0026】
また、ブラシ毛材の断面形状としては、概三角形、概四角形等の多角形断面、十字形、卍形等の異形断面は、毛腰が剛直であると共に、ブラシ毛材に形成された角部により、被洗浄面に付着している異物等の対象物を掻き取る。特に、被洗浄面に強固に圧着した合成樹脂、堆積した鉄粉、石等の対象物を、的確に掻き取り、除去する。また、十字形、卍形等の異形断面形状繊維は、直交部に、洗浄液等の液体を保持しながら、洗浄することができ、被洗浄面にたいする表面張力を低下させることができるので、洗浄性能が向上する。
【0027】
さらに、長手方向に中空部、あるいは空洞部を有する中空繊維は、洗浄中にブラシ毛材が中空部、あるいは空洞部に洗浄液等の液体を保持することができるので、保液性が高く、ブラシ毛材は、被洗浄面にたいして表面張力を低下させて当接する。その為、中空部、あるいは空洞部を有する中空繊維を、ブラシ毛材として用いた場合、被洗浄面に付着、堆積している異物等の対象物を、的確に除去することができ、洗浄性能の向上を図ることができる。なお、中空部とは中空状態が繊維の長手方向にて貫通している状態であり、空洞部とは中空状態が繊維の長手方向の途中において閉塞している状態である。
【0028】
ところで、表面張力とは、異物等の対象物である固体と、洗浄液等の液体が接している境界面において、接触面積を小さくする方向に働く張力のことである。従って、表面張力が低下するということは、固体と液体の接触面積が大きくなることであり、固体である異物等の対象物と、ブラシ毛材に保持された液体である洗浄液等との接触面積は大きくなる。すなわち、洗浄液等の異物等の対象物にたいする濡れ性が向上する。その為、保液性に優れた異形断面形状繊維、中空繊維等は、異物等の対象物にたいする濡れ性が増大することから、異物等の対象物を除去しやすくなり、洗浄性能が向上するのである。
【0029】
また、それぞれのブラシ体を構成するブラシ毛材の毛丈を変えることにより、ブラシ毛材の毛腰に強弱の変化を付与することができ、被洗浄面にたいして異なる接触力、押付力にてブラシ毛材を当接させることができる。すなわち、毛丈の長いブラシ毛材は毛腰が柔軟で、被洗浄面にたいする追従性が向上する。また、毛丈の短いブラシ毛材は毛腰が剛直で、被洗浄面にたいする押付力が向上する。前記の如く、ブラシ体を構成するブラシ毛材の毛丈を変えることにより、ブラシ毛材の毛腰に強弱の変化が付与され、被洗浄面に付着、堆積しているさまざまな性状を有する異物等の対象物が、的確に、除去される。
【0030】
請求項4のブラシロールは、特に、請求項1から3のブラシロールにおいて、ブラシ部は回転軸に設定された対称軸の近傍と、前記回転軸の端部の近傍において、ブラシ毛材の剛性が異なるもので、対称軸を中心に、左右それぞれに配されたブラシ部が、回転軸の回転に伴い発生する分力により、異物等の対象物を、対称軸から回転軸の両端部に向け、洗浄液と共に被洗浄面の外部に洗い流し、除去する。従って、ブラシロールの回転中においては、異物等の対象物は、対称軸の近傍におけるよりも、回転軸の端部の近傍に近づくほど増えることになる。すなわち、回転軸の端部の近傍は、ブラシ毛材の被洗浄面にたいする摩擦抵抗が、対称軸の近傍よりも大きくなる。その為、ブラシ毛材の剛性を、対称軸の近傍よりも、回転軸の端部の近傍の方が低くなるように設定しておけば、摩擦抵抗の高い回転軸の端部の近傍においても、ブラシ毛材が容易に変形し、被洗浄面から異物等の対象物を外部に払い除けやすくなるので、対象物の除去性能が大幅に向上する。
【0031】
なお、剛性とは、一般的に圧縮、ずれ、捩れ等の外力にたいする物体の変形しにくい性質のことであり、剛性が低いほど、容易に変形することになる。本発明のブラシロールにおいては、ブラシ毛材の材質、線径、形状、毛丈等により、剛性に変化を与えてもよいし、対称軸の近傍と、回転軸の端部の近傍において、ブラシ毛材の植毛密度を変えることにより、剛性に変化を与えることもできる。植毛密度は、ブラシ体の単位面積あたりにおけるブラシ毛材の本数を変えればよく、回転軸の端部の近傍におけるブラシ毛材の本数を、対称軸の近傍におけるブラシ毛材の本数よりも少なくなるように設定すれば、ブラシ毛材の毛腰が弱くなり、剛性は低くなる。
【0032】
請求項5のブラシロールは、特に、請求項1から4のブラシロールにおいて、ブラシ部は隣り合うブラシ体の間に隙間を有し、前記隙間は帯状体の幅以下にて設定されてあるもので、ブラシ毛材に捕捉された異物等の対象物は、回転軸の回転に伴い、隙間を介して、ブラシロールの両方の端部から外部に放出される。
【0033】
また、隣り合うブラシ体の隙間は、帯状体の幅以下に設定されているので、ブラシ毛材が被洗浄面に当接しない部分の発生がなく、被洗浄面にブラシマーク、すなわち洗浄残りを生じることがない。
【0034】
請求項6のブラシロールは、特に、請求項1から5のブラシロールにおいて、ブラシ部はそれぞれのブラシ体の始点及び終点が、回転軸の外周の等分箇所に固定手段にて固定して形成されてあるもので、ブラシロールは、回転軸の回転に伴う芯ブレの発生が抑制され、安定した回転が保持される為、長期間に亘り、優れた洗浄性能が発揮される。
【0035】
請求項7のブラシロールは、特に、請求項1から6のブラシロールにおいて、ブラシ体は回転軸の軸心の垂線にたいして45°以下の傾斜角を有するよう形成されてあるもので、ブラシ体の回転軸の軸心の垂線にたいする傾斜角が45°を超える場合、帯状体の側縁部に、ブラシ毛材が被洗浄面に当接する際の応力が集中しやすくなる為、帯状体の側縁部にてブラシ毛材に毛癖が付き、毛癖の付いた部分から疲労屈折が生じ、ブラシ毛材に毛折れが発生する。その為、ブラシロールの洗浄性能が劣化すると共に、耐久性が低下する。本発明のブラシロールは、ブラシ体の回転軸の軸心の垂線にたいする傾斜角が45°以下にて設定されているので、帯状体の側縁部に、ブラシ毛材が被洗浄面に当接する際の応力が集中し難く、ブラシ毛材の毛癖、毛折れが発生し難いことから、耐久性が向上すると共に、長期間に亘り、優れた洗浄性能が発揮される。
【0036】
請求項8の洗浄装置は、請求項1から7のいずれか1項に記載されたブラシロールと、前記ブラシロールを回転駆動する駆動手段と、前記ブラシロール及び/又は被洗浄面に洗浄液等の液体を吹き付ける複数のノズルを有するもので、被洗浄面にブラシマーク、すなわち洗浄残りを発生させることがないブラシロールが搭載されてあることから、優れた洗浄性能を発揮すると共に、被洗浄面の品質の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0037】
請求項1のブラシロールは、ブラシ体の回転軸の軸心の垂線にたいする傾斜角を大きく設定することができるので、被洗浄面の表面にブラシマークを残すことがなく、優れた洗浄性能を有すると共に、異物等の対象物を、対称軸から回転軸の両端部に向け、効率よく確実に除去することができる。
【0038】
請求項2のブラシロールは、洗浄ムラの発生が抑制され、洗浄性能が大幅に向上する。
【0039】
請求項3のブラシロールは、異なるブラシ毛材が被洗浄面に当接するので、被洗浄面に付着、堆積しているさまざまな性状を有する異物等の対象物を、的確に除去することができる。
【0040】
請求項4のブラシロールは、対称軸の近傍と、回転軸の端部の近傍におけるブラシ毛材の剛性が異なることから、異物等の対象物を、被洗浄面から外部に払い除けやすくなり、対象物の除去性能が大幅に向上する。
【0041】
請求項5のブラシロールは、被洗浄面にブラシマークを発生させることなく、ブラシ毛材に捕捉された異物等の対象物を、隣り合うブラシ体の間に形成された隙間を介して、ブラシロールの外部に放出することができるので、洗浄性能、及び対象物の除去性能が飛躍的に向上する。
【0042】
請求項6のブラシロールは、回転バランスが向上するので、回転軸の回転に伴う芯ブレを抑制することができる。
【0043】
請求項7のブラシロールは、ブラシ毛材の毛折れの発生が抑制されることから、ブラシロールの耐久性が向上すると共に、長期間に亘り、優れた洗浄性能を発揮することができる。
【0044】
請求項8の洗浄装置は、優れた洗浄性能を有するブラシロールが搭載されているので、被洗浄面にブラシマーク、すなわち洗浄残りが発生することがなく、優れた洗浄性能を発揮することができると共に、被洗浄面の品質の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施例によって本発明が限定されるものではない。
【0046】
(実施例1)
図1(a)は、本発明の第1の実施例におけるブラシロールの部分正面図、図1(b)は、ブラシロールの側面図、図1(c)は、ブラシ体を前面側から見た斜視図、図2は、本発明の第1の実施例におけるブラシロールの部分断面図、図3は、チャンネルブラシの製造状態を前面側から見た斜視図である。
【0047】
図1(a)、及び図1(b)において、ブラシロール1は、鉄、アルミニウム等の金属材料、あるいはポリ塩化ビニル、ポリアセタール等の合成樹脂材料からなると共に、中空部9を有する直径Dの略円筒状の回転軸3の外周に、2本のブラシ体4a、4bからなるブラシ部2a、2bが装着されて形成されている。ブラシ部2a、2bは、回転軸3の軸心C.L.方向の略中央部に設定された対称軸10を中心に、左右にそれぞれ2本のブラシ体4a、4bが、ピッチPにて回転軸3の外周に螺旋状に巻き回されていると共に、回転軸3の軸心C.L.の垂線P.L.にたいする傾斜角θが、巻き付け時に対称軸10を中心に対称となるよう並列に形成されている。なお、回転軸3は、中実状の略棒状であってもよい。
【0048】
図1(c)において、ブラシ体4a、4bは、鉄、アルミニウム、ステンレス等の金属材料からなる長尺状の断面略U字状の帯状体6と、鉄、アルミニウム、ステンレス等の金属材料からなる概丸形断面を有する長尺状の芯線7との間に、ブラシ毛材8が挟持された長尺状のチャンネルブラシ5にて形成されている。ブラシ体4a、4bは、回転軸3の外周に装着される際、図1(a)の如く、対称軸10の近傍における回転軸3の外周等分2箇所に、それぞれ2本のブラシ体4a、4bの始点S、Sが溶接による固定部11を介して固定され、螺旋状に巻き回されると共に、図1(b)の如く、回転軸3の両方の端部近傍の外周等分2箇所に、2本のブラシ体4a、4bの終点E、Eが溶接による固定部11を介して固定されて、ブラシ部2a、2bが形成される。
【0049】
なお、本実施例では、回転軸3の外周に、対称軸10を中心に、回転軸3の左右の端部に向け、それぞれ2本のブラシ体4a、4bを設けたが、勿論3本、あるいはそれ以上でもよい。また、ブラシ体4a、4bの回転軸3の外周にたいする固定手段は、溶接以外にも、係止具を用いて、ネジ止め、リベット止め等により固定部11を形成してもよい。さらに、対称軸10の設定位置は、回転軸3の略中央部に限らず、使用目的に応じて、回転軸3の任意の位置に設定することができる。
【0050】
次に、図2を用いて、ブラシロール1の構成について説明する。
【0051】
図2において、ブラシロール1は、帯状体6と芯線7にブラシ毛材8が挟持されたチャンネルブラシ5からなる2本のブラシ体4a、4bが、中空部9を有する回転軸3の外周に並列に巻き回されて装着され、ブラシ部2a、2bとして形成されている。1本のブラシ体4aは、ピッチPをもって回転軸3の外周に螺旋状に装着されている。そして、前記の如くのピッチPの間に、他のブラシ体4bが並列されると共に、他のブラシ体4bもピッチPをもって回転軸3の外周に螺旋状に巻き回されて装着されている。
【0052】
また、それぞれのブラシ体4a、4bを構成する帯状体6の幅はWで、隣り合うブラシ体4aとブラシ体4bの間には隙間Gが形成されている。従って、ブラシ体4a、4bのピッチPは、ブラシ体4a、4bを構成する帯状体6の幅Wと、隣り合うブラシ体4a、4bの隙間Gとの和として表わされる。すなわち、ピッチP=2W+2G=2(W+G)となる。なお、隙間Gは、帯状体6の幅W以下にて設定される。
【0053】
次に、ブラシ体4a、4bの回転軸3の軸心C.L.の垂線P.L.にたいする傾斜角θについて詳説する。
【0054】
回転軸3の軸心C.L.の垂線P.L.にたいして、対称軸10を中心として左右それぞれ2本のブラシ体4a、4bが有する傾斜角θは、45°以下にて設定されている。ブラシ体4a、4bの回転軸3の軸心C.L.の垂線P.L.にたいする傾斜角θが45°を超える場合、帯状体6の側縁部に、ブラシ毛材8が被洗浄面に当接する際の応力が集中しやすくなる為、帯状体6の側縁部にてブラシ毛材8に毛癖が付き、毛癖の付いた部分から疲労屈折が生じ、ブラシ毛材8に毛折れが発生する。その為、ブラシロール1の洗浄性能が劣化すると共に、耐久性が低下する。
【0055】
さらに好ましくは、傾斜角θは、4°以上30°以下にて設定されるのが望ましい。4°未満の場合、傾斜角θが小さすぎて被洗浄面から除去された異物等の対象物が、対称軸10から回転軸3の軸心C.L.方向の左右に移動し難く、効率よく確実に異物等の対象物をブラシロール1の外部に排除するのが難しい。一方、傾斜角θが30°を超える場合、ブラシ毛材8は被洗浄面にたいする接触面積を、より広く確保して当接するものの、ブラシ毛材8の被洗浄面にたいする摩擦抵抗が増大すると共に、ブラシ毛材8の摩耗が促進される。
【0056】
ブラシ体4a、4bの回転軸3の軸心C.L.の垂線P.L.にたいする傾斜角θは、ブラシ体4a、4bのピッチP、及び回転軸3の直径Dにより規定され、その数値により変化する。すなわち、ブラシ体4a、4bのピッチPの値が大きいほど、回転軸3の直径Dの値が小さいほど、ブラシ体4a、4bの回転軸3の軸心C.L.の垂線P.L.にたいする傾斜角θは大きくなる。前記は、三角関数と極限式を用いて説明される。
【0057】
回転軸3の直径Dの値が一定(定数)で、ブラシ体4a、4bのピッチPの値が変化する(変数)場合は、下記の数式で表わすことができる。
【0058】
【数1】

【0059】
ブラシ体4a、4bのピッチPの値が無限大に近づく、すなわち大きくなるほど、正弦(sinθ)は1に近づく。sinθ=1の場合、傾斜角θの値は最大の90°であり、上記の数式は、ブラシ体4a、4bのピッチPの値が大きくなるほど、ブラシ体4a、4bの回転軸3の軸心C.L.の垂線P.L.にたいする傾斜角θが大きくなることを表わしている。
【0060】
ところで、図10に示した従来のブラシロール71は、ロール本体73の直径Dが、本発明のブラシロール1における回転軸3の直径Dと略同一であるが、ブラシ74のピッチPはW+Gであり、本発明のブラシロール1におけるブラシ体4a、4bのピッチP=2(W+G)の半分の長さである。従って、本発明のブラシロール1は、ブラシ体4a、4bのピッチPが、従来のブラシロール71のブラシ74のピッチPの2倍の長さであることから、本発明のブラシロール1の有する傾斜角θは、従来のブラシロール71の有する傾斜角θよりも大きく設定することができる。
【0061】
一方、ブラシ体4a、4bのピッチPの値が一定(定数)で、回転軸3の直径Dの値が変化する(変数)場合は、下記の数式で表わすことができる。
【0062】
【数2】

【0063】
回転軸3の直径Dの値が0に近づく、すなわち小さくなるほど、余弦(cosθ)は0に近づく。cosθ=0の場合、傾斜角θの値は最大の90°であり、上記の数式は、回転軸3の直径Dの値が小さくなるほど、ブラシ体4a、4bの回転軸3の軸心C.L.の垂線P.L.にたいする傾斜角θが大きくなることを表わしている。
【0064】
次に、図3を用いて、ブラシロール1の製作方法について説明する。
【0065】
最初に、図3の如く、概丸形断面を有する長尺状のブラシ毛材8を複数本、用意する。ブラシ毛材8は、ナイロン、ポリエステル、アクリル、ビニロン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ビニリデン、ポリウレタン等の合成繊維、アセテート、プロミックス等の半合成繊維、レーヨン、キュプラ、リヨセル等の再生繊維、綿、羊毛、絹等の天然繊維、ピアノ線、硬鋼線、ステンレス鋼線、オイルテンパー線、真鍮線、燐青銅線等の金属繊維のいずれかからなり、混毛されてあってもよい。ブラシ毛材8の断面形状は、特に限定されるものではなく、概丸形以外にも、例えば三角形、四角形等の多角形、星形、卍形、十字形、M形、N形等の異形断面形状であっても構わない。また、中実状、中空状のいずれであってもよい。さらに、モノフィラメント、マルチフィラメントのいずれであっても何ら支障はない。ブラシ毛材8の材質、線径、形状、及び毛丈等については、ブラシロール1の使用される環境、コスト等を勘案して、適宜、決定されるものである。
【0066】
上記の如くのブラシ毛材8が複数本、用意されたならば、ブラシ毛材8の長手方向の略中央部が、帯状体6の上部に重なるよう基台14に設置する。次いで、縦ロール12を使用して、芯線7にてブラシ毛材8を挟み付けると共に、芯線7を断面略U字状の帯状体6の内部に押し込む。次に、帯状体6の両側に設置された横ロール13、13を使用して、帯状体6を両側から、かしめる。その結果、図1(c)の如く、長尺状のブラシ毛材8の略中央部が芯線7、及び帯状体6に挟み付けられて折り合わされた長尺状のチャンネルブラシ5からなるブラシ体4a、4bが形成される。
【0067】
次に、図1(a)の如く、回転軸3の軸心C.L.方向の略中央部に設定された対称軸10の近傍において、1本のブラシ体4aの一方の端部、すなわち始点Sが溶接による固定部11を介して固定され、回転軸3の外周にピッチPをもって螺旋状に巻き回されて装着される。そして、図1(b)の如く、ブラシ体4aの他方の端部、すなわち終点Eが、回転軸3の一方の端部近傍に、溶接による固定部11を介して固定される。同様に、他のブラシ体4bが回転軸3の外周に、ブラシ体4aのピッチPの間に装着されると共に、他のブラシ体4bもピッチPをもって回転軸3の外周に巻き回され、回転軸3の外周に始点Sと、終点Eが溶接による固定部11を介して固定されることにより、一方のブラシ部2aが回転軸3の外周に形成される。同様に、ブラシ体4a、4bが、対称軸10から回転軸3の他方の端部に向かって巻き回されることにより、他方のブラシ部2bが形成され、ブラシロール1が、図1(a)、及び図1(b)の如く、製造される。
【0068】
なお、ブラシ体4a、4bを構成するブラシ毛材8は、それぞれのブラシ体4a、4bにおいて同一の材質であっても構わないし、異なる材質であってもよい。
【0069】
上記の如く構成されたブラシロール1の動作、作用は下記の通りである。
【0070】
ブラシロール1は、対称軸10を中心に、回転軸3の左右の端部に向け、それぞれ1本のブラシ体4aが回転軸3の外周に螺旋状に巻き回されると共に、隣り合うブラシ体4aのピッチPの間に、他のブラシ体4bが配列されている。従って、ブラシロール1は、対称軸10を中心に、回転軸3の左右の端部に向け、それぞれ1本のブラシ体4aのみが回転軸3の外周に螺旋状に巻き回されて形成されてある場合に比べ、各ブラシ体4a、4bの回転軸3の軸心C.L.の垂線P.L.にたいする傾斜角θを、大きく設定することができる。その為、ブラシロール1の回転に伴い、ブラシ毛材8は被洗浄面にたいして接触面積を広く確保して線接触にて当接するので、被洗浄面にブラシ毛材8が当接しない隙間部分がなくなり、ブラシマークの発生が抑えられる。また、ブラシ毛材8は、被洗浄面に線接触にて当接することから、ブラシ毛材8の被洗浄面にたいする当接力は強く、被洗浄面に洗浄残りが生じることがなく、ブラシロール1は被洗浄面を均一に洗浄する。
【0071】
ブラシロール1は、対称軸10を中心に、左右それぞれにブラシ体4aを1本のみ設けた場合と比較し、ブラシ体4a、4bの傾斜角θを大きくしてブラシ体4a、4bを回転軸3の軸心C.L.方向に広げられるので、ダム効果により、洗浄液を効果的に堰き止めながら、被洗浄面に付着、堆積した異物等の対象物を、回転軸3の回転に伴い、対称軸10から回転軸3の両端部に向け発生する分力により、洗浄液と共に被洗浄面の外部に洗い流し、除去する。
【0072】
ブラシロール1は、対称軸10が回転軸3の軸心C.L.方向の略中央部に設定されていることから、左右それぞれのブラシ部2a、2bで、回転軸3の略中央部から端部に向けて、分力により掻き寄せられる対象物の移動距離が等しくなるので、洗浄効果にムラが生じることがない。その為、洗浄性能が大幅に向上する。
【0073】
ブラシ部2a、2bは、隣り合うブラシ体4a、4bの間に隙間Gを有し、前記隙間Gは帯状体6の幅W以下にて設定されているので、ブラシ毛材8に捕捉された異物等の対象物は、回転軸3の回転に伴い、隙間Gを介して、ブラシロール1の両方の端部から外部に放出される。
【0074】
ブラシ部2a、2bは、ブラシ体4a、4bの始点S、S、及び終点E、Eが、回転軸3の外周の等分箇所に溶接による固定部11を介して形成されているので、ブラシロール1の回転バランスが向上し、回転軸3の回転に伴う芯ブレが抑制される。
【0075】
ブラシロール1は、ブラシ体4a、4bの回転軸3の軸心C.L.の垂線P.L.にたいする傾斜角θが45°以下にて設定されているので、帯状体6の側縁部に、ブラシ毛材8が被洗浄面に当接する際の応力が集中し難く、ブラシ毛材8の毛癖、毛折れが発生し難いことから、耐久性が向上すると共に、長期間に亘り、優れた洗浄性能が発揮される。
【0076】
また、それぞれのブラシ体4a、4bにおいて、異なる材質のブラシ毛材8が用いられている場合、ブラシロール1は、ブラシ毛材8の毛腰に強弱の変化を付与することができ、被洗浄面にたいして異なる接触力、押付力にてブラシ毛材8を当接させることができるので、被洗浄面に付着、堆積しているさまざまな性状を有する異物等の対象物を、的確に、除去することができる。
【0077】
次に、本発明のブラシロール1の洗浄性能について試験した。下記に示した要領で測定し、その結果を表1に示した。
【0078】
実施例として、線径が0.4mmの66ナイロンからなる長尺状のブラシ毛材8の長手方向における略中央部を、鉄からなる長尺状の帯状体6と、芯線7の間に挟み付けると共に、折り合わせ、長尺状のチャンネルブラシ5からなるブラシ体4a、4bを形成した。折り合わされたブラシ毛材8の毛丈は50mmに設定した。次に、直径が200mmで且つ長さが360mmの鉄製の略円筒状の回転軸3の軸心C.L.方向の略中央部に対称軸10を設定し、対称軸10から回転軸3の両方の端部に向け、それぞれ2本のブラシ体4a、4bを、隣り合う隙間Gの間隔を2mm、各ブラシ体4a、4bのピッチPを20mmに設定して螺旋状に巻き回し、ブラシ部2a、2bを形成した。帯状体6の幅Wは8mmであり、ブラシ体4a、4bの回転軸3の軸心C.L.の垂線P.L.にたいする傾斜角θは約5°に形成された。また、ブラシ体4a、4bの始点S、S、及び終点E、Eは、回転軸3の外周等分2箇所に、溶接による固定部11を介して固定した。そして、前記の手順にて実施例のブラシロールを2本製作した。
【0079】
比較例として、略円筒状の回転軸3の軸心C.L.方向の略中央部に対称軸10を設定し、対称軸10から回転軸3の両方の端部に向け、1本のブラシ体4aにてブラシ部2a、2bを形成したブラシロール1を2本製作した。比較例のブラシロール1は、回転軸3の外周に、ブラシ体4aを、隣り合う隙間Gの間隔を2mm、帯状体6の幅Wを8mm、ブラシ体4aのピッチPを10mmに設定して螺旋状に巻き回して形成した。回転軸3の寸法等、他の条件は、実施例のブラシロール1と同一の条件である。なお、ブラシ体4aの回転軸3の軸心C.L.の垂線P.L.にたいする傾斜角θは約2°に形成された。
【0080】
次に、上記の如く構成された各2本ずつの実施例、及び比較例のブラシロール1を、それぞれ上下一対にて通板試験機に取り付け、150rpmの一定の回転速度で回転させる一方、一面に人工汚れとなる光明丹(四酸化三鉛)を塗布した溶融亜鉛メッキ鋼板を用意し、前記回転速度で回転している回転軸3の外周に取り付けられたブラシ部2a、2bの先端が描く仮想円上から2mmだけ回転軸3の方向に近接した位置に前記溶融亜鉛メッキ鋼板が、その汚れ面を回転軸3に対向するよう設定すると共に、7L毎分の散布量にて洗浄水を吹き付けながら、溶融亜鉛メッキ鋼板を100mpmの周速にて、上下一対で取り付けられたブラシロール1の間を通板させ、鋼板の汚れ面にブラシ部2a、2bを当接させることによって鋼板の汚れを除去した。
【0081】
そして、鋼板の汚れ面におけるブラシ部2a、2bによって汚れを除去した部分の明度を、日本電色工業株式会社製の色差計NR−1で測定して、下記基準により、洗浄性能を判断した。
○・・・明度の向上が+5以上
×・・・明度の向上が+5未満
【0082】
また、試験後の鋼板のブラシマーク、すなわち洗浄残りの有無を目視観察して、下記基準により判断した。
○・・・ブラシマークが無い
×・・・ブラシマークが有る
【0083】
【表1】

【0084】
上記試験結果より、実施例のブラシロール1は、各ブラシ体4a、4bの回転軸3の軸心C.L.の垂線P.L.にたいする傾斜角θが大きい為、回転軸3の回転に伴い、ブラシ毛材8は鋼板にたいして接触面積を広く確保して線接触にて当接するので、鋼板にブラシ毛材8が当接しない隙間部分、すなわちブラシマークの発生が抑えられる。また、ブラシ毛材8は、鋼板に線接触にて当接するので、ブラシ毛材8の鋼板にたいする当接力は強く、鋼板に洗浄残りが生じることがなく、優れた洗浄性能を有するものであった。
【0085】
一方、比較例のブラシロール1は、ブラシ体4aの回転軸3の軸心C.L.の垂線P.L.にたいする傾斜角θが極めて小さい為、回転軸3の回転に伴うブラシ毛材8の鋼板にたいする接触面積も極めて狭く、点接触にて鋼板に当接するので、鋼板にブラシ毛材8が当接しない隙間部分、すなわちブラシマークが発生する。また、ブラシ毛材8は、鋼板に点接触にて当接するので、ブラシ毛材8の鋼板にたいする当接力は弱く、鋼板に洗浄残りが生じ、洗浄性能は非常に劣るものであった。
【0086】
(実施例2)
図4(a)は、本発明の第2の実施例におけるブラシロールを構成する1本目のブラシ体に用いられるブラシ毛材の平面図、図4(b)は、図4(a)のA−A断面図、図4(c)は、本発明の第2の実施例におけるブラシロールを構成する2本目のブラシ体に用いられるブラシ毛材の平面図、図4(d)は、図4(c)のB−B断面図である。実施例2は、実施例1の対称軸から左右に形成された2本のブラシ体において、それぞれのブラシ体を構成するブラシ毛材の線径が異なる形態である。なお、上記第1の実施例におけるブラシロールと同一部材については、同一符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0087】
図4(a)から図4(d)において、ブラシ毛材18a、18bは、概丸形断面を有する長尺状の合成繊維であり、ナイロン、ポリエステル等からなる。ブラシ毛材18a、18bの線径D、Dは0.1〜0.8mm程度で、ブラシ毛材18aの線径Dが大きく、ブラシ毛材18bの線径Dが小さい。例えば、ブラシ毛材18aの線径Dは0.5mm、ブラシ毛材18bの線径Dは0.2mm等に設定される。
【0088】
ブラシ毛材18aは、上記の如く、線径Dが大きいことから、1本目のブラシ体4aとして構成され、ブラシロール1に形成された場合、毛腰が極めて強く、被洗浄面に強固に圧着している塗料ミスト、ペンキ、搬送ベルトから剥離したウレタン等の合成樹脂からなる対象物を除去することができる。
【0089】
ブラシ毛材18bは、上記の如く、線径Dが小さいことから、2本目のブラシ体4bとして構成され、ブラシロール1に形成された場合、毛腰は他のブラシ毛材18aに比べて弱いものの、被洗浄面に傷を付着させることなく、鉄粉、石等の無機物、繊維クズ等の被洗浄面に軽く添付している対象物を、掃き取ることができる。
【0090】
本実施例におけるブラシロール1は、以上のように構成されているので、被洗浄面に付着、堆積しているさまざまな性状を有する異物等の対象物を、ブラシ毛材18a、18bの異なる接触力、押付力により、的確に、被洗浄面から除去することができる。
【0091】
(実施例3)
図5(a)は、本発明の第3の実施例におけるブラシロールを構成する1本目のブラシ体に用いられるブラシ毛材の斜視図、図5(b)は、本発明の第3の実施例におけるブラシロールを構成する2本目のブラシ体に用いられるブラシ毛材の斜視図である。実施例3は、実施例1の対称軸から左右に形成された2本のブラシ体において、それぞれのブラシ体を構成するブラシ毛材の長手方向における形状が異なる形態である。なお、上記第1の実施例におけるブラシロールと同一部材については、同一符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0092】
図5(a)において、ブラシ毛材28aは、概丸形断面を有する長尺状の合成繊維29aの外周に、粒状の砥粒25が複数固着して形成されている。砥粒25は、合成繊維29aとの重量比で、20〜30%程度配合される。ブラシ毛材28aは、前記の如く、砥粒25を含有していることから、1本目のブラシ体4aとして構成され、ブラシロール1に形成された場合、毛腰が極めて強く、被洗浄面に強固に圧着している塗料ミスト、ペンキ、搬送ベルトから剥離したウレタン等の合成樹脂からなる対象物を、砥粒25により掻き取ることができる。
【0093】
ブラシ毛材28aを構成する合成繊維29aは、ナイロン、ポリエステル等からなり、線径は0.1〜0.8mm程度である。また、砥粒25は、酸化アルミニウム、炭化ケイ素、ダイアモンド等の無機物で、粒径は0.1〜10μm程度である。合成繊維29aに、砥粒25を固着させる際、シランカップリング剤を用いると、砥粒25を合成繊維29aに強固に接着させることができ、洗浄中にブラシロール1から砥粒25が脱落することを防止することができる。シランカップリング剤は、分子中に2個の異なった反応基をもつ有機ケイ素単量体で、一方の反応基は無機物と化学結合する反応基であり、他方の反応基は有機物と化学結合する反応基である。従って、シランカップリング剤は、無機物である砥粒25と、有機物である合成繊維29aとを化学的に結合する為、砥粒25を合成繊維29aに強固に接着させることができるのである。
【0094】
図5(b)において、ブラシ毛材28bは、概丸形断面を有する長尺状の合成繊維29bからなる複数本の単糸27が撚り合わされて形成された撚り糸である。単糸27はナイロン、ポリエステル等からなり、線径は10〜100μm程度である。単糸27の撚り本数に関しては、特に、限定されるものではない。ブラシ毛材28bは、2本目のブラシ体4bとして構成され、ブラシロール1に形成された場合、撚り糸にて形成されているので、被洗浄面への当接を繰り返すことにより、ブラシ毛材28bの先端部がほぐれ、被洗浄面の細かな凹凸部分に付着している鉄粉、石等の無機物、繊維クズ等の塵埃を掻き出すことができる。
【0095】
ブラシ毛材28bは、複数本の単糸27を撚り合わせ、撚り糸に形成する際、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、NBR、SBR、MBR等の高分子弾性体を、撚り合わされた単糸27を接着する接着剤として用いても構わない。前記の如くの接着剤が用いられている場合、撚り糸は被洗浄面への当接を繰り返すことにより、短期間にて撚りが全てほぐれ、単糸27にバラけることが防止されるので、長期間に亘って、ブラシ毛材28bの毛腰を保持することができる。使用される高分子弾性体の種類については、ブラシロール1が使用される環境、洗浄液の種類等に応じて、適宜、決定される。
【0096】
本実施例におけるブラシロール1は、以上のように構成されているので、被洗浄面に付着、堆積しているさまざまな性状を有する異物等の対象物を、ブラシ毛材28a、28bの異なる接触力、押付力により、的確に、被洗浄面から除去することができる。
【0097】
(実施例4)
図6(a)は、本発明の第4の実施例におけるブラシロールを構成する1本目のブラシ体に用いられるブラシ毛材の断面図、図6(b)は、本発明の第4の実施例におけるブラシロールを構成する2本目のブラシ体に用いられるブラシ毛材の断面図、図6(c)は、本発明の他の形態におけるブラシロールを構成する1本目のブラシ体に用いられるブラシ毛材の断面図、図6(d)は、本発明の他の形態におけるブラシロールを構成する2本目のブラシ体に用いられるブラシ毛材の断面図である。実施例4は、実施例1の対称軸から左右に形成された2本のブラシ体において、それぞれのブラシ体を構成するブラシ毛材の断面形状が異なる形態である。なお、上記第1の実施例におけるブラシロールと同一部材については、同一符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0098】
図6(a)において、ブラシ毛材38aは、四隅に角部35aを有する概四角形断面の合成繊維であり、ナイロン、ポリエステル等からなる。ブラシ毛材38aは、1本目のブラシ体4aとして構成され、ブラシロール1に形成された場合、毛腰を保持しながら、被洗浄面に強固に圧着している塗料ミスト、ペンキ、搬送ベルトから剥離したウレタン等の合成樹脂や、被洗浄面に堆積している鉄粉、石等の硬い無機物系の対象物を、角部35aにより掻き取ることができる。
【0099】
図6(b)において、ブラシ毛材38bは、概丸形断面を有する合成繊維であり、ナイロン、ポリエステル等からなる。ブラシ毛材38bは、2本目のブラシ体4bとして構成され、ブラシロール1に形成された場合、毛腰が柔軟であり、繊維クズ等の被洗浄面に軽く添付している柔らかい対象物を、的確に掃き取ることができる。
【0100】
本実施例におけるブラシロール1は、以上のように構成されているので、被洗浄面に付着、堆積しているさまざまな性状を有する異物等の対象物を、ブラシ毛材38a、38bの異なる接触力、押付力により、的確に、被洗浄面から除去することができる。また、ブラシ毛材38aは、角部35aにより、異物等の対象物を掻き取り、除去する。
【0101】
図6(c)において、ブラシ毛材38cは、3箇所の角部35cと、中空部39cを有する概三角形中空断面の中空繊維であり、ナイロン、ポリエステル等の合成繊維からなる。ブラシ毛材38cは、1本目のブラシ体4aとして構成され、ブラシロール1に形成された場合、毛腰が極めて強く、被洗浄面に強固に圧着している塗料ミスト、ペンキ、搬送ベルトから剥離したウレタン等の合成樹脂や、被洗浄面に堆積している鉄粉、石等の硬い無機物系の対象物を、角部35cにより掻き取ることができる。また、中空部39cに洗浄液等の液体を保液することができるので、被洗浄面にたいする表面張力を低下させることができ、洗浄性能が向上する。
【0102】
図6(d)において、ブラシ毛材38dは、中空部39dを有する概丸形中空断面の中空繊維であり、ナイロン、ポリエステル等の合成繊維からなる。ブラシ毛材38dは、2本目のブラシ体4bとして構成され、ブラシロール1に形成された場合、毛腰が柔軟であり、繊維クズ等の被洗浄面に軽く添付している柔らかい対象物を、的確に掃き取ることができる。また、中空部39dに洗浄液等の液体を保液することができるので、被洗浄面にたいする表面張力を低下させることができ、洗浄性能が向上する。
【0103】
本実施例の他の形態におけるブラシロール1は、以上のように構成されているので、被洗浄面に付着、堆積しているさまざまな性状を有する異物等の対象物を、ブラシ毛材38c、38dの異なる接触力、押付力により、的確に、被洗浄面から除去することができる。また、ブラシ毛材38cは、3箇所の角部35cにより、異物等の対象物を掻き取り、除去する。さらに、ブラシ毛材38c、38dは、中空部39c、39dに洗浄液等の液体を保液することができる。
【0104】
(実施例5)
図7は、本発明の第5の実施例におけるブラシロールの部分断面図である。なお、上記第1の実施例におけるブラシロールと同一部材については、詳しい説明を省略する。
【0105】
図7において、ブラシロール41は、帯状体46と芯線47にブラシ毛材48a、48bが挟持されたチャンネルブラシ45からなる2本のブラシ体44a、44bが、中空部49を有する回転軸43の外周に設定された対称軸40を中心に、左右の端部に向け並列に巻き回されてブラシ部42a、42bが構成され、形成されている。ブラシ毛材48a、48bは合成繊維、半合成繊維、再生繊維、天然繊維、金属繊維のいずれかである。なお、特に図示しないが、ブラシ体44a、44bの始点、及び終点は、溶接により回転軸43の外周に固定されている。
【0106】
1本目のブラシ体44aを構成するブラシ毛材48aは毛丈Hを有し、2本目のブラシ体44bを構成するブラシ毛材48bは毛丈Hを有する。ブラシ毛材48a、48bの毛丈H、Hは40〜70mm程度で、ブラシ毛材48aの毛丈Hが長く、ブラシ毛材48bの毛丈Hが短い。例えば、ブラシ毛材48aの毛丈Hは60mm、ブラシ毛材48bの毛丈Hは50mm等に設定される。ブラシ毛材48a、48bの毛丈H、Hが40mm未満の場合、ブラシ毛材48a、48bは回転軸43の近傍、すなわち帯状体46の側縁部の近傍まで被洗浄面に当接しやすくなり、被洗浄面にたいする摩擦抵抗が増大すると共に、ブラシ毛材48a、48bの摩耗が促進される。一方、ブラシ毛材48a、48bの毛丈H、Hが70mmを超える場合、被洗浄面から除去された異物等の対象物がブラシ毛材48a、48bの間に捕捉され、ブラシ毛材48a、48bにからみつきやすくなり、隣り合うブラシ体44a、44bの隙間を介して、回転軸43の両端部に移動し難く、効率よく確実に異物等の対象物をブラシロール41の外部に排除するのが難しい。
【0107】
ブラシ毛材48aは、上記の如く、毛丈Hが長いことから、1本目のブラシ体44aとして構成され、ブラシロール41に形成された場合、被洗浄面にたいする接触面積を広く確保して、繊維クズ等の被洗浄面に軽く添付している柔らかい対象物を、的確に掃き取ることができる。
【0108】
ブラシ毛材48bは、上記の如く、毛丈Hが短いことから、2本目のブラシ体44bとして構成され、ブラシロール41に形成された場合、ブラシ毛材48bの先端部にて、毛腰を極めて強く設定し、被洗浄面に強固に付着している塗料ミスト、ペンキ、搬送ベルトから剥離したウレタン等の合成樹脂や、被洗浄面に堆積している鉄粉、石等の硬い無機物系の対象物を除去することができる。
【0109】
本実施例におけるブラシロール41は、以上のように構成されているので、被洗浄面に付着しているさまざまな性状を有する異物等の対象物を、ブラシ毛材48a、48bの異なる接触力、押付力により、的確に、被洗浄面から除去することができる。
【0110】
(実施例6)
図8(a)は、本発明の第6の実施例におけるブラシロールの部分正面図、図8(b)は、図8(a)のE−E断面図、図8(c)は、図8(a)のF−F断面図である。なお、上記第1、及び第5の実施例におけるブラシロールと同一部材については、詳しい説明を省略する。
【0111】
図8(a)において、ブラシロール51は、中空部59を有する略円筒状の回転軸53の外周に、2本のブラシ体54a、54bからなるブラシ部52a、52bが装着されて形成されている。ブラシ部52a、52bは、回転軸53の軸心C.L.方向の略中央部に設定された対称軸50を中心に、左右にそれぞれ2本のブラシ体54a、54bが回転軸53の外周に螺旋状に巻き回されていると共に、回転軸53の軸心C.L.の垂線P.L.にたいする傾斜角θが、巻き付け時に対称軸50を中心に対称となるよう並列に形成されている。
【0112】
図8(b)、及び図8(c)において、ブラシ体54a、54bは、断面略U字状の帯状体56と、概丸形断面を有する芯線57との間に、ブラシ毛材58が挟持された長尺状のチャンネルブラシ55にて形成されている。ブラシ体54a、54bは、回転軸53の外周に装着される際、図8(a)の如く、対称軸50の近傍における回転軸53の外周等分2箇所に、それぞれ2本のブラシ体54a、54bの始点S、Sが溶接による固定部31を介して固定され、螺旋状に巻き回されると共に、回転軸53の両方の端部近傍の外周等分2箇所に、2本のブラシ体54a、54bの終点(図示せず)が溶接による固定部(図示せず)を介して固定されて、ブラシ部52a、52bが形成される。
【0113】
ブラシ体54a、54bを構成するブラシ毛材58の植毛量は、図8(b)、及び図8(c)の如く、回転軸53の略中央部に設定された対称軸50の近傍よりも、回転軸53の両端部の近傍の方が少なくなるように形成され、剛性が異なるように設定されている。すなわち、回転軸53の両端部の近傍の方が、対称軸50の近傍よりも剛性が低くなるように設定されている。ブラシ毛材58の植毛量は、図3に示すようなチャンネルブラシ55の製作時において、基台14の上に置くブラシ毛材58の量を調整することにより、調節することができる。ブラシ毛材58の植毛量を調節する際には、回転軸53の両端部の近傍の方が、対称軸50の近傍よりも10〜50%程度少なくなるように調整されるのが望ましい。植毛量の差が10%未満の場合、剛性の違いが発現し難く、50%を超える場合、ブラシ毛材58が帯状体56と芯線57の間から脱落しやすくなる。
【0114】
上記の如く構成されたブラシロール51の動作、作用は下記の通りである。
【0115】
ブラシロール51は、対称軸50を中心に、左右それぞれに配されたブラシ部52a、52bが、回転軸53の回転に伴い発生する分力により、異物等の対象物を、対称軸50から回転軸53の両端部に向け、洗浄液と共に被洗浄面の外部に洗い流し、除去する。従って、ブラシロール51の回転中においては、異物等の対象物は、対称軸50の近傍におけるよりも、回転軸53の端部の近傍に近づくほど増えることになる。すなわち、回転軸53の端部の近傍は、ブラシ毛材58の被洗浄面にたいする摩擦抵抗が、対称軸50の近傍よりも大きくなる。その為、本発明のブラシロール51の如く、ブラシ毛材58の剛性を、対称軸50の近傍よりも、回転軸53の端部の近傍の方が低くなるように設定しておけば、摩擦抵抗の高い回転軸53の端部の近傍においても、ブラシ毛材58が容易に変形し、被洗浄面から異物等の対象物を外部に払い除けやすくなるので、対象物の除去性能が大幅に向上する。
【0116】
(実施例7)
図9は、本発明のブラシロールが搭載された洗浄装置の斜視図である。なお、構成の説明を容易にする為に、各部品の軸受け部や、支持部品の図示、説明は省略することとする。
【0117】
図9において、特に図示しないが、箱型の洗浄装置60は、自動車の鋼板67のプレス加工ライン等に設置され、プレス機等の加工機器(図示せず)に供給される鋼板67等のブランク材を洗浄するもので、平板状の鋼板67をブラシロール61a、61bに送り込む図示しない上下一対の送りロールと、前記送りロールから送り出された鋼板67の両面を洗浄する上下一対にて設置されたブラシロール61a、61bと、ブラシロール61a、61bを回転駆動する駆動手段64、64と、ブラシロール61a、61b及び/又は鋼板67に洗浄液等の液体を吹き付ける複数のノズル65を有する配管66、66から構成されている。
【0118】
ブラシロール61a、61bは、略円筒状の回転軸63の略中央部に設定された対称軸30を中心に、回転軸63の両端部に向け、ブラシ部62a、62bが形成されてあり、上記第1から第6の実施例におけるブラシロール1、41、51のいずれかと同一である。上部に位置するブラシロール61aは鋼板67の表面を洗浄し、下部に位置するブラシロール61bは鋼板67の裏面を洗浄する。
【0119】
ブラシロール61a、61bは、駆動手段64により、実線矢印の方向に一定の回転速度で回転している。送りロール(図示せず)によりブラシロール61a、61bに送り込まれた鋼板67は、上部のブラシロール61aと下部のブラシロール61bの間を通過し、白抜き矢印の方向に送り出されると共に、ブラシロール61a、61bの有するブラシ部62a、62bが鋼板67の両面に当接し、鋼板67の素地68に付着、堆積している異物等の対象物69を除去する。その際、ブラシロール61a、61bの上流側に設置された配管66からノズル65に洗浄液が送り込まれ、ノズル65からブラシロール61a、61b及び/又は鋼板67にたいして洗浄液が噴霧され、洗浄液により異物等の対象物69が鋼板67から浮き上がりやすくする。
【0120】
上記の如く構成された洗浄装置60の動作、作用は下記の通りである。
【0121】
図示しない送りロールにより鋼板67がブラシロール61a、61bに送り込まれると、配管66を通して各洗浄ノズル65に洗浄液が供給されながら、ブラシロール61a、61b及び/又は鋼板67にたいして洗浄液が噴霧され、鋼板67は回転している上部のブラシロール61aと、下部のブラシロール61bとの間を通過すると共に、上部のブラシロール61aで鋼板67の表面が、下部のブラシロール61bで鋼板67の裏面がそれぞれ洗浄される。
【0122】
鋼板67の表面では、上部のブラシロール61aで擦り取られた塵埃や鉄粉、樹脂等の対象物69が、ブラシロール61aの回転に伴い発生する分力C.F.により、洗浄液と共に、対称軸30から回転軸63の左右の端部に向かって移動し、洗浄装置60の内部に落下していく。また、鋼板67の裏面では、下部のブラシロール61bで擦り取られた異物等の対象物69の一部は、洗浄液と共に、直ちに洗浄装置60の内部に落下していき、洗浄液の粘着性や表面張力により、ブラシ部62a、62bに捕捉された対象物69は、下部のブラシロール61bの螺旋状に形成されたブラシ部62a、62bにより、下部のブラシロール61bの両端部へ向かって送り出され、洗浄装置60の内部に落下していく。
【0123】
洗浄装置60の内部に落下し、回収された異物等の対象物69は、汚れた洗浄液と共に排出配管(図示せず)を通って、図示しない濾過装置や、廃液処理装置に送られていき、フィルター等により捕捉される。洗浄液は濾過されて、再び配管66へ送り込まれる。
【0124】
以上のように、本実施例によれば、洗浄性能に優れ、しかも鋼板67の両面にブラシロール61a、61bのブラシ部62a、62bによるブラシマークが付き難い洗浄装置60を提供することができる。
【0125】
また、鋼板67は、洗浄後、金型等によりプレスされ、自動車の車体を構成するパネル部品に成形されるが、図9の如く、ブラシロール61a、61bの下流側において、洗浄後の鋼板67は素地68が露出し、異物等の対象物69が除去され、残っていないので、金型等によりプレスされても、プレス痕が発生することがない。その為、洗浄装置60は、鋼板67から成形されるパネル部品の品質の向上を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明にかかるブラシロール及び洗浄装置は、洗浄性能、異物等の対象物の除去性能に優れたもので、各種洗浄装置、清掃装置、研磨装置、表面処理装置などに幅広く好適に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】(a)本発明の第1の実施例におけるブラシロールの部分正面図、(b)ブラシロールの側面図、(c)ブラシ体を前面側から見た斜視図
【図2】本発明の第1の実施例におけるブラシロールの部分断面図
【図3】チャンネルブラシの製造状態を前面側から見た斜視図
【図4】(a)本発明の第2の実施例におけるブラシロールを構成する1本目のブラシ体に用いられるブラシ毛材の平面図、(b)図4(a)のA−A断面図、(c)本発明の第2の実施例におけるブラシロールを構成する2本目のブラシ体に用いられるブラシ毛材の平面図、(d)図4(c)のB−B断面図
【図5】(a)本発明の第3の実施例におけるブラシロールを構成する1本目のブラシ体に用いられるブラシ毛材の斜視図、(b)本発明の第3の実施例におけるブラシロールを構成する2本目のブラシ体に用いられるブラシ毛材の斜視図
【図6】(a)本発明の第4の実施例におけるブラシロールを構成する1本目のブラシ体に用いられるブラシ毛材の断面図、(b)本発明の第4の実施例におけるブラシロールを構成する2本目のブラシ体に用いられるブラシ毛材の断面図、(c)本発明の他の形態におけるブラシロールを構成する1本目のブラシ体に用いられるブラシ毛材の断面図、(d)本発明の他の形態におけるブラシロールを構成する2本目のブラシ体に用いられるブラシ毛材の断面図
【図7】本発明の第5の実施例におけるブラシロールの部分断面図
【図8】(a)本発明の第6の実施例におけるブラシロールの部分正面図、(b)図8(a)のE−E断面図、(c)図8(a)のF−F断面図
【図9】本発明のブラシロールが搭載された洗浄装置の斜視図
【図10】(a)従来例におけるブラシロールの部分正面図、(b)従来例におけるブラシロールの部分断面図
【図11】従来例のブラシロールが搭載された洗浄装置の斜視図
【符号の説明】
【0128】
1、41、51、61a、61b、71 ブラシロール
2a、2b、42a、42b、52a、52b、62a、62b ブラシ部
3、43、53、63 回転軸
4a、4b、44a、44b、54a、54b ブラシ体
5、45、55 チャンネルブラシ
6、46、56 帯状体
7、47、57、77 芯線
8、18a、18b、28a、28b、38a、38b、38c、38d、48a、48b、58 ブラシ毛材
9、39c、39d、49、59 中空部
10、30、40、50、70 対称軸
11、31 固定部
12 縦ロール
13 横ロール
14 基台
25 砥粒
27 単糸
29a、29b 合成繊維
35a、35c 角部
60 洗浄装置
64、84 駆動手段
65、85 ノズル
66 配管
67 鋼板
68、88 素地
69、89 対象物
73 ロール本体
74 ブラシ
76 ベース材
78 線材
80 鋼板用洗浄機
87 ブランク材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼板、非鉄金属板、樹脂板、あるいはフィルム状樹脂組成物等からなる被洗浄面の洗浄、清掃、研磨、表面処理等を行うブラシロールにおいて、前記ブラシロールは、略棒状又は円筒状の回転軸と、前記回転軸の外周に螺旋状に巻き付けられたブラシ部を有し、前記ブラシ部は断面略U字状の帯状体と、前記帯状体で芯線と共に挟持されるブラシ毛材とで構成されたチャンネルブラシからなるブラシ体が、前記回転軸の外周に螺旋状に巻き回されて形成されてあり、前記ブラシ体は前記回転軸の軸心方向の一部に設定した対称軸を中心に、巻き付け時の傾斜角が対称になるよう前記回転軸に巻き回されてあると共に、左右それぞれに複数本並列に設けられ、前記回転軸の外周に固定手段にて固定して形成されてあることを特徴とするブラシロール。
【請求項2】
請求項1記載の構成よりなるブラシロールにおいて、対称軸を回転軸の軸心方向の略中央部に設定したことを特徴とするブラシロール。
【請求項3】
請求項1から2記載の構成よりなるブラシロールにおいて、ブラシ部は少なくとも1本以上のブラシ体が、他のブラシ体と異なるブラシ毛材にて構成されてあることを特徴とするブラシロール。
【請求項4】
請求項1から3記載の構成よりなるブラシロールにおいて、ブラシ部は回転軸に設定された対称軸の近傍と、前記回転軸の端部の近傍において、ブラシ毛材の剛性が異なることを特徴とするブラシロール。
【請求項5】
請求項1から4記載の構成よりなるブラシロールにおいて、ブラシ部は隣り合うブラシ体の間に隙間を有し、前記隙間は帯状体の幅以下にて設定されてあることを特徴とするブラシロール。
【請求項6】
請求項1から5記載の構成よりなるブラシロールにおいて、ブラシ部はそれぞれのブラシ体の始点及び終点が、回転軸の外周の等分箇所に固定手段にて固定して形成されてあることを特徴とするブラシロール。
【請求項7】
請求項1から6記載の構成よりなるブラシロールにおいて、ブラシ体は回転軸の軸心の垂線にたいして45°以下の傾斜角を有するよう形成されてあることを特徴とするブラシロール。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載されたブラシロールと、前記ブラシロールを回転駆動する駆動手段と、前記ブラシロール及び/又は被洗浄面に洗浄液等の液体を吹き付ける複数のノズルを有する洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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